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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

一般病棟入院患者に対する敗血症のスクリーニング:システマティックレビュー

Screening for sepsis in general hospitalized patients: a systematic review

L. Alberto*, A.P. Marshall, R. Walker, L.M. Aitken
*Griffith University, Australia

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 305-315


背景
敗血症は、救命救急部門以外でも広くみられる病態である。

目的
一般病棟入院患者における敗血症の早期発見を目的とした敗血症スクリーニングツールの使用について以下の目的で検討すること:(i)これらのツールの正確度を明らかにするため、(ii)これらのツールの使用に関連する転帰を明らかにするため、(iii)実施のプロセスを記述するため。

方法
システマティックレビューを実施した。PubMed、CINAHL、Cochrane、Scopus、Web of Science、および Embase のデータベースを系統的に検索して、1990 年 1 月から 2016 年 6 月に発表された、成人の一般病棟入院患者における敗血症の早期発見を目的としたスクリーニングツールまたはアラートシステムを検討した 1 次論文を探した。レビューのプロトコールは PROSPERO(CRD42016042261)として登録された。

結果
8,000 報を超える論文を対象に、重複論文を除外した後に適格性についてスクリーニングした。2 種類の敗血症スクリーニングツールを検討した 6 報の論文が組み入れ基準を満たした。電子ツールは異常な変数を捕捉・認識し、リアルタイムでアラートを作動させることができる。しかし、これらのツールの正確度には研究間で一貫性がなく、1 つのツールのみで高い特異度および感度が示されていた。看護師主導の紙ベースのスクリーニングツールは、敗血症患者の同定においてより感度が高いようであったが、研究が行われたのは小規模の対象集団および特定の集団においてのみであった。ケアプロセスの評価指標には改善が認められたようであったが、転帰の改善を実証することはより困難である。実施の詳細が報告されていたのは稀であった。研究間の不均一性のため、メタアナリシスはできなかった。

結論
臨床家、研究者および医療政策決定者は、一般病棟入院患者において敗血症の発見に関するスクリーニングツール、研究または方針を実施する際は、これらの所見と限界を考慮すべきである。

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監訳者コメント
敗血症患者を早期発見し、検査・治療することで救命率の向上が期待できる。今後は電子カルテの記載内容を AI による分析で敗血症病態の早期発見アラート機能などの付与が期待される。

病院の呼吸器担当臨床家は抗菌薬管理をどのように認識しているか?呼吸器医療における抗菌薬管理の障害に関する定性的研究

How do hospital respiratory clinicians perceive antimicrobial stewardship (AMS)? A qualitative study highlighting barriers to AMS in respiratory medicine

J. Broom*, A. Broom, E. Kirby, A.F. Gibson, J.J. Post
*Sunshine Coast University Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 316-322


背景
呼吸器感染症に対する抗菌薬の不適切な使用は、病院医療およびプライマリケアにおいて広くみられる。病院内の抗菌薬管理チームは、感染症専門医により率いられていることが多く、しばしば呼吸器用抗菌薬を最適に使用することを任務としているが、この臨床医療領域における抗菌薬使用を何が決定しているか、あるいは抗菌薬管理がどのように認識されているかに関する情報は限られている。

目的
病院内の呼吸器担当臨床家の呼吸器医療における抗菌薬管理に関する認識を調べること。

方法
オーストラリアの 2 病院で 28 名の臨床家(医師 13 名、看護師 15 名)に詳細な面接を実施した。データの分析は、フレームワークアプローチを用いてテーマに基づいて行った。

結果
参加者の視点から、呼吸器医療における抗菌薬管理プロセスの統合に対する以下の 4 つの主要な障害が特定された。
1.高頻度の呼吸器感染症に対する呼吸器医療従事者チームの臨床的責任感は、抗菌薬管理プロセスと対立すると認識されている。
2.抗菌薬管理プロセスは、呼吸器医療従事者における従来の階層構造および相談時のしきたりと対立する。
3.呼吸器医療における看護師の抗菌薬管理への関与の障害としては、知識/教育の不足および自分たちの役割に対する制限の意識などがある。
4.抗菌薬管理プロセスは結果として、抗菌薬使用の最適化を妨げる可能性のある、診療科間および専門職間の大きな対立をもたらす。

