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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

横断的なイノベーションは病院感染を減らせるか?

Can intersectional innovations reduce hospital infection?

S. Saint*
*VA Ann Arbor Healthcare System, USA

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 129-134


医療関連感染の予防はたいてい予防可能であるが、患者の安全が損なわれることの臨床的および経済的影響を考えると、依然として国際的な優先課題である。病院感染の予防は、過去数十年間に重要な進歩を遂げているが、手指衛生率をどのようにして一貫して改善させるか、カテーテル関連尿路感染などのデバイス関連合併症をどのようにしてさらに減少させるかなど、まだ困難な問題が残っている。直接的なイノベーションすなわち科学的進歩の持続的基盤である緩やかな変化、のみに頼るよりも、おそらく「横断的なイノベーション」を探し求めるべきである。これは、しばしば大きく異なる規律が交わることにより画期的な発見が生じることを表す。感染予防の取り組みに大きく影響する可能性のある交差的イノベーションは、人間工学、社会学、五感の動員などである。実際、今回のレクチャーの名称の元となった Edward Joseph Lister Lowbury 教授は一流の細菌学者であり詩人であり、彼自身の人生において横断的思考を実証した。従来の生物医科学以外のアプローチを導入することにより、患者が期待する、受ける価値のある安全な治療を、我々は患者に提供できると希望を持てるかもしれない。

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監訳者コメント
各領域には専門家がいるが、異なる領域の専門家同士が情報共有することでさらに改善が進むことが期待される。自己のカラに閉じこもらないで異なる領域の専門家と交流することで革新的なアイデアが生まれる可能性がある。

心臓手術を受ける患者における術前のオクテニジン鼻軟膏およびシャワーが手術部位感染に及ぼす影響

Effect of pre-operative octenidine nasal ointment and showering on surgical site infections in patients undergoing cardiac surgery

M. Reiser*, A. Scherag, C. Forstner, F.M. Brunkhorst, S. Harbarth, T. Doenst, M.W. Pletz, S. Hagel
*Jena University Hospital, Germany

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 137-143


目的
術前のオクテニジンによる除菌が手術部位感染(SSI)発生率に及ぼす影響を評価すること。

デザイン
前後比較コホート研究。

患者
待機的摘出冠動脈バイパス術を受ける患者:対照群(2013 年 1 月 1 日から 12 月 31 日)475 例、介入群(2014 年 1 月 1 日から 12 月 31 日)428 例。

介入
介入として、オクテニジン軟膏の鼻腔内への塗布を手術前日から 1 日 3 回行い、オクテニジン石けんを用いたシャワーを手術の前夜および当日に行う。

結果
胸骨正中切開術は 805 例(89.1%)で、低侵襲冠状動脈バイパス術は 98 例(10.9%)で実施された。全体で、対照群と介入群で SSI 発生率に差はみられなかった(15.4%対 13.3%、P = 0.39)。採取部位の SSI 発生率は、介入群の患者のほうが有意に低かった(2.5%対 0.5%、P = 0.01)。胸骨正中切開術を受けた患者において、臓器/体腔の胸骨 SSI 発生率は介入群のほうが有意に低かった(1.9%対 0.3%、P = 0.04)。しかし、深部切開創の胸骨 SSI 発生率の増加傾向がみられた(1.2%対 2.9%、P = 0.08)。多変量解析から、介入による有意な保護効果は認められなかった(オッズ比 0.79、95%信頼区間 0.53 ~ 1.15、P = 0.27)。

結論
待機的摘出冠動脈バイパス術を受けた患者において、オクテニジンを用いた術前の除菌により、全般的な SSI 発生率は低下しなかったが、採取部位および臓器/体腔の胸骨 SSI は有意に低下した。患者の介入へのアドヒアランスのコントロールを含むランダム化対照試験において、これらの観察を確認し、術前の除菌におけるオクテニジンの臨床的有用性を検討する必要がある。

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監訳者コメント
オクテニジンによる除菌処置のスキルのバラツキがひょっとしてアウトカムに影響しているかも知れない。こうした粘膜・表皮における除菌処置については処置のプロセスにも留意して評価する必要がある。

深部脳刺激術を受ける患者において黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のスクリーニングおよび除菌は手術部位感染リスクを減少させる

