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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

英国の大規模小児科病院におけるロタウイルスワクチン接種の早期影響

Early impact of rotavirus vaccination in a large paediatric hospital in the UK

D. Hungerford*, J.M. Read, R.P.D. Cooke, R. Vivancos, M. Iturriza-Gómara, D.J. Allen, N. French, N. Cunliffe
*University of Liverpool, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 93, 117-120


英国の大規模小児科病院において、市中感染および医療関連ロタウイルス胃腸炎に対するルーチンのロタウイルスワクチン接種の影響を、13 年間にわたり調査した。2002 年 7 月から 2015 年 6 月に入院した 0 ~ 15 歳の小児計 1,644 例が、ロタウイルス検査陽性であった。分割時系列分析により、ワクチン導入後(2013 年 7 月から 2015 年 6 月)、市中感染および医療関連ロタウイルス胃腸炎による入院は、それぞれ予想よりも 83%(95%信頼区間[CI]72 ~ 90%)および 83%(95%CI 66 ~ 92%)低いことが示された。ロタウイルスワクチン接種により、市中感染および医療関連ロタウイルス胃腸炎の両方の症例における院内ロタウイルス疾患の負荷が迅速に減少した。

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監訳者コメント
国内でも任意接種として受けることができるロタウイルスワクチン接種であるが(日本ではロタリックスが 2011 年 11 月に、ロタテックが 2012 年 7 月に発売)、定期接種化への移行が課題である。ワクチンで防ぎうる感染症の 1 つであるロタウイルス感染症については、医療関連感染予防も含めて接種率を高めるためには定期接種の対象に含めることが望まれる。

ノロウイルスアウトブレイク中の面会一時中止に対する許容性:患者、面会者および一般市民の意見の調査

Acceptability of temporary suspension of visiting during norovirus outbreaks: investigating patient, visitor and public opinion

K. Currie*, L. Price, E. Curran, D. Bunyan, C. Knussen
*Glasgow Caledonian University, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 93, 121-126


背景
ノロウイルスは、世界的にアウトブレイクの主要な原因であり、病棟閉鎖による医療サービス中断の最も頻度の高い原因である。面会一時中止は、ノロウイルスアウトブレイク中の曝露、伝播および影響を低減するための公衆衛生策として推奨されることが多くなっている。しかし、患者‐面会者の接触を妨げることは、患者中心のケアの精神に相反する可能性があり、この方策に対する一般市民の許容性は不明である。

目的
ノロウイルスアウトブレイク中の面会一時中止に対する許容性について、患者、面会者およびより広い一般市民の視点から検討すること。

方法
スコットランドの特徴の異なる3 つの地域における、患者(153 例)、面会者(175 人)および一般市民(224 人)に対する横断調査。Health Belief Model の枠組みを適用して、ノロウイルスアウトブレイク中の面会一時中止に対する許容性を表す評価を理解すること、またこれらの評価のレベルと様々な予測変数との関連を明らかにすることを試みた。

結果
回答者の大部分(84.6%)は、面会一時中止により得られるであろう利益は、得られるであろう不利益よりも大きいと答えた。逆に言えば、回答者の大部分(70%)は、面会一時中止は「家族や友人と会うという人々の権利を無視するから間違っている」ことに不賛成であった。回答者の大部分(81.6%)は、重篤な患者や末期の患者について例外を設けるならば、面会一時中止はより許容可能であるという意見に賛成であった。相関分析により、全般的な許容性には、認識された重症度(r = 0.65)、特定された利益(r = 0.54)および追加のコミュニケーション戦略の実施(r = 0.60)と正の相関があることが示された。また、許容性には起こり得る障壁と負の相関があった(r = −0.49)。

結論
面会一時中止を行うことに対する医療利用者や一般市民の賛成の声は、患者が面会を受ける権利を侵害されることにまつわる懸念を上回っていた。面会一時中止は、ノロウイルスアウトブレイク中に一貫して実施できる、許容可能な感染制御策と見なされるべきである。

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監訳者コメント
人権や倫理的な問題と医療環境における集団生活や患者管理の課題について、ノロウイルスに関しては英国では国民的な課題になっていることから既に広く対応の重要性のコンセンサスが得られているのだと推察される。この結論が諸外国すべてにおいて同様に当てはまるかどうかは疑問であるが。

スコットランドの 高齢者医療病院における長期にわたり費用のかかったノロウイルスアウトブレイクから学ばれた教訓:症例研究

Lessons learned from a prolonged and costly norovirus outbreak at a Scottish medicine of the elderly hospital: case study

J. Danial*, S. Ballard-Smith, C. Horsburgh, C. Crombie, A. Ovens, K.E. Templeton, A. Hardie, F. Cameron, L. Harvey, J. Stevenson, I. Johannessen
*Royal Infirmary of Edinburgh, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 93, 127-134


