JHIサマリー日本語版トップ

レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

手指消毒におけるエタノールのウイルスに対する有効性

Efficacy of ethanol against viruses in hand disinfection

G. Kampf*
*University Medicine Greifswald, Germany

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 331-338


エタノールは医療機関における擦式手指消毒製剤として世界的に用いられている。エタノールはプロパノールよりも強力かつ広範な殺ウイルス活性を有することが報告されている。本レビューの目的は、エタノールの溶液または市販製剤の殺ウイルス活性スペクトルを記述することである。系統的な検索を実施した。選択した研究は、懸濁試験(49 件)および汚染された手指(17 件)におけるウイルスの感染性低減に関するオリジナルデータを含んだ研究であった。80%エタノールは、対象とされた 21 種類のエンベロープウイルスすべてに対して、30 秒以内で極めて効果が高かった。マウスノロウイルスおよびアデノウイルス 5 型は通常、70% ~ 90%エタノールにより 30 秒で不活化されるのに対し、ポリオウイルス 1 型は多くの場合、95%エタノールを除いて非常に強い耐性を示した(いずれもEN 14476 試験の対象となるウイルス)。80%エタノールは、ポリオウイルス、ネコカリシウイルス(FCV)、ポリオーマウイルス、A 型肝炎ウイルス(HAV)および口蹄疫ウイルスに対して十分に効果的でないようである。しかし、95%エタノールの殺ウイルス活性スペクトルは、臨床的に重要なウイルスの大部分をカバーしている。低濃度のエタノールへの酸の追加は、例えばポリオウイルス、FCV、ポリオーマウイルスおよび口蹄疫ウイルスに対する殺ウイルス活性を大幅に改善するが、HAV などの一部のウイルスはやはり耐性が非常に強い。殺ウイルス作用のある適切な擦式手指消毒製剤を選択する際は、病棟で最も多くみられるウイルスに基づいて、また頻回使用の状況下におけるその製剤の使用者にとって受け入れやすさに基づいて行うべきである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
芽胞菌と脂質成分の少ない膜に覆われたウイルスに対して、アルコール系消毒薬の効果は限定的であることがよく知られている。対象となる病原体を絞ることができるときには、適切な手指衛生方法を選択する必要がある。

患者の手指用ワイプの有効性評価:試験方法の開発

Assessment of the efficacy of a patient hand wipe: development of a test method

M.A.C. Wilkinson*, M.A. Kiernan, J.A. Wilson, H.P. Loveday, C.R. Bradley
*Queen Elizabeth Hospital Birmingham, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 339-344


背景
医療従事者の手指除菌に大きな注目が集まっているが、患者の手指衛生にはほとんど注意が払われていない。寝たきり患者は多くの場合、手指洗浄設備を利用できない。そうした患者は擦式アルコール製剤を利用できるであろうが、これらの製剤は汚れた手指や社会的手指衛生には推奨されていない。代替法の一つとして、手指用ワイプの使用がある。しかし、手指に一時的に存在する微生物の除去における手指用ワイプの有効性を確認することは重要である。

目的
手指用ワイプの抗菌作用を手指洗浄と比較して評価する方法を開発し、これにより手指用ワイプが患者の手指衛生にとって許容可能となり得るかを明らかにすること。

方法
手指用ワイプに関する基準は存在しないため、本研究で開発する方法は欧州規格 EN 1499(2013)および EN 1500(2013)に基づいた。健常ボランティア 20 例の手指を、大腸菌(Escherichia coli)に浸漬して人工的に汚染し、次いで参照標準とした軟石けんまたは手指用ワイプの 60 秒間の使用前および使用後にサンプル採取を行った。測定した菌数は log10値として表し、log10 減少を算出した。

結果
抗菌剤を用いない手指用ワイプ(対照ワイプ)は、軟石けんより劣っていた。しかし、抗菌剤による手指用ワイプは、軟石けんに対して統計学的に非劣性であった。log10 減少は、軟石けんでは 3.54、対照手指用ワイプでは 2.46、および抗菌剤による手指用ワイプでは 3.67 であった。

結論
本研究の所見から、抗菌剤による手指用ワイプは、60 秒間使用した場合、少なくとも石けんおよび水と同等の効果があること、またこれにより殺菌効果の観点から手指洗浄に対する許容可能な代替法となることが示唆される。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
抗菌剤入り手指用ワイプの最大の欠点は拭き漏れである。しかし、流水と石けんにおいても手洗い漏れが同様に起こりえるのでいかなる場合の手指衛生手段においても適切な手指衛生の実施が肝要である。ことに災害時など水が豊富に得られない療養環境での保清に関して、こうした抗菌剤入り手指用ワイプの需要は必ずあるだろう。

パラダイムを変える:手指衛生教育および監査に関するクラスター解析からのメッセージ

Changing the paradigm: messages for hand hygiene education and audit from cluster analysis

D.J. Gould*, D. Navaïe, E. Purssell, N.S. Drey, S. Creedon
*Cardiff University, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 345-351


