JHIサマリー日本語版トップ

レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

集中治療室における手指衛生:時間の問題?★★

Hand hygiene in intensive care units: a matter of time?

J.T. Stahmeyer*, B. Lutze, T. von Lengerke, I.F. Chaberny, C. Krauth
*Hannover Medical School, Germany

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 338-343


背景
医療関連感染症は患者の安全に対して高頻度に発生する脅威であり、甚大な疾患負担の原因となっている。最も重要な単一の予防策は手指衛生である。手指衛生の推奨の遵守に対する障害には、構造的側面、知識の欠落、および組織的問題、特に日常のルーチン業務における時間の不足などがあげられる。

目的
集中治療室(ICU)における手指衛生の必要なタイミングの件数、遵守率、および手指衛生に費やされる時間を明らかにすること。

方法
2 つの ICU で観察研究を実施し、患者あたりの手指衛生の必要なタイミングの平均件数を明らかにした。世界保健機関の「手指衛生の 5 つのタイミング」の概念に基づいて記録を行った。手指衛生の必要なタイミングの記録を 12 の病室において 12 時間にわたり収集した。

結果
12 時間の観察時間中に、平均で患者あたり 134 件(内科 ICU)および 182 件(外科 ICU)の手指衛生の必要なタイミングが観察された。全体の手指衛生遵守率は 42.6%であった。夜間勤務中における手指衛生の必要なタイミングの追加を考慮すると、患者日あたりの推定手指衛生の必要なタイミングは 218 件(内科 ICU)および 271 件(外科 ICU)であった。手指消毒の平均時間は 7.6 秒であった。手指衛生に費やされた時間は、昼間勤務中は全医療従事者において各患者あたり 8.3 分(内科 ICU)および 11.1 分(外科 ICU)であった(看護師:内科 ICU では 6.9 分、外科 ICU では 8.3 分)。看護師がガイドラインを完全に遵守するなら、昼間勤務中に各患者あたり 58.2 分(内科 ICU)および 69.8 分(外科 ICU)を手指衛生に費やすことになる。

結論
ガイドラインを遵守することは時間がかかる。スタッフ配置において手指衛生のための十分な時間を考慮すべきである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
手指衛生を徹底した安心安全な医療を提供するためには、いかにマンパワーが必要かを思い知らされる論文である。現実にはこれに手荒れの問題も加わるため、事はそう簡単ではない。

RFID ベースのリアルタイム連続的自動モニタリングシステムを用いた手指衛生遵守および関連因子の評価

Evaluation of hand hygiene compliance and associated factors with a radio-frequency-identification-based real-time continuous automated monitoring system

J-C. Dufour*, P. Reynier, S. Boudjema, A. Soto Aladro, R. Giorgi, P. Brouqui
*Aix-Marseille Université, France

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 344-351


背景
手指衛生は医療関連感染症を予防するための主要な方策である。遵守不良を理解する上で 1 つの決定的に重要な点は、手指衛生を系統的にモニタリングするために用いる意味のあるマーカーが存在しないことである。

方法
本研究では、17 の個室病室を有する感染症病棟において、RFID ベースのリアルタイム連続的自動モニタリングシステムを用いて手指衛生遵守と関連因子の分析を行った。医療従事者を対象に、171 日間にわたりルーチンケアの実施中に追跡を行った。マルチレベル多変量ロジスティックモデルを用いてデータの解析を行った。主要転帰評価項目は、病室(区域外使用)への入室前および患者ケア区域に入る前の手指消毒とし、患者ケア区域は患者ベッド周囲の区域(区域内/ベッドサイド使用)と定義した。解析対象とした変数は、医療従事者の特徴および行動、患者、病室のレイアウト、医療従事者の行動経過の連鎖と持続時間などとした。

結果
患者ケア区域に入る際の最初の手指衛生機会を伴う行動経過計 4,629 件を選択し、このうちそれぞれ 763 件(16.5%)、285 件(6.1%)および 3,581 件(77.4%)が区域外使用、区域内/ベッドサイド使用、および不使用と関連した。手指衛生はケア提供者に依存している。医療従事者の行動経過の持続時間が短いほど、ベッドサイドの手指衛生が不良であった。1 ~ 2 名の別の医療従事者が病室内にいる場合は、ベッドサイドの手指衛生が改善した。

