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自宅および病院における搾乳母乳収集キット(breast pump milk collection kit)および関連製品の汚染除去:Healthcare Infection Society and Infection Prevention Societyの合同作業部会(Joint Working Group)によるガイダンス

Decontamination of breast pump milk collection kits and related items at home and in hospital: guidance from a Joint Working Group of the Healthcare Infection Society and Infection Prevention Society

E. Price*, G. Weaver, P. Hoffman, M. Jones, J. Gilks, V. O’Brien, G. Ridgway (Chair)
*Barts Health NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 213-221


緒論
搾乳母乳収集キットおよび母乳育児に関わる関連製品の汚染除去のために様々な方法が用いられている。本稿は、自宅および病院におけるこの機器の汚染除去を目的としたベストプラクティスのためのガイダンスを提供することを目的とする。本ガイダンスは、Healthcare Infection Society and Infection Prevention Society の合同作業部会により編集された。

方法
本ガイダンスは、Medline、British Nursing Index、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature、Midwifery and Infant Care における文献検索、ならびに 2002/3 年および 2006 年に英国の新生児病棟で行われた 2 つの調査の結果、ならびに 2014 年に英国感染予防学会のメンバーに対して行った調査の結果からの情報に基づいている。これらの情報源から得られた良質のエビデンスが限られていたため、ガイダンスの大部分は、作業部会でコンセンサスを得た見解に基づいた優れた実践について示している。

主要な推奨
‐搾乳母乳収集キットは異なる母親によって再使用されてはならず、使用者が変わる時には、間に必ず滅菌実施部門による滅菌を行わなければならない。
‐同じ母親が使用する場合、毎回の使用後に、洗浄剤を用いて洗った後、十分なすすぎと乾燥を行い、これが正しく実施されるならば、ほとんどの状況で許容できる汚染除去が達成される。
‐現地のリスク評価により指示される場合、ならびに当該部門の医師および感染予防制御チームの助言に基づいて、洗浄、すすぎおよび乾燥に加えて、さらなる汚染除去の予防策を用いてもよい。すすぎ水の微生物学的な質は、特に乳児および新生児病棟では重要な考慮事項である。
‐ボトル用ブラシまたは乳房/乳首用シールドを用いる場合は、1 人の母親のみの使用とすべきである。汚染除去は、搾乳母乳収集キットに用いるプロセスによるべきである。
‐新生児病棟における乳児の栄養補給以外の吸引に必要なおしゃぶりは、1 人の乳児用とすべきである。生産者がこれらのおしゃぶり製品を提供する場合は、すぐに使える状態で個々に包装すべきである。これらの製品は少なくとも 24 時間の使用後、または乳児の唾液以外で汚れた場合は直ちに廃棄すべきである。おしゃぶりは、使用前も使用中も、汚染除去の試みを行うべきではない。

結論
本ガイダンスは、医療専門家に対して、搾乳母乳収集キットの安全な汚染除去について、その使用と、両親やケア提供者などの他のグループへの伝達を支援するための、実用的な推奨事項を提供している。

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監訳者コメント
搾乳の際に使用する器具の衛生管理のガイドラインである。母乳により感染伝播する感染症もあることから、これら器具の衛生的な取り扱いは重要である。

非結核性マイコバクテリアが播種された家庭用噴霧器を殺菌するための哺乳びん用蒸気滅菌器

Baby bottle steam sterilizers for disinfecting home nebulizers inoculated with non-tuberculous mycobacteria

D. Towle*, D.A. Callan, C. Lamprea, T.S. Murray
*Yale New Haven Hospital, USA

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 222-225


環境内の水の供給源に存在する非結核性マイコバクテリアは、慢性肺疾患患者の呼吸器感染症を引き起こし得る。汚染された噴霧器は、呼吸器感染症の感染源となり得る。哺乳びん用蒸気滅菌器による処置は、細菌性病原体が播種された家庭用噴霧器を殺菌するが、この方法が非結核性マイコバクテリアの殺菌に有効かどうかは明らかでない。嚢胞性線維症患者の喀痰と混ぜた非結核性マイコバクテリアを播種した家庭用噴霧器の殺菌における、哺乳びん用蒸気滅菌器と水による念入りな洗浄との比較を行った。蒸気滅菌器による処置後に噴霧器から非結核性マイコバクテリアは回収されなかったが、水による洗浄後には生きた非結核性マイコバクテリアが増殖したことから、蒸気滅菌により非結核性マイコバクテリアを播種した家庭用噴霧器が効果的に殺菌されることが示された。

