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手術部位感染症が医療費および患者転帰に及ぼす影響:欧州 6 か国におけるシステマティックレビュー

Impact of surgical site infection on healthcare costs and patient outcomes: a systematic review in six European countries

J.M. Badia*, A.L. Casey, N. Petrosillo, P.M. Hudson, S.A. Mitchell, C. Crosby
*Hospital Universitari de Granollers, Spain

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 1-15


背景
手術部位感染症(SSI)は、合併症および死亡の発生率上昇と関連する。さらに、SSI は財政的負担となっており、患者の QOL に負の影響を及ぼす。

目的
欧州 6 か国における様々な外科専門科にわたる SSI による費用および健康関連 QOL の負担、ならびにこれらに関するエビデンスを評価すること。

方法
電子データベースおよび学会会議録を系統的に検索して、SSI による費用および健康関連 QOL の負担について報告している研究を同定した。フランス、ドイツ、オランダ、イタリア、スペインおよび英国で 2005 年以降に発表された研究を適格とし、データ抽出を行った。研究を外科専門科により分類し、主要転帰は感染症の費用、経済的評価および健康関連 QOL とした。

結果
26 件の研究が適格基準を満たし、解析対象とした。対象国におけるエビデンスは少なかったが、SSI は一貫して、非感染患者と比べて費用の増加と関連付けられていた。複数の研究では、SSI 患者は長期の入院、再手術、再入院が必要となること、また SSI により死亡率が上昇することを報告していた。1 件の報告のみが QOL に関するエビデンスを報告しており、その結果は SSI により健康関連 QOL スコア(EQ-5D)が低下することを示していた。報告によれば、入院は費用負担の大部分を占めており、その他の費用は医療スタッフ、研究および治療にかかる費用であった。

結論
SSI に関する報告に一貫性がないため、費用の直接比較は困難であるが、本レビューから SSI には極めて多額の費用がかかることが示された。したがって、SSI を最小限に抑えるために厳格な手順を導入しなければならない。正確な費用を推定し SSI の負担の実態を明らかにするためには、さらなる経済的および QOL 研究が必要である。

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監訳者コメント
国も異なり医療システムの違いから直接比較はなかなか困難であろうが、SSI の発生は病院にとっても患者本人にとっても喜ばしいことではない。在院日数の増加や治癒回復の延長さらには予後不良に関連する重大なイベントとして認識される。

資源が乏しい環境における電話連絡および追跡カードを用いた手術部位感染症の退院後サーベイランス

Postdischarge surveillance of surgical site infections using telephone calls and a follow-up card in a resource-limited setting

J. Guerra*, M. Isnard, C. Guichon
*Preah Kossamak Hospital, Cambodia

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 16-19


カンボジアにおいて、追跡カードと電話連絡を用いることは、手術部位感染症(SSI)の退院後サーベイランスにとって効率的な方法のようであった。患者 161 例に追跡カードを渡し、手術を受けた後の 30 日以内に受診した医療従事者にカードを示すよう指示した。患者に対し、その後電話連絡をして情報収集を行った。退院後、患者の 87%が追跡データを提供した。これらの患者のうち、入院中に SSI が検出されなかった患者 25 例が「手術創から白色の液体が分泌された」と報告した。そのうち、9 例が医療従事者によって排膿であったと報告された。

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監訳者コメント
米国と比較して平均在院日数の長い日本では、より実際かつ正確な SSI サーベイランスが実施できていると専門家は考えている。米国では術後在院日数が極端に短いため電話再診を行っているが、カンボジアのこの追跡カードシステムはローテクだが全く何もしないより正確な集計につながると考えられる。

適切な経験的抗菌薬療法により集中治療室で獲得された腸内細菌科細菌菌血症に関連する死亡および退院が変化するか?

Does appropriate empiric antibiotic therapy modify intensive care unit-acquired Enterobacteriaceae bacteraemia mortality and discharge?