Staphylococcus aureus screening and decolonization reduces the risk of surgical site infections in patients undergoing deep brain stimulation surgery

J. Lefebvre*, S. Bufet-Bataillon, P.L. Henaux, L. Rifaud, X. Morandi, C. Haegelen
*Pontchaillou University Hospital, France

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 144-147


単一施設の対照前後比較研究において、深部脳刺激を受ける患者 182 例を対象として、鼻腔内ムピロシン軟膏およびクロルヘキシジン入りの洗浄剤使用後に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)鼻腔内保菌の有無を確認することにより、手術部位感染(SSI)が減少するかどうかを検討した。全部で、対照群に 119 例、スクリーニング群に 63 例を組み入れた。2 群間に 10.9%から 1.6%への SSI の有意な減少がみられた(P < 0.04、相対リスク 0.13、95%信頼区間 0.003 ~ 0.922)。黄色ブドウ球菌による SSI は、対照群で 8 件であったが、スクリーニング群では認められなかった。SSI の特定のリスク因子は認められなかった。

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監訳者コメント
黄色ブドウ球菌の保菌者に対してムピロシン軟膏の鼻腔内塗布とクロルヘキシジン浴による除菌処置を試みそのアウトカムとしての SSI の発生をみている。(抗菌薬耐性や消毒薬抵抗性菌の出現の観点から)MRSA でなくても除菌をするかどうかが検討課題であろう。

脊椎転移に対する手術を受けた患者における手術部位感染の管理および費用

Management and cost of surgical site infection in patients undergoing surgery for spinal metastasis

R.A. Atkinson*, A. Jones, K. Ousey, J. Stephenson
*Salford Royal NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 148-153


背景
手術部位感染(SSI)は、重篤となる可能性のある脊椎手術合併症である。SSI は入院患者の入院期間および追加の治療に伴う費用に大きな影響を及ぼす可能性がある。

目的
脊椎転移性腫瘍に対する手術後に SSI がみられた患者の管理方法を検討し、これに関連した SSI に伴う費用を推定すること。

方法
2009 年 1 月から 2012 年 12 月に大規模な脊椎手術施設で脊椎腫瘍手術後に SSI が認められた患者を同定した。既存の症例記録を再検討し、患者および手続き上のデータ、感染の詳細、治療介入を記録した。SSI が認められた患者に対し、感染に伴う費用を算出するためのボトムアップ・アプローチを用い、SSI が認められない同様の患者の擬似ランダムサンプルと比較した。

結果
SSI 患者の治療費用の平均は、非 SSI 患者より有意に高かった(P = 0.019)。入院患者の入院費用の平均は、SSI 患者のほうが非 SSI 患者と比較して 60%高かった(P = 0.004)。入院患者の入院単独で全費用の 59%を占めた。再手術は、全体で 2 番目に費用の高い介入で、全費用の 38%を占め、SSI治療に関連したもっとも費用のかかる単独の介入であった。

結論
SSI によって、脊椎転移に対する手術を受ける患者の医療費は、入院患者の入院期間の延長と、創傷管理のための再手術を主な要因として、大幅に増加する。この患者群において、SSI に由来する、社会への実際の総費用は医療提供者への単なる直接経費をはるかに超える可能性が高い。

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監訳者コメント
ボトムアップアプローチはデータを一つずつ分析しながら価値判断を積み上げていく経済分析の手法である。本論文では、集まったデータをそれぞれに分析し、SSI 患者と非 SSI 患者で比較を行った。入院費や再手術などがどれぐらいの負担の増大になるのかが明確になっており、説得力がある。

脳室ドレーン関連感染のサーベイランス:方法の提案とパイロット研究の結果

Surveillance of infection associated with external ventricular drains: proposed methodology and results from a pilot study

H. Humphreys*, P. Jenks, J. Wilson, V. Weston, R. Bayston, C. Waterhouse, A. Moore on behalf of the Healthcare Infection Society Working Party on Neurosurgical Infections
*Royal College of Surgeons in Ireland, Ireland

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 154-160


背景
脳室ドレーンの挿入は、一部の神経外科患者で不可欠であるが、髄膜炎・脳室炎のリスクを増加させる。よく知られたリスク因子はあるが、髄膜炎・脳室炎を発症する患者の割合は、定義の違いのために多少異なる。脳室ドレーンに関連した髄膜炎・脳室炎の定義について合意するため学際的作業グループを設立し、英国およびアイルランドの 4 施設でサーベイランスシステムを試験的に実施した。

