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イングランドの義務的サーベイランスから病院発症型大腸菌(Escherichia coli)菌血症症例を特定する試み:入院後 2 日ルールを適用した場合

Identifying hospital-onset Escherichia coli bacteraemia cases from English mandatory surveillance: the case for applying a two-day post-admission rule

J. Davies*, A.P. Johnson, R. Hope
*National Infection Service, Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 207-211


背景
全英の自発的サーベイランスプログラムから、大腸菌(Escherichia coli)が原因の菌血症が年々増加しつつあることが示されている。2011 年に、収集されるデータの量および質を改善する目的で大腸菌菌血症の義務的サーベイランスが導入された。他の全国義務的サーベイランスとは異なり、入院との関係における発症時点に基づいた症例の分類は現在行われていない。

目的
イングランドの大腸菌菌血症症例に発症時点による分類を適用した場合を評価すること。

方法
2012 年 4 月から 2016 年 3 月に Public Health England に報告された大腸菌菌血症の全症例のデータを、全国義務的サーベイランスデータベースから抽出した。症例は、入院後2日目以降に血液培養陽性であった場合に病院発症型に分類した。

結果
症例の約 21%は病院発症型に分類された。しかし、病院発症型症例の割合は、連続した12 か月ごとの期間あたり 1%ずつ減少し、2012/2013 年の 23%から 2015/16 年には 20%となった(P < 0.001)。

結論
義務的サーベイランスにより報告される大腸菌菌血症症例の約 5 分の 1 は、病院発症型であると特定された。状況によって感染予防・感染制御の戦略が変わるであろうことを考えると、この情報のルーチンのフィードバックは、感染予防・感染制御の取り組みに情報を提供するうえで重要となることが示される。この症例サブセットの分類を行うことは、大腸菌菌血症の疫学をより良く理解するための重要なステップとなる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
何でも big data は集めただけではゴミ、分類すれば宝に変わる。集める前に、どういった分析を行うために情報収集するのかをよく検討した上でサーべイランスを実施すべきである。
『Public Health England』は英国の公衆衛生週報にあたる。

日本の入院患者におけるカルバペネム耐性腸内細菌科細菌保菌の有病率およびリスク因子

Prevalence of, and risk factors for, carriage of carbapenem-resistant Enterobacteriaceae among hospitalized patients in Japan

N. Yamamoto*, R. Asada, R. Kawahara, H. Hagiya, Y. Akeda, R.K. Shanmugakani, H. Yoshida, S. Yukawa, K. Yamamoto, Y. Takayama, H. Ohnishi, T. Taniguchi, T. Matsuoka, K. Matsunami, I. Nishi, T. Kase, S. Hamada, K. Tomono
*Osaka University Graduate School of Medicine, Japan

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 212-217


背景
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)の有病率は、日本では他の多くの国よりも低いと報告されている。しかし、CRE 保菌を対象とした広範なサーベイランスは日本では実施されていない。

目的
日本における CRE 保菌の有病率を、改良型の選択的培地を用いて、CRE 保菌者であるリスクが高いとみなされる回復期の患者において検討すること。

方法
2015 年 12 月 から2016 年 1 月に、大阪府北部の急性期病院 22 施設および長期ケア施設 21 施設において横断調査を実施した。失禁補助、経腸栄養チューブ、または尿道カテーテルを使用している患者を登録した。便検体を、日本において最も高頻度にみられる種類の CRE であるイミペネマーゼ産生 CRE に対して新たに開発された M-ECC培地 を用いて調べた。陽性分離株を PCR によって分析し、遺伝子型決定を行った。保菌に関連するリスク因子をロジスティック回帰により分析した。

結果
患者 1,507 例中 184 例(12.2%)が CRE を保菌していた。陽性患者の割合は、長期ケア施設(14.9%)の方が急性期病院(3.6%)より有意に高かった(P < 0.001)。CRE 保菌のリスク因子は、長期の入院(オッズ比[OR]2.59、95%信頼区間[CI]1.87 ~ 3.60)、経腸栄養(OR 3.03、95%CI 2.08 ~ 4.42)および抗菌薬への曝露(OR 2.00、95%CI 1.40 ~ 2.87)であった。同定された 233 の CRE 分離株のうち 223 はイミペネマーゼ産生株であり、それ以外はカルバペネマーゼを産生しなかった。

結論
本稿は、日本の急性期病院および長期ケア施設の両方において CRE が大幅に拡散していることを、改良型の選択培地を用いて実証した初の報告である。協調的な地域での取り組みが、さらなる拡散を予防する上で有用となろう。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
日本国内の特定地域内の病院を対象とした、CRE サーベイランスの報告である。この論文は、blaIMP の亜型まで調べてあるとより疫学的価値の高い論文に仕上がっただろう。

流行国の病院における感染制御介入とカルバペネム耐性腸内細菌科細菌発生率との関連

The association between infection control interventions and carbapenem-resistant Enterobacteriaceae incidence in an endemic hospital

K. Hussein*, G. Rabino, O. Eluk, S. Warman, S. Reisner, Y. Geffen, L. Halif, M. Paul
*Rambam Health Care Campus, Israel

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 218-225


背景
イスラエルでは 2006 年からカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)による全国的なアウトブレイクが発生している。