背景
手指衛生は、最も優れた感染予防策と見なされている。手指衛生のメッセージを医療従事者がどのように受け入れ、理解しているかが、多くの場合に不良な成績を改善するためのイニシアティブの成功および持続可能性に貢献すると考えられる。

方法
イングランドにおける 3 つの国民保健サービス(NHS)トラストの救急医療病棟の看護師に対する調査を実施して、手指衛生に関する意見、擦式アルコール製剤の使用、成績のフィードバックを伴う監査、および手指衛生に関するその他の主要な論点について調べた。データを記述的手法で分析し、クラスター解析を行った。

結果
3 つの主要な意見のクラスター(各々が重要なグループを形成)が可視化された:肯定的な態度、実用的な考え方および懐疑的な考え方。クラスターが小さいほど、手指衛生を実行する能力について罪悪感を感じている可能性が高いことを示唆した。

結論
クラスター解析により、これまでに疑われてこなかった手指衛生に関する信念の表れが、行動の妥当な説明を提供するものとして同定された。医療従事者は、そうした信念によって教育や監査に対して異なる反応を示す可能性がある。肯定的な意見を主として持っている人は、手指衛生方針を遵守し、感染予防リンクナースや手指衛生擁護者と同様の成績を示す。実用的な態度を持っている人は、専門家として行動する必要性と、自らを感染症から保護する必要性に対して、好意的に反応するようである。手指衛生の重要性について懐疑的な人に対しては、ガイドラインを遵守するよう促すためにより強い説得が必要となる可能性がある。遵守率を高めるための介入は、様々な信念に対応するために、十分に広い範囲を視野に入れる必要がある。その他に、手指衛生の信念に関するクラスター解析は、特定の臨床環境において最も効果的な教育およびモニタリングの戦略を特定するために用いることができるであろう。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
アンケート結果をクラスター解析するという新しい分析手法で、効果的な教育およびモニタリングのための資料とする試みである。同じような言葉を巧みに変更して、背景にある個人の医療者の心理を評価しようとしている。ここまでは良いが、そのデータをどのように改善に反映されるかまでの検証をした上で論文化して欲しかった。

手指衛生を改善させるための促し

Nudging to improve hand hygiene

M.G. Caris*, H.A. Labuschagne, M. Dekker, M.H.H. Kramer, M.A. van Agtmael, C.M.J.E. Vandenbroucke-Grauls
*VU University Medical Center, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 352-358


背景
手指衛生は、医療関連感染症を予防するために最も重要であるが、遵守率の改善が課題である。医療従事者が医療関連感染症に出会うことが稀である場合、彼らは手指衛生の不良により感染症を引き起こす確率を無視できるものと考えるであろう。このような認知バイアスは、非遵守につながる可能性がある。促しとは「望ましい行動を行うよう優しく勧めること」である。促しは、認知バイアスに取り組み、それによって手指衛生介入を支援するための、実施が容易で安価な方策となり得る。

目的
ポスターで表示された行動の促しが、擦式アルコール製剤の使用を増加させ得るかどうかを検討すること。

方法
これまでに報告された認知バイアスについてのシステマティックレビューに基づいて促しを作成し、これらの促しを、標的集団に対する横断調査によって検証した。次いで、2 つの病棟で前後比較対照試験を実施し、これらの促しが擦式アルコール製剤の使用(電子ディスペンサーで測定)に及ぼす効果を評価した。

結果
作業量で補正した Poisson 回帰分析では、ディスペンサーに隣接して表示した促しにより、ディスペンサーの全般的な使用が 1 つの病棟(ポスター 1:相対リスク[RR] 1.6[95%信頼区間[CI]1.2 ~ 2.2]、ポスター 2:RR 1.7[95%CI 1.2 ~ 2.5])、ならびに医師の回診中に両病棟(ポスター 1:病棟 A:RR 1.7[95%CI 1.1 ~ 2.6]、病棟 B:RR 2.2[95%CI 1.3 ~ 3.8])で増加した。隣接した促しがない場合、ディスペンサーの使用は増加しなかった。

結論
手指衛生に関与する認知バイアスに基づき、ポスターで表示した促しは、擦式アルコール製剤の使用を増加させるための容易で安価な方策となり得る。行動を変えるようにする為、促しを用いる場合は、正しい対象集団に対する正しい促しを特定することが重要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
ポスターで表示した促しは、擦式アルコール製剤の使用を増加させるための容易で安価な方策であることを検討した論文である。ただし、慢性的に同じポスターで表示しても新鮮みに欠け影響力は薄れるものと考えられる。効果の検証は効果の持続性にまで評価の対象を伸ばして貰いたかった。

液状、ゲル状および泡状の擦式アルコール製剤の有効性および乾燥時間の比較

Comparison of the efficacy and drying times of liquid, gel and foam formats of alcohol-based hand rubs

M.A.C. Wilkinson*, K. Ormandy, C.R. Bradley, J. Hines
*Queen Elizabeth Hospital Birmingham, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 359-364


