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新しい遺伝子タイピング法は熱傷集中治療室における緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の持続的院内アウトブレイクを発見する

New genotyping method discovers sustained nosocomial Pseudomonas aeruginosa outbreak in an intensive care burn unit

F. Tissot*, D.S. Blanc, P. Basset, G. Zanetti, M.M. Berger, Y.-A. Que, P. Eggimann, L. Senn
*Lausanne University Hospital, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 2-7


背景
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は集中治療室(ICU)における医療関連感染症の主要な原因である。

目的
2 年間にわたり ICU で臨床検体から回収された緑膿菌の原因不明の検出率上昇を検討すること。

方法
従来のツールを用いた疫学的調査が失敗した後、2010 年 1 月から2012 年 7 月に入院した全患者の緑膿菌臨床分離株について、新規の double-locus sequence typing(DLST 法)によりタイピングを行い、研究期間中に回収された環境分離株と比較した。

結果
合計で、患者 218 例の臨床分離株 509 株および環境分離株 91 株のタイピングを行った。患者 218 例中 154 例(71%)で 35 の遺伝子型クラスターが見いだされた。最大のクラスターである DLST 1-18 には、ほとんどが熱傷病棟での入院期間が重なる患者 23 例が含まれた。遺伝子型 DLST 1-18 の分離株は、水治療室のフロアトラップ、シャワートロリー、およびシャワーマットレスからも回収され、熱傷病棟の環境汚染がアウトブレイクの原因であることが示唆された。適切な感染制御策の実施後、この遺伝子型の分離株は熱傷患者 1 例の臨床検体で 1 回、環境検体で 2 回だけ回収されたが、その後 12 か月の追跡調査期間には回収されなかった。

結論
新規の DLST 法の使用により、大量の臨床および環境分離株の遺伝子タイピングが可能になり、熱傷病棟における原因不明の大規模アウトブレイクの環境発生源の特定に至った。ICU における緑膿菌クローンの継続的な疫学的サーベイランスの実施後に、アウトブレイクの根絶が確認された。

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監訳者コメント
遺伝子多型性を検出する技術の標準は PFGE 法であるが、時間と手間がかかるので代替法として POT 法や MLST 法や本法が開発されている。しかしシークエンスはどの医療機関でもできるわけではないので、対応性としてみると病院実務としては劣る点がある。

救命救急部門における手指洗浄用流し台の蛇口からの緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の継続的伝播

Continued transmission of Pseudomonas aeruginosa from a wash hand basin tap in a critical care unit

M.I. Garvey*, C.W. Bradley, J. Tracey, B. Oppenheim
*Queen Elizabeth Hospital Birmingham, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 8-12


緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は重要な院内感染病原体であり、蛇口や流し台を含めた院内給水システムに定着する。本稿では、5 か月の期間中に救命救急病棟の同一の個室型熱傷病室に入院していた患者における水道水からの緑膿菌獲得のクラスター発生について報告する。患者 4 例からの培養で得られた臨床分離株の緑膿菌は、パルスフィールド・ゲル電気泳動により、水道水由来の分離株と識別できなかった。国内ガイダンスに従っていたにもかかわらず、救命救急病棟の蛇口が緑膿菌の伝播源であった可能性があり、患者への伝播リスクを低減するためにはガイダンスの更新と感染制御策の改善が必要である。

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監訳者コメント
水道の蛇口は無菌的ではないので、手洗いの際は使用する日の最初は暫く放水するのが望ましい。バイオフィルム産生菌がこうした水周りに定着すると除染が困難な場合もしばしばあり、蛇口の交換を余儀なくされる場合もある。

メタロβ-ラクタマーゼ産生緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)による院内アウトブレイクにおける排水管の除菌法としての酢酸

Acetic acid as a decontamination method for sink drains in a nosocomial outbreak of metallo-β-lactamase-producing Pseudomonas aeruginosa

A. Stjärne Aspelund*, K. Sjöström, B. Olsson Liljequist, M. Mörgelin, E. Melander, L.I. Påhlman
*Department of Infection Control, Sweden

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 13-20


背景
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、バイオフィルム形成によって給排水システムに定着する可能性がある。病院環境では、汚染された流し台は院内伝播と関連付けられている。本稿では、排水管に関連したメタロβ-ラクタマーゼ(MBL)産生緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)による長期アウトブレイクについて報告し、これまで報告されたことのない酢酸による除菌方法を提案する。

