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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

多剤耐性カンジダ・オーリス(Candida auris):病院感染に「新入り」か?★★

Multidrug-resistant Candida auris: ‘new kid on the block’ in hospital-associated infections?

A. Chowdhary*, A. Voss, J.F. Meis
*University of Delhi, India

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 209-212


侵襲性カンジダ・オーリス(Candida auris)感染は、2009 年に耳のスワブで、2011 年に血液培養で初めて報告されて以来、複数の大陸にまたがる多くの国々で報告されている。本稿は、この新興の多剤耐性病原菌の疫学について現在の知見を概説する。また、種同定の重要性と、広く利用されている多くの同定方法の欠点を検討する。我々は、各病院がこの病原菌による感染の予防・管理方針を立てることを推奨する。こうした方針の内容と現在の知識基盤の限界も考察する。

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監訳者コメント
2016 年 11 月 4 日米国疾病センタ-(CDC)は公衆衛生週報(MMWR)で、C. auris が大きな脅威があると警告を出しており今後注目する必要がある。
http://www.cdc.gov/mmwr/volumes/65/wr/pdfs/mm6544e1.pdf

クロルヘキシジン耐性の獲得 -「消毒適正使用支援(antiseptic stewardship)」のイニシアチブを確立するときか?

Acquired resistance to chlorhexidine – is it time to establish an ‘antiseptic stewardship’ initiative?

G. Kampf*
*Infection Control Science, Germany

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 213-227


クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)は、手指衛生、皮膚消毒、口腔ケア、患者の清拭などにおけるさまざまな適用で使用される抗菌薬である。使用の増加は、細菌の耐性獲得発現の懸念をもたらす。CHG の臨床分離株に対する最小発育阻止濃度(MIC)を含む公表データを検討し、耐性を決定する疫学的カットオフ値と比較した。CHG 耐性は、大腸菌(Escherichia coliM)、サルモネラ(Salmonella)属菌、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌ではめったに認められない。しかし、エンテロバクター(Enterobacter)属菌、シュードモナス(Pseudomonas)属菌、プロテウス(Proteus)属菌、プロビデンシア(Providencia)属菌、エンテロコッカス(Enterococcus)属菌では、分離株の CHG 耐性がしばしば認められる。CHG 耐性は、超多剤耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)などの多剤耐性分離株で検出される場合がある。MIC が高い分離株ほど消毒用 CHG 感受性が低いことが多い。抗菌薬との交差耐性は依然として議論が分かれているが、いくつかの研究から、CHG への全面的な曝露が一部の抗菌薬に対する耐性リスクを増加させることが示唆される。CHG 耐性は多くのアウトブレイクや医療関連感染の原因となっている。平均的な集中治療室の場合、液体石けんや擦式アルコール製剤に CHG が含まれるなら、CHG 曝露の大半はそうした手指衛生製剤によるものと説明されるだろう。致死量未満の濃度の CHG 曝露は、いずれも新興の、抗菌薬耐性がよく知られた種であるアシネトバクター(Acinetobacter)属菌、肺炎桿菌、Pseudomonas 属菌の耐性を増強する可能性がある。院内病原菌へのさらなる選択圧を低下させるために、高価な薬剤である CHG を患者利益の明らかな適応症に限定し、いかなる利益もない、あるいは利益が疑わしいものへの適用は除外することが意味のあることと思われる。

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監訳者コメント
抗菌薬耐性と消毒薬抵抗性は同一遺伝子で規定されているわけではないが、こうした薬剤が多用されている医療環境では、微生物が抗菌薬に対しても消毒薬に対してもそれぞれの多用により選択圧がかかるため高度耐性(抵抗性)菌の分離比率が高くなると考えられる。

病院における抗菌薬使用の最適化:病院管理者の視点の定性的研究

Optimizing antibiotic usage in hospitals: a qualitative study of the perspectives of hospital managers