結論
抗菌薬管理プロセスは、確立された組織体制および知識ベースのある病院に導入される。本研究では、呼吸器医療における抗菌薬管理は、これらの動的構造の多くに課題と矛盾をもたらすことが示されている。これらの動的構造の影響が考慮されなければ、病院の呼吸器医療における抗菌薬使用を抑制する上で抗菌薬適管理プロセスは有効とならない可能性がある。

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監訳者コメント
そもそも抗菌薬適正使用支援プログラムは個々の診療医が高い水準の感染症診療スキルをもっていれば改めてチーム活動を行う必要はなく、各専門領域の感染症診療にあたれるわけだが、現実は必ずしもそうはならない。このギャップを埋めていく作業が今後の課題である。

超多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の病院環境から自然環境への排出

Emission of extensively-drug-resistant Acinetobacter baumannii from hospital settings to the natural environment

M. Seruga Music*, J. Hrenovic, I. Goic-Barisic, B. Hunjak, D. Skoric, T. Ivankovic
*University of Zagreb, Croatia

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 323-327


背景
アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)は、院内アウトブレイク時に患者から高い頻度で回収される主要な新興病原体である。したがって、 A. baumannii の環境内リザーバの役割は、世界的に大きな懸念事項である。

目的
A. baumannii が原因の院内アウトブレイクと、病院の排水、都市の下水、および排水の最終的な自然環境内の受け入れ場所としての河川水からの環境分離株との関係を検討すること。

方法
2 か月のモニタリング期間中に、院内感染肺炎患者由来の臨床分離株と、水由来の環境分離株を収集した。A. baumannii の回収は、CHROMagar Acinetobacter プレートを用いて、42℃で 48 時間インキュベートして実施した。分離株の同定は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)および rpoB 遺伝子の解析により行った。抗菌薬耐性プロファイルは、A. baumannii の臨床分離株を対象とした規準に従って解釈した。シークエンス型(ST)は、複数部位塩基配列タイピング(MLST)により決定した。

結果
患者、病院の排水、都市の下水および河川水から回収された分離株 19 株中 14 株は、ST 195 に属していた。患者および河川水から回収された残りの 5 株は、ST 1421 に分類された。すべての分離株が、極めて強い近縁性を認め、CC92 へのクラスタリングを示したが、これは国際クローン 2(IC2)に対応する。すべての分離株は、1 つか 2 つの抗菌薬カテゴリーを除いて、すべてのカテゴリーの少なくとも 1 剤に感受性を示さず、したがって「超多剤耐性(XDR)」に分類された。病院の排水由来の分離株 2 株は、コリスチンへのヘテロ耐性が示された。

結論
臨床分離株と環境分離株の間に強い近縁性が認められたことから、XDR A. baumannii が未処理の病院排水を介して自然環境内に排出されていることが示唆される。

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監訳者コメント
アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)は中東地域で多くの感染症を引き起こしている。この菌は高温多湿や低温乾燥にも強く、大変やっかいな菌である。院内伝播し易い CC92 型近似型菌が、生活環境から分離されることは注目すべき点である。国別・地域別の調査が必要であろう。

蛇口を肘で操作するか?観察研究

Giving the tap the elbow? An observational study

M. Weinbren*, L. Bree, S. Sleigh, M. Griffiths
*Chesterfield Royal Hospital Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 328-330


背景
手指洗浄は、交差感染に対する最も重要な防御と見なされている。臨床環境の手指洗浄用洗面台の誤った使用法は、汚染水からの、あるいはコンタミネーション除去ができていない手指による交差感染をもたらす可能性がある。肘操作用蛇口は、正しく使用されれば手術時における手指の再汚染を予防する。多くの肘操作用蛇口は、正しく設置されておらず、フラッシュハンドルが後部パネルに水平に取り付けられていて、蛇口を肘で開くことが困難になっている。

