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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

外科用電動器具の通常使用時の微生物付着

Biofouling of surgical power tools during routine use

A. Deshpande*, G.W.G. Smith, A.J. Smith
*Southern General Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2015) 90, 179-185


外科用電動器具は、歯科、整形外科、眼科、神経外科、および足病科などの多くの外科系診療科で頻繁に用いられている。これらの器具は複雑な構造をしているため、洗浄剤や消毒薬が容易に到達せず、使用後には微生物や組織の残存物による汚染頻度が高いと考えられる。このような課題があるため、外科用電動器具は汚染除去サイクルにおける弱点と見なされており、医原性感染伝播の可能性を有している。本稿の目的は、外科用電動器具の汚染除去、およびそれに関連する医原性感染伝播に関する既存の文献をレビューすることである。Ovid online を用いて以下のデータベースにより医学文献の検索を行った。1950 ~ 2014 年の Ovid Medline、1980 ~ 2014 年の Embase、および EBM Reviews Full Text(Cochrane DSR、ACP Journal Club、および DARE)。汚染除去プロセスには課題が存在するにもかかわらず、外科用電動器具に直接的に関連する医原性感染エピソードはまれであると思われた。このことは、実際の状況を反映していると考えることもできるが、可能性が高いのは、報告が不十分であること、電動器具の調査を実施できていないこと、または手術部位感染症(SSI)と電動器具との関連についてのサーベイランスを行っていないことである。医療従事者は、外科用電動器具の汚染除去にはそれぞれ複雑な問題があることを認識し、購入前に製造者の再処理説明書をしっかり確認すべきである。そして、製造者によるこれらの再処理説明書の検証に関しても、十分な明確性が求められる。このことは特に、使用後の汚染除去に関して大きな課題を有している新しい外科ロボットシステムにあてはまる。交差感染の発生の調査や SSI サーベイランスには、外科用電動器具の汚染除去に関する評価を組み入れるべきであり、この評価は、外科用電動器具による皮膚・軟部組織感染症への影響の解明につながると考えられる。

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監訳者コメント
外科用電動器具の汚染除去に関する課題は、その重要性が極めて大きいにもかかわらず、これまで多数の検討がなされてきたとは言い難かった。今回のレビューは外科用電動器具のカテゴリー別にそのエビデンスを述べ、総括しているが、近年、da Vinci など新しい外科ロボットシステムの洗浄・消毒について大きな関心が集まり、検討も始まっている。今後の動向も合わせて注目していく必要がある。

「新興超多剤耐性菌(eXDR)」交差感染の予防に関するフランスのレコメンデーション

French recommendations for the prevention of ‘emerging extensively drug-resistant bacteria’ (eXDR) cross-transmission

D. Lepelletier*, P. Berthelot, J.-C. Lucet, S. Fournier, V. Jarlier, B. Grandbastien and the National Working Group
*Service de Bactèriologie-Hygiène Hospitalière, CHU Nantes, France

Journal of Hospital Infection (2015) 90, 186-195


多剤耐性菌、超多剤耐性菌(XDR)の伝播を制御する方策として、抗菌薬処方の低減と、キャリア患者からの伝播予防という二重戦略が挙げられる。患者のケアを行うすべての医療従事者が標準予防策を徹底し、伝播性の感染症や多剤耐性菌を有する患者が散発的あるいは集団的にみられる状況下では、バリアプリコーション(隔離)を追加する。さらに新興超多剤耐性菌(eXDR;フランスではカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌やバンコマイシン耐性腸球菌を指す)の感染・保菌リスクを特に有する集団に対しては、予防策の追加が必要になってくる。全関係者が効果的にコミュニケーションを行い、eXDR のキャリアを早期に検出・特定し、確実に追跡できる能力が、eXDR の拡散を防ぐうえで重要な課題であるといえる。したがってフランスの High Committee for Public Health は、eXDR の交差感染予防に関する国内の既存のあらゆるレコメンデーションをアップデートし、標準化を図っており、本総説ではその概要を示した。なおこの作業は、2013 年までの科学的・実務的なデータ・知識に基づくものである。eXDR の保菌が判明した患者と、接触歴から保菌のリスクがあると考えられる患者に対しては、異なった予防策が推奨されている。病院レベルでは、リスク評価に感染制御チームの経験、eXDR が検出された種々のタイミング(入院時、入院中など)、および疫学的状況(散発例、多発、アウトブレイク、広範な流行)を組み入れるべきであり、逆にこのような評価によって、それぞれの臨床状況で行うべき制御策について情報を得ることができる。