K.B. Pouwels*, E. Van Kleef, S. Vansteelandt, R. Batra, J.D. Edgeworth, T. Smieszek, J.V. Robotham
*National Infection Service, Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 23-28


背景
集中治療室(ICU)で獲得された腸内細菌科細菌菌血症の転帰、ならびに適切な経験的抗菌薬療法による潜在的な修飾効果については、矛盾する結果となっている。

目的
上記の関連性について、因果関係を推定した文献に記載された方法を用いて潜在的な時間依存性交絡因子を補正して評価すること。

方法
本コホート研究に、2002 年から 2006 年にイングランドの 2 つの一般 ICU に 3 日以上滞在した患者を組み入れた。逆確率重み付け法による周辺構造モデルを用いて、腸内細菌科細菌菌血症に関連した死亡率および退院率、ならびに適切な経験的抗菌薬療法がこれらの転帰に及ぼした影響を推定した。

結果
3,411 件の ICU 入室のうち、195 件(5.7%)でICUで獲得された腸内細菌科細菌菌血症症例が発生した。腸内細菌科細菌菌血症は、ICUにおける死亡の 1 日あたりリスクの上昇(原因特異的ハザード比[HR]1.48、95%信頼区間[CI]1.10 ~ 1.99)ならびに ICU 退院の 1 日あたりリスクの低下(HR 0.66、95%CI 0.54 ~ 0.80)と関連した。適切な経験的抗菌薬療法により、ICU における死亡(HR 1.08、95%CI 0.59 ~ 1.97)または退院(HR 0.91、95%CI 0.63 ~ 1.32)に有意な変化はなかった。

結論
ICU で獲得された腸内細菌科細菌菌血症は、ICU における死亡の 1 日あたりリスクの上昇と関連した。さらに、適切な方法を用いて時間依存性交絡因子を補正した場合も、1 日あたりの退院率も感染症獲得後に低下した。適切な経験的抗菌薬療法により ICU の死亡および退院に対する有益な修飾効果があるというエビデンスは認められなかった。

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監訳者コメント
ICU では重篤な患者が多く、必ずしも感染症だけが重症化や死亡要因ではないことから、人工呼吸器関連肺炎の長期予後などの疫学調査においても改善効果を検証する際に有意差が出にくいことが知られている。

市中発症型医療関連血流感染症に特有の特徴:日本における血流感染症の多施設共同前向きサーベイランス研究★★

Unique characteristics of community-onset healthcare-associated bloodstream infections: a multi-centre prospective surveillance study of bloodstream infections in Japan

N. Takeshita*, I. Kawamura, H. Kurai, H. Araoka, A. Yoneyama, T. Fujita, Y. Ainoda, R. Hase, N. Hosokawa, H. Shimanuki, N. Sekiya, N. Ohmagari
*National Centre for Global Health and Medicine, Japan

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 29-34


背景
血流感染症(BSI)の分析は、その診断、治療および予防にとって重要である。しかし、日本で利用可能なデータは限られている。

目的
日本における菌血症患者の特徴を検討すること。

方法
本研究は、2012 年 10 月から 2013 年 9 月にかけて日本の病院 5 施設で実施した。血液培養陽性の全症例について、臨床、人口統計学的、微生物学的、および転帰データを分析した。

結果
合計で BSI 症例 3,206 例を分析した。このうち、551 例が市中発症型医療関連 BSI、1,891 例が病院獲得型 BSI、764 例が市中獲得型 BSIであった。7 日および 30 日死亡率は、市中発症型医療関連 BSI および病院獲得型 BSI の患者のほうが市中獲得型 BSI の患者より高かった。7 日死亡率のオッズ比(OR)は、市中発症型医療関連 BSI および病院獲得型 BSI でそれぞれ 2.56(95%信頼区間[CI]1.48 ~ 4.41)および 2.63(95%CI 1.64 ~ 4.19)であった。30 日死亡率の OR は、市中発症型医療関連 BSI および病院獲得型 BSI でそれぞれ 2.41(95%CI 1.63 ~ 3.57)および 3.31(95%CI 2.39 ~ 4.59)であった。中心ライン関連 BSI が 499 例(15.2%)、末梢ライン関連 BSI が 163 例(5.0%)であった。主要な病原体には、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(staphylococci)(N =736、23.0%)、大腸菌(Escherichia coli)(N = 581、18.1%)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(N = 294、9.2%)および肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(N = 263、8.2%)が含まれた。大腸菌による 30 日死亡率は、病院獲得 BSI 患者(22.3%)のほうが市中発症型医療関連 BSI(12.3%)および市中獲得型 BSI(3.4%)の患者より高かった。肺炎桿菌による 30 日死亡率は、病院獲得型 BSI(22.0%)および市中発症型医療関連 BSI(22.7%)の患者のほうが市中獲得型 BSI(7.8%)患者より高かった。

