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中国、天津市の集中治療室の医療スタッフにおける多剤耐性グラム陰性細菌の検出率、分布および分子疫学(2007 から 2015 年)

Presence, distribution and molecular epidemiology of multi-drug-resistant Gram-negative bacilli from medical personnel of intensive care units in Tianjin, China, 2007-2015

H. Liu*, CN. Fei, Y. Zhang, GW. Liu, J. Liu, J. Dong
*Tianjin Centres for Disease Control and Prevention, China

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 101-110


背景
多剤耐性グラム陰性細菌は、集中治療室(ICU)における院内感染症の重要な原因となっている。

目的
中国、天津市の ICU 69 施設の医療スタッフおよび非医療スタッフから分離された多剤耐性グラム陰性細菌の分子疫学を検討すること。

方法
2007 年 4 月から 2015 年 10 月にわたり、医療スタッフ 1,185 名および非医療スタッフ 133 人から採取した鼻腔および手指スワブ 2,636 個について、グラム陰性細菌(多剤耐性グラム陰性細菌を含む)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)およびバンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci;VRE)の培養を行った。14 の抗菌薬に対するグラム陰性細菌の感受性を判定し、80 の多剤耐性グラム陰性細菌の特徴をパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)および系統樹解析を用いて明らかにした。

結果
合計で 301 のグラム陰性細菌が医療スタッフ 269 名で同定され、これには医療スタッフ 104 名から検出された 109 の多剤耐性グラム陰性細菌分離株が含まれた。42 のグラム陰性細菌が非医療スタッフ 39 人から分離され、これには多剤耐性グラム陰性細菌が検出された非医療スタッフ 20 人が含まれた。全体で医療スタッフの 8.8%が多剤耐性グラム陰性細菌を保菌しており、MRSA(0.9%)および VRE(0.1%)の保菌率をはるかに上回っていた。3 組の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)および 1 組のエンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)は互いに識別不能であったが、検査を行った分離株の大部分は独自の PFGE プロファイルを有していた。

結論
多剤耐性グラム陰性細菌の検出率は天津市の ICU の医療スタッフにおいて高く、VRE および MRSA の検出率をはるかに上回っていた。多剤耐性グラム陰性細菌の鼻腔保菌率には医療スタッフと非医療スタッフの間で差はなかったが、非医療スタッフは多剤耐性グラム陰性細菌の手指保菌を有する割合が有意に高かった。PFGE プロファイルから、スタッフ間で共通に認められた多剤耐性E. aerogenes および肺炎桿菌の分離株は極めて限られていたことが示された。

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監訳者コメント
本研究では多剤耐性グラム陰性細菌が多様に院内ではびこっており、医療従事者の手指はそのるつぼであることが示された。日常的な医療従事者の手指衛生の徹底が求められる。

医療環境における院内伝播の可能性を伴う肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネマーゼ(KPC)産生腸内細菌科細菌獲得および感染のリスク因子:症例対照研究

Risk factors for KPC-producing Enterobacteriaceae acquisition and infection in a healthcare setting with possible local transmission: a case–control study

K.M. Cronin*, Y.S. Poy Lorenzo, M.E. Olenski, A.E. Bloch, K. Visvanathan, M.J. Waters, K.L. Buising
*St Vincent’s Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 111-115


背景
オーストラリアにおける肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネマーゼ(KPC)産生肺炎桿菌の報告はこれまでまれであり、検出率の高い国々からの旅行者から散発的に国内に入ってきた症例であった。

目的
研究対象施設において、オーストラリアで初の KPC 産生肺炎桿菌アウトブレイクを報告した。本研究の目的は、マッチド症例対照研究を行って、KPC 産生肺炎桿菌の保菌および感染のリスク因子を同定することであった。

方法
本研究には、2012 年 1 月から 2015 年 9 月にわたり KPC 産生肺炎桿菌の保菌または感染を有する全入院患者を組み入れた。

結果
KPC 産生腸内細菌科細菌(KPC 産生肺炎桿菌の 31 症例を含む)の 34 症例を対照 136 例とマッチさせた。KPC 産生肺炎桿菌獲得と関連する変数には、過去 12 か月間における入院期間 28 日超、バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci;VRE)保菌の既往、中心静脈カテーテル(CVC)、消化器疾患および侵襲的処置が含まれた。広域スペクトル抗菌薬への曝露も、有意なリスク因子であることが分かった。多変量解析により、KPC 産生肺炎桿菌獲得と関連した独立した 3 つの因子は、過去 12 か月間における入院期間 28 日超(オッズ比[OR]23.6、95%信頼区間[CI]4.9 ~ 113.3)、CVC の留置(OR 15.4、95%CI 2.7 ~ 86.9)、および VRE 保菌の既往(OR 6.0、95%CI 1.6 ~ 23.2)であった。海外渡航歴を有した患者はごく少数であった。

