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医療関連感染症電子サーベイランスソフトウェアが感染予防リソースに及ぼす影響:文献のシステマティックレビュー

Impact of electronic healthcare-associated infection surveillance software on infection prevention resources: a systematic review of the literature

P.L. Russo*, R.Z. Shaban, D. Macbeth, A. Carter, B.G. Mitchell
*Deakin University, Australia

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 1-7


背景
医療関連感染症サーベイランスは感染予防にとって基本である。サーベイランスの方法と実践は、技術の発達に伴って進化してきた。電子サーベイランスソフトウェアの利用可能性が高まってきたが、電子サーベイランスソフトウェアの採用は進んでいない。電子サーベイランスソフトウェアは自動化によって、特に人的リソースの確保と感染予防スタッフの時間に関して節約をもたらすと主張されている。

目的
電子サーベイランスソフトウェアが感染予防リソースに及ぼす影響に関するシステマティックレビューの結果を報告すること。

方法
2006 年 1 月 1 日から 12 月 31 日に発表された Medline および Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature(CINAHL)の電子データベースについて系統的な検索を実施し、Newcastle-Ottawa Scale を用いて分析を行った。

結果
合計で 2,832 報の論文をレビューし、そのうち 16 研究が組み入れ基準を満たした。感染予防リソースは、サーベイランスにかかった時間として同定した。13 研究で、感染予防スタッフがサーベイランスの実施にかけた時間の短縮を示していた。短縮の割合は 12.5%から 98.4%の範囲(平均 73.9%)であった。残り 3 研究からは、感染予防スタッフの時間に関する影響を推定することはできなかった。いずれの研究も、感染予防スタッフの時間の延長を示したものはなかった。

結論
本レビューの結果から、電子サーベイランスソフトウェアの採用により、高いレベルの感度と特異度を維持しながら、データ収集および症例確認に関わる感染予防スタッフの時間がかなり節減されることが示される。このことにより、不足している感染予防リソースの効率的な使用を最大限にするための、感染予防の他の要素に対する再投資が可能になるであろう。

サマリー原文(英語)はこちら


監訳者コメント
電子サーベイランスも人為的なサーベイランスも運用によって実際との精度差は必ず生ずる。電子サーベイランスの良い点は、省力化・同じ条件を維持して情報収集ができるなどの点があるが精度を担保するには、定期的に人為的なサーベイランスとの比較検討が一定の間隔で必要となるだろう。

イタリア、リグーリアの急性期病院における医療関連感染症および抗菌薬使用の地域点有病率研究

Regional point prevalence study of healthcare-associated infections and antimicrobial use in acute care hospitals in Liguria, Italy

C. Sticchi*, M. Alberti, S. Artioli, M. Assensi, I. Baldelli, A. Battistini, S. Boni, G. Cassola, Elio Castagnola, M. Cattaneo, N. Cenderello, M.L. Cristina, A.M. De Mite, P. Fabbri, F. Federa, D.R. Giacobbe, D. La Masa, C. Lorusso, K. Marioni, V.M. Masi, B. Mentore, S. Montoro, A. Orsi, D. Raiteri, R. Riente, I. Samengo, C. Viscoli, R. Carloni a, The Collaborative Group for the Point Prevalence Survey of healthcare-associated infections in Liguria
*Health Regional Agency, Italy

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 8-16


背景
医療関連感染症(HCAI)および抗菌薬使用のモニタリングの重要性を鑑みて、2016 年 3 月から 4 月にかけてリグーリアにおいて地域点有病率調査を実施した。

目的
すべての公共病院において、HCAI の全有病率を算出し、抗菌薬の使用を明らかにすること。

方法
リスク因子および抗菌薬使用に関するデータを、各入院患者について収集した。HCAI と有意に関連する変数を明らかにするため、単変量および多変量解析を実施した。感染症および抗菌薬使用の標準化発生率比を、各参加病院について算出した。

結果
患者計 3,647 例を組み入れた。合計で HCAI 429 件が 376 例で診断され、HCAI の有病率は 10.3%であった。気道(21.7%)および尿路(20%)が、最も頻度の高い感染部位であった。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)(47.4%)およびカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)(26.3%)が高率に分離された。患者の 46 %が、少なくとも 1 つの抗菌薬投与を受けていた。βラクタム阻害薬を含むペニシリン系配合剤(24.1%)が最も広く使用されており、主な適応は市中獲得型感染症(46.7%)であった。

結論
HCAI の有病率には、2007 年に実施された同様の調査と比べて上昇がみられたが、類似した調査の実施は、より信頼度の高い考察を可能にするであろう。しかしながら、抗菌薬耐性および抗菌薬使用に関するデータは、全国的な傾向と一致している。有病率研究は、方法論上の限界があるにもかかわらず、HCAI の経時的なモニタリングを行い、またすべての利害関係者にこの問題についてさらなる注意喚起を促す上で有用である。

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監訳者コメント
抗菌薬消費動向を耐性菌検出動向と同時に経時的な変化を捉えることは、抗菌薬選択圧を確認する指標となる。適正使用を促す観点からもこうしたサーベイランスの実施は重要である。

オーストラリアの病院における院内獲得感染症で死亡する手術患者に対するケアのプロセス

Processes of care in surgical patients who died with hospital-acquired infections in Australian hospitals

J. Allen*, T. Rey-Conde, J.B. North, P. Kruger, W.J. Babidge, A.P. Wysocki, R.S. Ware, J.L. Veerman, G.J. Maddern
*Royal Australasian College of Surgeons, Australia

