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カテーテル関連尿路感染症予防における外尿道口洗浄に用いる生体消毒薬の効果のシステマティックレビューとメタアナリシス

Systematic review and meta-analysis of the effectiveness of antiseptic agents for meatal cleaning in the prevention of catheter-associated urinary tract infections

O. Fasugba*, J. Koerner, B.G. Mitchell, A. Gardner
*Australian Catholic University, Australia

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 233-242


背景
カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)は、最も多くみられる医療関連感染症の一つである。カテーテル使用前および使用中の生体消毒薬による外尿道口部の洗浄は CAUTI のリスクを低下させる可能性がある。

目的
尿道カテーテル挿入前と使用中の生体消毒薬による洗浄の効果を調査した試験に関する文献のシステマティックレビューとメタアナリシスを行うこと。

方法
電子データベースを検索し、ランダム化対照試験を特定した。統合オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出し、DerSimonian-Laird ランダム効果モデルを用いて介入群および対照群全体を比較した。サブグループ解析を実施した。I2 統計量を用いて異質性を推定した。

結果
対象となりうる論文を合計で 2,665 報特定した。これらのうち 14 報が対象として適格であった。消毒薬使用群と消毒薬非使用群を比較した場合、CAUTI 発生率に差はなく(統合 OR 0.90、95% CI 0.73 ~ 1.10、P = 0.31)、または様々な薬剤を比較した場合(ポビドンヨード 対 日常的なケア、ポビドンヨード 対 石けんと水、クロルヘキシジン 対 水、ポビドンヨード 対 生理食塩液、ポビドンヨード 対 水、緑石けんと水 対 日常的なケア)、CAUTI 発生率に差はなかった(すべての比較について P > 0.05)。抗菌薬と日常的なケアとの比較では、統計学的有意性に近い結果が示された(P = 0.06)。異質性のエビデンスはなかった(I2 = 0%、P > 0.05)。サブグループ解析では、国、医療施設、バイアスのリスク、性別、使用頻度の点で、CAUTI 発生率に差は認められなかった。

結論
CAUTI 率に有意差は認められなかったが、方法論的問題が、本結果の一般化の可能性を妨げている。抗菌薬は、適切に実施された試験で有意性を示す可能性がある。今回の結果は、カテーテル管理での感染管理ガイドラインに情報として良好なエビデンスを提供する。

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監訳者コメント
消毒薬の使用という基準で比較しているが、消毒手順に関して正確な遵守が行われていたかどうかなど研究デザインにおける影響も考慮する必要がある。一方で低水準消毒薬は綿球を用いた場合、綿の蛋白質と結合し、速やかに薬液中濃度が低下することが知られておりこの点に関しても影響を考慮する必要がありそうだ。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の迅速診断検査法による全症例スクリーニング:クラスター無作為化クロスオーバー試験

Point-of-care universal screening for meticillin-resistant Staphylococcus aureus: a cluster-randomized cross-over trial

P.J. Wu*, D. Jeyaratnam, O. Tosas, B.S. Cooper, G.L. French
*Guy’s and St Thomas’ NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 245-252


背景
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)は医療施設で頻繁に流行し、ヒト-ヒト感染で伝播する可能性がある。無症候性の MRSA 保菌者は、潜在的かつ予期せぬ伝播の源であり、その一部は入院時スクリーニングによって特定できる可能性がある。

目的
入院時の MRSA の迅速診断検査によるスクリーニングは、時間のかかる微生物検査室での方法と比較して MRSA 感染率の低下に関連するかどうかを評価すること。

方法
ロンドンの急性期 3 次病院の 4 つの入院病棟でクラスター無作為化クロスオーバー試験を実施した。PCR 法による迅速診断検査法によるスクリーニングを従来の培養法によるスクリーニングと比較した。病棟への入院および退院時に患者をスクリーニングし、主要評価項目として入院病棟での MRSA 感染率を算出した。

