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アイルランドの知的障害者長期ケア施設における医療関連感染症および抗菌薬使用の点有病率調査:2013 年

Point prevalence survey of healthcare-associated infections and use of antimicrobials in Irish intellectual disability long-term care facilities: 2013

F.M. Roche*, S. Donlon, K. Burns
*Health Protection Surveillance Centre, Ireland

Journal of Hospital Infection (2016) 93, 410-417


背景
医療関連感染症(HCAI)および抗菌薬使用は、長期ケア施設(LTCF)で多くみられるが、知的障害者の LTCF でのこれらの問題の負担に関するデータはほとんど得られていない。

目的
アイルランドの知的障害者 LTCF における HCAI 有病率および抗菌薬使用を評価し、今後の HCAI 予防プログラムを計画すること。

方法
2013 年 5 月にアイルランドの知的障害者 LTCF で、欧州のプロトコールを用いて国内の点有病率調査を実施した。本調査は任意であり、知的障害者が全日居住するアイルランドのすべての LTCF に対し、本調査への参加を呼びかけた。データは、現地で収集し、国内のデータ管理センターで分析した。

結果
アイルランドの知的障害者 LTCF 24 施設が参加し、アイルランドの知的障害者 LTCF 入居者の 42%を占める 1,060 例が調査の対象となった。未補正の HCAI 有病率は 4.3%(中央値 2.2、範囲 0 ~ 46.7)であり、気道感染症(1.6%)と皮膚感染症(1.6%)が最も多くみられた。抗菌薬は、適格な入居者の 10%(中央値 7.5、範囲 3.2 ~ 13.9)に対して処方され、全処方の 49%が予防投与の適応であった。尿路感染症(38%)、気道感染症(36%)、皮膚感染症(27%)の予防が予防投与の理由として最も多かった。知的障害者 LTCF における予防投与を目的とした抗菌薬の処方率には相当のばらつきがあり(範囲 2 ~ 29%)、施設の抗菌薬ガイドラインが策定されていた施設は 17%のみであった。

結論
アイルランドの知的障害者 LTCF では、HCAI および抗菌薬使用の負担が相当に存在する(特に皮膚感染症、気道感染症に関して)。これらの感染症のリスクがある知的障害者 LTCF 入居者に対する予防策の指針を打ち出すには、この集団におけるさらなるサーベイランスが必要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
急性期病院と同様、長期療養型施設においても、医療関連感染、耐性菌と抗菌薬適正使用は大きな課題である。入所者は身体的機能障害、基礎疾患、経管栄養や尿路カテーテルなどの人工物の長期挿入などに加え、知的障害による衛生的行動が困難な場合もあり、その結果感染症を発症するリスクを潜在的にもっている。しかしながら、知的障害者 LTCF での、感染症発生状況や抗菌薬使用については不明の部分が多い。医療関連感染を減らし、ケアを充実させるためには、状況把握は必須である。アイルランドでは 2010 年から、欧州疾病予防管理センター(ECDC)が主導する点有病率調査を実施しており、本論文は 24 施設におけるサーベイランスのデータである。感染対策や抗菌薬適正使用の活動はまだまだ十分ではないことがうかがえる。日本の現状と比較するうえで、非常に参考になる論文である。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.