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 17-23


背景
感染症は、手術患者の入院に合併することがある。病院獲得感染症が、死亡した手術患者におけるケアのプロセスに及ぼす影響は明らかにされていない。

目的
病院獲得感染症が、院内で死亡した手術患者におけるケアのプロセスに及ぼす影響を検討すること。

方法
オーストラリアの全国手術死亡報告(2012 年から 2016 年)から外科医が記録した感染症のデータを抽出し、病院獲得感染症および感染症なしにグループ分けした。死亡報告には、院内で死亡したあらゆる年齢の手術患者が含まれていた。すべての患者が手術を受けていたわけではなかった。市中獲得感染症の患者および感染症発症時点に関するデータが欠けていた患者は除外した。多変量ロジスティック回帰を用いて補正を行い、病院獲得感染症がこれらの患者におけるケアのプロセスに及ぼした影響を明らかにした。病院獲得感染症に関連した費用を推定した。

結果
死亡した手術患者の 5 分の 1 は病院獲得感染症で死亡した(11,681 例中 2,242 例、19.2%)。病院獲得感染症患者では、感染症がなく死亡した患者と比べて、以下のケアのプロセスに増加が認められた:術後合併症(51.0%対 30.3%、補正オッズ比[aOR]2.20、95%信頼区間[CI]1.98 ~ 2.45、P < 0.001)、予定外の再手術(22.6%対 10.9%、aOR 2.38、95%CI 2.09 ~ 2.71、P < 0.001)および予定外の集中治療室入室(29.3%対 14.8%、aOR 2.18、95%CI 1.94 ~ 2.45、P < 0.001)。病院獲得感染症患者は感染症のない患者と比べて、入院期間が長く、病院費用が多くかかった。

結論
病院獲得感染症は、死亡した手術患者において、ケアのプロセスおよび費用の増大と関連した。こうした転帰について、生存した手術患者において検討する必要がある。

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監訳者コメント
病院獲得感染症患の在院日数や医療費が高くなるなどの転帰は一般的に既に示されているのと同様である。

待機的大腸手術を受ける患者における早期発症および晩期発症手術部位感染症の予測因子:多施設共同前向きコホート研究

Predictive factors for early- and late-onset surgical site infections in patients undergoing elective colorectal surgery. A multicentre, prospective, cohort study

A. Gomila*, J. Carratalà, S. Biondo, J.M. Badia, D. Fraccalvieri, E. Shaw, V. Diaz-Brito, L. Pagespetit, N. Freixas, M. Brugués, L. Mora, R. Perez, C. Sanz, N. Arroyo, S. Iftimie, E. Limón, F. Gudiol, M. Pujol, on behalf of VINCat colon surgery group
*Hospital Universitari de Bellvitge, Institut d’Investigació Spain

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 24-30


背景
手術部位感染症(SSI)は、欧州の急性期病院における医療関連感染症の主要な原因である。しかし、早期発症および晩期発症 SSI の発症におけるリスク因子は明らかにされていない。

目的
本研究では、大腸手術を受けた患者の大規模コホートにおいて、早期発症 SSI および晩期発症 SSI の予測因子を検討した。

方法
待機的大腸手術を受ける成人患者を対象に、病院 10 施設で前向きに追跡調査を行った(2011 年 から 2014 年)。患者を、早期発症 SSI、晩期発症 SSI、または感染症なし(SSI なし)の 3 グループに分けた。早期発症 SSI と晩期発症 SSI を定義するカットオフは 7 日(SSI 発症までの期間中央値)とした。早期発症 SSI と晩期発症 SSI について異なる予測因子を分析し、各グループを SSI なしの患者と比較した。

結果
患者 3,701 例中、320 例(8.6%)および 349 例(9.4%)がそれぞれ、早期発症 SSI および晩期発症 SSI を発症した。残りの患者には SSI はなかった。早期発症 SSI の患者はほとんどが男性で、大腸手術を受け、臓器・体腔 SSI を発症した一方、晩期発症 SSI の患者は化学療法または放射線療法を受けていることが多く、術後創部 SSI であった。男性(オッズ比[OR]1.92、P < 0.001)、American Society of Anesthesiologistsの身体状態 > 2(OR 1.51、P = 0.01)、機械的腸管処置の実施(OR 0.7、P = 0.03)およびストーマ作成(OR 1.95、P < 0.001)は早期発症 SSI を予測した一方、直腸手術(OR 1.43、P=0.03)、長時間の手術(OR 1.4、P = 0.03)および化学療法の既往(OR 1.8、P = 0.03)は晩期発症 SSI を予測した。

結論
本研究により、待機的大腸手術の前後 7 日における SSI の発症に関する明確な予測因子が明らかにされた。これらの因子は、各患者グループにおける特異的な予防策を確立する一助となり得る。

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監訳者コメント
待機的大腸手術を受ける患者の手術部位感染症発生要因を、早期発症と晩期発症に分けて検討した論文である。多変量解析を見ると、早期発症と晩期発症での予測因子の違いがあり、興味深い結果であった。

日本の病院における大腸手術部位感染症の経済的負担の評価★★

Evaluation of economic burden of colonic surgical site infection at a Japanese hospital

M. Ohno*, Y. Shimada, M. Satoh, Y. Kojima, K. Sakamoto, S. Hori
* SECOM Co. Ltd, Japan

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 31-35


背景
欧州および米国において、手術部位感染症(SSI)に起因するとされる費用増大に関するいくつかの報告が発表されている。しかし、日本ではそのような研究は限られている。