目的
肘操作用蛇口のハンドルの角度を変えることが、手指洗浄技術に及ぼす影響を明らかにすること。

方法
2 つの部屋を用いて観察研究を行った。1 つの部屋では肘操作用蛇口のハンドルが後部の検査パネルに平行に取り付けられ、もう 1 つの部屋では肘操作用蛇口が検査パネルから 35 度の角度に設置された。

結果
35 名のスタッフが、両方の部屋で手指洗浄を行った。手指洗浄の 97%において、蛇口を開くために手指が用いられた。手指洗浄の 57%で、蛇口を閉める際に手指が再汚染された。6 名のスタッフのみが、蛇口を閉めるために常に肘を用いていた。驚いたことに、ハンドルが後部の検査パネルに平行に取り付けられている蛇口を操作する際に、より多くのスタッフが肘を用いた。

結論
肘操作用蛇口の正しい使用法をより強調する必要がある。肘操作式蛇口を使うか、自動センサー蛇口を使うかの決定は、どちらにも長所と短所があるため、明確にはできない。手指洗浄用洗面台についてデザインの改善および標準化を行う余地が大いにある。手指洗浄の重要性を考えると、こうしたギャップが存在することは驚きである。

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監訳者コメント
肘操作式蛇口の評価を行った論文である。論文中には、肘操作式蛇口、自動センサー蛇口それぞれの長所・短所がまとめられており、興味深い。対策は、構造で対応すること、仕組みで対応すること、運用で対応することに分けることができるが、このような構造について数値で評価する取り組みは参考になると思われた。

麻酔スクリーンドレープが垂直層流に及ぼす影響

Effect of an anaesthetic screening drape on vertical laminar airflow

R. Sehjal*, N. Bakti, R. Goddard
*East Sussex Healthcare NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 331-335


背景
効果的な手術室換気は、手術部位感染のリスク低減に必要である。術野上方からの垂直層流は「超清浄」空気の供給源となり、汚染物質を手術部位から排除する。麻酔スクリーンドレープは、手術部位と麻酔チームを隔てるためにしばしば使用されるが、これは垂直層流の原理と相反する。

方法
麻酔スクリーンドレープの使用時および非使用時の人工膝関節全置換術の疑似セットアップを行った。キャノピー内に 10 × 10 の格子を設定し、下降気流の速度を熱線風速計を用いて測定した。両セットアップについて、各格子点での速度の平均値と範囲を測定した。範囲は乱気流の指標とした。

結果
キャノピー内の下降気流の速度は平均で 0.35 m/s であった。麻酔スクリーンドレープを使用すると、患者上方の領域の下降気流の平均速度は 0.36 m/s から 0.29 m/s に減少した(P = 0.02)。ドレープ面上の領域の平均速度は 0.18 m/s であった。乱気流は、ドレープ面上の疑似手術部位に近い領域で発生した。患者上方の領域では、速度の範囲(30秒間の最高速度と最低速度の差)は平均で 0.034 m/s から 0.05 m/s に増加した(P = 0.04)。ドレープ面上の領域では、速度の範囲は平均で 0.08 m/s であった。

結論
麻酔スクリーンドレープの使用は、正常な垂直層流を乱す原因となる。

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監訳者コメント
手術台でのドレープの使用と風流について調査した論文である。実際の手術時の感染に関する疫学調査と合わせたエビデンスの積み重ねが、より確実な感染対策の実際につながっていくものと思われる。

急性白血病患者の侵襲性アスペルギルス症のリスクを低減するため病院建設工事中に実施された環境制御策の有効性

Effectiveness of environmental control measures to decrease the risk of invasive aspergillosis in acute leukaemia patients during hospital building work

J.F. Combariza*, L.F. Toro, J.J. Orozco
*Hospital Pablo Tobón Uribe, Colombia

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 336-341


背景
急性白血病患者において、侵襲性アスペルギルス症は重大な問題である。免疫低下患者を収容する病棟の近辺で行われる建設工事は、侵襲性肺アスペルギルス症発症の主要なリスク因子のひとつである。