結論
本研究から、院内アウトブレイクの場合、患者が長期間にわたり院内曝露をするほど KPC 産生肺炎桿菌を獲得する割合が高くなることが示され、KPC 産生肺炎桿菌獲得のリスク因子は VRE 保菌のリスク因子と共通である可能性が示唆された。海外渡航者を対象とした院内スクリーニング戦略は、多くの症例を見逃す可能性がある。本研究の結果は、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌に対するスクリーニング方針にとって有用な情報となるであろう。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
KPC 産生肺炎桿菌も VRE も腸内に潜むという観点からは共通で有り、リスク因子が類似している点も納得がいく。在院日数の長期化が保菌のリスクであるのはおそらくその他の耐性菌に共通する因子であろう。

スペインの病院における OXA-48 産生多剤耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)分離株の拡散および臨床的意義

Dissemination and clinical implications of multidrugresistant Klebsiella pneumoniae isolates producing OXA-48 in a Spanish hospital

A. Madueño*, J. González García, S. Fernández-Romero, J. Oteo, M. Lecuona
*Hospital Universitario de Canarias, Spain

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 116-122


背景
肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)分離株による医療関連感染症は増加しつつあり、患者を治療するために現在利用可能な効果的な抗菌薬はほとんどない。

目的
2013 年 10 月から 2015 年 12 月の期間について、スペインの 3 次病院における OXA-48 産生肺炎桿菌の獲得および拡散にみられる疫学、分子的機序、臨床的特徴および転帰を評価すること。

方法
臨床サンプルにおける OXA-48 産生肺炎桿菌獲得患者の臨床的、人口統計学的、および微生物学的データを医療記録から収集した。カルバペネマーゼ遺伝子を PCR で検出した。遺伝的関係を、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)および複数部位塩基配列タイピング(MLST)により明らかにした。

結果
全体で、臨床サンプルにおいて OXA-48 産生肺炎桿菌獲得エピソードが 116 件特定された。最も高頻度にみられた種類の感染症は、尿路感染症(N = 43、42%)、2 次血流感染症(N = 18、17%)、および手術部位感染症(N = 17、17%)であった。感染患者の 4 分の 1 超(28%)が院内で死亡した。感染患者(N = 90、78%)において、感染症の大部分は院内感染症(N = 70、88%)に分類された。多剤耐性を示した OXA-48 産生肺炎桿菌分離株が多く、コリスチン(86%)、ゲンタマイシン(69%)およびアミカシン(59%)に対する感受性が最も高かった。ほとんどの分離株(87%)は、主要クラスターに含まれていた。分離株 7 株(N = 8、88%)は同一のアレルプロファイルを示し、ST15 と関連していた。クラスター P8 に含まれた分離株のみが ST29 と関連した。本研究の結果から、当院における主要クローンである ST15 による OXA-48 産生肺炎桿菌の高い拡散率が確認された。OXA-48 産生肺炎桿菌感染症は、高い死亡率と関連し、主として院内感染症であった。

結論
本研究は、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌の拡散を制御する上で、積極的サーベイランスプログラム、特に再入院に焦点を当てたプログラムの重要性を強調している。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
近年、多剤耐性菌の院内感染型の特徴を認知するため MLST 型が多用されている。施設内伝播している MLST 型が地域的な院内流行株なのかを調査し、現場対応をする必要がある。施設内で広がりやすい株(院内感染型)の迷入は病院にとっての危機である。

リアルタイム PCR 法による慢性腎疾患患者の直腸スワブからのカルバペネム耐性微生物の定着の検出

Detection of colonization by carbapenem-resistant organisms by real-time polymerase chain reaction from rectal swabs in patients with chronic renal disease

T.F.T. Rezende*, A.M. Doi, M.G. Quiles, A.C.C. Pignatari, S. Manfrendi, C. Grothe, M. Taminato, D.A. Barbosa
*Federal University of São Paulo/UNIFESP/Brazil, Brazil

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 123-128


背景
カルバペネム耐性微生物の定着は、医療関連環境において、感染のリスクを増大させ抗菌薬耐性の蔓延に寄与する重大な問題である。カルバペネム耐性微生物への感染および伝播のリスクは慢性腎不全患者で高く、サーベイランス培養が感染制御プログラムの要素として推奨されている。

目的
慢性腎不全患者の大規模集団における、直腸スワブを用いたカルバペネム耐性微生物の定着の評価において、表現型による診断法と分子的診断法を比較すること。

方法
大学の 3 次医療施設の慢性腎臓病患者 546 例から、異なる 2 時点で、計 1,092 の直腸スワブ検体(ESwab)を採取した。患者は、保存的治療群(129 例)、透析療法群(217 例)、および移植群(200 例)の 3 群に分けた。カルバペネマーゼ産生の表現型スクリーニングおよび分子的スクリーニングとして、発色性の(CHROMagar)KPC アガーと、コード化したカルバペネマーゼ遺伝子を標的としたマルチプレックスリアルタイム PCR(qPCR)法を検証した。また、発色性アガー上で発育した分離株について、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法および従来型の PCR 法による分析を行った。