目的
日本の病院における大腸 SSI の経済的負担を評価すること。

方法
本研究は日本の大学病院 1 施設で実施した。2014 年 11 月から 2016 年 3 月の間に下部消化管外科で大腸手術を受けた患者 265 例のうち、SSI を発症し、診断群分類コードを割り当てることのできた 16 例を、SSI 症例として選択した。個々の SSI 症例を、手術の種類、年齢層、性別、創分類、ストーマの有無、および SSI リスク指標に基づいて非 SSI 症例とマッチさせた。入院期間および出来高払い参照費用の中央値を、SSI エピソードと非 SSI エピソードで比較した。

結果
SSIを有する患者と有さない患者の入院期間の中央値は、それぞれ 25.5 日(四分位範囲[IQR]21.5 ~ 39.3)および 16.5日(IQR 12.5 ~ 18.5)であった(P < 0.01)。SSIを有する患者と有さない患者の出来高払い参照費用の中央値は、それぞれ842,155円(IQR 716,423 円 ~ 1,388,968 円)および575,795 円(IQR 529,638 円 ~ 680,105円)であった(P < 0.01)。

結論
SSI は、有意な入院期間の延長と経済的負担の増大をもたらした。SSI エピソードは非 SSI エピソードよりも利益になるようであるが、機会費用を考慮に入れた場合、観察期間中において SSI エピソードの経済的利益は非 SSI エピソードよりも少なかった。

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監訳者コメント
日本の大学病院における手術部位感染症の費用を評価した論文である。日本の医療費支払制度に基づいた解析は、今後の我々の研究の指標となると思われる。


中国江蘇省の病院 176 施設の集中治療室における院内感染に関する対象限定サーベイランス

Targeted surveillance of nosocomial infection in intensive care units of 176 hospitals in Jiangsu
province, China

Y. Li*, X. Cao, H. Ge, Y. Jiang, H. Zhou, W. Zheng
* Nanjing Drum Tower Hospital, The Affiliated Hospital of Nanjing University Medical School, China

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 36-41


背景
院内感染は、世界中の病院で治療およびコストに影響を及ぼしている。集中治療室(ICU)における院内感染の対象限定サーベイランスに関するデータはほとんどなく、また、院内感染のリスク因子に特化したデータは特に限られている。

方法
2 次病院および 3 次病院 176 施設の ICU において、院内感染の対象限定サーベイランスを実施した。データは Minke software を用いて収集および要約され、その後、四半期に一度フィードバックされた。

結果
院内感染発生率は低下がみられ、1,000 患者日数あたりの院内感染発生率および調整発生率は、それぞれ、25.63‰、7.41‰(2010 年)、9.73‰、2.76‰(2015 年)であった。総合病院における院内感染発生率は、専門病院よりも高かった。中心ライン関連血流感染(central-line-associated bloodstream infection;CLABSI)およびカテーテル関連尿路感染症(catheter-associated urinary tract infection;CAUTI)の発生率は低下がみられ、また、人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia;VAP)の発生率は 20.33‰から 2.76‰へと著しく低下した。ICU 間で統計学的に有意な差は認められなかった。院内感染の原因として発見される頻度が最も高い 6 種の病原菌は、アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii;AB)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae;KP)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、大腸菌(Escherichia coli)であった。カルバペネム耐性グラム陰性桿菌の分離率は、カルバペネム耐性 AB 80.53%、カルバペネム耐性緑膿菌 39.94%、カルバペネム耐性肺炎桿菌(CRKP)24.86%、およびカルバペネム耐性大腸菌 9.23%であった。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の分離率は 66.30%であった。回帰モデルで分析すると、CRKP の増加傾向は統計学的に有意であった。

結論
ICU における VAP、CAUTI および CLABSI の発生率は高く、また多剤耐性病原体は院内感染の一次病原体であった。対象限定サーベイランスの実行により院内感染のリスク因子が明らかになり、ICU の患者における院内感染発生率を低下させるために効果的な介入策を実施できる可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら


監訳者コメント
中国江蘇省 176 病院の ICU のデータである。カルバペネム耐性グラム陰性桿菌の分離率、MRSA 分離率の高さは、これだけですでに大きな課題であり、人が頻繁に移動する今日、我々にとっても脅威となり得ると思われた。

集中治療室(ICU)で獲得された菌血症と ICU における死亡および退院:適切な方法を用いた時間依存性交絡への対処

Intensive care unit (ICU)-acquired bacteraemia and ICU mortality and discharge: addressing time-varying confounding using appropriate methodology

K.B. Pouwels*, S. Vansteelandt, R. Batra, J.D. Edgeworth, T. Smieszek, J.V. Robotham
* National Infection Service, Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 42-47


背景
多くの場合、研究では時間依存性交絡が無視されたり、または時間依存性交絡の補正に不適切な方法が用いられることがある。

目的
適切な方法を用いて、集中治療室(ICU)で獲得された菌血症が ICU における死亡および退院に及ぼす影響を推定すること。

方法
ロンドンの教育病院 1 施設の一般 ICU に 2 日を超えて滞在し、滞在当初の 2 日間は菌血症に罹患していなかった患者において、ICU で獲得された菌血症に関連した ICU 死亡率および退院率を推定するため、逆確率重み付け法による周辺構造モデルを用いた。比較のため、(i)ベースラインの交絡因子のみを補正した従来の Cox モデル、(ii)ベースラインおよび時間依存性交絡因子を補正した Cox モデルを用いて同様に関連性を評価した。