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監訳者コメント
Emerging extensively drug-resistant bacteria(eXDR)であるが、多剤耐性菌の中でさらにその耐性が拡大したものという意であるので、ここでは新興超多剤耐性菌と試訳した。フランスでは eXDR が重大な脅威であるという認識のもとに、国家をあげて知識・経験の総括とアップデートを行い、レコメンデーションを作り上げている。わが国全体の eXDR 対策を考えるうえでも、また医療機関での個々の事例に対する場合においても、このレコメンデーションの意義は大きく、非常に参考になるものと思われる。

一般的な便中病原体の分子診断検査

Molecular diagnostic testing for common stool pathogens

G. Trafford*, N. Ratnaraja, N. Wickramasinghe
*Heart of England Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2015) 90, 196-198


No abstract.

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監訳者コメント
便中の腸管病原体の検出に、日常的な検査として遺伝子検査が用いられるケースはこれまで少なかった。しかしながら、従来法は感度や手間、費用などの点で制約が大きかったのも事実である。本稿は、PCR 法を用いる長所、ピットフォール、結果の解釈、コスト比較など、実用化と感染対策への応用に向けた課題について述べている。

イングランドの病院における感染性下痢が疑われる患者の管理

Management of patients with suspected infectious diarrhoea in hospitals in England

J. Buchanan, S. Wordsworth, L. O’Connor, G. Pike, A.S. Walker, M.H. Wilcox, D.W. Crook
*University of Oxford, UK

Journal of Hospital Infection (2015) 90, 199-207


背景
感染性下痢が疑われる患者に対する分子検査およびゲノム検査は進展しつつある。広範な診断検査を実施する意義を評価するためには、感染制御部門や微生物学部門がこれらの患者の管理に際して行っている現行の業務について、理解することが重要である。しかしそのような点では、現行の業務に関する利用可能なデータはほとんどない。

目的
感染性下痢が疑われる患者の管理に関する、イングランド全域の感染制御担当者および微生物学検査担当者の現行の業務について述べること。

方法
イングランドの病院に対して、上述した現行の検査業務に関する 3 種類の質問票への記入を依頼した。質問票の作成にあたっては、オックスフォード大学病院グループの現行の業務を参考にした。

結果
41%の病院が、少なくとも 1 種類の質問票に回答した。職員の業務時間の多くの割合が、感染性下痢が疑われる患者の管理にあてられていた。職員の研修状況は全般的に良好であったが、文書化された方針の遵守率は 80%のみであった。清掃および隔離の方針は病院によってばらつきがあったことから、これらの方針はエビデンスに基づいていない、またはエビデンスの基盤が脆弱であることが示唆された。アウトブレイクの定義、管理、およびコホーティング方針については、一致度が高かった。便検査の実施の決定は主として患者特性に基づいて行われていたが、分離株のタイピングの施行頻度は高くなかった(クロストリジウム・ディフィシル[Clostridium difficile]感染症の検査を除く)。患者の管理に関連する業務上の複数の問題点が特定されるとともに、広範なゲノム診断検査には明確な要望があることが明らかになった。

結論
感染性下痢が疑われる患者の管理は、イングランドでは大きな負担となっている。上述のような検査業務の進展には、重要な臨床的・経済的影響があると考えられる。

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監訳者コメント
英国における感染性のある下痢患者のマネージメントに関するアンケート調査をまとめた論文である。本調査は下痢患者における遺伝子検査の有用性を検討することが主目的であったが、その他に感染対策や治療においても病院間でばらつきがみられた、ということであった。具体的な治療内容や隔離方法なども調査されており、興味深い。

マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法を用いた大腸菌(Escherichia coli)シークエンス型 131 の検出:感染制御方針にとっての意義は何か?

Detection of Escherichia coli sequence type 131 by matrix-assisted laser desorption ionization time-of-flight mass spectrometry: implications for infection control policies?