解釈
連続的モニタリングシステムを用いた分析によると、ベッドサイドにおける手指衛生の遵守は医療従事者の職種および個人的行動、医療従事者の人数、病室内で過ごす時間および(おそらく)ディスペンサーの設置場所に依存していた。食事トレーの配布は、手指消毒が行われないケースの潜在的な因子である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
手指衛生がし易い医療環境とそうでない医療環境、結果はおのずとしてし易い環境を医療者に提供することが必要であることを科学的に明確にした論文である。

音楽が手術時の手指消毒に及ぼす影響:ビデオに基づく介入研究

Effect of music on surgical hand disinfection: a video-based intervention study

N. Gautschi*, J. Marschall, D. Candinas, V.M. Banz
*University Hospital Bern and Bern University, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 352-354


手術時の手指消毒は、様々な因子の影響を受ける可能性がある。本研究の目的は、手術時の手指消毒の実施中に音楽を聴くことの影響を評価することであった。合計で、236 件の手術時の手指消毒手技をビデオに録画した。手術時の手指消毒の実施時間は、介入群と対照群の両方で 2 分を超えており、バックグラウンドミュージックにより手洗いに費やされる時間の増加は達成できなかった。しかし、音楽を聴くことにより、極めて短い手洗い時間(90 秒未満)の割合が 17%から 9%に低下した(P = 0.07)。平均の手洗い時間を有意に増加させた因子は、女性、スタッフのランクが低いこと、グループでの手洗い、およびストップウォッチの使用の 4 つであった。観察された改善は有意性には達しなかったが、バックグラウンドミュージックは極めて短い時間の手洗いを行う医療従事者の 10%には有用となる可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
音楽を流すことで、幾分手指衛生行動の時間は適正な方向に向くことが分かった。しかし、音楽だけでは適切な手指衛生の完全な遵守は難しいが、動画の場合はどうなのだろうか?

正しい基礎を据える:手指衛生の概念を医学生に教えるために用いられるアプローチの改善

Setting the right foundations: improving the approach used to teach concepts of hand hygiene to medical students

R. Kaur*, H. Razee, H. Seale
*University of New South Wales, Australia

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 355-358


医学生の手指衛生に対する知識および態度に対して新しい手指衛生教育モジュールが及ぼす影響を評価するために、介入前後研究を実施した。この教育モジュールにより、手指衛生の適応および持続時間(T1 = 7.9、T2 = 9.2、T3 = 9.1、P = 0.001)、手指衛生に関する教材の使用(T1 = 1.3、T2 = 3.8、T3 = 4.3、P = 0.004)、および「手指衛生の 5 つのタイミング」(T1 = 3.1、T2 = 6.7、T3 = 5.9、P = 0.012)に関する知識が有意に改善した。また、手指衛生に対する学生の態度も改善した(T1 = 48.5、T2 = 56.2、T3 = 54.1、P = 0.04)。医学生における手指衛生の実際の遵守に対してこの介入が及ぼす影響を評価するために、さらなる研究が必要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
医学生に手指衛生についての教育を行い、その前後での意識や行動の変化を調査した論文である。教育直後に意識が上がるのは当然の部分もあるが、半年後の調査で、感染対策への意識や自分たちがモデルになっていくという姿勢が向上していることがわかった。医師に限らず、医療系の学生へのアーリーエクスポージャーの重要性が再確認できた。

イングランドにおける大腸菌(Escherichia coli)菌血症の疫学:強化センチネルサーベイランスプログラムの結果

Epidemiology of Escherichia coli bacteraemia in England: results of an enhanced sentinel surveillance programme

J. Abernethy*, R. Guy, E.A. Sheridan, S. Hopkins, M. Kiernan, M.H. Wilcox, A.P. Johnson, R. Hope, on behalf of the E. coli bacteraemia sentinel surveillance group
*Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 365-375


背景
大腸菌(Escherichia coli)は、毎年イングランドにおける菌血症症例の原因の3分の1を超えており、これらの感染症の発生率は上昇しつつある。

目的
大腸菌菌血症に関連する基礎にあるリスク因子を明らかにすること。

方法
国民保健サービス(NHS)の 35 病院を対象とした 3 か月間の強化センチネルサーベイランス研究を 2012 年から 2013 年の冬に実施して、英国の全国サーベイランスプログラムによりすでに収集されていたデータを補強するため、感染症の基礎にある感染源に関するリスク因子の情報およびさらなる詳細情報を収集した。血液および尿から分離した大腸菌に対する抗菌薬感受性試験の結果も収集した。