結果
発色性アガーでは、1,092 の検体のうち 150(13.7%)がカルバペネム耐性微生物検出検体として同定された。従来型 PCR 法では、26 検体(2.4%)のみが KPC 型と確認された。スワブ検体から直接 qPCR 法を行った結果では、31 検体(2.8%)が KPC 型、39 検体(3.6%)が GES 型、3 検体(0.3%)が SPM 型陽性であった。カッパ係数は 0.256 であった。

結論
qPCR 法では、培養法に比べてより迅速に結果が得られ、医療現場、とくに慢性腎臓病患者におけるカルバペネム耐性微生物の拡散を抑制するための対策と介入を、迅速に実行することが可能となる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
慢性腎臓病患者 546 例に対し、入院時と 7 から14 日後の 2 回、直腸スワブで検体を採取し、カルバペネム耐性菌の存在を確認した論文である。保存的治療群、透析療法群、および移植群の 3 群に分けての解析では、移植群が一番保菌率が高く、次いで、保存的治療群であった。さらに、初回採取検体よりも 1 から 2 週間後に採取した 2 回目の検体での保菌率が高くなっていたことは気になるところである。

中国における医療関連感染の負担:東莞市の 2015 年点有病率調査の結果

Burden of healthcare-associated infections in China: results of the 2015 point prevalence survey in Dong Guan City

J. Wang*, J. Hu, S. Harbarth, D. Pittet, M. Zhou, W. Zingg
*University of Geneva Hospitals and Faculty of Medicine, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 132-138


背景
医療関連感染(HCAI)は、健康への重大な脅威である。中国での HCAI および抗菌薬の使用に関するデータは、英語文献ではほとんど報告されていない。

目的
東莞市における 2015 年点有病率調査(PPS)で得られた HCAI 有病率および抗菌薬の使用状況を記述し、考察すること。

方法
2015年、Dong Guan (City) Nosocomial Infection Control and Quality Improvement Centre は、東莞市の 2 次および 3 次病院において、年 1 回の PPS を実施した。調査は 1 暦日に行った。

結果
37 の 2 次病院および 14 の 3 次病院が、それぞれ 9,679 例および 11,641 例の患者を評価した。計 616 例の患者が 681 件の HCAI を有した。2 次病院、3 次病院、および全病院におけるプールした HCAI 有病率(95%信頼区間)はそれぞれ、2.3%(2.0 ~ 2.6)、3.4%(3.0 ~ 3.7)、および 2.9%(2.6 ~ 3.1)であった。下気道感染症、尿路感染症(UTI)、手術部位感染(SSI)、および血流感染を合わせると、HCAI の 73.1%を占めた。下気道感染症は、最も多く診断された HCAI であり(35.5%)、次いで UTI(17.0%)、SSI(15.1%)であった。グラム陰性菌が最も多く分離され(68.1%)、次いでグラム陽性菌(19.3%)、真菌(10.9%)であった。最も多くみられた病原菌は大腸菌(Escherichia coli)で(14.8%)、アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)は10.9%を占めた。計 34.8%の患者が、1 剤以上の抗菌薬投与を受けていた。

結論
プールした有病率は、最近の中国での他の研究でみられた範囲内であったが、欧州および米国での先行報告と比較すると低かった。治療目的での抗菌薬の使用は、欧州と同様であったが、中国での先行報告よりも少なく、また米国よりも少なかった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
有病率調査(PPS;point prevalence survey)は、ある時点での感染症患者、抗菌薬使用状況、デバイス使用状況などを複数の施設や地域で一斉に調査し、過去のデータや施設・地域間で比較する手法である。Snap Shot survey ともよばれる。一定期間継続してデータを集める通常のサーベイランスに比較し、調査者の負担が軽くなることがメリットである。

ブラジルの急性期病院における医療関連感染の複数の州での調査

Multi-state survey of healthcare-associated infections in acute care hospitals in Brazil

C. Magno Castelo Branco Fortaleza*, M.C. Padoveze, C.R. Veiga Kiffer, A.L. Barth, Irna C. do Rosário Souza Carneiro, H.I. Garcia Giamberardino, J.L. Nobre Rodrigues, L. Santos Filho, M.J. Gonçalves de Mello, M. Severino Pereira, P. Pinto Gontijo Filho, M. Rocha, E.A. Servolo de Medeiros, A.C. Campos Pignatari
*Faculdade de Medicina de Botucatu, Brazil

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 139-144


背景
ブラジルのような発展途上国では、医療および地域の発展が一様ではなく、社会的な不平等や変動が国内に生じている。医療関連感染(HCAI)は、このような国々で公衆衛生上の課題となっている。

