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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

2020/21 年までのイングランドにおける大腸菌(Escherichia coli)菌血症の発生率および 30 日全死因死亡率を推定する

Estimating the incidence and 30-day all-cause mortality rate of Escherichia coli bacteraemia in England by 2020/21

A. Bhattacharya*, O. Nsonwu, A.P. Johnson, R. Hope
*Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 228-231


大腸菌(Escherichia coli)菌血症の発生率は、イングランドで上昇しつつある。2012/13 年から 2016/17 年の大腸菌菌血症を対象とした全国義務的サーベイランスのデータを用いて、我々は、感染率を低減する新しい介入法がない中で、2020/21 年までの大腸菌菌血症の発生率と 30 日全死因症例致死率を推定することを目的とした。年齢、性別、ならびに院内発症型か市中発症型かについて補正した後、2020/21 年までに大腸菌菌血症の発生率は人口(N = 50,663)100,000 人あたり 90.5(95%予測区間[PI]89.8 ~ 91.3)、関連する症例致死率は人口(N = 6,554)100,000 人あたり 11.5(95%PI 11.2 ~ 11.8)になると推定される。

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監訳者コメント
英国における大腸菌菌血症はかなり問題視されているようである。実態把握に努めているが、増加の原因とその対策についての知見が今後の課題である。

血液培養パスウェイの最適化:敗血症管理および診断的抗菌薬適正使用支援の改善を目的とするテンプレート

Optimization of the blood culture pathway: a template for improved sepsis management and diagnostic antimicrobial stewardship

M.J. Weinbren*, M. Collins, R. Heathcote, M. Umar, M. Nisar, C. Ainger, P. Masters
*Chesterfield Royal Hospital Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 232-235


抗菌薬耐性の増加と血液培養装置のデザインの進歩にもかかわらず、検査室における血液培養の処理方法は過去 30 年間変化しないままである。研究実施病院において、血液培養装置を血液検査室に置き、血液培養管理の分析前段階および分析段階を最適化することで、ほとんどの血液培養分離株について検出までの時間が 12 時間以内に短縮した。大腸菌(Escherichia coli)を含む血液培養陽性の 50%では、最終的に抗菌薬感受性試験の結果が 24 時間以内に報告された。大腸菌陽性の血液培養の 85%超では、採血から 36 時間以内に抗菌薬感受性試験の結果が報告されていたのに対し、対照病院では 66 時間かかっていた。

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監訳者コメント
菌種によって血液培養で同定できるタイミングが異なる。従って、陽性を検出するタイミングが重要である。陽性時にリアルタイムに抗菌薬療法の軌道修正ができれば、患者の救命率を上げることが可能だろう。

フランスの病院における基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生腸内細菌科細菌の保菌:PORTABLSE 研究

Carriage of ESBL-producing Enterobacteriaceae in French hospitals: the PORTABLSE study

B. Pilmis*, V. Cattoir, D. Lecointe, A. Limelette, I. Grall, A. Mizrahi, G. Marcade, I. Poilane, T. Guillard, N. Bourgeois Nicolaos, J-R. Zaha, A. Le Monnier
*Groupe Hospitalier Paris Saint-Joseph, Paris, France

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 247-252


背景
現在、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生腸内細菌科細菌の保菌または感染を有する患者に対して接触予防策が推奨されている。最近の研究により、この戦略に疑問が投げかけられている。本研究の目的は、入院患者における ESBL 産生腸内細菌科細菌の糞便保菌率を病棟の種類に従って評価すること、また糞便保菌に関連するリスク因子を特定することであった。

方法
点有病率調査を、フランスの 8 病院の 5 つの異なる病棟(内科病棟、外科病棟、集中治療室、治療後リハビリテーション病棟、老人科病棟)で実施した。本研究に組み入れた全患者で新鮮便検体が得られた。

