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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

同一患者に対して手袋使用の適応を伴う複数活動のための手袋着用手指の消毒

Disinfection of gloved hands for multiple activities with indicated glove use on the same patient

G. Kampf*, S. Lemmen
*Infection Control Science, Germany

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 3-10


ほとんどの手指衛生ガイドラインは、患者ケアにおいて手指消毒の適応が発生した時に手袋を交換すべきであると推奨している。複数の観察研究により、大部分の医療従事者は、連続的に手袋を着用している間に手指を全く消毒しないことが示されている。本記述的レビューの目的は、患者ケア時に同一患者において手袋使用の適応がある複数の活動のために、手袋を着用した手指を消毒することについて、潜在的な利益とリスクを評価することである。同一患者に対する複数の活動における手袋の連続した着用は多くの場合、特に短時間の間に多くの適応がある状況(例、麻酔科、救急治療室)において、汚染された手袋により無菌操作などの手順を実施する結果となる。さらに特記すべきこととして、手指衛生の遵守率は手袋を着用している場合に低下することが多い。これまでに、3 件の独立した研究により、手袋を着用した手指におけるコンタミネーション除去は、手袋を着用していない手指における場合と少なくとも同様に効果的であること、また最高 10 回の消毒後には通常、手袋の穿孔率は上昇しないことが示されている。新生児集中治療室に関する 1 件の研究では、同一患者に対するケア時に手袋を着用した手指の消毒を促すことで、晩期感染症および壊死性腸炎の発生率が有意に低下することが示されている。結論として、医療従事者における手袋を着用した手指の消毒は、患者ケアのエピソード全体に対して手袋使用が適応されている場合、および同一患者に対して複数の活動が実施された場合、伝播リスクを大幅に低下させる可能性がある。

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監訳者コメント
手袋の上からの手指衛生は禁止している。アルコールによる影響で手袋へのダメージを心配してのことである。アルコール系消毒薬で劣化しない手袋が出現すれば、この論文の主旨には合っているかも知れない。

高度に訓練されたスタッフ配置の十分な環境においても労働量は手指衛生に影響を及ぼす:1 年間連日 24 時間にわたる前向き観察研究

Workload even affects hand hygiene in a highly trained and well-staffed setting: a prospective 365/7/24 observational study

S. Scheithauer*, B. Batzer, M. Dangel, J. Passweg, A. Widmer
*University Medicine Goettingen, Germany

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 11-16


序論
これまでに、手指衛生の遵守率は満足できるものではないと示されることが多く、自己報告によるその一般的な理由は労働量である。労働量と遵守率の比較を行ったこれまでの研究は、労働量を正確に測定しておらず、1 日の特定の時間に焦点を当てていた。本研究の目的は、手指衛生の遵守率と労働量との関連を、いずれも電子的に 1 年間連日 24 時間にわたり測定(主要エンドポイント)をして検討することであった。さらに、遵守率を測定するために一般的に用いられている方法(手指消毒薬の使用、直接観察)の質(副次的エンドポイント)を検討した。

材料および方法
スイスのバーゼル大学病院の幹細胞移植病棟において 1 年間にわたり、電子的に測定した手指衛生の遵守率(手指洗浄活動/手指衛生機会)と、電子的に測定した労働量(看護活動/看護時間)との相関を検討した。世界保健機関(WHO)による手指衛生の 5 つのタイミングに従って、手指洗浄活動および手指洗浄活動を要する手技を、電子記録が残るディスペンサーおよび電子記録を用いて連続的に(1 年間連日 24 時間)記録し、これらに基づいて遵守率を算出した。手指消毒剤の使用量は1 年間にわたる使用記録を用いて算出し、手指衛生機会約1,800件について直接観察を実施した。

結果
研究期間中に、208,184 件の手指洗浄活動が実施され、患者日あたり手指洗浄活動は 57 件(標準偏差[SD]10)であった。電子記録により算出した遵守率は 24% ~ 66%(平均 42.39%[SD 8%])の範囲であった。労働量が多くなるほど遵守率は低下した(R = -0.411、P < 0.001)。患者日あたり手指洗浄活動(R = -0.037)、手指消毒剤使用量(患者日あたり平均 160 mL)および観察された遵守率(95%、手指洗浄活動 1,734 件/手指衛生機会 1,813 件)には、労働量との関連は認められなかった。