目的
イスラエルの紹介病院 1 施設において実施された感染制御介入と CRE 発生率との関連を評価すること。

方法
前向きに収集されたデータの後向き準実験研究を実施した。CRE 発生率を、サーベイランスにおいて新たに CRE 獲得が認められた 100,000 病院日あたりの患者数または臨床検体数と定義し、2005 年から 2016 年の間に四半期ごとにプロットした。この期間中の様々な時点で感染制御介入を適用した。感染制御スタッフ、直腸サーベイランス培養件数、およびカルバペネム使用量に関するデータを収集した。自己相関のある分割線形回帰分析を用いて、CRE 発生率の傾向に有意な変化が生じた時点を評価し、感染制御介入実施のタイミングと観察された CRE 発生率の傾向との関連を評価した。時点間の傾向を、四半期ごとの変化率(%)および 95%信頼区間(CI)で表した。

結果
2005 年から 2008 年の間に、CRE 発生率は有意に上昇し(四半期ごとの変化率 19.7%、95%CI 11.5 ~ 28.4)、ピークにおいて 100,000 病院日あたりの新規獲得が 186.6 件に達した。2011 年半ばから追跡調査終了までに、発生率の有意な低下傾向が認められた(四半期ごとの変化率-4.5、95%CI -6.4 ~ -2.5)。患者のコホーティング、入院時の接触および高リスク患者のスクリーニングは、流行を制御するには不十分であった。手指衛生遵守率の改善、専門看護スタッフの配置、高リスク病棟における定期的スクリーニングの追加、およびカルバペネム使用の制限が必要であった。CRE 発生率の低下は、感染症専門医/感染制御看護師のスタッフ配置が 100 床当たり 1.2 ~ 1.5 倍になり、また CRE サーベイランスによる年間サンプル数が 20,000 ~ 36,000 になるのに伴って認められた。

結論
病院における CRE を制御するために、病院規模に応じた多面的な介入プログラムが必要である。

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監訳者コメント
CRE 対策には多面的な取り組みが必要である。専門的な見地から指導する医師・看護師の適正配置や監視培養検査による保菌者の可視化も重要である。

熱傷病棟におけるアウトブレイク時の多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)獲得の発生率、リスク因子および転帰

Incidence, risk factors, and outcome of multidrugresistant Acinetobacter baumannii acquisition during an outbreak in a burns unit

A.-L. Munier*, L. Biard, C. Rousseau, M. Legrand, M. Lafaurie, A. Lomont, J.-L. Donay, E. de Beaugrenier, R. Flicoteaux, A. Mebazaa, M. Mimoun, J.-M. Molina
*St Louis Hospital, France

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 226-233


背景
多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(multidrug-resistant Acinetobacter baumannii;MR-AB)は、熱傷病棟においてアウトブレイクを引き起こし得る。

目的
アウトブレイク時における MR-AB 保菌の発生率、リスク因子および転帰を研究すること。

方法
2014 年 4 月から 11 月に、パリの 1 熱傷病棟で前向き研究を実施した。患者と環境について週 1 回の監視培養を実施した。MR-AB 獲得、あるいは MR-AB 保菌のない退院または死亡が、競合イベントと考えられた。保菌のリスク因子を明らかにするため、Cox モデルを用いて単変量および多変量解析によりベースライン特性および時間依存性変数を検討した。複数部位塩基配列タイピング(MLST)を用いて MR-AB 分離株の遺伝子型を比較した。

結果
研究期間中に、熱傷病棟に 86 例が入院した。入院時に MR-AB 保菌が認められなかった 77 例のうち、25 例(32%)が MR-AB を獲得し、28 日目の累積発生率は 30%であった(95%信頼区間[CI]20 ~ 40)。MR-AB 獲得までの期間平均は 13 日(範囲5 ~ 34日)であった。多変量解析により、MR-AB 獲得のリスク因子は、皮膚移植手技の 2 回以上の実施(ハザード比[HR]2.97、95%CI 1.10 ~ 8.00、P = 0.032)および入院中の抗菌薬療法(HR 4.42、95%CI 1.19 ~ 16.4、P = 0.026)であった。MR-AB の主要な遺伝子型(ST2)は、患者および環境からの分離株のそれぞれ 94%および 92%で認められ、すべての分離株がblaOXA-23 遺伝子を保有していた。MR-AB 保菌により、入院期間が中央値で 12 日間延長した(HR 0.32、95%CI 0.17 ~ 0.58、P = 0.0002)。

結論
このアウトブレイク中に MR-AB 獲得の高い発生率が認められ、患者および環境からのほとんどの分離株は単一の遺伝子型に属していた。MR-AB 保菌は、皮膚移植手技、抗菌薬使用の増加、および長期入院と関連していた。

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監訳者コメント
熱傷病棟入院患者の 3 分の 1 が MR-AB を獲得していたというのは、驚異である。リスク因子としての抗菌薬による選択圧や長期療養などの結果は従来から指摘されているものである。MR-AB は様々な環境に対応し長期間生存するため、一度アウトブレイクした場合徹底した環境整備が求められる。