結果
本研究に計 554 例を組み入れ、年齢中央値は 73 歳(範囲 60 ~ 82 歳)であった。全体の ESBL 産生腸内細菌科細菌の糞便保菌率は 17.7%であった。ESBL 産生腸内細菌科細菌で最も多く認められた細菌種は、大腸菌(Escherichia coli)(71.4%)、次いで肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(14.3%)であった。単変量解析で ESBL 産生腸内細菌科細菌の糞便保菌に関連したリスク因子は、パリ地域の居住(P < 0.01)および老人科病棟への入院(P < 0.01)であった。興味深いこととして、スクリーニング前の累積入院期間は、病棟の種類にかかわらず、ESBL 産生腸内細菌科細菌の有意に高い保菌率とは関連しなかった。ESBL 産生腸内細菌科細菌の保菌率は、老人科病棟(28.1%)および集中治療室(21.7%)の入院患者の方が、外科病棟(14.8%)、内科病棟(12.8%)または治療後リハビリテーション病棟(11.2%)の入院患者よりも大幅に高かった。

結論
ESBL 産生腸内細菌科細菌の全体の糞便保菌率は 17.7%で、それまでに保菌が確認されていた患者はわずか 21%であった。入院からスクリーニング実施までの遅延は、ESBL 産生腸内細菌科細菌の糞便保菌率の上昇と関連しなかった。

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監訳者コメント
ESBL 産生腸内細菌科細菌のリザーバーとして急性期病院ではなく、高齢者の集団生活や慢性期医療を提供している施設に焦点があてられている。こうした施設には感染症の専門家や疫学調査の専門家、感染管理認定看護師等がいるわけではないので地域連携で支援を行う必要がある。

接触患者における OXA-48 産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)獲得のリスク因子:多施設共同研究

Risk factors for acquisition of OXA-48-producing Klebsiella pneumoniae among contact patients: a multicentre study

D. Hilliquin*, R. Le Guern, V. Thepot Seegers, C. Neulier, A. Lomont, V. Marie, C. Legeay, J. Merrer, D. Lepelletier, A.M. Rogues, B. Grandbastien, J.C. Lucet, J.R. Zahar
*Unité de Prévention et de Lutte contre les Infections Nosocomiales, France

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 253-259


背景
入院中のカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)保菌者のコホーティングは、院内拡散を抑制する。

目的
コホーティングが行われていない集団において、初発患者と接触した患者の CPE 獲得のリスク因子を特定すること。

方法
多施設共同後向きマッチド症例対照研究を 5 病院で実施した。初発患者から OXA-48 産生肺炎桿菌を獲得した接触患者(症例)各例を、同じ病棟内の入院および同様の曝露時間でマッチさせた、同じ初発患者と接触した患者(対照)3 例と比較した。

結果
2 次症例 51 例と対照 131 例を組み入れた。単変量解析により、曝露時間(オッズ比[OR]1.06、95%信頼区間[CI]1.02 ~ 1.1、P = 0.006)、入院時の併存感染症(OR 3.23、95%CI 1.42 ~ 7.35、P = 0.005)、入院前 1 か月以内の抗菌薬療法(OR 2.88、95%CI 1.34 ~ 6.2、P = 0.007)、曝露期間中の抗菌薬療法(OR 5.36、95%CI 2.28 ~ 12.6、P < 0.001)、1 件以上の侵襲的手技の使用(OR 2.99、1.25 ~ 7.15、P = 0.014)、侵襲的手技の件数(OR 1.52、95%CI 1.05 ~ 2.19、P = 0.025)、および地理的近接性(OR 2.84、95%CI 1.15 ~ 7.00、P = 0.023)が、CPE 獲得と関連していた。多変量解析では、曝露期間中の抗菌薬療法(OR 6.36、95%CI 2.46 ~ 16.44、P < 0.001)、1 件以上の侵襲的手技の使用(OR 2.92、95%CI 1.04 ~ 8.17、P = 0.041)、および地理的近接性(OR 3.69、95%CI 1.15 ~ 11.86、P = 0.028)が獲得と関連していた。