結果
逆確率重み付け法による周辺構造モデルを用いると、菌血症は ICU 死亡率の上昇と関連しており(原因特異的ハザード比[HR]1.29、95%信頼区間[CI]1.02 ~ 1.63)、また、ICU 退院率の低下と関連していた(原因特異的 HR 0.52、95%CI 0.45 ~ 0.60)。2 日を超えてなお ICU に滞在しており菌血症の既往がない患者において、ICU で獲得されたすべての菌血症症例を予防すれば、60 日まで ICU の死亡の 8.0%は防げる可能性があった。時間依存性交絡因子を補正した従来の Cox モデルを用いると、大きく異なる結果が得られた([ICU における死亡]原因特異的 HR 1.08、95%CI 0.88 ~ 1.32、[ICU 退院]原因特異的 HR 0.68、95%CI 0.60 ~ 0.77)。

結論
本研究において、逆確率重み付け法による周辺構造モデルを用い、菌血症を獲得したタイミングおよび時間依存性交絡を補正した後でさえ、ICU で獲得された菌血症は ICU 退院の 1 日あたりのリスクの低下および ICU における死亡リスクの上昇と関連した。

サマリー原文(英語)はこちら


監訳者コメント
菌血症をはじめとする感染症の疫学研究においては、様々なバイアスに注意しなければならない。本研究はそのような想定しうるバイアスについて、最近の様々な統計的手法を用いて可能な限り調整したもので、それでも ICU で発症する菌血症は ICU 内での死亡や ICU からの退室の遅延に関連することを示した研究である。

ICU 以外の院内の血管カテーテル関連血流感染患者における死亡リスク因子:前向きコホート研究

Mortality risk factors among non-ICU patients with nosocomial vascular catheter-related bloodstream infections: a prospective cohort study

P. Saliba*, A. Hornero, G. Cuervo, I. Grau, E. Jimenez, D. García, F. Tubau, J.M. Martínez-Sánchez, J. Carratalà, M. Pujol
* University of Barcelona, Spain

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 48-54


背景
血管カテーテル関連血流感染(CRBSI)は予防可能性が高い病院感染であり、また患者安全に対する重大な脅威である。集中治療室(ICU)の患者における CRBSI の転帰に関する重要な情報はあるものの、ICU 以外の患者に関するデータは不足している。

目的
ICU 以外の院内 CRBSI 患者における 30 日死亡率と関連したリスク因子を明らかにすること。

方法
2004 年 1 月から 2014 年 12 月の間に、3 次病院 1 施設における ICU 以外の院内 CRBSI 患者を対象に前向きコホート研究を実施した。主要転帰は 30 日死亡率とし、CRBSI から 30 日以内のあらゆる原因による死亡と定義した。追跡調査は CRBSI の発生から 30 日後に実施した。死亡までの時間を Cox 回帰分析における従属変数とした。

結果
全体で、CRBSI 症例 546 例が特定された。患者の平均年齢は 64.5 歳(四分位範囲[IQR]55 ~ 75 歳)であり、66%は男性、また平均 Charlson スコアは 3.59(IQR 2 ~ 5)であった。546 症例のうち、58.4%は中心静脈カテーテルに、41.6%は末梢静脈カテーテルに起因するものであった。原因病原体はグラム陽性球菌(症例の70.1%)、グラム陰性桿菌(31.1%)、および Candida 属菌(1%)であった。30 日死亡率は 13.9%であり、本試験期間中に有意な変化はなかった。30 日死亡率の独立リスク因子は、Charlson スコア≧ 4(ハザード比[HR]1.80、95%信頼区間[CI]1.19 ~ 2.73)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)感染(HR 2.67、95%CI 1.61 ~ 4.43)、Candida 属菌感染(HR 6.1、95%CI 2.08 ~ 18.04)であった。年齢、入院エリア、血管カテーテルの種類、使用目的、部位、また適切な経験的抗菌薬投与は、30 日死亡率の独立リスク因子ではなかった。

結論
ICU 以外の院内 CRBSI は高い死亡リスクと関連しており、特に Charlson スコアがより高い患者、ならびに黄色ブドウ球菌および Candida属菌による血流感染の患者において顕著である。

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監訳者コメント
感染症の疫学研究は ICU 内のものが多かったが、近年 ICU 外の患者にも目が向けられている。死亡リスクと関連した Charlson スコア、黄色ブドウ球菌ならびに Candida 菌血症は、ICU でも危険因子として挙げられている因子である。いずれにせよ ICU 外で発生している菌血症も死亡リスクが高く、注意しなければならない。

オーストラリアの新生児および小児集中治療室における中心および末梢ライン関連血流感染:包括的なビクトリア州サーベイランスネットワークによる 2008 年から 2016 年の知見

Central and peripheral line-associated bloodstream infections in Australian neonatal and paediatric
intensive care units: findings from a comprehensive Victorian surveillance network, 2008-2016

L.J. Worth*, A.J. Daley, T. Spelman, A.L. Bull, J.A. Brett, M.J. Richards
*Victorian Healthcare Associated Infection Surveillance System (VICNISS) Coordinating Centre, Australia

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 55-61


背景
新生児および小児集団における医療関連感染は、より不良な転帰および医療費と関連しており、またサーベイランスは予防プログラムに不可欠な要素である。

目的
2008 年 7 月 1 日から 2016 年 12 月 31 日の間に、オーストラリアの新生児および小児集中治療室(ICU)における中心および末梢ライン関連血流感染(central and peripheral line-associated bloodstream infection;CLABSI、PLABSI)に関して、疾患の負荷、病因、経時動向を評価すること。

方法
ビクトリア州医療関連感染サーベイランスシステムに参加している病院が、全米医療安全ネットワークの手法を用いて、新生児および小児 ICU におけるサーベイランスを実施した。経時的に感染症をモデル化するため混合効果ポアソン回帰を用いた。