目的
病院の排水管に関連した MBL 産生緑膿菌による院内アウトブレイクについて報告し、除菌方法としての酢酸を評価すること。

方法
このアウトブレイクの調査は、微生物学的データベース、微生物学的サンプリングおよび分離株のタイピングにより行った。酢酸の抗菌作用および抗バイオフィルム作用について in vitro で評価した。MBL 産生緑膿菌が検出された流し台に、24%酢酸で週 1 回処置を行い、反復培養によりモニタリングした。

結果
2008 年から 2014 年に、MBL 産生緑膿菌の培養陽性患者 14 例が特定された。患者は 3つの病棟に入院しており、それらの病棟では検査により、患者のトイレに設置された 12 本の排水管で MBL 産生緑膿菌が検出された。臨床分離株および排水管由来の分離株をタイピングした結果、同一の株または極めて近縁の株であることが明らかにされた。MBL 産生緑膿菌のバイオフィルムは酢酸に対する感受性が高く、バイオフィルムの最小根絶濃度は 0.75%(範囲0.19 ~ 1.5)であった。定着を認めた排水管を酢酸により毎週処置した結果、培養陰性となり、伝播が止まった。

結論
酢酸は MBL 産生緑膿菌のバイオフィルムに対して高い効果を示し、排水管の汚染除去および院内伝播の予防のための簡易な方法として用いることが可能である。

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監訳者コメント
高温水処理あるいは配管系に塩素系消毒薬を流すなどが、レジオネラ対策の時には標準である。バイオフィルムに酢酸が十分浸透効果があるとは考えにくく、どうしても除染できない場合には配管系の交換が必要になりうる。また MBL 産生緑膿菌のバイオフィルムとMBL 非産生緑膿菌のバイオフィルムとの間に質的差があるとも考えにくい。

患者の手指衛生を向上させる介入:システマティックレビュー

Interventions to improve patient hand hygiene: a systematic review

J.A. Srigley*, C.D. Furness, M. Gardam
*BC Children’s & Women’s Hospitals, Canada

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 23-29


院内病原体は、患者自身の清潔でない手指を介して獲得される可能性があるが、医療関連感染症(HCAI)を予防するための手段としての患者の手指衛生については強調されることが比較的少ない。本システマティックレビューの目的は、患者手指衛生への介入と、通常ケアと比較した際の患者の手指衛生遵守率の改善のHCAI低減への有効性を明らかにすることであった。2014 年 8 月までを対象に、電子データベースと灰色文献を検索した。実験研究および準実験研究について、急性期または慢性期医療施設で実施された患者手指衛生への介入を評価し、HCAI の発生率や患者の手指衛生遵守率をアウトカムとして報告に含めているものを対象とした。すべての段階において、2 名の研究者が独立して実施した。10 件の研究を対象としたが、そのほとんどは対照を設定しない前後比較研究(8 件)であった。介入の大部分(7 件)は複合的であり、医療従事者の手指衛生プログラムと同様に、教育、リマインダー、監査とフィードバック、および手指衛生用製品の提供が含まれた。6 件の研究が HCAI のアウトカムを、4 件の研究が患者の手指衛生遵守率を報告しており、いずれも改善が示されたが、中等度から高度のバイアスのリスクを有していた。結論として、患者手指衛生を向上させるための介入は HCAI の発生率を低減し、手指衛生遵守率を高める可能性があるが、エビデンスの質は低い。今後の研究では、より強固なデザインを用い、アウトカムの選択においてより注意深くあるべきである。

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監訳者コメント
患者の手指衛生は、HCAI 予防のため、と考えると違和感を感じるが、自身の感染予防のためには、できる方がよいであろう。引用された 10 報の論文の中で、8 報でアルコール手指消毒薬が配布あるいは設置され、7 報で教育が実施されていた。アウトカムとして HCAI 予防に寄与しなくとも、入院の機会に学ぶことができるのは患者にとってよいことは間違いない。なお、灰色文献とは、政府刊行物、報告書など通常の出版物流通のルートに乗らない資料をいう。

監査およびモニタリングのためのツールの感染予防および制御プロセスへの発展

Evolution of an audit and monitoring tool into an infection prevention and control process