A. Broom*, A.F. Gibson, J. Broom, E. Kirby, T. Yarwood, J.J. Post
*University of New South Wales, Australia

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 230-235


背景
病院における抗菌薬の最適化は、急増する耐性に関連して、非常に重要であり、ますます優先度が高まっている。病院内での抗菌薬使用を最適化するためには、医師重視にもかかわらず、非処方者を含むさまざまな関係者がどのように診療や診療の変更に影響を及ぼすかを理解する必要がある。

目的
今回の研究は、オーストラリアの病院管理者の、抗菌薬耐性、抗菌薬ガバナンスの管理、経営上の優先順位に対する臨床上の優先順位の折り合いに関する視点を理解するために計画した。

方法
2014 年および 2015 年、オーストラリアの 3 病院の管理者 23 名が定性的半構造的面接に参加した。データは系統的に符号化され、テーマに関して分析された。

結果
経営上の視点からの結果は以下のものである。(1)相反する要求が抗菌薬ガバナンスの優先順位付けの支障となる、(2)監査およびモニタリング方法に効果が不十分なため、変更に対する合理的説明が制限される、(3)医師に対する臨床的教育およびフィードバックが少ない、(4)経営側に向けられた変更プロセスは、医師の間に抗菌薬使用に関して認識された「説明責任を明確にする文化」がないことに制約されている。

結論
病院管理者は、抗菌薬の最適化およびガバナンスの実現に向けて考慮すべき構造的問題や専門職間の問題を報告している。これらの問題は、病院において管理者が直面する他の問題と比較して最適化の優先順位を低くしており、管理者に変化の理解と、変化への障害への取り組みを促す抗菌薬適正使用支援プログラムの重要性を示している。

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監訳者コメント
抗菌薬適正使用支援プログラムの世界的な潮流が確認できる論文である。

成人における医療関連バンコマイシン耐性腸球菌の動向およびリスク因子

Temporal trends and risk factors for healthcare-associated vancomycin-resistant enterococci in adults

N. Monteserin*, E. Larson
*Columbia University Medical Center, USA

Journal of Hospital Infection(2016)94, 236-241


背景
特定の地域および医療システム内におけるバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染率の動向に関する公表データは少ない。

目的
VRE による医療関連感染症の動向およびリスク因子を明らかにすること。

方法
本研究は、2006 年から 2014 年に大規模大学医療システムの 3 病院で発生した、腸球菌感染症を有するすべての成人の退院を対象とした。二変量解析を用いて、バンコマイシン感受性菌または耐性菌による感染症と関連する統計学的に有意な因子を明らかにした。統計学的に有意な変数を最終的なロジスティック回帰モデルに含めた。バンコマイシン耐性の腸球菌感染症の割合が経時的に変化したかどうかについて、動向を評価した。

結果
初回の医療関連腸球菌感染症を有する成人 10,186 例を標本に含めた。最終的なロジスティック回帰モデルによる有意な VRE のリスク因子(P ≦ 0.05)は以下の通りであった:3 次病院 1、集中治療室入室期間、Charlson 併存疾患指数高スコア、免疫抑制薬または化学療法薬治療の既往、入院の既往、腎不全、悪性疾患、感染症前の入院期間延長、感染症前の抗菌薬使用、女性、および冬季または春季の感染症罹患。2006 年から 2014 年の間、耐性感染率は 37.1%から 42.9%の間でばらつきがあったが、バンコマイシン耐性の経時的な割合には有意差はなかった(P = 0.36)。

結論
リスク因子を対象とする研究は、VRE 感染症の症例数を減少させる上で重要である。

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監訳者コメント
3 つの 3 次医療施設による VRE 感染の危険因子解析を行った論文である。ロジスティック回帰分析の結果はおおむねリーズナブルなものであったが、「病院 1」が危険因子の一つになっていたことが気になった。VRE 感染のリスク因子は施設間で共通のものだけでなく、施設特有のリスクが存在するのでは、と思われた。