結果
全体で、37,125 CVC 日で小児 CLABSI イベントが 82 件(1,000 CVC 日あたり 2.21 件)、92,169 CVC 日で新生児 CLABSI イベントが 203 件(1,000 CVC 日あたり 2.20 件)、また142,240 末梢ライン日で新生児 PLABSI イベントが 95 件(1,000 末梢ライン日あたり 0.67 件)報告された。経時的に、新生児 CLABSI イベントに対する 3 か月ごとのリスクの有意な低下が認められ(リスク比[RR]0.98、95%信頼区間[CI]0.97 ~ 0.99、P = 0.023)、またこの低下は出生体重 751 ~ 1,000 g のコホート(RR 0.97、P = 0.015)で有意であった。CLABSI イベントの原因菌として、コアグラーゼ陰性 Staphylococcus 属菌(24.2%)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、16.1%)は最も高頻度であった。新生児におけるグラム陰性菌感染の有意な減少が認められた(年間 RR 0.85、P < 0.001)。

結論
我々の地域の新生児および小児 ICU における CLABSI 発生率は低く、また新生児感染は経時的に有意に減少した。感染リスクのさらなる低下に向け、具体的な方針が実行できるか検討するため、感染予防プログラムを評価することが必要である。

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監訳者コメント
オーストラリアビクトリア州の新生児および小児 ICU におけるカテーテル関連血流感染症サーベイランスの結果である。小児診療に関わられている方々は是非参考にしていただき、日本の当該領域の疫学を明らかにしていっていただきたい。

極低出生体重児における動脈管開存症に対する外科的結紮術後の感染症

Infections following surgical patent ductus arteriosus ligation in very-low-birthweight neonates

K. Kopeć -Godlewska*, J. Wójkowska-Mach, on behalf of the Polish Neonatology Surveillance Network Team
* Jagiellonian University Medical College, Poland

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 62-67


背景
ポーランドでは、極低出生体重児(1,500 g 未満)は生産児の約 1%を占める。動脈管開存症は早産児に発生しやすい合併症のひとつである。本研究の目的は、対象の新生児集中治療室において治療を受けている極低出生体重児のうち、何例が動脈管開存症の外科的整復を必要とするか検討すること、また各種の術後感染症の発生率および微生物学について評価することであった。

方法
ポーランドの新生児科サーベイランスネットワークが 5 つの新生児部門において観察研究を実施した。2,039 例の極低出生体重児が含まれ、そのうち 103 例(5.1%)が動脈管開存症に対する外科的結紮術を必要とした。2009 年から 2013 年の間に継続的な感染症サーベイランスが行われ、感染症は Gastmeier の基準に基づいて定義された。

結果
動脈管開存症手術は多胎妊娠により出生した乳児において必要となる頻度が有意に高く、また多胎妊娠では羊膜炎が分娩を困難にしていた。動脈管開存症の外科的整復は、平均して生後 19 日の時点で実施された。感染症の発生率は 48.5%(N = 50)であり、また、最も頻度が高い感染症は血流感染(26.2%)および肺炎(22.3%)であった。手術日と感染時には相関性が認められ、より早期に動脈管開存症手術を受けた新生児では、より早期に感染症が発生した(P = 0.032)。CRIB(Clinical Risk Index for Babies)スコアが高値であることおよび絨毛膜羊膜炎は、感染症の存在に有意に関与した。

結論
動脈管開存症手術を行う時期が遅いほど、感染症の発生も遅くなった。極低出生体重児における動脈管開存症整復後の感染症発生率は、入院しているすべての極低出生体重児における感染症発生率と同程度であった。

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監訳者コメント
本研究のような特定の患者に発症する特定の疾患に関する術後感染症(手術部位感染に限らない)は症例数も少なく、単施設でサーベイランスを行うのは困難である。本観察的・記述的研究では PDA の定義が統一されておらず、また様々な情報が欠落しているというリミテーションが指摘されているものの、PDA に対する手術のタイミングについての検討を促す興味深い結果である。

熱傷患者の皮膚型ムーコル症に伴う包帯でのリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応によるリクテイミア(Lichtheimia)属菌の検出★★

Real-time polymerase chain reaction detection of Lichtheimia species in bandages associated with cutaneous mucormycosis in burn patients

E. Fréalle*, S. Rocchi, M. Bacus, H. Bachelet, L. Pasquesoone, B. Tavernier, D. Mathieu, L. Millon, M. Jeanne
* Université de Lille, France

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 68-74


背景
フランスのリール大学病院の熱傷病棟で、主にリクテイミア(LichtheimiaAbsidia])属菌に起因する皮膚型ムーコル症が複数回にわたり発生している。

目的
創傷被覆用滅菌ガーゼの保定に使用された非滅菌包帯が病原菌を媒介する役割を果たす可能性を検討すること。

方法
2014 年 3 月および 2016 年 7 月の独立した 2 回の発生で収集した 8 個のクレープ包帯および 6 個の伸縮性包帯に対し、従来の培養法、ムーコル目菌(Mucorales)のリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、および Lichtheimia 属菌に特異的な qPCR による菌類学的分析を実施した。2013 年 11 月から 2016 年 7 月までに熱傷患者で発生した Lichtheimia 属菌によるムーコル症 7 例の特徴も収集し、汚染の可能性がある包帯と臨床的感染症との疫学的関係を評価した。

結果
培養の結果、1 個のクレープ包帯でリクテイミア・コリムビフェラ(Lichtheimia corymbifera)1株が分離され、Lichtheimia属菌の qPCR の結果はクレープ包帯 8 個中 6 個、および伸縮性包帯 6 個中 4 個で陽性であった。菌種に特異的な qPCR では、リクテイミア・ラモサ(Lichtheimia ramosa)、リクテイミア・オルナタ(Lichtheimia ornata)、および L. corymbifera が包帯 10 個中 6 個、5 個および 4 個でそれぞれ同定された。ムーコル症患者では、L. ramosa および L. ornata がそれぞれ 5 例および 2 例で陽性であった。

