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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

急性期施設におけるカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌によるアウトブレイクの制御:エビデンスのレビュー

Control of carbapenemase-producing Enterobacteriaceae outbreaks in acute settings: an evidence review

C.E. French*, C. Coope, L. Conway, J.P.T. Higgins, J. McCulloch, G. Okoli, B.C. Patel, I. Oliver
*University of Bristol, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 3-45


背景
近年、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)による感染症が世界的に増加しており、公衆衛生上の重大な課題となっている。

目的
国際的な文献レビューを行い、(i)世界の急性期病院における CPE によるアウトブレイクを記述すること、および(ii)これらのアウトブレイク時に用いられた制御策を同定し、それらの有効性について報告すること。

方法
2000 年から 2015 年を対象に、MEDLINE および EMBASE データベース、主要な学会会議の抄録集および主要なレビューの参考文献リストの系統的検索を行い、未発表のアウトブレイクに関する情報を探した。関連がある場合、Newcastle-Ottawa スケールを用いてバイアスのリスクを評価した。エビデンスのナラティブ統合を実施した。

結果
98 件のアウトブレイクが条件に適合した。CPE によるアウトブレイクは世界的に発生しており、53 件の報告は欧州からのものであった。アウトブレイクにおける症例(CPE 感染または保菌)の数には大きなばらつきがあり、2 例から 803 例の範囲であった。大部分のアウトブレイクでは、複数要素から成る感染制御策が用いられ、多くの場合以下のものが含まれていた:患者スクリーニング、接触予防策(例、ガウン、手袋の着用)、手指洗浄介入、スタッフの教育または監視、環境の清掃/汚染除去の強化、患者および/またはスタッフのコホーティング、ならびに患者の隔離。制御策の有効性について入手可能な最適なエビデンスを提供しているものとして、7 件の研究を同定した。これらの研究は、一連の適切、かつ一般的に用いられる感染制御策を用いて、CPE アウトブレイクを十分に制御できることを実証していた。しかし、これらの研究では、バイアスのリスクが比較的高いと考えられた。

結論
これらの結果は、既存の方策の組合せを用いて CPE アウトブレイクが制御可能であることを示している。しかし、エビデンスの基盤の質が弱く、特に個々の感染制御策の有効性に関して、さらなる質の高い研究が必要とされる。

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監訳者コメント
ナラティブ統合(narrative synthesis)は個々の研究の結果を統合する手法の一つである。メタ分析ができない場合に用いられる。CPE の問題点は、保菌者の迅速な検査室診断にあり今後我が国でも大きな問題となるであろう。

熱傷集中治療室におけるカルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)クローン拡散の予防のための修正洗浄手順の高感度発光量測定装置を用いた評価

Evaluation of a modified cleaning procedure in the prevention of carbapenem-resistant Acinetobacter baumannii clonal spread in a burn intensive care unit using a high-sensitivity luminometer

B. Casini*, C. Selvi, M.L. Cristina, M. Totaro, A.L. Costa, P. Valentini, S. Barnini, A. Baggiani, E. Tagliaferri, G. Privitera
*University of Pisa, Italy

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 46-52


背景
強化した環境洗浄実践は、カルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の拡散制御に対する最も受け入れられている制御策の 1 つである。

目的
イタリアの教育病院の熱傷集中治療室 1 施設において進行中のカルバペネム耐性 A. baumannii アウトブレイクに対する強化した洗浄(接触頻度の高い表面に対してクロルヘキシジン ‐ 60%イソプロピルアルコールを補足的消毒薬として適用)の影響を評価すること。

方法
熱傷集中治療室に対して AFNOR-NF-S90-351 で提案されている微生物数の限界(20 コロニー形成単位/100 cm2)が遵守されているか否かをプレートカウントにより評価し、細胞内のアデノシン三リン酸(ATP)の検出により得られた結果と比較した。パルスフィールド・ゲル電気泳動を用いて遺伝子タイピングを行った。

結果
標準的洗浄レジメンの実施時には、試料 23 個中、3 個(13%)で AFNOR の限界値を超える結果が得られ、5 個(21.7%)では100 相対発光量/100 cm2 を基準限界とした場合の許容できない ATP レベルが示された(感度 86.4%、特異度 92.2%)。洗浄手順の改善後には、試料 50 個中 2 個(4%)のみが細菌学的基準を満たさず、7 個(14%)のみが ATP レベルの限界値を超えていた。その後の期間には、採取した試料 30 個中 8 個(27%)で許容できない結果が示された。