ドイツ北東部の病院以外のケア現場における感染制御策および多剤耐性病原体の有病率:1日間の点有病率調査の結果

Infection control measures and prevalence of multidrug-resistant organisms in non-hospital care settings in northeastern Germany: results from a one-day point prevalence study

N.O. Hübner*, K. Dittmann, R. Begunk, A. Kramer, the Action Group Infection Prevention (AGIP)
*University Medicine Greifswald, Germany

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 234-240


背景
多剤耐性病原体(MDRO)の疫学および感染制御策に関する既存の文献の多くは、依然として病院の医療現場に焦点を当てている。

目的
2015 年、ドイツのメックレンブルグ‐西ポメラニア州において、長期ケア施設(LTCF)、リハビリテーションクリニック、および在宅ケアサービスを対象に、MDRO の有病率、感染制御に関する構造的データ、およびケア現場間の紹介ネットワークを評価する横断的調査を実施すること。

方法
ルーチンの微生物学的データおよび構造的データ(MDRO スクリーニングのストラテジー)、ならびに紹介施設による MDRO 患者移送シートの遵守状況(ドイツ国内で義務付けられている)を用いた、任意、無記名式の点有病率調査。LTCF 24 施設、リハビリテーションクリニック 9 施設、および在宅ケアサービス 6 施設の計 39 施設のデータを分析した。

結果
最も報告が多かった病原体はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)であり、有病率は在宅ケアサービスで 2.09%、LTCF で 1.43%、リハビリテーションクリニックで 0.53%であった。紹介文書中の MDRO 状況に関する情報の欠落は、すべてのタイプの施設において、関連する重要な問題であった。

結論
本研究の結果は、急性期病院と病院以外のケア現場が疫学的に強くリンクしていることを示唆している。このことから、抗菌薬耐性の抑制の取り組みを成功させるには、取り組みを単一施設に限定するのではなく、紹介ネットワークで結びついている様々な現場を組み入れる必要があることは明らかである。同様のアプローチを用いた臨床現場での調査と比較すると、MRSA の有病率は病院と同等である。これに対し、ケア施設では、病院が持つ感染制御のリソースが不足している。

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監訳者コメント
1 日間の点有病率調査はスナップショットサーベイランスとも呼ばれ、状況を大まかに把握したいときに、労少なく益多い手法である。この調査により、医療施設と非医療施設の MDRO がリンクしている可能性が示唆され、さらに、その状況において、非医療機関では感染制御に関するリソースが不足していることが浮かび上がった。

救急部入院患者におけるカルバペネム耐性腸内細菌科細菌:有病率、リスク因子、および獲得率

Carbapenem-resistant Enterobacteriaceae in patients admitted to the emergency department: prevalence, risk factors, and acquisition rate

M.C. Salomão*, T. Guimarães, D.F. Duailibi, M.B.M. Perondi, L.S.H. Letaif, A.C. Montal, F. Rossi, A.P. Cury, A.J.S. Duarte, A.S. Levin, I. Boszczowski
*Universidade de São Paulo, Brazil

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 241-246


背景
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)は世界中で報告されており、高い死亡率と関連する。腸管定着はリザーバとして働き、細菌間の薬剤耐性メカニズムの移行を助長する。

目的
入院時 CRE保菌患者の有病率、関連するリスク因子、および救急部内での獲得率を調べること。

方法
本研究は、2016 年 5 月から 7 月に救急部に入院した患者連続 676 例の横断的調査である。質問票による調査を実施し、入院時に直腸スワブを採取して培養法およびマルチプレックスリアルタイム PCR 法を行った。救急部滞在が 1 週間を超えた患者では再度サンプルを採取し、CRE の獲得率を求めた。

結果
46例の患者に定着が認められた。PCR 陽性はいずれも肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネマーゼであった。獲得率は 18%であった。前年の医療への曝露、肝疾患、および前月の抗菌薬の使用は、定着のリスク因子であった。医療への曝露歴のない 6 例が入院時に CRE を保菌し、市中伝播が示唆された。

結論
ハイリスク患者の救急部入院時のスクリーニングは、CRE 保菌の早期同定のためのストラテジーであり、CRE の拡散の抑制に寄与する可能性がある。

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監訳者コメント
ブラジルの 1000 床規模の大学関連病院の救急部で行った調査である。入院時の検査で約7%で CRE が確認されていた。院内での伝播が否定できない事例は 18%、市中感染が示唆される事例は 6 例であった。院内伝播率も市中感染も大変気になる多さである。

基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌の直腸保菌の迅速分子スクリーニング法としての Check-Direct ESBL Screen for BD MAX を評価した多施設前向き研究

A multi-centre prospective evaluation of the Check-Direct ESBL Screen for BD MAX as a rapidmolecular screening method for extended-spectrum beta-lactamase-producing Enterobacteriaceae rectal carriage

T. Engel*, B.J. Slotboom, N. van Maarseveen, A.A. van Zwet, M.H. Nabuurs-Franssen, F. Hagen
*Canisius-Wilhelmina Hospital, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 247-253


目的
直腸スワブを直接分析する、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌(ESBL-E)の定量的 PCR 法(qPCR)を、培養法に基づくプロトコルと比較し、両者の不一致を調べ、このアッセイを臨床現場でルーチンに適用する上での課題を明らかにした。副次的な目的は、qPCR のパフォーマンスを評価することであった。