J. Lafolie*, M. Sauget, N. Cabrolier, D. Hocquet, X. Bertrand
*CHU Besançon, France

Journal of Hospital Infection (2015) 90, 208-212


背景
シークエンス型 131(ST131)は、腸管外病原性大腸菌(Escherichia coli)の優勢な系統であり、基質特異性拡張型 β-ラクタマーゼ(ESBL)産生大腸菌の世界中への拡散に重要な役割を果たしている。ST131 によるパンデミックは、主として高度に適応した単一のサブクローン H30-Rx のクローン性増殖の結果である。このサブクローンは、病院内で獲得される頻度が他の ESBL 産生大腸菌クローンよりも高い。

目的
マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)を用いて、感染制御を目的とした ST131 の同定のための迅速な方法を開発すること。

方法
大腸菌分離株 109 株(ST131 分離株 50 株を含む)のマススペクトルプロファイルから、ST131 のピークバイオマーカーを特定した。

結果
蛋白質の抽出を行った場合と行わない場合のいずれも、得られたマススペクトルプロファイルからモデルを用いて ST131 分離株を正確に同定することができた。

結論
MALDI-TOF MS を用いた ST131 分離株の迅速な同定は、検査室で容易に実施可能であり、拡散しやすい多剤耐性大腸菌を保菌する患者を対象とした感染制御策の標的を定めるうえで有用であると考えられる。

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監訳者コメント
ST131 に分類される大腸菌は薬剤耐性率が高く、日本においても分離頻度が高い。ST131 かどうか知るためには、MLST(multi locus sequence typing)と呼ばれる時間とお金を要する遺伝子検査を行わなければならないが、本論文はより簡単・短時間・低コストで行うことのできる質量分析(MALDI-TOF MS)を用いて ST131 かどうかを調べることができたとしている。ただし、実際には ST131 だからといって感染対策を変えたほうがよいかどうかは不明であり、検査技術の進歩に感染対策の実務が追いついていないのが現状である。

関節全置換術施行時の手術室の換気システムと微生物空気汚染:GISIO-ISChIA 試験の結果

Operating theatre ventilation systems and microbial air contamination in total joint replacement surgery: results of the GISIO-ISChIA study

A. Agodi*, F. Auxilia, M. Barchitta, M.L. Cristina, D. D’Alessandro, I. Mura, M. Nobile, C. Pasquarella on behalf of the Italian Study Group of Hospital Hygiene (GISIO)
*University of Catania, Catania, Italy

Journal of Hospital Infection (2015) 90, 213-219


背景
最近の研究から、人工股関節植込み手術による手術部位感染症(SSI)の発生率は、一方向流換気を使用した場合のほうが乱流換気と比較して高いことが示されている。しかし、これらの研究では手術室の空気中微生物の質が測定されておらず、その換気システムの推奨基準を満たしていることを前提としている。

目的
人工股関節および膝関節置換術時の手術室の空気中微生物汚染の評価を行うこと、および得られた結果を人工関節置換術時の推奨値と比較すること。

方法
一方向流型、乱流型、および混合型の換気を行っている28の手術室で空気サンプルを採取した。受動的サンプリング法によりサンプルを収集し、微生物空気汚染指標(IMA)を算出した。一部の手術室では能動的サンプリングも実施した。サンプル採取期間中に、手術室内の平均人数および平均ドア開閉回数を記録した。

結果
合計 1,228 件の待機的人工関節置換術(股関節 60.1%、膝関節 39.9%)を本研究の対象とした。手術施行中の受動的サンプリングで IMA 値 > 2 であったのは、一方向流換気の手術室 58.9%、混合換気の手術室 87.6%であった。手術施行中のサンプル採取で IMA 値 ≦ 2 であったのは、乱流換気の手術室 8.6%、手術チームが Steri-Shield Turbo Helmet を装着していた乱流換気の手術室 60%であった。IMA 値と、手術室内の人数およびドア開閉回数との間に正の相関が認められた(P < 0.001)。さらに、能動的サンプリング法と受動的サンプリング法との間にも相関が認められた(P < 0.001)。

結論
これらの結果は、一方向流システムによって、許容可能な空気中細菌数が必ず確保できるという考え方に異議を唱えるものである。

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監訳者コメント
2008 年にドイツで行われた後向き研究の結果では、従来から推奨されている一方向流換気システムを用いたほうが乱気流システムよりも人工股関節置換術における手術部位感染発生率が高かった。これ以後、様々な研究が行われているが、実際に空気中細菌数を検討した研究は少ない。本研究では一方向流システムでも 58.9%で IMA ≦ 2 を満たさなかったことが分かった。しかしそれ以外にも、手術室のドアの開閉や人の出入りなど様々な要素が空気中細菌数に大きな影響を与えていることがわかった。感染管理担当者は手術室の環境について様々な視点から検討し、なおかつ新しい研究結果にも注目しておかなければならない。

