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脂質エマルジョンが静脈栄養剤中の微生物増殖に及ぼす影響に関するシステマティックレビューおよびメタアナリシス

Systematic review and meta-analyses of the effect of lipid emulsion on microbial growth in parenteral nutrition

P.D. Austin*, K.S. Hand, M. Elia
*University of Southampton, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 307-319


背景
静脈栄養剤中の脂質は微生物増殖を促進すると考えられるため、推奨では脂質静脈栄養(脂質エマルジョン)の単一容器からの注入を 24 時間までに制限している(無脂質の静脈栄養剤では 48 時間まで)。しかし、この推奨に関連する科学的な根拠は曖昧である。

目的
静脈栄養剤中の微生物増殖に影響を及ぼす因子を調べること。

方法
システマティックレビューおよびメタアナリシスにより、静脈栄養注入剤中の微生物増殖に対する栄養素の 48 時間にわたる影響を、増殖率(GR = log10[48 時間時点でのコロニー形成単位(cfu)/mL]/[0 時間時点でのcfu/mL])を用いて検討した。

結果
静脈栄養剤中の微生物増殖率に影響を及ぼす因子は、グルコース、微生物種、温度、浸透圧、ビタミン類の存在、微量元素と脂質、およびアミノ酸プロファイルなどであった。マッチさせないデータセット(N = 306)を用いたところ、一般化線型モデルにより、静脈栄養剤中の脂質含有には3.3%のばらつきがあり、これはグルコース濃度(5.8%)、微生物種(35.3%)および微生物と注入剤の相互作用(4.4%)より小さいことが示された。マッチさせたデータセット(N = 38ペア)を用いたところ、静脈栄養剤中の脂質含有には5.4%のばらつきがあり(P = 0.076)、これはグルコース濃度(8.5%、P = 0.025)、微生物種(75.5%、P < 0.001)および微生物と注入剤の相互作用(13.3%、P = 0.382)より小さいことが示された。マッチさせたデータセットについてメタアナリシスを行ったところ、グルコース濃度が一定の静脈栄養剤中における脂質の存在は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(P = 0.352)、大腸菌(Escherichia coli)(P = 0.025)または表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)(P = 0.494)の増殖率を有意に上昇させなかった(全体でP = 0.175)。

結論
静脈栄養剤中の脂質含有は、静脈栄養剤中の微生物増殖に影響を及ぼし得る複数の因子の1つにすぎなかった。単一容器からの静脈栄養剤注入の期間に関する推奨を行う場合は、これらすべての因子を考慮に入れるべきであり、また静脈栄養剤を汚染する可能性のある微生物種によって重み付けを行うべきである。

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監訳者コメント
従来から指摘され各ガイドライン上でも勧告文が設定されているが、微生物にとっての栄養源は脂質成分だけではない。輸液剤の内容はもとより、輸液に使用されたラインの管腔内のその後の微生物汚染と菌の増殖もセットで考慮すべき点であると考えられる。

ブラジルの集中治療室におけるコリスチン耐性およびコリスチン感受性カルバペネマーゼ(KPC)産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)によるアウトブレイク

Outbreaks of colistin-resistant and colistin-susceptible KPC-producing Klebsiella pneumoniae in a Brazilian intensive care unit

I. Rossi Gonçalves*, M.L. Ferreira, B.F. Araujo, P.A. Campos, S. Royer, D.W.F. Batistão, L.P. Souza, C.S. Brito, J.E. Urzedo, P.P. Gontijo-Filho, R.M. Ribas
*Federal University of Uberlândia, Brazil

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 322-329


背景
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)、特に肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネマーゼ(KPC)を産生し、コリスチン耐性と関連する腸内細菌科細菌は、治療選択肢が限られているため、重大な医療上の脅威をもたらす。