結論
クロルヘキシジン ‐ 60%イソプロピルアルコールを補足的消毒薬として追加することで、環境の細菌によるコンタミネーション、ATP レベル、および熱傷集中治療室に入室した患者におけるカルバペネム耐性 A. baumannii 感染/保菌を低減するうえで有効であることが明らかになった。ATPアッセイによるリアルタイムのモニタリングは、洗浄スケジュールの管理および院内感染の低減に有用であったが、算出した数値は、リスク指標としてではなく洗浄指標として解釈すべきである。

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監訳者コメント
カルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニーで問題となるのはその多くがバイオフィルム産生菌であり、その対策として使用する消毒薬には一般的に塩素系消毒薬が推奨される。クロルヘキシジンはおもに生体消毒薬であり、環境への使用については監訳者はあまりお勧めできない。環境消毒効果はおそらく消毒用エタノールでもクロルヘキシジン入り消毒用エタノールでも違いはないかもしれないので検証が望ましい。環境清掃によるリセットは適切な消毒薬で適切な清拭処理を行うことで達成される。大量の消毒用アルコールは引火の問題やコスト面で課題が残る。

タイ南部の 3 次医療病院における院内獲得によるアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)感染症の分子疫学および空間時系列分析

Molecular epidemiology and spatiotemporal analysis of hospital-acquired Acinetobacter baumannii infection in a tertiary care hospital in southern Thailand

S. Chusri*, V. Chongsuvivatwong, J.I. Rivera, K. Silpapojakul, K. Singkhamanan, E. McNeil, Y. Doi
*Prince of Songkla University, Thailand

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 53-58


背景
アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)はタイにおける主要な院内獲得病原菌であり、患者の生存に負の影響を及ぼしてきた。この病原菌の伝播の性質についてはあまり理解されていない。

目的
タイの 1 病院における A. baumannii 感染症の遺伝子型および空間時系列パターンを調べること。

方法
タイ南部の 800 床の 3 次医療病院において、A. baumannii 感染患者のカルテを 2010 年 1 月から 2011 年 12 月の間について後向きに精査した。A. baumannii を遺伝種レベルで同定した。A. baumannii 感染症に関連したカルバペネム耐性分離株において、カルバペネマーゼ遺伝子を同定した。入院病棟、感染時点、およびA. baumannii のパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)によるグループごとに空間時系列分析を行った。

結果
197 件の A. baumannii 感染症において 9 つの PFGE 遺伝子型が同定された。A. baumannii 全分離株がInternational Clonal Lineage II に分類された。カルバペネマーゼ遺伝子で最も頻度が高かったのは blaOXA-23 であった。アウトブレイクが観察されたのは、主として呼吸器病棟と集中治療室であった。PFGE 遺伝子型と病棟との関連は有意であった。空間時系列分析により、単一の PFGE グループによる感染症の 20 のクラスターが同定された。約半数のクラスターが、同時に複数の病棟で認められた。

結論
A. baumannii は病棟内および病棟間で伝播していた。A. baumannii 伝播のより詳しい理解と制御が必要とされる。

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監訳者コメント
日本ではまだまだ少ない多剤耐性アシネトバクター・バウマニであるが、欧米や東南アジアでは相当広がっている。輸入感染症として注意が必要である。

ヒト感染症で耐性をもたらす遺伝物質の産生源としての医療環境における ESBL 産生グラム陰性菌

ESBL-producing Gram-negative organisms in the healthcare environment as a source of genetic material for resistance in human infections

M. Muzslay*, G. Moore, N. Alhussaini, A.P.R. Wilson
*University College London Hospitals NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 59-64


背景
確立された感染制御ガイドラインがあるにもかかわらず、医療環境および市中における基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生腸内細菌科細菌の検出率が上昇していることは、これらの微生物が環境内における持続的な生存を可能にする生存戦略を有している可能性を示唆している。

目的
様々な病棟環境において流行している ESBL 産生種の範囲およびばらつきを明らかにすること、ならびにセファロスポリン耐性が環境分離株からヒト病原菌へ伝達される可能性について検討すること。