結論
本研究において、地理的近接性、侵襲的手技、および曝露期間中の抗菌薬療法が、OXA-48 産生肺炎桿菌獲得と有意に関連していた。

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監訳者コメント
CPE 保菌患者がコホーティングされていない環境での、感染伝播のリスク因子を検討した論文である。今回の結果からコホーティングが感染伝播の抑制にどれぐらい寄与するかは判断が難しいと思われた。ちなみに「地理的接近性」は、この論文では「隣り合った病室あるいは向かいの病室」を意味している。これについて著者らは環境の汚染と医療従事者による伝播の可能性を述べていた。

コリスチン耐性の急速な出現と医療関連感染症の死亡に対する影響

Rapid emergence of colistin resistance and its impact on fatality among healthcare-associated infections

M. Aydın*, Ö Ergönül, A. Azap, H. Bilgin, G. Aydın, S.A. Çavuş, Y.Z. Demiroğlu, H.E. Alışkan, O. Memikoğlu, Ş. Menekşe, Ş. Kaya, N.A. Demir, I. Karaoğlan, S. Başaran, Ç. Hatipoğlu, Ş. Erdinç, E. Yılmaz, A. Tümtürk, Y. Tezer, H. Demirkaya, Ş.E. Çakar, Ş. Keske, S. Tekin, C. Yardımcı, Ç. Karakoç, P. Ergen, Ö. Azap, L. Mülazımoğlu, O. Ural, F. Can, H. Akalın, Turkish Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases, Healthcare-related Infections Study Group, Turkey
*Başkent University, Turkey

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 260-263


本稿では、2014 年から 2015 年に発生した医療関連グラム陰性菌血流感染症 1,556 症例の耐性出現と死亡の予測因子について報告する。肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)のコリスチン耐性率は、2013 年では 6%であったのに対し、本研究では 16.1%であった。計 660 症例(42.4%)が死亡に至った。死亡率は、アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)(58%)菌血症の患者で最も高く、続いて、緑濃菌(Pseudomonas aeruginosa)(45%)、肺炎桿菌(41%)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)(32%)、大腸菌(Escherichia coli)(28%)菌血症の患者で高かった。多変量解析により、カルバペネム[オッズ比(OR)1.02、95%信頼区間(CI)1.01 ~ 1.04、P = 0.002]およびコリスチン(OR 1.1、95%CI 1.03 ~ 1.17、P = 0.001)の最小発育阻止濃度は、死亡と有意に関連していることが示された。

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監訳者コメント
本論文中に示されているアシネトバクターや肺炎桿菌の抗菌薬感受性の低さの背景、特に抗菌薬の使用状況が大変気になった。

基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)保有の検出を目的として直腸スワブと増菌培養を用いた ESBL PCR 法

Extended-spectrum β-lactamase (ESBL) polymerase chain reaction assay on rectal swabs and enrichment broth for detection of ESBL carriage

W. van den Bijllaardt*, M.M. Janssens, A.G. Buiting, A.E. Muller, J.W. Mouton, J.J. Verweij
*Elisabeth-Tweesteden Hospital, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 264-269


背景
基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)保有の高リスク患者に対する ESBL スクリーニングおよび接触予防策は、重要な感染制御策と考えられている。接触予防策は費用がかかり、また患者ケアに有害な影響を及ぼす可能性があるため、ESBL 保有の迅速な除外と、それによる接触予防策のより早期の中止が望ましい。

目的
本研究では、ESBL 保有に対するスクリーニング検査として、blaCTX-M 遺伝子を標的としたESBL PCR 法の性能を評価した。

方法
2 つの方法として、直腸スワブに直接実施する PCR 法 と、一晩培養後の増菌培養を用いた PCR 法を比較した。参照標準は、選択寒天培地で一晩増菌培養した ESBL 産生腸内細菌科細菌の培養と、コンビネーションディスク拡散法により組み合わせて行った確認とした。マイクロアレイを用いて相違分析を実施した。2 次分析を実施して、PCR 法の標的として blaSHV 遺伝子を含めることによる性能改善を評価した。