背景
イソプロパノールやエタノールなどのアルコールを含有する手指擦式製剤は、手指衛生の消毒用に広く用いられており、様々な形態(液状、ゲル状または泡状)で提供されている。

目的
これら 3 つの剤形において、イソプロパノールとエタノールという 2 つの活性成分の間に差があるかどうかを明らかにすること。さらに、乾燥時間の評価を行った。市販されていない 2 つの「標準」製剤を、各剤形について試験した:1つの製剤は60%イソプロパノール、もう 1 つの製剤は80%エタノールを含有している。

方法
EN 1500 試験をボランティア 20 例で実施し、有効性を評価した。標準参照製剤は、EN 1500(2013)の記載に従って、2 × 3 mL の 60%イソプロパノールとし、適用時間は 60 秒とした。試験製剤は 3 mL の液状、ゲル状または泡状の剤形とし、各製剤(60%イソプロパノールおよび80%エタノール)について完全な EN 1500 試験を 1 回実施した。乾燥時間を評価するため、液状、ゲル状または泡状の剤形について 2 種類の量(1.5 mL および 3.0 mL)を、ボランティア 15 例の手指に塗布した。ボランティアは自分の手指が乾燥したら自己報告し、試験終了時にボランティアに対して 3 点尺度([早すぎる][適切][遅すぎる])により乾燥までの時間を評価するよう指示した。

結果
本研究により、EN 1500 で評価したところ、2 つの「標準」擦式アルコール製剤に、製剤または剤形による抗菌効果の差は認められなかった。客観的な測定により、エタノールベースの製剤はイソプロパノールベースの製剤より乾燥時間が短く、両製剤ともゲルは他の剤形と比べて乾燥時間が長かった。使用者の認識による乾燥時間は、概ね客観的測定と一致していた。

結論
有効性に差はなく、乾燥時間に中等度の差しかなかったことから、一定の製品は要求された有効性および安全性の基準に合格するため、液状、ゲル状または泡状の擦式アルコール製剤は適切と考えられる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
現在、日本でも速乾性手指消毒薬は液状、ゲル状、泡状のものがあり、施設によっては複数の剤形が導入されている。剤形により有効性に差がないことはこれまでにも報告されており、各人の使用感、手荒れなどにより選択されているのでは、と思われる。

手術時におけるクロルヘキシジン石けんまたはポビドンヨードを用いた手洗い:即効性および持続性を高め、アルコール溶液の安全な代替手段を提供する新しい方法

Surgical hand preparation with chlorhexidine soap or povidone iodine: new methods to increase immediate and residual effectiveness, and provide a safe alternative to alcohol solutions

R. Herruzo*, M.J. Vizcaino, R. Yela
*Autonomous University of Madrid, Spain

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 365-368


背景
手術時の 4%クロルヘキシジン石けんおよび 10%ポビドンヨードの使用は、EN 12791 で規定されている基準を満たしていない。

目的
これらの生体消毒薬の即効性および持続性を高める可能性を検討すること。

方法
連続する 3 週間にわたり、ボランティアからなる 2 つの被験者群で、n- プロパノール、標準の 4%クロルヘキシジン石けんおよび 10%ポビドンヨードを検証した。生体消毒薬を使用する新しい方法は、4%クロルヘキシジン石けんまたは 10%ポビドンヨードを用いた標準的な擦式手洗いおよびすすぎを行った後、5%クロルヘキシジンまたは 10%ポビドンヨード含有溶液で消毒し、そのまますすがずに手袋を装着するというものである。即効性および持続性を評価するために検体を採取し、コロニー形成単位の対数減少率を解析した。

結果
t = 0 h 時点での殺菌効果において、n- プロパノールは標準の 4%クロルヘキシジン石けんよりも優れていた(P < 0.05)が、クロルヘキシジンを用いた新しいプロトコールは、標準の 4%クロルヘキシジン石けん(P < 0.01)および n-プロパノール(P < 0.05)よりも優れていた。t = 3 h の時点では同一の効果が認められた(持続性)。t = 0 h の時点で、n-プロパノールは標準の 10%ポビドンヨードよりも有意に優れていたが、10%ポビドンヨードを用いた新しいプロトコールは n- プロパノールよりも、有意でないものの優れていた。t = 3 h の時点では効果の有意な持続性は認められなかった。

結論
クロルヘキシジンを用いた新しいプロトコールは EN 12791 で規定されている基準を満たしていることから、アルコール溶液の安全な代替手段としてクロルヘキシジンを手術時の手洗いに使用できる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
「4%クロルヘキシジン石けんまたは 10%ポビドンヨードを用いた標準的な擦式手洗いおよびすすぎを行った後、5%クロルヘキシジンまたは 10%ポビドンヨード含有溶液で消毒し、そのまますすがずに手袋を装着する」方法の有用性について検討した論文である。消毒用エタノールを用いたラビング法と比較した際の有用性が知りたいところである。こうした検討は消毒効果だけでなく、手荒れや化学物質アレルギーなどの影響についても考察が必要であろう。

