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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

2010 年以降に報告された手指衛生に関する臨床試験:システマティックレビュー

Hand hygiene-related clinical trials reported since 2010: a systematic review

L. Kingston*, N.H. O’Connell, C.P. Dunne
*University of Limerick, Ireland

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 309-320


現在、医療従事者の手指衛生遵守を改善することによって医療関連感染を減少させることが極めて重要視されている。また、医療従事者の手指衛生遵守の不良が一般のメディアに認識され、議論されることが増えている。我々の目的は、ピアレビュー後に発表された医療従事者の手指衛生遵守に焦点を当てた研究、特に臨床試験の系統的調査の結果を報告することであった。世界保健機関(WHO)の手指衛生ガイドラインが発表された後の 2009 年 12 月から、PubMed および CINAHL に手指衛生遵守のインデックスが付けられた 2014 年 2 月までに発表された文献を検索した。最初に検索された 57 報の適合性および方法論を検討後、最終的に 16 の臨床試験をレビューの対象とした。大部分は欧米で実施された研究であった。主な研究対象は集中治療室であり、続いて高齢者治療施設であった。最も多く研究対象とされた医療従事者カテゴリーは看護師であり、続いて看護補助者および医師であった。手指衛生遵守報告の分析単位は、「手指衛生のタイミング」であった。4 つの研究は WHO ガイドラインに記載された「私の手指衛生の 5 つのタイミング」の枠組みを採用し、他の論文はデザインの異なる独自の集学的戦略に焦点を当てた。以上より、手指衛生改善の介入戦略に集学的な方法を採用することは、その方法が WHO の枠組みに準拠するか、他の検討された集学的枠組みをに準拠するかによらず手指衛生遵守の中程度の改善をもたらすと考えられる。

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監訳者コメント
WHOの5つのタイミングの与えたインパクトは相当大きく、手指衛生の評価を標準化するためには相当な功績がある。一方で、5つのタイミングを覚えるのには手間取るためより平易な言葉で簡素化しかつ実施率の高まるような仕掛けが必要であろう。

感染制御における利用者の果たす役割を明確にする

Defining the user role in infection control

R. Ahmad*, M. Iwami, E. Castro-Sánchez, F. Husson, K. Taiyari, W. Zingg, A. Holmes
*Imperial College London, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 321-327


背景
健康政策イニシアチブは、安全性の改善、情報の入手可能性の提唱、迅速診断検査時の関与における患者および一般市民の役割が重要であると常に考えている。感染制御については、病院実績に関して公表されている大量の情報を利用者がどのように解釈しているかの理解は限られており、医療従事者に手指衛生行動の遵守喚起を含む戦略を支持するエビデンスはほとんどない。

目的
患者の安全性における自身の役割を、特に感染制御において、利用者がどのようにとらえているかを理解すること。

方法
参加者 41 人(最近、英国・ロンドンで入院による病院治療を経験した介護者 15人および患者 26 例)から、集団面接、自記式質問票、シナリオ評価により、利用者としての意見を収集し、分析を行った。さらに、定性的解析の評価者間信頼性を示すためにプロジェクトの患者代表が研究事象の直接閲覧を行った。

結果
複数の病院選択肢があり受診する場合、利用者は全身の安全性に関連する失敗のエビデンスを考慮し、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)発生率が高い(警告を受けた)病院を無視することはなかった。さらに、利用者は、利用者満足に加えて、職場内の従事者満足を考慮した。受けた治療に最も不満足な人が医療従事者に「手を洗いましたか?」と尋ねる可能性は低かった。

結論
今回の比較的情報に通じた利用者標本からの意見の詳細な定性的解析は、「何が重要か」を示しており、改善イニシアチブの新しい方法を提供する。利用者が指標を全体的な視点でとらえていると思われることは心強い。患者満足の意義を理解すると同時に、医療従事者満足の側面を改善する戦略が必要である。

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監訳者コメント
医療者は「顧客満足度」の観点から患者に対する医療提供のあり方を見直す必要がある。それは医療が高度であろうとなかろうと関係ない。患者が消費者の立場で医療機関を監視することで、病院の提供するサービスのあり方も大きく改善する。

手指衛生遵守:ドイツの全国的手指衛生キャンペーンからの参考データ

Compliance with hand hygiene: reference data from the national hand hygiene campaign in Germany