結論
市中発症型医療関連 BSI および病院獲得型 BSI による死亡率は、市中獲得型 BSI より高かった。大腸菌および肺炎桿菌に関連した BSI の予後は、菌血症の種類によって異なっていた。

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監訳者コメント
国内 5 施設の血液培養陽性例を日本の感染症医が解析した論文である。市中発症型医療関連血流感染(入院後 48 時間未満)、病院獲得型血流感染(入院後 48 時間以降)、市中獲得型血流感染(入院 48 時間未満、医療関連リスク要因なし)の 3 群に分け、その特徴を解析している。特に起炎菌の差に関する解析が興味深かった。

アイルランドにおける病院感染による血流感染症の寄与死亡率

Attributable mortality of hospital-acquired bloodstream infections in Ireland

M. Brady*, A. Oza, R. Cunney, K. Burns
*Health Protection Surveillance Centre, Ireland

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 35-41


目的
アイルランドにおける病院感染による血流感染症の寄与死亡率を推定すること。

方法
2007 年 1 月から 2013 年 12 月までの間、アイルランドの 6 つの病院の微生物検査室からの届け出と患者管理記録をもとに、後向き症例コホート研究を実施した。確率的リンケージにより、入院患者 343,189 例のコホートから、血流感染症の症例 1,252 例のデータを連結した。多変量ロジスティック回帰モデルを用いて、独立した死亡の予測因子を同定した。予測因子は、患者の年齢、緊急入院か再入院か、集中治療室への入室日数、手術回数、診断名数、主要診断群、および病院感染による血流感染症の有無などであった。

結果
症例被験者の粗死亡率から、他の死亡予測因子で調整して算出した寄与死亡率は 15.3%(95%信頼区間 14.8 ~ 15.8)であった。本研究ではさらに、原因微生物による層別化も行った。原因微生物には、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、および肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)を含め、データがあればそれらの抗菌薬耐性パターンを含めた。これらの微生物のうち寄与死亡率が最も高かったのは E. faecium の 18.1%であり、最も低かったのは大腸菌の 13.6%であった。一部の微生物の抗菌薬耐性パターンで有意に高い寄与死亡率が認められ、中でもメチシリン耐性黄色ブドウ球菌は 19.5%(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌は 13.3%)であった。

結論
病院感染による血流感染症は死亡の重要な原因であり、寄与死亡率は、原因微生物および抗菌薬耐性パターンにより有意に異なる。

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監訳者コメント
病院感染による血流感染症症例を解析し、血流感染の予測因子を検討した論文である。寄与死亡率が最も高かったのは E. faecium であった。

シエラレオネのエボラウイルス病治療ユニットに勤務する英国軍医療従事者のための個人防護装備の解決策

Personal protective equipment solution for UK military medical personnel working in an Ebola virus disease treatment unit in Sierra Leone

P. Reidy*, T. Fletcher, C. Shieber, J. Shallcross, H. Towler, M. Ping, L. Kenworthy, N. Silman, E. Aarons
*Royal Centre for Defence Medicine, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 42-48


シエラレオネのケリータウンエボラ治療ユニットに勤務する英国軍・カナダ軍医療従事者を保護することを目的として、個人防護装備(PPE)を組み合わせ、その装着および脱衣のプロトコールも作成した。この PPE 解決策は、感染リスク(特にエボラウイルス)と化学物質(次亜塩素酸塩)への曝露から医療スタッフを守るために選択されたものであった。PPE の使用により、動作性を最大限に向上させ、高温環境下で最長 2 時間の勤務を可能にし、外層の脱衣時に粘膜を保護し、PPE への次亜塩素酸塩噴霧の必要を低減することで生じうる脱衣エリアの感染性物質汚染を最小化した。