監訳者注:
微生物空気汚染指標(index of microbial air contamination):文献参照(Pasquarella C, et al. J Hosp Infect 2000;46:241)。本研究では IMA 値 ≦ 2 を推奨値としている。

医療従事者、患者、および面会者の高頻度接触表面および相互接触表面への手指接触の評価

Hand-touch contact assessment of high-touch and mutual-touch surfaces among healthcare workers, patients, and visitors

V.C.C. Cheng*, P.H. Chau, W.M. Lee, S.K.Y. Ho, D.W.Y. Lee, S.Y.C. So, S.C.Y. Wong, J.W.M. Tai, K.Y. Yuen
*Queen Mary Hospital, Hong Kong SAR, China

Journal of Hospital Infection (2015) 90, 220-225


背景
医療従事者および面会者は、患者の身体への直接接触時とは異なり、患者の環境への接触後の手指衛生実践を怠ることが多い。病院環境内の物品への接触により、病原体伝播のリスクが増加すると考えられる。

目的
患者、医療従事者、および面会者による病院環境内のあらゆる物品への手指接触回数を測定した。

方法
急性期病棟の 6 床単位の病室で診療日 33 日間にわたり、人と物品とのすべての接触エピソードを直接観察し、記録した。高頻度接触物品、ならびに医療従事者、患者、および面会者の二者または三者による接触頻度が高い相互接触物品の分析を行った。

結果
合計で、66 観察時間中に 1,107 人エピソードおよび 6,144 接触エピソード※※を観察した(1 時間あたり平均 16.8 人エピソード、93.1 接触エピソード)。高頻度接触物品の上位 10 点のうちの 8 点、すなわちベッドサイドレール、ベッドサイドテーブル、患者の身体、患者のファイル、リネン、ベッドカーテン、ベッドフレーム、およびロッカーは、医療従事者、患者、および面会者による相互接触が観察された。1 時間あたりの接触エピソードはベッドサイドレールが 13.6(平均値)で首位であり、次いでベッドサイドテーブル(1 時間たり 12.3 接触エピソード)であった。患者の身体への接触を参照基準とした場合、医師および看護師によるベッドサイドテーブル(それぞれの率比 1.741、1.427)および患者のファイル(それぞれの率比 1.358、1.324)への接触は、患者の身体への接触と比較して高頻度であり、さらに看護師はベッドサイドレール(率比 1.490)への接触も患者の身体への接触より多かった。

結論
患者の環境は、その多くに医療従事者、患者、および面会者による高頻度接触および相互接触が認められるため、院内感染伝播の連鎖の一部であると考えられる。したがって、手指衛生教育、環境消毒、およびその他のシステムの変更に際しては、高頻度接触物品および相互接触物品の重点化を図るべきである。

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監訳者コメント
本論文は、患者環境における高頻度に汚染される可能性のある場所を特定したという事実のみの報告である。手指が頻回に触れる「高頻度接触面」は、院内感染の供給源となることから、環境整備の重要性が強調されている。「厚生労働省通知『医療機関等における院内感染対策について』(平成 23 年 6 月 17 日医政指発 0617 第 1 号)」においても、「ドアノブ、ベッド柵など、医療従事者や患者が頻繁に接触する箇所については、定期的に清拭し、必要に応じてアルコール消毒等を行うこと」とされており、本論文の観察結果と一致する。しかしながら、汚染しているという事実と院内感染が広がるということの間に直接的な因果関係はなく、高頻度接触部位=微生物汚染=感染拡大の可能性、その予防策のためには環境消毒の徹底で、という短絡的な結論を出すべきではない。患者および周囲の環境は、人、特に医療従事者の手指が感染拡大に重要な役割を果たすことは周知の事実である。手洗いおよび手指消毒の遵守が、予防策のポイントとなることを再度強調したい。

監訳者注:
人エピソード(person-episode):定義は、1 つの作業(task)を実行した人数とし、例えば 2 人が 1 つの作業を共同で実行した場合は 2 人エピソードとして計数した。1 人エピソードにおいて、複数回の接触エピソードが発生し得る。
※※接触エピソード(contact-episode):定義は、1 人と 1 物品との1回の相互作用とし、手指と物品とのあらゆる程度の接触を対象とした。1 人が 1 物品と間欠的に接触した場合は、複数回の接触エピソードとして計数した。