集中治療室の患者における血流感染に起因する敗血症:無効な経験的抗菌薬療法が転帰に及ぼす影響

Sepsis caused by bloodstream infection in patients in the intensive care unit: the impact of inactive empiric antimicrobial therapy on outcome

D. Brooks*, P. Polubothu, D. Young, M.G. Booth, A. Smith
*Glasgow University, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 369-374


背景
敗血症は、英国において最も多い死因の 1 つである。

目的
集中治療室(ICU)での無効な抗菌薬療法の適用率を明らかにするとともに、無効な抗菌薬療法が院内死亡率、ICU 死亡率、90 日死亡率および入院期間に影響を及ぼすかどうかを明らかにすること。さらなる目的は、無効な抗菌薬療法を受けるリスク因子を特定することであった。

方法
本研究は後向き観察研究であり、2010 年 1 月から 2013 年 12 月にかけて Glasgow Royal Infirmary の ICU で実施された。本研究期間中に計 12,000 の血液培養検体を採取し、そのうち 127 検体が臨床的に重要であるとみなされた。死亡率と独立して関連するリスク因子を特定するため、多変量ロジスティック回帰モデルを使用した。無効な抗菌薬療法を受けるリスク因子を特定するため、単変量解析に続いて多変量解析を実施した。

結果
無効な抗菌薬療法の適用率は 47%(N = 60)であった。多変量解析により、ICU 入室から最初の 24 時間以内に抗菌薬の投与を受けた場合に死亡率が低下することが示された(相対リスク 1.70、95%信頼区間[CI]1.19 ~ 2.44)。また、疾患の重症度(敗血症と敗血症性ショックを鑑別する SIRS 基準の定義に基づく)は、死亡率の上昇と関連することが示された(オッズ比[OR]9.87、95%CI 1.73 ~ 55.5)。しかし、無効な抗菌薬療法は、死亡率の上昇(OR 1.07、95%CI 0.47 ~ 2.41)および入院期間の延長(53.2 対 69.1 日、P = 0.348)につながらなかった。真菌血流感染が無効な抗菌薬療法を受けるリスク因子であった(OR 5.10、95%CI 1.29 ~ 20.14)。

結論
敗血症による死亡率は、複数の因子の影響を受ける。本研究では、無効な抗菌薬療法が敗血症の死亡率に影響を及ぼすことを実証できなかった。

サマリー原文(英語)はこちら

国民保健サービス(NHS)スコットランドにおける手指衛生の全国代理指標の検証

Validation of a national hand hygiene proxy measure in NHS Scotland

C. Dalziel*, J. McIntyre, A.G. Chand, S. McWilliam, L. Ritchie
*NHS National Services Scotland, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 375-377


スコットランドにおける手指衛生の国内的な代理評価単位は、実施された手指衛生機会の患者ベッド日当たりの件数であり、その指標として国民保健サービス(NHS)スコットランド委員会が購入した擦式アルコール製剤の量が用いられている。代理評価単位の算出は、手指衛生機会当たりで擦式アルコール製剤 3 mL が使用されるという仮定に基づいている。本研究は、手指衛生機会当たりで使用される擦式アルコール製剤の量を検証することを目的とした。その結果、手指衛生機会当たりで実際に使用される擦式アルコール製剤の量は中央値で約 1 mL であること、また検証されたこの量を算出に用いることにより、手指衛生遵守の代理評価単位が大幅に増加することが明らかになった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
1 回あたりのアルコール使用量が 1 mLだったということに、大きく納得した。日本の医療環境でも、使用量の不十分さは介入が難しいところであると思われる。
※ 代理評価(Proxy Measures):測りたいものを直接測るのが困難な場合に別のもので近似すること。

重症成人患者における侵襲性カンジダ症およびカンジダ血症の管理:European Society of Anaesthesia Intensive Care Scientific Subcommitteeの専門家の意見

Management of invasive candidiasis and candidaemia in critically ill adults: expert opinion of the European Society of Anaesthesia Intensive Care Scientific Subcommittee

R-A. O’Leary*, S. Einav, M. Leone, K. Madách, C. Martin, I. Martin-Loeches
*St James Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 382-390


目的
侵襲性真菌疾患の世界的負担は増加している。カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)以外のカンジダ性感染症も出現してきているが、C. albicans は依然として真菌血流感染の主な原因である。診断と管理をめぐる議論のために、我々はこの進化を続ける脅威に効果的に対処できていない。症例に基づく本総説の目的は、現行の議論に対処し、ガイドラインを補完する推奨事項を提供することである。

侵襲性カンジダ症の診断
侵襲性カンジダ症の診断は、診断検査と患者のリスク因子を組み合わせて行う必要がある。直接培養が依然としてゴールドスタンダードではあるが、β-D グルカンおよび C. albicans発芽管抗体の両方が、診断を補助するバイオマーカーとして使用されている。保菌状態と侵襲性疾患との鑑別にはスコアリングシステムを利用できる。