結論
本研究のデータから、疫学調査におけるムーコル目菌の qPCR の有用性、本センターの熱傷患者の皮膚型ムーコル症においてこれらの包帯が果たす潜在的な役割、つまりは、広範な創傷の被覆における滅菌包帯の必要性が裏付けられた。

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監訳者コメント
ムーコル症は造血幹細胞移植後の血液疾患患者に発生する日和見真菌感染症としての病態が知られているが、本例のように「熱傷患者における皮膚ムーコル症」の報告が散見される。過去にも同様に未滅菌の包帯の汚染による熱傷部位への感染症がいくつか報告されており、決して看過できる感染症ではない。熱傷部位には、滅菌ガーゼや滅菌ドレッシング材を使用するが、その上を覆う包帯が汚染されていて、明らかに直接熱傷部位と接触していなくても感染するため、未滅菌包帯を「広範な」創傷の被覆に使用するのは控えるべきと本論文では結論づけている。

PICO 創被覆材のルーチンな使用によって末梢血管手術後の鼠蹊部の創合併症発症率が低下するかもしれない

Routine use of PICO dressings may reduce overall groin wound complication rates following peripheral vascular surgery

C.A. Fleming*, M. Kuteva, K. O’Hanlon, G. O’Brien, G. McGreal
*Mercy University Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 75-80


背景
末梢血管手術における死亡の約 19%が創合併症に起因する。創合併症は、治癒が遅れるだけでなく、動脈または移植片の感染をもたらし、四肢の欠損、極端な例では死亡にまで至ることがある。

目的
末梢血管手術を受けた患者において、PICO 陰圧閉鎖療法による創傷被覆材のルーチンでの導入後に、鼠蹊部の創合併症が減少したかどうかを明らかにすること。

方法
2011 年から 2016 年に末梢血管手術を受けた患者を同定し、PICO 群と非 PICO 群に分類した。患者、手技および創傷の特徴を一覧表にまとめ、解析を実施した。術後 6 週間以上にわたり患者を追跡調査した。創合併症の発生率、微生物学的検査によって確定診断された感染症、および創合併症による再入院の必要性を記録した。基本的費用の分析を実施した。

結果
計 151 例の患者が解析の対象となった(PICO 群 73 例、非 PICO 群 78 例)。年齢(P = 0.862)、ボディマス指数(P = 0.673)、糖尿病(P = 0.339)、術前アルブミン値(P = 0.196)、ドレーンの使用(P = 0.343)、およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus>)の既往歴(P = 0.281)に群間差は認められなかった。PICO 群では、非 PICO 群よりも喫煙者数が多かった(45%対 29%、P = 0.034)。創合併症は、PICO 群の 8%(6 例)、非 PICO 群の19%(15例)で認められた(P = 0.042)。感染症の発生率は2群間で有意差が認められなかったが(3%対 6%、P = 0.249)、漿液腫は PICO 創被覆材を使用したほうが少なかった(1.4%対 7.7%、P = 0.069)。血腫(2.7%対 3.8%、P = 0.531)および裂開(1.4%対 1.3%、P = 0.735)の発生率は両群で同程度であった。


結論
PICO 創被覆材のルーチンでの使用は、末梢血管手術後の創合併症の発生率低下と関連し、費用対効果が高い。

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監訳者コメント
下肢動脈手術後の患者では鼠径部に術創があるため漿液腫や創部感染等の合併症を起こしやすく、特に喫煙、糖尿病、肥満、重症の下肢虚血、過去の手術歴はリスクとなる。PICO 創傷治療システムは、スミスアンドネフュー社で開発された陰圧閉鎖療法の機器で、被覆された創部をドレッシング材で浸出液を吸収蒸散させることで創傷治癒を促進するものである。PICO を使用し末梢血管外科手術後の合併症が減少することで、初期コストはかかるものの、合併症による再入院のコストを計算すると、PICO の使用により全体の医療コストを約34,500ユーロ低下させることができると報告している。

病院感染肺炎のサーベイランスに国際疾病分類のコードを用いるべきか?

Should International Classification of Diseases codes be used to survey hospital-acquired pneumonia?

A. Wolfensberger*, A.H. Meier, S.P. Kuster, T. Mehra, M.-T. Meier, H. Sax
* University Hospital Zürich, University of Zurich, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 81-84


病院感染肺炎のサーベイランスは極めて大量のリソースを要するため、病院感染肺炎サーベイランスの代替法が早急に必要とされている。本研究では、ルーチンの退院時の国際疾病分類第 10 版(ICD-10)に基づく診断コードによる病院感染肺炎の発生率を、妥当性が検証された Hospitals in Europe Link for Infection Control through Surveillance(HELICS/IPSE)のサーベイランス定義の患者記録の手動による後向き再評価を用いた病院感染肺炎の発生率と比較した。HELICS による病院感染肺炎に対して、ICD による病院感染肺炎の陽性予測値は 0.35、感度は 0.59 であった。したがって、現在利用可能な ICD-10 に基づくルーチンの退院データでは、病院感染肺炎患者の信頼性のある同定ができない。

