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心肺バイパスに用いられるヒータークーラーユニットにおけるマイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)に関連した微生物学的問題とバイオフィルム★★

Microbiological problems and biofilms associated with Mycobacterium chimaera in heaterecooler units used for cardiopulmonary bypass

J. Walker*, G. Moore, S. Collins, S. Parks, M.I. Garvey, T. Lamagni, G. Smith, L. Dawkin, S. Goldenberg, M. Chand
*Public Health England, Porton Down, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 209-220


2013 年以来、開胸心手術時のマイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)伝播においてヒータークーラーユニットが果たす役割が認識されるようになった。その後の研究により、関与するヒータークーラーユニットの広範な普及を反映した顕著な世界的アウトブレイクが明らかにされた。ヒータークーラーユニットは心肺バイパス手術の不可欠な要素であり、その撤去は生命を救う心臓手術の限界に重大な影響を及ぼすことになる。しかし、複数の研究により、多くのヒータークーラーユニットが広範な微生物(M. chimaera など)やバイオフィルムにより汚染されていることが示されている。あるメーカーのヒータークーラーユニットから全世界で回収された M. chimaera 分離株の全ゲノムシークエンシングにより、高いレベルの遺伝的類似性が示され、これに対するもっとも妥当に見える仮説は、共通感染源としてのデバイスのコンタミネーションである。ヒータークーラーユニット内の水タンクの破損部からのバイオエアロゾルの拡散は、最も考え得る伝播経路であり、手術室で超清浄換気を使用していたとしても空気感染細菌が手術野に達していることが示されている。ヒータークーラーユニット内を循環する水の微生物学的な質を調節すること、またバイオフィルム形成を抑制することは、これまで多くの病院にとって大きな課題であった。しかし、コンタミネーション除去戦略の強化は、これまで複数のメーカーにより推奨されており、ヒータークーラーユニットにおける M. chimaera の根絶において必ずしも有効ではないものの、英国の病院からこれらの制御戦略の実施後にM. chimaera 感染症の新規症例の報告はない。病院内の水安全チームは、ヒータークーラーユニットなどの医療機器には、致死的となり得る水系感染症の伝播の媒介物となる可能性があることに注意すべきである。

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監訳者コメント
体外循環を用いての大血管系手術の際に、温度をコントロールする冷温水装置の 1 社の製品に非結核性抗酸菌が汚染している状態で供給されたたため、全世界的にこの機器が使用されている手術現場が非結核性抗酸菌症発症のリスクにさいなまれている。国内にも同社の製品はかなりの台数が使用されており、善処が求められるところである。

中心ライン関連血流感染症の発生率を低減するためのグルコン酸クロルヘキシジンまたはポリヘキサメチレンビグアナイドによるディスクドレッシング:無作為化対照実施可能性試験(CLABSI試験)

Chlorhexidine gluconate or polyhexamethylene biguanide disc dressing to reduce the incidence of central-line-associated bloodstream infection: a feasibility randomized controlled trial (the CLABSI trial)

J. Webster*, E. Larsen, N. Marsh, A. Choudhury, P. Harris, C.M. Rickard
*Royal Brisbane and Women’s Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 223-228


背景
中心ライン関連血流感染(CLABSI)の予防を目的とした複数の抗菌薬含浸ディスクが市販されているが、どのディスクが最も効果的であるかは不明である。

目的
2 種類の抗菌薬含浸ディスクについて CLABSI 予防における実施可能性および安全性を比較・検討すること。

方法
929 床の 3 次紹介病院において単一施設並行群間無作為化対照試験を実施した。中心カテーテルの末梢留置を要する入院患者を、グルコン酸クロルヘキシジンまたはポリヘキサメチレンビグアナイドの含浸ディスクドレッシング群に無作為化した。ドレッシングは 7 日ごとに、または臨床的に必要な場合はより短い間隔で交換した。患者に対し、カテーテル抜去または退院まで追跡調査を行った。実施可能性の評価項目は、登録されたうちで適格となり得る参加者の割合、プロトコール逸脱の割合、追跡不能となった患者の割合とした。臨床評価項目は、CLABSI 発生率、盲検化された感染制御担当者による診断、原因を問わない血流感染症、製品関連の有害事象とした。