方法
通常の微生物学的方法を用いて、ESBL 産生菌を調べるために環境表面から1,436 個の試料を採取した。ESBL 産生菌の環境分離株をドナーとし、ストレプトマイシン耐性大腸菌(Escherichia coli)(NCTC 50237)をレシピエントとして用いて、接合伝達性試験(broth mating法)を行った。

結果
アウトブレイクが発生していない環境の表面上における ESBL 産生菌の検出率は低かった(1,436 個中 45 個、3.1%)。汚染された割合が最も高かった場所は、洗面台の排水管(105 個中 28 個、26.7%)および床(160 個中 14 個、8.8%)であった。59 株の ESBL 産生菌が分離された。これらのうち、クレブシエラ(Klebsiella)属菌(33.9%)、エンテロバクター(Enterobacter)属菌(20.3%)、パントエア(Pantoea)属菌(15.3%)およびシトロバクター(Citrobacter)属菌(13.6%)が、頻度の高い分離株であった。ESBL の決定遺伝物質は、3 種類の代表的な環境分離株(Pantoea calida、クレブシエラ・オキシトカ[Klebsiella oxytoca]、ラウルテラ・オルニチノリティカ[Raoultella ornithinolytica])からヒト病原性大腸菌に伝達することができた。

結論
病棟において何らかの ESBL 株による感染がないにもかかわらず、病院環境から ESBL 産生グラム陰性分離株が回収された。洗面台の排水管は、多剤耐性細菌および薬物耐性遺伝子の長期リザーバの可能性があると考えるべきである。これらの遺伝子は、耐久性の強い環境微生物の様々な属に存在し、より一般的なヒト病原菌にとって ESBL の伝播源となる可能性がある。

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監訳者コメント
環境中に存在する ESBL 産生菌の遺伝子がヒト病原性大腸菌に接合伝達することを示した論文である。本論文では洗面台の配水管を菌だけでなく耐性遺伝子のリザーバーとして問題提起している。

抗菌薬の消費と入院成人における腸内細菌科細菌の皮膚保菌

Antibiotic consumption and Enterobacteriaceae skin colonization in hospitalized adults

A. Kirby*, C. Berry, R. West
*Leeds Teaching Hospitals NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 65-68


腸内細菌科細菌において抗菌薬耐性の増加がみられており、皮膚保菌が院内におけるその拡散に寄与する可能性がある。本研究では、入院成人 100 例を対象に腸内細菌科細菌の皮膚保菌について検査を行い、抗菌薬の消費を含む、可能性のあるリスク因子について評価した。多変量解析により、入院中の抗菌薬消費(オッズ比[OR]3.16、95%信頼区間[CI]1.19 ~ 8.4)および男性であること(OR 2.92、95%CI 1.06 ~ 8.4)が、腸内細菌科細菌の皮膚保菌のリスク因子であることが示された。これらのリスク因子が確認されたのであれば、関与する生物学的機序を理解する取り組みは、腸内細菌科細菌の皮膚保菌を予防するための介入の開発につながる可能性がある。

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ICU 病棟の設計と院内感染率:ドイツにおける横断的研究

ICU ward design and nosocomial infection rates: a cross-sectional study in Germany

A. Stiller*, C. Schröder, A. Gropmann, F. Schwab, M. Behnke, C. Gefers, W. Sunder, J. Holzhausen, P. Gastmeier
*Charité University Medicine Berlin, Germany

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 71-75


背景
病院および病棟の設計が多面的な感染制御に及ぼす影響について関心が高まっている。確定的なエビデンスはまれであり、現在の病棟設計についての知識は不足している。

目的
集中治療室(ICU)の病棟設計の現状に関するデータを収集し、特定の設計要因と院内感染率の関連を分析すること。

方法
2015 年、ドイツの院内感染サーベイランスシステム(KISS)に自発的に参加した ICU からオンラインの質問票により運営設備に関するデータを収集した。その後、2014 年から 2015 年の KISS のデータベースから得た院内感染率を用いて、多変量解析を実施した。