目的
ブラジルの成人集中治療室 1 施設における KPC 産生肺炎桿菌による 2 件のアウトブレイクを報告すること。2015 年 5 月に患者 14 例でコリスチン感受性 KPC 産生株(ColS-KPC)が、2015 年 7 月に患者 9 例でコリスチン耐性 KPC 産生株(ColR-KPC)が検出された。

方法
2014 年 9月から 2015 年8 月の間に、大学病院 1 施設でサーベイランスを実施し、すべての CRE 株について blaKPC 遺伝子の有無を調べた。パルスフィールド・ゲル電気泳動法によりクローン性を調べた。コリスチン耐性は微量液体希釈法により確認した。カルバペネムおよびコリスチンの摂取量は 1 日規定用量として示した。

結果
全体で、サーベイランス期間中に CRE を保有する 111 例が同定され、肺炎桿菌が主要な分離株であった(77.13%)。感染率(1,000 患者日あたり KPC)が背景レベルを超えた時に、2 件のアウトブレイクが同定された。カルバペネムおよびコリスチンの摂取率は高かった。制御策(アルコールゲル剤のベッドサイド設置、接触予防策、定期的な直腸スワブ検査)によってもアウトブレイクは制御されなかった。死亡率は、ColS-KPC 感染患者で 42.9%、ColR-KPC 感染患者で 44.4%であった。ColR-KPC 感染患者 4 例の死亡後、当該病棟の入院受け入れを中止した。

結論
当院の経験から、ブラジルの成人集中治療室において KPC、特に ColR-KPC により重大なリスクがもたらされることが示された。抗菌薬の過剰使用による選択圧、および医療従事者の手指による伝播が、伝播の主要な要因であったと考えられる。

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監訳者コメント
コリスチン耐性 CRE の登場で、CRE の治療がさらに困難なものに成りつつある。新薬の開発とともに、抗菌薬の適正使用が重要となる。

ブラジルのサンパウロにおいて院内アウトブレイクを調査し保健当局に報告することを妨げる障壁:混合研究法

Barriers to investigating and reporting nosocomial outbreaks to health authorities in São Paulo, Brazil: a mixed methods approach

A.L.P. Maciel*, B.A. de Carvalho, S. Timmons, M.C. Padoveze
*University of São Paulo, Brazil

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 330-337


背景
院内アウトブレイクがすべて保健当局に報告されているわけではない。

目的
院内アウトブレイクを調査し保健当局に報告することを妨げる障壁を特定すること。

方法
収斂的並行デザインを用いて混合研究法を実施した。この研究の量的および質的な部分は、それぞれ、州全体での(電子質問票)調査およびフォーカスグループである。ブラジルのサンパウロ州で働く感染管理担当者を登録した。

結果
感染管理担当者 85 名を調査に組み入れ、22 名をフォーカスグループに組み入れた。院内アウトブレイク調査および報告を妨げる障壁として以下があげられた。(1)アウトブレイク調査の知識を実践に移す際の困難、(2)アウトブレイク調査の過程での計画不十分、(3)組織文化および背景、(4)報告に関する認識不足、(5)保健当局にアウトブレイクを報告するという感染管理担当者の自主性不足。

結論
保健当局は、保健サービス機関と協力する自らの戦略を見直し、また院内アウトブレイク調査に対する知識と技能の改善を支援するトランスレーショナル教育プログラムを提供することで、これらの障壁を克服できるであろう。

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監訳者コメント
行政の役割は処罰することではなく、市民が安心・安全な医療が受けられるように監督・指導をすることが先決である。日常的な情報交換やアウトブレイク時には迅速な連携により見守り体制を構築することが重要であろう。

日本の地方の透析施設における患者および医療従事者での百日咳アウトブレイク

Pertussis outbreak among patients and healthcare workers in a provincial dialysis facility in Japan

K. Nakamura*, M. Kobayashi, N. Yamamoto, K. Tokuda, S. Miura, Y. Abe, J. Kashiwazaki, T. Aoyagi, M. Kaku, K. Kanemitsu
*Fukushima Medical University, Japan