結果
スクリーニングを受けた患者 143 例中 101 例(71%)が適格であった。5 例(3.5%)は参加を拒否した。無作為化後に1 例が除外された。グルコン酸クロルヘキシジンの 2 例(2%)でプロトコール逸脱が発生した。追跡不能となった患者はいなかった。3 例(3%)で血流感染症が発生し、2 例(2%)で CLABSI が確認され(各群 1 例)、1 例で粘膜バリア損傷に関連する血流感染症が確認された。合計で 1,217 デバイス日について試験が行われ、結果として CLABSI 発生率は 1,000 カテーテル日あたり 1.64 であった。グルコン酸クロルヘキシジン群の 1 例(1%)でディスクに関連した有害事象が発生した。

結論
ポリヘキサメチレンビグアナイドを含有したディスクドレッシングは、カテーテル留置部位での感染症予防において安全に使用することができる。ポリヘキサメチレンビグアナイドとグルコン酸クロルヘキシジンを比較するための十分な検出力を持つ試験は実施可能である。

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監訳者コメント
薬剤(ポリヘキサメチレンビグアナイドとグルコン酸クロルヘキシジン)含浸ディスクの有用性を評価・比較するための十分な症例数、カテーテル挿入日、使用しなかった場合の 3 群に少なくとも分けて検討が必要である。

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)保菌を調べるための複数部位および鼻腔のスワブ採取:単回の鼻腔スワブは何を予測するか?

Multi-site and nasal swabbing for carriage of Staphylococcus aureus: what does a single nose swab predict?

B.C. Young*, A.A. Votintseva, D. Foster, H. Godwin, R.R. Miller, L.W. Anson, A.S. Walker, T.E.A. Peto, D.W. Crook, K. Knox
*University of Oxford, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 232-237


背景
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の保菌は感染症のリスクである。対象を絞った除菌は術後感染症を低減するが、それには正確なスクリーニングが必要である。

目的
健常人における黄色ブドウ球菌の保菌率を、解剖学的部位間、ならびに看護師または自己によるスワブ採取の間で比較すること。また、単回の鼻腔スワブ採取が 4 週間にわたる保菌を予測するかどうかを明らかにすること。

方法
健常人を一般診療所で募集した。同意取得後、看護師が複数部位(鼻腔、咽喉、腋窩)のスワブ採取を行った。参加者は、鼻腔のスワブ採取を週 2 回、4 週間にわたり行った。スワブ検体は郵便で返送してもらい、黄色ブドウ球菌について培養した。すべての黄色ブドウ球菌分離株に spa タイピングを実施した。自己採取したスワブを 4 回以上返送した人における持続的な保菌は、自己採取によるスワブのすべて、または 1 回を除くすべてで黄色ブドウ球菌が回収されることと定義した。

結果
合計で 102 例が複数部位のスワブ採取を受けた。黄色ブドウ球菌保菌は、40 例(39%)で少なくとも 1 部位から検出された。鼻腔(102 例中 29 例、28%)および咽喉(102 例中 28 例、27%)における分離率に差はなく、両方を組み合わせると総検出率が 10%上昇した。99 例の参加者は自己採取したスワブを 1 回以上返送し、96 例は 4 回以上返送した。鼻腔保菌の検出率には、看護師と自己による採取で有意差はなかった(99 例中 28 例[74%]対 99 例中 26 例[72%]、χ2 検定 P = 0.75)。初回の自己採取スワブが陽性であった参加者 25 例中 22 例は持続的保菌者であり、初回の自己採取スワブが陰性であった参加者 71 例中 69 例は持続的保菌者ではなかった。結果として陽性的中率が高く(88%)、陰性的中率が極めて高かった(97%)。

結論
鼻腔スワブにより大部分の保菌が検出された。咽喉スワブにより検出率が 10%上昇した。自己採取による鼻腔スワブは、看護師の採取によるスワブと同等であり、4 週間にわたり持続的な鼻腔保菌を予測した。

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監訳者コメント
古典的な保菌者調査に関するエビデンス検討の論文である。従来から知られていることの焼き直しにすぎない。

緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)陽性の水サンプルと医療関連感染症例の関連:1 大学病院での 9 年間の研究

Association between Pseudomonas aeruginosa positive water samples and healthcare-associated cases: nine-year study at one university hospital

A. Lefebvre*, X. Bertrand, C. Quantin, P. Vanhems, J.-C. Lucet, G. Nuemi, K. Astruc, P. Chavanet, L.S. Aho-Glélé
*Service d’ épidémiologie et hygiène hospitalières, France