目的
病院建設中に実施された環境制御策が、急性白血病患者の侵襲性アスペルギルス症の予防に及ぼす影響を評価すること。

方法
後向きコホート研究により、病院建設中の様々な環境制御策の導入時の急性白血病患者における侵襲性アスペルギルス症の発生率を評価した。侵襲性アスペルギルス症の定義には、European Organisation for the Research and Treatment of Cancer(EORTC)の診断基準で用いられているパラメータを使用した。

結果
計 175 件の入院エピソードを評価した。うち 62 件では環境制御策がとられておらず(アウトブレイク発生時)、113 件は侵襲性アスペルギルス症の予防目的の環境制御策がとられていた。環境制御策が実施されなかった群および実施された群での侵襲性アスペルギルス症の発生率はそれぞれ、25.8%および 12.4%であった(P = 0.024)。環境制御策実施群の侵襲性アスペルギルス症の相対リスクは、0.595(95%信頼区間0.394 ~ 0.897)であった。

結論
本研究から、病院建設中の環境制御策の実施は、急性白血病の入院患者における侵襲性アスペルギルス症の予防に良い影響を与えることが示唆される。

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監訳者コメント
建設工事や改修工事がアスペルギルス感染症のリスク因子であることはこれまでにも知られており、リスクアセスメント(ICRA;Infection Control Risk Assessment)に基づく様々な対策が必要とされている。本論文で行われた対策は、環境制御、HEPA フィルター、抗真菌薬(posaconazole)予防投与であり、なかでも粉じん制御や病室のシーリングなどを含む環境制御は独立した危険因子であった。

腸管細菌叢と B 型肝炎ウイルス誘発性慢性肝疾患:糞便細菌叢移植療法への影響

Gut microbiota and hepatitis-B-virus-induced chronic liver disease: implications for faecal microbiota transplantation therapy

Y. Kang*, Y. Cai
*Kunming University of Science and Technology, China

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 342-348


B 型肝炎は世界的に極めてよくみられる感染症の一つである。慢性 B 型肝炎ウイルス(HBV)キャリアは世界で 3 億 5,000 万人に上ると推定されている。肝臓は胆管を介して小腸と接続し、肝臓で生成された胆汁は胆管によって腸管に運ばれる。胃腸を出た血液のほぼすべてが必ず肝臓を通過する。ヒトの腸には多種多様な微生物が在住し、「腸内細菌叢」と総称される。腸内細菌叢は、宿主の代謝プロセスおよび免疫調節に重要な役割を果たし、宿主の発育および生理機能(臓器の発達)に影響を及ぼす。腸内細菌叢の変化は肝疾患に伴う現象としてよくみられる。腸内細菌叢の変化は、HBV による慢性肝疾患の進行の誘発および促進に重要な役割を果たし、腸内共生細菌のうちある特定の種は、HBV によって誘発される慢性肝疾患の進行において病原的または保護的役割のいずれかを果たすと考えられる。したがって、腸内細菌叢は、HBV 誘発性慢性肝疾患の予防または管理の創意豊かな標的となる可能性があり、糞便細菌叢移植(FMT)が今後、HBV 誘発性慢性肝疾患の有用な治療法となるかもしれない。しかし、この分野で得られるデータは依然として限りがあり、関連のある科学的研究が始まったばかりである。新技術によって、腸内細菌叢の系統的研究が可能になり、その構成および病理学的ばらつきに関して得られる情報が増えてきている。この総説では、腸内細菌叢と HBV 誘発性慢性肝疾患との関係に関する最先端の研究および FMT 療法の今後の展望についてまとめている。

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監訳者コメント
健常人の便を移植する糞便移植は難治性・再発性 Clostridium difficile 感染症の治療として開始された。現在では腸内細菌叢が様々な疾患の寛解・増悪因子になっていることが知られているがそれが疾患の原因なのか結果なのかははっきりしていない。また糞便移植のメリットやデメリットもよく分かっていない。腸内細菌叢および糞便移植に関する研究はまだ始まったばかりである。

糞便細菌叢移植の投与経路別の有効性比較

Comparative effectiveness of faecal microbiota transplant by route of administration