転換点:クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症に罹りやすい患者と病院の抗菌薬管理プログラム

The tipping point: patients predisposed to Clostridium difficile infection and a hospital antimicrobial stewardship programme

S.D. Stites*, C.A. Cooblall, J. Aronovitz, S.B. Singletary, K. Micklow, M. Sjeime
*University of Pennsylvania, USA

Journal of Hospital Infection(2016)94, 242-248


背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)の発生率と重症度は、近年上昇している。予測モデルは、感染症発症前にリスク患者を同定する上で有用となり得る。高リスク患者を早期に同定することは、抗菌薬管理プログラムや、高リスク患者で CDI を予防するためのその他のイニシアチブにとって有用となり得る。

目的
入院時に CDI の高リスクを有する患者を同定する予測モデルを作成すること。早期に同定するためのこのモデルを評価して、既に実施されている抗菌薬管理プログラムの効果を改善できるかどうかを明らかにした。

方法
ロジスティック回帰分析および受信者動作特性(ROC)曲線解析を用いて、入院患者の後向きコホートにおける入院時の CDI のリスクを予測する解析モデルを作成した。このモデルを前向きコホートで検証した。モデルによるリスク予測と既に実施されている抗菌薬管理プログラムとの一致度を評価した。

結果
本モデルは、後に検査陽性により CDI のリスクが高いとされた患者の 55%を入院時に同定した。抗菌薬使用に関する修正可能なリスク因子を有する高リスク患者 32 例当たり 1 例が、CDI について検査陽性であった。院内の抗菌薬管理プログラムのリスク基準を満たす前に、患者の半数(53%)が検査陽性であった。

結論
解析モデルにより、後に C. difficile 検査陽性を示した多くの患者を、入院時に前向きに同定できた。この早期同定のアプローチは、CDI 予防を改善するためにより早期の段階で感受性検査および抗菌薬療法変更を進める上で、抗菌薬管理プログラムにとって有用となる可能性がある。

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監訳者コメント
CD 感染の予測モデルを作成し、その有用性を検討した論文である。ゴールは CD の予防である。実際にどの程度感染制御に寄与するのか、続報が楽しみである。

血液透析病棟における C 型肝炎ウイルスのアウトブレイク:失敗から得た教訓

Hepatitis C virus outbreak in a haemodialysis unit: learning from failures

*S. Senatore, C. Galli, A. Conti, M. Faccini, S. Cantoni, G. Ciconali, G. Mainardi, A. Lamberti, R. Dighera, F. Radice Trolli, C. Oggioni, L. Angelini Sironi, M. Cozzolino, A.R. Zanetti, L. Romanò
*ATS Milano, Italy

Journal of Hospital Infection(2016)94, 249-252


イタリアの血液透析センターにおける C 型肝炎ウイルス(HCV)のアウトブレイクの調査から、患者 3 例が同じウイルス株に感染しており、同じ部屋において同じ時間帯に血液透析を受けていた慢性 HCV感染患者 1 例のウイルス株と同一であったことが示された。我々の観察研究の分析により、可能性のある伝播経路が多数特定されたが、今回の小規模クラスターにおいて HCV 拡散の経路は特定できなかった。このアウトブレイクでは、医療スタッフによる血液媒介感染症に対するスタンダードプリコーションの不履行が原因で、血液透析患者に対して HCV 院内伝播の機会が繰り返し生じていたことが確認された。

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監訳者コメント
透析ユニットで発生した C 型肝炎アウトブレイクの疫学調査の論文である。患者毎の手袋の交換や手指衛生、薬液調整エリアの管理など基本的な感染対策が遵守されていなかったなど複数の問題点が記載されていたが、マニュアルの整備や教育のシステムが十分に機能していなかったため、それらの問題点を改善する機会がなかったのかも知れない。

手袋ディスペンサーボックスのデザインは手袋の汚染に影響を及ぼすことができるのか?

Can the design of glove dispensing boxes influence glove contamination?