背景
ノロウイルスアウトブレイクは、世界的に医療施設にとって大きな負担である。

目的
高齢者医療病院および英国ロシアン(Lothian)州の国民保健サービス(NHS)の他の施設における、施設を改善するための活動計画、ならびに院内のノロウイルス対応策にとって有用な情報を提供するなかで得られた教訓。

方法
本研究は、2013 年 2 月から 3 月にかけて、スコットランドの 14 の医療機関の1つに属する 高齢者医療病院における長期のアウトブレイクの影響を検討した。

結果
全体で、患者 143 例(1,000病床日あたり 14.80 症例)および医療スタッフ 30 名(1,000病床日あたり 3.10 症例)が臨床症状を呈し、63 例がウイルス学的検査で確認された。患者が発生した病棟への新たな入院を制限したため、1,192 病床日の損失となった。損失した病床日に加え、スタッフの欠勤およびアウトブレイクの管理による費用は、この事例のみについて推定で 341,534 ポンドかかった。アウトブレイク中のいくつかの時点で病院全体が閉鎖され、医療機関のうちの急性期病院に多大な影響を与えた。

結論
アウトブレイクにより、NHS ロシアン州内で初めて新たな方策が実施され、これにはフロア毎(個々の病棟ではなく)の病棟閉鎖、病院全体の塩素ベースの消毒薬による清掃強化、病床間隔の拡大ならびに医療機関のうちの一般診療所の外科からの直接の転院の中止による病床収容能力の削減、ならびに罹患区域における面会一時中止などが含まれた。アウトブレイク期間を通じてのスタッフ、患者、近親者、および一般市民への定期的な情報伝達と合わせて、本事態の管理におけるスタッフチームの積極的な取り組みによって、アウトブレイクは徐々に制御された。

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監訳者コメント
ノロウイルス流行期には医療機関相互の情報交換が重要である。また、こうした時期には不必要な患者の施設間移動は避けるべきである。

複数のカルバペネマーゼ産生菌を有する熱傷患者の入室後の環境のコンタミネーション除去

Environmental decontamination following occupancy of a burns patient with multiple carbapenemase-producing organisms

M.I. Garvey*, C.W. Bradley, P. Jumaa
*Queen Elizabeth Hospital Birmingham, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 93, 136-140


過去十年間で、カルバペネマーゼ産生菌が世界中に拡散し、公衆衛生上の重大な懸念となっている。本稿では、カルバペネマーゼ産生菌に感染した熱傷患者に対処した著者らの経験と、熱傷ショック治療室を安全に再使用できるようにするためのコンタミネーション除去の方法について報告する。患者の退室後、ショック治療室を清掃したが、環境サンプリングによる培養で複数のカルバペネマーゼ産生菌が回収された。第 2 回目のコンタミネーション除去では、洗浄剤、蒸気および次亜塩素酸溶液による清掃の後、過酸化水素噴霧を実施したところ、その後の環境サンプリングによる培養でカルバペネマーゼ産生菌は回収されなかった。カルバペネマーゼ産生菌を保有する熱傷患者は、周囲の環境を重度に汚染するため、環境内のバイオバーデンを減らすには標準的な清掃では不十分である。

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監訳者コメント
論文によると、通常清掃では、次亜塩素酸 1,000 ppm と 6%過酸化水素噴霧が行われていた。これで、点滴支柱台などの環境から菌が検出されていた。清掃の具体的な方法、遵守なども影響しているのかもしれないと思われた。

地域熱傷センターにおけるカルバペネマーゼ産生菌の制御

Prevention and control of carbapenemase-producing organisms at a regional burns centre

L. Teare*, J. Myers, A. Kirkham, T. Tredoux, R. Martin, S. Boasman, A. Wisbey, C. Charlton, P. Dziewulski
*St Andrew’s Centre for Plastic Surgery and Burns, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 93, 141-144


世界の多数の地域で、カルバペネマーゼ産生菌が流行している。このような国から英国に内科患者が転院してくる場合、我々は制御システムを整え、その後の伝播を回避する必要がある。本報告では、地域熱傷センターが初めて直面した異なる 2 件の事例によるカルバペネマーゼ産生菌発生例 4 症例について述べる。我々の経験から学ぶべき重要な点として、カルバペネマーゼ産生菌の流行地域から来た患者に対する経験的抗菌薬投与では、本菌を考慮に入れることが重要である。我々は、接触培地を用いて、清掃後の細菌数の多さを立証し、職員の関与および教育を継続することの重要性とともに、最終清掃(退室後清掃)の戦略について報告する。