方法
定義は、これまでに公表された定義と、臨床的および微生物学的基準に基づいて合意された。合意されたデータセットを開発し、脳室ドレーンの挿入後から、脳室ドレーンを抜去し微生物的原因を記録するまで、患者をモニタリングした。

結果
4 つの神経外科施設が参加し、各施設の患者 61 ~ 564 例を調査した。ドレーンの大多数は頭蓋内ドレーンであった。脳室ドレーン挿入のもっとも多い適用は頭蓋内出血であった。脳室ドレーンの 6% ~ 35%は、若手医師ではなく上級専門医に挿入された。髄膜炎・脳室炎を発症した患者の割合は 3% ~ 18%と異なり、1,000 脳室ドレーン・日あたり 4.8 ~ 12.7件であった。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌が微生物学的原因でもっとも多くみられた。

結論
脳室ドレーン挿入患者の髄膜炎・脳室炎を in situ 検出するための定期的および持続的モニタリングは、物流の問題があり、ほとんどの施設で実施されていない。今回のパイロット研究が示唆することは、合意された定義を用いた全国的サーベイランスと、脳室ドレーンによる髄膜炎・脳室炎の施設間の比較を可能にする方法は、いずれも必要であり、実現可能であることである。これらのことから、今度は、感染を最少限に抑える質の改善プロセスの情報が得られるであろう。

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EN 12791による「残存有効成分」を含有する手術用擦式アルコール製剤の持続的有効性の欠如

Lack of sustained efficacy for alcohol-based surgical hand rubs containing ‘residual active ingredients’ according to EN 12791

G. Kampf*, A. Kramer, M. Suchomel
*Infection Control Solutions, Germany

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 163-168


世界保健機関は、手術時手指消毒法に「持続的効果」を有する擦式製剤の使用を推奨している。本総説の目的は、クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)、エチル硫酸メセトロニウムやオルトフェニルフェノールなどの非揮発性「有効成分」を含有するいずれかの擦式アルコール製剤が、手術時手指消毒用としてそうした持続的効果を示すかどうかを検証することである。EN 12791 に従った試験を特定するため文献を検索した。公表されたデータセットを解析し、標準手法と比較していずれかの製剤で 3 時間後に優越した効果(P < 0.01)が認められるかどうかを検証した。70%イソプロパノールまたは 61%エタノール中に 0.5%および 1% CHG を含有する製剤では、3 時間後に優越性が認められなかった。45%イソプロパノールおよび 30% n-プロパノール中に 0.2%エチル硫酸メセトロニウムを含有する製剤でも、1 分間(1 データセット)、現在推奨されている 1.5 分間(14 データセット)、2 分間(1 データセット)使用した場合、優越性が認められなかった。3 分間使用した場合、7 データセット中 3 データセットで、これらの製剤で優越性が認められた。78.2%エタノール中に 0.1%オルトフェニルフェノールを含有する擦式製剤も、推奨されている 1.5 分間使用した場合、標準治療と比較して優越性が認められなかった。アルコールなどの明確な有益性のある殺生物剤への皮膚曝露および殺生物剤の環境への排出を制限することは妥当かつ責任あることのようである。擦式製剤に着色料や香料を避けることと同様に、明確な有益性はないがリスクの可能性がある「有効」な物質を含有する製剤は、同水準の抗菌活性、皮膚忍容性、使用者受容性を持つ代替製剤が利用可能な場合、避けるべきである。

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監訳者コメント
持続効果の期待できる消毒薬を含有した擦り込み式アルコール製剤の持続的効果に関するレビューである。含有により必ずしも効果の優越性があるわけではないことに加え、使用時間が優越性に影響することはとても興味深い。

手指衛生実施中の観察と研究の影響:方法の再考

Impact of observing hand hygiene in practice and research: a methodological reconsideration

D.J. Gould*, S. Creedon, A. Jeanes, N.S. Drey, J. Chudleigh, D. Moralejo
*Cardiff University, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 169-174