侵襲性カンジダ症の治療
カンジダ血症の第一選択薬としてはエキノキャンディン系が推奨され、臨床的安定が得られ次第、フルコナゾールに de-escalation する。高リスクの患者には経験的療法が強く推奨されるが、現在では、より標的を絞った先制的なアプローチが好まれている。予防的療法を支持するエビデンスは依然として弱いままである。

要約
侵襲性カンジダ症に起因する死亡率は 70%にまで達している。迅速な診断および治療ならびに感染源の制御が転帰改善の鍵である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
侵襲性カンジダ感染症のマネジメントに関する総説である。診断および治療について特別新しい知見があるわけではないが、マネジメントに関する最新の総説として興味のある人は一読しておくと良いだろう。

救急部を受診した成人における感染性胃腸炎および厳格な接触予防策の必要性:デンマークの登録に基づく研究

Infectious gastroenteritis and the need for strict contact precaution procedures in adults presenting to the emergency department: a Danish register-based study

F. Skyum*, V. Andersen, M. Chen, C. Pedersen, C.B. Mogensen
*Hospital of Southern Jutland, Denmark

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 391-397


背景
急性感染性胃腸炎は、接触予防策を実施して感染拡大を防ぐ必要がある。緊急入院の時点では下痢の原因が不明であるため、臨床情報に基づき隔離する患者を判断する必要があるが、それには接触予防策の不適当な実施のリスクを伴う。

目的
デンマークの救急部で胃腸炎が発生する頻度(すなわち、隔離の必要性を評価しなければならない頻度)、および糞便検体の結果に基づき患者に対して引き続き接触予防策を実施しなければならない頻度を検討すること。

方法
本研究は、デンマークの救急部を受診した成人の登録に基づく後向きコホート研究であり、3 つのデータ源(Danish National Patient Register に登録された退院の診断、救急部で採取された糞便検体の微生物学的結果、主訴に基づく入院の原因)を使用した。

結果
66,885 件の緊急入院のうち、患者の 4.3%が胃腸炎の特徴を 1 つ以上有していた。胃腸炎の特徴は、主訴が下痢であった入院(1.6%)、糞便検体の微生物学的検査(2.8%)、および胃腸炎の診断での退院(1.7%)とした。糞便検体の検査を受けた患者の 19%でノロウイルスまたはクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)が検出され、引き続き厳格な接触予防策を必要とした。

結論
救急部患者の 4.3%は、接触予防策の開始を評価する必要がある。糞便検体の検査を受けた患者の 19%は、感染性の高い胃腸炎であり、厳格な接触予防策を要した。隔離する患者を判断する手段を開発するには、さらなる研究が必要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
救急外来を受診する患者における感染性胃腸炎の割合と接触予防策の必要性に関する疫学調査である。インフルエンザや麻疹など、飛沫予防策、あるいは空気予防策が必要な感染症に比べると、感染性胃腸炎のような接触予防策を要する感染症の外来における感染対策はまだまだ十分とはいえない。本論文はそのような状況に警鐘を鳴らす内容となっている。

ノロウイルスの病院アウトブレイクのリスク因子:嘔吐、遺伝子型および複数患者病室の影響

Risk factors for hospital norovirus outbreaks: impact of vomiting, genotype, and multi-occupancy rooms

CJ. Fraenkel*, M. Inghammar, A. Söderlund-Strand, P.J.H. Johansson, B. Böttiger
*Department of Infection Control, Region Skåne, Sweden

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 398-403


背景
ノロウイルスは頻繁に病院に持ち込まれ、また病院アウトブレイクの原因となる頻度も高い。ノロウイルスの伝播を促進または妨害する因子を認識することは、病院アウトブレイクを効率的に予防するために重要なステップの一つである。

目的
ノロウイルスの病院アウトブレイクのリスク因子を検討すること。

方法
2010 年から 2012 年の間に、スウェーデン南部の 192 病棟においてコホート内症例対照研究を実施し、アウトブレイクにおけるノロウイルス陽性初発症例全 65 例およびノロウイルスの孤発症例全 186 例を対象に、臨床データ、病棟環境およびノロウイルスの遺伝子型を収集した。単変量解析および多変量解析を実施した。

結果
多変量解析においてアウトブレイクは、ノロウイルス症例と同室の患者数(オッズ比[OR]1.9、病室への追加患者 1 例あたり、P < 0.01)、嘔吐(OR 2.6、P = 0.04)、年齢 80 歳超(OR 3.2、P < 0.01)、併存疾患(OR 2.3、P = 0.05)、病棟へ入院後の症状発現(OR 3.5、P < 0.01)と独立して関連していた。単変量解析において、遺伝子型 GII.4 による感染はアウトブレイクと強く関連していることが明らかになった(OR 5.7、P < 0.01)。さらに、GII.4 と嘔吐の関連性(OR 2.5、P = 0.01)、また GII.4 と高年齢の関連性(OR 4.3、P < 0.01)が明らかになった。