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 238-243


目的
フランスの大学病院において、水サンプルの検査結果と緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)による医療関連感染症例の関連を調べること。

方法
完全ケースおよび代入データセットについて、一般化推定方程式を用いて解析した。空間的単位は建物、時間的単位は四半期とした。

結果
2004 年から 2013 年の間に 2,932 の水サンプルが調べられ、17%が緑膿菌陽性であった。高い緑膿菌症例の発生率は、陽性の水サンプルの割合が高いことと関連した(完全ケース解析では P = 0.056、代入データセットを用いた解析では P = 0.031)。この関連は、血液内科病棟および集中治療室を除外すると消失したが、集中治療室のデータのみの解析では有意であった(P < 0.001)。

結論
本研究から、病院内の水道の蛇口の汚染は、易感染性患者を扱う病棟では、緑膿菌による医療関連感染症例の増加をもたらしうるが、その他の病棟では重要な役割を果たさないことが示唆される。

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監訳者コメント
本論文では、水は病棟の蛇口、シャワー、飲用水から採取された。17%が緑膿菌陽性であったとされているが、患者の検体から採取された緑膿菌との遺伝子学的関連性は調べられていなかった。緑膿菌は環境生息菌であり、水道以外の環境管理がどのようになっているのか、気になるところであった。

病院内接触予防策と救急部滞在時間の関連

Association of hospital contact precaution policies with emergency department admission time

K. Kotkowski*, R.T. Ellison III, C. Barysauskas, B. Barton, J. Allison, D. Mack, R.W. Finberg, M. Reznek
*University of Massachusetts Medical School, USA

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 244-249


背景
接触予防は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)およびバンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci;VRE)の院内伝播を減少させるためのストラテジーとして、広く受け入れられている。しかし、これらの接触予防策は、意図せぬ有害な影響を患者にもたらす場合がある。

目的
病院全体の接触予防策の修正が、救急部滞在時間に及ぼす影響を評価すること。

方法
研究期間中に、病院は接触予防に関する方針を変更し、MRSA または VRE の保菌・感染歴を有するすべての患者に接触予防策をとることを求めるものから、病原体で環境を汚染する可能性の高い臨床症状を呈する患者に限定するものとした。2 つのキャンパスを持つ 1 病院で、この変更の前後各 1 年間の成人の救急部滞在時間について、分割時系列解析を行った。主要評価項目は、入院の決定から入院病床への到着までの時間と定義した救急部滞在時間とし、MRSA または VRE 患者とその他の全患者とで比較した。同期間に院内 MRSA・VRE 獲得率を評価し、既報に示した。

結果
一方のキャンパスでは、滞在時間は直ちに、MRSA 患者で 161 分、VRE 患者で 135 分減少し(それぞれ P = 0.008、P = 0.003)、ともに研究終了時まで減少が維持された。もう一方のキャンパスでは、滞在時間に有意な変化はなかった。

結論
MRSA および VRE に関する接触予防策の要件を変更することで、MRSA および VRE の院内獲得率を有意に変化させることなく、救急部滞在時間の改善につながる可能性がある。

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監訳者コメント
接触予防策の実施と要する時間について検討した論文である。MRSA、VRE を有する患者すべてに接触予防策を行う事と、環境を汚染させる可能性がある場合のみ行う事で、MRSA、VRE の院内獲得率を増加させることなく、ER 滞在時間に差があったとしている。予防策が必要かどうか判断すること、つまり、標準予防策がスタッフ全体にどれだけ確実に理解され、実施されているかが、このポリシー変更の鍵となる。

Nosocomial Pneumonia Mortality Prediction(NPMP)モデルと標準的な死亡予測ツールとの比較

Comparison of the Nosocomial Pneumonia Mortality Prediction (NPMP) model with standard mortality prediction tools