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監訳者コメント
院内感染のサーベイランスは、感染予防対策プログラムの成否の指標であり、その報告は必須事項となっている。しかしながら、欧州サーベイランスの定義にしたがった病院感染肺炎(HAP)のサーベイランスは時間と手間がかかるため、国際疾病分類コード(ICD-10)を利用した効率の良い低コストの HAP サーベイランスの可能性を研究したのが、この論文である。人工呼吸器関連肺炎(VAP)については、と ICD-10 との比較はあるものの陽性予測率(0.21 ~ 0.57)と感度(0.18 ~ 0.21)共に十分ではないことがわかっている。本論文の HAP においても両者は十分ではなく、HAP サーベイランスに ICD-10 は使えず、自動的に HAP を検出する別のシステムの開発が望まれる。

オーストラリアの中小規模病院における医療関連感染サーベイランスの検証

Validation of healthcare-associated infection surveillance in smaller Australian hospitals

A.J. Hoskins*, L.J. Worth, N. Imam, S.A. Johnson, A.L. Bull, M.J. Richards, N.J. Bennett
* Doherty Institute for Infection and Immunity, Australia

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 85-88


ビクトリア州の中小規模病院(急性期病床 100 床未満)において、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)血流感染症(SAB)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant S. aureus;MRSA)感染症およびバンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci;VRE)感染症の症例発見を評価するため、検証試験を実施した。全体で、病院 20 施設において感染症 142 例が確認された。SAB イベントに対するルーチンのサーベイランスは、感度 74.4%、特異度 100.0%であった。MRSA 感染症に対しては、感度 47.5%、特異度 90.9%であった。確認されたすべての VRE 感染症は正確に報告されていた。未報告の SAB および MRSA 感染症のうち、それぞれ 80%(N = 16)および 83.9%(N = 26)は市中感染症であった。今後のプログラムの改善には、症例定義、特に市中発症例を含むものが適切に適用されるようにするための対象を絞った教育が挙げられる。

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監訳者コメント
オーストラリアのビクトリア州における医療施設関連感染症サーベイランスは、病院の急性期病床数 100 床を基準に 2 つに分けられている。すべての小規模病院(急性期病床100床未満)には、SAB と MRSA および VRE による感染症の報告を 4 半期毎に実施することが求められている。しかしながら、実施されているサーベイランスが精度よく検出され、報告されているかを検証したところ、市中感染の症例が未報告の大半を占めていた。小規模病院は多くは都市部から離れており、感染対策の専門科や感染症専門家へのアクセスも十分でないことが、結果的に低い感度に反映されている。これらを改善するための教育研修プログラムや症例相談窓口がつくられ、現在これらの活動が進行している。

フィンランドの第 3 次病院における異なるタイプの手術後の血流感染症(2009 年から 2014 年)

Bloodstream infections following different types of surgery in a Finnish tertiary care hospital, 2009-2014

K. Skogberg*, K.S.K. Kontula, A. Järvinen, O. Lyytikäinen
* Helsinki University Central Hospital, Finland

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 89-93


術後に生じた血流感染症(BSI)のリスクおよびアウトカムを評価した。国家的なサーベイランスの一環として 2009 年から 2014 年にヘルシンキ大学病院で経験した BSI を集計した。集積した BSI 711 例中、51%が 2 次、49%が 1 次であった。発生率は心血管手術後で最も高く(手術 1,000 件あたり 8.7 件)、婦人科の手術後で最も低かった(1,000 件あたり 1.0 件)。手術部位感染が 2 次 BSI で最もよくみられた感染源(34%)であり、1 次 BSI の 45%が中心静脈ライン関連であった。28 日時点の死亡率は、0%(婦人科/産科)から 21%(心血管手術)であった。手術部位感染関連の BSI に加えて、BSI の半数が 1 次であったことから、予防にさらに焦点をあてるという結果がもたらされた。

監訳者注:本論文では、1 次は「感染源がはっきりしない菌血症、真菌血症。ただし血管内カテーテル感染を含むもの」、2 次は「他の臓器にも感染症を認め、同じ病原微生物が検出されたもの」を指す。

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監訳者コメント
外科手術後に生じた BSI の感染巣に関する、興味深い報告である。ヘルシンキ大学病院は1,983 床で、外科各科を網羅し、人口 120 万人のヘルシンキ都市圏をカバーしている(フィンランド人口の約4分の1)。BSI 3,033件のうち、術後に生じた BSI はおよそ 3 割、1,000手術に 1.7 件であった。2 次の菌血症のうち、手術に関連したものがどの程度であるか詳細は明らかになっていないが、その成因ごとに予防策を講じ、減少させられれば、手術後の菌血症も減り、予後の改善にもつながるであろう。

フランスの大学病院における経カテーテル大動脈弁留置術後の感染性心内膜炎および菌血症の発生率および予防:後向き研究

Incidence and prevention of infective endocarditis and bacteraemia after after transcatheteraortic aortic valve implantation in a French university hospital: a retrospective study

M. Gallouche*, G.Barone-Rochette, P. Pavese, B. Bertrand, G. Vanzetto, H. Bouvaist, I. Pierre, D. Schmitt, J. Fauconnier, Y. Caspar, C. Recule, R. Picot-Guéraud, J.P. Stahl, M.R. Mallaret, C. Landelle
*Grenoble Alpes University Hospital, France

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 94-97


経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)後の感染性心内膜炎は、まれではあるが重度の合併症である。グルノーブルアルプス大学病院でTAVIを受けた患者 326 例中、6 例(1.8%)が感染性心内膜炎を、11 例(3.4%)が菌血症を発症した。いずれの症例も TAVI との関連性は認められなかったが、スクリーニングおよびターゲットを絞った除菌が実施されていたにもかかわらず、1 例が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)によるものであった。この結果は、無作為化試験によって本方針のベネフィットおよび費用対効果を評価する必要性を強調するものである。