W. Wetzker*, K. Bunte-Schönberger, J. Walter, G. Pilarski, P. Gastmeier, Ch. Reichardt
*Charité - University Medicine Berlin, Germany

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 328-331


手指衛生は医療関連感染予防の重要な評価指標である。全国的に手指衛生を推進するために、2008 年 1 月、世界保健機関(WHO)の「Clean Care is Safer Care(清潔なケアはより安全なケア)」イニシアチブに基づき、ドイツのキャンペーン「Aktion Saubere Hände(手指衛生行動)」が開始された。本稿では、更新された観察ツールを用いて記録した手指衛生遵守に関する 1 年間の収集データから最初の結果を報告する。データは、109 の参加病院が 2014 年 1 月 1 日から 12 月 31 日に 576 病棟から収集し、提出を受けたものに基づいた。全体の遵守率の中央値は 73%、範囲は 55%(10 パーセンタイル値)~ 89%(90 パーセンタイル値)であった。結果は、成人の集中治療室(ICU)と成人以外の ICU で差はほとんどみられず、新生児用 ICU と小児の非 ICU は、成人の治療室より高い遵守率を維持していた。看護師の成績は医師より良好であり、手指衛生成績の総合的な率は、患者と接触する前より接触した後の方が有意に高かった。

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監訳者コメント
全体の遵守率が 73%ととてもよい結果、という印象であった。日本では、同様の報告としては、崎浜らの調査で処置後の遵守率が 32.7%となっていた J Hosp Med. 2016 Mar;11(3):199-205 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26427035)。手指衛生遵守率は、ホーソン効果などもあり、観察の方法で大きく異なってくるが、それにしても、どのような職員教育を行っているのかが知りたい。

接触予防策改善における CareCentre® の効果:ランダム化シミュレーションおよび臨床評価

Effectiveness of the CareCentre® at improving contact precautions: randomized simulation and clinical evaluations

O. Anderson*, G.B. Hanna
*Imperial College London, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 332-336


背景
ベッドサイド衛生は、医療関連感染率を低下させるために重要である。CareCentre® は、擦式アルコール製剤、手袋、エプロン、廃棄物入れ、人間工学に基づいた筆記できる台を備えた病院ベッド端のテーブルである。

目的
ベッドサイド衛生の改善における CareCentre® の効果を明らかにすること。

方法
ランダム化クロスオーバーシミュレーションの評価において、参加者 20 名が通常のベッドサイドでの作業を実施するために、CareCentre と標準条件を用いた。今回のランダム化クロスオーバー臨床評価では、急性期成人患者用病室 9 組でCareCentre と標準条件をそれぞれ 1 週間使用した。研究者らは、世界保健機関(WHO)の「私の手指衛生の 5 つのタイミング」遵守、ベッドサイドでの手袋およびエプロン着用と廃棄を評価した。

結果
手指衛生ガイドラインの遵守は、シミュレーションにおいて 48%から 67%に(P = 0.04)、臨床評価において 14%から 40%に(P < 0.001)改善した。ベッドサイドでの手袋着用と廃棄は、シミュレーションにおいて19%から79%に(P < 0.001)、臨床評価において 30%から 65%に(P = 0.014)改善した。ベッドサイドでのエプロン着用と廃棄は、シミュレーションにおいて 14%から 78%に(P < 0.001)、臨床評価において 10%から 53%に(P = 0.180)改善した。

結論
CareCentre は、ベッドサイド衛生を改善した。また、集学的戦略の一環として医療関連感染率の低下に有用である可能性がある。

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監訳者コメント
筆者らは CareCentre というオールインワンのサイドデスクをデザインし、その効果を調べた。とても興味深い取り組みであるが、論文中に掲載されている写真では、 個人防護装備(PPE)とゴミ箱が同じ高さで、膝あたりの高さに配置されており、汚染されるのでは、と懸念を感じた。

新技術がトイレ使用後の医療従事者の手指衛生成績を劇的に改善する

New technology markedly improves hand-hygiene performance among healthcare workers after restroom visits

H. Møller-Sørensen*, A. Korshin, T. Mogensen, N. Høiby
*Copenhagen University Hospital, Denmark

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 337-339


医療従事者の手指に存在する病原体が患者に及ぼすリスクは高いが、医療従事者の手指衛生遵守率は低い。我々は、医療従事者の手指衛生遵守を改善するために、新しい手指衛生剤とりわけ技術の前向き介入試験をデザインした。トイレ使用後に使用者に手指衛生遵守を思い出させる電子機器の導入を含む介入の前(ベースライン)と後にそれぞれ 3 か月間、手指衛生遵守を観察した。トイレ使用後の医療従事者の手指衛生成績における遵守率は 66%から介入後には 91%に上昇した。