結果
全体で、534 の ICU から運営設備のデータが得られた。このうち、27.1%のベッドが中程度の大きさ 18 m2(四分位範囲 15 ~ 21 m2)の 1 人部屋で使用され、すべての ICU のベッドの 73.5%は、近くに擦式手指ディスペンサーを備えていた。著者らは、多変量解析において 266 の ICU をマッチさせることができた。病室に開閉可能な窓のある ICU は、機器に関連した下気道感染が少ないことと関連していた(オッズ比[OR]0.73、95%信頼区間[CI]0.58 ~ 0.90)。2 つのベッドを備えた部屋が40%を超えるICUは、主要な血流感染率が低いことと関連していた(OR 0.66、95%CI 0.51 ~ 0.86)。

結論
設計要因と ICU 感染率にはわずかな関連しか認められなかった。大半は他のリスク因子の代用であった。

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監訳者コメント
環境が施設内感染に及ぼす影響について、近年関心が高まっている。本論文では明らかな結果はでなかったものの、このような研究が今後も増えていくものと思われる。

集中治療室における表面のバイオバーデンと高頻度接触部位の関連性の検討

Examining the association between surface bioburden and frequently touched sites in intensive care

C.E. Adams*, J. Smith, V. Watson, C. Robertson, S.J. Dancer
*Hairmyres Hospital, NHS Lanarkshire, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 76-80


背景
救急患者の感染リスクは高い。患者付近の表面は、病原菌を含む可能性のある微生物学的汚染物質のリザーバとなる。

目的
集中治療室(ICU)における患者周辺部位の手指接触頻度と汚染レベルの関連性を明らかにすること。

方法
10床からなるICUの各ベッド周辺の 5 カ所について、微生物学的汚染物質(cfu/cm2)と黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のスクリーニングを10 か月にわたり毎月行った。選択部位は、点滴ポンプおよび心臓モニター、左右のベッドレール、ベッドテーブルであった。これらの部位への手指接触頻度の、調査であることを伏せた観察を 10 回、各 1 時間実施し、手指接触回数の平均を求め、微生物スクリーニングで得られた汚染物質レベルに対してモデル化した。

結果
ブドウ球菌属 10 種中 7 種が、特定部位の総汚染とともに(P = 0.005)認められ、同じ割合が最も接触頻度が高い 3 つの部位(ベッドレールとベッドテーブル)から認められた。総微生物汚染(> 12 cfu/cm2)を示した 4 カ所と手指接触回数平均に直線性がみられた(P = 0.08)。ベッドテーブルは最も多く触れられたが、汚染が最も多い部位ではなかった。ベッドテーブルへのアルコールゲル容器の習慣的設置が微生物数の減少につながった可能性があると考えられる。1 台のテーブルからゲル容器を除去することにより、再スクリーニング後、微生物汚染に対するゲル容器の抑制的効果が確認された(19%対 50%、> 12 cfu/cm2P = 0.007)。

結論
ICU の患者周辺の部位における表面のバイオバーデンは、スタッフおよび訪問者の手指接触頻度と関連している。このことは、高リスク医療環境における焦点を絞った衛生的な清掃の必要性を裏付ける。

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監訳者コメント
高頻度接触面における接触回数と実際の微生物汚染の程度の相関を証明した研究である。接触回数が増加するほど微生物汚染も高度になったが、最も接触回数が多かったベッドテーブルは汚染が少なく、その原因はアルコールゲルが設置してあったことではないかと考察している。高頻度接触面が実際に高度に微生物汚染していることや手指衛生、環境整備に関する院内教育に使える内容である。

心臓手術後の患者における気管内チューブ PneuX 使用による気管内チューブの細菌定着率

Incidence of endotracheal tube colonization with the use of PneuX endotracheal tubes in patients following cardiac surgery

E.L. Senanayake*, R. Giri, S. Gopal, A. Nevill, H. Luckraz
*Heart and Lung Centre, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 81-86


序論
人工呼吸器関連肺炎(VAP)は心臓手術を受けた患者の最大 25%に発症する。気管内チューブの細菌定着は VAP の一因となる。気管内チューブ PneuX は、心臓手術を受けた高リスク患者の VAP を半減させることが示されている。本稿は、PneuX と標準的な気管内チューブの間の VAP に関連した細菌定着の二次分析について報告する。