結論
算出した遵守率には、看護師の労働量との逆相関が認められた。患者日あたり手指洗浄活動、観察により算出した遵守率、および消毒剤の使用量を、遵守率の代理指標として用いたが、実際の遵守率とは相関しておらず、したがって用いる場合は注意すべきである。

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監訳者コメント
人員と労務の関係は以前より指摘されており、本研究はその焼き直しである。過大労務負荷により手指衛生が破綻するのは、既知の事実でありどの業務量を基準に人員配置あるいは臨時的な支援者の派遣などで人員補強を行わない場合は感染伝播のリスクは高まる。

アイルランドの病院の医師における手指衛生および擦式アルコール製剤を使用する手指消毒に対する態度と実践:2007 年と 2015 年の比較

Attitudes and practices of Irish hospital-based physicians towards hand hygiene and hand rubbing using alcohol-based hand rub: a comparison between 2007 and 2015

L.M. Kingston*, B.L. Slevin, N.H. O’Connell, C.P. Dunne
*University of Limerick, Ireland

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 17-25


背景
手指衛生は、感染の予防および制御の実践において不可欠なものであり、医療関連感染症を大幅に減少させる。しかし、国際的なエビデンスでは、内科医師は遵守率が低いことが示唆されている。

目的
2007 年から 2015 年のアイルランドにおいて、病院勤務医を対象に手指衛生、特に擦式アルコール製剤を用いた手指消毒に関する実践と態度を比較、検討すること。

方法
2007 年に、大規模教育病院 1 施設における無作為に抽出された医師に、妥当性が確認されている質問票による郵便調査への回答を依頼した。2015 年に、最初の研究と同じ環境を含め、1 つの大学病院グループに勤務するすべての医師を対象に、オンライン調査を用いて同じ研究を再現して行った。データの解析は SPSS および Survey Monkey を用いて行った。

結果
主として肯定的で改善された態度および実践が認められ、患者と接触する前の手指衛生を遵守していた医師は 2007 年には 58%であったのに対し、2015 年には 86%であった。患者との接触後に遵守していた医師は、2007 年には 76%であったのに対し、2015 年には 91%であった。2015 年では、手指衛生のために擦式アルコール製剤を「ほとんど常に」用いていると報告したのは回答者の 39%にすぎなかった。しかし、この数字は 2007 年より 13.5%高かった。擦式アルコール製剤の使用に対する障害として挙げられたのは、皮膚科的な問題、受け入れ度や忍容性が低いこと、および利用が容易でないことなどであった。

結論
手指衛生ガイドラインに対する認識の高まりと管理の向上が、手指衛生の実践において望ましい影響を及ぼしたようである。しかし、それにもかかわらず、手指衛生の実践は依然として不十分であり、かなり改善の余地がある。2009 年に世界保健機関(WHO)の手指衛生ガイドラインが公表されて以降に達成された進歩に基づいて改善していくには、継続的および持続的な取り組みが必要である。

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監訳者コメント
質問票の回答率は 2007 年が 43%だったのに比べ、2015 年は 15%だった。回答率の低さが手指衛生への関心を表しているように感じた。また、手指衛生を理解している医師、実践できていると考えている人の方が回答する傾向が高いのでは、とも思われた。

手指衛生手技の客観的評価のために:紫外線ラベルを含有する擦式手指消毒剤による手指衛生の質評価法の検証

Towards objective hand hygiene technique assessment: validation of the ultraviolet-dye-based hand-rubbing quality assessment procedure

Á. Lehotsky*, L. Szilágyi, S. Bánsághi, P. Szerémy, G. Wéber, T. Haidegger
*Semmelweis University, Hungary

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 26-29


紫外線スペクトルマーカーは手指衛生の質評価に広く利用されているが、それらの微生物学的検証は完全ではない。我々は、この評価法の微生物学的評価を行った。ヒト手指掌面を模した 25 の手掌モデルを、最初に完全に汚染させたのちに紫外線ラベル含有手指洗浄液を用いて消毒し、紫外線照射下でデジタル画像を撮影した。続いて微生物学的サンプルを採取・培養し、培養菌叢のデジタル画像を撮影した。各手掌モデルの画像のペアについて、ソフトウェアを用いて画像レジストレーションを行った後、ピクセル単位で、紫外線で標識された領域を無菌領域と比較した。統計学的評価により、この評価法は、感度 95.05%、特異度 98.01%で、適切に消毒された領域を示すことが明らかになった。