材料および方法
オランダの教育病院 2 施設で、573 の直腸スワブを前向きに採取した。培養法およびCheck-MDR CT103XL(Check-Points 社)による追加検査を、Check-Direct ESBL Screen for BD MAX(Check-Points 社)と比較した(後者は、ESBL 遺伝子型 CTX-M1、CTX-M2、CTX-M9、および SHV2/5 を検出)。培養法に基づくプロトコル(Brilliance agar を使用)を、qPCR 法のパフォーマンス評価のゴールドスタンダードとした。

結果
573 の直腸スワブ検体のうち 74 検体(12.9%)が培養法陽性、84 検体(14.7%)が qPCR 法陽性であった。培養法陽性/qPCR 法陰性の不一致が 8 検体に、培養法陰性/qPCR 法陽性の不一致が 18 検体に認められた。培養法に対する qPCR 法の感度および特異度はそれぞれ、87.7%(95%信頼区間[CI]79.7 ~ 95.7)および 96.3%(95%CI 94.6 ~ 98.0)であった。

結論
Check-Direct ESBL Screen for the BD MAX は、容易に実施できる迅速分子診断法であり、直腸の ESBL-E 保菌のスクリーニングを有意に迅速化できる可能性がある。検査した検体の 4.5%で、培養法に基づくプロトコルと qPCR 法の不一致が認められた。qPCR 法導入に当たっての課題は、感度が不十分であること、現地の ESBL-E 遺伝子型を熟知する必要があること、および培養法陰性/qPCR 法陽性検体の解釈である。qPCR 法の感度不足は、blaTEM を分子標的に含めること、および検出限界を改善することで、最適化できるかもしれない。

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監訳者コメント
感染症の検査、中でも原因微生物を迅速に特定することが適切な感染症診療の第 1 歩であり、そのための技術開発は重要さを増している。遺伝子検査のなかでも特定領域の増幅を行うプライマーの設計によってスクリーニングの対象が限定されるため、今後は次世代シークエンサーによる全ゲノムシークエンスに対する期待が高まっている。

代替の固形培地で培養された細菌分離株のカルバペネマーゼ遺伝子検出におけるセフィエド社製 Xpert Carba-R アッセイの検証

Verification of the Cepheid Xpert Carba-R assay for the detection of carbapenemase genes in bacterial isolates cultured on alternative solid culture media

H. Tanner*
*Heartlands Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 254-257


Xpert Carba-R(セフィエド社)は、頻度の高い 5 つのカルバペネマーゼ遺伝子を検出および識別するための PCR アッセイである。製造者の指示に従って用いる場合、対象とする細菌分離株は血液培地またはマッコンキー寒天培地で培養しなければならい。本研究は、既知のカルバペネマーゼ遺伝子を有する様々な細菌分離株パネルに対して、同アッセイが高い性能を発揮することを確認している。本研究はまた、同アッセイが、本 PCR アッセイの製造者により推奨されていなかった 3 つの固形寒天培地、すなわち CLED(Cystine-Lactose-Electrolyte-Deficient)、ChromID CARBASMART、およびニュートリエント斜面培地を用いた場合に、高い性能を発揮することを示している。これらの培地のいずれかで直接分離株を調べることで、検査室による報告の遅れが回避可能である。

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監訳者コメント
現在、様々な菌種の様々な薬剤耐性を正確に、迅速に、そして簡便に検出する方法についての検討が行われている。セフィエド社の Xpert システム自体はすでに日本で結核菌およびリファンピシン耐性遺伝子を検出する製品が導入されている。今後も新たな検査方法が次々に製品化されることが予想されるが、各病院でそれぞれの製品を比較検討し、必要なものを選択することが重要である。

内科病棟における末梢静脈カテーテル関連血流感染の全国的研究

Nationwide study on peripheral-venous-catheter-associated-bloodstream infections in internal medicine departments

M. Guembe*, M.J. Pérez-Granda, J.A. Capdevila, J. Barberán, B. Pinilla, P. Martín-Rabadán, E. Bouza on behalf of the NUVE Study Group
*Hospital General Universitario Gregorio Marañón, Spain

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 260-266


背景
末梢静脈カテーテル(PVC)の使用は集中治療室外で増加しており、PVC 関連血流感染(PVC-BSI)の発生率も同様に増加している。PVC は内科病棟で広く使用されるが、内科病棟における PVC-BSI の発生率およびその特徴に関するデータは不十分である。

目的
スペインの内科病棟で認められた PVC-BSI エピソードの発生率を評価すること。

方法
スペインの 14 の内科病棟を対象に、1 年間の多施設前向き観察コホート研究を行った。PVC を 1 本以上挿入され菌血症が認められた成人の入院患者を研究に含めた。患者背景データおよび臨床データは現地コーディネーターにより提供された。

結果
70 件の PVC-BSI が記録され、PVC-BSI の全発生率は内科病棟入院 1,000件あたり 1.64 件であった。患者の平均年齢は 67.44歳(標準偏差16.72)であった。PVC の 25.7%はすでに不要となっていると推定された。最も多く分離された病原体は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)であった(41.7%)。静脈炎は、44 件(62.9%)で臨床的に明らかに認められ、救急部でのカテーテル挿入の独立した予測因子であることが示された(オッズ比 5.44)。粗死亡率および寄与死亡率はそれぞれ、12.9%および 5.7%であった。