方法
この無作為化対照比較試験において、患者を A 群(気管内チューブ PneuX、120 例)または B 群(標準的な気管内チューブ、120 例)に 1:1 で無作為に割り付けた。左室機能障害(< 50%)の有無によらず、待機的および緊急心臓手術を受けた患者(年齢 >70 歳)を試験に組み入れた。術後 VAP 発症率と気管内チューブ内の細菌定着分析(234 例)を、挿管を< 24 時間、24 ~ 48時間、> 48 時間必要とした患者について評価した。

結果
ベースラインの患者背景は同等であった。VAP は、A 群では B 群と比較して少なかった(10.8%対 21%、P = 0.03)。VAP 発症率は各時点で A 群のほうが低かった。> 48 時間の挿管を必要とした患者では、A 群のほうが気管内チューブの細菌定着率が低かった。定着した細菌の種類に差は認められず(P = 0.5)、菌量(cfu)の平均数にも差は認められなかった(A 群および B 群でそれぞれ4.35 × 107[1.18 × 108]および2.16 × 108[1.24 × 109]、P = 0.8)。

結論
気管内チューブの細菌定着は、早発性 VAP において重要な役割を果たしてはいないようである。挿管時間が長いほど気管内チューブ PneuX の細菌定着が減少する傾向がみられた。このことは、遅発性 VAP の発症率を低下させることに影響を及ぼす可能性がある。

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監訳者コメント
欧米で販売されている PneuXTM という気管内チューブとその装置の有用性に関する研究である。PneuXTM は低用量、低圧のシリコン製カフを備え、同心円的に均等に膨らむことによって気管粘膜との隙間を最小限にしている。またカフ圧を20 ~ 30 mmHgに均等に維持するモニターと、3 つの声門下吸引ポートを有する。さらにパリレン(パラキシリレン樹脂)コーティングによりバイオフィルムの形成阻害効果が期待される。本研究は PneuXTM を用いて VAP の発症率低下を示した研究の二次解析の結果として微生物学的評価を報告したものである。

同一患者における手動蘇生器の連続使用:多剤および超多剤耐性細菌のリザーバ

Manual resuscitators in successive use in the same patient: reservoir of multi- and extensively resistant bacteria

G. Pinheiro Lima Aires Gomes*, A. Custódia Silva e Souza, L.S. Netto de Oliveira Leão-Vasconcelos, D. de Melo Costa, S. Bisinoto Alves, H. Carneiro Cunha Neves, M. Severino Pereira
*Federal University of Goias, Brazil

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 87-90


手動蘇生器上の細菌量を明らかにするため、ブラジルの集中治療室 1 施設において手動蘇生器のコネクタのスワブ試料を、0 時間目ならびに 同一患者での 24 および 48 時間の使用後に採取した。20 個の手動蘇生器から、計 54 の細菌が分離され、t = 0 で 6、t = 24 で 17、t = 48 で 31 であった。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が主な分離株で、すべての細菌属において多剤耐性が広範に認められた。患者間での手動蘇生器の効果的なコンタミネーション除去を確実に行うこと、ならびに個々の患者においてより頻繁に手動蘇生器を交換することへの認識を高めることが、気道への(再)保菌/感染のリスクを抑えるために推奨される。

監訳者注:
手動蘇生器とはいわゆるアンビューバッグを指す。

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監訳者コメント
アンビューバッグの汚染リスクは以前から指摘されているが、同一患者に繰り返し使用するうちに、その細菌汚染も経時的に高度になることが示された。このことは例え同一患者に使うのであっても、アンビューバッグは適宜交換しなければならないことを示唆している。各施設におけるアンビューバッグの取り扱いを今一度見直すと良いだろう。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)が恒常的に分離されている新生児集中治療室において、積極的サーベイランス培養および除菌プログラムを実施した場合のMRSA の獲得リスク★★

Meticillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) acquisition risk in an endemic neonatal intensive care unit with an active surveillance culture and decolonization programme

R. Pierce*, J. Lessler, V.O. Popoola, A.M. Milstone
*Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health, Baltimore, MD, USA

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 91-97


背景
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)は、新生児集中治療室(NICU)における医療関連感染の主要な原因菌である。MRSA の伝播を引き起こす感染源は、除菌により排除される可能性がある。

目的
除菌を実施した新生児からの保菌圧および未実施の新生児からの保菌圧について、MRSA 獲得との関連性を調べ、蔓延する MRSA の制御を目的とした本ストラテジーの有用性について情報提供すること。