結果
大腸菌菌血症の症例計 1,731 例を対象とした。感染源として最も報告頻度が高かったのは尿生殖路(症例の 51.2%)であり、尿路感染症に対する治療の既往がこの感染源と独立して関連した最も影響の大きな因子であった。全患者の半数には菌血症の前月に医療曝露があり、抗菌薬療法および尿道カテーテル留置がこれらの患者のそれぞれ 3 分の 1 および 5 分の 1 で報告された。過去の医療曝露は、血液培養分離株において抗菌薬非感受性の割合がより高いことと関連した(P = 0.001)。

結論
リスク因子の分析から、市中および病院に関連する介入、特に尿道カテーテルのより良い使用、および尿路感染症に対する抗菌薬管理の改善により利益が得られる可能性が示唆される。後者の戦略の一環として、抗菌薬耐性プロファイルを綿密にモニタリングして、不適切な経験的治療を低減するために最新の治療ガイドラインの遵守を確実にする必要がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
大腸菌による血流感染のリスク因子について検討した論文である。データ解析の結果、尿路感染に引き続いてしばしば発生していたことが明らかになった。

菌血症のコホートにおいて尿道留置カテーテルの存在は重症敗血症を予測するか?

Does the presence of a urinary catheter predict severe sepsis in a bacteraemic cohort?

M. Melzer*, C. Welch
*Royal London Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 376-382


背景
敗血症は死亡の主要な原因の 1 つであり、英国では毎年 37,000 例が死亡すると推定される。本研究の目的は、菌血症のコホートで、重症敗血症を予測しうる宿主要因を明らかにすることであった。

方法
2012 年 12月から 2013 年 11 月までの間に、ロンドンの教育病院で、連続した菌血症患者の人口統計学的、臨床的、および微生物学的データを収集した。これらのデータは、重症敗血症患者と非重症敗血症患者の分類に使用した。多変量ロジスティック回帰を用いて、宿主要因と重症敗血症の関連を検討した。

結果
患者 500 例で 594 件の菌血症エピソードが発生した。これらの大多数は、50 歳を超える患者(594 件中 382 件、64.3%)および男性(594 件中 346 件、58.2%)で生じた。最も多く分離されたのは、大腸菌(Escherichia coli)(594 件中 207 件、34.8%)およびメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(594 件中 57 件、9.6%)であった。ロジスティック回帰多変量解析では、感染の部位が重症敗血症と有意に関連した。カテーテル関連尿路感染症は、年齢、性別、Charlson 併存疾患指数、および感染を受けた場所で調整後も、関連が有意であった(オッズ比 3.94、95%信頼区間 1.70 ~ 9.11)。

結論
尿道留置カテーテルは重症敗血症のリスクを増加させる。これらのカテーテルは臨床的に適応となる場合に限り使用すべきである。カテーテルを挿入した場合はケアバンドルによるアプローチをとるべきであり、長期型カテーテルが必要な場合を除き、抜去予定日を記録すべきである。敗血症との関連において、尿道留置カテーテルが存在する場合は「Sepsis Six」を速やかに実践し、集中治療室への移送を考慮すべきである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
英国ロンドンの教育病院で 1 年間に発生した敗血症事例の解析である。敗血症の 35%から大腸菌が検出されており、尿道留置カテーテルが重症敗血症のリスクであることを明確にした論文である。考察に出てくる「Sepsis Six」は、敗血症と診断したら 1 時間以内に実施する 6 項目からなる生命予後改善のためのバンドルである。

参考:「Improving outcomes for patients with sepsis」NHS England

非都市部における医療関連クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症の負担

The burden of healthcare-associated Clostridium difficile infection in a non-metropolitan setting

S.E. Bond*, C.S. Boutlis, W.W. Yeo, W.A.B. Pratt, M.E. Orr, S. Miyakis
*Wollongong Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 387-393


目的
医療関連クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)は、先進国において、依然として罹患および死亡の主な原因となっている。しかし、非都市部の多施設での医療関連CDI の負担に関するデータはほとんどない。本研究では、抗菌薬管理プログラム(antimicrobial stewardship programme;ASP)の導入を、医療関連 CDI の発生率との関連で検討し、医療関連 CDI が在院日数および病院費用に及ぼす影響を調べた。