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 341-345


背景
2013 年 10 月から 2014 年 4 月までに、日本の 25 床の外来血液透析施設で、血液透析患者および医療従事者に百日咳 16 症例が特定された。

目的
患者および医療従事者での百日咳アウトブレイクを記述し、百日咳感染のリスク因子を特定すること。

方法
喀痰培養、百日咳菌(Bordetella pertussis)を含む呼吸器病原体を検出するために鼻咽頭ぬぐい検体に対して行う LAMP 法、血清抗百日咳毒素 IgG の測定を、血液透析患者および医療従事者全員に実施した。この施設において百日咳感染のリスク因子を特定するために後向き症例対照研究を実施した。

結果
百日咳患者 16 例のうち 6 例のみ(37.5%)に呼吸器症状が認められた。マスクを着用していない咳嗽を有する人への最近の曝露が百日咳感染と関連していた(オッズ比 6.25、P < 0.05)。このアウトブレイクは、患者と医療従事者の両者においてサージカルマスク使用を強化した後、終結した。

結論
本報告により、血液透析施設での百日咳伝播のリスクが示され、百日咳アウトブレイク制御のためにはサージカルマスク着用が重要であることが強調されている。

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監訳者コメント
日本の透析クリニックで発生した百日咳アウトブレイクの疫学調査である。調査からの学びとして、発症者の 3 分の 2 が典型的な症状を示していなかったこと、サージカルマスクが感染拡大防止に有効であったことが明らかになった。

フランスで発生したvanA 型バンコマイシン耐性エンテロコッカス・ラフィノーサス(Enterococcus raffinosus)による初の院内アウトブレイク

First nosocomial outbreak ofvanA-type vancomycin-resistant Enterococcus raffinosus in France

S. Jolivet*, M. Fines-Guyon, B. Nebbad, J.C. Merle, D. Le Pluart, C. Brun-Buisson, J-W. Decousser, V. Cattoir
*Assistance Publique – Hôpitaux de Paris, France

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 346-350


背景
バンコマイシン耐性エンテロコッカス・ラフィノーサス(Enterococcus raffinosus)が、院内感染および院内アウトブレイクと関連することは、これまでまれであった。

目的
外科集中治療室における vanA 型バンコマイシン耐性 E. raffinosus による院内アウトブレイクの制御に成功した事例を報告すること。

方法
実施した制御対策とともにアウトブレイクの調査内容を報告する。バンコマイシン耐性 E. raffinosus 分離株の分子タイピングは反復配列 PCR 法により行われた。

結果
2014年 9月から 10月の間に、バンコマイシン耐性 E. raffinosus 分離株が 4例の患者から分離された。初発症例はポルトガルでの入院歴があり、今回の入院時のスクリーニング培養ではバンコマイシン耐性腸球菌(enterococci)のコロニー形成は認められなかったが、入院の 19 日後、胆汁検体からバンコマイシン耐性 E. raffinosus が分離された。4 つの分離株はいずれも、vanA 遺伝子を保有しておりバンコマイシンとテイコプラニンの両方に耐性を示したが、ダプトマイシンおよびリネゾリドに対しては感受性を残していた。反復配列 PCR 法により、vanA 陽性 E. raffinosus の単一のクローンが伝播したものと確認された。直腸検体の直接PCR法、接触予防策、および患者や職員のコホーティングを含む感染制御対策が、アウトブレイクの制御の成功につながった。

結論
これは、フランスにおいて入院患者の臨床検体およびスクリーニング検体の両方で vanA 型バンコマイシン耐性 E. raffinosus によるアウトブレイクが報告された初の事例である。初発症例で、選択培地を用いたルーチンのスクリーニングでバンコマイシン耐性 E. raffinosus を検出できなかったことが、今回のアウトブレイクの一因となったと思われる。

