JHIサマリー日本語版トップ

レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

医療施設における抗菌効果を目的とした表面加工:重要な概要

Surface modifications for antimicrobial effects in the healthcare setting: a critical overview

C. Adlhart*, J. Verran, N.F. Azevedo, H. Olmez, M.M. Keinänen-Toivola, I. Gouveia, L.F. Melo, F. Crijns
*Zurich University of Applied Sciences ZHAW, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 239-249


大部分の国で医療環境における感染症伝播はますます深刻な問題となってきており、抗菌薬や消毒薬に対する微生物の耐性の出現が追い打ちをかけている。このような感染は、留置医療器材(インプラント、カテーテルなど)に加え、シャワーキャップ、水道水、ドレーンなど外部の個体-液体接触面、またはドアの取っ手、衣類、カーテン、コンピューターのキーボードなどの外部の個体-気体接触面への微生物の付着に起因することもある。後者が本研究の主な論点であり、上記の事例における抗菌コーティングに関する概要を提示する。このレビューでは確立した方法および新規の方法を取り上げ、微生物汚染の低減を図る化学的かつ物理的な表面機能加工のほかに、このような汚染防止策の実施と関連する潜在的リスクも含めた。抗付着表面(超撥水性、双性イオンなど)、接触殺菌表面(ポリマーブラシ、ファージなど)、および殺生物剤放出表面(刺激応答放出、クオラムセンシングに基づく方法など)など化学的な方法によるさまざまなアプローチについて論じる。さらに、本レビューでは、異なる次元(ミクロンおよびナノメートルオーダーの大きさ)での局所的加工の影響とともに、抗菌性表面を構築し使用する際のデザインごとの安全基準(毒性、望ましくない抗菌薬耐性獲得の影響、長期安定性など)を適用することの重要性について評価する。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
既存の技術を超えた新しい手法で医療環境の表面を処理し、医療環境における病原体伝播の予防を効率よくすすめるための様々な技術展開について解説している。従来の技術では病原体が環境表面の付着してから次に伝播する方が早く、病原体を死滅させる効果を得るには時間がかかりすぎることが指摘されている。人体に無害で病原体のみに作用し、しかも短時間に効果が得られるのであれば、理想的な療養環境構築が可能となる。

病院感染の減少を図る抗菌コーティングに伴う特殊洗浄:COST Action Network AMiCI (CA15114)の見解

Specialized cleaning associated with antimicrobial coatings for reduction of hospital-acquired infection: opinion of the COST Action Network AMiCI (CA15114)

S.S. Dunne*, M. Ahonen, M. Modic, F.R.L. Crijns, M.M. Keinänen-Toivola, R. Meinke, C.W. Keevil, J. Gray, N.H. O’Connell, C.P. Dunne
*University of Limerick, Ireland

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 250-255


医療従事者の手指衛生遵守の不良に関して認識されている問題や、化学的に消毒済みの表面への手指接触による再汚染に関する報告は、現在利用可能な衛生法に加えて新たな衛生法の必要性を強調している。このようなアプローチの 1 つとして抗菌(ナノ)コーティングがあり、それによって、総合的な有効成分が、処理表面と接触する微生物の減少に寄与する。このことは実験的条件下では広く研究され、有望な結果が得られているが、実際の医療条件下での研究は少ない。医療関連感染の低減を図る抗菌(ナノ)コーティングに伴う特殊洗浄に関して、欧州 30 か国の参加者 75 名の見解を照合した。
従来または新たなプロセスを用いた抗菌(ナノ)コーティングの洗浄のための科学的ガイドラインの策定が必要であるという全員一致の合意がみられた。具体的なトピックは、洗浄剤の作用機序ならびに従来のコーティングや抗菌(ナノ)コーティングと洗浄剤との物理的相互作用を理解すること、評価では反復洗浄やその他劣化の側面(日光の曝露など)の影響を判定するために、コーティングのライフサイクルを再現すること、廃水中の抗菌(ナノ)コーティング由来の殺生物剤の濃度を測定すること、洗浄廃水の有効な無害化ならびに滅菌処理法を開発することであった。さらに、統一見解として、抗菌(ナノ)コーティングの広範な実施に先立ち、関与する臨床・医療管理、洗浄サービス、および環境安全に関する利害関係者のさまざまな責任を明確にする必要があるということが示された。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
医療環境の抗菌コーティング技術については、業界内で標準化された物差しがないことが利用する側からすると問題である。日本には EPA もなく、欧州よりはるかに遅れた体制しかなく課題を残している。

集中治療室の環境汚染に対する二酸化チタンの影響に関する介入前後の評価:TITANIC 試験

Pre-post evaluation of effects of a titanium dioxide coating on environmental contamination of an intensive care unit: the TITANIC study