方法
2010 年 12 月から 2016 年 4 月までの間に、オーストラリアのニューサウスウェールズ州にある非都市部地域医療圏の 9 つの病院で、医療関連 CDI を有する 16 歳以上の患者の介入前後比較研究を行った。介入は、臨床決定支援システムをサポートしている多施設 ASP を含み、その後、電子メールによる主治医への医療関連 CDI 症例のフィードバックを導入した。

主要評価項目
医療関連 CDI の発生率、在院日数と病院費用の比較、抗菌薬およびプロトンポンプ阻害薬の使用歴、および CDI 治療の適切性。

結果
医療関連 CDI の発生率は、介入前に、10,000 病床利用日あたり 3.07 例から 4.60 例に上昇し、介入後は 10,000 病床利用日あたり 4 例を維持した(P = 0.24)。在院日数の中央値(17 日間対 6 日間、P < 0.01)、および病院費用の中央値(19,222 豪ドル対 7,861豪ドル、P < 0.01)は、医療関連 CDI 症例( N = 91)のほうがマッチさせた対照者( N = 172)よりも有意に大きかった。重症の医療関連 CDI を有した患者の半数(8 例中 4 例)は、適切な初期治療(バンコマイシンの経口投与)を受けていなかった。

結論
医療関連 CDI は、在院日数および病院費用の増加を通じて、地方および農村部の公共医療サービスに有意な負担をもたらした。ASP の効果を高めるために、医療関連 CDI を標的とした介入を採用することも可能かもしれない。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
オーストラリアにおける医療関連 CDI のインパクトに関する研究である。すでに報告された多数の研究と同様に、医療関連 CDI による入院期間の延長やコストの増加が示された。医師の CDI に関する認知は依然として低く、ASP の介入効果が期待できそうだ。

ベルギーで最もよくみられた分離されたクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)リボタイプの臨床的および検査上の特徴

Clinical and laboratory features of the most common Clostridium difficile ribotypes isolated in Belgium

F. Neely*, M-L. Lambert, J. Van Broeck, M. Delmée
*Scientific Institute of Public Health, Belgium

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 394-399


背景
異なるリボタイプのクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)を比較した先行研究は、相反する結果を示しており、多くは少数の症例またはリボタイプを比較したのみであった。

目的
異なるリボタイプによる CDI の患者およびエピソードの特徴を比較すること。

方法
ベルギーの 110 の病院で、2010 年 10 月から 2015 年 12 月までに収集された 3,333 の毒素産生性分離株に対して、リボタイピングを実施した結果を、全国 CDI サーベイランスデータベースの臨床データと対応させた。感染が 100件以上発生したリボタイプのデータを比較した。さらに、最もよくみられたリボタイプの各々について、ランダムに選択した 5つの培養分離株の毒素産生レベルを、国家リファレンス検査室で定量的に測定した。

結果
100 件を超えて発生したリボタイプは、R014、R020、R002、R078、R027、R005、およびR106 であった(Brazier の分類)。全患者の年齢の中央値は 79 歳であった(R027 感染患者では 83歳[P < 0.001]、R106 感染患者では 73歳[P < 0.001])。全体として、エピソードの 10%が再発であり、この割合は R027 および R106 で高かった(それぞれ 22%および 18%)。R078 による CDI が医療関連よりも市中獲得型である割合は統計学的に有意に高いとはいえなかった(24%対 28%、P = 0.1)。合併症は、全エピソードの 7%、R027 および R078 によるエピソードの 12%で発生した。しかし、年齢、院外での発症、および再発で調整後に、R027 と合併症の関連は消失し(オッズ比[OR]1.3、95%信頼区間[CI]0.7 ~ 2.4)、R078 では関連が認められた(OR 1.7、95%CI 1.0 ~ 2.6、P = 0.04)。糞便の毒素検査が陽性である割合、および培養分離株の毒素産生レベルが高かったのは、R078 および R027 であった。