結論
PVC は、スペインの内科病棟において、菌血症の重大なリスクをもたらす。本研究集団では、静脈炎は、すべての菌血症患者で臨床的に明らかであったわけではなかった。本研究の結果から、PVC-BSI および関連合併症の発生率を低下させ費用を削減するためには、内科病棟と救急部の両方で、教育的および介入的な予防策が必要であることが裏付けられる。

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監訳者コメント
従来カテーテル関連血流感染症のサーベイランスは主に中心静脈カテーテルを対象に行われてきた。しかし実態としては PVC の方が多く使用されており、その感染率や臨床的影響はよく分かっていなかった。近年 PVC を対象とした研究が増加し、本研究のように一定の感染率および臨床的影響があることが分かってきた。今後は一層 PVC 挿入患者に対する感染管理を強化していく必要があるだろう。

新生児における中心ライン関連血流感染のリスクと留置期間

Dwell time and risk of central-line-associated bloodstream infection in neonates

E. Sanderson*, K.T. Yeo, A.Y. Wang, I. Callander, B. Bajuk, S. Bolisetty, K. Lui for the NICUS Network
*University of New South Wales, Australia

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 267-274


背景
ハイリスクの新生児で広く使用される、臍静脈カテーテル(umbilical venous catheters;UVC)または末梢挿入式中心静脈カテーテル(peripherally inserted central catheter;PICC)には、その後の中心ライン関連血流感染(central-line-associated bloodstream infection;CLABSI)のリスクが上昇する留置期間の閾値が存在する可能性がある。

目的
UVC、PICC、または両者を連続して挿入された新生児において、CLABSI のリスクを評価すること。

方法
地域の新生児集中治療室 10 室に入室し 2007 年から 2009 年の間に UVC または PICC を挿入された乳児 3,985 例を研究に含めた。このうち 1,392 例は UVC のみ(グループ 1)、1,317 例は PICC のみ(グループ 2)、1,276 例は UVC と PICC の両方(グループ 3)を挿入された。

結果
挿入された静脈カテーテル 6,000 本、合計 43,302 カテーテル・日において、403 件のCLABSI が発生した。CLABSI 発生率は、グループ 1(1,000 UVC・日あたり 3.3 件、在胎週数の中央値:37 週)およびグループ 2(1,000 PICC・日あたり 4.8 件、在胎週数の中央値:30 週)と比較して、在胎週数が最も短かったグループ 3 で高かった(1,000 UVC・日あたり 16.9 件、1,000 PICC・日あたり 12.5 件、在胎週数の中央値:28 週)。生命表および Kaplane-Meier 法によるハザード分析では、UVC CLABSI 発生率は段階的に増加し、10 日目には 1,000 UVC・日あたり 42 件に達した(発生率が最も高かったのはグループ 3 で、1,000 UVC・日あたり 85 件)。PICC CLABSI 発生率は、1,000 PICC・日あたり 12 ~ 20 件で推移し比較的一定していた。PICC と比較して、UVC は、留置期間を調整した補正 CLABSI リスクが高かった。グループ 3 では、4 日目より前の UVC の選択的な交換は、それ以降の交換よりも CLABSI リスクが低い傾向があるかもしれない。

結論
PICC 抜去のカットオフ値(その値を超えたら選択的に抜去すべきである留置期間)は認められなかった。4 日目より前の UVC の早期抜去と PICC への交換は考慮されるかもしれない。

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監訳者コメント
新生児領域の感染対策は専門性が高く、またエビデンスも集積されていないが、2011 年にCDC が出したカテーテル関連血流感染症のガイドラインでは臍帯カテーテルの項目が設けられ、無菌管理されている場合は 14 日まで使用できるとある。このような研究結果やガイドライン、各施設の状況にあわせて最適なマニュアルを作成していく必要があるだろう。

集中治療室向け多施設共同教育プログラムによるカテーテル関連血流感染の制御★★

Controlling catheter-related bloodstream infections through a multi-centre educational programme for intensive care units

M. Musu*, G. Finco, P. Mura, G. Landoni, M.F. Piazza, M. Messina, M. Tidore, M. Mucci, M. Campagna, M. Galletta
*University of Cagliari, Italy

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 275-281


背景
中心静脈カテーテルの挿入および留置に関連する血流感染は、集中治療室(ICU)における医療関連感染症の原因として最も高頻度に認められ、入院期間の延長および医療費追加の原因となっている。

目的
医療従事者向け教育プログラムが感染症の程度および傾向に有意な変化をもたらすかどうかを検討すること。

方法
本研究は、2012 年 7 月から 2014 年 8 月までイタリアの 5 カ所の ICU で実施した。感染を制御するためのサーベイランスおよび教育的介入を適用した。手指消毒手順の遵守状況を相対的リスクおよび 95%信頼区間に基づいて評価した。中断時系列分析を用いて、介入中の感染症の程度および傾向の変化を検討した。