M. Srinivasan*, N. Shetty, S. Gadekari, G. Thunga, K. Rao, V. Kunhikatta
*Manipal University, India

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 250-255


背景
院内肺炎の重症度または死亡の予測は、医師らが患者のトリアージを効果的に行う助けとなる可能性がある。

目的
院内肺炎患者の集中治療室(ICU)での死亡を予測する様々な重症度評価スコアリングシステムを比較すること。

方法
インド、マニパルの大学附属第 3 次病院で前向きコホート研究を実施した。ICU に入室し、入室後 48 時間以降に肺炎を発症した院内肺炎患者 100 例を対象とした。同病院で開発した Nosocomial Pneumonia Mortality Prediction(NPMP)モデルを Acute Physiology and Chronic Health Evaluation II(APACHE II)、Mortality Probability Model II(MPM72 II)、Simplified Acute Physiology Score II(SAPS II)、Multiple Organ Dysfunction Score(MODS)、Sequential Organ Failure Assessment(SOFA)、Clinical Pulmonary Infection Score(CPIS)、Ventilator-Associated Pneumonia Predisposition, Insult, Response, Organ dysfunction(VAP-PIRO)と比較した。データおよび臨床的変数は肺炎の診断日に収集した。本研究の評価項目は ICU 死亡率とした。各スコアリングシステムの感度および特異度は、受信者動作特性(ROC)曲線のプロットおよび各死亡予測ツールの ROC 曲線下面積の算出によって解析した。

結果
ROC 曲線下面積により評価した NPMP、APACHE II、SAPS II、MPM72 II、SOFA、およびVAP-PIRO の識別能は同程度であり、容認可能であることが見出された。上記スコアの AUC 値は 0.735 ~ 0.762 であった。CPIS および MODS は識別能が最も低かった。

結論
NPMP は、院内肺炎患者の感染による死亡を予測する特異的なツールであり、他の標準スコアに匹敵する。

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監訳者コメント
自施設で開発した評価指標とな様々な標準的評価指標を用いた院内肺炎の重症度または死亡の予測について、比較した論文である。結果にそれほどの違いがないのであれば、よりばらつきの少ない、簡便な指標はどれなのかについては、論じられていなかった。

エンテロバクター(Enterobacter)属およびクレブシエラ(Klebsiella)属の侵襲性感染症分離株で銀耐性遺伝子が高頻度にみられる

High frequency of silver resistance genes in invasive isolates of Enterobacter and Klebsiella species

S. Sütterlin*, M. Dahlö, C. Tellgren-Roth, W. Schaal, Å. Melhus
*Uppsala University, Sweden

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 256-261


背景
銀をベースとする製品は抗菌薬の代替品として市販され、その消費量は増加しているが、細菌が銀に対する耐性を獲得する場合がある。

目的
腸内細菌科の臨床的に重要な 3 つの属で、銀耐性をコードする遺伝子(silEsilPsilS)の存在を経時的に調査すること。

方法
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、1990 年から 2010 年の血液分離株 752 株を調査した。患者の年齢、性別、および病棟を登録し、抗菌薬および硝酸銀に対する感受性を検査した。クローン性および一塩基多型を repetitive element sequence-based PCR法、multi-locus sequence typing 法、および全ゲノムシークエンス法を用いて判定した。

結果
銀耐性をコードした遺伝子は、エンテロバクター(Enterobacter)属菌(48%)で最も高頻度に検出され、次いでクレブシエラ(Klebsiella)属菌(41%)、大腸菌(Escherichia coli)(4%)の順に高頻度に検出された。硝酸銀に対する表現型耐性は、Enterobacter 属(13%)および Klebsiella 属(3%)の分離株で認められた。sil 遺伝子の保有率は、新生児病棟の血液分離株で最も低く(24%)、がん病棟/血液内科病棟の血液分離株で最も高かった(66%)。sil 遺伝子の存在は、国際的に拡散した高リスクのクローンで認められた。sil および pco クラスターの配列から、silS 遺伝子の単一の突然変異によって表現型耐性の発現が引き起こされた可能性があることが示された。

結論
スウェーデンの医療施設では銀をベースとする製品の消費を制限したにもかかわらず、銀耐性遺伝子は Enterobacter 属および Klebsiella 属の臨床分離株で広く認められている。医療関連感染症の可能性が高い銀耐性菌のさらなる選択および蔓延を避けるため、銀ベース製品の使用は管理下に置き、銀耐性を監視する必要がある。

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監訳者コメント
微生物汚染に対する対策として、様々な消毒薬や紫外線、銀や銅など様々なものが研究され、臨床的にも使用されている。しかし「いたちごっこ」は抗微生物薬の世界だけにとどまらず、これらの物質に対しても耐性を獲得した微生物やその耐性機序が次々に報告されている。こういった耐性は薬剤感受性のように日常的な検査で測定できないため、水面下に拡散する危険性がある。そのような観点からもやはり「過ぎたるは及ばざるがごとし」であり、消毒薬や抗菌素材を「ルーチンに」使用するのを控えなければならない理由の一つなのかもしれない。