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監訳者コメント
この施設で最終清掃に使用された高輝度狭帯域光環境汚染除去システムについては、Journal of Hospital Infection (2010) 76, 247-251(HINS-light EDS http://www.micks.jp/jhi/2010/12/20101111.html)、Journal of Hospital Infection (2014) 88, 1-11(http://www.micks.jp/jhi/2014/09/20140901.html)に詳述されている。本文中には、具体的な退室後清掃についてのポイントが示されており、参考になった。

病院廃水中のカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE):臨床分離株に相関しないリザーバ

Carbapenemase-producing Enterobacteriaceae in hospital wastewater: a reservoir that may be unrelated to clinical isolates

L. White*, K.L. Hopkins, D. Meunier, C.L. Perry, R. Pike, P. Wilkinson, R.W. Pickup, J. Cheesbrough, N. Woodford
*Royal Preston Hospital, Lancashire Teaching Hospitals NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 93, 145-151


背景
カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)は、世界中の病院で感染制御上の新たな問題となっている。保菌者を同定することは、拡散および感染可能性を低下させる一助となり得る。

目的
地域的な CPE 流行の問題が認められない病院において、病院廃水の CPE 検査が感染予防目的の患者ごとのスクリーニングを補完しうるかどうかを検討すること。

方法
2014 年 2 月から 3 月に病院配管から廃水を 16 回採取し、chromID® CARBA 寒天培地および chromID® CPS 寒天培地と 10 μg エルタペネムディスクおよびコンビネーションディスク検査により CPE スクリーニングを行った。最小発育阻止濃度は British Society for Antimicrobial Chemotherapy の方法により決定し、カルバペネマーゼ遺伝子は PCR 法または全ゲノムシークエンシングにより検出した。一部の分離株をパルスフィールド・ゲル電気泳動によりタイピングした。

結果
廃水サンプル 16 件すべてから疑わしい CPE が回収された。Antimicrobial Resistance and Healthcare Associated Infection Reference Unit に送付した分離株 17 株中 6 株(シトロバクター・フレウンディー[Citrobacter freundii]4 株、エンテロバクター・クロアカエ[Enterobacter cloacae]菌群 2 株)は New Delhi メタロ-β-ラクタマーゼ(NDM)産生株、残りの 11 株(クレブシエラ・オキシトカ[Klebsiella oxytoca]6 株、E. cloacae 菌群 5 株)は Guiana-Extended-Spectrum-5(GES-5)産生株であり、英国では腸内細菌科細菌で報告された最初のものである。NDM 産生 C. freundii 株 4 株、NDM 産生 E. cloacae 菌群 2 株、GES-5 産生 E. cloacae 菌群 5 株中 4 株は、互いに区別できない同一の分離株 3 株であるのに対し、GES-5 産生 K. oxytoca 株 6 株は全体として 79%の相同性を示した。

結論
CPE は、簡便な培養法により病院廃水から容易に分離される。未検出の保菌者が廃水中にCPE を排出しているか、またはこれらの CPE が他のソースから配管に定着したことを示すかのいずれかである。病院廃水の CPE サーベイランスは急性期病院の感染制御目的には役立たないと考えられる。

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監訳者コメント
ユニークな発想によるサーベイランスだが、残念ながら、実用性はなかった。とはいえ、ネガティブな結果であってもきちんと論文にするのは、とても大切なことだと思われる。

流しの排水管におけるカルバペネマーゼ産生クレブシエラ(Klebsiella)属菌:銅管の有効性の検討

Carbapenemase-bearing Klebsiella spp. in sink drains: investigation into the potential advantage of copper pipes

J.S. Soothill*
*Great Ormond Street Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 93, 152-154


流し台の排水管は、病原菌の住処として長らく知られており、加熱式流しトラップなど、病原菌を制御するための取り組みが行われている。流し台の出口管は、多剤耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)感染症のアウトブレイクとの関連が認められている。銅管への切り替えが交差感染を防止する可能性があるかどうかを検討するため、水を入れた容器に多剤耐性ヒト肺炎桿菌株を加え、そこに標準的な流し台の出口管の一部を入れた。銅管を入れた容器の水に含まれる細菌数は、ポリ塩化ビニル管を入れた容器の水に含まれる細菌数よりも少なかった。

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監訳者コメント
薬剤耐性肺炎桿菌を入れた水に銅製の配管の一部を入れたところ、菌の減少を認めた。銅(イオン)の抗菌効果は国内外で認められており、様々な取り組みが行われている。予算が許すのであれば、検討しても良いのかもしれない。

小児医療現場の手指衛生促進における親の役割:文献のシステマティックレビュー

Role of parents in the promotion of hand hygiene in the paediatric setting: a systematic literature review

F. Bellissimo-Rodrigues*, D. Pires, W. Zingg, D. Pittet
*University of Geneva Hospitals and Faculty of Medicine, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2016) 93, 159-163