手指衛生の目的は医療関連感染の連鎖を断つことである。多くの国で、手指衛生は、世界保健機関の推奨に基づき品質保証の一環として定期的に監査されている。推奨される監査法は直接的観察であるが、観察されて普段の行動を変える可能性などのデメリットと関連している。手指衛生と関連する Hawthorne 効果(観察されているという影響)は、手指衛生を行う頻度を高めることによる生産性向上と似ている。Unobtrusive observation および頻繁な観察またはそのいずれかを実施してスタッフを観察者の存在に慣れさせることは、Hawthorne 効果を低下させる方法として容認できると考えられるが、こうした手法の実施法やその効果の検討法を考察した文献はほとんどない。見られていることを意識することで、単純な生産性効果以外に複雑な予想のつかない形で人の普段の行動が乱されうるというエビデンスがある。監査者が存在すると医療従事者は手指衛生を要する行動をあとまわしにしたり回避したりする可能性があるが、こうした問題は実践ガイドラインや調査研究では取り組まれていない。この監視は、手指衛生監査の結果の妥当性に影響する。手指衛生用品の使用量を測定することで回避戦術を克服できる。測定によって、安価に、患者ケアを妨げることなく臨床家すべての遵守を継続的に評価するデータを得られる。デメリットとして、こぼすこと、むだづかいすること、面会者や患者ケア区域に入った臨床以外のスタッフが使用することで使用量を過大に見積もるリスクがある。電子機器によって Hawthorne 効果および回避効果を克服できる可能性はあるが、費用がかかり調査研究以外の場面では広く使用されていない。

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監訳者コメント
本稿は手指衛生の遵守率調査に関する総説(レビュー)である。直接観察、使用量、電子的自動モニタリングなどのメリット、デメリットが最新の文献に基づきレビューされているが、その中でも特に Hawthorne 効果について詳しく言及されている。これから手指衛生の研究や直接観察法を始めようとする人には必読である。

擦式アルコール製剤の使用量の検討

Dose considerations for alcohol-based hand rubs

M.A.C. Wilkinson*, K. Ormandy, C.R. Bradley, A.P. Fraise, J. Hines
*Queen Elizabeth Hospital Birmingham, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 175-182


背景
製造者が推奨する擦式アルコール製剤の使用量は、通常、EN 1500 などのモデルプロトコールを用いて製品の有効性を測定することで決められる。しかし、事例報告や非公式な観察により、多くの場合、実臨床での使用では使用者はそれよりはるかに少ない量に自己調節していることが示唆されている。

目的
擦式アルコール製剤の使用量と EN 1500 標準試験法を用いた in-vivo 有効性、使用者の手指の乾燥時間、受容性に対する使用者の認識との相互依存関係を検討すること。

方法
EN 1500 およびこの方法の修正法を用いて 3 種類の製剤を試験した。修正法では、0.5 ~ 3.0 mL の範囲の量を 30 秒間使用した。乾燥時間を記録し、3 点尺度(長すぎる、OK、短すぎる)を用いて使用者の受容性を明らかにした。乾燥時間を手の表面積との関連で解析した。

結果
3 種類の製品すべてで乾燥時間は使用量に応じて増加した。乾燥時間は、使用量とは正の関連を、手の表面積とは負の関連を示した。使用者の受容性に関して最適な量は 1.5 ~ 2 mL であり、乾燥時間は 20 ~ 30 秒であった。

結論
EN 1500 は、擦式手指消毒薬の有効性をベンチマークと比較して確認するには適切であるが、実際の使用中の条件や製品の予想される臨床効果を反映していない。特に、使用量および製品の使用者受容性を最適にする必要性には取り組んでいない。

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監訳者コメント
手指衛生剤の適切な量はメーカーが規定するとされているが、実際にプッシュ型のものでは使用者は押す力を加減したり、回数を調節するなどして少なめ、あるいは多めに手に取ることが多い。本稿は適切な手指衛生剤を決定する試験基準である EN1500 とその結果の医療現場の受容性について検討した研究である。手指衛生剤の量について気になっている人は読んでみてはいかがだろうか。

集中治療室のサーベイランスを改善するために擦式アルコール製剤消費データの層別化に人工呼吸器使用率を使用

Use of ventilator utilization ratio for stratifying alcohol-based hand-rub consumption data to improve surveillance on intensive care units