結果
患者 385 例から採取した直腸スワブ検体計 551 個を解析対象とし、このうち 28 個(5%)は培養で ESBL 陽性であった。感度、特異度、陽性的中率および陰性的中率は、スワブ検体に対する直接の PCR 法ではそれぞれ 86%、98%、67%および 99%、増菌培養を用いた PCR 法ではそれぞれ96%、98%、75%および 100%であった。検査の標的として blaSHV 遺伝子を追加すると、陽性的中率は低下したが、感度と陰性的中率には変化がなかった。

結論
直腸スワブ検体に対する直接の PCR 法による ESBL スクリーニングは、陰性的中率が高く、従来の培養と比べて最大 48 時間速く、したがって接触予防策のより早期の中止を促進し、これにより患者ケアの改善と院内の貴重な資源の節減をもたらす。

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監訳者コメント
ESBL 保有に対するスクリーニング検査として、CTX-M が優勢なエリアでの blaCTX-M 遺伝子を標的とした ESBL PCR 法の性能を評価したオランダの研究である。PCR 検査で陰性になれば、接触予防策を解除する。検査に要する費用は上がるが、接触予防策を最大 2 日早く解除することによる費用削減が可能になる、と言う。他の国で有用かどうかは、検査費用だけでなく Prevalence も重要な因子になると思われる。

直腸検体からのカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌の至適検出:豊富な含有が果たす役割?

Optimal detection of carbapenemase-producing Enterobacteriaceae from rectal samples: a role for enrichment?

H. Ciesielczuk*, L.M. Phee, H. Dolphin, M. Wilks, B.P. Cherian, D.W. Wareham
*Barts and the London NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 270-274


背景
サーベイランスのため患者から採取した検体からカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)を検査室で検出できるようになることは、診断における課題である。CPE スクリーニング用の直腸スワブ検査の標準法がないことから、CPE の同定には、多数の表現型、遺伝子型、培養および非培養に基づくアッセイが提案されてきた。

目的
OXA-48 様カルバペネマーゼを産生する CPE をはじめ、高頻度で遭遇するすべての CPEを同定可能な CPE スクリーニングのプロトコールを開発および至適化すること。

方法
2016 年 3 月から 8 月に診断用サンプルおよび CPE 直腸スクリーニングから分離されたCPE と推定される507株で、ファロペネムに対する感受性検査を実施した。CPE 検出に至適な方法を決定するため、この CPE スクリーニング法の結果を、テモシリンを豊富に含有した培地である mSuperCARBA を用いた直接培養での結果および抗菌薬耐性アルゴリズム使用の結果と比較した。

結果
ファロペネムは、カルバペネマーゼ産生の予測因子として不十分であった(真陽性率 58%)。
テモシリンを豊富に含有する培地と抗菌薬耐性表現型の解釈的判読の組み合わせによって、CPE の検出および同定は有意に改善し(真陽性率91%)、特に OXA-48 産生 CPE において顕著であった(P = 0.03)。

結論
テモシリンを豊富に含有する選択的発色性培地と、抗菌薬耐性に基づくアルゴリズムの組み合わせによって、ルーティンでのサーベイランスおよびターゲットを絞ったサーベイランスのサンプルからの全 CPE の検出率が改善した。

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監訳者コメント
耐性菌の保菌者を検出するスクリーニング検査において、近年特に問題になっている CPEを検出する標準的な方法が存在しないのは上記の通りである。また検出したいカルバペネマーゼの種類によってもおそらく最適な検査は異なることが予想される。本論文で特に陽性的中率の高かった OXA-48 というカルバペネマーゼは日本では少なく、日本で多いIMP-1 あるいは IMP-6 といったメタロベータラクタマーゼの産生菌を効率良く検出する方法が望まれている。

集中治療室における洗面台撤去および新しい水安全方針実施後の地域流行性多剤耐性グラム陰性桿菌の制御

Control of endemic multidrug-resistant Gram-negative bacteria after removal of sinks and implementing a new water-safe policy in an intensive care unit