背景
小児が入院する際、親は小児を保護する役割を病院と分け合い、小児に安全な医療(よい手指衛生習慣の実践を含む)を提供するために医療従事者との協力関係を築く必要がある。

目的
小児医療現場の手指衛生促進に対する親の参加についての科学的エビデンスをレビューすること。

方法
以下の用語を用いて、MEDLINE、EMBASE、Sci-ELO の各データベースを系統的に検索した:(‘hand hygiene’[MeSH] OR ‘hand hygiene’ OR ‘hand disinfection’[MeSH] OR hand disinf* OR hand wash* OR handwash* OR hand antisep*) AND (parent OR caregiver OR mother OR father OR family OR families OR relatives)。質の評価には Integrated Quality Criteria for Review of Multiple Study Designs のツールを用いた。

結果
文献調査により論文 1,645 報が得られ、研究 11 件が最終的な分析の選択基準を満たした。大半は観察研究であり、質問票または面接に基づくものであった。大部分の親は、手指衛生実施の適応に関する知識がほとんどなかったが、手指衛生を医療関連感染の予防に関係のある手段と認識していた。親が医療従事者に手指衛生の実施機会を逃さないよう促す意思にはばらつきがあり、全体としてかなり低かった。医療従事者に手指衛生を促すよう予め依頼されていた親は、医療従事者に手指衛生をより促しやすいと感じていた。

結論
この問題に関する文献は十分ではない。親による手指衛生の促進は、小児医療現場における患者安全を促進する可能性のある介入として調査することによりさらに検討する必要がある。

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監訳者コメント
手指衛生に限らず、医療への患者参画は良い影響をもたらすことが報告されている。特に小児領域は親の関与が原則となっており、患者・医療従事者双方に対して手指衛生の順守に与える親の影響は大きいだろう。

臨床血液学・骨髄移植部門における紫外線自動室内消毒装置 Xenex PX-UV の英国初の試験

First UK trial of Xenex PX-UV, an automated ultraviolet room decontamination device in a clinical haematology and bone marrow transplantation unit

A. Beal*, N. Mahida, K. Staniforth, N. Vaughan, M. Clarke, T. Boswell
*Nottingham University Hospitals NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 93, 164-168


背景
医療現場内での非接触式自動室内消毒装置の使用への関心が高まっている。Xenex PX-UV は、サイクル時間の短いパルス短波長紫外線(UV)照射による自動室内消毒装置である。

目的
本装置を臨床血液学部門内の隔離室の最終消毒用に設置したときの微生物学的有効性を検討すること。

方法
装置は血液内科の隔離室に設置した。頻繁に接触する箇所に接触培地を置き、好気性菌総コロニー数を測定した。バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)検出用のサンプルは PolywipeTM スポンジを用いて回収した。

結果
装置は移動および使用が容易であり、室内を迅速に消毒した。好気性菌総コロニー数は用手清掃後 76%減少し、UV 消毒後さらに 14%減少した結果、全体で好気性菌総コロニー数が 90%減少した。VRE が検出された箇所数は、用手洗浄後の 80 カ所中 26 カ所から、追加の UV 消毒による 80 カ所中 16 カ所へと 38%減少した。

結論
Xenex PX-UV 装置は、病室の退室時消毒のための簡便で迅速な追加の消毒段階となりうる。しかし、VRE に対する微生物学的有効性はいくらか限定的であった。

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監訳者コメント
米国を中心に環境消毒の研究および市場への導入が進んでいる。本研究で用いられたデバイス(Xenex)も米国で使用実績のあるものである。この他にも環境消毒機器としては蒸気化過酸化水素を用いたものなどもあり、環境消毒を目的とした類似の機器の開発は今後も進められていくであろう。

感染予防対策の的を絞るための黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症強化サーベイランス★★

Enhanced surveillance of Staphylococcus aureus bacteraemia to identify targets for infection prevention

A.K. Morris*, C.D. Russell
*Victoria Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 93, 169-174


背景
スコットランドにおける黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症(SAB)サーベイランスは、100,000 急性期のべ病床利用日あたりの感染件数およびメチシリン感受性に限られている。

目的
感染予防対策の的を絞るための強化 SAB サーベイランスの価値を示すこと。

方法
スコットランドの単独の衛生局において 5 年間に SAB と確認されたすべての患者を対象とする前向きコホート研究。すべての患者について 1 名の微生物学者が臨床データの調査を行った。