結果
全体で、患者 10,017 例を対象とし、対照群は 4,978 例、迅速診断検査法によるスクリーニング群は 5,039 例であった。入院時の MRSA 保菌率は 1.7%であった。迅速診断検査法によるスクリーニングによる報告までの所要時間の中央値は 40.4 時間から 3.7 時間に短縮した(P < 0.001)。入院病棟での MRSA 感染は、対照群の 23 例(0.46%)、介入群の 24 例(0.48%)にみられ、感染率はそれぞれ 1,000 日あたり 5.39 および 4.60 であった。事前に規定した交絡因子で補正すると、MRSA 感染のトレンドでの変化の補正後発生率比(IRR)は 0.961(95%信頼区間 0.766 ~ 1.206)であった。MRSA 感染のステップ変化の補正後 IRR は、0.98(0.304 ~ 3.162)であった。

結論
迅速診断検査法によるスクリーニングは、培養法によるスクリーニングと比較して有意に早い結果が得られるが、入院病棟での MRSA 感染に対しては効果が認められない。感染予防と管理の遵守率が高く MRSA 保菌率が低い場合、迅速診断検査法によるスクリーニングは、従来の培養法によるスクリーニングと比較して入院後 1 日目から 4 日目の MRSA 感染率に及ぼす付加的な影響はない。

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監訳者コメント
手指衛生遵守率が高く、日常的に標準予防策が徹底している病院とそうでない病院では、同じトライアルを行っても差がでるかもしれない。施設間の感染対策の実施状況を考慮するにはこうした研究には多施設間共同の検討が必要かも知れない。

ベンガル湾クローン ST772-MRSA-V のアウトブレイク:保存されたクローンが引き起こす調査課題

Bengal Bay clone ST772-MRSA-V outbreak: conserved clone causes investigation challenges

A. Blomfeldt*, K.W. Larssen, A. Moghen, K. Haugum, T.W. Steen,
S.B. Jø
rgensen, H.V. Aamot
*Akershus University Hospital, Norway

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 253-258


背景
多剤耐性、Pantone-Valentine 型ロイコシジン(PVL)、皮膚および軟部組織感染症と関連するベンガル湾クローン ST772-MRSA-V が世界中で出現している。ノルウェーはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の保菌率が低い国であるが、ST772-MRSA-V の出現の増加はやはり病院アウトブレイクを引き起こす。このクローンの保存された特性は、アウトブレイク調査に課題を示した。

目的
保存された MRSA クローンを用いてアウトブレイクを調査する場合に、黄色ブドウ球菌プロテイン A(S. aureus protein A;spa)タイピング、multi-locus variable number tandem repeat fingerprinting/analysis(MLVF/MLVA 法)、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)法の有用性を評価すること。

方法
2004 年から 2014 年に収集された一連の MRSA 分離株 25 株は、病院アウトブレイク分離株 6 株および散発性分離株 19 株からなり、spa タイピング、PCR 法による PVL をコードする遺伝子検出、MLVF/MLVA 法、PFGE 法を用いて解析した。

結果
分離株はすべて ST772-MRSA-V-t657 であり、エリスロマイシン、ゲンタマイシンおよびノルフロキサシンに耐性を示し、88%が PVL 陽性であった。PFGE 法では分離株間の識別ができなかった(類似度85%以上)。MLVF 法では 5 型に分類され(Simpson の多様度指数 = 0.56)、MLVA 法では6 型に分類され(Simpson の多様度指数 = 0.66)、両法により病院アウトブレイクは 2 件の明らかなアウトブレイクに分けられた。

結論
MLVF/MLVA 法では、10年間で得られた疫学的に関連のない症例および同一の遺伝子型のすべてを識別することはできなかった。MLVA 法は、高い識別能と明確なプロファイルを示す能力により、最も適していると考えられた。しかし、ベンガル湾クローンは分離株間の多様性が低いため、アウトブレイクの正確な区別にはさらに高解像度の方法が必要とされる。

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監訳者コメント
今日、MRSA のタイピング法は相当数報告されている。究極のタイピングは次世代シークエンサーで全ゲノム配列情報を決定しそれを分析することである(2 日で結果が出せる)。一部分の菌株解析をおこなった結果について限られた検討法についてのレビューを行うことはもはやあまり価値を見いだせない。

南部ポーランドにおける非教育地域病院 12 施設の入院患者の異なる種類の感染から分離されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)株の分子的解析

Molecular analysis of meticillin-resistant Staphylococcus aureus strains isolated from different types of infections from patients hospitalized in 12 regional, non-teaching hospitals in southern Poland