方法
MRSA の感染制御のために積極的サーベイランス培養と除菌を行ったレベル 4 の NICU において、8 年間の後向きなコホート研究を実施した。1 週間の保菌圧への曝露環境を、先立つ 7 日間に治療(除菌)を受けた MRSA 保菌児および未治療の(除菌を受けていない)保菌児と同室した患児日数と定義した。ポアソン回帰を用いて保菌圧への曝露環境に関連する MRSA の新規定着リスクを見積もった。この状況下における、NICU 全体での既治療または未治療の患児に起因する MRSA の発生数の割合を評価するため、集団寄与割合を算出した。

結果
未治療の MRSA 保菌児への曝露が 1 人・日増えると、MRSAの獲得リスクは 6%上昇した(相対リスク[RR]1.06、95%信頼区間[CI]1.01 ~ 1.11)。既治療の隔離された MRSA 保菌児への曝露は獲得リスクに影響を及ぼさなかった(RR 1.01、95%CI 0.98 ~ 1.04)。この MRSA 制御プログラムでは、MRSA 獲得の 22%(95%CI 4.0 ~ 37)が未治療の MRSA 保菌児への曝露に起因するかもしれない。

結論
未治療の MRSA 保菌児は、伝播の重要な感染源であった。除菌を受け接触隔離された患児は、検知可能な伝播をもたらしうる存在ではなかった。このことは、除菌により患者から患者への伝播が減少する可能性があるという仮説を支持している。患者以外の感染源がユニット内での MRSA 獲得に寄与する可能性もあり、さらなる研究が必要である。

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監訳者コメント
レベル 4 の NICU とは、新生児の人工呼吸管理あるいは心臓外科などの外科的手術など極めて高度な治療を実施できる NICU であり、MRSA 保菌はその後の MRSA 感染症発症の危険性が危惧され、保菌者の感染対策は極めて重要である。本研究では、積極的なMRSA監視培養と除菌により、他の患児への保菌圧を軽減できるとするものである。培養部位は鼻腔前庭のみで、除菌はムピロシン(2回/日 × 5日間)による鼻腔除菌に加え、2%CHGによるクロスによる清拭を、在胎36週あるいは生後 4 週を越えれば 48 時間あけて 2 回実施、また生後 2か月経過しておれば清拭を 5 日間実施するという除菌プログラムであり、これにより他の患児への保菌リスクを低くできる可能性がある。日本のムピロシンの添付文書では、1 日 3 回 × 3日間が一般的であり、さらに「小児等に対する安全性は確立していない。なお、使用成績調査において、15 歳未満 379 例(出生後 4 週未満 156例 を含む)に使用された結果、副作用発現症例はなかった。」と記載されている。

パキスタンの小児集中治療室におけるデバイス関連感染症

Device-associated infections in a paediatric intensive care unit in Pakistan

A. Haque*, S.A. Ahmed, Z. Rafique, Q. Abbas, H. Jurair, S.A. Ali
*Aga Khan University Hospital, Pakistan

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 98-100


本研究では、2012 年から 2015 年にかけて、小児集中治療室における積極的感染制御およびサーベイランスの実施が、デバイス関連感染症の発生率に及ぼす影響を評価した。小児集中治療室には患児 1,378 例(4,632 患者日に相当)がおり、29 件のデバイス関連感染症が発生し、発生率は 2.1%、発生密度比は 1,000 患者日当たり 6.26 であった。中心ライン関連血流感染症、人工呼吸器関連肺炎、およびカテーテル関連尿路感染症の発生率は、それぞれ 1,000 カテーテル日当たり 7、1,000 人工呼吸器日当たり 1.17、1,000 カテーテル日当たり 0.24 であった。小児集中治療室におけるデバイス関連感染症の全発生率は低かったが、中心ライン関連血流感染症の発生率が相対的に高かった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
パキスタンの小児 ICU のサーベイランスであるが、小児集中治療では様々なデバイスを長期間使用することがあるため、国を問わず「患者の安全確保としての感染対策」は重要である。発展途上国でのデバイス関連の発生率は 2% ~ 27%と報告されており、本論文のパキスタンでの全体の発生率は報告より低いものであったが、中心静脈カテーテル関連感染の発生率が高いことは、カテーテルの挿入から維持管理、さらには輸液調整において、見直しが必要であろう。一方で多剤耐性菌の割合は、エンテロバクター、大腸菌、アシネトバクター、腸球菌において高率に認められることは、今後注意が必要である。