結果
全体で、SAB 事象 556 件が確認された:病院感染 261 件(46.6%)、医療関連感染 209 件(37.9%)、市中感染 80 件(14.4%)。6 件(1.1%)は感染源が病院感染ではなかったが、医療関連感染にも市中感染にも分類されないものであった。これらは非病院感染と分類した。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)菌血症は、病院感染および医療関連感染と関連していた。また、30 日死亡率は、市中感染 SAB(8.7%)と比べて、病院感染(31.4%)および医療関連感染(16.3%)で有意に高かった。血管アクセス装置は病院感染 SAB と関連しており、これらの多くで末梢静脈カニューレが感染源であった(43.9%)。市中感染は、静注薬物乱用、呼吸器感染、骨格関節感染と関連していた。皮膚軟組織感染は医療関連感染により広く認められた。

結論
データから、感染源および菌血症の原因別の強化 SAB サーベイランスは感染予防、経験的抗菌薬投与、衛生改善の各介入に影響を及ぼすことが示唆される。

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監訳者コメント
黄色ブドウ球菌は、血流を介して(菌血症)拡がり、心内膜炎、人工関節感染、脊椎の骨髄炎など播種性の感染巣を作り、その予後も決して良くない。英国では黄色ブドウ球菌菌血症数の報告が義務づけられているが、患者の臨床的背景などの詳細な報告はなされていないため、菌血症症例の減少のための感染予防対策の的が絞れていない。本論文では、臨床データから患者情報を収集する強化サーベイランスを実施し、病院感染における黄色ブドウ球菌菌血症の大半が末梢静脈の血管留置カテーテル由来であることが判明し、感染予防対策の的が明らかとなった。血管留置カテーテル関連菌血症のサーベイランスの重要性を再認識させる論文である。

アイルランドの急性期病院におけるバンコマイシン耐性腸球菌保菌率

Vancomycin-resistant enterococci carriage in an acute Irish hospital

E. Whelton*, C. Lynch, B. O’Reilly, G.D. Corcoran, B. Cryan, S.M. Keane, R.D. Sleator, B. Lucey
*Cork University Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2016) 93, 175-180


背景
European Antimicrobial Resistance Surveillance System Network の 2014 年の報告書によると、アイルランドは、欧州では菌血症例中のバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)率が高いことが確認されている。

目的
Cork University 病院の 2014 年の患者コホートを対象に、入院患者と地域の患者からルーチン検査のために微生物学検査室に提出された便検体を用いた横断研究を実施し、VRE の消化管定着率を検討すること。

方法
選択培養、抗菌薬感受性試験、MALDI-TOF-MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法)を用いた菌種同定により、便を検査し、VRE の定着について検討した。耐性決定因子、型、Insertion Sequence 16(Clonal Complex 17[CC17]の指標)に関する分子的手法によりすべての VRE 分離株を評価した。

結果
検討した 350 検体中、67 検体(19.1%)は VRE 陽性であった(95%信頼区間[CI]15.0~ 23.2)。本研究において検討した Cork University 病院の患者(194例)の VRE 定着率は 31.4%であった(95% CI 24.7 ~ 38.1)。これに対し、一般開業医の患者検体(29 例)のは定着率が 0%、他院の検体は 22.2%(27 例)が VRE 陽性であった。すべての分離株はエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)(VREfm)であり、CC17 を含むことが示唆されたが、分離株間にかなりの不均一性がみられた。

結論
この高い定着率は、アイルランドで現在 VRE 菌血症罹患率が高いことを説明し、観察された高い VRE 率を制御するために、すべての病院がスクリーニングを実施し、感染制御を強化することの有用性を強調する根拠となる。

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監訳者コメント
腸球菌はヒトや動物の消化管内の常在菌であり、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)は容易に腸管に定着する。また、環境に長期間生存するため、器材や病院環境あるいは手指を介して感染が拡大する。VRE による菌血症は、臓器移植や血液悪性腫瘍の患者などの免疫低下患者において発生しやすく、VRE そのものの病原性は低いものの治療に難渋する場合もある。VRE 腸管保菌状況が広範囲に拡大した場合には、感染制御は極めて困難となるため、拡がる前の予防策が必要である。VRE 感染症は、感染症法 5 類感染症であり、厚労省通知(平成 26 年 12 月 17日)には保菌を含め一例でも検出された場合には厳重な感染予防策を実施するよう記載されている。

新生児集中治療室における多剤耐性大腸菌(Escherichia coli)ST(シークエンス型)131 のアウトブレイク:効率的な積極的サーベイランスは死亡を防止した★★

Outbreak of multidrug-resistant Escherichia coli sequence type 131 in a neonatal intensive care unit: efficient active surveillance prevented fatal outcome

C. Silwedel*, U. Vogel, H. Claus, K. Glaser, C.P. Speer, J. Wirbelauer
*University Hospital Würzburg, Germany

Journal of Hospital Infection (2016) 93, 181-186


背景
新生児集中治療室(NICU)における多剤耐性菌感染症のアウトブレイクは、特に超早産児にとって大きな脅威となる。本研究では、ドイツの第 3 次 NICU における多剤耐性大腸菌(Escherichia coli)の 35 日間のアウトブレイクについて報告する。