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監訳者コメント
分子疫学調査を含む耐性菌アウトブレイクの疫学調査報告である。耐性菌による集積があれば、たとえ症例数が少なくとも、丁寧に記述疫学を行い、記録に残すことはとても大切である。

アイルランドにおけるニューデリー・メタロ-β-ラクタマーゼ(NDM)-1 カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌によるアウトブレイク:蔓延しつつあるが認識されていない

An Irish outbreak of New Delhi metallo-β-lactamase (NDM)-1 carbapenemase-producing Enterobacteriaceae: increasing but unrecognized prevalence

C. O'Connor*, M. Cormican, T.W. Boo, E. McGrath, B. Slevin, A. O'Gorman, M. Commane, S. Mahony, E. O'Donovan, J. Powell, R. Monahan, C. Finnegan, M.G. Kiernan, J.C. Coffey, L. Power, N.H. O'Connell, C.P. Dunne
*University of Limerick, Ireland

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 351-357


背景
カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)は、死亡率の高い医療関連感染を引き起こす可能性がある。ニューデリー・メタロ-β-ラクタマーゼ(NDM)-1 は最近発見されたカルバペネマーゼのひとつである。

目的
アイルランドにおける NDM-1 CPE による初のアウトブレイクについて、微生物学的および疫学的特徴を含めて報告し、感染予防および制御策の効果を評価すること。

方法
本研究は、後向きの微生物学的および疫学的レビューであった。症例は CPE 培養で陽性を示した患者とした。接触者は、同室者または同病棟入院患者とした。

結果
このアウトブレイクには別個ではあるが提携した医療施設 3 施設の患者 10 例が関与した(年齢の中央値 71 歳、範囲 45 ~ 90 歳)。1 例は感染例であり(初発症例)、他の 9 例は定着例であった。2014年第 24週から第 37週までの間に、NDM-1 産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)9 株、NDM-1 産生大腸菌(Escherichia coli)1 株、および肺炎桿菌カルバペネマーゼ(KPC)産生エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)1 株が検出された。パルスフィールド・ゲル電気泳動法により肺炎桿菌分離株の相同性が示された。NDM-1 陽性分離株はメロペネムに耐性を示し、最小発育阻止濃度(MIC)は 12 ~ 32 μg/mLであった。すべての分離株がチゲサイクリン感性であった(MIC 1 μg/mL以下)。1 分離株はコリスチン耐性であった(MIC 4.0 μg/mL、mcr-1 遺伝子は検出されず)。2015年にさらに 4 つの NDM-1 分離株が検出された。

結論
このアウトブレイクの管理が成功したのは、伝播を防ぐため感染予防および感染制御の実践を迅速に強化したことによる。患者にはアイルランド国外への渡航歴がなかったが、数人がアイルランド国内でしばしば入院していた。これは、NDM-1 産生菌が蔓延しつつあるにもかかわらず認識されていない可能性、ならびに定着リスクの指標に渡航歴を使用することの有用性が低下している可能性に関して、懸念をもたらすものである。

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監訳者コメント
アイルランドでは渡航歴のある患者の NDM 産生菌の保菌が過去に報告されている。本報告は渡航歴のない患者の NDM 産生菌保菌または感染事例の報告で、アイルランドですでに水面下で NDM 産生菌保有者が増加しつつあることを懸念する内容である。日本では幸い現時点では渡航歴のない患者における NDM 産生菌のアウトブレイクなどの報告はないが、渡航歴を有する患者による様々な耐性菌の持ち込みはしばしば報告されており、今後国内への旅行者の増加により、耐性菌保有リスクの有無を調べるための渡航歴の聴取はより一層重要になると考えられる。

新生児集中治療室におけるバークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)アウトブレイクのまれな感染源

An unusual source of Burkholderia cepacia outbreak in a neonatal intensive care unit