A. Denton*, A. Topping, P. Humphreys
*University of Huddersfield, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 32-40


背景
2010 年に、ある急性期病院トラストの感染予防・制御チームが、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)の患者を対象とした管理レジメンに、監査およびモニタリングツールを組み込んだ。

目的
監査およびモニタリングツールの導入が CDI 患者のケアおよび管理に影響を及ぼす機序を検討すること。

方法
構成主義的グラウンデッド・セオリーのアプローチを用い、半構造化面接を病棟スタッフ(8 名)、感染予防・制御担当者(7 名)および看護師長(8 名)、ならびにその後、理論的サンプルとして上級マネジャー(4 名)に対して行った。すべての面接は逐語的に筆記し、継続的比較法を用いて、説明的カテゴリーが抽出されるまで分析した。

結果
監査およびモニタリングツールはデイリー・レビュー・プロセスに発展し、全 CDI 患者の管理における必須の側面となった。参加者は、デイリー・レビュー・プロセスが CDI 患者の受けるケアに良い影響を及ぼしたと認識した。デイリー・レビュー・プロセスがケア管理に及ぼす影響を理解するための枠組みとなる主要な 2 つの説明的テーマとして、「教育と学習」および「関係の発展と維持」が抽出された。

結論
デイリー・レビュー・プロセスの一環としての監査およびモニタリングツールの使用は、病棟スタッフ、看護師長および感染予防・制御担当者が、もし相互関係、教育および協力の中心的役割を果たすならば、患者アウトカムを改善し、環境衛生の求められているレベルを達成することを可能にした。これらの所見は、デイリー・レビュー・プロセスの実施の結果得られる行動の変化および患者アウトカムの改善に関する洞察を提供する。

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監訳者コメント
構成主義的グラウンデッド・セオリーとは、社会学分野で広く用いられる質的研究法の一つである。

医療関連感染に関する成績管理の見解と経験の定性的研究

Qualitative study of views and experiences of performance management for healthcare-associated infections

L. Brewster*, C. Tarrant, M. Dixon-Woods
*University of Leicester, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 41-47


背景
標準設定、モニタリング、およびインセンティブを用いた中央主導の成績管理方法は、医療制度における感染予防・制御(IPC)の顕著な特徴となっている。

目的
イングランドの病院における IPC に関連した規制および成績管理の見解と経験を明らかにすること。

方法
医療従事者および管理者との面談 139 件からなる 2 つの定性的データセットを分析した。成績管理および IPC に直接関連するデータを抽出した。データ解析には継続的比較法を用いた。

結果
参加者は、成績管理方法が特定の感染を中心にして行動を誘発したと回答した。説明責任を果たす組織構造を確立する利益が、感染率を減少させた経験的エビデンスの中で認められた。しかし、成績管理は全く無害なものとして経験されたわけではなく、1 つの領域において目標を設定することは、視野を狭くし、他の重要と考えられる課題を過小評価するリスクを伴うことが認められた。金融制裁は特に否定的にみられており、成績管理は、恐怖の文化をもたらし、学習を抑制し、専門職間の関係を崩壊させるリスクと関連していた。

結論
中央主導の成績管理が IPC におけるいくつかの重要な役割を担う場合があるが、IPC が妥当である場合を特定し、その限界を検討することはきわめて重要である、厳しい方法を持続することは、人間関係に影響を及ぼし、改善の努力を継続的に行うことへの抵抗を増す可能性があるが、すべての改善を現場のチームに任せることは欠陥のある戦略であるかもしれない。

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監訳者コメント
成績管理に関するネガティブな影響は、もっともな結果である。評価することは大切だが、改善を目指してその先の対応をすることに現場は苦労している。そのことを再認識できた。

医療従事者の表面への接触、ケアの種類および手指衛生の間の関係:個室型の 1 病棟における観察研究

Relationship between healthcare worker surface contacts, care type and hand hygiene: an observational study in a single-bed hospital ward

M-F. King*, C.J. Noakes, P.A. Sleigh, S. Bale, L. Waters
*University of Leeds, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 48-51