目的
早産児の特に脆弱なコホートにおけるサーベイランス方針の重要性を示し、アウトブレイク制御戦略の有効性について明らかにすること。

方法
データは診療記録から後向きに収集した。乳児および環境に対して大腸菌の検査を行った。

結果
在胎期間 25+1 週から 35+0週の間に出生した乳児計 13 例がアウトブレイクの影響を受け、そのうち 7 例が感染の徴候を示した。アウトブレイク株は大腸菌シークエンシング・タイプ ST 131 と同定された。環境のスクリーニングでは、環境感染源を示すエビデンスは得られなかった。保菌状態のサーベイランスおよび感染した可能性のある早産児に対して直ちに十分な治療を行ったことから、死亡例はなかった。アウトブレイクは、厳格な接触予防策、スクリーニングの強化、および NICU の一時的な移設によって制御された。移設および再編によって NICU の構造レイアウトが改善され、隔離能力に重点が置かれた。追跡調査によって、一部の乳児で数か月間の保菌が示された。

結論
ルーチンにサーベイランスを行うことによって、アウトブレイクの早期発見が可能となった。アウトブレイク株の保菌の同定は、感染症例の直接的な抗菌薬治療に有効であった。衛生対策の強化および病棟の移設はアウトブレイクを制御するための手段となった。

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監訳者コメント
大腸菌は、市中感染と病院感染の両者における代表的原因菌であり、同時に B 群溶連菌やリステリアと並ぶ新生児の重要な感染症起炎菌である。この NICU におけるアウトブレイクにおいて、MLST(マルチ・ローカス・シークエンス・タイピング)によるシークエンス解析により大腸菌 ST131 株が検出された。本株は、基質拡張型βラクタマーゼを産生し、同時にキノロン耐性を示す。本論文では積極的培養スクリーニングにて本菌株の保菌者を発見し、感染症発症後速やかに適切な抗菌薬を投与することで死亡例を出さずに治療が可能であったとし、耐性菌対策としてスクリーニング培養の重要性を強調している。また、本論文では同時に感染予防策強化の一環として、NICU 病棟を移転し、旧病棟の改修を実施した。改修により病室を広くし、インキュベーター間隔は 2M 以上を確保し、その後のアウトブレイクを防げたとしている。
解説)MLST とは、既知の微生物がもつ遺伝子(ハウスキーピング遺伝子)を数種類設定し、その部分のシークエンス解析をすることで塩基配列をパターン化し、データベース化後、未知のもののシークエンス結果と比較することで、同定分類する手法である。これにより本症例のような疫学的解析が可能となる。

閉鎖環境における結核のアウトブレイク:分子的手法および従来法での結果に基づいた伝播に対する見解

Outbreak of tuberculosis in a closed setting: views on transmission based on results from molecular and conventional methods

E. Antusheva*, O. Mironuk, I. Tarasova, P. Eliseev, G. Plusnina, M. Ridell, L-O. Larsson*, A. Mariyandyshev
*Northern State Medical University, Russia

Journal of Hospital Infection (2016) 93, 187-190


背景
本研究は、精神疾患男性患者が長期間または永続的に居住するナーシングホームで発生した結核のアウトブレイクについて報告する。この種の環境は、社会の他の人々との接触が極めて限られているため、伝播のモデルとなりうる。

目的
同時期に同じ場所で結核と診断された症例が、分子的手法および従来法を用いた結果に基づき、関連しているかどうかを検討すること。

方法
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)株を、薬剤耐性試験および MIRU-VNTR(反復配列多型分析)法で分析した。微生物学的結果は、臨床経過および診断時期と関連していた。

結果
患者 9 例が結核と診断され、そのうち 7 例から株が回収された。意外にも、同じ遺伝子型の株は異なる耐性パターンを示し、2 株のみが同一パターンを示した。MIRU-VNTR 分析で、1 例の患者が 2 つの異なる株に感染していることが示された。

結論
株のばらつきは、アウトブレイクが複数の感染源から発生した可能性があることを示し、耐性のばらつきは、抗菌薬耐性が急速に出現する可能性があることを示している。これにより、感染源、発症、耐性、および混合感染についていくつかの疑問が浮かび上がってくる。