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監訳者コメント
Sanalert V1 という監視装置付きディスペンサーの活用で劇的に手指衛生遵守率が向上したという報告である。こうしたシステムは既に 30 社以上から登場しているが,コストやプライバシーが行く手を阻む場合が多い。

手指消毒においてオゾン水はプロパノールベースの擦式手指消毒製剤に劣る

Ozonated water is inferior to propanol-based hand rubs for disinfecting hands

C. Appelgrein*, G. Hosgood, A.L. Dunn, O. Schaaf
*Murdoch University, Australia

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 340-343


オゾンは酸化作用を持つ強力な殺菌剤であり、広域スペクトルの抗菌特性を有する。本研究の目的は、手指消毒におけるオゾンとプロパノールベースの擦式手指消毒製剤の有効性を比較することであった。in vivo クロスオーバー試験(prEN 12791)に被験者 20 例を登録した。被験者は、参照製剤(60%プロパン -1- オール)またはオゾン(4 ppm)で手指洗浄を行った。洗浄後の細菌数を、片手(即時効果)と 3 時間手袋を装着したもう片方の手(遅延効果)で計数した。本研究から、手指消毒においてオゾンは 60%プロパン -1- オール手指消毒製剤に劣ることが示された。

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患者安全の風土と標準予防策遵守との関連:文献のシステマティックレビュー

Relationship between patient safety climate and standard precaution adherence: a systematic review of the literature

A.J. Hessels*, E.L. Larson
*Columbia University, USA

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 349-362


標準予防策の遵守は、医療関連感染症(HCAI)予防と医療従事者の安全の中核的要素であるにもかかわらず、全般的に不十分である。近年得られたエビデンスは、患者安全の風土の因子が医療従事者の行動を改善する可能性があることを示唆している。我々の目的は、急性期病院における患者安全の風土と医療従事者による標準予防策の遵守との関連を検討することであった。Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analysis に従って、システマティックレビューを実施した。3 つの電子データベースを用いて、2000 年から 2014 年に英文で発表された、または利用可能な文献の包括的検索を実施した。特定された 888 報中 7 報の文献を最終的に本論説の対象とした。2 名の独立した評価者が、検証済みの品質ツールを用いて研究の質を評価した。これらの 7 報には、最高 10 点中 7 ~ 10 点の範囲の品質スコアが付与された。5 報は標準予防策のすべての側面を評価し、2 報は針刺しと鋭利物取り扱いのみを評価したものであった。3 報は副次的評価項目である医療従事者曝露を扱い、HCAI を扱ったものはなかった。全文献が、より良好な患者安全の風土と医療従事者による標準予防策のより良好な遵守との統計学的に有意な関連を報告し、検証済みの患者安全の風土の測定項目や管理部門による支援およびリーダーシップの測定項目を用いていた。少数ではあるものの、研究の質は高く、患者安全の風土と標準予防策の遵守とに相関が認められることが確認され、患者安全の風土を改善する努力は HCAI 予防と医療従事者安全の中核的要素の遵守を強化する可能性があることを示唆していた。さらに質の高い研究がより一層明確に必要とされている。

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監訳者コメント
感染管理はより大きな枠組みでいえば、患者安全の一部である。また患者安全は病院文化の一部である。そういう意味では患者安全の風土と標準予防策の遵守率に相関が見られるのは当然であり、感染管理担当者は医療安全、あるいは病院文化というより大きな枠組みや視点で考え、行動することが必要である。このように当然と考えられることを研究結果として示した点で、本論文は価値が高く、感染管理担当者は感染管理充実のために、患者安全風土、ひいては病院文化の醸成が必要であることを訴えていかねばならない。

2006年から2013年の韓国の集中治療室におけるデバイス関連感染症起因病原体の分布および抗菌薬感受性の傾向:Korean Nosocomial Infections Surveillance System(KONIS)の結果

Trends in the distribution and antimicrobial susceptibility of causative pathogens of device-associated infection in Korean intensive care units from 2006 to 2013: results from the Korean Nosocomial Infections Surveillance System (KONIS)