本研究では、手指衛生と、病室における医療従事者の表面への接触頻度との関係を定量化した。表面への接触と手指衛生を、英国の個室型の 1 病棟で 6 種類のケアについて記録した。表面への接触は、多くの場合ランダムでないパターンを示したが、患者への接触の前後での手指衛生はケアの種類に有意に依存している(P = 0.001)。手指衛生遵守率は表面への接触回数と相関したが (95%信頼区間 1.1 ~ 5.8、P = 0.002)、病室で過ごした時間とは相関しなかった。このことは、医療従事者が無意識に手指衛生に対する潜在的な必要性を感じていた可能性があることを示しており、この所見は、今後手指衛生教育プログラムに焦点を当てる上での支持と支援につながると考えられる。

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監訳者コメント
WHO手指衛生 5 つのタイミングでは、患者ゾーンに滞在している間は清潔無菌操作や体液曝露がなければ、環境表面に触れてもその前後に手指衛生を必要としていない。医療従事者による環境への接触と手指衛生の関係は非常に複雑であり、本研究結果なども踏まえて今後引き続き検討が続けられていくであろう。

重症患者におけるカルバペネム耐性腸内細菌科細菌の保菌および感染:マッチングによるコホートを用いて非保菌者と比較する後向き研究

Carbapenem-resistant Enterobacteriaceae colonization and infection in critically ill patients: a retrospective matched cohort comparison with non-carriers

Y. Dickstein*, R. Edelman, T. Dror, K. Hussein, Y. Bar-Lavie, M. Paul
*Rambam Health Care Campus, Israel

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 54-59


目的
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)と関連する疾患および死亡は基礎疾患や CRE の内在的特性を介しているのかどうかを評価する手段として、CRE 保菌は臨床感染の発生と関連しているかどうかを検討する。

方法
このマッチングによるコホートを用いた後向き研究では、集中治療室(ICU)での侵襲性感染症の発生を CRE 保菌患者とマッチさせた非保菌者とで比較した。主要評価項目は、CRE 保菌者における保菌 CRE と同一属の CRE に起因する感染および非保菌者における保菌者と同一細菌のカルバペネム感性株に起因する感染とした。退院と死亡を競合事象とした。コホート全体で、また Acute Physiology and Chronic Health Evaluation(APACHE)II スコアによりマッチさせマッチングにより層別化したコホート内で、競合リスクハザード解析を実施した。

結果
合計で CRE 保菌者 146 例を非保菌者 292 例と比較した。患者は、年齢、腎不全、侵襲性感染歴、入院歴、APACHE II スコア、人工呼吸器使用期間、入院期間および CRE 保菌などのほとんどの腸内細菌科細菌感染のリスク因子について適切にマッチされていた。回帰分析では、CRE 保菌が腸内細菌科細菌感染と関連する独立変数であった(要因特異的ハザード比 2.06[95%信頼区間1.03 ~ 4.09])。APACHE II によりマッチさせたコホート(284 例)の回帰分析では、CRE 保菌は依然として腸内細菌科細菌感染と有意に関連していた(要因特異的ハザード比 3.32[95%信頼区間1.31 ~ 8.43])。

結論
CRE 保菌は ICU 患者において保菌株による感染リスクが少なくとも 2 倍高かった。

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監訳者コメント
CRE 保菌は、CRE による感染症だけでなく、腸内細菌科細菌による感染症そのもののリスクを上昇させることを報告した研究である。2 群間は適切にマッチされているが、やはり後向きの症例対照研究であり結論の妥当性には限界があるように思われる。

心臓外科集中治療室でのカルバペネム耐性腸内細菌科細菌:感染制御対策の成功

Carbapenem-resistant Enterobacteriaceae on a cardiac surgery intensive care unit: successful measures for infection control

C.S. Abboud*, E.E. de Souza, E.C. Zandonadi, L.S. Borges, L. Miglioli, F.C. Monaco, V.L. Barbosa, D. Cortez, A.C. Bianco, A. Braza, J. Monteiro
*Instituto Dante Pazzanese de Cardiologia, Brazil

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 60-64


背景
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)は、集中治療室(ICU)での手術部位感染症(SSI)の原因である。本研究では、CRE 保菌を減少させるための介入および制御対策の影響、ならびに CRE アウトブレイク後の心臓外科病院 ICU の患者における感染率を評価することを目的とした。