B. Shrivastava*, A. Sriram, S. Shetty, R. Doshi, R. Varior
*Dr L. H. Hiranandani Hospital, India

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 358-360


2 か月の期間中に、当新生児集中治療室の早産児 7 例が、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)による敗血症であることが血液培養により認められた。感染源を特定するため、徹底的な環境調査を実施した。クエン酸カフェインがこの病原体の感染源であることが分かった。この原因薬物を新生児集中治療室および院内薬剤室から回収し、地域の保健当局に報告した。全 7 例の乳児は退院し、感染に関連する病態はなかった。

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監訳者コメント
インドの新生児集中治療室における報告である。アウトブレイクの原因はクエン酸カフェイン(未熟児無呼吸発作などに使用される)のバークホルデリア・セパシアによる汚染であり、それは未開封のバイアルでも認められた。著者らは「静注薬の無菌性は必ずしも担保されないので、アウトブレイク調査の際は、(未使用であっても)薬剤そのものの微生物検査も重要である」と結論づけている。確かに薬剤製造過程における薬剤の微生物汚染は決してまれなことではなく、2015 年には Journal of Hospital Infection でもシステマティック・レビューが掲載されている。被害を最小限に食い止めるためにも、薬剤の汚染の可能性はアウトブレイク調査の早い段階で検討しておくと良いだろう。

南アフリカの小児病院における医療関連感染による負荷、感染症の種類、影響

Burden, spectrum, and impact of healthcare-associated infection at a South African children’s hospital

A. Dramowski*, A. Whitelaw, M.F. Cotton
*Stellenbosch University, South Africa

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 364-372


背景
アフリカ諸国の大半において、小児科医療関連感染(HCAI)およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の罹患率および影響は明らかでない。

目的
南アフリカの紹介病院において、小児科 HCAI の負担、感染症の種類、リスク因子、影響を前向き臨床サーベイランスにより検討すること。

方法
2014 年および 2015 年の 5 月 1 日から 10 月 31 日に、南アフリカの Tygerberg Children’s Hospital において、米国疾病対策センター(CDC)・全米医療安全ネットワーク(NHSN)の定義を用いて、前向き臨床的および検査室データにもとづくHCAI連続サーベイランスを実施した。HCAI および関連死亡のリスク因子を多変量ロジスティック回帰で分析したところ、交絡因子および時間をマッチさせる方法を用いて入院期間の超過が推定された。

結果
HCAIの発生率は 1,000患者・日あたり 31.1(95%信頼区間[CI] 28.2 ~ 34.2)で、主なものは、病院感染肺炎(185/417、4%)、尿路感染(UTI)(45/417、11%)、血流感染(BSI)(41/417、10%)、および手術部位感染(21/417、5%)であった。小児集中治療室(PICU)におけるデバイス関連 HCAI 発生率は高く、人工呼吸器関連肺炎、中心ライン関連 BSI、カテーテル関連 UTI について 1,000 デバイス・日あたりそれぞれ 15.9、12.9 および 16 であった。HCAIは、PICU 在室(オッズ比 2.0)、栄養不良(1.6)、HIV 感染(1.7)、HIV 曝露(1.6)、McCabe スコア「致死的」(2.0)、共存症(1.6)、留置器具(1.9)、輸血(2.5)、および転院(1.4)と有意に関連していた。小児科死亡の 3 分の 2 が HCAI 関連のもので、HCAI の発症から中央値で 4 日に発生しており、HCAI 関連入院の粗死亡率は、非関連入院と比較して有意に高かった(24/325[7.4%]対12/1,022[1.2%]、P < 0.001)。HCAI は、371,887 米ドルの直接的費用と、入院 2,275 日、抗菌薬投与 2,365 日、臨床検査 3,575 件の追加をもたらすことになった。

結論
HCAI は、しばしば発生し、高い罹患率および死亡率、高額の医療費を伴う。アフリカの小児に対する HCAI サーベイランスおよび予防プログラムの確立は、公衆衛生上の優先事項である。