A. Chmielarczyk*, M. Pomorska-Wesołowska, A. Szczypta, D. Romaniszyn, M. Pobiega, J. Wójkowska-Mach
*Jagiellonian University Medical College, Poland

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 259-267


背景
これまでに蓄積されたデータから、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)による感染は、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌による感染よりも予後が不良であることが示唆される。

目的
南部ポーランドの 12 の病院における黄色ブドウ球菌感染の疫学的プロファイルおよび MRSA 臨床株の遺伝的多様性を評価すること。

方法
成人患者に生じた血流感染、肺炎、および皮膚・軟部組織感染症からのサンプルを調べた。黄色ブドウ球菌分離株について、MRSA 表現型と、マクロライド系、リンコサミド系、およびストレプトグラミン B 抗生物質(macrolide-lincosamide-streptogramin B;MLSB)表現型を解析した。ブドウ球菌カセット染色体mec タイピング(Staphylococcal cassette chromosome mec;SCCmec)およびブドウ球菌プロテイン A(S. aureus protein A;spa)タイピングを実施した。遺伝的相同性をパルスフィールド・ゲル電気泳動により分析した。

結果
この研究には 555 例の患者が含められた。MRSA 表現型は、分離株の 15.1%で検出された。MRSA 感染の有病率は、80 歳を超える患者で高かった。MLSB 表現型は、分離株の 18.2%で検出された。SmaI 切断パターンの解析では優勢クローンは認められなかった。spa タイピングでは 25 の異なる spa 型が認められ、spa 型 t003 が最も多かった(分離株の 49%)。MRSA 株では、SCCmecII 型および SCCmecIV 型が優勢であった(それぞれ 49%、27.4%)。

結論
MRSA 分離株の特徴には相当の不均一性がみられた。今回の結果は、分離株間の直接的な疫学的関連性について、単一のタイピング法に基づいて判断を下す場合には、注意が必要であることを示している。本研究における感染症例は、病院環境および水平伝播に関連したものではなかったことから、入院時スクリーニングへの重点的な取り組みや、適切な感染制御が、MRSA 感染のリスクの低減に役立つかもしれない。

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監訳者コメント
地域の複数の医療機関の臨床検体を解析することは、感染伝播のリスクを評価するために役立つと思われる。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌保菌者におけるスティグマの徴候と低い精神的健康度

Signs of stigma and poor mental health among carriers of MRSA

B. Rump*, M. De Boer, R. Reis, M. Wassenberg, J. Van Steenbergen
*Regional Health Service Utrecht Region, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 268-274


背景
多くの国々が、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の伝播の予防のためのガイドラインを実践している。スティグマの重大な状況要因は、MRSA と関連して認められ得る。この 10 年間で、これらの措置がスティグマ化の作用をもたらす可能性について、懸念が生じている。

目的
MRSA「掃討」政策を実践する国において、MRSA に関連したスティグマの発生を特定し、定量化すること、およびスティグマと精神的健康度の関連を探索すること。

方法
2014 年に、オランダ人 MRSA 保菌者(MRSA を保菌するが感染の徴候はない者)57 例において、質問票による研究を実施した。スティグマは、Berger HIV Stigma Scale の修正版により測定した。精神的健康度は、5 項目 RAND Mental Health Inquiry により測定した。

結果
32 例(56%)のMRSA 保菌者がスティグマを報告した。このうち 8 例(14%)が「明らかなスティグマ(clear stigma)」(Berger スコア > 110)を、24 例(42%)が「スティグマの疑い(suggestive for stigma)」(Berger スコア 76 ~ 110)を報告した。教育レベル、女性、および集中的な MRSA 根絶療法は、スティグマのスコアが高いことと関連した。低い精神的健康度(RAND スコア < 60)は、MRSA 保菌者の 33%が報告した。スティグマと精神的健康度のスコアは逆相関した。スティグマは医療現場で経験される頻度が最も高く、宗教団体やスポーツ施設ではほとんど経験されなかった。

結論
相当な割合の MRSA 保菌者が MRSA によるスティグマを報告し、スティグマは精神的健康度が低いことと関連した。病院スタッフによるケアの提供方法、および病院内での医療の組織化の方法の両方において、MRSA に関連するスティグマを予期する必要がある。