2012 年から 2014 年までのイタリアでの院内感染胃腸炎における A 群ロタウイルス遺伝子型

Group A rotavirus genotypes in hospital-acquired gastroenteritis in Italy, 2012-14

G. Ianiro*, R. Delogu, L. Fiore, M. Monini, F.M. Ruggeri, the RotaNete-Italy Study Group
*Istituto Superiore di Sanità, Italy

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 262-267


背景
A 群ロタウイルスは、若年(5 歳未満)小児での急性胃腸炎の主要な原因で、大多数は発展途上国で発生するが、世界中で約 25 万件の死亡の原因となる。VP7(G タイプ)およびVP4(P タイプ)遺伝子のヌクレオチド配列の差がA 群ロタウイルスの 2 つの名称がある基礎となっている。少なくとも G タイプ 32 種、P タイプ 47種 が現在知られているが、世界中のヒトでのA 群ロタウイルス感染の大多数は、5 つの主要な G/P の組合せ(G1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8], および G9P[8])に関連している。

目的
イタリアのサーベイランスネットワークの病院に A 群ロタウイルス急性胃腸炎に関する最新情報を提供すること。

方法
2012 年から 2014 年までのイタリアにおける A 群ロタウイルス胃腸炎サーベイランス期間中、急性胃腸炎で入院した小児から採取した糞便 2,341 検体が A 群ロタウイルス陽性で、EuroRotaNet プロトコールにしたがって A 群ロタウイルス株の遺伝子型判定を行った。

結果
大多数の株は 5 つの主要なヒト遺伝子型に属し、2,341 例のうち 118 例(5.0%)は院内感染であると報告された。市中に蔓延している、または院内感染に関連する A 群ロタウイルス遺伝子型分布の比較により、病院内で蔓延している遺伝子型の分布は市中でみられる遺伝子型のものとは異なることが示された。G1P[8]および G9P[8]A 群ロタウイルス株が高頻度に検出され、一方、G12P[8]は単一の院内アウトブレイクの原因となっていた。

結論
本研究から得られた情報は、A 群ロタウイルス急性胃腸炎予防ガイドラインの実施、また病棟における患者の管理を最適なものにするのに有用であろう。

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監訳者コメント
院内感染における感染性胃腸炎といえば、まずはノロウイルスが重要であるが、本研究はロタウイルスも院内感染で発生しており、さらにその遺伝子型は市中で流行しているものと異なることが示された。
ただし現時点ではロタウイルスに特有の感染対策が存在するとは考えられず、わが国では胃腸炎患者にはノロウイルスを想定した接触予防策がきちんと行われていれば特に問題はないと思われる。

サウジアラビアの 3 次病院医療従事者におけるインフルエンザワクチン接種を受ける決定因子、動機および障壁

Influenza vaccine uptake, determinants, motivators, and barriers of the vaccine receipt among healthcare workers in a tertiary care hospital in Saudi Arabia

H.K. Haridi*, K.A. Salman, E.A. Basaif, D.K. Al-Skaibi
*General Directorate of Health Affairs, Saudi Arabia

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 268-275


背景
医療従事者のインフルエンザ予防接種は、患者の安全、医療従事者自身の安全、病院の運営に必須である。しかし、強い推奨にもかかわらず、研究ではワクチン接種率が低いことが示されている。

目的
医療従事者においてインフルエンザワクチン接種率に影響する因子を評価すること。

方法
2015 年 10 月 1 日から 16 日まで、サウジアラビアのメッカにある King Abdullah Medical City 病院の医療従事者を対象として横断的調査を行った。無記名の自記式質問票を医療従事者に配布した。このなかには、人口統計学的特性、ワクチン接種、インフルエンザワクチンに関する知識、信念、姿勢および懸念についての質問があった。