O. Assadian*, D.J. Leaper, A. Kramer, K.J. Ousey
University of Huddersfield, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 259-262


背景
臨床の場で手袋ボックスの細菌汚染を検討した研究はほとんどない。本観察研究の目的は、手袋 1 枚が縦に袖口の側から先に出てくる新たな手袋包装システムでは手袋および箱の開口部周辺表面の汚染が従来の手袋ボックスより低レベルであるかどうかを調査することであった。

方法
研究に参加する 7 施設に、縦型手袋ディスペンサーシステム(改良ボックス)と従来のボックスを供給した。手袋ボックスを開ける前に、開口部周辺の表面から微生物学的試料を採取し、表面汚染のベースラインレベルを確定した。いったん手袋ボックスを開けたら、各ボックスの最初の 1 組の手袋を生菌数検査用試料とした。その後、研究参加施設は 6 週間にわたり毎週訪問を受け、同様の微生物学的評価を実施した。

結果
改良ボックスの開口部付近表面は、従来のボックスに比べ、経時的に有意に汚染が少なく(P < 0.001)、開口部周辺の汚染は平均 46.7%少なかった。全体として、改良ボックスからの手袋は、従来のボックスからの手袋に比べ有意に少ないコロニー形成単位を示した(P < 0.001)。全施設を 6 週間全体にわたって比較したところ、改良ボックスからの手袋は細菌汚染が 88.9%少なかった。

結論
手袋ボックスデザインのこのようなシンプルな改善により、未使用手袋の汚染が減少する。そのような改良により、手袋を使用する場での微生物交差伝播のリスクを低下することができると考えられる。しかし、そのような利点が、厳格な手指衛生遵守と非無菌の単回使用手袋の適切な使用の替わりになることはない。

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監訳者コメント
そもそも問題は、汚染した手で手袋のような個人防護用具を取り出すところにある。そういう意味では、デザインの改善により開口部の汚染が減っても、取り出される手袋表面の汚染は避けられない。「個人防護用具を取り出す際には、手指衛生を行ってから取り出す」という教育を徹底することが重要である。
もちろんそれはそれとして、本論文で紹介されているような「モノ」側の改善が行われることも重要ではあるが。

クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の機械的ベクターとしてのイエバエ

The housefly Musca domestica as a mechanical vector of Clostridium difficile

M.P. Davies*, M. Anderson, A.C. Hilton
*Killgerm Chemicals Ltd, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 263-267


背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染は、イエバエにより伝播される可能性のある細菌性医療関連感染であり、それはイエバエの生態がヒトと密接に関連し、世界各地に分布する性質のためである。

目的
機械的にも細菌摂食後にも C. difficile を伝播するイエバエ の能力を明らかにすること。

方法
イエバエ を C. difficile の栄養型細胞および芽胞の別個の縣濁液に曝露し、次に曝露直後に選択的寒天培地上にハエを置き、1 時間の間隔をあけて培地上に置くことを繰り返し、C. difficile の機械的伝播を評価した。ハエの排泄物を培養し、消化管を解剖し、細胞および芽胞の内在を判定した。

結果
C. difficile の栄養型細胞縣濁液および芽胞縣濁液に曝露したイエバエは、その後、表面と接触すると 4 時間まで細菌を機械的に伝播することができた。ハエ 1 匹あたりの最大数のコロニー形成単位(CFU)は、曝露直後に伝播された(平均 CFU は、栄養型細胞縣濁液 123.8 +/- 66.9、芽胞縣濁液 288.2 +/- 83.2)。1 時間後、これは減少していた(栄養型細胞縣濁液 21.2 +/- 11.4、芽胞縣濁液 19.9 +/- 9)。イエバエの消化管から分離された平均 C. difficile CFU は35 +/- 6.5、糞 1 カ所あたりの平均 C. difficile CFU は 1.04 +/- 0.58 であった。C. difficile はハエの排泄物から 96 時間まで回収することができた。