方法
心臓外科手術後の成人の ICU における保菌患者または感染患者コホートの介入前および後の状態を評価する観察研究を 2013 年 4 月から 2014 年 12 月に実施した。通常のスクリーニング対策およびコホート看護とともに、ベッドサイドにアルコールゲルを用意し、洗い流さない 2%クロルヘキシジン含浸タオルを用いて毎日清拭し、1 日 3 回患者周辺の表面を消毒することで介入期間中の制御対策を強化した。

結果
CRE 保菌率(P < 0.001)、中心ライン関連血流感染率(P < 0.002)、SSI率(P < 0.003)は介入後期間に有意に低下した。

結論
実施した対策は、心臓外科 ICU において CRE 保菌および感染の制御に有効であった。

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監訳者コメント
CRE の制御にクロルヘキシジンによる患者の清拭、環境消毒、手指消毒の 3 つの強化が有効であったことを報告している。どの方法もすでに多数の研究でその有用性が示されており、それらを組み合わせることで CRE のコントロールもできることが期待される。

カルバペネム加水分解β-ラクタマーゼ KPC-2 を保有するセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)分離株の中国における出現

Emergence of Serratia marcescens isolates possessing carbapenem-hydrolysing β-lactamase KPC-2 from China

X. Lin*, Q. Hu, R. Zhang, Y. Hu, X. Xu, H. Lv
*Zhejiang Provincial People’s Hospital, China

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 65-67


中国の Zhejiang Provincial People’s Hospital で、カルバペネム耐性セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)分離株 83 株が回収された。全分離株に対するイミペネム、メロペネムおよびエルタペネムの最小発育阻止濃度は、2 ~ > 128 μg/mL であった。PCR 法により、S. marcescens 分離株は 63 株肺炎桿菌カルバペネマーゼ(KPC)-2 を産生することが示された。クローン A(15 株)およびクローン B(41 株)が主要な 2 つのクローンであり、2011 年から 2014 年にかけてクローン A 株は次第にクローン B 株に取って代わられた。これらの結果は、カルバペネム耐性の重要な機序として blaKPC-2 陽性 S. marcescens が当院で出現したことを示している。

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監訳者コメント
KPC は米国を中心に増加しているカルバペネマーゼである。東南アジアでは KPC 産生株はまだ分離率が低く、日本でも国内発生例はほとんど報告されていない。中国での増加は東南アジアにおける増加につながる可能性もあり、今後注意が必要である。

アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)定着を迅速に検出するためのリアルタイム PCR 法の臨床的検証★★

Clinical validation of a real-time polymerase chain reaction assay for rapid detection of Acinetobacter baumannii colonization

P. Blanco-Lobo*, V. González-Galán, M. García-Quintanilla, R. Valencia, A. Cazalla, C. Martín, I. Alonso, P. Pérez-Romero, J.M. Cisneros, J. Aznar, M.J. McConnell
*University Hospital Virgen del Rocı´o/CSIC/University of Seville, Spain

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 68-71


リアルタイム PCR を用いた手法は、積極的サーベイランス中のアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)保菌患者の検出能力に関して評価を受けていない。この前向き二重盲検試験では、積極的サーベイランスの 397 検体中の A. baumannii 検出にリアルタイム PCR 法は従来の培養よりも高い感度(100%)および特異度(91.2%)を有し、3 時間以内に結果が得られることが示された。受信者動作特性曲線解析により、この方法には 97.7%の診断精度があることが示された(95%信頼区間 96.0 ~ 99.3%)。この方法で A. baumannii の伝播を予防する感染制御対策の迅速な実施を促すことが可能になるであろう。

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監訳者コメント
アシネトバクター・バウマニは、患者の腸管、皮膚、創部に保菌すると同時に、グラム陰性菌でありながら乾燥に強いため環境に長期間生存するため、環境と患者が供給源となり、一旦アウトブレイクがおこると、その制圧には多大な時間と労力、そして費用がかかる。積極的スクリニーングの部位として、鼻腔、咽頭、気管吸引、創部、皮膚、直腸があるが、培養は感度が低く 13.5%から 85%と報告により大きくばらつく。培養によるスクリーニングは、偽陰性をもたらし、適切な接触予防策の妨げとなる。リアルタイム PCR による保菌スクリーニングは、3 時間という短時間で高感度・高特異度で実施できるため、MDRA(多剤耐性アシネトバクター)によるアウトブレイク時のスクリーニングとしては有効な方法と考えられる。