B. de Jong*, A.M. Meeder, K.W.A.C. Koekkoek, M.A. Schouten, P. Westers, A.R.H. van Zanten
*Gelderse Vallei Hospital, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 256-262


背景
欧州の病院または集中治療室(ICU)に入院した患者のそれぞれ 5.7%、19.5%が医療関連感染症(HAI)に罹患しているとされ、抗菌薬耐性が出現している。病原性を有する可能性のある細菌によって病院表面は汚染されるので、HAI 低減に向けて環境の清浄度は重要な側面である。

目的
ICU の環境表面の微生物コロニー形成の低減を目的とした二酸化チタンコーティングの有効性について検討すること。

方法
ICU 室内表面の微生物コロニー形成に二酸化チタンコーティングが及ぼす影響を評価するために、単一施設での前向き比較対照パイロット研究を実施した。介入前と介入後の期間に、表面を接触寒天培地(BBL RODAC 培地)で培養した。表面の細菌コロニー形成に影響する可能性のある因子を記録した。介入の影響は、階層的マルチレベルフレームワーク内の反復測定分析を用い、説明変数で補正して分析した。

結果
介入前と介入後の期間において、ICU 室内のコロニー形成単位(cfu)総数の平均比は 0.86(標準偏差 0.57)であった。至適モデルは以下の説明変数であった:介入(P = 0.065)、週(P = 0.002)、培養表面(P < 0.001)、ICU 室内(P = 0.039)、介入と週の相互作用(P = 0.002)、週と培養表面の相互作用(P = 0.031)。介入前と介入後の期間の 4 週目に、すべての培養プレートの cfu 数に介入が及ぼした影響は-0.47(95%信頼区間-0.24 ~ -0.70)であった。

結論
本研究では、ICU 室内表面の微生物コロニー形成に二酸化チタンコーティングが無効であることを明らかにした。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
ネガティブスタディのデータである。

ガーナの主要な教育病院の手術室における出入りと微生物による空気汚染

Traffic flow and microbial air contamination in operating rooms at a major teaching hospital in Ghana

M.T. Stauning*, A. Bediako-Bowan, L.P.Andersen, J.A. Opintan, A.-K. Labi, J.A.L. Kurtzhals, S. Bjerrum
*Copenhagen University Hospital, Denmark

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 263-270


背景
手術室において、開扉率や在室者数と微生物空気汚染との関連を調査した現行の文献は限られている。手術部位感染のリスクが高い低中所得国での研究が特に必要とされる。

目的
ガーナの教育病院の手術室における微生物空気汚染、および開扉・在室者数と微生物空気汚染との関連を評価すること。さらに、開扉の理由を記録することを目的とした。

方法
124 件の待機的な清潔または準清潔手術中に、MAS 100® portable impactor を用いて自動エアーサンプリングを実施した。試験済みの構造化観察フォームを用いた直接観察により、在室者数、開扉率、開扉ごとの理由を記録した。

結果
手術中に、コロニー形成単位(cfu)数の平均は 328 cfu/m3(空気)で、510 サンプル中 429 サンプル(84%)は推奨レベル 180 cfu/m3 を超えていた。記録された開扉 6,717 回のうち 77%は不必要とみなされた。cfu/m3 のレベルは在室者数(P = 0.001)、開扉数/h(P = 0.02)と強く相関した。無人の手術室では、1 時間の連続換気後の平均 cfu 数は 39 cfu/m3 で、102 サンプル中 52 サンプル(51%)は推奨レベル 35 cfu/m3 を超えていた。

結論
本研究では、手術中の空気中の cfu が推奨レベルを超える高値を示した。低中所得国の施設において、微生物空気汚染を低減するために、手術中の開扉回数および在室者数を最小限に抑えることが有効な対策となりうる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
ガーナの教育病院の手術室における空気汚染を調べた論文である。微生物の定量、スタッフの出入りを調べたところ相関があったという結果は想像がつくが、77%が不必要な出入りであったという結果に驚いた。まず、対応すべき点であると思われた。

脳神経外科手術中の空中細菌汚染に対する可動型層流装置の効果

Effect of mobile laminar airflow units on airborne bacterial contamination during neurosurgical procedures

A.-C. von Vogelsang*, P. Förander, M. Arvidsson, P. Löwenhielm
*Karolinska University Hospital, Sweden

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 271-278


背景
脳神経外科手術後の手術部位感染症(SSI)は生命を脅かす可能性があり、多大なコストを伴う。SSI は手術室の空中細菌によって発生することがあり、感染しやすい清潔手術中は超清浄空気が望まれる。ドアの開閉および手術室にいる人数が空気の質に影響する。水平層流式の可動型層流装置は空中細菌汚染を減少させることがこれまでに示されてきた。