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監訳者コメント
結核感染の適切な予防と対策のためには、伝播経路の把握が必須である。長期に入所し、外との接触のない閉鎖された環境での結核の分子疫学的解析は、伝播に関する新たな知見を与えてくれる可能性がある。本論文ではロシアのある精神病院で発生した結核のアウトブレイクを VNTR を用いた分子疫学的手法により解析し、このアウトブレイクが単一の感染源によるものではなく、分離結核菌 7 株中 5 株は全く異なる株であることが判明した。分子疫学的解析は結核感染において伝播経路についての有用な情報をもたらす。本アウトブレイクは、活動性結核患者が過去に入所していて、結核の伝播が起こっていたにもかかわらず、発症者が見過ごされていた結果であり、時期的に発症が重なったものと推測される。一方で、活動性結核症例からの二次感染の 13 ~ 20%が、塗抹陰性の症例からであるとの報告もあり、注意が必要である。
解説)MIRU-VNTR とはmycobacterial interspersed repetitive units-variable numbers of tandem repeats で、結核菌ゲノム上に存在するミニサテライト DNA 中の繰り返し配列のコピー数を調べることにより、結核菌をタイピングする方法である。(新結核用語辞典から)

多剤耐性病原体(MDRO)の積極的スクリーニングと MDRO に合った制御策を組み合わせた 2 段階の感染制御管理戦略の費用とベネフィット

Costs and possible benefits of a two-tier infection control management strategy consisting of active screening for multidrug-resistant organisms and tailored control measures

N.T. Mutters*, F. Günther, U. Frank, A. Mischnik
*Heidelberg University Hospital, Germany

Journal of Hospital Infection (2016) 93, 191-196


背景
多剤耐性病原体(MDRO)は大きな経済的な負荷となり、その制御にはコストもかかり、労力もかさむ。限られた資源を効果的に利用できるよう、積極的スクリーニングを含む 2 段階の感染制御管理戦略が考案された。簡潔に言えば、高リスク患者を他の患者と区別し、MDRO のタイプにしたがって分類し、それに応じて感染制御策を実施した。

目的
この感染制御管理戦略の費用とベネフィットを評価すること。

方法
研究期間は 2.5 年であった。高リスク患者には全員微生物検査によるスクリーニングを実施した。グラム陰性菌は、多剤耐性と超薬剤耐性とに分けた。スタッフや資材、検査室、業務負荷の増加にかかる費用、さらに作業費用などを経費として算定した。

結果
合計で患者 39,551例がスクリーニングを受け、これは全入院の 24.5%を占めた。スクリーニングを受けた全患者のうち、7.8%(3,104 例)が MDRO 陽性であった。これらの患者は、主にバンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci[37.3%])を保菌し、次いでメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus[30.3%])、多剤耐性グラム陰性菌(28.3%)を保菌していた。全患者の入院期間の中央値は 10 日(四分位範囲 3 ~ 20)であったが、保菌患者ではそれが 2 倍に延長した(P < 0.001)。スクリーニング費用は合計 255,093.82 ユーロ、感染制御策の費用は 97,701.36 ユーロ、機会費用は 599,225.52 ユーロであった。この感染制御管理戦略によるコスト削減は 500,941.84ユーロとなった。発見されなかった保菌者によって伝播が生じた場合、613,648.90 ~ 4,974,939.26 ユーロの追加費用(すなわち、約 60 万 ~ 500万ユーロ)が発生すると計算された。

結論
積極的な微生物スクリーニングを含む 2 段階の感染制御管理戦略の費用はわずかではなかったが、予防された伝播を費用の見積もりに入れると、このアプローチは費用対効果に優れていた。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
MDRO の検出を目的とした積極的スクリーニングを、どこで誰を対象にどこまで行うかについては、いまだ結論がついておらず、さらに様々なファクターに影響されるともいえる。近年の多剤耐性グラム陰性桿菌の増加はこれをさらに複雑にしている。当然のことながらこのスクリーニングは感染制御策の実施と徹底にも関連しているものであり、有効かつ実用的で、かつコストベネフィットも考慮した方策を模索するうえで、本論文で述べられた方法は重要といえる。

定義と、血液培養データがない場合の扱いが、経静脈栄養実施中の血管内留置カテーテル感染症の発生率に及ぼす影響

Impact of definition and procedures used for absent blood culture data on the rate of intravascular catheter infection during parenteral nutrition

P.D. Austin*, K.S. Hand, M. Elia
*University of Southampton, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 93, 197-205


背景
血管内留置カテーテル感染症の診断は、その定義と、血液培養のデータがない場合の扱いによって左右される可能性がある。

目的
カテーテル感染症の様々な定義の違いと、血液培養データがない場合の扱いが、カテーテル感染症の報告率に影響する程度を明らかにすること。

方法
経静脈栄養を指示された入院患者のコホートにおいて、3 種の臨床的定義および 4 種の発表された定義に従ってカテーテル関連感染症の発生率を確認した。症例解析や感度分析、intention-to-categorize 解析によって、対応のある比較または対応のない比較を行った。