N.D. Gundacker*, A. Tamhane, J.B. Walker, C.D. Morrow, J.M. Rodriguez
*University of Alabama at Birmingham, USA

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 349-352


糞便細菌叢移植(FMT)の最適な投与経路は不明である。本単一施設観察研究では、2013 年から 2016 年にかけて FMT を受けた全患者における 2 週間の治癒率を投与経路別に分析した。全体で、FMT の経鼻胃投与は内視鏡的投与よりも効果が低かった。患者を疾患重症度によって層別化すると、より重症度の低い患者では経鼻胃投与は同様の治癒率を示したが、比較的重症度の高い患者では内視鏡的投与が優れていた。経鼻胃投与は内視鏡的投与より効果が低い可能性があるが、費用、前処置および生じ得るリスクを考慮すると、この差は軽度疾患患者では臨床的意義はない可能性がある。

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監訳者コメント
糞便移植の方法に関する検討である。内視鏡的投与は下部消化管内視鏡により虫垂付近に投与している。より病変部位に近いところに移植するという意味では内視鏡的投与が有用な可能性がある。単に投与するといっても、実際には色々と検討すべき項目は多そうである。

血液腫瘍病棟における連続した年度で発生した RS ウイルスアウトブレイクと感染制御策の有効性

Consecutive yearly outbreaks of respiratory syncytial virus in a haemato-oncology ward and efficacy of infection control measures

T. Inkster*, K. Ferguson, A. Edwardson, R. Gunson, R. Soutar
*Gartnavel General Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 353-359


背景
RS ウイルスは、免疫抑制患者で重度の気道感染症を引き起こす。

目的
当血液腫瘍病棟で 2 年連続して発生した RS ウイルスアウトブレイクを報告すること。

方法
呼吸器症状を有する血液腫瘍患者を対象に、口内洗浄食塩水を用いて、PCR 法によりウイルス性呼吸器病原体のスクリーニングを行った。

結果
対象患者で骨髄移植を受けた者はいなかったが、全例が基礎疾患として血液腫瘍を有していた。1 回目のアウトブレイクでは 8 例が罹患し(死亡率 37.5%)、2 回目のアウトブレイクでは 12 例が罹患した(死亡率 8.3%)。両アウトブレイクにおいて広範な感染制御策を実施し、さらなる交差伝播の予防に成功した。

結論
両アウトブレイク、ならびに将来のアウトブレイクの可能性および影響を低減する目的で実施された対応策から重要な教訓が得られた。

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監訳者コメント
呼吸器病原体によるアウトブレイクはインフルエンザのみならず RS ウイルスやヒトメタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルスなど様々な病原体が原因となる。本報告では病棟閉鎖や有症状者の隔離、咳エチケットや手指衛生の徹底、患者とスタッフのスクリーニングなど 16 項目もの感染防止策が本文には記載されている。このような報告をもとに、平時から呼吸器病原体によるアウトブレイクのマニュアルを見直しておくと良いだろう。

イングランド地方の総合病院における 2 歳未満の小児での RS ウイルスおよびライノウイルス関連の細気管支炎★★

Respiratory-syncytial-virus- and rhinovirus-related bronchiolitis in children aged <2 years in an English district general hospital

S.P. Paul*, A. Mukherjee, T. McAllister, M.J. Harvey, B.A. Clayton, P.C. Turner
*Torbay Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 360-365


背景
細気管支炎は低年齢の小児の入院で最もよくみられる理由である。RS ウイルスに加えて、他のウイルスの関与も増えてきており、検査に関する指針も変更された。

目的
RS ウイルスによる細気管支炎で入院した低年齢の小児における臨床病理的な転帰をライノウイルスの場合と比較し、関連するリスク/疫学的因子を同定すること。

方法
細気管支炎と臨床診断されて入院し、RS ウイルスまたはライノウイルスのいずれかの検査結果が陽性であった 2 歳未満の小児を本研究の対象とした。呼吸器系ウイルスの拡大パネルを用いたポリメラーゼ連鎖反応検査結果が陰性であった症例を対照群とした。性別、リスク因子、呼吸器サポート、静脈内輸液、および抗菌薬に関するデータを後向きに収集した。評価項目には、入院期間、重症ケアユニット/小児集中治療室への転室の必要性などを含めた。