結果
手指消毒手順の遵守率は、すべての医療従事者群で介入中に改善が認められたが、医師の遵守率が最も低かった(看護師 52.4%~92.1%、看護助手 71.0%~92%、医師 71.0%~92%; P < 0.001)。介入中に、中心静脈カテーテル関連血流感染症発症率の有意な低下(21%~55%)が認められた。毎月の感染症傾向に軽微な改善も認められたが、統計学的に有意ではなかった。

結論
中心静脈カテーテルの取り扱いよりもむしろ全般的に優れた感染管理に焦点を当てた教育プログラムは、改善が時間の経過とともに持続されなくても、中心静脈カテーテル関連血流感染症発症率の低下につながった。実施状況のフィードバックを継続的に実施し、すべての医療従事者において指針への長期的な遵守を促すべきである。

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監訳者コメント
血流感染、特に中心静脈カテーテル関連血流感染症(CRBSI)は医療関連感染の約 10%を占め、死亡率はときに 25%に達する。また、職員教育と遵守状況をオーディットし、その結果を現場へ還元することにより、CRBSI の発生率を 40 ~ 89%減少させることができる。プロセスサーベイランス、アウトカムサーベイランス、遵守率の継続的観察、教育、発生率の現場への報告、感染対策の実施状況のフィードバックの 6 つの介入を防止策として CDC では推奨している。本論文ではポスターや説明文等を ICU 内に掲示し、毎月のミーティングにおいて、ビデオや実地演習を含む教育訓練と現状の手順について討論をし、自主的にこれらを行うことで感染対策実施のための動機づけをおこなった。その結果手指衛生の遵守率が上昇し、CRBSI の発生率が最大 55%減少した。しかしながら、医師は、手指衛生の遵守率に加え、教育訓練のためのミーティングへの参加率も他の職種に比し低いことが同時に指摘されており、今後の解決すべき課題である。

医療関連尿路感染症患者における感染から退院までの日数予測モデル:構造方程式モデリングを用いたアプローチ

A predictive model of days from infection to discharge in patients with healthcare-associated urinary tract infections: a structural equation modelling approach

B.G. Mitchell*, M. Anderson, J.K. Ferguson
*Avondale College of Higher Education, Australia

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 282-287


背景
入院期間は、費用が医療関連感染症との関連でどのように変化するかを説明する重要な要素であり、この変数は費用評価に用いられるモデルの基盤となる。したがって、感染症に関連した入院期間の推定は正確に行う必要がある。

目的
医療関連尿路感染症患者を対象に、構造方程式モデリングを用いて、病院の規模、年齢および患者の併存疾患と、入院から感染までの日数および感染から退院までの日数との関係を検証すること。

方法
オーストラリア、ニューサウスウェールズ州の病院 8 施設における非流動コホート研究。入院期間が 48 時間を超え、医療関連尿路感染症に罹患した全患者を対象とした。

結果
適格患者 162,503 例の入院において、2,821 例(1.73%)が医療関連尿路感染症に罹患した。提案されたモデルの適合度指標は統合した標本において許容範囲内であることが構造方程式モデリングによって示された(GFI = 1.00、AGFI = 1.00、NFI = 1.00、CFI = 1.00、RMSEA = 0.000)。主な結果から、患者の年齢は入院から感染までの日数および感染から退院までの日数と直接関連していることが示された。患者の併存疾患は、入院から感染までの日数および感染から退院までの日数の変数と直接関連していた。多母集団解析にて、男性患者では、女性患者と比較して、入院から感染までの日数に対する年齢の影響が大きいことが示された。さらに、男性患者では、女性患者と比較して、入院から感染までの日数に対する併存疾患数の影響が有意に大きかった。

結論
構造方程式モデリングを用いて、医療関連感染症および感染から退院までの日数の予測因子を探索的に検討した初の公表された研究であり、入院中の感染時期を考慮することが重要であり、患者の併存疾患は感染時期に影響を及ぼすことが確認できる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
構造方程式モデリング(SEM)とは、「直接観測できない潜在変数を導入し、潜在変数と観測変数との間の因果関係を同定することにより社会現象や自然現象を理解するための統計的アプローチ」であり、重回帰分析や因子分析、パス解析などの機能を併せ持つ統合手法として、従来の多変量解析を超えた一歩進んだ解析手法とされている。本論文では、この新たな解析方法を用いて医療関連尿路感染症(HAUTI)を解析した。その結果、高齢で合併症を多く持つ患者は HAUTI を入院後早期に発症し、退院時期が延長することが判明した。SEM は、感染制御研究における新たな統計解析方法としての可能性を示唆している。

抗菌薬管理プログラムが救急部外来患者の抗菌薬使用の最適化に及ぼす影響★★

Impact of an antimicrobial stewardship programme to optimize antimicrobial use for outpatients at an emergency department

A. Dinh*, C. Duran, B. Davido, F. Bouchand, L. Deconinck, M. Matt, O. Sénard, C. Guyot, A.-So. Levasseur, J. Attal, D. Razazi, T. Tritz, A. Beauchet, J. Salomon, S. Beaune, J. Grenet
*Raymond Poincaré University Hospital, Versailles Saint Quentin University, France