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監訳者コメント
流水と石けんで手洗いをするときに、蛍光塗料を用いて洗い残しをチェックするということが広く行われているが、この論文は、その妥当性を裏付けてくれた。

香港の地域病院における肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)菌血症の臨床的予測因子および転帰

Clinical predictors and outcomes of Klebsiella pneumoniae bacteraemia in a regional hospital in Hong Kong

M.Y. Man*, H.P. Shum, Y.H. Chan, K.C. Chan, W.W. Yan, R.A. Lee, S.K.P. Lau
*Pamela Youde Nethersole Eastern Hospital, China

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 35-41


背景
肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)感染症は、高い罹病率および死亡率と関連する。多剤耐性肺炎桿菌、特に基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生肺炎桿菌は、世界中で流行している。

目的
集中治療室および一般病棟の肺炎桿菌菌血症患者の臨床的特徴および転帰を評価すること。

方法
2009 年 1 月 1 日から 2016 年 6 月 30 日までの 7.5 年間に香港の地域病院に入院した、成人の肺炎桿菌菌血症患者を含めた。患者背景因子、臨床的特徴、微生物学的特徴、および転帰を分析した。

結果
患者 853 例のうち、178 例(20.9%)が集中治療を要し、176 例(20.6%)が入院後 30 日以内に死亡した。30 日生存者は、より若年で(P < 0.001)、疾患の重症度がより軽度で(Sequential Organ Failure Assessment スコアで測定、P < 0.001)、肝胆道由来の敗血症(P < 0.001)または尿路由来の敗血症(P < 0.001)を呈し、敗血症性ショックをきたした割合が少なく(P = 0.013)、侵襲性の臓器支持療法を受けている割合が少なく(P < 0.001)、適切な経験的抗菌薬投与を受けている割合が多かった(P < 0.001)。Cox 回帰分析では、気道感染症(ハザード比[HR]2.99、95%信頼区間[CI]2.061 ~ 4.337、P ≦ 0.001)、消化管感染症(肝胆道系を除く)(HR 2.763、95%CI 1.761 ~ 4.337、P ≦ 0.001)、機械換気(HR 2.202、95%CI 1.506 ~ 3.221、P ≦ 0.001)、内科への入院(HR 1.830、95%CI 1.253 ~ 2.672、P = 0.002)、不適切な経験的抗菌薬投与(HR 1.716、95%CI 1.267 ~ 2.324、P ≦ 0.001)、女性であること(HR 1.699、95%CI 1.251 ~ 2.307、P < 0.001)、65 歳を超える(HR 1.692、95%CI 1.160 ~ 2.467、P = 0.006)、および固形腫瘍の存在(HR 1.457、95%CI 1.056 ~ 2.009、P = 0.022)が、30 日死亡の独立危険因子であることが示された。予想に反して、糖尿病は高い 30 日生存率と関連した(P = 0.002)。計 102 例(12.0%)が ESBL 産生株による感染症であったが、これは高い 30 日死亡率と関連しなかった。

結論
肺炎桿菌菌血症は高い 30 日死亡率と関連する。感染部位、患者の併存疾患、および適切な経験的抗菌薬投与は、患者の転帰の重要な予測因子である。

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監訳者コメント
大腸菌と比べると頻度の少ない肺炎桿菌による菌血症に関する香港における後向き研究である。1700 床(!)の大規模病院で 7 年間で 853 例という症例数には驚きである。アジアを中心に、過粘調性を示す強毒性の肺炎桿菌が検出されている。20.6%という比較的高い 30 日死亡率が示されているが、そのうち過粘調性の肺炎桿菌の割合などは明らかにされていない。なお ESBL 産生菌の割合は 12.0%であったが、カルバペネマーゼ産生株が 0 であったというのも意外である。

リハビリテーション病棟において長期間持続した CTX-M-15 産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)配列型 336(ST 336)のアウトブレイク:報告と文献レビュー

Long-lasting outbreak due to CTX-M-15-producing Klebsiella pneumoniae ST336 in a rehabilitation ward: report and literature review