W. Wetzker*, K. Bunte-Schönberger, J. Walter, C. Schröder, P. Gastmeier, C. Reichardt
*Charité - Universitätsmedizin Berlin, Germany

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 185-188


背景
ドイツでは、手指衛生遵守の代替パラメータとして病院環境における擦式アルコール製剤の患者・日当たりの消費量に関する国家的なサーベイランスシステムを確立している。集中治療室(ICU)での擦式アルコール製剤消費量データの解析により、様々な診療科の集中治療室間だけでなく 1 診療科の複数の集中治療室のうちでも消費量の幅広さが示されている。これは、ケアの複雑度のばらつきにより ICU 間で患者・日当たりの手指衛生を行う回数が異なることを反映しているようである。

目的
人工呼吸器使用率は、ICU でのケアの複雑度および集中度を記述するために良い代替パラメータなのかどうか、人工呼吸器使用率による層別化は擦式アルコール製剤消費量データにベンチマークを設定する新たな方法として有用なのかどうかを検討すること。

方法
ドイツの国家的な病院感染サーベイランスシステム(KISS)に参加している ICU 365 カ所からのデータを用いた。人工呼吸器使用率は、ICU当たりの人工呼吸器使用日数をICU当たりの患者・日数で除して算出した。擦式アルコール製剤消費量を人工呼吸器使用率にしたがって四分位群に層別化した。

結果
擦式アルコール製剤消費量の中央値は 107 mL/患者・日(四分位範囲[IQR] 86 ~ 134 mL/患者・日)、人工呼吸器使用率の中央値は 33%(IQR 22 ~ 45%)であった。Spearmanの順位相関係数は 0.28 (P < 0.0001)であった。擦式アルコール製剤消費量を人工呼吸器使用率によって層別化後、第 1 四分位群の擦式アルコール製剤消費量は第 4 四分位群と比較して有意に低かった。第 1 四分位群と第 2 四分位群および第 3 四分位群とのあいだにも有意差があった。

結論
人工呼吸器使用率にしたがって擦式アルコール製剤消費量データを層別化することで、ICU における手指衛生遵守の代替パラメータとしての擦式アルコール製剤消費量のデータに基づいたベンチマークパラメータの質が改善されることが示唆されている。

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監訳者コメント
ドイツでは病院ごとの擦式アルコール製剤消費量に関する全国的なサーベイランスが行われている。しかし病院や病棟の特性によって必要とされる擦式アルコール製剤の目標使用量は異なる。本稿は擦式アルコール製剤の使用量を擦式アルコール製剤の使用量の病院間比較に、人工呼吸器使用率による調整が有用であることを示した論文である。

全世界手指衛生リレー:革新によって手指衛生を推進する

The global hand-sanitizing relay: promoting hand hygiene through innovation

E. Tartari*, D. Pires, F. Bellissimo-Rodrigues, M. De Kraker, T-H. Borzykowski, B. Allegranzi, D. Pittet
*University of Geneva Hospitals and Faculty of Medicine, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 189-193


「Clean Care is Safer Care(清潔なケアはより安全なケア)」プログラムの 10 周年を迎え、世界保健機関(WHO)患者安全共同センターは「全世界手指衛生リレー 2015(Global Hand Sanitizing Relay 2015)」を開始した。この包括的な活動は、手指衛生遵守を改善するために WHO 擦式法を推進する。43 か国の 133 病院から 15,000 名を超える医療従事者が参加した。2015 年 5 月から 9 月までに、14 病院がキャンペーン前および後の手指衛生遵守データを提出した。57%(14 病院中 8 病院)で有意な上昇が報告されたが、その他では最小限の改善または改善なし(平均絶対変化率 9.4%)であった。この全世界手指衛生リレー 2015 によって、医療従事者は、手指衛生遵守を改善するための新たな戦略に関心があることが明らかになった。

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監訳者コメント
手指衛生は院内感染を予防する手段として有効であることを誰もが理解しているにもかかわらず、未だに解決できていない院内感染の課題である。毎年 5 月 5 日は WHO が決めた「世界手指衛生の日」である。手指衛生をを習慣化あるいは文化として、また日常的な医療行為として定着させるために多くの試みがなされている。世界手指衛生リレーもその一環である。しかしながら、手指衛生の遵守率は、一時的に改善はするが、時間と共に低下することが世界共通の悩みであり、未だに未解決の課題でもある。人間行動科学の面からのアプローチもなされているが、まだまだ「患者の安全」を保証するには多くの課題が残されている。