E. Shaw*, L. Gavaldà, J. Càmara, R. Gasull, S. Gallego, F. Tubau, R.M. Granada, P. Ciercoles, M.A. Dominguez, R. Mañez, J. Carratalà, M. Pujol
*Hospital Universitari de BellvitgeeIDIBELL, Spain

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 275-281


背景
汚染された洗面台は、集中治療室(ICU)における多剤耐性(MDR)グラム陰性桿菌(GNB)の患者の保菌/感染を促進しうるリザーバとされてきた。

目的
患者用洗面台の撤去および他の水安全戦略の実施が ICU の年間の MDR-GNB 獲得率に及ぼす影響を評価すること。

方法
この 6 年間にわたる、擬似実験的研究は、2011 年 1 月から 2016 年 12 月まで実施した。本介入は 2014 年 8 月にそれぞれ 12 室からなる ICU 成人病棟 2 棟で実施した。本介入前後の年間 MDR-GNB 率の変化を評価するため、中断時系列の分割回帰分析を用いた。未補正の相対リスク(RR)も算出した。

結果
MDR-GNB の発生率は、介入前および介入後でそれぞれ 1,000 患者・日あたり 9.15 件および 2.20 件であり、したがって、MDR-GNB 獲得率の未補正 RR は 0.24(95%信頼区間 0.17 ~ 0.34)であった。介入後の最初の時点における MDR-GNB 率と介入前の時間的傾向から予測された MDR-GNB 率に有意な変化が認められた。

結論
全患者の部屋からの洗面台の撤去を含む、新しい水安全方針の実施によって、地域流行性感染を伴う ICU の MDR-GNB の拡大制御を改善することができた。今回の結果は、地域流行性環境における MDR-GNB の発生率に洗面台使用が寄与していることを裏付けるものである。

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監訳者コメント
近年多剤耐性グラム陰性桿菌のリザーバーに洗面台が関与しているとする研究が相次いで報告されている。本論文もその一つに位置づけられるだろう。多剤耐性グラム陰性桿菌の制御に苦労している施設は、是非自施設の「水回り」を一度チェックして欲しい。

集中治療室での緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のアウトブレイク:分子タイピングおよび遺伝子タイピングによる伝播の選別

Pseudomonas aeruginosa intensive care unit outbreak: winnowing of transmissions with molecular and genomic typing

B.J. Parcell*, K. Oravcova, M. Pinheiro, M.T.G. Holden, G. Phillips, J.F. Turton, S.H. Gillespie
*Ninewells Hospital & Medical School, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 282-288


背景
医療における緑濃菌(Pseudomonas aeruginosa)のアウトブレイクは、調査に多大な時間を要し、調査自体が困難となりうる。指針では、どのタイピング法が意思決定に最も実用的かは規定されていない。

目的
緑膿菌のアウトブレイクの調査において全ゲノムシークエンス法(WGS)の有用性を探索的に検討し、パルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)および variable number tandem repeat(VNTR)解析と比較検討すること。

方法
2 年間に緑膿菌が陽性であった患者からの分離株 6 株および集中治療室(ICU)からの環境サンプル 6 検体に対して、VNTR、PFGE および WGS を実施した。

結果
VNTR および PFGE は、可能性のある感染源の詳細を明らかにし、他の感染源を除外する必要があった。WGS の結果は、関連のある分離株を明らかに区別し、洗面台の水と患者2例との伝播経路をさらに保証し、採用された制御策を支持した。

結論
WGS では、詳細情報が得られ、さらなるタイピングは不要であった。WGS は、疫学的情報とを結びつけることにより、アウトブレイクの状況を迅速かつ高精度で把握できる。WGS の実臨床での実施は、日々の診療の重大な進歩となるであろう。その再現性ならびに比較的低コストであることから広範に用いられるようになるにつれて、標準治療となるであろう。