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監訳者コメント
家庭などでどのように使用された医療器具を安価で洗浄・消毒により再生処理するかどうかという観点にたっての、研究である。

新生児集中治療室で標準の感染制御法または厳格な感染制御法にしたがって採取した搾母乳中の細菌数の比較:母親のコンプライアンスが重要

Comparison of bacterial counts in expressed breast milk following standard or strict infection control regimens in neonatal intensive care units: compliance of mothers does matter

N. Haiden*, B. Pimpel, O. Assadian, C. Binder, A. Kreissl, A. Repa a, M. Thanhäuser, C.D. Roberts, A. Berger
*Medical University of Vienna, Austria

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 226-228


感染制御法 2 種(標準および厳格)のいずれかにより女性から得た搾母乳 1,466 検体中の細菌数を検討した。全体で、検体の 12%からグラム陰性菌が得られ、標準の方法(11.9%[788 個中 94 個])と厳格な方法(12.1%[678 個中 82 個])とで有意差は認められなかった(P = 0.92)。家庭で搾乳した場合、汚染された検体が有意に多かった(標準の方法 家庭/病院 17.9%対 6.1%、厳格な方法 家庭/病院 19.6%対 3.4%、P < 0.001)。搾母乳の細菌汚染は感染制御法と関連していなかったが、母乳を搾乳する場所と関連していた。母乳採取中の個人の衛生を改善する試みは価値が乏しいようである。採取および保管機器の良好な衛生が搾母乳の微生物学的な質の確保に最も重要な方法である可能性がある。

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監訳者コメント
日本でも、NICU での感染症発生、伝播はしばしば問題となる。本論文は少々結果の解釈が難しいところがあるが、それにしても、母乳の管理や調乳プロセスのリスクアセスメントを行うことは非常に有用であることを再確認させてくれた。

SARS および MERS コロナウイルスならびにインフルエンザウイルスの医療環境における伝播:乾燥表面汚染の役割の可能性★★

Transmission of SARS and MERS coronaviruses and influenza virus in healthcare settings: the possible role of dry surface contamination

J.A. Otter*, C. Donskey, S. Yezli, S. Douthwaite, S.D. Goldenberg, D.J. Weber
*Imperial College Healthcare NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 235-250


パンデミックを引き起こす可能性のあるウイルスである、H1N1、H5N1 および H5N7 インフルエンザウイルス、ならびに重症急性呼吸器症候群(SARS)/中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス(CoV)などは、最近の新興ウイルスである。SARS-CoV、MERS-CoV およびインフルエンザウイルスは、長期にわたり表面上で生存可能であり、時に数か月生存する。これらのウイルスの表面上での生存に影響する因子は、ウイルス株の変異、ウイルス価、表面の種類、懸濁する溶媒、沈着の仕方、温度と相対湿度、およびウイルスの生存を確認するための方法などである。環境サンプリングにより、現場では SARS-CoV およびインフルエンザウイルスによる汚染の同定が行われてきたが、分子的検出の頻回の使用は、必ずしも生きたウイルスの存在を示さない可能性がある。間接接触による伝播(無生物表面の汚染を含む)については、他の伝播経路、主要なものとして直接接触による伝播(表面の汚染とは関係なく)、飛沫および空気経路と比較した重要性は不明である。しかし、インフルエンザウイルスと SARS-CoV は環境内に排出され、環境表面から患者や医療従事者の手指に移行することが考えられる。新たなデータから、MERS-CoV にも同じ性質が認められることが示唆されている。手指が環境により一度汚染されると、鼻、眼または口の粘膜への自己播種が始まる可能性がある。数理モデルと動物モデル、および介入研究から、一部のシナリオでは接触伝播が最も重要な経路であることが示唆されている。感染予防および制御の意義として、自己汚染を最小限にするため、また粘膜表面と気道への播種に対して防御するための手指衛生と個人防護具の必要性、ならびに医療環境における表面の清掃および消毒などが挙げられる。