目的
ブラジルの病院標本に含まれた病院における HCAI の有病率を記述すること。

方法
2011 年から 2013 年に実施した有病率調査では、ブラジルの 5つの地域の病院 152 施設を登録した。病院の規模により、大規模(200 床以上)、中規模(50 ~ 199 床)、小規模(50 床未満)に分類した。病院は、11 の紹介大学病院を除き、政府の医療現場データベースからランダムに選択した。調査の時点で調査対象病院に 48 時間を超えて入院していたすべての患者を含めた。研修を受けた疫学の専門知識を有する看護師が、各病院を訪問し、HCAI、被験者の人口統計学的データ、および侵襲的手技に関するデータを収集した。データの解析には単変量および多変量解析を用いた。

結果
全体としての HCAI の有病率は 10.8%であった。最も多くみられた感染部位は、肺炎(3.6%)および血流感染(2.8%)であった。手術部位感染がみられたのは標本全体の 1.5%の被験者であったが、これは手術を受けた被験者の 9.8%であった。病院の規模別の有病率は、紹介病院(12.6%)および大規模病院(13.5%)のほうが高く、中規模および小規模病院の有病率はそれぞれ、7.7%および 5.5%であった。地域による差はわずかであった。集中治療室入室患者、侵襲的デバイスの使用者、および両端の年齢層(新生児、乳児および高齢者)の患者で HCAIのリスクが高かった。

結論
有病率は、地理的地域および病院の規模にかかわらず高かった。HCAI は、発展途上国の公衆衛生計画における優先事項のひとつであることは間違いない。

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監訳者コメント
まず標準的な手法で疫学調査を行い、現状を把握する。これ抜きでは有効な対策を取ることは難しい。発展途上国の限られた資源の中で、どのように改善していくのか、大変興味深い。

ポーランドの成人集中治療室における医療関連感染症の有病率:ポーランドでの 2012 年から 2014 年における ECDC の病院関連感染および抗菌薬使用の点有病率調査の要約データ

Prevalence of healthcare-associated infections in Polish adult intensive care units: summary data from the ECDC European Point Prevalence Survey of Hospital-associated Infections and Antimicrobial Use in Poland 2012-2014

A. Deptuła*, E. Trejnowska, G. Dubiel, M. Zukowski, A. Misiewska-Kaczur, T. Ozorowski, W. Hryniewicz
*Nicolaus Copernicus University in Torun, Poland

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 145-150


背景
感染症は世界的に、集中治療室(ICU)における病状の悪化および死亡の主たる原因である。各国で疫学研究を実施し、サーベイランスおよび予防プログラムの優先順位を明らかにする必要がある。

目的
ポーランドの成人 ICU 入室患者を対象に 3 年にわたり病院感染(hospital-acquired infection;HAI)の疫学を研究すること。

方法
欧州疾病予防管理センター(ECDC)の欧州急性期病院における医療関連感染および抗菌薬使用の点有病率調査のプロトコールに従って、急性期病院 160 施設の 39,318 例の患者を対象にデータを収集した。この最初のデータベースから成人 ICU 患者(945 例)のデータを抽出し、さらなる解析の対象とした。

結果
HAI は 370 例(39%)で認められ、430 件の HAI エピソードが記録された。最も多く見られた HAI は呼吸器感染症(45%)であり、その多くは腸内細菌科細菌およびグラム陰性非発酵菌に起因した。これらの感染症の大半(87%)はデバイス関連である可能性が高かった。血流感染 61 件中 51%は、カテーテル関連であった。これらの血流感染は主にコアグラーゼ陰性ブドウ球菌に起因した。手術部位感染 57 件中、42%は臓器/腔、33%は切開部深層、25%は切開部表層に分類された。主な微生物は腸内細菌科細菌および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)であった。尿路感染症 50 件中 96%はデバイス関連であった。

結論
ポーランドの成人 ICU 患者の HAI 有病率は、同様の研究で報告された値よりも高いが、手法の違いによる影響が一部あることが考えられる。デバイス関連感染の割合がきわめて高いため、ターゲットを絞ったサーベイランスおよび予防プログラムの全国的な導入を急ぐ必要がある。

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監訳者コメント
Point prevalence survey は近年医療関連感染症の分野でしばしば使用されるサーベイランスの手法である。比較的少ない労力で多施設で行うことができ、また経時的な比較に向いている。日本でも医療関連感染症や抗菌薬の使用状況について同様の手法を用いた研究が行われており、これから徐々にデータが出てきて諸外国、あるいは病院間での比較が行われるようになるだろう。

スコットランドの腎臓病棟 2 施設におけるニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jirovecii)肺炎のアウトブレイクの研究

Investigation of outbreaks of Pneumocystis jirovecii pneumonia in two Scottish renal units

T. Inkster*, S. Dodd, R. Gunson, L. Imrie, E. Spalding, S. Packer, C. Deighan, C. Daly, J. Coia, T. Imtiaz, C. McGuffie, R. Wilson, A.M. Bal
*Western Infirmary, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 151-156


ニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jirovecii)は日和見病原体として認識されている。近年、P. jirovecii のヒトからヒトへの伝播が実証されている。しかし、P. jirovecii 伝播を促進する疫学的背景が十分に理解されていないため、P. jirovecii 感染症のアウトブレイクは十分に明らかにされていない。本稿では、西スコットランドの腎移植患者における P. jirovecii 肺炎の 2 つのアウトブレイクを報告する。地理的に隣接した 2 つの場所で、患者計 25 例が感染した。主要タイプとしてアレル B、ならびにアレル A3 が同定された。症例のクラスタリングの正確な理由を明らかにすることはできなかったが、1 つのアウトブレイクでは外来クリニック環境が注目された。スルファメトキサゾール・トリメトプリムの予防投与により両アウトブレイクは終息した。予防投与を受けた標的集団は、2 つのアウトブレイクで異なっていた。感染制御チームは、P. jirovecii 肺炎アウトブレイクの可能性について警戒すべきである。

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監訳者コメント
近年ニューモシスチス・イロベチイのアウトブレイクが様々な環境で報告されており、システマティックレビューなども行われるようになっている。患者を(陰圧)個室に入室させたり、少なくとも免疫抑制患者との同室は避けるよう指導している専門家もいる。リスクのある患者には ST 合剤の予防投与を行うことも重要である。

腎医療の現場における C 型肝炎ウイルスの伝播を特定するためのゲノムシークエンシングの利用

Use of genome sequencing to identify hepatitis C virus transmission in a renal healthcare setting

M.I. Garvey*, C.W. Bradley, K.L. Holden, P. Hewins, S.-L. Ngui, R. Tedder, P. Jumaa, E. Smit
*Queen Elizabeth Hospital Birmingham, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 157-162


背景
C型肝炎ウイルス(HCV)感染は、世界的に健康上の重大な負担となっている。腎医療ユニット滞在中に HCV 感染歴のなかった患者 1例に、HCV セロコンバージョンが認められた。

目的
医療現場での HCV 伝播の原因を仮定するためのシークエンシングの使用と、その結果が我々のアウトブレイク調査に及ぼした影響を報告すること。

結果
感染制御調査に基づき、伝播の事象は、血液による病棟の環境汚染と、その後の HCV 感染患者への静脈内介入処置からの播種によるものと推測された。我々は、アウトブレイク調査の結果を踏まえて、導入する介入策を検討した。

結論
医療関連 HCV 感染では、シークエンシングをアウトブレイク調査のルーチン手順に取り入れるべきである。

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監訳者コメント
透析室における HCV 感染をウイルスゲノムの遺伝子配列の相同性によって評価した研究である。記載されたアウトブレイク調査の詳細も参考になる。

タイの国立第 3 次病院の小児科病棟の医療従事者におけるヒトパルボウイルス B19 の院内アウトブレイク

Human parvovirus B19 nosocomial outbreak in healthcare personnel in a paediatric ward at a national tertiary referral centre in Thailand

S. Sungkate*, W. Phongsamart, S. Rungmaitree, K. Lapphra, O. Wittawatmongkol, V. Pumsuwan, N. Wiruchkul, S. Assanasen, Y. Rongrungruang, N. Onlamoon, N. Horthongkham, W. Lermankul, N. Kongstan, K. Chokephaibulkit
*Faculty of Medicine Siriraj Hospital, Mahidol University, Thailand

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 163-167


背景
パルボウイルス B19 の院内アウトブレイクが報告されているが、医療従事者間での発生はまれである。妊娠中の医療従事者の易感染性は重要な懸念事項であった。

方法
医療従事者間のパルボウイルス B19 のアウトブレイクは小児科病棟で報告され、アウトブレイクに曝露した医療従事者および患者全員を対象に横断的な血清学的研究が実施された。急性感染は、ポリメラーゼ連鎖反応またはパルボウイルス B19 IgM 抗体の陽性によって診断された。

結果
アウトブレイク血清学的研究の対象となった医療従事者 48 名(妊婦 3 名)および患者 22 例のうち、医療従事者 11 名(23%)および患者 2 例(9%)で急性感染が認められた。このうち症状が発現した医療従事者は 6 名であったが、患者で症状が発現した者はいなかった。臨床症状には、掻痒性皮疹(100%)、皮疹消失後の関節痛(67%)などがあり、皮疹の発症期間の中央値は 4 日間であった。医療従事者の 40%および患者の 50%は、パルボウイルス IgG 抗体が陽性であり、免疫を獲得していたことを示していた。急性感染の医療従事者および感染していないが易感染性の医療従事者は、免疫を獲得していた医療従事者よりも若かった(平均年齢 32.2 歳対 40.5 歳、それぞれP = 0.003)。発病率は、易感染性の医療従事者で 38%、易感染性の患者で 18%であった。アウトブレイクは、厳格な飛沫予防策および有症状の医療従事者の隔離を実施してから 2 週間以内に終息した。

結論
パルボウイルス B19 感染は、医療従事者の高い発病率を伴う院内アウトブレイクを引き起こす可能性がある。飛沫予防策によるアウトブレイク制御はきわめて有効であった。