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監訳者コメント
細菌の相同性を評価する分子疫学的手法として PFGE は長らく最も標準的な方法として用いられている。一方で WGS は「細かく分かりすぎる」ことや「高価で手間がかかる」ことが問題として考えられている。本論文はアウトブレイク調査においてこれらの手法の有用性を比較検討した論文である。結論としては、疫学調査と WGS を適切に組み合わせると最強、ということであったが、監訳者としても、まあそうだろうな、という感想である。Figure 2 に、各手法の相同性の識別能が分かりやすく表されているので参考にしていただきたい。

超音波プローブゲルの汚染が原因となった 3 次病院におけるバークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)菌血症のアウトブレイク★★

Outbreak of Burkholderia cepacia bacteraemia in a tertiary care centre due to contaminated ultrasound probe gel

R. Abdelfattah*, S. Al-Jumaah, A. Al-Qahtani, S. Al-Thawadi, I. Barron, S. Al-Mofada
*King Faisal Specialist Hospital and Research Center, Saudi Arabia

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 289-294


背景
バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)は、入院患者および免疫不全患者、特に嚢胞性線維症患者において、重要な日和見病原体のひとつである。

目的
B. cepacia 菌血症のアウトブレイクに関する疫学調査を示すこと。

方法
本研究では、2016 年 1 月から 6 月の間に、3 次病院 1 施設 3 カ所の集中治療室に入院した 14 例の患者を対象に調査を実施した。アウトブレイクは、9 例(57%)の女性患者および 6 例(43%)の男性患者において生じた。全患者の年齢は 19 歳から 85 歳にわたる成人であり、年齢中央値は 52 歳であった。患者のカルテ、検査培養、曝露物、中心ライン挿入手技をレビューした。

結果
B. cepacia は、中心静脈カテーテルの挿入時にガイドするために使用された、超音波プローブに塗布されたゲルの汚染が原因となった 14 例の患者の血液培養から分離された。パルスフィールド・ゲル電気泳動を用いた病原体の分子タイピングでは、対象患者の血液由来のB. cepacia 分離菌と超音波ゲル由来の分離菌との間に、95%の類似性が示された。

結論
まれな疾患のアウトブレイクに関する監視の進行および迅速な調査は、B. cepacia による汚染源の特定およびリスクのある患者の保護のために重要である。いかなる病院感染のアウトブレイクの感染源を特定する際にも、堅実な疫学的手法は非常に重要である。

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監訳者コメント
セパシア菌は環境や土壌に生息するブドウ糖非発酵のグラム陰性菌であり、本菌による院内感染による菌血症の報告は過去に、輸液・注射製剤や皮膚消毒剤の汚染によるものがある。本例は、エコーガイド下での中心静脈カテーテル(CVC)穿刺のためのエコープローブカバー・キットに付属しているジェルのセパシア汚染により、穿刺手技の際にカテーテルが汚染されカテーテル由来の菌血症となったとことが判明した。11 例は CVC 挿入直後のカテーテルからの血液培養で陽性となっており、強くこれを支持した。超音波ゲルはエコープローブのカバー内で使用されるため「無菌」である必要があるが、これが汚染されていた結果、アウトブレイクが発生した。感染源の調査の重要性を再認識する事例である。生産時の汚染であった。

新生児集中治療室において、事前に汚染されていた市販の 0.5%クロルヘキシジン溶液により引き起こされたバークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)による偽性菌血症のアウトブレイク

Outbreak of Burkholderia cepacia pseudobacteraemia caused by intrinsically contaminated commercial 0.5% chlorhexidine solution in neonatal intensive care units

J.E. Song*, Y.G. Kwak, T.H. Um, C.R. Cho, S. Kim, I.S. Park, J.H. Hwang, N. Kim, G-B. Oh
*Inje University Ilsan Paik Hospital, Republic of Korea

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 295-299


背景
バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)は、本来、特定の消毒薬に抵抗性を持つ。著者らは大学附属病院 1 施設 1 カ所の新生児集中治療室(NICU)における、血液培養由来の B. cepacia の分離頻度の急激な上昇を認めた。