このエボラ治療ユニットは、多くの既存のエボラ治療ユニットに比べより高度な医療を提供できる設備が整っている。このため、医療従事者は、仮に医療従事者がエボラウイルス病に罹患しても欧米諸国の治療水準に可能な限り近い医療を受ける、という国際的な対応が実現される勤務環境が確保されていた。さらに、PPE を使用することで、西アフリカのエボラウイルス病治療レジメンではルーチンに行われない臨床介入が可能になるとともに、強力な防護バリアを得た。9 日間の配置前トレーニングプログラムを通じて、PPE の使用技能を育成した。このプログラムでは、配置ごとに 60 名を超える医療従事者が、模擬治療ユニットおよび教室内で PPE の技術演習を行った。全般的なトレーニングの内容は(i)選択された PPE 解決策を支持するエビデンス、(ii)PPE の装着・脱衣の技術、(iii)医療従事者の選定 PPE に対する信頼、(iv)各医療従事者が、安全に PPE を装着し、業務を遂行し、PPE を脱ぐ能力を数値化できるテストであった。

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監訳者コメント
2014 年にシエラレオネ、ケリータウンに設置された 12 床のエボラ治療ユニットで安全で有効な PPE の選択、着脱について検討され、実践された。論文は写真を多用して手順を説明しており、大変参考になるものであると思われる。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)獲得に対する手袋およびガウンによる普遍的介入の相対的有益性の分析

Deconstructing the relative benefits of a universal glove and gown intervention on MRSA acquisition

A.D. Harris*, D.J. Morgan, L. Pineles, E.N. Perencevich, S.L. Barnes
*University of Maryland School of Medicine, Baltimore, MD, USA

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 49-53


背景
20 施設を対象に手袋およびガウンの普遍的着用の有益性(Benefits of Universal Glove and Gown;BUGG)を検討した研究では、集中治療室(ICU)での患者とのあらゆる接触に対して手袋およびガウンを着用した場合、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の獲得率の低下が認められた。防護用具としての手袋およびガウン、手指衛生の改善、ならびに医療従事者と患者との接触率低下の相対的重要性は不明である。

目的
BUGG 研究で認められた獲得率低下に対し、手指衛生の改善、接触率低下、ならびに手袋およびガウンの普遍的着用が寄与した割合をエージェントベースシミュレーションモデリングを用いて明らかにすること。

方法
ICU における MRSA 伝播動態をシミュレーションするために既存のエージェントベースモデルを修正し、施設固有のデータを用いてキャリブレーションを行った。モデルの検証は BUGG 研究で収集されたデータを用いて実施、完了した。2k 完全実施要因配置計画を実施し、MRSA 獲得率において前述のそれぞれの要因を改善することにより相対的有益性を定量化した。

結果
要因配置計画ポイントおよび介入施設ごとにシミュレーションによる再現を 40 回行った。そのうち MRSA 獲得率低下の約 44%は手袋およびガウンの普遍的着用、38.1%は既存患者の病室における手指衛生遵守の改善、14.5%は医療従事者と患者との接触率低下によるものであった。

結論
数学的モデリングにより、BUGG 研究における MRSA 獲得率低下の第一要因は、手袋およびガウンの防護効果であり、続いて手指衛生の改善、医療従事者と患者との接触率低下であることが判明した。