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監訳者コメント
パルボ B19 ウイルス感染症は、「伝染性紅斑」(別名りんご病)と呼ばれ小児では頬に出現する蝶翼状の紅斑を特徴とする。成人の 30 ~ 90 %は既感染である。潜伏期間は 10 から 20 日程度で、発疹出現 7 から 10 日前に微熱や感冒症状があり、ウイルス血症を引き起こし、感染性が最も強い時期である。発疹出現時には感染性(飛沫および接触感染)はほぼ低下している。したがって、微熱や感冒症状があれば、流行状況を考慮して、本感染症の可能性を含め、職員の就業制限などの早期の感染対策が必要である。

健常新生児室における髄膜炎を伴うエリザベトキンギア・メニンゴセプティカ(Elizabethkingia meningoseptica)による敗血症のアウトブレイク★★

Outbreak of Elizabethkingia meningoseptica sepsis with meningitis in a well-baby nursery

I-C. Tai*, T-P. Liu, Y-J. Chen, R-I. Lien, C-Y. Lee, Y-C. Huang
*Chang Gung Memorial Hospital, Taiwan

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 168-171


2012 年 3 月から 5 月に、地域産科病院で出生した 3 例の新生児が、生後 10 日未満で髄膜炎を伴うエリザベトキンギア・メニンゴセプティカ(Elizabethkingia meningoseptica)(以前のChryseobacterium meningosepticum)敗血症を発症したが、3 週間から 6 週間のシプロフロキサシン+バンコマイシンまたはピペラシリン・タゾバクタムの静脈内投与による治療が成功した。新生児室および分娩室から採取した 24 の環境サンプルのうち 4 サンプル(16.6%)で、この細菌が検出された。臨床分離株のすべて、ならびにおしゃぶりおよびおしゃぶりカバーの保管箱からの 2 分離株は、遺伝学的に同一であった。保管箱をステンレス製の箱に替え、定期的なオートクレーブ滅菌処理を行った結果、新たな E. meningoseptica 感染の症例は生じなかった。

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監訳者コメント
エリザベトキンギア・メニンゴセプティカは、グラム陰性桿菌で土壌や水などの自然界に生息する細菌で、本菌による院内感染は 1,000 入院患者あたり 0.007 ~ 0.039 とまれであるが、医療処置の多い NICU/ICU で発生しやすく、特に新生児の髄膜炎が報告されている。耐性傾向が強く、抗菌薬の選択が難しく、本菌による重症感染症では死亡率 50%ととも報告されている。本例は一般の新生児室で、医療処置をされていない新生児に発生した集団発生であり、環境汚染(おしゃぶり)から新生児の髄膜炎が発生したと推定されている。過去にこの施設では同一児には同じおしゃぶりを消毒して再使用していたが、この発生を契機に、英国の家庭および病院における母乳作成等に関するガイドライン(Journal of Hospital Infection 92 (2016) 213-221)にしたがって、おしゃぶりは 24 時間毎に交換し、決して消毒して再使用しないとした。

飲用水限外ろ過用給水口フィルターの実験的比較

Experimental comparison of point-of-use filters for drinking water ultrafiltration

M. Totaro*, P. Valentini, B. Casini, M. Miccoli, A.L. Costa, A. Baggiani
*University of Pisa, Italy

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 172-176


背景
シュードモナス(Pseudomonas)属菌、レジオネラ(Legionella)属菌などの水系病原体は、化学的消毒にもかかわらず病院用水ネットワークに残存する可能性がある。給水口ろ過法は、そうした病原体への曝露にさらされている高リスク区域において利用できる物理的制御策である。新技術により、フィルターの寿命が延長し、水の限外ろ過用に蛇口部中空糸フィルターが利用できるようになっている。

目的
冷水に使用する有効期限内の給水口フィルターを比較すること。

方法
蛇口部中空糸フィルター(フィルター A)、シャワー部中空糸フィルター(フィルター B)、蛇口部膜フィルター(フィルター C)は、標準的細菌株(緑膿菌[Pseudomonas aeruginosa]DSM 939 およびブレバンディモナス・デミニュータ[Brevundimonas diminuta]ATCC 19146)を用いた異なる 2 組の試験において汚染が認められ、採水口に設置された。毎日、各蛇口から水 100 L を流した。流す前後に、水 250 mL を採取し、微生物分析を行った。

結果
フィルター C には高い微生物保持能力があった。フィルター B は少数の Brevundimonas 属菌のみを放出した。一方、フィルター A では両微生物の保持不良が示された。

結論
中空糸フィルターは良好な微生物保持を示さなかった。採水口フィルターはすべて、その効果を確保するため構造パラメータの適切なメンテナンスが必要である。

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監訳者コメント
病院内の給水設備の水まわりには多数の日和見感染病原体が存在しているが、完全に給水系統全体を消毒することは不可能である。給水の蛇口にフィルター(0.2μmのポアサイズ)を装着することで細菌を濾過し、給水される水を無菌化することができ、免疫能低下患者へも簡便に無菌的な水を供給できる。これまでのフィルターは使用期限が短く、流量も不十分で、さらに経費もかさむというデメリットが大きい。本論文では、長期使用の可能なフィルターについて検討したが、フィルター毎にその性能が異なるため、定期的に濾過性能が維持されているかの評価を実施する必要がある。