J.Y. Choi*, Y.G. Kwak, H. Yoo, S.-O. Lee, H.B. Kim, S.H. Han, H.J. Choi, H.Y. Kim, S.R. Kim, T.H. Kim, H. Lee, H.K. Chun, J.-S. Kim, B.W. Eun, D.W. Kim, H.-S. Koo, E.-H. Cho, K. Lee, Korean Nosocomial Infections Surveillance System (KONIS)
*Yonsei University College of Medicine, South Korea

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 363-371


背景
すべての国にとって、医療関連感染起因病原体に関する情報は、適切な院内感染防止・対処戦略を立てるうえで重要である。

目的
2006 年 7 月から 2014 年 6 月までの韓国の集中治療室(ICU)におけるデバイス関連感染症起因病原体の頻度および抗菌薬耐性の変化を評価すること。

方法
ICUにおける3種類の主要なデバイス関連感染症を含む、Korean Nosocomial Infections Surveillance System(KONIS)データを解析した。

結果
グラム陰性菌の頻度は、中心ライン関連血流感染(CLABSI)および人工呼吸器関連肺炎(VAP)で緩やかに増加した(CLABSI で 24.6%から 32.6%、VAP で 52.8%から 73.5%)。一方、グラム陽性菌の頻度は、CLABSI で 58.6%から 49.2%に、VAP で 44.3%から 23.8%に減少した(P < 0.001)。CLABSI では、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が調査期間を通してもっとも多くみられた起因病原体であったが、VAP では、2010 年の時点でアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)に入れ替わった。カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)は、カテーテル関連尿路感染でもっとも多くみられた病原体であった。黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性率は 95%から 90.2%に低下し(P < 0.001)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)と大腸菌(Escherichia coli)のアミカシン耐性率はそれぞれ43.8%から 14.7%、15.0%から 1.8%に低下した(P < 0.001)が、アシネトバクター・バウマニーのイミペネム耐性率は 52.9%から 89.8%に上昇した(P < 0.001)。

結論
CLABSI および VAP では、院内感染起因病原体としてのグラム陰性菌の割合が上昇した。韓国の ICU ではデバイス関連感染症を引き起こすアシネトバクター・バウマニーの発生率が急速に上昇し、これらの菌のカルバペネム耐性率も同様に上昇していた。

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監訳者コメント
韓国における医療関連感染の原因菌の薬剤耐性に関する論文である。黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性率が 90.2%(それでも減ったというのだから!)、アシネトバクターのイミペネム耐性率が 89.9%(!)といずれも非常に高率であることに驚かされる。エボラ、ジカ熱、MERS など海外で流行している新興再興感染症は様々であるが、海外の医療施設に入所・入院していた患者では、あらためて耐性菌感染症に注意が必要であることを再認識させてくれる論文である。

HIV 職業曝露後予防内服におけるエファビレンツによる有意な治療中断

Significant intolerability of efavirenz in HIV occupational postexposure prophylaxis

S. Wiboonchutikul*, V. Thientong, P. Suttha, B. Kowadisaiburana, W. Manosuthi
*Ministry of Public Health, Thailand

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 372-377


背景
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する職業曝露後予防内服を完了することは、予防治療の成功にとって重要である。

目的
4 週間の HIV に対する曝露後予防内服完了の失敗に関連する因子を明らかにすること。

方法
1996 年 3 月から 2014 年 6 月にタイの Bamrasnaradura Infectious Diseases Institute において、患者の血液または体液に偶然曝露された医療従事者を対象に、後向き研究を実施した。ロジスティック回帰分析を用いて、4 週間のHIV に対する曝露後予防内服完了の失敗に関連する因子を明らかにした。

結果
全体で曝露エピソード 225 件が報告された。医療従事者の平均年齢は 33.1 歳(標準偏差 9.9)で、189 名(84%)が女性であった。看護師(43%)で曝露された頻度が最も高かった。感染源の HIV の状態はエピソード 149 件(66%)で明らかにされ、これらのうち 101 件(68%)は陽性であった。曝露 225 件中、曝露後予防内服は症例 155 例(69%)で処方され、26 例で意図的に中止されていた。医療従事者 129 名中 91 名(71%)は、4 週間のレジメンを完了していた。多変量解析から、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬2 剤 + エファビレンツのレジメンが、4 週間の治療コースの不完了に関連した唯一の有意な因子であった(オッズ比 37.8、95%信頼区間 4.2 ~ 342.3、P < 0.01)。年齢、性別、スタッフであること、感染源の HIV 状態、他の曝露後予防内服レジメンなどの他の因子は、4 週間の治療コースの不完了に関連していなかった(P > 0.05)。HIV セロコンバージョンが記録された医療従事者はいなかった。