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監訳者コメント
Harris らはすべての患者接触時に手袋およびガウンを装着する「ユニバーサルグラブ・ガウン」の研究結果を定期的に報告している。特に 2013 年には多施設研究で MRSA を含む多剤耐性菌の獲得率が低下することを JAMA という一流紙に報告した。本研究はその結果を「なぜ低下したのか」数学的に解析した結果である。
低下の主因としては手袋およびガウンの着用を挙げているが、次いで手指衛生遵守率の改善を挙げている。しかし彼らは「部屋の出入りの際の手指衛生遵守率」のみを観察しており、WHO の 5 つのタイミングでいう「清潔・無菌操作の前」や「体液曝露の後」の手指衛生は観察していない。部屋の出入りの際の手指衛生を手袋着用で確かに耐性菌の保菌率は減少するかもしれないが、清潔・無菌操作の前や体液曝露の後の手袋交換や手指衛生がないと、当該患者の感染症発生率を上昇させる危険性がある。ユニバーサルグラブ・ガウンの検討においては、特に手指衛生について WHO の 5 つのタイミングに基づいた評価が必要ではないだろうか。

熱傷および形成外科病棟の病院用プライバシーカーテンの汚染率:横断的研究★★

Rate of contamination of hospital privacy curtains on a burns and plastic surgery ward: a cross-sectional study

K. Shek*, R. Patidar, Z. Kohja, S. Liu, J.P. Gawaziuk, M. Gawthrop, A. Kumar, S. Logsetty
*University of Manitoba, Canada

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 54-58


背景
患者環境における表面は、それらに細菌が定着した場合、微生物伝播に役割を果たしている可能性がある。患者用プライバシーカーテンは、高頻度接触表面であること、洗浄の頻度が低いこと、医療従事者はカーテンなどの無生物表面に接触した後は手洗いしない傾向があることから伝播の高いリスクをもたらす可能性がある表面の一つである。

目的
地域熱傷/形成外科病棟において患者用プライバシーカーテンの細菌定着の量および種類を明らかにすること。

方法
熱傷/形成外科病棟で患者用プライバシーカーテンの細菌汚染を、6 か月の間隔で2 回に分けて調査をした。2015 年 8 月にカーテン 23 枚、2016 年 1 月にカーテン 26 枚を調査した。Dey-Engley 中和寒天ロダックコンタクトプレートを用いて、接触が最も頻繁なカーテンの外縁付近から試料を毎日採取した。微生物汚染は cfu/cm2 として報告し、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の存在を判定した。病棟で開放創および気管切開部位のスワブも採取した。

結果
カーテン汚染は、2015 年 8 月には 0.7 ~ 4.7 cfu/cm2、MRSA 陽性は 22%であったが、2016 年 1 月には 0.6 ~ 13.3 cfu/cm2、MRSA 陽性は 31%であった。

結論
熱傷/形成外科病棟のカーテンには相当量の細菌が定着している。洗浄プロトコールをさらに的確に伝えるために、定着率およびこの定着による臨床での影響を検討する今後の研究が必要である。

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監訳者コメント
カーテン汚染は多床室の多い日本の病院では非常に気になるところである。20 ~ 30%のカーテンが MRSA で汚染されているという事実は「やはり」というべきだろうか。日本でもカーテンの交換頻度は年に 1 回という施設もあるが、カーテン汚染が医療関連感染症に与える影響について今一度検討すべきであろう。なお日本でも 1997 年の環境感染誌に「MRSA 隔離室 6 室のうち 2 室(33%)で濃厚な MRSA 汚染が認められた」と報告されている(1)
1. 石金恵子、境美代子、村藤頼子ほか。細菌汚染調査からみた病室カーテンの適正交換頻度について。環境感染 1997;12(3):177-180.

救急スタッフの制服および再使用可能モップの洗浄における感染制御の意義

Infection control implications of the laundering of ambulance staff uniforms and reusable mops

W.G. Mackay*, S. Whitehead, N. Purdue, M. Smith, N. Redhead, C. Williams, S. Wilson
*University of the West of Scotland and University Hospital Crosshouse, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 59-62


救急医療における洗浄に関して発表されている研究は少ない。我々は、汚れた制服と汚れていない制服、ならびに大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)およびクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)芽胞で人為的にコンタミネートした再使用可能なモップヘッドについて細菌培養を行った。救急部門で現在ルーチンに行われている洗浄手順は、本研究のシミュレーションから、病原性栄養細菌を、3.398 log10 コロニー形成単位未満(黄色ブドウ球菌および大腸菌)という検出不能レベルにまで低減する効果を有するようである。洗浄後に C. difficile のレベルは減少したものの検出可能であったが、環境内における C. difficile 芽胞の背景レベルが不明であるため、これが感染に及ぼすリスクは不明である。