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)バイオフィルム関連感染症治療における選択的酵素製剤使用の可能性

Potential use of targeted enzymatic agents in the treatment of Staphylococcus aureus biofilm-related infections

S. Hogan*, M. Zapotoczna, N.T. Stevens, H. Humphreys, J.P. O’Gara, E. O’Neill
*Royal College of Surgeons in Ireland, Beaumont Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 177-182


黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、医療関連感染症の主な原因である。黄色ブドウ球菌の植込み型医療器材表面および宿主組織に対する接着・蓄積能力は、この病原体が引き起こす感染症の治療を困難にしている。現行の治療は、表面に接着する黄色ブドウ球菌に対する効果に限界があることが示されているが、バイオフィルム分解酵素剤(以下分解剤)を追加することによって効果が増強される可能性がある。本研究は、メチシリン耐性およびメチシリン感受性の黄色ブドウ球菌株によって形成されたバイオフィルムに対する、dispersin B、リソスタフィン、α - アミラーゼ、V 8 プロテアーゼ、およびセラペプターゼの酵素製剤を単独またはバンコマイシンおよびリファンピシンとの併用下で評価した。どちらの抗菌薬も、いずれかの分解剤との併用下で効果が増強された。リソスタフィンおよびセラペプターゼが、調査したすべての菌株に対して最も有効な分解剤であった。これらのデータから、バイオフィルム分解剤と抗菌薬との併用によって、黄色ブドウ球菌バイオフィルム関連感染症の治療選択肢が増える可能性が示されている。

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監訳者コメント
黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌は、人工物表面にバイオフィルムを形成するため、バイオフィルム感染症を発症すると人工物の抜去以外に適切な治療方法がないのが現状である。本実験ではこれらのバイオフィルム構造を分解する酵素製剤と抗菌薬を併用することで相乗効果が in vitro において認められたことから、新たなバイオフィルム感染症治療への可能性を報告している。

ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)医療関連感染症:2 つの主な病原遺伝的系統の存在

Stenotrophomonas maltophilia healthcare-associated infections: identification of two main pathogenic genetic backgrounds

C. Corlouer*, B. Lamy, M. Desroches, J. Ramos-Vivas, E. Mehiri-Zghal, O. Lemenand, J-M. Delarbre, J-W. Decousser, on behalf of the Collège de Bactériologie-Virologie-Hygiène des Hôpitaux de France
*University Hospital Henri Mondor, France

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 183-188


背景
ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)は、医療関連感染症の原因となる日和見多剤耐性菌である。院内感染制御戦略および保菌者や環境中のリザーバーの管理については依然として異論がある。

目的
入院中の感染患者における S. maltophilia 株の集団構造を明らかにし、より高水準の感染制御策が必要となる、高病原性が推定されるサブポピュレーションを同定すること。

方法
地理的に離れた 18 病院の様々な臨床材料から得られた多様なヒト分離株 83 株の表現型、遺伝子型の特徴を multi-locus sequence typing(MLST)法を用いて明らかにした。

結果
優勢な配列型(ST)も、増加している配列型も、いずれも同定されなかった。型別可能であった 80 株のうち、これまで報告された ST であったのは 29%のみであり、特に ST5(6 株)と ST4/26/31(それぞれ 2 株)であった。ST の分布および、MLST に用いた遺伝子を連結した塩基配列に基づいて作成した系統樹では、地理的あるいは臨床的な起源を明らかにしたり、抗菌薬感受性によるクラスターを説明したりすることはできなかった。今回の80 株に、MLST データベースに掲載されている 173 株の ST プロファイルを加えて系統樹を作成したところ、S. maltophilia には高い遺伝的多様性があること、そしてこれまでに報告された genogroup の系統関係と同様の傾向を示すこと、さらに 41%(80 株中 33 株)を占めることから分かるように genogroup 6 が優勢であることが確認された。予想外にも、genogroup 2 は 2 番目に優勢で、株の 16%(80 株中 13 株)はこの genogroup に属していた。genogroup 2と6は、呼吸器感染患者由来株の 57%(35 株中 20 株)、嚢胞性線維症患者由来株の 75%(12 株中 9 株)を占めていた。

結論
MLST の結果にさらにデータベースの配列を加えることで、医療関連感染症の原因となっていた株の中で、一部の genogroup が多く出現していたことが確認された。患者や環境のリザーバーから分離された多数の病原性株に対し、選択的に感染制御策を実施するには、株のgenogroup を決定することが推奨される。