結論
本研究は、ノロウイルスの病院アウトブレイクに関し、臨床的、病棟関連および遺伝子型のリスク因子を検討した初めての研究である。これらの因子を認識することは、アウトブレイクの危険性に基づいた感染防御策を促し優先順位をつけるのに役立つ可能性がある。また、本研究の結果によると、アウトブレイクと GII.4 との関連性の一部は、嘔吐を引き起こす能力の強化によって説明がつく可能性があることが示唆される。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
ノロウイルス感染症を、単発例とアウトブレイク例に分けて比較した研究である。同室患者が多い、嘔吐がある、高齢、併存疾患など想定されるリスク因子が並ぶ中で、特定の遺伝子型(GII.4)がアウトブレイクと関連する可能性があるというのは興味深い結果である。

感染症の伝播:病院勤務の医療従事者と一般集団の勤労成人の接触に関する調査★★

Infectious disease transmission: survey of contacts between hospital-based healthcare workers and
working adults from the general population

Lili Jiang*, Isabel Hui Leng Ng, Yan’an Hou, Dunli Li, Linda Wei Lin Tan, Hanley Jian An Ho, Mark I-Cheng Chen
* National University of Singapore, Singapore

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 404-411


背景
医療従事者は、感染症の伝播に関して医療現場と地域社会の間の意図しない接点である可能性がある。

目的
医療従事者の勤務日の接触を調査し、一般集団の勤労成人と比較すること。

方法
シンガポールの政府系 3 次病院 3 施設および地域社会の勤労成人において、24 時間の自己申告日誌を用いて接触に関する前向き調査を実施した。参加者は医療従事者および地域の勤労成人とした。

結果
全体で、医療従事者 211 名および勤労成人 1,028 人が、それぞれ計 4,066 件および計 9,206 件の接触を報告した。医療従事者は地域の勤労成人よりも、業務関連の接触の報告がより多く(中央値 13 対 4)、また家族でも業務関連でもない接触の報告もより多く(1 対 0)、しかし家族の接触の報告はより少なかった(2 対 3)。医療従事者は地域の勤労成人と比較して、身体的接触を伴う業務関連の接触の報告がより多く、また、とりわけ短期間(15 分以下)の新たな接触の報告がより多かった。様々な医療従事者の職種の中で、業務関連の接触の報告総数に関しては医師が最も多かったのに対し、病棟担当の看護師は最も少なかった。病棟および外来担当の看護師の接触の約半数は身体的接触を伴うものであった。外来担当の看護師、医師および様々な医療従事者が報告した業務関連の接触は、病棟担当の看護師の報告より短時間であったが、新たな接触が効率的に生じ報告数はかなり多かった。単変量解析において施設の影響は有意であったが、医療従事者の職種による交絡を調整した後は、影響は大きく減少し有意ではなくなった。

結論
医療従事者の接触は、地域の勤労成人の接触とは大きく異なる。医療従事者はその職業の特性から、このように接触により伝染する感染症および呼吸器感染症に罹患し伝播するリスクがより高い可能性がある。医療従事者の職種間の接触総数はかなり類似していた一方で、職種ごとの接触の特徴は実質的に異なった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
過去に SARS や MERS、そしてエボラウイルス感染症で、医療従事者がアウトブレイクに大きく関与していたことが明らかになっているが、一般人よりも医療従事者がより感染を拡げやすいことを裏付ける基礎的なデータは極めて少ない。医療従事者は、一般勤労成人より多くの人と接触する機会が多いことは容易に想像できるが、それを定量化したものは極めて少ない。医療従事者は予測どおり一般人よりも、より多くの人と接触し、また初対面の人ともより頻回に接触し、結果的に感染の機会が圧倒的に増える。特に病棟の看護師は会話だけではなく、物理的(身体的)な接触が多く、かつその頻度も高く、接触感染の媒介者となる危険性と同時に医療従事者自身が感染症患者から飛沫や接触の感染経路により感染する危険性も当然高くなる、さらには感染した医療従事者が社会へ感染症を拡散させる媒介者にもなることが示唆された。

スコットランドの救急部における患者間の C 型肝炎ウイルス伝播に関する分子的および疫学的エビデンス★★

Molecular and epidemiological evidence of patient-to-patient hepatitis C virus transmission
in a Scottish emergency department

I. Johannessen*, J. Danial, D.B. Smith, J. Richards, L. Imrie, A. Rankin, L.J. Willocks, C. Evans, C. Leen, P. Gibson, P. Simmonds, D. Goldberg, A. McCallum, K. Roy
*Royal Infirmary of Edinburgh, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 412-418


背景
医療現場において、C 型肝炎ウイルス(HCV)の伝播はまれである。ルーチンの感染制御策は、C 型肝炎ウイルスの伝播が予防可能な「決して発生してはならないイベント」であるべきということを意味する。