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監訳者コメント
医療従事者の衣服の汚染と医療関連感染症との関係は気になるところである。例えば白衣はもちろん、ネクタイや靴などが MRSA で汚染されているが医療関連感染症と関連するという報告がある(1)。本研究はそこから一歩進んで、衣服や清掃用具の洗濯の質を評価したもので、特に洗浄後でも C. difficile が残っているのは興味深い。以前日本でタオルのバシラス属による汚染が報告されているが (2) 、芽胞形成菌の汚染は思った以上にしつこいのかもしれない。

1. Bearman G, Bryant K, Leekha S, et al. Healthcare personnel attire in non-operating-room settings. Infect Control Hosp Epidemiol 2014;35(2):107-121.
2. Sasahara T, Hayashi S, Morisawa Y, et al. Bacillus cereus bacteremia outbreak due to contaminated hospital linens. Eur J Clin Microbiol Infect Dis 2011;30(2):219-226.

感染制御リスクとしての名札のストラップの同定:横断観察研究と疫学分析★★

Identification badge lanyards as infection control risk: a cross-sectional observation study with epidemiological analysis

C.M. Murphy*, F. Di Ruscio, M. Lynskey, J. Collins, E. McCullough, R. Cosgrave, D. McDonnell, J. Fennell
*The Adelaide and Meath Hospitals, Dublin, Ireland

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 63-66


名札のストラップの培養で得られた黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)株は、着用者の鼻腔内保菌株と比較すると、パルスフィールド・ゲル電気泳動による遺伝子型およびアンチバイオグラムによる表現型は区別不能であり、同一クローンの可能性が高い。ストラップの使用期間は平均 22 か月であり、衛生状態は不良で、洗浄されていたのはわずか 9%であった。分子疫学的解析から、黄色ブドウ球菌鼻腔内保菌者の 26%には共通して、ストラップから同一パターンの分離株が認められた。ストラップは臨床医療現場のスタッフには推奨すべきではない。

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監訳者コメント
英国保健省の指針には、誰が自分をケアしてくれているかを患者がわかるよう医療従事者全員がユニフォーム着用および/または認識票を身に付けていることとされている。ネックストラップは、洗濯することがないまま継続使用されているが、2 か月に 1 回は洗濯すべきとしている論文もある。本論文ではストラップから分離された黄色ブドウ球菌の遺伝子型別を実施し、4 分の 1 の例で鼻腔と同一菌株であることが判明し、鼻腔保菌が供給源となっている可能性が示唆される。感染予防の目的から英国 NHS はネクタイ着用を推奨していない。しかしながら、これらの事実は、必ずしも感染と直接関連しているかは不明であり、菌検出即使用禁止とはいえない。これまで、ネクタイや聴診器などで同様の研究報告があるが、アウトブレイクとの直接証明できたものはない。ストラップは定期的に洗濯するかまたは、名札をクリップで留めることが良さそうだ。

ナーシングホームにおけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の制御のための普遍的スクリーニングと除菌:クラスターランダム化比較対照試験のフォローアップ

Universal screening and decolonization for control of MRSA in nursing homes: follow-up of a cluster randomized controlled trial

D. Héquet*, V. Rousson, D.S. Blanc, C. Büla, L. Qalla-Widmer, E. Masserey, G. Zanetti, C. Petignat
*Public Health Service, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 69-71


2010 年から 2011 年にナーシングホームで行った試験では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の保菌率の低減において、MRSA の普遍的スクリーニングと除菌に、標準的予防策を上回る利益は認められなかった。このため、2012 年以降ルーチンのスクリーニングは実施されなかった。5 年間のフォローアップでも、介入を支持する新たな根拠は示されなかった。試験後に発表した推奨(入所者に対する MRSA のスクリーニングと除菌は行わない)を維持する。