目的
脳神経外科手術中の空中細菌汚染に対する可動型層流装置の効果を評価すること。

方法
準実験的デザインで、従来型乱流換気システムの手術室および付加的な可動型層流装置のある手術室において、能動的エアサンプリングにより脳神経外科手術中の細菌保有粒子(コロニー形成単位:cfu)を測定した。可動型層流装置は手術室間で月 1 回移動させた。培養後、cfu の測定および細菌種の検出を行った。データは 18 か月間収集した。

結果
脳神経外科手術 45 件中、合計 233 サンプルを収集した。可動型層流装置の使用により、手術部位領域(P < 0.001)および器械台の上(P < 0.001)の cfu 数が有意に減少した。ロジスティック回帰により、cfu 測定に有意に影響する唯一の予測因子は可動型層流装置の使用であることが示された(オッズ比 41.6、95%信頼区間 11.3 ~ 152.8、P < 0.001)。最も高頻度に検出された細菌はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negative staphylococci)であった。

結論
可動型層流装置は脳神経外科手術中の cfu を超清浄空気レベルまで良好に減少させる。感染しやすい脳神経外科の清潔手術において、主要な手術室の換気システムが超清浄空気を生成できない場合、可動型層流装置は有用である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
「主要な手術室の換気システムが超清浄空気を生成できない場合、可動型層流装置は有用である」ことは、この研究で明らかになった。実際には、可動型層流装置の使用が SSI の発生にどのように影響するかが知りたいところである。

手術用ボディースーツ(スペーススーツ)の排気装置および人工関節感染症の可能性の比較

Comparison of air exhausts for surgical body suits (space suits) and the potential for periprosthetic joint infection

F. Ling*, S. Halabi, C. Jones
*Sandringham Hospital, Alfred Health, Australia

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 279-283


背景
人工関節感染症は関節全置換手術の主要な合併症のひとつであり、著しい罹患率、死亡率および経済的負担に関連している。手術用ボディースーツ(スペーススーツ)はもともとは感染症の発生率を低下させるために設計されたが、最近では逆説的に人工関節感染症の発生率の上昇に関係している。スペーススーツから排出される空気が人工関節感染症の発生率の上昇に関与する可能性がある。

目的
最新の手術室で一般的に使用されるスペーススーツから排出される空気の流れを検討すること。

方法
煙霧機および連続静止画像を用いて、4 つの市販のスペーススーツシステムの排出気流パターンを比較した。

結果
スペーススーツシステムを検討した結果、すべての空気が手術室に排出されていた。標準的な手術衣の単一送風機システムは、手術衣後方の折り目から、ほぼ手術野の位置で側方に空気を排出した。専用のファスナー付きスーツの単一送風機システムは、手術野より下の位置で空気を排出した。二重送風機システムは、ヘルメットの上部から手術野より上の位置で空気を排出した。

結論
人工関節置換術において現在使用されているスペーススーツシステムは、従来の全身排気システムと大きく異なる。最新のシステムは、汚染された空気を手術環境から除去するというよりは、むしろ手術室に排出し、一部のケースでは滅菌器具用トレイおよび手術野に向けて排出している可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
米国疾病対策センター(CDC)のGuideline for Prevention of Surgical Site Infection (2017)では、人工関節全置換術におけるスペーススーツの有用性と有害性は不明となっている。スペーススーツから排出される空気の汚染のデータが知りたいところである。

医療機器の安全性モニタリング用の水サンプルにおけるマイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)の検出限界:一連のパイロット実験からの知見

Detection limit of Mycobacterium chimaera in water samples for monitoring medical device safety: insights from a pilot experimental series

P.W. Schreiber*, N. Köhler, R. Cervera, B. Hasse, H. Sax, P.M. Keller
*University Hospital Zurich, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 284-289


背景
心臓外科手術後のマイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)感染症の増加が数か国で報告されている。これらの死に至る可能性のある感染症は、伝熱媒体として水を使用するヒータークーラー装置の汚染に由来した。ヒータークーラー装置由来の M. chimaera で汚染された水のエアロゾル化により、開胸手術を受ける患者への空気伝播が可能となる。感染制御チームは予防策の指針とするため、マイコバクテリアの増殖に関してヒータークーラー装置の水サンプルを検査している。しかし、水サンプル中の M. chimaera の検出限界はこれまでに検討されていない。