結論
本研究では、病院内での C. difficile の環境内残存および伝播の一因となるイエバエの能力を記述し、臨床領域におけるこの微生物の現実的なベクターとしてのハエに注目した。

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監訳者コメント
ハエを嫌う人は多いが、その実害について考えた人は少ないだろう。実は MRSA や大腸菌などの細菌がハエに付着して伝播することはすでに研究で明らかになっている。本研究は C. difficile においてもハエが伝播に関与することを示したものである。医療施設でハエが飛んでいることは、感覚的に嫌悪感を催すだけでなく、医療関連感染上も実害がある可能性があることを啓蒙していかなければならない。

手袋の消毒:実施可能だが、消毒薬/手袋の組合せに注意を払うこと

Disinfection of gloves: feasible, but pay attention to the disinfectant/glove combination

S. Scheithauer*, H. Häfner, R. Seef, S. Seef, R.D. Hilgers, S. Lemmen
University Medical Center Göttingen, Germany

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 268-272


背景
手指衛生の遵守は、患者 1 例のケア中に立て続けに手指消毒が必要になることで複雑化している。そのような状況では、手袋の消毒によりさらに良好なワークフローが促進され、遵守率が最適になると考えられる。

目的
5 つの異なる手指消毒液を 3 つの異なる手袋のタイプと組み合わせて、個々の効果を比較することにより手袋消毒の効果を解析した。

方法
調査は、DIN EN 1500:2013 にしたがって実施した。すべての組合せについて、以下の解析 10 回を実施した。(1)右/左手指の検査、1 回目および 5 回目の E. coli K12 NCTC 10538 による汚染後の消毒効果、(2)汚染後の回収率、(3)減少効果、(4)手袋の指先を浸漬した試料の培養、(5)漏れがないかのチェック。手袋を着用しない手指の消毒を追加のベンチマークとして実施した。

結果
すべての消毒薬/手袋の組合せの消毒効果は、手袋なしの場合より良好であった。8 つの組合せで、消毒効果は常に 5.0 log10 超であった。手袋および消毒薬のうちで有意差が認められた(それぞれP = 0.0021、P = 0.0023)。詳細を述べると、手袋では、Nitril Blue Eco-Plus の成績は Vasco Braun および Latex Med Comfort よりも有意に良好であった(それぞれ、P = 0.0017、P = 0.0493)。消毒薬では、Descoderm の成績は Promanum pure よりも有意に不良であった(P = 0.043)。漏れのチェックでは、全サンプル中 Vasco Braun 手袋のみ漏れがなかった。手袋の消毒のしやすさについては重要な質的な差があった。

結論
様々な消毒薬/手袋の組合せの消毒効果は手袋なしの手指よりも大きかった。しかし、様々な消毒剤/手袋の組合せには消毒効果に関して重要な差が生じている。

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監訳者コメント
「手袋の消毒はダメ」何度も聞いてきたし、言ってきた言葉である。本研究はこの言葉に真っ向から挑んだものである。実際研究では相応の消毒効果はあるようだが、一方で消毒後の手袋の破損も見られている。消毒薬と手袋の相性もあるようである。「モノを大切にする」ことも大事ではあるし、「単回使用だから、単回使用なのだ」というのも、理不尽な気もする。本研究が明日からのプラクティスを変えるわけではないが、世間ではこのような研究が行われ、論文となり掲載されているという事実も知っておくと良いのではないだろうか。

滑り止め付きソックス:病院内での多剤耐性病原体伝播のリザーバである可能性?

Non-slip socks: a potential reservoir for transmitting multidrug-resistant organisms in hospitals?