表面上でのインフルエンザの残存

Persistence of influenza on surfaces

K.-A. Thompson*, A.M. Bennett
*Public Health England, Porton Down, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 194-199


背景
密接な接触による伝播(直接接触または大きな飛沫/飛沫核)はインフルエンザのアウトブレイクの主要因と考えられているが、伝播における媒介物の役割については情報が限られている。

目的
表面上でのインフルエンザウイルス株の安定性を調べ、伝播における媒介物の役割を検討すること。

方法
3 種の表面(綿、マイクロファイバー、ステンレス鋼)上に播種した 5 つのインフルエンザウイルス株(A/PR/8/34/H1N1、A/Cal/7/09/H1N1、A/Cal/4/09/H1N1、A/Sol/54/06/H1N1、A/Bris/59/07/H1N1)の生存および定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT–PCR)シグナルを、経時的に評価した。細胞培養により作製したウイルス保存液に 0.3%ウシ血清アルブミンを添加した懸濁液(106 ~ 108 pfu/mL)10 μLを、各材質の試験片に播種した。試験片は、ボルテックスミキサーを使用する溶離法を用いて、プラークアッセイおよび定量的 RT–PCR により、1 時間後、24 時間後、および週ごとに 7 週間分析した。

結果
生存ウイルスは、最長で 2 週間(ステンレス鋼)および 1 週間(綿およびマイクロファイバー)試験片から検出されたが、PCR 法では 7 週間の研究期間を通して検出された。株差は認められなかった。
生存ウイルスが 99%減少するまでの時間(播種した保存液に応じた値)は、綿 17.7 時間(R2 = 0.86)、マイクロファイバー 34.3時間(R2 = 0.80)、ステンレス鋼 174.9 時間(R2 = 0.98)であった。

結果
生存インフルエンザウイルスは最長で 2 週間、表面から回収された。対照的に、PCR 法ではインフルエンザは 7 週間を超えて検出された。これらの結果は、医療現場において、感染制御業務手順、清掃スケジュールおよびサンプル採取法を決定するうえで、重要な意味を持つ。

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監訳者コメント
RT-PCR 法は遺伝子を検出するため、感染性とは関係なく、遺伝子の存在のみで検出される。インフルエンザの感染経路は飛沫感染と接触感染があり、本論文の結果から、環境表面に放置されたインフルエンザウイルスの感染性は 2 週間程度であることが推測される。インフルエンザは、直接飛沫を浴びるなどの濃厚接触による飛沫感染が主体であり、環境表面からの間接的接触による感染のデータは限られている。本論文の結果からは、飛沫感染経路以外に環境を介した間接的な接触感染の可能性を示唆している。環境にウイルスが残存すれば感染性があることを考慮し、環境整備の方法や頻度において再検討が必要である。

院内獲得によるインフルエンザ A(H1N1)pdm09 ウイルス感染を有する集中治療室入室患者の特徴

Characteristics of patients with hospital-acquired influenza A (H1N1)pdm09 virus admitted to the intensive care unit

F. Álvarez-Lerma*, J. Marín-Corral, C. Vilà, J.R. Masclans, I.M. Loeches, S. Barbadillo, F.J. Gonzàlez de Molina, A. Rodríguez on behalf of the H1N1 GETGAG/SEMICYUC Study Group
*Hospital del Mar, Spain

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 200-206


背景
集中治療室(intensive care unit;ICU)に入室した重症患者における、院内獲得によるインフルエンザ A(H1N1)pdm09 ウイルス感染については、十分に特徴づけられていない。

目的
重症患者における、院内獲得によるインフルエンザ A(H1N1)pdm09 ウイルス感染の臨床的影響を評価すること。

方法
重症のインフルエンザ A を有した ICU 入室患者を収集したスペインのレジストリ(2009から 2015年)の後向きデータベースを分析した。院内獲得による感染は、診断および治療開始が入院の 7日目以降、かつ入院時に感染の疑いがなかった場合とし、市中獲得による感染は、入院後 48時間以内に診断が確定された場合とした。