指腹のウイルス汚染の減少:手洗いはアルコール製手指消毒薬より有効である

Reducing viral contamination from finger pads: handwashing is more effective than alcohol-based hand disinfectants

E. Tuladhar, W.C. Hazeleger, M. Koopmans, M.H. Zwietering, E. Duizer, R.R. Beumer*
*Wageningen University, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2015) 90, 226-234


背景
手指衛生は、手指を介するウイルス伝播の遮断に重要である。細菌に対するアルコール製手指消毒薬の有効性は示されているが、ウイルス伝播の減少に対する有効性は明らかではない。

目的
ヒトの腸内ウイルスおよび呼吸器系ウイルスに対するアルコール製手指消毒薬の有効性を調べること、およびノロウイルスに対するアルコール製手指消毒薬と、石けんおよび水による手洗いの有効性を比較すること。

方法
ヒトの腸内ウイルスおよび呼吸器系ウイルスに対するプロパノール製およびエタノール製手指消毒薬各 1 製品の有効性を担体試験により調べた。ノロウイルス GI.4、GII.4、および MNV1 に対するアルコール製手指消毒薬と、石けんおよび水による手洗いの有効性をフィンガーパッド試験により調べた。

結果
アルコール製手指消毒薬により、ロタウイルスおよびインフルエンザウイルス A 型の感染性は 30 秒以内に完全に消失し、ポリオウイルス Sabin 1 型、アデノウイルス 5 型、パレコウイルス 1 型、および MNV1 の感染性は 3 分以内に < 3 log10 低下した。30 秒間の石けんおよび水による手洗いによる MNV1 の感染性の低下(> 3.0 ± 0.4 log10)は、手指のアルコール処理(2.8 ± 1.5 log10)と比較して有意に大きかった。石けんおよび水による 30 秒間の洗浄により、すべての指腹から MNV1(> 5 log10)、ノロウイルス GI.4(> 6 log10)、および GII.4(4 log10)のゲノムコピーが完全に消失した。プロパノール製手指消毒薬による手指の処理では完全消失は認められず、PCR 単位でみたゲノムコピー数の減少は、ノロウイルス GI.4 で > 2.6 log10、GII.4 で > 3.3 log10、および MNV1 で > 1.2 log10 であった。

結論
手指からノロウイルスを除去するには、石けんおよび水による手洗いのほうがアルコール製手指消毒薬を使用するよりも優れている。

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監訳者コメント
本論文は、①エンベロープのあるウイルス(インフルエンザウイルス)には、アルコール消毒が効果的であるが、②エンベロープのないアデノウイルスおよびエンテロウイルス属ウイルス等(ロタウイルスを除く、マウスノロウイルス、ポリオウイルス、パレコウイルスポリオ)ではアルコールの効果は不確実である、③ヒトのノロウイルスには石けんと流水による手洗い(ここでは指先の手洗い)が物理的除去という点ではるかに効果的である、ことを確認した論文である。特にアルコールのノロウイルスへの効果は、ノロウイルスが培養できないため、保存されていた患者の便を本論文では使用しており、実際の効果を見ている点で説得力がある。

医療従事者による感染経路別の感染制御・予防策の意思決定はガイダンスサマリーカードにより改善する

Healthcare workers’ decision-making about transmission-based infection control precautions is improved by a guidance summary card

C.D. Russell*, I. Young, V. Leung, K. Morris
*Victoria Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2015) 90, 235-239


背景
感染経路別予防策は、病原体伝播の遮断を目的として策定された感染制御策である。その成功は、感染症の可能性がある患者の早期発見と、その後の適切な感染経路別予防策の実施にかかっている。医療従事者に感染経路別予防策の実施を促すための介入について、評価を行った文献は見当たらない。

目的
感染経路別予防策ガイダンスサマリーカードが、感染経路別予防策の適切な実施に関する医療従事者の意思決定に及ぼす影響を評価すること。

方法
感染経路別予防策実施に関する医療従事者の意思決定能力を評価するために、前向きの監査を実施した。施設の感染経路別予防策ガイドラインを要約・記載した、感染症や特定の微生物を対象とした感染経路別予防策を決定および実施するためのガイダンスカードを、初回の監査期間後に職員に配布した。監査サイクルの終了後に、この介入の影響を評価した。