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監訳者コメント
アフリカにおけるほとんどの国において、HCAI に関するデータはない。南アフリカ共和国は、比較的医療資源があり、感染症検査や感染制御の人員についても整備されているが、HCAI のデータは同様にない。30 年前(1987)に小児に関する全病院サーベイランスが実施されて以後実施されていない状況である。本論文では、南アフリカ共和国での小児医療における HCAI を知る上で重要であり、一方でサーベイランス結果は、発生率が高収入国の 3 ~ 6 倍高く、早急な感染対策の実施が必要な状況であることがわかる。

医療従事者に対する感染予防・制御の当事者意識の促進:Normalization Process Theory の解釈的枠組みとしての利用

Promoting health workers’ ownership of infection prevention and control:using Normalization Process Theory as an interpretive framework

D.J. Gould*, R. Hale, E. Waters, D. Allen
*Cardiff University, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 373-380


背景
すべての医療従事者は、感染予防対策(IPC)に責任を持つべきである。英国における重要な医療関連感染報告の最近の減少は見事であるが、成功の決定要因は明らかでない。新たな問題が発生し、抗菌薬耐性の恐れが増大したときに IPC 戦略がどのように作動するかは理解しておく必要がある。

方法
著者らは、1つの医療組織全体に導入される IPC に関して、IPC および「当事者意識」を強化する行動計画の後向きの第三者評価を実施した。目的別に選択された情報提供者 20 名にインタビューした。データを帰納的に分析した。Normalization Process Theory(NPT)を応用して、結果を解釈し、行動計画がどのように作動しているかを説明した。

結果
帰納的分析により 6 つのテーマが浮かび上がった。テーマ 1:「当事者意識の意味を理解する能力」は第 1 の NPT 成分(必要性と重要性の理解)の証拠を示した。職業集団や勤続年数によらず、情報提供者は IPC の当事者意識の重要性を理解し、それに必要な事項を述べた。情報提供者は 3 つの必要条件を特定した:「常に意識し、怠らない」(テーマ 2)、「情報入手の重要性」(テーマ 3)および「非難しない文化の中でともに学ぶことができる」(テーマ 4)。各テーマに関連したデータは、変化を盛り込むために必要とされるその他の NPT 成分の証拠を示した:実施計画(実践内容への認知的参加)、変化を達成するために必要な仕事の引き受け(組織や職員の共同的実践行動)、持続的な質の改善の一部として変化を促進するために他に必要なものがないかの熟考(振り返りによる再評価)。情報提供者は、障害(仕事量など)および促進するもの(明らかな連絡手段、IPC への期待)を特定した。

結論
IPC 当事者意識を取り入れた行動計画を実施して 18 か月後、持続的なサービス改善および感染率の顕著な減少が認められた。IPC の日常医療へのルーチンの取り込み「標準化」を促進/阻害する要因を特定する理論を応用することは、IPC イニシアチブの成功を説明し、実施について情報提供する一助となりうる。

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監訳者コメント
感染予防対策(IPC)は過去において「上意下達」方式であったが、これは現場状況を考慮していないため持続性が確保できないことがわかっている。すなわち、「現場の職員が、自分たちが感染予防対策をやるのだ」という当事者意識が重要であるが、これまでの研究ではその点が十分明らかにされていない。IPC を効果的に実施するために必要な要素は、現場職員、ICT、病院管理者間の良好なコミュニケーション(意思疎通と連携)であり、現場からの意見の集約、現場の要望にあった介入策の提案と調整、継続的に実施状況を還元することで失敗から学ぶ雰囲気の醸成である。感染対策の成否は、現場職員の意識と行動のいかんにかかっており、対策を快く受け入れ,これを実践しようとする意志により達成される。NPT はそれを支える理論である。