結果
インフルエンザ A(H1N1)pdm09 感染患者 2,421 例のうち、224 例(9.3%)が院内獲得、1,103 例(45.6%)が市中獲得に分類された(残る症例は未分類)。ICU 内での死亡率は、院内獲得群の方が高かった(32.9%対 18.8%、P < 0.001)。死亡に関連する独立因子は、院内獲得によるインフルエンザ A(H1N1)pdm09 感染(オッズ比[OR]1.63、95%信頼区間[CI]1.37 ~ 1.99)、ICU 入室時の APACHE II スコア(OR 1.09、95%CI 1.06 ~ 1.11)、血液疾患の基礎疾患(OR 3.19、95%CI 1.78 ~ 5.73)、腎外血液浄化法の必要(OR 4.20、95%CI 2.61 ~ 6.77)、および機械換気(人工呼吸器)の必要(OR 4.34、95%CI 2.62 ~ 7.21)であった。

結論
院内獲得によるインフルエンザ A(H1N1)pdm09 感染は、重症の ICU 入室患者において、死亡の独立因子である。

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監訳者コメント
入院後の H1N1pdm09 の感染は、重症化により ICU 入室を余儀なくされるが、基礎疾患が重症化を助長することは周知の事実である。インフルエンザによる院内感染は、市中獲得よりも予後を悪化させる可能性が示唆され、インフルエンザ流行中は感染制御の強化は極めて重要であることが改めて確認された。入院時の症状スクリーニングと入院後の早期発見と早期対策により患者間の院内伝播を防止することが極めて重要であるとともに、医療従事者からの患者への伝播も同時に注意が必要である。

2015 年、韓国における中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)アウトブレイク:疫学、臨床的特徴および公衆衛生上の予測★★

Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) outbreak in South Korea, 2015: epidemiology, characteristics and public health implications

K.H. Kim*, T.E. Tandi, J.W. Choi, J.M. Moon, M.S. Kim
*Korea University, Korea

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 207-213


背景
2015 年 5 月 20 日に韓国において中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス(CoV)の初発症例が報告されて以来、186 例の確定症例、38 例の死亡例、および16,752 例の疑い症例が認められている。以前に韓国の MERS アウトブレイクに関して発表された調査は、利用可能なデータがほとんどなかった早期段階に限られていた。アウトブレイクが終了した現在、非公式にではあれ、より包括的なレビューを行うことは適切である。

方法
韓国保健福祉部および韓国疾病対策センターが運営する MERS ポータル、ならびに韓国保健福祉部による報道発表および韓国医師会の MERS 対策委員会による報告からデータを得た。症例について、全般的な特徴、曝露源、時間経過および感染の発生状況を分析した。38 例の死亡例について、性別、年齢および基礎疾患を分析した。

結果
28 例への感染をもたらした初発症例から始めて、詳細な分析を行った。平均年齢は 55 歳で、世界的な平均である 50 歳よりわずかに高かった。他のほとんどの国と同様に、患者は男性の方が女性よりも多かった。症例致死率は 19.9%で、世界的な症例致死率の 38.7%およびサウジアラビアにおける 36.5%より低かった。合計で 184 例が院内感染であり、市中感染症例はいなかった。主な基礎疾患は、呼吸器疾患、悪性腫瘍および高血圧であった。アウトブレイクの主要な寄与因子は、診断が遅かったこと、「スーパースプレッダー」を隔離できなかったこと、家族によるケアや訪問、患者が自身の感染を明かさなかったこと、韓国政府の情報提供不足、病院の不適切な感染管理、および「ドクターショッピング」であった。このアウトブレイクは全体的に院内感染によるものであり、生物医学的な要因ではなく、主として感染管理および方針の不備に起因していた。

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監訳者コメント
韓国における中東呼吸器症候群の集団発生はいまだ記憶に新しいが、本報告はその疫学、臨床的特徴、感染対策に関する総括したものとして、貴重なものである。ご一読をお勧めする。

同種造血幹細胞移植レシピエントの RS ウイルス感染症に対し経口リバビリンの使用が効果的

Effective use of oral ribavirin for respiratory syncytial viral infections in allogeneic haematopoietic stem cell transplant recipients

C.M. Gorcea*, E. Tholouli, A. Turner, M. Saif, E. Davies, E. Battersby, F.L. Dignan
*Manchester Royal Infirmary, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 214-217