結論
2 剤ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬 + エファビレンツのレジメンは、職業曝露後予防内服の早期中止と有意に関連していた。このレジメンは、職業曝露後の HIV 予防治療として用いるべきではない。

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監訳者コメント
本論文はタイ国における HIV 予防投与に関するものである。129 例のさまざまなレジメンによる予防投与が実施されていたが、後方視的にはエファビレンツ(EFV)による治療中断が有意に多く、11 例の予防投与に対して完遂できたのはわずか 1 例であり、唯一の治療中断の危険因子であった。EFV の副作用として、めまい、集中力障害、傾眠などの精神神経症状が報告されている。曝露による発症は HBV や HCV に比し低いとはいえ、曝露後発症予防のための内服を 28 日間継続し完了することは重要である。しかしながら、抗 HIV薬の投与による副作用の発現頻度は、HIV 感染患者に較べ HIV 非感染者で 6 倍、治療中断は 8 倍との報告があり、HIV 非感染者での予防投与時には副作用の少ない薬剤が選択される必要がある。現在先進国においては比較的副作用が少なく、服用回数や食の影響を受けないRAL(アイセントレス)+ TDF/FTC(ツルバダ)が推奨され、日本でも同様の対応となっており、EFV は選択肢には入っていない。

ノロウイルスをモデルウイルスとした、環境表面からのヒトウイルスのサンプル採取および検出方法のテストとバリデーション

Test and validation of methods to sample and detect human virus from environmental surfaces using norovirus as a model virus

T. Ibfelt*, T. Frandsen, A. Permin, L.P. Andersen, A.C. Schultz
*Copenhagen University Hospital (Rigshospitalet), Denmark

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 378-384


背景
ウイルスはヒト感染症の原因として大きな割合を占め、特に小児および成人の胃腸炎および呼吸器感染症の原因となる。環境表面を介したヒト‐ヒト間の間接伝播は、感染症に関与している可能性があるが、これについて調査する方法はこれまでにあまりない。

目的
環境表面上から複数のヒト病原性ウイルスを検出する効率的かつ信頼できる方法のバリデーションおよびテストを行うこと。

方法
本研究は 2 つのパートに分けて行った。パート A では 3 種類のスワブ(綿製、発泡綿製、ポリエステルヘッド)と 2 種類の溶出法(直接溶解、溶解前のアルカリ化グリシン緩衝液への含浸)から成る 6 つの組合せを、人工的に汚染した表面からのヒトノロウイルス GII.7 およびメンゴウイルスの効率的な回収についてテストした。パート B では、パート A で見いだされた最良の方法を市販のマルチプレックス・リアルタイム定量的 PCR 検出アッセイを組み合わせて用い、ノロウイルス GI.1 および GII.3 に対する検出限界を確定した。

結果
ポリエステル製スワブと直接溶解の組合せにより、ノロウイルス GI.1 および GII.3 が、それぞれ 100 および 10 ゲノムコピー/cm2 まで回収できた。この方法により、ノロウイルスとメンゴウイルスの両方について有意に最も効率の高い回収結果が得られたが、他の方法間では増幅効率に差はみられなかった。

結論
以上の結果から、環境表面上における低密度のウイルスの検出が可能であることが示された。したがって我々は、ポリエステル製スワブ後の直接溶解と、マルチプレックス 定量的PCR 検出アッセイとの組合せが、環境表面における複数の呼吸器ウイルスおよび消化管ウイルスの検査に適した効率的なスクリーニングツールであると提案する。

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監訳者コメント
呼吸器系と消化器系のウイルス感染症は日常的な感染症であり、しばしば病院などの集団生活をおこなう施設で集団発生が見られる。病原体の伝播は直接接触以外に、汚染された食材や水、そして環境表面からおこる。しかし、環境からのウイルスの適切なサンプリングおよび検出方法に関する知見は少ない。本論文ではマルチプレックス・リアルタイム PCR による効果的な採取方法を検討し、実際の現場での環境汚染の程度を高感度で効率よく検出することが可能となった。病院、保育施設、クルーズ船などでの集団発生時の原因病原体の検索と疫学調査に効果を発揮する可能性がある。