整形外科手術中に発生する飛沫から外科医を守る手術用ヘルメットシステムの in-vitro 評価

In-vitro evaluation of surgical helmet systems for protecting surgeons from droplets generated during orthopaedic procedures

R. Wendlandt*, M. Thomas, B. Kienast, A.P. Schulz
*University Medical Center Schleswig-Holstein, Germany

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 75-79


背景
手術室および手術着は手術部位感染症から患者を守るようデザインされている。しかし、手術チームには眼や皮膚粘膜の曝露を介した血液由来病原体による感染リスクが依然としてある。従来の術衣においても汚染に対してはある程度の防護が得られるが、手術用ヘルメットシステムは、外科医と手術を行っている術野との間に粒子、エアロゾル、液体に対するバリアをつくることで高レベルの防護を得ることを意図している。

目的
本研究の目的は、人工股関節全置換術および人工膝関節全置換術の in-vitro シミュレーションを実施し、整形外科手術中の飛沫による外科医の汚染を手術用ヘルメットシステム着用と従来の術衣着用とで比較することであった。

方法
人工股関節全置換術および人工膝関節全置換術は、マーカー液で絶えず湿潤させた多孔質人工骨を用いて実施した。それぞれの手術で、被験者 10 例が従来の術衣または手術用ヘルメットシステムと一体化した上着を着用して実施した。手術のシミュレーション後、紫外線照明下で被験者の写真を撮影した。術衣すべてを着用中および術衣を脱いだ後の画像を、染みのついた部分に関して評価した。

結果
従来の術衣着用中の汚染リスクは 30%であった。手術用ヘルメットシステムを用いた被験者 20 例(各手術 10 例ずつ)のいずれにおいても、防護衣を脱いだ後に染みは検出されなかった。

結論
本研究は、手術用ヘルメットシステムの防護特性は従来の術衣より優れていることを示している。高リスクの手術時に手術用ヘルメットシステムを用いることで、外科医の血液媒介感染への職業曝露を減少させることが可能である。

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監訳者コメント
股関節や膝関節の人工関節置換術時の術後感染については、これまで多大な努力が払われ、一定の結果を得ることができている。針刺し・切創は職業感染の重大な関心事であるが、術者への血液体液飛散についてはあまり顧みられていない現状がある。本実験においては、血液体液の疑似物質として蛍光色素を用い、手術シミュレーションを実施した結果、ヘルメットシステムを導入することでほぼゼロにすることできることが証明された。

転移性脊椎腫瘍に対する手術を受けた患者の生存および手術部位感染の影響

Survival of patients undergoing surgery for metastatic spinal tumours and the impact of surgical site infection

R.A. Atkinson*, B. Davies, A. Jones, D. van Popta, K. Ousey, J. Stephenson
*Salford Royal NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 80-85


背景
転移性脊椎腫瘍患者の生命予後は限られている。手術合併症は、入院期間の延長や再入院につながる可能性があり、極めて望ましくない。手術部位感染(SSI)はそのような合併症の一つであり、極端な場合には死に至ることもある。

目的
脊椎転移に対する手術後の患者の生存に SSI が及ぼす影響を評価すること。

方法
英国の大規模 3 次紹介病院にて脊椎転移に対する手術を受けた患者 152 例について、人口統計学的、手術関連および生存に関するデータが収集された。ベースライン時に、米国麻酔学会(ASA)分類および改訂徳橋スコア(Revised Tokuhashi Score;RTS)が、それぞれの健康状態および予後の評価項目として算出された。セミパラメトリックなコックス比例ハザードモデルによる生存分析を用いて、共変量と生存の関係が評価された。

結果
17 例(11.2%)に SSI が発現した。全体として、術後生存期間の中央値は 262 日(95%信頼区間[CI]190 ~ 334日)、12か月生存率は 42.1%であった。RTS(ハザード比 0.82、95%CI 0.76 ~ 0.89、P < 0.001)および ASA 分類(ハザード比 1.37、95%CI 1.03 ~ 1.82、P = 0.028)は生存と有意に関連しており、生存が良好であったのは RTS が高く ASA スコアが低い患者であった。感染の有無は予後において重要であり、SSI のない患者は生存が良好であった(P = 0.075)。