F. Valsdottir*, A. Elfarsdottir Jelle, O. Gudlaugsson, I. Hilmarsdottir
*The University Hospital of Iceland, Iceland

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 42-51


背景
多剤耐性グラム陰性菌による院内アウトブレイクでは、クレブシエラ(Klebsiella)属菌が最も高頻度にみられるが、リハビリテーション病棟からのアウトブレイクの報告はほとんどない。

目的
リハビリテーション病棟において長期間持続した基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)によるアウトブレイクを報告すること。

方法
ある 3 次医療大学病院で、2007 年から 2012 年までの間に検体が検査されたすべての入院および外来患者からの ESBL 産生肺炎桿菌について、パルスフィールド・ゲル電気泳動法によるタイピングを行い、選択した分離株について multi-locus sequence typing および ESBL 遺伝子型のタイピングを行った。アウトブレイクの特徴と感染制御介入をまとめた。リハビリテーション病棟における肺炎桿菌関連アウトブレイクの文献を検索した。

結果
ESBL 産生肺炎桿菌は、研究期間中に肺炎桿菌が検出された患者 2,478 例中、69 例(2.8%)で検出された。35 例(うち 25 例はリハビリテーション病棟の患者)から同定された、アウトブレイクに関連するクローン 8 株は、CTX-M-15 を産生し、配列型 336(ST336)であった。アウトブレイクは 3 年を超えて持続し、制御策は経時的に増やされた。最終的にとられた制御策は、患者に関連するあらゆる医療のレビュー、職員に対する強制参加の講習会、職種別ガイドラインおよび患者教育用小冊子の配布であった。

結論
3 次医療大学病院で 6 年間に同定された ESBL 産生肺炎桿菌陽性患者の半数が、関連するクローンを保有し、その 3 分の 1 を超える患者がリハビリテーション病棟に入院していた。リハビリテーション病棟では患者が医療提供者と頻繁に交流し患者の依存度が高いこと、および社交が促進される環境にあることから、感染制御には病棟特有の課題がある。とはいえ、リハビリテーション病棟では、肺炎桿菌に関連するアウトブレイクはまれである。

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監訳者コメント
リハビリテーション病棟における足かけ 5 年間にわたる ESBL 産生肺炎桿菌のアウトブレイクに関する報告である。精神科病棟やリハビリテーション病棟でのアウトブレイクは繰り返し報告され、本文にも記載のあるように、なかなか終息させることが難しい。本文には詳細な接触歴や症例の詳細なども記載されており、教訓となる事例として紹介するのに使えるのではないだろうか。

新生児集中治療室におけるカルバペネム耐性グラム陰性菌による遅発性敗血症のリスク因子および臨床転帰

Risk factors and clinical outcomes for carbapenem-resistant Gram-negative late-onset sepsis in a neonatal intensive care unit

I. Nour*, H.E. Eldegla , N. Nasef, B. Shouman, H. Abdel-Hady, A.E. Shabaan
*Mansoura University Children’s Hospital, Egypt

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 52-58


背景
カルバペネム耐性(carbapenem-resistant:CR)グラム陰性菌(Gram-negative:GN)による遅発性敗血症(late-onset sepsis:LOS)は、新生児集中治療室(NICU)において重大な脅威である。

目的
NICU 患者における CR-GN-LOS の有病率を評価し、その獲得に関連するリスク因子および転帰を明らかにすること。

方法
2 年間の観察研究において、カルバペネム感受性(carbapenem-susceptible:CS)-GN-LOSの新生児と CR-GN-LOS の新生児を比較した。

結果
計 158 例の患者が GN-LOS を発症した。内訳は、CS-GN-LOS が 100 例、CR-GN-LOS が 58 例であった。CR-GN-LOS の発生率は、1,000 患者日あたり 6.5 件であった。両群とも、最も高頻度にみられた菌種は肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)であった。完全静脈栄養(TPN)の施行期間(P = 0.006)およびカルバペネム系薬の使用歴(P = 0.01)は、CR-GN-LOS 獲得の独立危険因子であった。CR-GN-LOS は、CS-GN-LOS よりも高い死亡率と関連した(P = 0.04)。出生体重、在胎期間が短いこと、経腸栄養開始までの期間、完全人工栄養、手術歴、抗真菌薬使用歴、発症前の中心静脈デバイスの使用、中心静脈デバイスの使用期間、および感染性合併症は、全死亡の従属危険因子であった。しかし、男児であること(P = 0.04)および感染性合併症(P < 0.001)のみは、死亡に関連する独立危険因子であった。感染性合併症の発症率、機械換気の期間、および入院日数は、CS-GN-LOS の患者よりも CR-GN-LOS の患者のほうが有意に高い、または長かった。