結果
調査を受けた医療従事者 500 名のうち、447 名から有効な自記式質問票への回答が得られ、回答率は 89.4%であった。全体で、参加者の 88.3%が 2014 年から 2015 年にかけてのシーズンにワクチン接種を受けたと報告し、2013 年から 2014 年(61.2%)および 2012 年から2013年(54.5%)にかけてのシーズンよりも高率であった。ワクチン接種の主な理由は自己防護(81.5%)であったが、一方で医療従事者の73.4%が患者防護のため予防接種を受けたと報告した。予防接種を避ける主な理由は、ワクチンはインフルエンザを引き起こすという誤解(38.5%)とワクチンの効果への懸念(32.7%)であった。ロジスティック回帰分析により、以下の因子が医療従事者でのワクチン接種に独立して関連していることが明らかになった。ワクチンガイドラインに対する認識、次のシーズンにワクチン接種を受けようという意図、医師に比べて看護師や他の医療従事者、医療従事経験が長い、年齢が40歳を超える。

結論
義務的ワクチン接種政策採用後の 2014 年から 2015 年にかけてのシーズン中に良好なインフルエンザワクチン接種が達成された。医療従事者のワクチンに関する誤解を正す啓発プログラムが必要である。特に医師、若いスタッフ、新任者に焦点を当てた取り組みが求められる。

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監訳者コメント
日本では近年医療施設勤務者のインフルエンザワクチン接種率は比較的高率を維持していると考えられる。ただその中でも接種を拒否する人が存在する。その理由の大半は、効果への懸念や金銭的負担と想像されるが、本研究のように「ワクチンでインフルエンザになる」と思って接種しない人も多数存在するのかもしれない。
ワクチン接種率を向上させるためには、一度「なぜ接種したくないのか」を確認すると、意外な問題が浮かび上がるかもしれない。

タンザニア農村地域の医療従事者におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)への職業曝露の重大さとHIV曝露後予防に対する理解

Understanding the magnitude of occupational exposure to human immunodeficiency virus (HIV) and uptake of HIV post-exposure prophylaxis among healthcare workers in a rural district in Tanzania

P. Mabwe*, A.T. Kessy, I. Semali
*Ministry of Health and Social Welfare, Tanzania

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 276-280


背景
医療環境での血液やその他の体液への職業曝露により、医療従事者はヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染のリスクにさらされる。世界中で年間 200 ~ 5,000 件の HIV 感染が医療従事者に伝播していると推定されている。曝露後予防の利用は、職場での曝露による HIV 感染率を 81%低下させると実証されている。

目的
調査前 12 か月間の HIV 感染への職業曝露の程度を調べ、医療従事者における曝露後予防診療の利用に関連する因子を特定すること。

方法
タンザニアのコングワにある特定の医療施設において医療従事者 221 名にインタビューを行った。データには、体液への職業曝露、曝露後予防の知識およびその利用が含まれた。

結果
医療従事者 60 名(27.1%)が血液および体液への曝露を経験し、そのうち 71.7%(60 名中 43 名)が針刺し切創を経験していた。医療介助者が最も高頻度に曝露を受け、それに次いで看護師であった(それぞれ 31.7%および 28.6%)。曝露を受けた医療従事者のうち 7 名(11.7%)が HIV 曝露後予防を利用したと報告した。曝露の報告(オッズ比[OR]8.44、P = 0.016)、曝露のもとになった患者の HIV 感染状況の知識(OR 42.19、P = 0.007)、曝露後予防に対する認識(OR 12.72、P = 0.010)が曝露後予防利用の有意な予測因子であった。

結論
医療従事者の曝露後予防診療の利用は、職業曝露率が高いにもかかわらず、依然として低い。医療従事者が曝露後予防診療の知識を持ち速やかにアクセスできるように、タンザニアにおける HIV 曝露後予防ガイドラインの広範な普及と医療従事者の研修が求められる。

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監訳者コメント
アフリカの発展途上国での職業曝露に対する知識の普及が大きな課題であろう。医療資源が限られているなかでの感染対策は限られているかもしれないが、本論文のような情報提供による知識と対応への教育は十分可能であり、職員への情報提供不足により発生する職務感染は決してあってはならない。

手術室における服装規則の遵守とスタッフの動き:外科手技時のスタッフ規律の多施設共同研究

Compliance with clothing regulations and traffic flow in the operating room: a multi-centre study of staff discipline during surgical procedures

G. Loison*, R. Troughton, F. Raymond, D. Lepelletier, J-C. Lucet, C. Avril, G. Birgand, ARLIN Working Group
*Centre Hospitalier du Mans, France