結論
入院患者で最もよくみられた 7つのリボタイプのうち、R078 および R027 は、合併症の発生率が高かった。R027 および R106 による感染は、再発性である割合が高かった。糞便中の毒素の存在は R078、R027、および R106 で多く、in vitro での毒素産生レベルは R078 および R027 で最も高かった。R106 は in vitro での毒素産生レベルが最も低かった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
C.difficile(CD)には強毒性株が存在することが知られており、特にリボタイプ R027 および R078 が毒性が高いとされる。本研究ではベルギーにおいてもこの 2 種類の CD による感染症では合併症および再発率が高かったことが報告された。なお日本では R027 の分離頻度は低いことが報告されており、国や地域によって流行している CD が異なることが知られている。

病院感染型クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染に抗菌薬および症例への曝露が重症度とは独立して及ぼす影響

Influence of antibiotics and case exposure on hospital-acquired Clostridium difficile infection independent of illness severity

A.J. Forster*, N. Daneman, C. van Walraven
*University of Ottawa, Canada

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 400-409


背景
抗菌薬への曝露と病院感染型クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)関連感染(CDI)のリスクの関連に関する先行研究では、患者重症度および競合リスクが十分に説明されていない。

目的
病院感染型 CDI のリスクに介入が及ぼしうる影響を明らかにすること。

方法
2004 年から 2014 年の間に教育病院に 2 日間を超えて入院したすべての成人患者を含めた。すべての抗菌薬および CDI 症例への曝露を同定した。患者を、退院、死亡、または病院感染型 CDI の発生(入院後 2日間以降の無形便の毒素検査陽性と定義した)まで追跡した。時間依存性共変量を含む多変量比例ハザード競合リスクモデルを用い、患者重症度は Escobar モデルを用いて説明した。

結果
全体で 208,104 例の患者を研究に含めた。病院感染型 CDI のリスクは 1,000 患者・日あたり 0.46 件で、研究期間中に有意に減少した。院内死亡リスクの 5 パーセンタイル値(0.02%)と比較して、院内死亡リスク 50%の患者の病院感染型 CDI の調整ハザード比(HR)は 5.5 であった。一部の抗菌薬への曝露は病院感染型 CDI のリスクを有意に増加させ、リスクが最も高かったのはカルバペネム系薬(1 週間の連続曝露後の調整HR 1.47)およびバンコマイシン静脈内投与(調整HR 1.53)であった。病室での曝露について、新たに CDI と診断された他の患者との同室は、その後の疾患リスクを有意に増加させた(CDI の診断日における調整HR 1.16)。

結論
病院感染型 CDI の主要な決定因子は、患者重症度であった。抗菌薬および他の CDI 患者への曝露はどちらも、後の病院感染型 CDI のリスクを有意に増加させたが、このリスクは患者重症度に比べて小さいものであった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
11 年間、208,104 例の入院患者を対象とした比較的大規模な研究である。従来から CDI の最大のリスク因子は抗菌薬曝露とされていたが本研究では CDI の最大のリスク因子を患者の基礎疾患の重症度と報告している。また他の CDI 患者との接触の影響は低く、CDI 患者の隔離の効果は小さいのではないかと結論している。こういった研究結果は研究によって様々であり、本研究によって CDI 患者に接触予防策が不要であると結論するのは早急である。

変態期間中のイエバエの幼虫および蛹によるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)獲得と保持

Acquisition and retention of Clostridium difficile by Musca domestica larvae and pupae during metamorphosis

M.P. Davies*, M. Anderson, A.C. Hilton
*Killgerm Chemicals Ltd, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 410-414


背景
イエバエによるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の伝播が立証されており、病院環境において感染を拡散するその能力が明らかになっている。

目的
イエバエ幼虫がハエ成虫へとなる変態期間を通じて C. difficile を獲得し保持する能力を明らかにすること。

方法
糞便乳濁液中で幼虫を C. difficile の芽胞に曝露させ、その成虫への発育期間を通じて芽胞の保持および内在を明らかにするため虫体の外部および内部を調べた。