結果
鼻咽頭吸引検体 437 検体中 227 検体が、RS ウイルス(N = 162)またはライノウイルス(N = 65)のいずれかが陽性であった。症例の年齢の中央値は 3 か月で、75%がリスク因子を 1 つ以上保有していた。リスク因子の数はライノウイルス群のほうが多かった(P = 0.004)。RS ウイルスのシーズン以外ではライノウイルスが症例の大半を占めた(P < 0.01)。ライノウイルス関連の細気管支炎のほうが入院期間が長期(7 日間を超える)であり(P < 0.05)、胸部 X 線検査および/または抗菌薬を必要とした症例が多かった(P < 0.05)。静脈内輸液および呼吸器サポートの使用率はライノウイルス群のほうが高かったが、その差は有意ではなかった。

結論
ライノウイルスは細気管支炎に関連する病原体として 2 番目に最もよくみられ、1 年を通して分離される。入院期間の長期化につながるリスク因子(訳者注:慢性肺疾患、未熟児、先天性心疾患、遺伝子異常)を有する症例では、この点が重要となると考えられる。さらに研究を進め、とりわけ従来の RS ウイルスのシーズン以外で高頻度にみられるこの病態においてライノウイルスが果たす正確な役割を明らかにする必要がある。

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監訳者コメント
2 歳未満の小児におけるウイルス性急性細気管支炎は、入院が必要な病態であり、院内感染の原因ともなる。咳と呼吸数増加を主症状としているが、起炎ウイルスとしては RS ウイルスが最も頻度が高く、冬期はその傾向が強くなる。これまで鼻咽頭吸引液の RS ウイルス検査により診断や感染対策の決定に利用していたが、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、パレコウイルス、ボカウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ライノウイルスなども同様の病態を呈するため、最近の英国 NICE や米国小児科科学会のガイドラインでもルーチンでの鼻汁からの RSV 検査を推奨していない。また、ライノウイルスは、RSV シーズン外での細気管支炎の原因ウイルスとしてクローズアップされており、小児や成人にも感染し病院内でのアウトブレイクすることもあり、感染対策上注意が必要である。本論文では 2 歳未満の乳幼児におけるライノウイルスの臨床的意義を再認識させる重要な知見であるが、起炎ウイルス検索に網羅的 PCR を実施しており費用対効果の面で検討する必要がある。

2013 年から 2014 年のインフルエンザシーズン中に target-enriched multiplex PCR 法が患者のアウトカムおよび費用に及ぼした影響

Effect of target-enriched multiplex polymerase chain reaction on patient outcomes and costs during the 2013-14 influenza season

A. Hassoun*, M.D. Huff, E. Asis, K. Chahal, A. Azarbal, S. Lu
*Alabama Infectious Disease Center, USA

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 366-370


米国疾病対策センターは、インフルエンザ A(H1N1-09)の検出に、最初にインフルエンザ迅速診断検査を行うことを推奨している。患者 246 例の鼻咽頭からのサンプルについて、target-enriched multiplex polymerase chain reaction(PCR)法により H1N1-09 の検査を行い、うち 163 例では合わせて迅速診断検査法による検査も行った。target-enriched multiplex PCR 法を参照基準とした時の迅速診断検査法の感度は18.7%であった。迅速診断検査法で偽陰性であった患者は、オセルタミビル投与が 111 日間、および隔離が 65 日間遅れた。target-enriched multiplex PCR 法で H1N1 陰性であった患者では、抗ウイルス療法が即座に中止され、これにより 408 日間のオセルタミビル投与、および 315 日間の不要な隔離が避けられた。これに伴って削減できた費用は 208,982 米国ドルであった。

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監訳者コメント
インフルエンザの迅速診断は偽陰性が大きな問題であったが、その実態と弊害については不明であったが、本論文では PCR を基準とすると迅速診断の感度が 20%に満たないことは衝撃的なデータであり、正確な診断は無用な医療費を削減できることを示した点で、その意義は大きい。一方で自然治癒するインフルエンザに対して、高価な診断法を実施することへの抵抗もある。