N. Mahida*, T. Boswell
*Nottingham University Hospitals NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 273-275


滑り止め付きソックスは、病院内で転倒を防止するためその使用が増えている。患者は滑り止め付きソックスを使用し病院の様々な場所へ歩いて行き、ベッドの中でも着用する。ソックス 54 足と環境中の床サンプル 35 個を 3 次紹介病院の 7 病棟から入手した。バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci;VRE)がソックス 46 足(85%)から検出され、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)が 5 足(9%)から検出された。環境微生物調査により、床サンプル 24 個(69%)から VRE が、床サンプル 6 個(17%)から MRSA が培養された。クロストリジウム・ディフシル(Clostridium difficile)はいずれのサンプルからも検出されなかった。滑り止め付きソックスは、多剤耐性病原体により汚染される可能性があり、交差伝播の経路となる可能性がある。

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監訳者コメント
入院患者における転倒は重要な問題であり、高齢者ではその頻度が 65 歳以上の 30%、80 歳以上の 50%が年 1 回以上発生するとされている。英国の病院では、「不適切な靴等の下足」による転倒防止の為に、綿製・ポリエステル製で滑り止め加工された「ノンスリップ靴下」を下足の代用として導入している施設がある。しかしながら、これを履いたままでトイレ、レストラン、放射線部門などの病院内を移動し、時にはベッドの中まで履いている。また、この靴下は単回使用ではあるが、長ければ数日から数週間継続使用されている。本論文では、その靴下の底の汚染状況をチェックし、VRE と MRSA が高頻度で検出されており、靴下を介した院内伝播の危険性を報告している。

普通石けんとトリクロカルバン含有抗菌性石けんの殺菌効果の比較

Microbicidal effects of plain soap vs triclocarban-based antibacterial soap

S.A. Kim*, M.S. Rhee
*Korea University, Republic of Korea

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 276-280


本研究の目的は、普通石けんと抗菌性石けんの殺菌効果を明らかにすることであった。普通石けんと 0.3%トリクロカルバン含有の抗菌性石けんに、グラム陽性菌 10 株およびグラム陰性菌 10 株を22°C および 40°C で 20 秒間曝露させて、殺菌効果を調べた。グラム陰性菌よりもグラム陽性菌のほうが、どちらの石けんに対しても感受性が高かった。しかし、ただひとつの例外(エンテロコッカス・フェカーリス[Enterococcus faecalis]ATCC 19433 株を 40°C で曝露させた場合)を除き、いずれの温度でも薬用石けんと非薬用石けんで効果に差はなかった。石けん中のトリクロカルバンは、石けんの使用中に意義のある細菌レベルの低下をもたらさない。

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監訳者コメント
トリクロカルバンは、様々な「抗菌石けん」に配合されているが、細菌の耐性、発がん性、急性/慢性毒性、内分泌撹乱、アレルゲン、環境汚染などの健康・環境への悪影響も報告されている。2013 年米国食品医薬局(FDA)が「抗菌石けんが通常の石けんに勝るという抗菌効果の臨床データが不十分」との見解をだし、2018 年 9 月に販売禁止とした。これを受けて、日本でもトリクロサンやトリクロカルバンを含む抗菌石けん(薬用石けん)は今後販売が中止される方向になるであろう。

バングラデシュの医療施設における医療従事者と家族介護者の手指衛生:Bangladesh National Hygiene Baseline Survey からの結果

Healthcare worker and family caregiver hand hygiene in Bangladeshi healthcare facilities: results from the Bangladesh National Hygiene Baseline Survey

L.M. Horng*, L. Unicomb, M.-U. Alam, A.K. Halder, A.K. Shoab, P.K. Ghosh, A. Opel, M.K. Islam, S.P. Luby
*Stanford University, USA

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 286-294


背景
医療施設における手指衛生は、患者ケア、医療従事者の安全、および感染制御に影響を及ぼすが、低所得国には介入の指針となるデータがほとんどない。

目的
バングラデシュの医療施設において、手指衛生のインフラおよび手指衛生行動に関する全国的調査を実施し、政策の助けとなるベースラインのデータを確立すること。

方法
2013 年の Bangladeshi National Hygiene Baseline Survey において、家庭、学校、飲食店および食品屋台(food vendor)、伝統的助産師ならびに医療施設における、水、衛生設備、および手指衛生を調査した。我々は確率比例抽出法に基づき、農村部から 50、都市部から 50、合計 100 の人口集団を抽出した上で、875 の入院施設で手指衛生インフラを調査し、100 施設で行動を観察した。