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監訳者コメント
ナーシングホームなどの介護施設や長期療養型病床における MRSA 感染対策をどこまでするのかは、先進国における大きな問題である。著者は以前にナーシングホームの入所者の MRSA スクリーニング(鼻腔、咽頭、陰部)と除菌の無作為化比較試験を実施し、介入群(51 施設)と対照群(53 施設)とに MRSA 保菌率に差が認められなかったことを報告(Infect Control Hosp Epidemiol. 2015 Apr;36(4):401-8.)し、2012 年以降これらの介入を中止した。今回はその後の長期経過観察後の結果でも介入による新たな知見がないことを確認した。すなわちナーシングホームでのスクリーニングと除菌は MRSA 保菌率に影響しない。

ノロウイルスアウトブレイク中に曝露を受けた患者の感染:予測パラメータはあるのか?

Infection of exposed patients during norovirus outbreaks: are there predictive parameters?

S. Kampmeier*, M.H. Pillukat, A. Kossow, A. Pettke, A. Mellmann
*University Hospital Muenster, Germany

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 75-80


背景
ノロウイルスアウトブレイクの管理は、患者の隔離およびコホーティングからなる。このような状況では、曝露を受けた患者は、ノロウイルス胃腸炎の症状を発症する可能性があるため、症候性の患者および曝露を受けていない無症候性の患者とは別にコホーティングすることが望ましい。これらの患者において、ルーチンに検査する臨床パラメータまたは検査室パラメータが胃腸炎症状発症の予測に役立つかどうかは、これまでに検討されていない。

目的
アウトブレイク中に曝露を受けた患者を対象として、ノロウイルス症状発症の予測値としてルーチンに検査する臨床パラメータまたは検査室パラメータを評価すること。

方法
ミュンスター大学病院で 2 年間にわたりノロウイルスアウトブレイク中に曝露を受けた患者を観察した。曝露を受けた患者を対象として、検査で確認されたノロウイルス胃腸炎症状の発症を調べ、アウトブレイク発生前の検査室パラメータとともに臨床パラメータも曝露を受けた症候性患者と無症候性患者とで比較した。

結果
アウトブレイク 10 件のうちで曝露を受けた患者 42 例を確認した。このうち、33 例は無症状のままであったが、9 例はノロウイルス胃腸炎を発症した。曝露を受け症状が認められた患者は、有意に年長であり(50 ± 10.51 歳対 28 ± 4.68 歳)、血中ナトリウム濃度が有意に高く(142.5 ± 1.48 mmol/L 対 138.8 ± 0.47 mmol/L)、収縮期血圧が有意に高かった(119.3 ± 3.84 mmHg 対 108.5 ± 2.41 mmHg)。曝露を受けた患者のうちでの症状発症は、血液型 O 型との有意な関連が認められた(75%対 20%)。

結論
病院でのノロウイルスアウトブレイク期間内の患者間伝播を最小限にするため、曝露を受けた患者のリスク層別化が有用である。これを達成するため、ルーチンに得られる臨床パラメータおよび検査室パラメータは、これらの患者での症状発症の予測に有用となりうる。

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監訳者コメント
ノロウイルス性胃腸炎によるアウトブレイクは世界中の病院で発生している。発症患者と接触があった曝露患者の発症予測が、日常的に実施している血液検査(血球数、生化学[肝機能・腎機能・電解質・血糖検査]、凝固検査等)で可能であれば、曝露患者の対応が容易であるが、結論的には簡単ではない。ノロウイルスに感染しても無症状の患者の存在が確認されており、無症状者でも便中に有症状者と同レベルのウイルスが排泄されている(Epidemiol Infect. 2015 Jun;143(8):1710-7.)ことがわかっている。感染対策は、潜伏期間中は曝露者の病室に非曝露者を入室させないこと、全曝露者は 3 日間程度の観察期間が必要である。

短期滞在患者と長期滞在患者のもつれを解消する院内感染リスクのランドマーク予測

Landmark prediction of nosocomial infection risk to disentangle short- and long-stay patients