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 281-285


本多施設共同研究では、手術手技時における手術室スタッフの服装規則の遵守とスタッフの動きの評価を行った。監査を行った 1,615 名の服装中、56%が 服装の 8 つの指標を遵守していた。不遵守の主要な原因は、不適切な宝飾品の装着(26%)およびヘッドカバー(25%)であった。観察した 212 件の手技中、中央値で 5 名(四分位範囲[IQR]4 ~ 6)が切開時に立ち会っていた。手術室の入退室の頻度は中央値で 10.6 回/時(IQR 6 ~ 29)(範囲0 ~ 93)であった。手術室の入退室の主要な理由は、手術室で必要な物品を得るためであった(N = 364、44.5%)。服装規則の遵守率が低い手術室はスタッフの動きが多い傾向があったが、有意差ではなかった(P = 0.12)。

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監訳者コメント
手術後創感染は手術室環境や手術室スタッフに起因する可能性があり、微生物による室内空気の汚染と人工関節手術後の創部汚染との関連が報告されている。したがって手術室内での微生物の浮遊を極力抑制するためにはスタッフの服装や移動制限が必要である。しかしながら、現状では手術室の出入りは頻回であり、手術室内の換気による気流は乱され換気効率を下げるため、創部への汚染リスクを高めることとなる。手術室スタッフの服装と行動についての規制強化が必要である。

伝統中国医学の大学病院におけるステノトロホモナス・マルトフィリア( Stenotrophomonas maltophilia):分子疫学と抗菌薬耐性

Stenotrophomonas maltophilia in a university hospital of traditional Chinese medicine: molecular epidemiology and antimicrobial resistance

S. Zhao*, L. Yang, H. Liu, F. Gao
*The Affiliated Hospital of Nanjing University of Chinese Traditional Medicine, China

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 286-289


ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)は、高い抗菌薬耐性を示す、新興の重要な日和見病原体である。中国東部の伝統中国医学の大学病院において、 S. maltophilia の抗菌薬感受性、薬剤耐性遺伝子プロファイリング、および分子タイピングの解析を行った。スルファメトキサゾール耐性は多剤耐性の指標であることが分かった。スルファメトキサゾール耐性は、sul および dfrA 遺伝子を含むインテグロン(特にクラス 1)により媒介されていた。クローンの伝播を裏付ける証拠がいくつか見つかったことから、病院内で抗菌薬耐性株の交差感染が生じたことが示唆された。このことは、病院内での効果的な制御・予防策の必要性を強調している。

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監訳者コメント
院内で分離される S. maltophilia は遺伝的に多様であることが判明しているが、本検討は薬剤耐性遺伝子に関わるインテグロン構造の有無とタイプまで解析し、交差感染の可能性を論じた点が評価できる。耐性出現と伝播、両方を一括して防止できる方策を探るうえで、有用な情報であるといえる。

ブラジル中心部の極小病院における非経口抗菌薬の使用:発展途上国での介入のパターン、決定因子および機会

Use of parenteral antimicrobials in very small hospitals in inner Brazil: patterns, determinants, and opportunities for interventions in developing countries

J.L. Giacomini*, C.M. Fortaleza
*Faculdade de Medicina de Botucatu (Botucatu School of Medicine), Brazil

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 290-293


発展途上国における医療の大部分は小規模の病院で行われている。これらの状況下での抗菌薬使用についてはほとんどわかっていない。本研究では、ブラジル中心部にある 50 床以下の病院 48 施設における非経口抗菌薬の 60 日間の使用を調査した。全体での使用量は 1 日規定用量(DDD)で入院 100 件あたり 242.0 DDD であり、広域スペクトルの抗菌薬が 26.8%を占めた。抗菌薬処方に対する病院内でのガイドライン、教育手段、制限方針、ならびに感染管理および微生物学的リソース(レファレンス・ラボラトリー)の存在が、使用量の減少と有意に関連していた。これらの結果は、発展途上国における抗菌薬過剰使用の防止を目的とした介入の可能性を示すものといえる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
薬剤耐性アクションプランを推進していくにあたり、小規模病院での現状把握と対策立案、そして実行は、非常に重要であるとともに、かなりのウェイトを占めるものである。ブラジルで行われた本研究で明らかになった、使用量の減少と相関していたファクターは、本邦の小規模病院での課題とも共通しているものではなかろうか。本邦での課題の克服に参考となる論文の一つといえよう。

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