NPT Normalization Process Theoryとは、医療における複雑な介入(ここでは感染予防対策)を日常的に導入する(作業をルーチン化する[= normalization]際に遭遇する阻害因子と促進因子を特定し、医療現場での日々の実践につなげるための社会学的行動理論。NPTは 4 つの要素から構成され、これらは試みが成功するための必須項目となる。① coherence:
介入策の理解、② cognitive participation:積極的な関わり、③ collective action:介入策の実践、④ reflexive monitoring:介入策の評価、利点や費用などの効果。

医療関連グラム陰性菌血流感染症:抗菌薬耐性と死亡の予測因子

Healthcare-associated Gram-negative bloodstream infections: antibiotic resistance and predictors of mortality

Ö. Ergönül*, M. Aydin, A. Azap, S. Başaran, S. Tekin, Ş. Kaya, S. Gülsün, G. Yörük, E. Kurşun, A. Yeşilkaya, F. Şimşek, E. Yılmaz, H. Bilgin, Ç. Hatipoğlu, H. Cabadak, Y. Tezer, T. Togan, İ. Karao ğlan, A. İnan, A. Engin, H.E. Alı şkan,S. Ş. Yavuz, Ş. Erdin ç, L. Mulazimoglu, ö. Azap, F. Can, H. Akalın, F. Timurkaynak, Turkish Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases, Healthcare-Related Infections Study Group
*Koç University School of Medicine, Turkey

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 381-385


本稿では、医療関連グラム陰性菌血流感染症に関連する抗菌薬耐性の検出率および死亡の予測因子について報告する。トルコの複数の医療センターにおける 17 の集中治療室で認められた医療関連グラム陰性菌血流感染症の合計 831 症例を対象とした。全死因死亡率は 44%であった。肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)のカルバペネム耐性率は 38%、コリスチン耐性率は 6%であった。多変量解析により、年齢 70 歳超(オッズ比[OR]2、95%信頼区間[CI]1.22 ~ 3.51)、中心静脈カテーテル使用(OR 2.1、95%CI 1.09 ~ 4.07)、人工呼吸器関連肺炎(OR 1.9、95%CI 1.1 ~ 3.16)、カルバペネム耐性(OR 1.8、95%CI 1.11 ~ 2.95)および APACHE II スコア(OR 1.1、95%CI 1.07 ~ 1.13)が死亡と有意に関連していたことが示された。

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監訳者コメント
血流感染は死亡率は高く、特にグラム陰性菌は耐性傾向が強く、使用可能な抗菌薬が限られており、治療に難渋する。なかでもカルバペネム系薬への耐性(CR-GNR)は、世界的に深刻な問題である。トルコで 2013 年に実施された分離菌サーベイランスにおいて CR-GNR は、アシネトバクター属で 87%、緑膿菌で34%と高い。本論文では臨床情報を加味したサーベイランスデータであり、肺炎桿菌のカルバペネム耐性率の高さに注目したい。また、カルバペネム耐性、人工呼吸器と中心静脈カテーテルの管理は、国を問わず感染予防対策の世界共通の課題である。

中国の 3 次病院における診断検査欠如によるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)関連の臨床的負荷

Clostridium difficile-associated clinical burden from lack of diagnostic testing in a Chinese tertiary hospital

D. Zhang*, J. Chen, H. Zhan, Y. Huang, S. Chen, F. Law, W. Ba-Thein
*Second Affiliated Hospital of Shantou University Medical College, P.R. China

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 386-388


クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)は世界中の病院でよくみられる下痢の原因であるにもかかわらず、中国のほとんどの病院では検査も利用できず、管理ガイドラインもない。この 2 年間の前向き研究では、水様下痢患者 276 例のうち CDI の占める割合は 23.1%であった。CDI の検査ができないことで、患者の 26.4%では不適切な管理が行われ、隔離予防策がなされずに院内伝播のリスクが増加していた。さらに症候性の毒素産生性 C. difficile 保菌者を退院させることによって、市中伝播のリスクを増やすことにもつながっていた。最新のエビデンスに基づいた診療ガイドラインの更新と CDI の診断検査の採用を、中国の病院においても推奨したい。