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 288-293


背景
抗菌薬管理プログラム(antimicrobial stewardship programme;ASP)は入院患者の抗菌薬使用の最適化に有効であったが、目まぐるしく患者が移動する救急部の臨床現場で ASP を成功させるのは難関である。

目的
2015 年 4 月、外来患者の抗菌薬使用に対する ASP の効果を明らかにするため、当救急部で ASP を実施した。

方法
本研究は、ASP 実施前の 1 年間(2012 年 11 月から 2013 年 10 月)と、実施後の 1 年間(2015 年 6 月から 2016 年 5 月)の抗菌薬処方の質を比較した単施設研究であった。施設の抗菌薬処方指針の遵守状況を評価するため、感染症専門医 1 名および救急部担当医師 1 名が各期間におけるすべての成人外来患者(入院期間が 24 時間未満)の抗菌薬処方を評価し、続いて不適切な処方を分類した。

結果
ASP の実施前後で、当救急部においてそれぞれ 34,671 件および 35,925 件のコンサルテーションが登録され、そのうち 25,470 件および 26,208 件が外来患者であった。抗菌薬が処方されたコンサルテーションはそれぞれ 769 件(3.0%)および 580 件(2.2%)であった(P < 0.0001)。ASP の実施前後の指針不遵守件数はそれぞれ 484 件(62.9%)および 271 件(46.7%)であった(P < 0.0001)。不遵守の内訳は、抗菌薬の不要な処方が 197 件(25.6%)対 101 件(17.4%)(P < 0.0005)、不適切なスペクトルの抗菌薬使用が 108 件(14.0%)対 54 件(9.3%)(P = 0.008)、過剰な抗菌薬投与期間が 87 件(11.3%) 対 53 件(9.1%)(P > 0.05)、不適切な抗菌薬の選択が 11 件(1.4%)対 15 件(2.6%)(P > 0.05)であった。

結論
ASP の実施によって、不要な抗菌薬処方の件数は顕著に減少したが、不適切な処方における他の大半の側面への影響はほとんどなかった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
救急現場(ED)での外来患者への ASP は、患者の在院時間が短時間でかつ来院回数が限られているなど通常の入院患者における ASP とは実施環境が大きく異なるため、効果的なASP は難しい。本論文では、①感染症専門医(IDS)が ED での抗菌薬処方について勤務時間の 2 割を費やしアドバイスを実施、②半年に 1 度 EDで遭遇する感染症を中心に IDS による抗菌薬処方の勉強会、③感染症に特化した診療ガイドラインのハンドブックを配付、④勤務時間中は個々の症例への相談を IDS にできる体制、⑤適切な処方を推進できるように毎日のミーティングで優秀者の発表、⑥週 2 回細菌培養結果と処方抗菌薬を IDS がチェックなどのプログラムを実施した。その結果、処方量の減少(不必要な抗菌薬処方の減量)には成功したが、過剰な抗菌薬投与期間や不適切な抗菌薬選択を修正することができなかった。しかしながら、ED での ASP の効果的な実施には処方チェックをしてくれる専任の IDS または感染症薬剤師が必要である。

電気温水ビデ付きトイレの公衆衛生および医療関連リスク★★

Public health and healthcare-associated risk of electric, warm-water bidet toilets

A. Kanayama Katsuse*, H. Takahashi, S. Yoshizawa, Kazuhiro Tateda, Y. Nakanishi, A. Kaneko, I. Kobayashi
*Toho University Faculty of Nursing, Japan

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 296-300


背景
近年、日本において病院内のビデ洗浄付きトイレの導入に対し、長期入院患者からの薬剤耐性菌の交差汚染の可能性について懸念する声が上がっている。

目的
日本国内の大学附属病院においてビデ洗浄付きトイレから回収した薬剤耐性菌の分離状況を検討すること。

方法
大学病院の電気ビデ洗浄付きトイレ 292 カ所すべてから試料を採取し、汚染状況を調査した。試料採取には培養用スワブを使用し、ウォータージェットノズルおよび便座から採取した。

結果
試料を採取した便座 292 個のうち 254 個(86.9%)の温水ノズルで、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、Streptococcus 属菌、Enterococcus 属菌、腸内細菌または腸内細菌以外のグラム陰性菌の複数の微生物汚染が確認された。黄色ブドウ球菌は、ウォータージェットノズル 1 個と便座 9 個から検出されたが、そのうちウォータージェットノズル 1個と便座 1 個はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌であった。さらに同じトイレのウォータージェットノズルと便座の両方が、CTX-M-9 型基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生大腸菌(Escherichia coli)によって汚染されていた。培養されたグラム陰性菌のうち最も分離頻度が高かったのはステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)であり、39 カ所のビデ洗浄付きトイレから回収された。

結論
ビデ洗浄付きトイレの温水ノズルは、多種多様な細菌に汚染されており、交差感染の媒体となる可能性がある。病院環境においてビデ洗浄付きトイレを共用する場合、患者の臨床的背景を考慮しなければならない。これらの結果に基づき、ビデ洗浄付きトイレはリスクマネジメントプログラムの対象とし、モニタリングおよび消毒の措置を講じるべきである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
本邦でのウォシュレット付きトイレ(温水洗浄便座)の普及率は世界で最も高いと思われる。医療機関においても多数設置されているが、医療機器としての扱いは受けておらず、複雑な構造と、機種による構造差もあいまって、清掃に課題があることはかねてから認識されていた。使用者の腸内細菌叢による汚染と伝播可能性も予想されていたが、具体的な情報が得られた点で、本研究の価値は高いと思われる。構造・機種ごとの差異や、清掃・消毒による菌数減少効果、効果的な清掃法について、今後様々な追試が行われることに期待したい。