中国の 52 の病院を対象とする医療関連感染の点有病率調査

A point-prevalence survey of healthcare-associated infection in fifty-two Chinese hospitals

Y. Chen*, J.Y. Zhao, X. Shan, X.L. Han, S.G. Tian, F.Y. Chen, X.T. Su, Y.S. Sun, L.Y. Huang, L. Han, Chinese Group on Point-Prevalence Survey of Healthcare-Associated Infections
*Academy of Military Medical Sciences, China

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 105-111


背景
医療関連感染(HCAI)は世界中で患者の安全を脅かす重大な問題となっている。

目的
中国の病院における HCAI の有病率、病原菌、およびリスク因子を明らかにすること。

方法
中国の 52 の病院を対象に、2014年 10月から 2015年 3月までに 1日間の点有病率調査を実施した。ウェブベースのソフトウェアによるシステムを開発し、データの登録および管理に使用した。

結果
調査した患者 53,939例において、少なくとも 1件の HCAI が診断された患者の割合は 3.7%であった。HCAI エピソード 2,182件のうち最も多かったのは下気道感染症(47.2%)であり、次いで尿路感染症(12.3%)、上気道感染症(11.0%)、手術部位感染症(6.2%)であった。少なくとも 1件の HCAI が認められた患者の割合は、集中治療室が最も高かった(17.1%)。人工呼吸器関連肺炎、カテーテル関連尿路感染症、および中心静脈カテーテル関連血流感染を含む、デバイス関連感染は、HCAI 全体のわずか 7.9%であった。最も多く分離された微生物は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(206件[9.4%])、アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)(172件[7.9%])、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(160件[7.3%])、大腸菌(Escherichia coli)(145件[6.6%])であった。調査した患者の33.8%(53,939例中 18,206例)が、調査の時点で少なくとも 1種の抗菌薬の投与を受けていた。HCAI のリスク因子には、高齢(80歳以上)、男性、入院日数、集中治療室への入室、およびデバイスの利用が含まれた。

結論
本研究は、調査した中国の病院における全体としての HCAI の有病率が、多くの欧州諸国および米国で報告されているよりも低かったことを示唆している。中国ではデバイス関連感染以外の HCAI のサーベイランスと予防に多くの注意を払うべきである。

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監訳者コメント
中国における HCAI に関する調査であるが、52 病院の病院規模は、90%が 3 次医療施設、病床数は 144 から 3,200 床で、四分位範囲は767 ~ 1,800床と非常に巨大な病院群でのサーベイランスである。52 病院の 78%に 3 名の感染管理看護師(ICN)または感染管理医師(ICD)が配置されていた。これらのデータからは、中国のトップレベルの病院では欧米のレベルに近い感染対策が実施されていることが推測されるが、入院患者の年齢層は 20 ~ 60 歳台が70%を占めており、患者分布が異なっているので、これらを考慮して結果を解釈する必要がある。

炭酸ガス送気が開放手術創モデルから空中浮遊粒子を追い出す

Carbon dioxide insufflation deflects airborne particles from an open surgical wound model

P. Kokhanenko*, G. Papotti, J.E. Cater, A.C. Lynch, J.A. van der Linden, C.J.T. Spence
*Fisher & Paykel Healthcare Ltd, New Zealand

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 112-117


背景
手術部位感染は、依然として医療制度上大きな負担となっている。新たな対策が登場することによってメリットが得られることを期待したい。

目的
空気を介した汚染を減少させる目的で、送気装置を用いた開放手術創への炭酸ガス(CO2)送気の有用性を評価するとともに、創内外の CO2 の分布を測定すること。

方法
技術者と臨床の研究者による実験的アプローチをとり、手術室を想定した環境で開放手術創モデルを作成し、気流パターンと空中浮遊粒子の動きを測定した。レーザー光照射により気流を可視化し、創腔内外部に堆積した粒子の収集および分析により防御の度合いを定量化した。