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監訳者コメント
本論文で述べられるスティグマとは(MRSA を保菌していることが恥ずかしいと感じたりして)MRSA 感染に関する間違った認識や根拠に乏しい認識によっておきる行動変容を意味する。MRSA に対する徹底した search and destroy を実施することで極めて低い MRSA 感染の頻度を保持しているオランダで、こういった研究が行われるのは興味深い。

ウイルス性インフルエンザ様疾患:2015年から2016年のインフルエンザシーズン中の入院患者における動的相互関係

Viral influenza-like illnesses: dynamic interrelationships during the 2015-2016 influenza season in hospitalized patients

B.A. Cunha*
*Winthrop-University Hospital, USA

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 275-279


小児および成人入院患者では、インフルエンザ様疾患を引き起こすウイルスとインフルエンザとの時間的関係は十分に報告されていない。2015 年から 2016 年の当施設のインフルエンザシーズン中に、小児および成人入院患者 768 例を対象として、インフルエンザ様疾患ウイルス(ヒトメタニューモウイルス、RS ウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス 3 および 4、ライノウイルス/エンテロウイルス、コロナウイルス)およびインフルエンザ A の動的相互関係の特性を評価した。

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監訳者コメント
入院患者におけるインフルエンザ様疾患ウイルスとインフルエンザウイルスの発生時期を調べた論文である。小児と成人ではその時期は必ずしも同様ではないことがグラフで示されており、興味深かった。

英国の教育病院における中東呼吸器症候群疑い患者の管理のリソースへの影響

Resource impact of managing suspected Middle East respiratory syndrome patients in a UK teaching hospital

J. Veater*, N. Wong, I. Stephenson, H. Kirk-Granger, L.F. Baxter, R. Cannon, S. Wilson, S. Atabani, A. Sahota*, D. Bel*, M. Wiselka, J.W. Tang
*University Hospitals Leicester NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 280-285


メッカ巡礼からの帰国者のケースシリーズ研究および費用分析レビューでも示されたように、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染の可能性を有する英国への帰国者の入院患者の管理には、特に臨床像がインフルエンザと重複するという点で、臨床的な課題が存在する。これらの患者は、急性熱性呼吸器疾患により入院し、当初は MERS-CoV 感染の疑いとして管理されたが、最終的にインフルエンザと診断された。追加的な費用は少額であったが、感染予防策の強化により、隔離室およびスタッフの時間に重大な負担が生じた。メッカ巡礼のような予測可能なイベントを考慮することは、リソース管理のために重要である。本研究では、院内 MERS-CoV 診断検査が可能であれば、より早期の診断および退院が容易になったであろう。

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監訳者コメント
MERS-CoV 感染やエボラウイルス感染が疑われる場合に、例えばインフルエンザやマラリアなどが診断された場合でも、「では MERS-CoV やエボラウイルス感染が重複感染していないと言えるのか」という問題が残る。確かに院内で MERS-CoV やエボラウイルス感染に関する検査ができれば、より早期に不要な感染対策は中止できるとも考えられるが、ではどのタイミングで、何回陰性なら本当に感染対策を中止できるのか、どのくらい症例数があれば費用対効果が見合うのか、どのような病原体の検査ができればいいのか、など実際に運用するには色々と検討が必要ではないだろうか。

抗菌剤溶出メッシュ使用時および不使用時の心血管用植込み型電子デバイス感染症の後向き比較分析

Retrospective comparative analysis of cardiovascular implantable electronic device infections with and without the use of antibacterial envelopes

A. Hassoun*, E.D. Thottacherry, M. Raja, M. Scully, A. Azarbal
*Alabama Infectious Diseases Center, USA

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 286-291


背景
心血管用植込み型電子デバイス感染症は、罹病および死亡と関連する。周術期の予防的な抗菌薬全身静脈内投与により、心血管用植込み型電子デバイス感染症の発生率は低下する。心血管用植込み型電子デバイスと共に植込むポリマーの袋である AIGISRx は、ミノサイクリンとリファンピンを溶出するもので、感染抑制のために導入されている。