結論
TPN の期間およびカルバペネムの使用は CR-GN-LOS 獲得の独立した予測因子であった。CR-GN-LOS は、高い死亡率、高い感染性合併症発症率、長い機械換気期間、および長い入院期間と関連する。男児であること、および感染性合併症は、GN-LOS 発症新生児の死亡の独立危険因子であった。

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監訳者コメント
エジプトにおける NICU でのカルバペネム耐性グラム陰性菌による菌血症に関する研究であり、58 例のうち 40%(22 例)が死亡している。なお菌種では肺炎桿菌が 37.9%と最も多かった。日本の調査でも 2013 年から 2015 年の3年間で新生児 60 例以上が ESBL 産生菌感染症に罹患し、少なくとも 2 例が死亡したとされており、新生児領域での耐性菌感染症のモニタリングも重要である。

検査の自動化を考慮した腸管内多剤耐性菌スクリーニングに対する臨床検体の寄与と限界

Contribution and limits of clinical specimens for the screening of intestinal multi-drug-resistant bacteria in view of laboratory automation

A. Geraud de Galassus*, F. Cizeau, A. Agathine, C. Domrane, D. Ducellier, V. Fihman, J-W. Decousser
*University Hospital Henri Mondor, France

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 59-63


多剤耐性菌保菌者が検出されると、感染予防担当者は時間との戦いを始める。診断を目的とした標準的検査法および直腸スクリーニング方法を実施するとともに、著者らは患者 439 例から得られた臨床検体 562 検体に対し、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生腸内細菌科細菌またはカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)を検出するための高塗布量の選択培地による方法を検証した。このアプローチによって、標準的検査法よりも 5 検体多く ESBL 産生腸内細菌科細菌陽性の検体が同定され、既知のVRE/CPE保菌者 9 例中 6 例が同定された(このコホートでは、3 つの新型 CPE/VRE 株も同定された)。検査機関で現在進められている細菌検査の自動化を考慮すると、尿および糞便検体に焦点を当てたこのアプローチは、専用の直腸スクリーニングの代替または相補的アプローチとなると考えられる。

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監訳者コメント
欧米では CPE や VRE などの多剤耐性菌の腸管内保菌者は、医療施設内感染の脅威となる。早期に発見し、適切な予防策を実施することが必要であるため、入院患者は 48 時間以内にこれらの耐性菌を報告できる体制を確立することが推奨されている。本論文では塗布検体量を増やし、選択培地を使用することで、便からの耐性菌の検出感度を上げることができると結論している。一方で、細菌検査の自動化が進み、いまや検体をセットすれば、培地選択、培地への塗布などの検体処理からコロニーの選択、同定感受性まで全自動化されるようになっている。日本でもこの自動化の波はすでに来ているが、機器の値段が高額のためまだまだ導入には至っていない。将来少ない技師数でも細菌検査が自施設で可能となる時代がくる。

カテーテル関連尿路感染症を予防する革新を評価するための臨床状態を模倣する in vitro 尿道カテーテル法モデル

An in-vitro urinary catheterization model that approximates clinical conditions for evaluation of
innovations to prevent catheter-associated urinary tract infections

R.Y.R. Chua*, K. Lim, S.S.J. Leong, P.A. Tambyah, B. Ho
*National University of Singapore, Singapore

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 66-73


背景
カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)は、世界の院内感染の約 25%を占め、病状の悪化および医療費の増加につながることが多い。さらなる問題として、カテーテルにおける細菌、とりわけ抗生物質耐性菌の主なリザーバであるバイオフィルムの存在がある。閉鎖式ドレナージシステムの導入以降、CAUTI に取り組む革新技術は生まれているが、臨床転帰の有意な改善には至っていない。CAUTI の新しい予防戦略を検証する堅牢な試験プラットフォームがないことが、新技術の開発を妨げていると考えられる。