背景
RS ウイルスは、呼吸器感染症の原因ウイルスの中でも頻度が高く、同種造血幹細胞移植を受けた患者が罹患すると、合併症の発生率や死亡率が高くなる。この免疫不全者における最適な管理法についてはほとんど分かっておらず、経口リバビリン療法に関するデータはきわめて少ない。

目的
同種造血幹細胞移植レシピエントの RS ウイルス感染症に対する、経口リバビリンの有効性を評価すること。

方法
経口リバビリン投与を受けた RS ウイルス感染症例 23 例を後向きに分析した。RS ウイルス感染症の診断は PCR アッセイにより確認した。経口リバビリンは15 mg/kg/日 3 回分割投与で開始して 10 日間続行としたが、治療施設の方針に従い、その後の増量は行わなかった。

結果
診断時に 7 例は下気道感染を呈していたのに対し、16 例は上気道感染を呈していた。経口リバビリンの忍容性は良好で、有害作用は軽微であった。治療期間中央値は 10 日間(範囲:5 ~ 47)であった。中央値で 17 か月(範囲:4 ~ 48)の追跡調査期間後、17 例が生存していた。RS ウイルス関連死亡が 1 例、非関連死亡が 5 例認められた。

結論
筆者らの知る限り、本研究は成人同種造血幹細胞移植レシピエントの RS ウイルス感染症に対し経口リバビリン投与の有効性を検討した、これまでで最大規模の単一施設研究である。治療の速やかな開始が重要であり、これにより入院が回避される可能性がある。当院での経験は、経口リバビリンの使用を支持しているが、この患者集団における至適治療を明らかにするためには大規模前向き研究が必要である。

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監訳者コメント
RS ウイルス感染症の治療薬として、リバビリンが認可されている国は非常に少ない。本検討は罹患によって重症となり、死亡率が増える同種造血幹細胞移植後の患者において、本剤の有効性を明らかにしたものである。RS ウイルス感染は、病棟内での伝播も容易に生じうるため、治療および感染対策の両面において、今後の有用性に関する検討が進むことを期待したい。

米国の病院の洗濯室の表面から分離された vanA 陽性多剤耐性腸球菌属

vanA-positive multi-drug-resistant Enterococcus spp. isolated from surfaces of a US hospital laundry facility

K.E. Michael*, D. No, M.C. Roberts
*University of Washington, USA

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 218-223


背景
腸球菌属は、ヒトや動物の消化管に存在する常在菌である。腸球菌は重要な病原体でもあり、2007 年から 2010 年までの米国の院内感染の 14%は腸球菌によるものであった。

目的
バンコマイシン耐性腸球菌属の有無およびその季節性について、病院のリネン類を処理する洗濯室を調査すること。

方法
2015 年、洗濯室の汚れた場所と清潔な場所から、表面の試料を 4 回採取した。生化学的手法によって同定し、感受性検査を実施した。さらに複数部位塩基配列タイピング(MLST)法と、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いた獲得性のvanA・vanB 遺伝子と染色体性のvanC1 遺伝子の検出を行い、eBURST 解析を実施して、分子疫学的特徴を明らかにした。

結果
汚れた場所から採取された 120 株中 64 株(53%)、および清潔な場所から採取された 120 株中 10 株(8%)の計 74 株が、vanA 陽性の多剤耐性腸球菌であった。エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)は14 の ST 型に属した(ST16、17、18、117、186、280、324、412、584、664、665、736、750および1038)。一方E. faecalis の分離株 2 株は、共に ST109 であった。

結論
洗濯室の汚れた場所でのバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の分離率は、清潔な場所と比べて有意に高かった(53%対8%)。

本研究の重要性および影響
本研究は、VRE の有無について業務用の洗濯室を調査した最初の研究であり、こうした洗濯室は未知のリザーバである可能性がある。

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監訳者コメント
本研究では、汚染の多い場所ほど腸球菌が多く分離され、バンコマイシン耐性を示していた。洗濯室の VRE の汚染の持続、洗濯物の新たな汚染の発生、除去と衛生管理、作業員への伝播リスクなど、本研究に関連して問題となる課題は多い。今後の知見の蓄積が待たれる。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.