目的
感染源を特定し、進行中の感染に介入すること。

方法
症例の定義は、2014 年 11 月から 2015 年 1 月の間に、NICU において血液培養で B. cepacia 陽性を示した患者とした。診療記録をレビューし、NICU の医療従事者に聞き取りを行った。NICU において使用され、疑いがもたれた消毒薬、血液培養用ボトル、綿球、ガーゼ、および針のサンプルが微生物学的に分析された。

結果
アウトブレイクの期間中、患者 21 例から採取された血液培養 25 件より B. cepacia が特定された。患者の臨床的特徴は偽性菌血症を示唆していた。環境サンプルに関して、B. cepacia は、NICU において採血時の皮膚消毒に使用されてきた 0.5%グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)溶液製品から培養された。B. cepacia の臨床分離株および 0.5% CHG より分離された 2 株は、同一のパルスフィールド・ゲル電気泳動パターンを示した。CHG 製品の使用中止後、アウトブレイクは終息した。

結論
この偽性菌血症の症例は、単一の製造業者が製造し汚染されていた 0.5% CHG が引き起こした。消毒薬の製造時の汚染を防ぐためには、より厳格な政府規制が必要である。さらに、入院患者において B. cepacia のアウトブレイクが生じた場合、消毒薬の微生物汚染を疑うべきである。

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監訳者コメント
市販の消毒剤は,一部を除いて一般的に「無菌製剤ではない」ため、作成工程において汚染が発生し、このような事態が発生する可能性がある。過去に消毒剤汚染による偽性アウトブレイクは多数の報告があり、製造過程でのセパシア菌汚染が発生すると消毒薬抵抗性があるため、薬剤内で生存し、汚染薬剤を使用することで感染が拡大する。本事例では、わずか1か月半の間に79 例の血液培養のうち、21 例、実に 26.6%の高率で分離されており、汚染源の発見が遅れたため患者数が増加したものである。患者への実害はなかったが、このような状況が発生した場合に消毒剤汚染の可能性をも考慮して対応をすることが必要である。

新生児集中治療室におけるカルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)のクローン性拡散★★

Clonal spread of carbapenem-resistant Acinetobacter baumannii in a neonatal intensive care unit

W.G. Maciel*, K.E. da Silva, J. Croda, R. Cayô, A.C. Ramos, R.O. de Sales, G.H. de Almeida de Souza, J.V.B. Bampi, L.C. Limiere, J.C. Casagrande, A.C. Gales, S. Simionatto
*Universidade Federal da Grande Dourados, Brazil

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 300-304


アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)は、これまで新生児集中治療室(NICU)での保菌および/または感染としばしば関連している。本研究では、NICU におけるカルバペネム耐性 A. baumannii 分離株のクローン性拡散について報告する。計 21 株のカルバペネム耐性 A. baumannii が早産新生児から収集された。ポリミキシン B のみがこれらの分離株に有効であった。カルバペネム耐性 A. baumannii 分離株 19 株がクローン性であった(クラスター C、世界的に拡散している ST1 に属する)。全新生児が末梢アクセスおよびβラクタム系抗菌薬の投与歴を有していた。本研究を実施した病院内のクローン型を根絶するには、厳格な感染制御策の実施が根本的に重要であった。

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監訳者コメント
A. baumannii は日和見感染菌であり、免疫能低下患者に重篤な感染症を引き起こし、致死率も高い。近年、カルバペネム耐性が世界的に問題となっている。特に新生児集中治療領域では超低出生体重児の免疫の未熟さと、人工呼吸器装着、広域のβラクタム薬投与、血管留置カテーテル挿入が、カルバペネム耐性 A. baumannii の施設内感染拡大の危険因子として報告されている。しかしながら、本報告のように、「不適切な感染対策」が、これらの耐性傾向の強い細菌の施設内伝播を助長していることは明らかであり、いかにして接触予防策を含めた感染予防策を現場に個人差のないように普及させるかが大きな課題である。