結果
幼虫の外部表面には C. difficile が認められ、平均コロニー形成単位(cfu)は 0 日目 21.56 +/‒ 5.76 cfu、2 日目 22.44 +/‒ 9.90 cfu、4 日目に 0.56 +/‒ 0.34 cfu に減少し、その後は C. difficile は分離されなかった。同一の幼虫には C. difficile の内在(体内)が認められ、平均 cfu は 0 日目 587.33 +/‒ 238.29 cfu、2 日目に 297.44 +/‒ 155.21 cfu に減少し、4 日目には 73.67 +/‒ 46.74 cfu へとさらに減少し、その後は C. difficile は分離されなかった。C. difficile の回収ゼロはイエバエ幼虫の蛹化と時期的に一致した。6 日目以降、すべての幼虫が蛹化し、いずれの蛹からも C. difficile は回収できなかった。ハエ成虫(12 日目に羽化)または空の蛹殻からは C. difficile は回収されなかった。

結論
C. difficile 芽胞は、幼虫により摂食中に容易に獲得され内在化されるが、成虫への発育期間を通じて保持されることはなかった。したがって、ハエ成虫は成虫として C. difficile 汚染を獲得する。C. difficile 芽胞に対するイエバエ幼虫およびその抽出物の潜在的抗菌作用にはさらなる研究が必要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
イエバエ成虫が、病院環境下でC. difficile(CD)の運搬役となり、院内に拡げるという証拠が過去に報告されている。本論文ではイエバエの幼虫が CD を体内および体表面に持つかどうかという、これまでとは異なった視点からのアプローチである。結論は、幼虫のときに体内に持っていても、サナギになると消失するという新たな知見が得られるというもので、同時に CD の消失に関与する物質の存在が示唆され、新たな抗 CD 薬開発の可能性という点で興味ある論文である。

クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症による病院固定費および変動費の評価:施設のインセンティブおよび今後の研究の方向

Evaluation of fixed and variable hospital costs due to Clostridium difficile infection: institutional incentives and directions for future research

P. Ryan*, M. Skally, F. Duffy, M. Farrelly, L. Gaughan, P. Flood,E. McFadden, F. Fitzpatrick
*Trinity College Dublin, Ireland

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 415-420


背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)の経済的分析では、施設の意思決定者が向き合うインセンティブについて考えるべきである。感染予防の財政的利益の誇張を避けるため、固定費と変動費を区別すべきである。

目的
2015 年 8 月中の 3 次紹介病院での CDI 固定費および変動費を定量的に評価すること。

方法
ミクロ原価計算法による分析により、CDI アウトブレイクの追加費用を含めて患者あたりの CDI 費用を推定した。資源利用は、患者医療記録、薬局データ、管理資源投入量、給与および清掃/汚染除去費用の記録を調査した後に定量化した。

結果
CDI による費用増分は 75,680 ユーロ(患者あたり平均 5,820 ユーロ)で、主要なコスト・ドライバーは清掃、薬剤、入院期間であった。追加の入院期間は 1.75 ~ 22.55 日の範囲であった。CDI アウトブレイクに関係した 7 例に関しては、逸失病床利用日 58 日分(34,585 ユーロ)を除いて、費用は 30%増加した(患者あたり 7,589ユーロ)。したがって、CDI による総支出は 88,062 ユーロ(全患者での平均:6,773 ユーロ)であった。変動費節減の可能性は、1,026 ユーロ(17%)、アウトブレイクの費用を含めた場合は 1,768 ユーロ(26%)であった。抗菌薬専門薬剤師1 名への投資に見合うには、1 年間で CDI 47 症例の予防が必要である。CDI を5%、10%、20%予防することで、起因する費用が 4,403 ユーロ、8,806 ユーロ、17,612 ユーロ低減する。CDI に起因する入院期間増分が患者あたり 7 日増加すると、費用は 7,478 ユーロ、または 8,431 ユーロ(アウトブレイク費用を含めた場合)増加すると考えられる。

結論
CDI 費用の多くが固定費であるため、感染予防による費用節減の可能性は限定的である。今後の解析では、区別することとそれが施設の意思決定に及ぼす影響についてさらに効率的な考察をしなければならない。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
これまで CDI の発生による費用が各国で算定されている。1 症例あたり、欧州では 5,798 ~ 11,202 ユーロ(約70万 ~ 約134万)(1ユーロ = 120日本円)、米国では2,992 ~ 29,000 ドル(33万 ~ 319万円)(1ドル = 110日本円)とされており、いずれにしても極めて高額である。本論文における CDI 発生による変動費の内訳は、約 75%が薬剤費、約 15%が消毒・清掃費用、約 10%が検査費用である。孤発例では、CDI 患者退院後の徹底清掃、過酸化水素による消毒、カーテン交換など、一方アウトブレイク時には、ベッドリネン交換やブランケットの廃棄、次亜塩素酸タブレットの使用、マットレス交換の費用が追加され、5 倍近く余分な費用が発生する。欧米での強毒株の流行により、CD 芽胞を徹底的に除去するための消毒清掃等に多くの費用が発生するためである。さらに、入院期間の延長や個室隔離による費用が上乗せされる。