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監訳者コメント
インフルエンザウイルス、SARS コロナウイルス、MERS コロナウイルスの環境汚染に関する総説である。2015 年に韓国で発生した MERS アウトブレイクでも、環境の汚染が議論されていた。環境汚染のリスクは明らかではないものの、環境から手、手から粘膜への伝播を考えると、特に病原性の高いウイルス感染症においては、環境でのウイルスの存在は感染源となることが示唆された。

スコットランド国民保健サービス(NHS)委員会の介護施設および独立介護施設におけるノロウイルスアウトブレイク中の面会一時中止:実践の横断研究

Temporary suspension of visiting during norovirus outbreaks in NHS Boards and the independent care home sector in Scotland: a cross-sectional survey of practice

K. Currie*, E. Curran, E. Strachan, D. Bunyan, L. Price
*Glasgow Caledonian University, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 253-258


背景
ノロウイルスアウトブレイクは、患者の多大な苦痛の原因となり、保健サービス提供に悪影響を与える。アウトブレイク管理対策には、患者/スタッフの移動を規制することや面会者に感染リスクについて助言することなどがある。なかには面会一時中止を提唱する者もいる。面会一時中止の実施に影響を与える因子はこれまでに報告されていない。

目的
ノロウイルスアウトブレイク中の面会一時中止に関するスコットランドでの現在の実践を記述すること。

方法
スコットランド保健委員会(国民保健サービス[NHS])感染予防担当者(22名)と独立介護施設マネージャー(107名)の横断研究。

結果
面会一時中止の実態は、施設により様々であった。NHS の知見は以下の通りであった。86.4%が最近のノロウイルスアウトブレイクを報告しているが、36.4%のみが面会一時中止決定の指針となる基準が整っていると報告した。アウトブレイクを経験した施設のうち 57.9%のみが面会一時中止を実施した。一方、独立介護施設回答者の 77.6%は、面会一時中止基準が整っており、これまでにアウトブレイクを経験した 70.1%の施設ではすべて、通常、面会者を差し止めると報告した。NHS(81.8%)および独立介護施設(84.2%)両方の回答者の大多数が、個別のケースに例外を認めると報告した。実践にはばらつきがあるが、NHS 回答者の 75%、独立介護施設回答者の 81.8%がアウトブレイクの制御に面会一時中止が有用であることに同意した。面会一時中止の実施決定に影響する因子としては、個別のケースにおける判断、伝播に果たす面会者の役割というエビデンスに対する認識不足、面会者を迎えることは患者の権利であるという信念が含まれていた。

結論
スコットランドにおける面会一時中止の実施は施設により様々であり、基準の有無、個人の信念、専門家としての判断にばらつきがある。方針策定には、ノロウイルスの伝播における面会者の関与とサービス利用者による面会一時中止の受け入れに関するさらなる研究が求められる。

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監訳者コメント
2011 年に米国医療疫学学会(SHEA)が発出したノロウイルスによる胃腸炎のアウトブレイクの予防と管理のガイドラインでは訪問者に関する方針を策定することが推奨されているが、制限が推奨されるのは施設内の利用者の移動であり、施設外からの面会者の制限については言及されていない。ノロウイルスの持ち込み防止や、施設内での水平伝播の防止など、面会一時中止は一定の効果を有すると想定されるが、実際には患者の権利などの観点から実施が困難である、といった結果であった。わが国でも面会一時中止は多くの施設で一度は検討される感染防止策の一つと考えられるが、その有効性について検討が必要であろう。

ノロウイルスアウトブレイクの管理:どの程度のコホーティングが必要か?

Norovirus outbreak management: how much cohorting is necessary?