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監訳者コメント
TAVI 施行例は本邦でも急速に増加している。TAVI の合併症に関する海外での経験も蓄積されつつあるが、感染性心内膜炎発症率は0 ~ 3.4%との報告がある。本研究では発症までの日数(中央値)は 287 日、最初の 1 年での発症率は 1.4%、発症例全体の死亡率は33%であった。鼻腔の黄色ブドウ球菌スクリーニング、および陽性例に対する除菌施行率はそれぞれ 70%、50%であったが、実際に除菌が完全にできた例は非常に少なく、予防効果は不明であった。将来、追試の施行とともに TAVI 施行例の感染症発症率を低下させる試み・対策が実行に移され、実際の減少につながることに期待したい。

オーストラリアの医療関連尿路感染症サーベイランス用ウェブサイトの開発および評価

Development and evaluation of a website for surveillance of healthcare-associated urinary tract infections in Australia

O. Fasugba*, J. Koerner, N. Bennett, S. Burrell, R. Laguitan, A. Hoskins, W. Beckingham, B.G. Mitchell, A. Gardner
*Australian Catholic University and St Vincent’s Health Australia (Sydney), Australia

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 98-102


尿路感染症の減少に向けたサーベイランスプロジェクトの第 2 相において、オーストラリアの病院および高齢者ケア施設での、医療関連尿路感染症およびカテーテル関連尿路感染症の一時点での割合を調査することを目的としたウェブサイトを試験的に運用した。本報告では、オンラインデータ収集用ウェブサイトの開発および評価について述べる。データ収集者 38 名からの評価結果によると、大半の回答者がウェブサイトの登録(22 名、58%)およびウェブフォーム(16 名、43%)が使用しやすいと評価した。コンピュータ・リテラシーのスキルおよび自動データシステムの改善の必要性が浮き彫りとなった。本研究によって、オーストラリアの医療関連尿路感染症に関するデータ収集の新しいアプローチが示されたが、全国展開には改良を要する。

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監訳者コメント
医療関連感染症について、データの質を担保しつつ、かつ容易に収集できるオンラインシステムは、長らく求められ、改良されてきたものの、まだその理想にはほど遠いのが実情である。調査用紙を用いた第 1 相での評価を踏まえ、オンライン版に改良した第 2 相でのユーザー評価をまとめたのが本報告であるが、ソフトウエアの構造上の問題と、データ入力に関しての操作上の複雑さが密接に相関していた。自動化による入力者の負担軽減も合わせて、総合的な観点から人的・物的リソースを十分に投入した開発が今後も必要と思われる。

中心静脈カテーテル関連グラム陰性菌菌血症患者に対するカテーテル抜去遅延の臨床的影響

Clinical impact of delayed catheter removal for patients with central-venous-catheter-related Gram-negative bacteraemia

Y-M. Lee*, C. Moon, Y.J. Kim, H.J. Lee, M.S. Lee, K-H. Park
*Kyung Hee University Hospital, Kyung Hee University School of Medicine, Republic of Korea

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 106-113


背景
グラム陰性菌は、カテーテル関連血流感染症(CRBSI)の原因菌となることが増えており、多剤耐性菌の保菌率も急上昇している。本研究では、中心静脈カテーテル(CVC)抜去の遅延がグラム陰性菌による CRBSI 患者の臨床アウトカムに及ぼす影響を評価した。

方法
2007 年 1 月から 2016 年 12 月までに第 3 次病院の 2 施設において、CVC 留置後のグラム陰性菌菌血症患者をレトロスペクティブに集計した。菌血症発症から 3 日を超えた後に CVC を抜去した例と、抜去しなかった例を CVC 抜去遅延例として分類した。

結果
計 112 例が対象となった。そのうち 78 例が CRBSI(43 例が確定、35 例が推定)であり、34 例が別の感染源によるグラム陰性菌菌血症(非 CRBSI)であった。腸内細菌科が原因である頻度は、非 CRBSI 患者と比較し、CRBSI 患者において低かった(11.5%対 41.3%、P < 0.001)。CVC 抜去の遅延は、グラム陰性 CRBSI 患者では 30 日時点の死亡率上昇と関連した(40.5%対 11.8%、P = 0.01)が、非 CRBSI 患者でこの関連性は認められなかった(25.0%対 14.3%、P > 0.99)。CVC 抜去遅延(オッズ比[OR]6.8)、多剤耐性(MDR)グラム陰性菌菌血症(OR 6.3)および慢性腎不全(OR 11.1)は、CRBSI 患者において 30 日時点での死亡率と関連していた。早期 CVC 抜去の死亡予防効果は MDR 群(48.3%対 18.2%、P = 0.03)で明らかであったが、非 MDR 群ではそうではなかった(11.1%対 0%、P = 0.43)。

結論
多剤耐性菌が流行している場合は特に、グラム陰性 CRBSI 患者の臨床アウトカムを改善するため、CVC を早期に抜去すべきである。

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監訳者コメント
グラム陰性菌菌血症による CRBSI を疑う場合、血管内カテーテルの扱いをグラム陽性菌と同様に考えるべきか、臨床的に悩ましい場合がある。加えて、尿路・腸管・胆道など他の感染巣からグラム陰性桿菌菌血症を来たした際、既に挿入されていた血管内カテーテルに二次的に菌が付着する例もある。CRBSI 関連のグラム陰性桿菌菌血症で早期の血管内カテーテル抜去が有効なのは本研究でも支持されたが、アウトカムは(30 日)死亡率であった。菌血症からの早期回復、臓器不全への進展予防といった指標においても、カテーテル抜去による違いについてデータがほしいところである。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.