結論
脊椎転移に対する手術を受けた患者の 12か月生存率は約 42%であった。RTS および ASA スコアは、両者の組み合わせ、もしくは単独で、患者の生存の指標として用いられるかもしれない。SSI は生存に対していくらか負の影響を及ぼすが、統計学的有意性を確認するためにはより多くの症例数が必要であろう。

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監訳者コメント
英国 NICE 臨床ガイドライン 75 によると、脊椎転移のある患者への手術適応は、疼痛、脊椎の不安定性および神経学的症状の緩和であり、3 か月以上の生存が望める患者に対して実施される。したがって、SSI の発生はあってほしくない合併症である。SSI を発生した患者は、死亡率が 2 倍となり、ICU 入室期間も 60%延長する。改訂徳橋スコアとは、転移性腫瘍患者の予後を、全身状態、脊椎以外の他の骨転移数、脊椎転移数、原発巣の種類、腫瘍臓器の転移の有無、麻痺の状態を点数化して、予測するものである。
(参考文献:
http://www.hospat.org/assets/templates/hospat/pdf/report_2009/2009-a1.pdf

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)による末梢静脈カニューレ関連の血流感染症を減らす:オーストラリアの大規模医療機関におけるケアバンドル実施の成功

Reducing Staphylococcus aureus bloodstream infections associated with peripheral intravenous cannulae: successful implementation of a care bundle at a large Australian health service

D. Rhodes*, A.C. Cheng, S. McLellan, P. Guerra, D. Karanfilovska, S. Aitchison, K. Watson, P. Bass, L.J. Worth
*Alfred Health, Australia

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 86-91


背景
医療関連の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症(SAB)は、罹病、死亡および医療費の増大をもたらすが、これらの感染は多くの場合予防可能であると考えられている。

目的
オーストラリアの大規模医療機関において、末梢静脈カニューレ(PIVC)による医療関連SAB を減らすことを目標とし、その挿入と維持に関するプロセスを改善した多面的な予防プログラムを実行すること。

方法
介入前の12か月間、ベースラインとしての臨床状況を評価した。この後2013 年 1 月から 9 月までの間に、医療関連 SAB のリスクを低減させる予防プログラムを導入した。これには職員教育や記録の改善(静脈炎のスコア化など)、標準化された器具の採用が含まれる。そして介入後 27 か月間にわたって監査を行い、医療関連 SAB および PIVC 関連感染の発生率をベースラインと介入後で比較した。介入効果と変化した時期の決定には、分割時系列分析とベイジアン変化点分析を用いた。

結果
PIVC の挿入および管理に関する記録は、介入後に有意に改善し、4 日間以上の PIVC 留置率も有意に減少していた(2.6%対 6.9%、P < 0.05)。ベースライン期間中、医療関連SAB は合計で 68 件発生したが(1.01/10,000病床利用日)、このうち 24 件が PIVC 関連感染であった(全体の 35%、発生率 0.39/10,000病床利用日)。介入後では、全 83 件の医療関連 SAB イベントが発生(0.99/10,000病床利用日)、うち 12 件が PIVC 関連感染であった(全体の 14.4%、発生率 0.14/10,000 病床利用日)。介入後の PIVC 関連 SAB の発生率はベースラインと比較して 63%低く(P = 0.018)、変化点は 2013 年 10 月のバンドルの全面的実施後に認められた。

結論
病院規模での多面的予防キャンペーンの導入成功により、PIVC 関連 SAB の発生率が低下した。費用対効果および持続可能性の評価が必要である。

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監訳者コメント
末梢カテーテル関連感染症、特に黄色ブドウ球菌による血流感染症の発生は、医療関連感染症の中でも予防が急務なものである。今回の検討ではデバイスの使用の減少よりも、カテーテルの扱いのプロセスの向上が、SAB 発生の抑制につながっていた。静脈炎スコアの導入などの工夫が、行動変容・動機づけに影響したところは大きいが、著者も指摘している通り、長期にわたって持続させるための方策もまた大きな課題といえる。

ポリエステル製およびポリエステル綿混紡繊維製の看護師白衣の細菌汚染

Bacterial contamination of nurses’ white coats made from polyester and polyester cotton blend fabrics