S. Korte*, A. Pettke, A. Kossow, A. Mellmann, S. Willems, F. Kipp
*University Hospital Muenster, Germany

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 259-262


ノロウイルスアウトブレイクを制御するために、曝露されたが症状のない患者を、曝露されていない患者および症状のある患者とは別に隔離することが広く推奨されている。隔離後、接触患者にノロウイルス感染症状が発現する頻度は系統的に検討されていない。我々は、2014 年 11 月から 2015 年 5 月の間に発生した 7 件のアウトブレイク(患者 57 例)の際の接触患者における典型的ノロウイルス症状の発現を後向きに検討した。典型的ノロウイルス症状を発現したのは接触患者 14 例中 1 例のみであり、このことは接触患者を隔離する現在の推奨に疑問を投げかけるものである。

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監訳者コメント
実際に発生したアウトブレイクをもとにした後向き研究である。サンプルサイズの問題、検査の問題、「曝露」の定義の問題など、数多くのリミテーションが考えられる。しかしこういった自施設での経験を学術的に記述し、リミテーションも明らかにしながら共有する姿勢を我々は見習うべきであろう。

銀含浸脳室ドレーン関連脳脊髄液感染:メタアナリシス

Silver-impregnated external-ventricular-drain-related cerebrospinal fluid infections: a meta-analysis

R.A. Atkinson*, L. Fikrey, A. Vail, H.C. Patel
*Manchester Academic Health Sciences Centre, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 263-272


背景
脳脊髄液感染は、脳室ドレーン留置に関連する主要な合併症である。銀含浸脳室ドレーンカテーテルの使用は神経外科センターの多くで一般的になっている。

目的
銀含浸脳室ドレーンカテーテル使用が脳脊髄液感染に及ぼす効果を評価すること。

方法
Medline、Embase、Cochrane Libraryを系統的に検索して、メタアナリシスを実施した。銀含浸脳室ドレーンカテーテルと通常の脳室ドレーンカテーテルとを比較したすべてのランダム化対照試験および非ランダム化対照試験を特定し、解析した。

結果
非ランダム化対照試験6件を対象とした。粗感染率は、通常のカテーテルが 10.8%、銀含浸カテーテルが 8.9%(統合オッズ比[OR]0.71、95%信頼区間[CI]0.46 ~ 1.08、P = 0.11)であった。微生物スペクトル解析において、銀含浸カテーテルはグラム陽性菌を原因とする脳脊髄液感染率が有意に低かった(銀含浸カテーテル群と通常のカテーテル群との比較 2.0%対 6.7%、統合 OR 0.27、95%CI 0.11 ~ 0.63、P = 0.002)。

結論
銀含浸脳室ドレーンカテーテルの抗菌効果は選択的である可能性があり、前向き対照研究でさらに評価する必要がある。

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監訳者コメント
脳室ドレーンは頭蓋内圧のコントロール目的で挿入されるが、重大な合併症に脳脊髄液の感染症がある。銀含浸脳室ドレーンカテーテル(A-EVD)は、抗菌スペクトルが広いことで知られているが、今回のメタアナリシスでは、全体の感染率減少効果は認められなかった。分離菌の約 80%を占めるグラム陽性菌と主たる起炎菌であるブドウ球菌への感染率減少効果が両者で認められたが、グラム陰性菌での A-EVD による感染率減少効果はなく、感染率は対照群と比較して高率(33%対 17%)であった。A-EVD の有用性に関しては、比較試験の質と量ともに不十分であり、A-EVD の有用性を結論づけるにはさらなる検討が必要である。

院内肺炎の診断と特徴:後向きコホート研究

Diagnosis and features of hospital-acquired pneumonia: a retrospective cohort study

C.D. Russell*, O. Koch, I.F. Laurenson, D.T. O’Shea, R. Sutherland, C.L. Mackintosh
*Western General Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 273-279


背景
院内肺炎は、入院後 48 時間以上経過してから非挿管患者に発症する放射線学的検査により確認される肺炎と定義される。経験的治療レジメンには広域スペクトル抗菌薬が用いられる。