オランダの 3 次医療施設におけるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症リボタイプ 027 アウトブレイクの費用分析★★

Cost analysis of an outbreak of Clostridium difficile infection ribotype 027 in a Dutch tertiary care centre

Y.H. van Beurden*, M.K. Bomers, S.D. van der Werff, E.A.P.M. Pompe,S. Spiering, C.M.J.E. Vandenbroucke-Grauls, C.J.J. Mulder
*VU University Medical Centre, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 421-425


背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)が医療制度に及ぼす経済的影響は甚大である。2013 年 5 月から 2014 年 5 月まで、オランダの 3 次病院で C. difficile リボタイプ 027 アウトブレイクが起こり、患者 72 例がこれに関わった。本研究の主要な目的は、この CDI アウトブレイクが当病院にもたらした経済的負担に関する知見を提供することである。

方法
後向き解析を実施し、1 年間の C. difficile リボタイプ 027 アウトブレイクの費用を推定した。診療録レビューによって患者データを得た。さらに、このアウトブレイク制御策に関連する全費用のデータを収集した。

結果
アウトブレイク全体に起因する費用は 1,222,376 ユーロと推定された。主な要因は、CDI 患者の入院期間延長および CDI 患者の接触隔離を可能にするための病床閉鎖により逃した収益(逸失利益)であった(36%)。第 2 の重要な費用の要素は、余分なサーベイランスと Department of Medical Microbiology and Infection Control の活動であった(25%)。

結論
著者の知る限り、本研究は、アウトブレイクが生じた状況で CDI に起因する費用に関する知見を提供し、主な費用項目を明確にした最初の研究である。CDI による経済的帰結が甚大であることは明らかである。CDI アウトブレイクに関連する高額な費用は、CDI 予防および制御のために追加的資源を使用することの正当な理由づけに有用になるはずである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
強毒株のリボタイプ 027 によるアウトブレイク(72 例)の費用に関する詳細な報告である。アウトブレイクにより発生した余分な費用は、発生前の諸費用と比較して、日本円(1ユーロ = 120円)で患者 1 例あたり、検査費約 12 万円、余分な労働費約 52 万円、追加清掃費約 48 万円、12 回の会議約 6.5 万円、接触予防策のための物品費用約 6.8 万円、入院制限による損失約 62 万円、CDI 罹患による入院日数超過による損失約 11.7 万円、余分な抗菌薬治療費用約 3.7 万円、合計約 204 万円がかかったとして報告されている。日本においても、CDI は今後重大な院内感染の原因菌となることが予測され、CDI が疑われる下痢患者への早期の接触予防策による封じ込めと診断治療は患者の予後だけでなく医療経済的にも重要である。

癌患者においてクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)腸炎の管理にチゲサイクリンを使用することおよびブレイクスルー感染症のケースシリーズ

Use of tigecycline for the management of Clostridium difficile colitis in oncology patients and case series of breakthrough infections

B.J. Brinda*, Y. Pasikhova, R.E. Quilitz, C.M. Thai, J.N. Greene
*Indiana University Health, USA

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 426-432


背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)は、成人における院内下痢症の最も頻度の高い原因である。癌患者は特に、CDI のリスクが高い。CDI の治療、特に癌患者および血液悪性腫瘍患者にチゲサイクリンを使用することに関する臨床データは限られている。

目的
大学附属癌センターの癌患者を対象とし、CDI 治療薬としてのチゲサイクリンの特徴を明らかにすること。

方法
本研究は、大学附属癌センターの癌患者を対象とした CDI 治療目的でのチゲサイクリンを評価する後向き単施設単一群医療記録調査であった。

結果
本患者群(66 例)での CDI 診断年齢中央値は 65 歳(範囲 16 ~ 84 歳)で、大多数は悪性固形腫瘍患者であった。患者の 56%は重症 CDI であり、そのうち 70.3%が重症かつ複雑性の CDI に分類された。チゲサイクリン療法開始までの期間中央値は 2 日(平均 3.83 日)、チゲサイクリン投与回数中央値は 13 回(範囲 1 ~ 50 回)であった。CDI 以外のブレイクスルー感染症が 12 件認められ、CDI 以外の適応に対してチゲサイクリン投与中に 4 例が CDI を発症した。死亡率は 18%、再発率は 15.2%であった。