結果
適切な感染経路別予防策に関するベースライン時の知識は乏しかった。感染経路別予防策サマリーカードの提供と、カードを携帯している職員が下記の種々の臨床的状況で必要となる感染経路別予防策はどれであるかを正確に判定する能力との間に有意な関連がみられた。クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染(被験者合計 107 名、オッズ比[OR]27.0、95%信頼区間[CI]8.37 ~ 86.8、P < 0.0001)、ノロウイルスによる下痢および嘔吐(同 107 名、OR 94.3、95%CI 25.0 ~ 356、P < 0.0001)、インフルエンザ様疾患(同 107 名、OR 85.2、95%CI 4.94 ~ 1,470、P < 0.0001)、および外科用マスクと FFP3 マスクとの相違(同 107 名、OR 412、95%CI 23.4 ~ 7,246、P < 0.0001)。

結論
感染経路別予防策に関する医療従事者の知識は不十分である。本研究は、安価な感染経路別予防策サマリーカードは(i)診療の場での感染経路別予防策ガイダンスの利用、および(ii)感染経路別予防策の適切な実施に関する意思決定の改善にあたって、いかに効果的な手法であるかを示すものである。

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監訳者コメント
現場の医療従事者は、いかに感染対策の知識が欠如し、感染経路別対策の実施の意思決定ができていないかを認識したうえで、改善策として「予防策サマリーカード」を携行させ、現場での意思決定をより確実にすばやく実施できるようになることを示した論文である。クロストリジウム・ディフィシル感染症やノロウイルス感染症の場合にはどう対応(選択する防御具と患者配置)するか、また空気感染対策と飛沫感染対策の違い、冬季に発熱、全身倦怠と呼吸期症状を呈する患者への対応(選択する防御具、患者配置と患者搬送時の患者へのマスク着用)について質問し、カードの手渡し前後で 2 度回答させ、比較調査している。たとえば、「ノロウイルス胃腸炎で下痢嘔吐のある患者に対してどのような防御具を装着し、個室収容をすべきかどうか?」という質問に対して、きちんと回答できなかった人は、カードを渡す前後で約90%から約10%に減少したという結果である。この程度の予防策については、日本の医療従事者のほうがはるかに理解度と意思決定の程度は高いのではないかと思う。

老人病院における間歇的膀胱カテーテル法関連尿路感染症の制御

Controlling urinary tract infections associated with intermittent bladder catheterization in geriatric hospitals

R. Girard*, S. Gaujard, V. Pergay, P. Pornon, G. Martin Gaujard, C. Vieux, L. Bourguignon on behalf of the Urinary Tract Infection Control Group
*Hôpitaux de Gériatrie des Hospices Civils de Lyon, France

Journal of Hospital Infection (2015) 90, 240-247


背景
高齢患者の間歇的カテーテル法に関連する尿路感染症(UTI)の制御。

目的
地域的疫学調査により高い UTI 発生率が確認された後に、多職種からなる作業部会が是正措置を実施し、評価を行った。

方法
老人病院 6 施設で 2009 年に 1 か月間の前向き調査を実施し、リスク因子およびリスクへの曝露を補正した UTI 発生率を測定した。これらの老人病棟に勤務する医師および看護師を対象として、2010 年に業務に関する自記式質問票による調査を実施した。作業部会は 2011 年、排尿理解、膀胱容量測定、およびカテーテルドレナージの適応を改善すること、使用可能な医用器材を制限すること、ならびに処方およびトレーサビリティ手順を改善することを目的とした多面的プログラムを作成した。全施設のすべての職員に対して詳細な研修を実施した。2012 年に疫学調査を再度実施し、プログラムの効果を評価した。

結果
1,500 例を超える患者が 2009 年の調査の対象となった。院内 UTI 発生率は 4.8%であった。間歇的カテーテル法を実施した患者の感染率はカテーテル留置患者と比較して高値であったが(患者 100 例あたりの UTI 29.7 対 9.9 例、P = 0.1013)、これは文献にみられる結果とは異なるものであった。2010 年の質問票への 269 件の回答から、職員はカテーテル法が患者に感染リスクを及ぼすと考えていないこと、職員は推奨されている適応および技術に関する知識が不十分であること、および病棟によって器具が大幅に異なっていることが判明した。プログラム実施後の 2012 年に、1,500 例を超える患者を対象として再調査を行った。間歇的カテーテル法を実施した患者の UTI の頻度は、公表文献の数値まで低下した。