高度救急医療センターにおけるバンコマイシン中等度耐性黄色ブドウ球菌(vancomycin-intermediate Staphylococcus aureus;VISA)によるアウトブレイクの感染制御の成功

Successful infection control for a vancomycin-intermediate Staphylococcus aureus outbreak in an advanced emergency medical service centre

Y. Sakai*, L. Qin, M. Miura, K. Masunaga, C. Tanamachi, J. Iwahashi, Y. Kida, O. Takasu, T. Sakamoto, H. Watanabe
*Kurume University Hospital, Japan

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 385-391


背景
バンコマイシン中等度耐性黄色ブドウ球菌(vancomycin-intermediate Staphylococcus aureus;VISA)(バンコマイシン最小発育阻止濃度: 4 mg/L)によるアウトブレイクが、2013 年から 2014 年にかけて高度救急医療センター(以下[集中治療室]と表記)で発生した。

目的
本研究の目的は、成功した感染制御策について評価することであった。

方法
入院患者 15 例の喀痰および 2 例の皮膚から、17 株のVISAが分離された。14 株は定着と考えられたが、3 株は肺炎の入院患者(3 例)の喀痰から分離された。環境培養を実施したところ、VISA は 65 カ所中 5 カ所から検出された。VISA 21 株についてパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)および複数部位塩基配列タイピング(MLST)を実施した。

結果
PFGE および MLST を含めた分子タイピングにより、VISA 19 株のパターンが同一であること、また他のVISA 2 株のパターンが関連している可能性があることが示された。このことは、集中治療室で VISAの水平伝播が発生していたことを意味した。2013 年 8 月、感染制御チームが介入を開始した。しかし、VISAを有する新たな入院患者の発生は止まらなかった。そこで 2013 年 10 月、さらなる水平伝播を防ぐために集中治療室を部分的に閉鎖し、VISAを有する入院患者を隔離した。部分的な閉鎖後に新規症例の発生は迅速に止まったが、VISA アウトブレイクが根絶されるまでほぼ 5 か月かかった。

結論
我々のデータから、様々な他の感染制御策の実施にもかかわらず、集中治療室の部分的閉鎖が VISA アウトブレイクを終結させるうえで最も重要であった。

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監訳者コメント
本邦における VISA の集団感染を報告した本論文は、集中治療室での感染対策の難しさを改めて痛感させるものといえよう。多職種が様々な関わりを持つ一方で、入退院は頻繁であり、緊急時も含め、全員が確実に感染予防策を遵守することは非常に難しい。集中治療室の閉鎖は、地域の医療体制に大きな負担と制約を与える。本事例による教訓は貴重なものと考える。

イングランドの集中治療室におけるステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)による偽性アウトブレイク

Pseudo-outbreaks of Stenotrophomonas maltophilia on an intensive care unit in England

T.D. Waite*, A. Georgiou, M. Abrishami, C.R. Beck
*Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 392-396


背景
2014 年 6 月、地域の総合病院の成人集中治療室において、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)の同一株による集団発生が報告された。このクラスターを調査し、制御策の特定に資する情報を得るために、アウトブレイク制御チームが編成された。

目的
この環境において S. maltophilia が分離されることの潜在的リスク因子を明らかにすること。

方法
2013 年 10 月から 2014 年 10 月にかけて集中治療室患者のコホート研究を実施し、患者の気管支肺胞洗浄液を採取して検査を行った。症例は、気管支肺胞洗浄液から S. maltophilia が培養された患者とした。S. maltophilia 分離と患者特性の関連について、リスク比(RR)と 95%信頼区間(95%CI)を算出し、単変量ロジスティック回帰を用いて評価した。カイ二乗検定または Fisher の直接確率検定を用いた。さらに分離株のパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)を行い、型別の判定を行った。

結果
患者 18 例が症例定義を満たした。2 例では、S. maltophilia に対する抗菌薬療法を必要とするような臨床症状が認められた。全症例が気管支鏡検査を受けていた。PFGE タイピングにより、2 種類の菌株(BRISPOSM-4とBRISPOSM-3)によるクラスターが明らかになった。気管支鏡 A に曝露された患者では BRISPOSM-4 分離(RR 13.56、95%CI 1.82 ~ 100、P < 0.001)、および気管支鏡 B に曝露された患者では BRISPOSM-3 分離(RR 16.89、95%CI 2.14 ~ 133、P < 0.001)に有意に高いリスクが認められた。BRISPOSM-4 は、気管支鏡 A の汚染除去後にフラッシュした水からも分離された。