結論
過去のデータと比較すると、チゲサイクリンは CDI を発症した癌患者の転帰に明白なベネフィットをもたらさなかった。さらに、CDI 以外の適応に対してチゲサイクリン投与を受けた患者にブレイクスルー CDI が数件認められた。CDI 治療薬としてのチゲサイクリンの使用を検証するには、さらなる前向き研究が必要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
チゲサイクリンは in vitroC. difficile に対する活性を持ち、重症の CDI で他剤に付加して投与した場合に、治癒率が高かったとする報告がある。欧州臨床微生物感染症学会はそのガイドラインで、重症例や、経口治療が無効であった例にチゲサイクリンの使用を考慮するとしているが、チゲサイクリンの有用性に疑問を呈する報告もあった。本検討は悪性腫瘍患者が対象ではあるが、チゲサイクリン投与中に CDI のブレイクスルー感染症を生じており、残念ながら有用性は見いだせなかった。

糞便細菌叢移植は高い薬剤耐性を示す腸内細菌の保菌根絶のための選択肢となるか?

Is faecal microbiota transplantation an option to eradicate highly drug-resistant enteric bacteria carriage?

B. Davido*, R. Batista, H. Michelon, M. Lepainteur, F. Bouchand, R. Lepeule, J. Salomon, D. Vittecoq, C. Duran, L. Escaut, I. Sobhani, M. Paul, C. Lawrence, C. Perronne, F. Chast, A. Dinh
*Versailles Saint-Quentin University, France

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 433-437


カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)またはバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)保菌は、公衆衛生上の重大な課題となっている。除菌のストラテジーは不十分である。本研究は、CRE または VRE の消化管保菌が認められた患者のコホートで、糞便細菌叢移植の影響を評価することを目的とした。8 例の患者を研究に含めた。内訳は、6 例が CRE、2 例が VRE 保菌者であった。糞便細菌叢移植の 1 か月後に、2 例で CRE 保菌が認められず、3 か月後には別の 1 例で VRE が検出されなかった。我々の経験では、このストラテジーは安全である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
糞便細菌叢移植(FMT)後に薬剤耐性菌が便から検出されなくなった例や、便のメタゲノム解析で FMT 前に認めていた薬剤耐性遺伝子が FMT 後には消失した例が報告され、腸内細菌叢を変える FMT が耐性菌の保菌を抑制する可能性が指摘されている。本検討は少数例ながら CRE、VRE 保菌者での FMT の効果をみたものであるが、3 か月で約 4 割で除菌が確認された。症例数を増やし、FMT の方法を工夫した今後の検討が待たれるところである。

クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症の治療:臨床医による推奨と糞便細菌叢移植施行の全国調査

Treatment of Clostridium difficile infection: a national survey of clinician recommendations and the use of faecal microbiota transplantation

A.R. Prior*, D. Kevans, L. McDowell, S. Cudmore, F. Fitzpatrick
*Beaumont Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2017) 95, 438-441


クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症治療ガイドラインの遵守は再発率と死亡率の低減、費用節減と関連する。アイルランドの臨床医を対象とした本調査では、患者の治療には様々な方法が用いられていることが判明した。糞便細菌叢移植は、アイルランドおよび欧州のガイドラインで推奨されているにもかかわらず、十分には施行されていないといえる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
アイルランドでは、C. difficile 感染症(CDI)は法律的に報告が義務付けられ、ガイドラインでの各治療の推奨の位置づけもはっきりしている。糞便細菌叢移植(FMT)は 2 回目以降の再発例に対して推奨されているが、今回の医師を対象としたアンケート調査では、FMT を 2 回目の再発に選択すると答えた医師は 8.5%、3 回以上の再発に選択すると答えた医師は 30.9%であった。FMT 施行に関する状況を鑑みるうえでも貴重な報告といえる。

サイト内検索

Loading

アーカイブ

最新のコンテンツ

Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.