目的
CAUTI を予防する技術革新を検証するための in vitro カテーテルモデルを確立すること。

方法
in vitro カテーテルモデルでは、尿試料を連続的に容器(膀胱)に流入し、採取容器(廃液バッグ)に接続されている導尿カテーテルを介して排出を行う。検証用の菌は、ゴム製注入ポートを介して膀胱内に簡便に導入可能であり、続いて、細菌尿の発症およびカテーテルでのバイオフィルム形成の判定が可能である。

結果
まず大腸菌(Escherichia coli)(約 5×105 コロニー形成単位[cfu]/mL)の接種材料を膀胱に加えると、100%シリコン製カテーテルおよび市販の銀ハイドロゲルカテーテルでは、3 日以内に大量のバイオフィルムの定着(それぞれ約 108 cfu/cmおよび約 107 cfu/cm)が認められ、尿中(細菌尿)の細菌集団(それぞれ約 108 cfu/mLおよび約 107 cfu/mL)と同程度であった。興味深いことに、抗菌ペプチド(CP11-6A)被覆カテーテルはいずれも、バイオフィルムの定着がわずかであり、細菌尿は検出されなかった。

結論
in vitro カテーテルモデルは、CAUTI の新しい予防戦略を評価する有用な前臨床のアプローチである。

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監訳者コメント
CAUTI は病院感染における原因の一つであるが、カテーテル留置の厳格な適応、留置中の無菌的管理、そしてできる限り早期の抜去が、CAUTI 防止の基本である。尿道カテーテルの留置期間とともに、バイオフィルム形成により細菌尿が増加することは周知の事実であるが、これまで様々な材質あるいは抗菌薬処理されたカテーテルが開発されてきているが、目を見張るほどの CAUTI の減少効果は認められていない。本論文では、新規に開発されたカテーテルの評価を、臨床現場に近い条件での再現実験を可能にする手法を開発し、それを評価している。

老年科病院における尿路感染症のリスク因子★★

Risk factors for urinary tract infections in geriatric hospitals

R. Girard*, S. Gaujard, V. Pergay, P. Pornon, G. Martin-Gaujard, L. Bourguignon for the UTIC Group
*Hospices Civils de Lyon, France

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 74-78


背景
尿路感染症(UTI)は、老年科病棟で最も高頻度に発生する院内感染症である。感染のリスク因子の把握が予防戦略の特定に役立つと考えられる。

目的
高齢患者における UTI のリスク因子の同定。

方法
3 つの前向きコホートの後向き解析。2009 年、2012 年、および 2015 年の 6 月 1 日から 28 日に老年科病棟を受診または入院した入院患者全員を対象とし、退院または該当する年の 6 月 30 日まで追跡調査を実施した。それぞれの患者について、入院の種類および入院日、カテーテルの種類および挿入日、リスク因子、院内 UTI に関するデータを収集した。SPSS ソフトウェアを用いて単変量および多変量解析(Cox モデル)を実施した。

結果
合計 4,669 例の患者が組み込まれ、合計 83,068 日間の追跡調査が実施された。189 件の院内 UTI が発生した(4.0%の患者)。院内 UTI の発生頻度は、女性患者、リハビリテーション科病棟患者、免疫低下患者、急性尿閉、残尿または過去 6 か月間に尿路感染症の既往がある患者、および介護度の高い患者で有意に高く、カテーテル使用患者でも有意に高かった(Z 検定、P < 0.001)。また、院内 UTI の発生頻度は、間歇式、留置、または恥骨上カテーテルの使用患者で有意に高く、急性/亜急性期病棟またはリハビリテーション科病棟、女性、免疫低下患者、過去に UTI の既往がある患者でも高かったが、認知症患者では低かった。

結論
院内 UTI の発生は、カテーテル使用者およびカテーテル非使用者の双方において重要な問題であり、予防プログラムの範囲を拡大し、カテーテル非使用者も対象に含めるべきである。

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監訳者コメント
老年科病棟で多い院内感染症は、頻度的に尿路感染であり、ときに菌血症や腎不全などの合併症を引き起こすため,予防対策は重要である。現在、多くの医療施設では尿道留置カテーテルによる尿路感染症(CAUTI)を対象にサーベイランスが実施されているが、本論文では老年科病棟におけるカテーテル非留置患者にも尿路感染症(UTI)の対象範囲をひろげ、調査した。カテーテル非使用者での UTI は、しばしば見逃されがちであるが、今後上記リスク因子に該当する患者に対しても UTI 発生防止のための戦略が必要である。