結果
創部に侵入した直径 5 μm未満の粒子数は、10 L/分の CO2 送気により平均で 1/1,000 に減少した。より大きく重い粒子になると、侵入しやすくなり、1/20 の減少であった。創腔内部および外部での手の過大な動作は、CO2 送気による防御の度合いに影響を及ぼさなかった。CO2 の定常濃度は創腔内部の大部分で 95%を超えたが、創のふちより上では急速に低下し、表面から 25 mm の高さで大気中濃度(0%近く)になった。

結論
創腔内の CO2 は空中浮遊粒子の創部への侵入を防ぎ、防御と同様の役割を果たした。CO2 送気は開放手術における術中感染率の低下に有効な方法であるかもしれない。

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監訳者コメント
手術部位感染を減らすことを目的とし、CO2 送気で創部を充満させ、創部への粒子の付着を少なくしようという本法の試みは、非常に独創的である。工学的にそれを評価するモデルを作成し、実際に結果を得たという点も評価できる。今後の研究の進展と応用に期待したい。

Bacillus 属菌の偽性アウトブレイク:建設工事と巻き添え被害

Bacillus species pseudo-outbreak: construction works and collateral damage

L. Boix-Palop*, C. Nicolás, M. Xercavins, M. Riera, N. Prim, N. Freixas, J. Pérez, E. Calbo
*Hospital Universitari Mútua Terasa, Spain

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 118-122


救急部における建設工事に伴う Bacillus 属菌菌血症の偽性アウトブレイクの調査と制御について報告する。偽性アウトブレイク期間中、血液培養検査 3,469 件中 59 件(1.7%)から Bacillus 属菌が検出されたが、2012 年には 7,628 件中 24 件(0.31%)であった。救急部で使用されていた物品やその表面、さらに空気からBacillus 属菌を培養でき、環境が広く汚染されていたことが判明した。菌血症例は、感染対策の実施および建設終了後に急速に減少した。救急部における建設工事によって生じた環境汚染が、Bacillus 菌血症の偽性アウトブレイクを引き起こした可能性が高い。建設作業に伴うバリアーを正しく、有効に設置していないと、病院環境で患者および医療従事者が危険に曝されるのみならず、偽性アウトブレイクを起こしてしまいかねない。

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監訳者コメント
Bacillus 属菌は環境にあまねく存在し、特に塵埃が飛ぶ、巻き起こるような環境では、空中に浮遊しやすい。本事例では、建設工事によって広範囲に飛散したBacillus 属菌が環境を汚染し、さらに医療材料も汚染したことで、偽性アウトブレイクを生じた可能性が高い。いわゆる養生など、工事の際のバリアーを確実に行うことで、飛散をできる限り少なくする努力が求められる。

小児腫瘍患者における便培養の臨床的価値:院内の検討と英国内調査

Clinical value of stool culture in paediatric oncology patients: hospital evaluation and UK survey of practice

O. O’Connor*, R.P.D. Cooke, N.A. Cunliffe, B. Pizer
*Alder Hey Children ’s Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 123-125


下痢は小児腫瘍患児に頻繁に生じる症状である。下痢を来した入院患者にルーチンに腸内細菌検査を行うことは、一般的にはあまり有用ではない。しかし小児腫瘍患児においてはその有用性に関する検討は報告されていない。そこで我々は、当 3 次小児腫瘍科において 5 年間の後向きの解析を行うと共に、21 施設からなる全国調査を実施し、下痢を呈する腫瘍患者の便培養の有用性と、英国内の取り組みを検討した。当施設の調査ではルーチンの便培養によって診断に至った割合は極めて低く、検査陽性は 842 件中わずか 1 検体(0.1%)であった。全国調査では実施にかなりのばらつきが認められた。当施設では小児腫瘍患児を対象とした従来法による腸内細菌の便培養には、エビデンスはほとんどないといえる。以上の結果は、国内の検査指針の策定に際し情報として提供されるべきである。

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監訳者コメント
本検討は小児腫瘍科の受診患児で、下痢を来していた例を対象としており、入院例・日帰り入院例を含む。便培養の対象菌についての詳細な情報はないが、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)検査は 2 歳を超え、下痢が続き、便に血液ないし粘液を伴い、腸管炎症の強い例のみについて行っている。ルーチンではなく、患者背景と目的を考慮した培養検査の適切さ・重要性を確認した結果といえる。

監訳者注:
※本文中の記載によると、これはカンピロバクター(Campylobacter)であった。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.