目的
院内肺炎診断の正確性を評価し、院内肺炎患者の患者背景因子および微生物学的特徴を明らかにすること。

方法
2013 年 4 月から 2014 年 4月に英国の第 3 次病院で院内肺炎の臨床診断に対して抗菌薬の静脈内投与を受けた内科および外科の入院患者を同定した。患者背景および臨床的詳細を記録した。

結果
院内肺炎と臨床診断された成人患者計 166 例が認められた。広域スペクトル抗菌薬が処方されており、主なものはピペラシリン・タゾバクタム(57.2%)およびアモキシシリン・クラブラン酸(12.5%)であった。24.7%の患者から培養用の痰が得られた。65%の患者は、院内肺炎治療時に新たな/進行性の浸潤が放射線学的に認められたことから院内肺炎の診断基準(2005 American Thoracic Society/Infectious Diseases Society of Americaガイドライン)を満たした。放射線学的検査により確認される院内肺炎は、炎症マーカー高値および痰培養陽性と有意な関連性があった。また、手術の既往および/または気管内挿管は、放射線学的検査により確認される院内肺炎と有意な関連性が認められた。放射線学的検査により確認された院内肺炎患者の痰検体 35件中 17 件から病原菌が同定された。これらの菌はグラム陰性桿菌(11例)または黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(6例)であった。グラム陰性桿菌はアモキシシリン・クラブラン酸耐性であるがシプロフロキサシン、ピペラシリン・タゾバクタムおよびメロペネムに感受性である傾向を示した。黄色ブドウ球菌分離株 6 株中 5 株はメチシリン感受性であり、いずれの株もドキシサイクリン感受性であった。

結論
病棟レベルの病院業務において、「院内肺炎」は、客観的放射線学的基準を適用した場合、35%の症例で使われ過ぎる診断であり、不正確である可能性がある。放射線学的検査により確認される院内肺炎は、明確な臨床的および微生物学的な徴候を示す。予防的介入の標的となる可能性のあるリスク因子候補が同定された。

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監訳者コメント
院内肺炎と診断された 3分の1 で放射線学的に肺炎像が認めれていないことは、肺炎以外の感染症あるいは非感染性イベントの可能性と同時に、胸部 XP では適確に肺炎像が捉えられていない可能性も考慮すべきある。CT 上で肺炎と診断された患者の 43.5%にしか、胸部 XP で浸潤影が認められなかったとの報告もある(Am J Emerg Med 2013;31:401-405.)。また、MRSA や耐性傾向のグラム陰性菌を考えると、CVA/AMPC による治療は失敗の可能性があるが、本論文では治療効果については記載されておらず不明である。同定された院内肺炎のリスク因子は外科手術後と気管内挿管であり、これらの患者に対しては予防的介入としてクロルヘキシジン・グルコン酸塩による口腔ケアを考慮する必要があろう。

救急部における末梢静脈カテーテルの挿入に関連した静脈炎の予測因子としての看護ケア:前向き研究の結果

Nursing care as a predictor of phlebitis related to insertion of a peripheral venous cannula in emergency departments: findings from a prospective study

A. Palese*, E. Ambrosi, F. Fabris, A. Guarnier, P. Barelli, P. Zambiasi, E. Allegrini, L. Bazoli, P. Casson, M. Marin, M. Padovan, M. Picogna, P. Taddia, D. Salmaso, P. Chiari, O. Marognolli, F. Canzan, L. Saiani on behalf of the ESAMED Group
*Udine University, Italy

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 280-286


背景
現時点で、救急部における末梢静脈カテーテル(PVC)の挿入に関連した静脈炎の発生率を調査した研究はほとんどない。

目的
救急部で留置された PVC の挿入部のその後の経過や、PVC 関連静脈炎の発生率・重症度を調査し、患者、PVC、看護ケア因子の関連を明らかにすること。

方法
救急部で緊急性の高い症例として治療を受けた後、病棟に 24 時間以上滞在した患者 1,262 例を対象に、前向き研究を実施した。最初に挿入された PVC を抜去まで毎日観察し、Visual Infusion Phlebitis Scale を用いて静脈炎を評価した。患者、PVC、看護ケア、病院組織に関して変数を設けてデータを収集し、イベント発生までの時間事象分析を実施した。