中国南部の新生児集中治療室におけるイミペネム耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の危険因子

Risk factors for imipenem-resistant Pseudomonas aeruginosa in neonatal intensive care units in south China

Y.B. Rao*, Z.X. Ren, J.J. Zhong, X.M. Zhong, B. Cao, D.M. Chen, X.N. Pan, Y.P. Jia, P.M. Gao, B.Y. Yang, Q. Zhong, J. Yang, on behalf of Collaborative Study Group of Neonatal Hospital Infection Control
*Guangdong Women and Children Hospital, China

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 305-308


この多施設共同後向き研究は、中国南部の新生児集中治療室(NICU)におけるイミペネム耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の感染の危険因子を検討するためデザインされた。全患者は中国南部の NICU 8 カ所にて緑膿菌感染が確認されており、イミペネム感受性緑膿菌群およびイミペネム耐性緑膿菌群の 2 群に分けられた。データはカイ二乗検定およびロジスティック回帰分析を用いて分析し、計 188 例の診療記録をレビューした。多変量ロジスティック解析では、緑膿菌の分離から 2 週間以内のイミペネムによる治療が、唯一の独立危険因子であった(オッズ比 6.409、95%信頼区間 1.926 ~ 21.333)。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
本検討は、中国南部の広東省、湖南省、福建省、海南省、広西チワン族自治区の 22 の NICUに入院した 188 例を対象に行われた。イミペネム検出に関する危険因子で多変量解析後に残ったのは、イミペネムによる治療のみであった。NICU における感染症には交絡因子が多く存在するが、その解析における有意な因子の抽出の難しさを反映しているともいえる。耐性パターンの分析、分子疫学的な情報、感染対策の情報がいずれもないことが本検討の限界である。

2015 年から 2016 年の間にイタリアの心臓外科部門に入院した移民の小児における多剤耐性病原体の保菌率

Prevalence of multidrug-resistant organisms in migrant children admitted to an Italian cardiac surgery department, 2015-2016

E. Costa*, M. Tejada, P. Gaia, M. Cornetta, A. Moroni, E. Carfora, R. Valaperta, C. De Siena, N. Moussaidi, G. Isgró, A. Frigiola
*IRCCS Policlinico S. Donato, Italy

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 309-312


多剤耐性病原体(MDRO)の保菌を検出するための入院時のスクリーニングは、頻繁に議論されるトピックである。2015 年から 2016 年の間に、心臓外科手術の候補者である 141 例のイタリア人の子供および、354 例のイタリア国外より移住した小児において実施した、微生物学的スクリーニングの結果を報告する。全体で、イタリア人の子供の 25%および、アフリカ人とルーマニア人の子供の 65.4%以上が、1 種類以上の MDRO(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌[meticillin-resistant Staphylococcus aureus]、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生菌[extended-spectrum β-lactamase enzymes]、カルバペネマーゼ産生菌[carbapenemase producers]、バンコマイシン耐性腸球菌[vancomycin-resistant enterococci])を保菌していた。本結果に基づき、感染制御の向上のために、地理的に限定しないアプローチが必要であることを提案する。

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監訳者コメント
MDRO の感染と伝播には、国外からの持ち込みによるものが相当数関与していると推測できるが、それはヒト・モノの行き来がより頻繁な国々の状況を反映しやすいであろう。本検討が行われたイタリアの医療機関には、チュニジア、ルーマニア、エジプトからの小児が手術目的で多く紹介されるが、それらは患者特性のみならず MDRO それぞれの分離状況にも差があった。さらに地中海周辺国を中心として様々な国々から患者の受診・搬送があり、分離状況はより複雑になっていた。このような状況での感染制御上の対策の立案と実行は、個々の出身国やそれぞれの医療機関を眼中に置くよりも、国家、地域、保健衛生のレベルでなされなければならないことを示す好例といえよう。

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