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監訳者コメント
中国の病院における CDI の実態については、臨床的に疑われない、検査が利用できない環境である、といった理由から、不明な部分が多い。本研究は広東省の 1,800 床の教育病院で行われ、便培養で検出された C.difficile について、PCR を用いて同定とトキシン産生の決定を行った。下痢患者中、CDI の占める割合が高かったが、市中発症例が 35%を占めていたことも特徴であった。診断・管理の状況のみならず、今後、中国の他の地域からの疫学調査の報告が待たれる。

HIV/AIDS(human immunodeficiency virus/acquired immunodeficiency syndrome)患者の日和見感染予防に関する薬剤師の役割

Pharmacists’ impact on opportunistic infection prophylaxis in patients with HIV/AIDS

K. Schatz*, W. Guffey, M. Maccia, M. Templin, K. Rector
*Baptist Memorial Hospital, Memphis, USA

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 389-392


薬剤師は、ヒト免疫不全ウイルス/後天性免疫不全症候群患者のケアにおいて、抗レトロウイルス療法に関連する患者の転帰を改善することで、プラスの影響を与えることができる。本研究では、日和見感染症の予防薬の処方に薬剤師が介入することの影響を、介入の有無で比較した。スクリーニングされた患者 139 例のうち、42 例を前向き介入群に組み入れた。15 例に対して 27 回の介入が行われたが、そのうち 24 回(89%)で薬剤師による提案が受け入れられ、処方が変更された。後向きで調査した対照群と比較して、薬剤師の介入を加えることにより日和見感染症予防薬の処方が 58%から 93%に増加した(P < 0.001)。

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監訳者コメント
HIV/AIDS 患者のケアにおいて、薬剤師は様々な、そして重要な役割を持つ。抗ウイルス療法(ART)の薬剤選択、相互作用、アドヒアランスの確保などであるが、関与するのは ART 以外の薬剤にも及ぶ。これには日和見感染症の予防薬も含まれるが、本研究は、特に CD4 陽性リンパ球数の低い入院患者において、薬剤師による介入が日和見感染症予防薬の使用率および内服率を高めたことを示している。

アデノシン三リン酸の生物発光を用いた歯科用ユニットの水ラインの細菌汚染のモニタリング

Monitoring of bacterial contamination of dental unit water lines using adenosine triphosphate bioluminescence

A. Watanabe*, N. Tamaki, K. Yokota, M. Matsuyama, S. Kokeguchi
*Tokushima University Graduate School, Japan

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 393-396


歯科用ユニットの水ラインの細菌汚染を、ATP の生物発光分析と従来の培養法を用いて評価した。歯科用ユニットの水ラインから採取した水サンプル(N = 44)を、R2A 寒天での培養により従属栄養細菌について調べた結果、細菌数は1.4 × 103 ~ 2.7 × 105 コロニー形成単位(cfu)/mL の範囲であった。この水ラインのサンプルを ATP 生物発光法により処理したところ、6 ~ 1,189 相対発光量という結果が 1 分以内に得られ、相対発光量の値は培養法での細菌数と強く相関していた(r = 0.727 ~ 0.855)。これらの結果より、ATP 生物発光法の結果は従来の培養法に基づく結果を正確に反映していると結論づけることができた。本法は、歯科用ユニットの水ラインの細菌汚染の迅速かつ簡便なモニタリング法として、有用である可能性がある。

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監訳者コメント
ATP の生物発光分析は、すでに環境表面や飲食物の細菌汚染を簡便に知る方法として、その有用性が明らかになっている。難培養性である菌や、バイオフィルム産生菌も含め、広い範囲の細菌を検出できる点が優れている。使用前の歯科用ユニットから採取した検体は CDC などの推奨基準を上回って汚染されており、現実的な対処として、使用前のフラッシングの徹底は非常に重重要である。さらに本法を用いた定期的な汚染のチェックも有用といえる。

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