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監訳者コメント
S. maltophiliaが遺伝的多様性に富んでいることは,これまでの分子疫学解析でも示されてきたが、今回フランス・チュニジアを中心に行われた本研究でも、ほぼそれを示す結果となった。しかしながら genogroup 単位でみれば優勢のグループが存在することが追加の解析で明らかとなり、特にこの 2 つのグループについて、病原性や伝播性など詳細な解析を行うとともに、有効な感染制御策を検討していく必要性があるといえる。

手術時手指消毒におけるプロパノールベースの擦式製剤に含有されるエチル硫酸メセトロニウムの抗菌効果の欠落

Lack of antimicrobial efficacy of mecetronium etilsulfate in propanol-based hand rubs for surgical hand disinfection

G. Kampf*
*Infection Control Science, Germany

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 189-191


本研究は、エチル硫酸メセトロニウムが手術時手指消毒の全体的な有効性に寄与するかどうかを明らかにすることを目的に施行された。3 種類の擦式製剤(イソプロパノール 45%、n-プロパノール 30%)を盲検下で 1.5 分間使用し、EN 12791 の標準手法と比較した(クロスオーバーデザイン)。そのうち 1 つの市販擦式製剤は 0.2%エチル硫酸メセトロニウムを含有し、残り 2 つの擦式製剤は 0.2%エチル硫酸メセトロニウムを含有する以外は同一成分の製剤であった。いずれの擦式製剤も、標準手法と比較して 3 時間後の菌数(log10)は有意に減少しなかった(平均 1.72[標準偏差 1.15])。擦式製剤に含有されるエチル硫酸メセトロニウムが抗菌効果に寄与しているかどうかは疑問である。

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監訳者コメント
エチル硫酸メセトロニウム(MES)は界面活性剤に分類され、非特異的な抗菌効果を期待し、欧州・中東・インドで擦式手指消毒薬に含有されている。非揮発性である点は、皮膚細菌叢への微生物の再付着を遅らせる意味から手術時の手指衛生に有利とされてきたが、今回の検討では 3 時間観察しても MES による菌数の付加的減少効果は認められなかった。MES が多量に用いられている国もあり、環境への影響を減らし、抗微生物効果を保つ意味でも、使用制限に踏み切った方がよいと筆者は考察している。

「教育検査室」技師の検査室の安全および廃棄物管理に対する知識、姿勢、および実践:パイロット介入研究

Knowledge, attitude, and practice (KAP) of ‘teaching laboratory’ technicians towards laboratory safety and waste management: a pilot interventional study

A.-H. El-Gilany*, S. El-shaer, E. Khashaba, S.A. El-dakroory, N. Omar
*Mansoura University, Egypt

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 192-194


エジプトのマンスーラ大学医学部で働く検査技師 20 名を対象に疑似実験的研究を実施した。検査室ベストプラクティス手順に関する教育プログラムに参加させ、その介入前と2 か月後に検査技師の知識、姿勢、実践に関するスコアを測定した。教育プログラムの内容は検査室の安全および医療廃棄物管理である。実証済みのアラビア語の自記式質問票を用いて評価を行うとともに、介入前後のスコアをノンパラメトリック検定を用いて比較した。研修プログラム実施後には、知識、姿勢、実践のいずれにおいてもスコアの有意な上昇が認められた。

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監訳者コメント
本研究は教育病院の検査室に勤務する臨床検査技師を対象とし、検査室の安全と医療廃棄物管理に関する 3 日間の教育プログラム(1 日 1 ~ 1.5 時間の講義とディスカッション)を行い、質問票を用いてその効果を評価したものである。教育病院として医療安全上のリスク低減を目指した取り組みでもあり、途上国での現在の医療安全に関する認識の高まりを知る上でも興味深い。

2 つの異なる職業サーベイランスシステムから得た鋭利物損傷発生データを安全器材と非安全器材とで比較する

Comparing non-safety with safety device sharps injury incidence data from two different occupational surveillance systems

A.H. Mitchell*, G.B. Parker, H. Kanamori, W.A. Rutala, D.J. Weber
*International Safety Center, USA

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 195-198


針刺し・切創を防止するため、安全器材の使用を求めた「針刺し安全防止法」によって米国労働安全衛生局(OSHA)血液由来病原体基準が 2001 年に修正されている。針刺し・切創事例の経時的な変化には、安全器材/非安全器材の使用率の差が影響を及ぼしている。本研究では、米国の職業上の事故サーベイランスシステム 2 つを比較し、こうしたデータを、他の施設や他の国(法律が整備されているか、医療従事者の鋭利物損傷防止のための政策を立てることを検討しているかのいずれであれ)に一般化できるかどうかを評価した。

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監訳者コメント
本研究では、ノースカロライナ大学病院と、エピネット(EPINet)の 2 つのデーターベースを用い、安全器材の導入による針刺し切創、血液・体液曝露の事例数を解析した。安全器材を用いて生じた針刺し切創事例のうち、およそ 70%で安全機構を働かせていなかったこと、ならびに安全器材による事例数はむしろ最近増えていることが判明した。安全器材の実用に関する教育のみならず、導入時の評価と選択に関してより重点を置くべきであると筆者は結論付けている。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.