M. Wolkewitz*, M. Zortel, M. Palomar-Martinez, F. Alvarez-Lerma, P. Olaechea-Astigarraga, M. Schumacher
*University of Freiburg, Germany

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 81-84


院内感染リスクの重要な決定因子の一つは滞在期間である。院内感染リスクにさらされている期間の分布は、高度にゆがみ、退院か死亡かによって異なってくる。本研究では、多数の短期滞在患者および少数の長期滞在患者を考慮したランドマーク競合リスク予測モデルを適用した。

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監訳者コメント
医療関連感染の獲得および発症リスクは、一般的に入院期間が長くなるほど高くなるが、一方で入院期間が長期に及ぶ例では、基礎疾患の重症度やデバイスの装着率も高くなる。したがってそれらの影響を排除しないと、医療関連感染のリスクと入院期間との関連は正しく解析できないことになる。ランドマーク競合リスク予測モデルを用いて ICU 入室患者を解析した本検討では(退室のピークは入院 5 日目)、院内感染のハザード(累積でなく、ある時点でのリスク)は入院 20 日目で最も高いことが判明した。

資源が限られた欧州諸国での感染制御能力の構築:問題と優先課題

Infection control capacity building in European countries with limited resources: issues and priorities

M. Licker*, L. Bădițoiu, D. Lungeanu, R. Dobrevska, E. Szilagy, L. Raka, L. Markovic-Denic, S. Brusaferro
*University of Medicine and Pharmacy Timisoara, Romania

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 85-88


資源が限られた欧州諸国において医療関連感染症の極めて重要な側面を評価し、効果的な感染制御のために取り組むべき最優先課題を正確に特定することを目的としたパネル調査の結果を報告する。質問票をデザインし、ブルガリア、ハンガリー、コソボ、ルーマニア、セルビアの患者安全のため感染予防を促進する欧州ネットワーク European NETwork to promote infection prevention for patint safety 各国代表らから情報を収集した。収集したデータに基づき、共通する重要な背景は既存の法律の厳密な実施、標準化された研修、政治的関与であり、それがこの地域の医療制度を国際的に推奨される感染予防の標準とそろえるために学ぶべき実例であると我々は結論づける。

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監訳者コメント
医療資源が限られた国における感染対策は、それがおおよそ満たされた国々での感染対策に比べ、疾病の疫学・特徴の相違のみならず、直面する課題自体にも大きな違いがある。患者安全に関する東欧・中欧各国の代表を対象とした質問票による調査ではあるが、解決すべき課題について共通認識があることが浮き彫りになった。課題解決に向け、国際間の協調・協力をいかに行っていくのかも、今後注目されるところである。

歯科病棟から感染したレジオネラ症:症例研究

Legionellosis acquired through a dental unit: a case study

C. Schönning*, C. Jernberg, D. Klingenberg, S. Andersson, A. Pä äjärvi, E. Alm, E. Tano, B. Lytsy
* Public Health Agency of Sweden, Sweden

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 89-92


2012 年に、スウェーデン・ウプサラの病院で免疫不全の高齢男性患者がレジオネラ症で死亡した。この患者は、潜伏期間中に当該病院の歯科病棟を受診していた。口すすぎ用コップ給水装置から 2,000 コロニー形成単位/L の濃度でレジオネラ(Legionella)属菌が分離された。患者および歯科病棟からの分離株は、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)血清群 1、サブグループ Knoxville および ST9 であった。パルスフィールド・ゲル電気泳動および全ゲノムシークエンシングにより、分離株は共通の原因に由来することが強く示唆された。本報告は、歯科病棟から感染したレジオネラ症の数少ないケースのうちの 1 つである。

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監訳者コメント
気管支肺胞洗浄液からの分離株と、口すすぎ用給水装置からの分離株とが、ゲノム全体でみても極めて相同性が高かったことから、歯科での使用水を介したレジオネラの伝播について、より強い証拠を得ることができた事例である。これまでの報告では解析結果に疑義があり、ここまで精密な情報が得られたのは初めてとはいえ、今後、同様の事例の集積とさらなる解析が進むことに期待したい。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.