結論
多面的プログラムは、UTI を制御するための効果的な手法である。

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監訳者コメント
UTI を制御するための間歇的カテーテル法について、医療従事者ならびに患者本人によるベストプラクティスの実施により UTI 率が低減できることを示している。

集中治療室環境における医療用抗菌手袋の有効性の評価

Evaluation of the efficacy of antibacterial medical gloves in the ICU setting

M. Kahar Bador*, V. Rai, M.Y. Yusof, W.K. Kwong, O. Assadian
*University of Malaya, Malaysia

Journal of Hospital Infection (2015) 90, 248-252


背景
医療用手袋の不適切な使用が、微生物の伝播を促進する恐れがある。新たな戦略によって、患者や表面の汚染リスクを上昇させることなく、医療用手袋の安全性を強化することが可能であると考えられる。

目的
集中治療室環境における一般的な患者ケア後の手袋の汚染減少に関する有効性について、外表面をポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩(PHMB)でコーティングした合成抗菌性ニトリル製医療用手袋と、同一タイプの非抗菌性医療用手袋を比較すること。

方法
集中治療室の職員が、患者のケア実施時に標準的な手袋または抗菌性手袋のいずれかを装着した。4 種類の臨床行動後に、直ちに手袋上の細菌数を半定量的に測定した。

結果
対照手袋と抗菌性手袋の平均細菌数(コロニー形成単位[cfu])には有意差が認められた(手袋インプリントあたりの平均値 ± 標準偏差、60 ± 23 対 16 ± 23 cfu、P < 0.001)。4 種類の臨床行動のうち 3 種類では、抗菌性手袋の細菌汚染は対照手袋と比較して有意に少なかった(静脈内輸液処置 P = 0.011、口腔洗浄 P < 0.001、および理学療法 P < 0.001[日本語版監訳者注:原著 Table 1 には P 値はそれぞれ 0.002、0.011、および 0.002 と記載されている])。抗菌性手袋では、対照手袋と比較してリネン類の交換後の細菌汚染が少なかったが、その差は有意ではなかった(P = 0.311)。

結論
本研究で評価した臨床行動では、医療用抗菌性手袋を使用することによって、一般的な患者ケア後の細菌汚染陽性率は 57%減少した(P < 0.01)。医療用抗菌性手袋の使用は、集中治療室環境における交差汚染の減少を促進すると考えられる。

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監訳者コメント
処置内容によっては有意差がでないという結果を導き出している。結果はいずれも抗菌性手袋の細菌汚染が少ないというものであり,その臨床的な影響について具体的に評価を進めていく必要があろう。

産科病院における移住者を対象としたX線撮影を用いた選択的スクリーニングによる結核伝播予防

Preventing tuberculosis transmission at a maternity hospital by targeted screening radiography of migrants

V. Schechner*, J.B. Lessing, G. Grisaru-Soen, T. Braun, J. Abu-Hanna, Y. Carmeli, G. Aviram
*Tel Aviv University, Israel

Journal of Hospital Infection (2015) 90, 253-259


背景
イスラエルは近年、東アフリカ諸国からの多数の不法移住者の目的地となっている。国境では活動性結核の検出・治療の取り組みが行われているにもかかわらず、当施設で診断されたすべての活動性結核症例のうち、75%は不法移住者である。2012 年には当施設の産科病棟、新生児集中治療室、および小児集中治療室で、感染性を有するが外見的な症状が認められない陣痛発作中の移住者の入院後に大規模な結核曝露が発生した。その後、患者および職員の結核曝露を予防するために、全病院的なスクリーニングプログラムを実施した。

目的
本介入の当産科病院での初年度の結果を報告すること。

方法
結核の高度蔓延国からのすべての不法移住者を対象として、当産科病院入院時に胸部 X 線スクリーニングを行った。放射線科医 1 名が直ちに、その結果を「活動性肺結核の疑いあり」または「疑いなし」に分類した。胸部 X 線撮影で結核が疑われた患者に対して空気感染隔離策を実施し、さらに評価を行った。

結果
外見的な症状が認められない女性移住者 431 例に胸部 X 線スクリーニングを実施した。ほとんどは(363 例、84%)、陣痛発作中の受診であった。胸部 X 線撮影により活動性肺結核が 11 例(2.6%)で疑われ、3 例で確定診断された(スクリーニングを実施した女性の 0.7%)。胸部 X 線撮影で見逃された結核症例はなかった。患者および病院職員のいずれも、結核への曝露を受けることはなかった。