結果
臨床的定義については、それぞれ完全なデータを利用することができた(N = 193)。一方、発表された定義については4.1 ~ 26.9%でデータが欠落していた。症例解析において、臨床的定義を用いた場合のカテーテル関連感染症発生率は13.0 ~ 36.8%、発表された定義を用いた場合の発生率は2.1 ~ 12.4%であった。発表された定義で感度分析を行った場合の発生率は1.6 ~ 32.1%、intention-to-categorize 解析を行った場合の発生率は11.4 ~ 16.9%であり、欠測データのある定義のほうがカテーテル感染率が高いというバイアスが示唆され、臨床的定義に基づいた解析と合っていた。対応のある比較では、定義間の一致は「不良」(Cohen のカッパ係数 < 0.21)から「きわめて良好」(Cohen のカッパ係数 ≧ 0.81)までと幅があった。

結論
カテーテル感染症の様々な定義と、血液培養データがない場合の扱いによって、計算されるカテーテル感染率は大きく異なる。これらの違いによって、サービスの質や研究のアウトカムについての測定や比較に支障が出ている可能性がある。そのため正しく、実用的で、かつ一致した定義を確立し、用いる必要がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
血管内カテーテル関連感染症の定義の違いにより、算出される感染率にも差が生じるが、そのインパクトについての検討はこれまで多くなく、定義間の一致についても不明であった。本検討は血液データのない場合の影響も含めて算出しており、改めて定義の確立の意義を明らかにしたものといえる。

マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法を応用した、血液培養由来腸内細菌科細菌の第 3 世代セファロスポリン耐性を迅速に検出する簡易プロトコール

Ease-of-use protocol for the rapid detection of third-generation cephalosporin resistance in Enterobacteriaceae isolated from blood cultures using matrix-assisted laser desorption ionizatione time-of-flight mass spectrometry

C. Foschi*, M. Compri, V. Smirnova, A. Denicolò, P. Nardini, M.V. Tamburini, D. Lombardo, M.P. Landini, S. Ambretti
*St. Orsola-Malpighi University Hospital, Italy

Journal of Hospital Infection (2016) 93, 206-210


マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法を用いて、血液培養ボトルから分離された腸内細菌科細菌について、第 3 世代セファロスポリンに対する耐性を容易に検出できるプロトコールを開発し、その評価を行った。
作業時間を最小限とし、ルーチンのワークフローに組み組むため、抗菌薬ディスクを置いたチョコレート寒天培地に発育したコロニーを用いた(菌数の標準化は行わない)セフォタキシム加水分解アッセイを開発した。このアッセイは、セフォタキシム感受性株とセフォタキシム耐性株の識別に良好な結果を示し、大腸菌(Escherichia coli)で優れた結果が得られた(感度 94.7%、特異度 100%)。しかし、AmpC 遺伝子を発現する腸内細菌科細菌や、カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)におけるセフォタキシム耐性については信頼性をもって検出されなかった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF)は迅速性・簡便性に優れ、菌種の同定に多く用いられ、さらに薬剤耐性の検出にも応用されつつある。腸内細菌科において第 3 世代セファロスポリン耐性が迅速に判明すれば、治療・感染対策の両面において利用価値が高い。今回の検討では限界を示す結果であったが、菌種・耐性機構によってどの程度差があるのか、今後の知見が待たれる。

スロバキアの腫瘍病棟における非経口治療に関係したB 型肝炎および C 型肝炎のアウトブレイク

Viral hepatitis B and C outbreak related to parenteral treatment at an oncological department in Slovakia

A. Kološová*, J. Gašparovič
*Regional Public Health Authority in Komárno, Slovakia

Journal of Hospital Infection (2016) 93, 211-214


同一の腫瘍病棟に入院歴のある 4 例の患者が、ウイルス性肝炎(B 型およびC 型)を発症したことが地域の公衆衛生当局に報告された。これを受けてアウトブレイク調査が開始され、2009 年 9月から 2010 年 7 月の間に入院した患者のうち、47 例が HBV ないし HCV に罹患し、39 例が肝炎を発症していたことが明らかになった。そして注射による治療と肝炎発症との間には有意な相関があった(B 型肝炎χ2 = 49.53、P < 0.001、C 型肝炎χ2 = 22.42、P < 0.001)。使い捨て器具を使用していたにもかかわらず、標準予防策の徹底が不十分であったために、病院内で血液媒介ウイルス感染症が伝播するリスクが依然として存在していたものと思われた。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
血液媒介感染症である HBV、HCV は、観血的処置によって伝播することが多く、例えば透析患者においてその感染率が高いことが知られていた。一般病棟における処置ではこれらの感染リスクは非常に低いが、今回の事例では改めて基本的予防策の不徹底や破綻が発生に結び付くことが確認された。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.