英国における 2010/11 年から 2015/16 年の冬毎の急性胃腸炎による病床閉鎖の負荷、持続期間およびコスト

Burden, duration and costs of hospital bed closures due to acute gastroenteritis in England per winter, 2010/11-2015/16

F.G. Sandmann*, M. Jit, J.V. Robotham, S.R. Deeny
*London School of Hygiene and Tropical Medicine, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 79-85


背景
急性胃腸炎による病床閉鎖により、冬がくる毎に病院はプレッシャーにさらされる。英国では、2010/11 年以来、国民保健サービス(NHS)は冬季の状況を急性期トラストすべてについてモニターしている。

目的
冬季の急性胃腸炎による病床閉鎖の負荷、持続期間、コストを推定すること。

方法
2010/11 年冬季から 2015/16年冬季について、日常的に収集した下痢および嘔吐による病床閉鎖の時系列データの後向き解析を実施した。2 つの重要なデータ上の問題は、トラストレベルで欠測値を非無作為な方法によって補完することと、6 回の冬で記録された閉鎖の日付にまで観測値にフィルターをかけることによって対処した。補完された最低値と最高値は、最良のシナリオと最悪のシナリオとみなした。病床利用に関するコストは NHS reference costs を用いて見積もり、発生しうるスタッフの欠勤コストは先行研究に基づくものであった。

結果
最良から最悪のシナリオにおいて、88,000 ~ 113,000 床(中央値)が、冬毎に急性胃腸炎により閉鎖された。これらのうち、19.6 ~ 20.4%は使用されていなかった。平均してトラストの 80%が影響を受け、冬毎の病床閉鎖は 15 ~ 21 日(中央値)であった。病床閉鎖によって病院にかかったコストは 570 万 ~ 750 万ポンドで、疾患によるスタッフ欠勤のコストを含めると 690 万 ~ 1 千万ポンドに上った。

結論
冬毎の急性胃腸炎による病床閉鎖の中央値は、英国のすべての一般および急性期病床が 0.88 ~ 1.12 日(中央値)利用できない場合と同等であった。病院のコストは高いが、冬毎の閉鎖状況に応じて変動する。

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監訳者コメント
感染性疾患において、病床閉鎖が実際にどの程度存在したかを集計するのはかなり難しい。本検討では NHS のトラストデータから推計しようと試みたが、曜日による差異や、個々の病床閉鎖期間によって決定される部分も大きかった。しかしながら最終的には、英国のすべての一般・急性期病床が約 1 日閉鎖されたのとほぼ同等となり、その負荷が非常に大きいことが判明した。医療行政、病院経営の両面で、興味深い結果であるといえる。

南アフリカの病院ネットワークにおける「常に最良のケア(Best Care Always)」中心ライン関連血流感染予防バンドルの段階的導入

Stepwise introduction of the ‘Best Care Always’ central-line-associated bloodstream infection prevention bundle in a network of South African hospitals

G.A. Richards*, A.J. Brink, A.P. Messina, C. Feldman, K. Swart, D. van den Bergh for the Netcare Antimicrobial Stewardship and Infection Prevention Study Alliance
*University of the Witwatersrand, South Africa

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 86-92


背景
医療関連感染(HCAI)は依然として大きな国際的な問題である。

目的
中心ライン関連血流感染(CLABSI)を含む予防可能な HCAI を減少させるため、「常に最良のケア!(Best Care Always!)」キャンペーンが南アフリカにおいて開始された。

方法
本介入は、Netcare Private Hospital 43 病院の集中治療室(intensive care units;ICU)958 室および高度治療病床 439 床で開始し、後に 49 病院に増加しICU 1,207 室および高度治療病床 493 床で実施した。第 1 期(2010 年 4 月から 2011 年 3 月まで):ICU 感染予防対策(IPC)看護師が主導で、経営陣や医師の関与を強めるとともに、IPC 看護師の研修を行った。バンドル遵守率と 1,000 中心ライン使用日あたりの感染発生率を標準的 IPC 尺度として組み入れ、毎月記録した。第 2 期(2011 年 4 月から 2012 年 3 月まで):breakthrough collaborative method として、看護リーダー、IPC 看護師、ICU 主任のための地域の学習セッションを行った。第 3 期(2012 年 4 月から 2016 年 5 月まで):持続可能な目標やベンチマークを設定し、監査を継続した。