目的
医療関連の急性 HCV 感染症の診断に関して検討すること。

方法
院内曝露が関連する急性 HCV 感染症例 1 例について、疫学的および分子的調査を行った。

結果
急性 HCV 感染症患者 1 例の治療歴に関する詳細調査により、同時に救急部にいた患者 1 例からの伝播が推定原因であることが明らかになり、この可能性はウイルス配列解析によって裏付けられた。正確な伝播経路は特定されなかったが、双方の患者および感染源への医療介入は低侵襲なものであった。感染制御のレビューにより、手指衛生、個人保護具の不適切な使用および救急部の血液ガス測定装置表面の血液汚染といった、原因経路における可能性のある寄与要因が明らかになった。

結論
救急部の患者間に生じた、環境汚染により可能となった HCV 伝播に関する分子的および疫学的エビデンスを示した。HCV 感染症患者は一般集団より救急処置を受ける頻度が高く、また、感染した患者の大部分は感染を知らないままであったり、感染性を維持したままである。院内での HCV 伝播リスクを最小限にするため、器具、部門の設計、職員の行動および患者リスクを定期的に見直すことが必要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
HCV における院内感染を証明することの難しさは、HCV 感染が発症しても無症状で進行するためである。本論文は慢性 HCV 感染患者から間接的接触より HCV の院内感染が証明された救急室における最初の報告である。感染経路として、共有器材の表面汚染,特に血液ガス装置の汚染からの感染が推測され、医療スタッフの手指衛生や手袋交換が不適切であったこととが相まって発生したと推測されている。この院内感染を契機にこの患者以外に同時期に救急室を受診した 31 例の患者について遡及調査が実施されたが HCV 陽性者は認められなかった。HCV による院内感染は、過去に透析室での環境汚染による同様の報告がある。未同定の病原体から患者から患者および医療従事者から患者、そして医療従事者から患者への交差感染を防止するために標準予防策があるが、本例ではそれが適切に実施されなかったことで発生した。

新生児室におけるゲンタマイシン耐性メチシリン感性黄色ブドウ球菌(Staphlococcus aureus)のアウトブレイク★★

Outbreak of gentamicin-resistant, meticillin-susceptible Staphlococcus aureus on a neonatal unit

S. Eldirdiri*, J. Lee, A. Jack, A. Wright, A. Findlay, G. Phillips
*Ninewells Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 419-424


背景
本報告では、英国・ダンディーにある Ninewells 病院の 21 床の新生児室において発生した、ゲンタマイシン耐性メチシリン感性黄色ブドウ球菌(gentamicin-resistant, meticillin- susceptible Staphlococcus aureus;GR MSSA)のアウトブレイク 事例について述べる。

方法
新生児室に直接入院した乳児らが入院中に GR MSSA を獲得し、2 つの新たな GR MSSA 分離菌が採取されたことがアウトブレイク調査のきっかけとなった。MSSA 症例のデータおよび患者の分離菌のアンチバイオグラムが警告として通知され、また以前の症例を検出するため微生物学的記録が広く調査された。

結果
6 か月間で、乳児 8 例がアウトブレイク株に感染した。パルスフィールド・ゲル電気泳動による全分離株のタイピングおよび spa タイピングの結果、すべてが clonal complex 30、spa 型 t012 であることが示された。妊娠 24 週 の時点で出生体重 500 g で生まれた乳児 1 例を除き、アウトブレイク株のうち菌血症に関連があるものはなかった。治療および保育器環境の拭き取り検体の観察から、保育器が最も可能性の高いアウトブレイク株伝播の感染源であることが示唆された。採取された 11 の表面検体のうち3 つがアウトブレイク株陽性であった。調査によって、清掃中に羽根車がルーチンで取り外されていないことが明らかになり、残留物が保育器内部に見られた。羽根車および保育器内部から採取された拭き取り検体から、アウトブレイク株が検出された。

結論
新生児室から採取された GR MSSA 分離菌は、感染制御システムにおいて警告対象の病原体として設定された。保育器の清掃と消毒に関する新たなガイドラインが実行され完全に遵守された後、1 年の追跡調査の間にさらなる症例が検出されることはなかった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
新生児集中治療室(NICU)で使用される保育器は種々の部品から構成された極めて複雑な構造で清掃が容易に実施できないことがわかっている。清掃手順が適切に実施されないと本例のように適切な湿度の空気を送り出す羽根車はホコリが付きやすく湿気とともに細菌が付着すると容易に供給源となるため、適切な除菌清掃が重要となる。日本の NICU においてもこの種の保育器は使用されており、使用後の清掃消毒が不適切であると同様のアウトブレイクが発生する。各メーカーが推奨する消毒清掃方法に沿って実施されているかを今一度見直す必要がある。

早発型新生児感染症に関する NICE ガイドライン実施の障壁:英国の検査機関による新生児血液培養報告のクロスセクショナルサーベイ

Barriers to implementing the NICE guidelines for early-onset neonatal infection: cross-sectional survey of neonatal blood culture reporting by laboratories in the UK

S.P. Paul*, E.M. Caplan, H.A. Morgan, P.C. Turner
*Torbay Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 425-428