結論
再利用可能な気管支鏡が汚染され、気管支肺胞洗浄液に菌が混入したことによる2 つの偽性アウトブレイクを経験した。気管支鏡使用患者の下気道へ菌が定着した可能性は除外できない。単回使用の気管支鏡の導入は、効果的な制御策であった。

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監訳者コメント
環境中、特に水系に存在する S. maltophilia が医療関連感染に関わる可能性は常に高い。日常的に多用されている気管支鏡が本菌によって汚染されるリスクも高いといえる。本研究ではそれを疫学的に明らかにし、かつ単回使用の気管支鏡を導入するに至った。気管支鏡の衛生保持・滅菌・消毒の点でも今後に活かすべきところが多いと考える。

院内感染症の自動モニタリングに基づいた尿路感染症のリスク因子の分析

Analysing risk factors for urinary tract infection based on automated monitoring of hospital-acquired infection

J.D. Redder*, R.A. Leth, J.K. Møller
*Lillebaelt Hospital, Denmark

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 397-400


尿路感染症は、全院内感染症の 3 分の 1 もの割合を占める。本研究の目的は、自動感染症モニタリングシステムを用いてこれまでに報告された院内感染尿路感染症の患者特性を検証することであった。マッチド症例対照研究を実施して、リスク因子と院内感染尿路感染症の間の関連を調べた。院内感染尿路感染症患者は対照と比較して、尿道カテーテルを留置されている割合、あるいは泌尿生殖系または神経系の疾患を有している割合が高かった。自動院内感染症モニタリングにより、主要なリスク因子を明らかにすることで、一般患者集団または特定の患者集団における感染制御介入のより良く評価することを可能にする。

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監訳者コメント
尿道留置カテーテルは、尿路感染症のよく知られたリスク因子であり、全病院内感染の80%を占めるとさえ推定されている。それ以外のリスク因子として、糖尿病、高齢者、尿路流通障害、免疫低下、神経因性膀胱などが知られている。全自動病院内感染モニタリングシステムとは、患者年齢性別、入退院日、入院日数等の基本情報に加え、微生物検査結果、抗菌薬処方などを自動的に監視できるシステムである。日本の感染管理システムに似たものと思われる。本論文の施設では、過去に人の手による特定期間のサーベイランス(point-pevalence-survey)を実施していたが、本システムを導入しその効果を他の論文(J Hosp Infect. 2015 Nov;91(3):231-236 http://www.micks.jp/jhi/2015/11/20151106.html)で検証している。今回は尿路感染症に特化した論文である。常時すべての入院患者を監視可能となり、リスク因子の同定と結果に基づく介入による効果を評価できるとしている。

病院において抗菌薬含浸ドレーンにより脳室造瘻術関連感染症を予防する:オランダの 2 施設における研究

Preventing ventriculostomy-related infections with antibiotic-impregnated drains in hospitals: a two-centre Dutch study

J.D.M. Verberk*, J.W. Berkelbach van der Sprenkel, M.P. Arts, P.J.W. Dennesen, M.J.M. Bonten, M.S.M. van Mourik
*University Medical Centre Utrecht, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2016) 92, 401-404


本観察コホート研究では、オランダの 2 病院において、脳室造瘻術関連感染症(VRI)に対する抗菌薬含浸脳室ドレーンの導入の効果を、通常のシリコン製脳室ドレーンと比較して、診療に他の変更を加えずに評価した。VRIの定義には、米国疾病対策センターの基準に加え、培養結果に基づく定義を用いた。プロペンシティ・スコア調整済み競合リスク生存分析により、抗菌薬含浸脳室ドレーンの導入は、交絡イベントと競合イベントの補正後も、通常診療においてVRIのリスクを有意に減少させず、また原因微生物の種類にも影響を及ぼさなかった。

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監訳者コメント
本研究は、通常のシリコン製ドレナージチューブに代わり、クリンダマイシン・リファンピシン含有のドレナージチューブを用いて脳室ドレナージを行い、留置後の髄膜炎・脳室炎の発生率や培養陽性に差があるかどうか調査したものである。本研究では減少は見られなかったが、今後も留置例は確実に存在し、かつ耐性菌感染症のリスクも増加するため、本テーマに関する動向には注目していく必要があろう。

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