方法
心血管用植込み型電子デバイスの植込みを受けた患者 184 例の後向きのレビューを行った。92 例は AIGISRx を使用した植込みを受け(AIGISRx 群)、92 例では AIGISRx は使用されなかった(対照群)。人口統計学的データ、および心血管用植込み型電子デバイス感染症のリスク因子(すなわち、うっ血性心不全、腎不全、慢性腎臓病、経口抗凝固剤の使用、ステロイド連用、リードの交換または修正の必要、一時的ペーシング、早期の再介入、およびリードの留置本数が 3 本以上)に関するデータを収集した。植込みの成功率、広範囲の感染の発生率、および死亡率を、AIGISRx 群と対照群で比較した。

結果
AIGISRx 群は対照群よりも、入院日数が長く(6.8 ± 10.7日間対 3.1 ± 5.2日間、P = 0.001)、コルチコステロイド連用者が多く、交換または修正を受けている率が高く(51.1%対 8.7%、P = 0.001)、心臓内リードが 3 本以上のデバイスを使用している割合が高かった(42.4%対 29.3%、P = 0.03)。両群とも、患者の 97%で植込みが成功した。広範囲の感染は AIGISRx 群の 5.4%、対照群の 1.1%に認められた(P = 0.048)。デバイスの抜去は AIGISRx 群の 3.3%、対照群の 1.1%で実施された。(P = 0.16)。AIGISRx 群で 2 例が死亡した。培養検査ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌、およびエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)が検出された。

結論
AIGISRx 群は対照群と比較して、広範囲の感染の発生率が高かったが、リスク因子も多く有していた。デバイス抜去率および心血管用植込み型電子デバイス関連死亡率は、対照群よりも AIGISRx 群の方が高かった。

監訳者注:広範囲の感染とは、深部組織感染、人工物感染および菌血症をさす。

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監訳者コメント
抗菌薬溶出人工デバイスの有効性に関する検討であるが、後向き検討のため、数多くのリミテーションがある。基本的に抗菌薬溶出人工デバイスは、感染リスクの高い患者に使用される傾向があったため、使用群と非使用群の間には様々な患者背景の違いがある。研究対象数が多ければこういった患者背景の違いを調整して統計学的処理が行われることもあるが本研究ではそこまでは行われていない。

緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)血流感染後の長期死亡率

Long-term mortality following Pseudomonas aeruginosa bloodstream infection

K.L. McCarthy*, D.L. Paterson
*University of Queensland, Australia

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 292-299


背景
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)血流感染症(BSI)は、かなり高い短期死亡率と関連する。この BSI に関連する長期死亡率に関するデータはほとんどない。

目的
感染後 1 年以内の死亡率および死亡と関連する有意な因子について記述すること。

方法
2008 年 1 月から 2011 年 1 月の間において、3 次病院 7 施設で緑膿菌培養陽性結果を後向きに特定した。詳細な疫学的、臨床的および転帰データを入手した。

結果
388 件の BSI エピソードを解析対象とした。感染症の大部分は院内獲得によるものであった。患者の併存症で最も高頻度でみられたのは、血液学的または腫瘍学的併存疾患であった。このコホートの 78%が、先行する 7 日間に医療デバイスを留置されていた。このコホートの 61%が適切な経験的治療を受けていた。全死因死亡率は 48 時間後で 4%、1 か月後で 19%、および 1 年後で 38%であった。48 時間後の死亡は、非院内獲得感染症、呼吸器併存疾患、最近のコルチコステロイド療法、および Pitt 菌血症スコア > 2 と関連していた。併存疾患と死亡との間には、感染後 7 日目以降に有意な関連が認められた。長期死亡(1 年後の死亡と定義)は、女性、血液学的または腫瘍学的併存疾患、Charlson 併存疾患指数 > 2、および最近のコルチコステロイド療法と関連していた。

結論
この毒性が高い病原体による感染症の、長期的な死亡原因における正確な役割について、さらなる研究が必要である。緑膿菌 BSI が患者死亡の直接的原因かどうかは明らかでない。

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監訳者コメント
菌血症の予後はしばしば発症後 14 日以内、あるいは 28 日以内の死亡率で評価されることが多く、1 年といった長期間で評価することは少ない。本研究は緑膿菌 BSI 患者の実に38%が 1 年後に死亡しているという結果であった。ただし 1 年後の死亡と関連している因子としては腫瘍性疾患の有無や基礎疾患の有無などそれ自体が中長期的な予後規定因子と考えられる。筆者が結論しているように、死亡率が高いことはよく分かったが、緑膿菌 BSI がその直接的な原因かどうかは良く分からない。