2012 年に英国国立医療技術評価機構(NICE)は早発型新生児感染症の管理ガイドラインを発表した。この中で同機構は 36 時間の時点で血液培養が陽性になったか、あるいは陰性のままであるか報告するよう推奨している。この遵守状況を明らかにするため、英国の微生物学検査室に所属する第一線の医学研究者(N = 209)を対象に電話調査を実施した。全体で 209 名中 202 名から回答が得られ、202 名中 139 名が施設内に血液培養設備を有していた。新生児室 139 室中、時間外も含めて 36 時間の時点での血液培養の陽性報告を行っていたのは 36 室(26.6%)、陰性のままであるという報告を行っていたのは 66 室(47.5%)であった。抗菌薬の早期中止は、適正使用の推進(antibiotic stewardshipの向上)につながると考える。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
この研究の背景にある 2012 年発行の NICE のガイドライン(CG149)は、早発型新生児敗血症の診断と治療に関するもので、敗血症が疑われる児には血液培養採取後遅滞なく抗菌薬を投与することを勧めている。一方で発症・血液培養採取から 36 時間の時点で(i)血液培養が陽性とならない(陰性のまま)、(ii)当初の感染症の疑いがそれほど強くない、(iii)児の状態が落ち着いている、(iv)CRP の値・推移がおおむね良好である例については、抗菌薬の中止を推奨している。本検討は、検査室がそれに対応できる体制を取っているかを調査したものであり、臨床上のアウトカムの改善のみならず、検査体制の整備、不要な抗菌薬の中止までを含めた総合的なマネジメントの状況をみるうえでも、興味深い。

急性外傷性創傷におけるポリヘキサニド 0.04%の消毒効果に関する無作為化対照臨床試験

Randomized controlled clinical trial on the antiseptic efficacy of polihexanide 0.04% on acute traumatic wounds

B. Payne*, H.-P. Simmen, E. Csuka, M. Hintzpeter, S. Pahl, F.H.H. Brill
*University Hospital Zürich, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 429-432


急性外傷性創傷におけるポリヘキサメチレンビグアナイド(PHMB、ポリヘキサニド)0.04%の有効性を評価することであった。61 例の患者を対象に、無作為化二重盲検プラセボ対照前向き試験を実施した。ポリヘキサニドを用いて処置を行った群は、処置後 60 分でベースラインと比較して有意に菌数(log10 コロニー形成単位)を減少させたのに対し(P < 0.001)、リンゲル液群は 60 分間に有意な変化を示すことはなかった。急性外傷性創傷において、ポリヘキサニド 0.04%を用いた処置は細菌数の有意な減少をもたらした。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
消毒薬であるポリヘキサニドは、国内ではコンタクトレンズの洗浄剤に含有されていることで有名である。創傷にも安全に使用可能とされてきたが、創傷感染の中でもどのような状況で有用であるかははっきりしていなかった。本検討では救急外来を受診したものの、全身症状を伴うほどではない患者を対象にランダム化比較試験を行ったが、結果的に汚染が少ない患者が多くを占めていた。今回とは創の状態、場所、汚染状況が異なった集団において、本剤の効果を追試した結果が待たれる。

カンジダ・オーリス(Candida auris)に対する表面消毒の検証:in vitro 試験

Surface disinfection challenges for Candida auris: an in-vitro study

R. Kean*, L. Sherry, E. Townsend, E. McKloud, B. Short, A. Akinbobola, W.G. Mackay, C. Williams, B.L. Jones, G. Ramage
*Dentistry and Nursing, College of Medical, Veterinary and Life Sciences, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 98, 433-436


多剤耐性を示す新興病原性酵母であるカンジダ・オーリス(Candida auris)は、医療関連感染の重要な感染源の一つであり、臨床上、世界的にも懸念が高まっている。この病原体は表面で生存し、また環境的ストレスに抵抗するという能力を持っており、そのことが病院からの根絶を困難にしている。様々な表面環境における、標準的な消毒薬である次亜塩素酸ナトリウムおよび高水準消毒薬である過酢酸の効果を、複数のC. auris の臨床分離株を用いて評価した。C. auris は、臨床的に用いられる濃度の次亜塩素酸ナトリウムおよび過酢酸に対して、表面依存的に、選択的に耐容性を示したが、このことが病院環境内で本菌がうまく生き残る能力を説明できる可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
C. aurisが初めて報告されたのは本邦からである(2009 年、Satoh K et al.)。その後世界各地から報告が相次ぎ、多剤耐性であることもあいまって、新興感染症として重大な脅威となっている。存在箇所、ニッチ、医療環境での分布については不明の点が多いが、本菌の増加に消毒薬抵抗性が関わっている懸念はかねてから示されていた。今回セルロース、ステンレス、ポリマーについて次亜塩素酸、過酢酸を用いて調査したが、どのような環境条件が生存に最も有利であるのか、さらに Candida 属の他菌種とどのように異なるのか、今後も引き続き多くの知見の蓄積が必要であろう。

サイト内検索

Loading

アーカイブ

最新のコンテンツ

Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.