結果
PVC 関連静脈炎の有病率(ある一点での静脈炎の罹患率)は 31%であった。累積発生率は、挿入後 3 日の時点でほぼ 20%(391 例中 78 例)であり、挿入後 5 日の時点で 50%超(391 例中 231 例)に達した。専門的な病院での滞在(ハザード比[HR]0.583、95%信頼区間[CI]0.366 ~ 0.928)、およびより多くの看護ケアを受けること(HR 0.988、95%CI 0.983 ~ 0.993)は、すべての時点で、PVC関連静脈炎に対して予防的にはたらいていた。一方で看護ケアを実施しないと、PVC関連静脈炎の新規発生率は約 4%(HR 1.038、 95%CI 1.001 ~ 1.077)上昇した。

結論
PVC 挿入後の患者に対する看護ケアの実施の有無、および看護ケアに関する専門知識の有無は、静脈炎発生率に影響を与えた。また、より多くの看護ケアを受けること、および専門的な病院での滞在は、PVC 関連静脈炎のリスク低下と関連した。これらは静脈炎の発生に関して、修正可能なリスクファクターであり、病院と病棟の双方のレベルで介入可能な領域であることを示唆している。

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監訳者コメント
本研究では、PVC 挿入後の患者へのケアによって、静脈炎の発生リスクを低下させる程度や、介入できる因子について明らかにすることができた。今後の詳細な検討での成績や、具体的な事例での介入内容と減少率について報告が待たれるところである。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)の検出における市販の発色酵素基質培地の評価

Evaluation of commercial chromogenic media for the detection of meticillin-resistant Staphylococcus aureus

G.I. Brennan*, C. Herra, D.C. Coleman, B. O’Connell, A.C. Shore
*St. James’s Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 287-292


背景
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)を一段階で分離および同定することが可能な選択発色酵素基質培地が広く使用されている。しかし、MRSA の疫学が変化していることから、これらの発色酵素基質培地の適切性を調査する必要性がある。

目的
異なる株種の検出について、Colorex MRSA、MRSA Select II、ChromID MRSA、および MRSA Brilliance 2 の発色酵素基質培地を評価すること。

方法
mecC 遺伝子を保有する株、様々な程度のメチシリン耐性を表現する株、および患者検体から培養された分離株を含む、多様な黄色ブドウ球菌からなる収集株を解析した。

結果
SCCmec(ブドウ球菌カセット染色体)のタイプがII、IV、V、XIの株のいずれにおいても、MRSA Select II、Colorex MRSA、ChromID では、1.5 × 101 cfu/mLの濃度で発育がみられた。Brilliance 2では、mecC の MRSA は1.5 × 101 cfu/mL で発育がみられたが、mecA のMRSA 3株は高い濃度(1.5 × 104 cfu/mL)でしか発育みられなかった。4 種類の培地はすべて、MRSA に対し高い検出感度(99%以上)を示したが、幅広いレンジでメチシリン感性を示す黄色ブドウ球菌(meticillin-sensitive S. aureus;MSSA)の分離株も含めて調べると、特異度は低下した(85 ~ 73%)。さらにmec 陰性でオキサシリン耐性が境界値を示す黄色ブドウ球菌(mec-negative borderline oxacillin-resistant S. aureus:BORSA)に対しては、すべての発色酵素基質培地で偽陽性率が高かった(約 50%)。

結論
MSSA およびBORSAの一部の株では、偽陽性が得られる場合があるが、これらの培地の高い感度、ならびに調査した MRSA のほぼすべて(オキサシリン感性株および mecC 陽性株を含む)を発育させる性能は、MRSA 検出における発色酵素基質培地の価値を裏付けるものである。

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監訳者コメント
MRSA は多様性に富み、耐性遺伝子も複数存在するにもかかわらず、今回の検討では発色酵素基質培地はおおむね良好な成績を示した。日常の微生物検査に本培地をうまく組み込んでいくことによって、MRSA 感染症の早期診断と保菌の早期検出が可能になり、治療効果と感染対策の両方において向上が期待できると思われる。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.