結果
中心ライン使用日は合計 1,119,558日に達した。バンドル遵守率は、第 1 期の平均 73.1%(標準偏差[SD] 11.2、範囲 40.6 ~ 81.7%)から第 3 期の平均 90.5%(SD 4.7、範囲 76.5 ~ 97.2%)へと有意に上昇した(P = 0.0004)。CLABSI 率は、第 1 期の 1,000 中心ライン使用日あたり平均 3.55(SD 0.82、範囲 2.54 ~ 5.78)から平均 0.13(SD 0.09、範囲 0 ~ 0.33)(P < 0.0001)へと有意に低下した。

結論
本介入は、南アフリカにおいて初めてのものであり、相当の動機付けと教育を通じて、また病院間の競争を通じて実施され、CLABSI の有意な減少をもたらした。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
CLABSI の発生には多くのファクターが存在する。それらのファクターを減らし、発生を少なくするためには、多職種にわたる予防策と教育、行動変容が求められる。本研究で行われた介入とその結果は、戦略的・段階的なステップと、時間をかけた持続的な取り組みの重要性を改めて強調するものといえよう。

オーストラリアの血液透析外来患者における感染および抗菌薬使用の疫学:ビクトリア州サーベイランスネットワークによる 2008 年から 2015 年の知見

Epidemiology of infections and antimicrobial use in Australian haemodialysis outpatients: findings from a Victorian surveillance network, 2008-2015

L.J. Worth*, T. Spelman, S.G. Holt, J.A. Brett, A.L. Bull, M.J. Richards
*Victorian Healthcare Associated Infection Surveillance System (VICNISS) Coordinating Centre, Australia

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 93-98


背景
血液透析を要する慢性腎不全患者は感染のリスクが高い。

目的
オーストラリアの血液透析外来患者における血流感染および局所アクセス関連感染の負荷と静注抗菌薬の処方パターンを明らかにすること。

方法
利害関係者の協議後、サーベイランスネットワークを構築し、血液透析センターの自主参加と Victorian Healthcare Associated Infection Surveillance System Coordinating Centre によるデータ照合を実施した。感染と静注抗菌薬投与開始の定義は、米国疾病対策センターが用いた方法に基づくものであった。縦断的混合効果 Poisson 回帰を用いて、2008 年から 2015 年の期間の時間的傾向モデルを作成した。

結果
ビクトリア州の透析センター 78 カ所中 48 カ所がネットワークに参加し、78,826 患者月にわたり 3,449 イベントが報告された。血流感染、局所感染の発生率、および静注抗菌薬の投与率は、トンネル型中心ラインを用いる患者で100 患者月あたりそれぞれ 2.60、1.41、3.37であり、内シャント(動静脈瘻)の患者(100 患者月あたりそれぞれ 0.27、0.23、0.73)および人工血管内シャント(動静脈グラフト)の患者(100 患者月あたりそれぞれ 0.76、1.08、1.50)に比べてはるかに高かった。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が最も頻度の高い病原体であり、メチシリン耐性株(MRSA)が原因であったのは 14.0%であった。アクセス関連感染は、すべてのバスキュラーアクセス法において経時的に有意に減少した。研究期間全体で一貫して抗菌薬開始例のほぼ半数でバンコマイシンが用いられた。

結論
オーストラリアの血液透析患者では、血流感染および局所アクセス関連感染のリスクはトンネル型中心ラインにおいて最も高かった。黄色ブドウ球菌が感染の原因として最も頻度が高く、MRSA 発生率は低かった。今後のプログラムでは、感染予防の実施とこの集団での抗菌薬処方の適切性を評価すべきである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
トンネル型中心ラインでの感染が、内シャントや人工血管内シャントに比べて多いのは、実際の臨床でも明らかであり、他国のデータでも示されている。ただし本研究では、血流感染と局所感染に分けて発生率を提示するとともに、リスクモデルを設定しているのが評価できる。静注抗菌薬の適正化にどのようにつなげていくかが課題であるが、この点は本邦でも同様であると思われる。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.