Multi-spacer typing は壊死性腸炎の症例シリーズにおいて便検体から分離されたクロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)株のクローン系列を識別するための効果的な方法である★★

Multi-spacer typing as an effective method to distinguish the clonal lineage of Clostridium butyricum strains isolated from stool samples during a series of necrotizing enterocolitis cases

S. Benamar*, N. Cassir, V. Merhej, P. Jardot, C. Robert, D. Raoult, B. La Scola
*Aix-Marseille Université, France

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 300-305


背景
壊死性腸炎は重篤性の高い消化管疾患で、合併症率および死亡率が高く、アウトブレイク時には主として早産児が罹患する。以前の研究で、筆者らは 4 つの新生児集中治療室で発生した壊死性腸炎症例シリーズの便検体から分離された 15 のクロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)株を同定した。これらの分離株のクローン系列を in-silico 複数部位塩基配列タイピング(MLST)により検討した。

目的
より多くのC. butyricumゲノムのシークエンシング、および他の遺伝子タイピング法を用いて、以前の所見を確認すること。

方法
全ゲノムシークエンシングを用いて、以前に分離された 15 のC. butyricum株の特徴を明らかにし、C. butyricumの他の 17 の片利共生分離株および環境分離株と比較した。さらに、multi-spacer sequence typing(MST)を用いてクラスタリングの分析を行った。

結果
C. butyricumのコアゲノムは 1,251 の遺伝子から成り、そのパンゲノムは 12,628 の遺伝子から成っており、株の間における多様性が大きかった。壊死性腸炎の症例シリーズの分離株においてクローン系列の識別ができ、地理的クラスタリングを伴って 3 つのクレードを形成していた。全ゲノムシークエンシングおよび MST の両法を用いて得られた結果は一致していた。

結論
multi-spacer sequence typing は、C. butyricumに関連する壊死性腸炎アウトブレイクを調査するための、迅速で安価かつ効果的な遺伝子タイピング法である。

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監訳者コメント
クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)は、グラム陽性の偏性嫌気性菌で、腸管の常在菌であり、ミヤ BM 錠Ⓡは整腸剤として医療現場で使用されている。一方で、乳児のボツリヌス中毒や未熟新生児の壊死性腸炎の原因菌として高い死亡率が報告されている。MLST は、複数のハウスキーピング遺伝子の配列を比較して、迅速性と正確性のために細菌のタイピングに専ら使用されているが、解析する遺伝子の長さが短く、クラスターを鑑別するには限界があることがわかっている。本論文では全遺伝子配列と MST を実施し、MST が迅速かつ安価に MLST では鑑別できないクローンを全遺伝配列解析と同等に分離でき、NICU 内での交差感染を検出できたことを述べている。

3 つの医療環境における針刺し切創の原因:ドイツにおいて EU 指令 2010/32/EU 施行後の 6 か月間に記録された事例報告の分析★★

Causes of needlestick injuries in three healthcare settings: analysis of accident notifications registered six months after the implementation of EU Directive 2010/32/EU in Germany

M. Dulon*, B. Lisiak, D. Wendeler, A. Nienhaus
*Statutory Accident Insurance and Prevention in the Health and Welfare Services, Germany

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 306-311


背景
針刺し切創は鋭利物による傷害の原因として最も多いものであり、医療従事者に重大なリスクをもたらす。2014 年、鋭利物による障害の予防を促進するためにドイツで 医療福祉施設における病原体への技術的規則Technical rule for biological agents in healthcare and welfare facilities(TRBA 250)が改訂された。

目的
病院、診療所、および入院および外来の医療従事者における針刺し切創の疫学を調査すること、安全装置付きデバイスが用いられていた場合の事例の原因に関する情報を収集すること、ならびにこれらの結果を TRBA 250 の主要原則と比較すること。

方法
2014 年 11 月の 4 週間以内に報告された針刺し切創に関する医療従事者の補償請求に基づいて調査を行った。針刺し切創に関する詳細な情報を、電話調査により収集した。

結果
計 533 名の医療従事者が参加した。医療環境にかかわらず、針刺し切創のほとんどに皮下注射針が関与していた(全針刺し切創の 39%)。入院および外来ケアでは、針刺し切創の 48%にインスリンペンが関与していた。鋭利デバイスの廃棄が切創の 38%を占めていた。針刺し切創の 20%で安全装置付きデバイスが使用されていた。安全装置付きデバイスが使用されていた場合の事例の最も重要な原因は、安全装置を起動させていなかったことであった。