結論
高リスク女性を対象とした産科病院入院時の胸部 X 線撮影による結核の選択的スクリーニングは、結核の院内伝播予防戦略として効率が高く、有効であった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
スクリーニングを実施した女性の 0.7%、人口 10 万人あたりに換算すると 700 人という驚くべき数字がはじき出される。日本の結核罹患率(人口 10 万人対の新登録結核患者数)(16.1)は、米国(3.1)の 5.2 倍、ドイツ(4.9)の 3.3 倍、オーストラリア(5.7)の 2.8 倍であるが、この 44 倍に相当する。高リスク集団の処置の際には、呼吸器防護が欠かせなさそうだ。

エボラウイルス病:英国の若手医師の認識

Ebola virus disease: awareness among junior doctors in England

B. Fazekas*, J. Fazekas, M. Moledina, B. Fazekas, K. Karolyhazy
*Whipps Cross University Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2015) 90, 260-262


現在のエボラウイルスの蔓延は、英国に持続的な脅威をもたらしている。若手臨床医は病院で医療の最前線にあることが多いため、エボラウイルス病の臨床的特性および管理に関する彼らの認識は、時宜を得た感染制御策の実施に重大な影響を及ぼすと考えられる。このような観点から、英国の 4 病院の若手医師 119 名を対象として、エボラウイルス病の知識レベルを評価する横断研究を実施した。この集団におけるエボラウイルス病の重要な特性に関する知識は、現時点では不十分であることが示された。

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監訳者コメント
輸入例を経験した英国でも、医師の認識には当事者感覚はないのかもしれない。日本では様々なシミュレーションや議論が行われたが、その成果が改善につながってくれることを祈っている。

MRSA の接触予防策が患者満足度スコアに及ぼす影響

Effect of contact precautions for MRSA on patient satisfaction scores

D.J. Livorsi*, M.G. Kundu, B. Batteiger, A.B. Kressel
*Indiana University School of Medicine, IN, USA

Journal of Hospital Infection (2015) 90, 263-266


接触予防策が、患者の入院時の経験やケアの実施に対して有害な作用を及ぼすことがある。この症例対照研究では、MRSA のために隔離された患者 70 例と非隔離患者 139 例の患者満足度スコアを比較した。補正した解析では、両群間に患者の満足度の差はなかった。年齢および学歴が患者の満足度に影響を及ぼすことが示された。

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監訳者コメント
隔離の必要性に関する患者の理解を得ることと、隔離患者への様々な配慮があれば、患者の入院に対する満足度に大きな差は生まれないのかもしれない。

入院患者に対する fidaxomicin 治療によるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)環境汚染の減少

Reduction in Clostridium difficile environmental contamination by hospitalized patients treated with fidaxomicin

J.S. Biswas*, A. Patel, J.A. Otter, P. Wade, W. Newsholme, E. van Kleef S.D. Goldenberg
*King’s College, London and Guy’s & St Thomas’ NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2015) 90, 267-270


Fidaxomicin は殺芽胞作用を有しており、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)患者の治療に使用することによって、下痢の寛解までの時間が短縮すると考えられる。本研究では、すべての CDI 患者の治療に fidaxomicin を使用すると、C. difficile による環境汚染が減少するかどうかを調査した。メトロニダゾールおよび/またはバンコマイシンによる治療を受けた入院患者 66 例、ならびに fidaxomicin による治療を受けた入院患者 68 例の病室内の表面からサンプルを採取した。Fidaxomicin による治療を受けた患者(68 例中 25 例、36.8%)は、メトロニダゾールおよび/またはバンコマイシンによる治療を受けた患者(66 例中 38 例、57.6%)と比較して、患者の環境を汚染する割合が低かった(P = 0.02)。Fidaxomicin による治療は、C. difficile による環境汚染の減少との関連が認められた。

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監訳者コメント
メルク系列の子会社である Cubist Pharmaceuticals が欧米で発売しているクロストリジウム・ディフィシル感染症治療薬の fidaxomicin(フィダキソマイシン)は、欧米で実施された研究でクロストリジウム・ディフィシル感染症患者に対してバンコマイシンと同等かそれ以上の臨床治療効果が確認されている。国内では未導入であるが、今後の国内供給が待たれる。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.