感染制御活動の経済的評価★★

Economic evaluation of infection control activities

T. Seko*, T. Tachi, N. Kawashima, T. Maeda, M. Yasuda, Y. Noguchi, H. Teramachi
*Nishimino Kosei Hospital, Japan

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 371-376


背景
薬剤耐性菌による医療関連感染症は患者の予後に影響を与える。日本の医療機関における感染制御活動ではこうした細菌からの脅威にますます焦点を当てるようになっている。

目的
感染制御活動に必要な消耗品費用および人件費を含む全費用分析を実施すること。

方法
日本の西美濃厚生病院において感染制御チーム(ICT)が実施する感染制御活動の費用を 2013 年 1 月から 2015 年 12 月まで調査した。感染制御活動の評価指標としてメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)検出率を用いた。各介入の費用対効果比を算出した。

結果
消耗品費用および人件費は経時的に増加し、総費用に対する人件費の比も経時的に上昇した。しかし、介入の費用対効果比は 2014 年の 164,177 円から 2015 年の 57,989 円となり、低下したことが明らかになった。消耗品の量のみならず ICT の時間にも増加があり、感染制御の経済効率改善の可能性が示唆された。

結論
消耗品の量および ICT の時間投入を増やすことで、感染制御の経済効率の改善に役立つ可能性がある。本研究により、感染制御の経済効率改善の可能性が示唆されている。

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監訳者コメント
日本の市中病院における ICT 活動に対する費用対効果を明らかにした論文である。手袋、プラスチックエプロン、ガウン、速乾性手指消毒を消耗品費用として、一方 ICT の人件費(円/時間)は、医師 6,606 円、薬剤師 2,069 円、看護師 1,885 円、臨床検査技師 1,692 円とし計算され、ICT ラウンドにかかる時間は約 30 分から 2 時間に増加している。ICT 活動の時間を増やすことで MRSA 検出率の低下やカルバペネム系薬の AUD が減少することが示された重要な知見である。ICT の感染対策への貢献度を評価するひとつの指標として参考になる。平成 30 年度には診療報酬改訂があり、このときに新たに ICT 活動にさらなる負荷がかかる可能性があり、市中病院といえども ICN 以外に専従の職員(医師、薬剤師、検査技師等)が必要となってくるかもしれない。

Korean National Healthcare-associated Infections Surveillance System(KONIS)の検証:集中治療室モジュールの報告

Validation of the Korean National Healthcare-associated Infections Surveillance System (KONIS): an intensive care unit module report

Y.G. Kwak*, J.Y. Choi, H.M. Yoo, S-O. Lee, H.B. Kim, S.H. Han, H.J. Choi, S.R. Kim, T.H. Kim, H.K. Chun, H-S. Koo
*Inje University Ilsan Paik Hospital, South Korea

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 377-384


背景
ナショナルサーベイランスのデータは、サーベイランスプログラム内の方法論的問題や、データの質の問題を特定するために、検証されるべきである。

目的
Korean National Healthcare-associated Infections Surveillance System(KONIS)の医療関連感染症(HAI)発生率データの妥当性を検証すること。

方法
参加病院 81 病院のうち 12 病院(14.8%)の 2014 年 1 月から 3 月までの集中治療室の記録を検討した。検証チームは、2014 年 8 月から 9 月に対象病院への 1 日訪問を実施し、診療録 406 件 をレビューした。この中では 110 例の患者から 114 件のHAI の報告(尿路感染症[UTI]34 件、血流感染症[BSI]57 件、肺炎 23 件)があり、296 例では HAI の報告がなかった。レビュー実施者が行った HAI 診断を参照の基準とみなし、不明確な症例では KONIS 運営委員会が診断を確認した。

結果
UTI、BSI、肺炎の感度はそれぞれ、85.3%、74.0%、66.7%、特異度はそれぞれ、98.7%、99.1%、98.7%であった。陽性的中率はそれぞれ、85.3%、94.7%、78.3%、陰性的中率はそれぞれ、98.7%、94.6%、97.7%であった。肺炎に対する感度は UTI および BSI のものよりも低かった。KONIS 参加病院は、HAI ではない病態を報告する頻度は低かった。本研究のBSI に対する感度は、2008 年および 2010 年に実施された KONIS 検証研究での感度よりも低かった。