P. Gupta*, N. Bairagi, R. Priyadarshini, A. Singh, D. Chauhan, D. Gupta
*National Institute of Fashion Technology Delhi, India

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 92-94


インドでは看護師は制服の上に白衣を着用する。本小規模研究では、ポリエステル繊維およびポリエステル綿混紡繊維の布片を看護師の白衣に縫い付け、1 シフト後に検体として回収し汚染を評価した。結果から、微生物の付着は繊維の種類に影響され、ポリエステル綿混紡繊維についた菌量はポリエステル繊維についた菌量より 60%多かったことが示された。繊維の特性と微生物汚染との相関を明確にするにはさらなる研究の実施が必要である。

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監訳者コメント
微生物の付着と増殖が最も少ない繊維が何かについては、まだ一致した結論が出ていない。繊維の親水性と細菌の吸着が関連しているという報告もあり、それによれば、ビスコース > 綿 > 絹 > ポリエステルの順であった。一方で、同じ材質であっても、その表面構造によって菌の付着と生存期間が異なるとも言われる。実際の臨床現場から得た検体を用いた同様の検討の結果が待たれる。

低出生体重児におけるスタフィロコッカス・カピティス(Staphylococcus capitis)による遅発性敗血症、「新生児敗血症(neonatalis)」:新たな疾患概念か?

Late-onset sepsis due to Staphylococcus capitis ‘neonatalis’ in low-birthweight infants: a new entity?

M. Ben Said*, S. Hays, M. Bonfils, E. Jourdes, J-P. Rasigade, F. Laurent, J-C. Picaud
*University Hospital Croix Rousse, France

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 95-98


超低出生体重児の 5 人に 1 人が入院中に敗血症を発症する。早期産児におけるスタフィロコッカス・カピティス(Staphylococcus capitis)による敗血症の出現は最近になって観察された。本研究の目的は、早期産児における S. capitis 関連敗血症の臨床的重症度を評価することであった。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌による敗血症を発症した乳児 105 例のうち、74 例が S. capitis によるものであった。重症の乳児は、S. capitis 以外のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌群(32.0%)よりも S. capitis 群の方が多かった(55.4%)(P = 0.03)。多変量解析の結果、S. capitis 関連敗血症が、重症であることの独立したリスク因子であることが示された。

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監訳者コメント
S. capitis はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)の一つであるが、従来の生化学的性状による同定は信頼度が低く、このため本菌の病原性と感染症に関する臨床的な特徴ははっきりしてはいなかった。本検討では、MALDI-TOF による同定を行い、他のCNS との比較を試みている。新たな疾患概念かどうかは今後の検討を待たねばならないが、非常に興味深い知見である。

敗血症の正確なコーディング:臨床的意義と経済的影響

Accurate coding in sepsis: clinical significance and financial implications

Y.T. Chin*, N. Scattergood, M. Thornber, S. Thomas
*University Hospital of South Manchester, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 99-102


敗血症は、世界的に、重大な医療問題であり死亡の主要な原因である。英国の院内死亡率の統計値および診療の報酬支払い額は、臨床コーディングデータをもとに計算されている。これらのデータの正確度は、コーディングの質に左右される。本研究の目的は、有意な菌血症を有する患者が敗血症とコードされているかどうかを調べ、ミスコードの経済的コストを試算することであった。1 か月間に有意な菌血症を有した患者 54例のうち、敗血症とコードされていたのはわずか 19%であった。このために不当に高い院内死亡率が算出されている可能性がある。さらにはこの結果、1 か月間のみで 21,000 ポンドの過少支払いが生じていた。

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監訳者コメント
英国の医療機関では ICD-10 を用いて、患者疾病のコーディングがなされ、診療報酬の支払いと死亡率の算出が行われている。今回の検討では,菌血症例の臨床情報の詳細を確認し、実際に敗血症・重症敗血症・敗血症性ショックであった例が正しく病名登録されていたかを調べたものである。有意な菌血症例 54 例のうち、敗血症の基準を満たしたのは 50 例であったが、このうち敗血症と登録されていたのは 10 例(19%)に過ぎなかった。つまり診療報酬はこの分過少に請求されており、また菌血症の死亡率も高く算出されていたことになる。同様の状況は、日本の保険病名登録でも認められると考える。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
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