結果
96%を超える施設が「改善された」水源を持っていたが、多くの場合、水源の周囲環境で汚染が発生していた。石けんは、医師および看護師の手洗い場の78 ~ 92%に設置されていたが、患者および家族が使用する手洗い場で設置されていたのは4 ~ 30%にすぎなかった。アルコール製消毒薬の使用または石けんによる手洗いと、空気乾燥または清潔な布による乾燥という、推奨されている行動が取られていたのは、4,676 回の手指衛生機会のうちわずか 2%であった。医療従事者は、919 回の機会のうち 9%で推奨されている手指衛生を実践しており、この割合は、患者との接触の前(11%)よりも後(26%)のほうが高かった。家族介護者は水のみによる手洗いが多く(2,751回の機会のうち 48%)、石けんの使用は少なかった(3%)。

結論
医療従事者は家族よりも、手指衛生器材が利用しやすく、手指衛生の実践も良好であったが、それでもなお遵守率は低い。手指衛生器材および手指衛生行動を増やすことで、バングラデシュの医療施設における感染制御が改善されるかもしれない。

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監訳者コメント
本研究はバングラデシュにおける手指衛生実践の状況を、利用環境と利用状況の双方で調査したものである。単なる手指衛生の現状調査にとどまらず、途上国の衛生の向上および増進を図るうえでの政策立案に活かす点が興味深い。今後、本研究を基に立案・実行された政策が実際におさめた効果について、報告が待たれるところである。

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)と手術部位感染:術前のスクリーニングと除菌のベネフィット

Staphylococcus aureus and surgical site infections: benefits of screening and decolonization before surgery

H. Humphreys*, K. Becker, P.M. Dohmen, N. Petrosillo, M. Spencer, M. van Rijen, A. Wechsler-Fördös, M. Pujol, A. Dubouix, J. Garau
*Royal College of Surgeons in Ireland, Ireland

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 295-304


手術部位感染(SSI)は、もっとも頻度が高い医療関連感染のひとつであり、患者の罹患率と医療費に大きな影響を及ぼす。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)はもっとも一般的な原因菌である。黄色ブドウ球菌の疫学は、新しいクローンの拡散やムピロシン耐性の出現により変化している。SSI の予防と管理は多面的であり、本稿では、術前の黄色ブドウ球菌鼻腔内保菌者のスクリーニングと続いて行う陽性患者の除菌の、有用性に関するエビデンスをレビューした。培養または遺伝子検出を用いて術前スクリーニングを実施し、続いてメチシリン感受性黄色ブドウ球菌およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)陽性患者の除菌を行うことにより、SSI および在院日数は減少する。これは、心胸郭手術や整形外科手術のような、植込み用のデバイスを挿入する清潔手術(大手術)にとくに当てはまる。しかし、これらの施行には、患者の教育に加えて集学的アプローチが必要である。黄色ブドウ球菌のスクリーニングを実施せずに全患者の除菌を術前に行うのは、黄色ブドウ球菌の新しいクローンの出現を監視できなくなったり、ムピロシン耐性の一因となったり、MRSA を考慮した術前の予防的抗菌薬(すなわちβ-ラクタム系薬をグリコペプチド系薬などに置き換えること)を適切に選択できなくなる恐れがある。

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監訳者コメント
術前の黄色ブドウ球菌のスクリーニングとその応用・有用性・限界については、これまで多くの報告と議論がなされてきた。加えて遺伝子検出法が進歩し、汎用性・迅速性・実用性の点で向上したことも、スクリーニングの評価を変えつつある。本稿はその最新情報をレビューするものであり、一読の価値がある。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.