咽頭スワブを用いたAlere i Influenza A&B near-patient testの診断精度および費用の分析

Diagnostic accuracy and cost analysis of the Alere i Influenza A&B near-patient test using throat swabs

S. Davis*, A.J. Allen, R. O’Leary, M. Power, D.A. Price, A.J. Simpson, A. Tunbridge, L. Vale, M. Whiteside, C. Evans, M. Raza
*Sheffield Teaching Hospitals NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 301-309


背景
インフルエンザの診断において、臨床診断の感度だけでは不十分である。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いた検査の感度は高いが、結果が得られるまでに時間がかかり、隔離および治療までの期間が延長する可能性がある。最近まで、臨床でルーチンに使用でき、感度が十分な near patient test(ベッドサイド検査、別名ポイント・オブ・ケアテスト:POCT)はなかった。

目的
適応外の咽頭スワブを用いて、Alere i Influenza A&B NPT(Alere Inc.、米国マサチューセッツ州ウォルサム)の診断精度、結果が得られるまでの時間、臨床的意義および費用について検討すること。

方法
費用モデルを用いた前向き、多施設共同(英国の国民保健サービス[NHS]病院 4 施設)、診断精度コホート研究。インフルエンザの疑いがある患者から咽頭スワブで検体を採取し、まず対照として従来の PCR を用いてインフルエンザであるかどうか調査した。次いで2 本目の咽頭スワブについて NPT を行った。

結果
計 827 例の被験者が組み入れられた。そのうち 589 例を本解析の適格とした。感度は 75.8%(95%信頼区間[CI]67.0 ~ 84.6)、特異度は96.8%(95%CI 95.2 ~ 98.3)であった。シェフィールドの病院(Northern General Hospital:82.1%、Royal Hallamshire Hospital:83.3%)およびそれ以外の病院(Doncaster Royal Infirmary:71.4%、Newcastle’s Royal Victoria Infirmary:50.0%)において、感度にばらつきが見られたが、特異度は高かった(92%~100%)。陽性反応的中度は 81.2%(95%CI 72.9 ~ 89.5)、陰性反応的中度は 95.6%(95%CI 93.9 ~ 97.4)であり、有病率は 15.4%であった。PCR の結果が得られるまでの期間の中央値は 1.1 日(院内検査室)および 5.2 日(院外検査機関)であった。隔離の結果は、インフルエンザ陽性の 75%が隔離されず、隔離された被験者の 69%がインフルエンザではなかった。被験者 1,000 例のコホートあたり、NPT によって削減できる診断以外の年間費用は215,040 ポンドであった。

結論
咽頭スワブを用いた Alere i NPT の初となる本前向き研究によって、高い特異度、季節性流行時における高い陽性反応的中度、結果の迅速な利用可能性が示され、相当な費用削減につながる可能性が示唆された。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
本研究で用いられたキットは、15 分で結果が得られる核酸増幅検査で、等温で反応を進行させる点が特徴である。同一患者からの咽頭スワブについて、インフルエンザを含む呼吸器系ウイルスの PCR と、被検キットの結果を比較したが、この被検集団でのインフルエンザの有病率は 15%であった。Alere i NPT の検出力自体は、概してイムノクロマト法とあまり差がない程度であったが、本研究の優れている点は、隔離を含む費用効果についても十分なデータを得、評価できたことにある。

医療センター内で捕獲されたトコジラミ(Cimex lectularius)の生育ステージの分析から、トコジラミ持ち込みの実数は過少報告されていることが示唆される★★

Analysis of the life stages of Cimex lectularius captured within a medical centre suggests that the true numbers of bed bug introductions are under-reported

J.M. Sheele*, E. Barrett, D. Dash, G.E. Ridge
*University Hospitals Cleveland Medical Center and Case Western Reserve University, USA

Journal of Hospital Infection (2017) 97, 310-312


医療機関内でのトコジラミの疫学についてはほとんど分かっていないが、自然環境下では若虫が優勢である。本研究では医療センター内で捕獲したトコジラミの生育ステージを決定したが、ステージが進んだトコジラミの方が、より若い個体よりも、捕獲される割合が高いことが判明した。さらに捕獲された初齢幼虫、3 ~ 5 齢幼虫、および雌成虫の数は、自然環境下で認められた各生育ステージの個体数と有意に異なった(P < 0.01)。相当数の若齢のトコジラミが医療センター内へ持ち込まれており、病院スタッフに見逃されている可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
医療機関内にトコジラミ(南京虫)が持ち込まれているとの指摘は、重大な意味を持つ。近年本邦でもピレスロイド系殺虫剤に対する抵抗性を獲得したトコジラミが、宿泊施設や一般家庭での急増していると報告されており、医療機関内での発生及び患者発生について十分警戒しておかねばならない。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.