結論
KONIS のデータはおおむね信頼性が高いが、BSI に対する感度は低下を示した。本研究により、サーベイランスデータの正確性を維持するには、継続的な検証およびサーベイランス・スタッフの継続的研修の必要性が示されている。

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監訳者コメント
ナショナルサーベイランスにおいて、データの質の担保・保証は、非常に重要かつ大きな課題である。今回は ICU を対象としたサーベイランスについて、立ち入り調査を行い、専門家が判断した HAI とデータとを比較し、質的な妥当性を評価したが、データを提供する医療機関側のスタッフが特に鍵になっていた。本邦のナショナルサーベイランスも医療機関およびスタッフの自発的努力に負う部分が大きく、同様の課題を抱えている。非常に参考になる内容といえよう。

狂犬病患者の治療:感染制御および公衆衛生上の措置における Milwaukee プロトコールの意義

Caring for a patient with rabies: implications of the Milwaukee protocol for infection control and public health measures

T. Lampejo*, M. Bruce, A. Teall, M. Dall’Antonia, E. Crawley-Boevey, P. Grant, S. Polhill, D. Pillay, D. Brown, M. Brown, E. Nastouli
*University College London Hospitals NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 385-391


本稿では、狂犬病と検査上確定診断された一症例を管理した際に行った感染制御策および公衆衛生上の措置、ならびにこれらの対策の実施時に直面した課題について考察した。症例の管理には、集中的かつ集学的な協調を必要とする。Milwaukee プロトコールは、その使用を行うことで、これまでヒト狂犬病を5例生存させえたことから、ヒト狂犬病の指針案の一つとして提唱されている。病院および公衆衛生の臨床家間での合意があれば、選ばれた症例でこのアプローチの今後の発展が促されるであろう。

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監訳者コメント
狂犬病症例における感染制御・公衆衛生上の課題は多い。著者らは、狂犬病の薬物療法・全身管理法としてウィスコンシン大学が提唱している Milwaukee プロトコールと英国保健省の狂犬病感染対策ガイダンスに則り、海外からの輸入例を治療・管理した。残念ながら患者は入院 10 日後に自律神経の機能障害で死亡したが、取られた感染制御、管理体制、検査、公衆衛生的なアプローチについて具体的に述べられており、実用上も有用な報告と言える。

全ゲノムシークエンシングによる病院感染レジオネラ症の感染源特定

Whole-genome sequencing for identification of the source in hospital-acquired Legionnaires’ disease

A.M. Rosendahl Madsen*, A. Holm, T.G. Jensen, E. Knudsen, H. Lundgaard, M.N. Skov, S.A. Uldum, M. Kemp
*Odense University Hospital, Denmark

Journal of Hospital Infection (2017) 96, 392-395


レジオネラ症は、入院での深刻な合併症の一つである。病院環境中のレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)がこの感染の原因なのかどうかを速やかに判定することは、さらなる感染を回避するためにきわめて重要である。本研究では、病院感染レジオネラ症における感染源を特定する目的での全ゲノムシークエンシングの使用を検討した。系統発生解析により、患者由来分離株 1 株と病院用水中の 1 株とに密接な関連が示され、院内感染の疑いが確認された。全ゲノムシークエンシングは、病院感染レジオネラ症の調査において有用なツールになりうることが明らかになった。

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監訳者コメント
医療機関内で発症したレジオネラ症の原因株が、医療機関の環境由来であるとする報告が、近年増加しつつある。最近は全ゲノムシークエンスで得られた塩基配列の高度の一致をその証拠とし、MLST 法などの従来法にまさる点も含め、評価されている。本検討はさらに、遺伝子の経時的変化など、環境株の全ゲノムシークエンスを施行する際の重要な留意点について触れており、今後の全ゲノムシークエンスの応用上、有用な報告といえる。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.