結論
TRBA 250 による拘束力の強い推奨があるにもかかわらず、安全装置付きデバイスの使用における医療従事者の経験を高めるためのさらなる取り組みが必要である。すべての専門家集団に対して、鋭利物の廃棄に伴うリスクに対する意識を高めるよう促すべきである。入院および外来ケア環境において、インスリンペンの廃棄に関する安全な取扱い実践が必要である。

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監訳者コメント
針刺し切創に関するドイツの報告であるが、ドイツでは規則として設定された。日本でも似たような状況があると思われる。すなわち、鋭利物廃棄容器の使用現場への携行と使用後の速やかな廃棄、安全器材を確実に動作させていない、インスリンの針による針刺しは共通である。インスリンの針に対しても安全器材が市販されており、コストがかかるがその効果は大きいと思われる。針刺し切創の防止の為には、教育と訓練は勿論必要であるが、安全への法的な規制も必要である。日本では厚労省通達(医政指発第 0201004 号平成 17 年 2 月 1 日)に①リキャップの原則禁止、②安全機材の導入の検討、③廃棄容器の適切な配置等が記載されており、再度見直しをし、通達の遵守が必要である。

共用アクセスのコンピュータ化ツールに基づく処方後抗菌薬レビューのための簡便な革新的システムの実施

Implementation of a simple innovative system for postprescription antibiotic review based on computerized tools with shared access

F. Bouchand*, A. Dinh, A.L. Roux, B. Davido, H. Michelon, M. Lepainteur, B. Legendre, F. El Sayed, I. Pierre, J. Salomon, C. Lawrence, C. Perronne, M. Villart, A-C. Crémieux
*Hôpital Raymond-Poincaré, France

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 312-317


背景
医療機関において抗菌薬の使用を制御すると、その消費と耐性細菌の出現が抑制される。

目的
大学病院で 3 年間に実施した革新的な「抗菌薬適正使用支援」戦略の効果を評価すること。

方法
抗菌薬の集学的チーム(薬剤師、微生物学者、感染症専門家)が処方後レビューを実施した。医師によるコンピューター化されたオーダー入力において、対象抗菌薬(広域スペクトルβラクタム、グリコペプチド、リポペプチド、フルオロキノロン、カルバペネムを含む)の特異的コーディングにより、新たな処方をすべて記録できるようになった。抗菌薬集学的チームの共用アクセスのスプレッドシートに、データ(患者、抗菌薬、処方開始日など)を登録し、このシートに、微生物について得られた結果に基づいて、薬剤選択に関する微生物学者の意見を入力した。微生物学者と薬剤師が処方される抗菌薬の処方を承認しなかった場合、同日中にアラートが発信され、感染症専門家に送信された。このアラートは、感染症専門家による治療の再評価につながった。

結果
2012 年から 2014 年に、対象抗菌薬の処方箋 2,106 件がレビューされた。このうち 389 件(18.5%)はアラートが発信され、293 件(13.9%)は感染症専門家により再評価された。推奨(大半は減量または中止)は 136 件(46.4%)で必要であり、処方者の承認率は 97%であった。推定される介入率は、抗菌薬集学的チームの各メンバーについて 1 日当たり 30 分未満であった。このシステムにより、対象抗菌薬の正しい使用が処方の 91.8%で可能になったが、対象抗菌薬の消費に大きな影響はなかった。

結論
このコンピューター化、共用アクセスの抗菌薬適正使用支援戦略は、時間の節約になり、広域スペクトル抗菌薬の誤用の抑制に有効であると思われる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
過剰で不適切な抗菌薬使用は、抗菌薬耐性菌の出現の主たる原因である。多剤耐性菌による 15 万の感染症と 12,500 例の死亡が毎年フランスで発生している。薬剤師、臨床微生物専門家と感染症医師からなる抗菌薬支援チームを編成するとともに、電子カルテ上での情報共有をおこなうことでスムーズに不適切使用を抽出し、感染症医師による介入による処方是正を実施することができた。抗菌薬適正使用を効果的かつ効率的に実施するためには「情報システム技術」の活用は必須であり、日本における電子カルテシステム内に「抗菌薬適正使用プログラム」を標準装備してもらいたい。

多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)international clone II に対するクロルヘキシジンの効果低下

Reduction in chlorhexidine efficacy against multi-drug- resistant Acinetobacter baumannii international clone II

M. Hayashi*, K. Kawamura, M. Matsui, M. Suzuki, S. Suzuki, K. Shibayama, Y. Arakawa
*Nagoya University Graduate School of Medicine, Japan

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 318-323


背景
アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)international clone II(IC II)型によって院内感染が生じると、臨床的な転帰が大きく悪化する。

目的
IC II および非 IC II の臨床分離株においてクロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)と塩化ベンゼトニウムの消毒剤の殺菌効果の差を評価すること。

方法
A. baumannii 臨床分離株のうちIC II 型 137 株および非 IC II 型 99 株と、A. baumannii 以外のAcinetobacter属 69 株について CHG および塩化ベンゼトニウムの最小発育阻止濃度(MIC)を測定し、MIC 値により、さらに消毒剤感受性低下群と消毒剤感受性群に分類した。各群の代表的な分離株について時間-殺菌曲線と最小殺菌濃度(MBC)を評価した。

結果
IC II 型分離株に対する CHG および塩化ベンゼトニウムの MIC90 はそれぞれ 100 および 175 mg/L であったが、非 IC II 型分離株および baumannii 以外のAcinetobacter属に対する MIC90 は 100 mg/L 未満であった。それにもかかわらず、時間-殺菌曲線において、CHG および塩化ベンゼトニウムを実際的な使用濃度と同等の 1,000 mg/L で使用したとき、 30 秒以内に IC II 型および非 IC II 型の生菌細胞数が 5 log10 減少することが認められた。このCHG を1,000 mg/L で 30 秒間使用した時の MBC は、IC II 型、非 IC II 型の両方で、3%ウシ血清アルブミン(BSA)の添加による影響を受けなかった。一方、塩化ベンゼトニウムの 30 秒での MBC は、BSA 非存在下で 100 mg/L であったが、BSA の添加により 500 mg/L まで増加した。消毒剤感受性低下群分離株と消毒剤感受性群分離株の間にBSA の有無による大きな違いは認められなかった。

結論
CHG および塩化ベンゼトニウムは、IC II 型を含む Acinetobacter 属菌に対して、1,000 mg/L の濃度で少なくとも 30 秒間の曝露により効果を示した。しかしながらこの濃度は、臨床環境と医療環境において、十分な効果を確保するために必要な濃度として、慎重に考えられるべきである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
Acinetobacter baumanniiの IC II 型に対するクロルヘキシジングルコン酸塩および塩化ベンゼトニウムの効果を評価した報告であるが、特に①蛋白質の濃度による効果の低下、②局所濃度を保つこと、および③効果発現には少なくとも 30 秒間の暴露が必要なことが、実際の感染対策上重要といえよう。

手術室の空中細菌数への影響に関する 2 種類の単回使用手術衣の比較

Comparison of two single-use scrub suits in terms of effect on air-borne bacteria in the operating room

A. Tammelin*, A-M. Blomfeldt
*Karolinska Institutet, Sweden

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 324-326


手術室において空中細菌数を少なくすることは、全スタッフが低透過性素材による衣服(すなわちクリーンエアスーツ)を着用すれば達成可能である。本研究は、2 種類のポリプロピレン製単回使用手術衣において防御効果に差があるかどうかを、整形外科でルーチンに実施されている手術において両者を試着して検討した。両術衣間で空気中の菌数(コロニー形成単位数/m3)に有意差は認められなかった。したがって術衣は、スタッフにとってより快適なタイプを選択可能であるといえる。

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監訳者コメント
検討が行われたスウェーデンでは、手術室の構造を考慮し、整形外科手術の際の手術室の空中細菌数を 10 個(=コロニー形成単位数)/m3未満とするよう求められている。今回の単回手術衣着用において、空中細菌数は平均でそれぞれ 2.5 ~ 15.5 個/m3、1.3 ~ 7.5 個/m3であり、両者の間に差はみられなかった。ただし低透過性素材であるため、内部が蒸れてしまい、不快になるのが課題であった。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.