目的
実験室ベースの連続希釈テストを用いて、水サンプル中の M. chimaera の検出限界を決定すること。

方法
心臓外科手術関連の M. chimaera の世界的なアウトブレイクを代表する M. chimaera 1 株を用いて対数希釈系列を作製した。2 つの異なる水量(50 mL、1,000 mL)を接種し、同一の処理(遠心分離、デカンテーション、コンタミネーション除去)後、mycobacteria growth indicator tube および Middlebrook 7H11 固形培地に接種した。

結果
Mycobacteria growth indicator tube は一貫して 7H11 固形培地より低い検出限界を示し、水サンプル 50 mL では≧ 1.44 × 104 cfu/mL、1,000 mL では≧ 2.4 cfu/mL であった。固形培地では 50 mL の水サンプル中の M. chimaera は検出できなかった。

結論
水の量および培養方法によって、M. chimaera の検出限界に大きな違いがある。感度に関しては、mycobacteria growth indicator tube 培地における 1,000mL の水サンプルが最も良好であった。我々の結果は、M. chimaera のアウトブレイクの軽減および一般的な医療用の水の安全における感染予防・制御の方針に関して重要な意義がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
2015 年以降、本文にもあるように M. chimaera による体外循環用ヒータークーラーユニットに用いる水の汚染とそれによる手術部位感染症が相次いで報告されている。本論文はこの報告に基づいてヒータークーラーユニットの水を調査する際の指針となる貴重な報告である。なお、水の汚染菌は M. chimaera のみならず他の mycobacteria 属や細菌、真菌など様々なものが報告されている。汚染状況の調査とあわせて、水の管理についても検討すべきであろう。

水タンク内のクロルヘキシジン-アルコールにより処理される体外循環用ヒータークーラーユニットの持続的な汚染

Persistent contamination of heater-cooler units for extracorporeal circulation cured by
chlorhexidine-alcohol in water tanks

S. Romano-Bertrand*, M. Evrevin, C. Dupont, J.-M. Frapier, J.-C. Sinquet, E. Bousquet, B. Albat, E. Jumas-Bilak
*CHU Montpellier, France

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 290-294


最近では、非結核性抗酸菌(NTM)による手術部位感染が、ヒータークーラーユニットの汚染と関連している。現在、欧州疾病予防管理センターと製造会社は、ヒータークーラーユニットタンクを満たす濾過水に過酸化水素を添加することを推奨している。当院においてこの方法を実施したところ、ヒータークーラーユニットは緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)やステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)など水中の日和見病原体により高度に汚染されるようになった。NTM は検出されず、急激に増殖した耐性菌がその検出を阻止した可能性がある。過酸化水素とクロルヘキシジン-アルコールの有効性を現場で比較した。微生物の検出効率はおそらく改善されていると考えられたが、クロルヘキシジン-アルコール処理は水中の病原体汚染を阻止し、NTM は検出されなかった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
NTM による汚染が問題になっている体外循環用ヒータークーラーユニットの水の汚染に対する対策に関する論文である。本論文を見る限り、様々な報告が提唱され、まだゴールドスタンダードとなる対策はないようであるが、クロルヘキシジン-アルコール処理は有望な選択肢の一つのようである。

携帯電話およびコンピューターのキーボード:3 次集中治療室における多剤耐性菌のリザーバとなる可能性は低い

Mobile phones and computer keyboards: unlikely reservoirs of multidrug-resistant organisms in the tertiary intensive care unit

O.C. Smibert*, A.K. Aung, E. Woolnough, G.P. Carter, M.B. Schultz, B.P. Howden, T. Seemann, D. Spelman, S. McGloughlin, A.Y. Peleg
*Monash University, Australia

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 295-298


集中治療室(ICU)の臨床分離株と関連する伝播について検討するために分子疫学的方法を用いた研究は少ない。ICU 患者のルーチンの検体から 13 週にわたって培養された 94 株の多剤耐性病原体(MDRO)を保存した(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌[meticillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA]11 株、バンコマイシン耐性腸球菌[vancomycin resistant enterococci:VRE]2 株、グラム陰性菌 81 株)。医療スタッフの個人用携帯電話、ICU の電話、および ICU のキーボードの MDRO を調べるために、スワブ採取し、培養した。2 つの電話から MRSA が分離された。環境および患者の同じ属の分離株を選択し、全ゲノムシークエンシングを実施した。全ゲノムシークエンシングにおいて、携帯電話の分離株では、一塩基多型(SNP)の 2 配列間の距離が 183 であった。しかし、コアゲノムの 15,000 超の SNP より、携帯電話分離株と臨床分離株とが区別された。低流行の環境において、携帯電話やキーボードが院内獲得 MDRO の一因となる可能性は低いようである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
MDRO の伝播の原因として、医療環境が注目されている。しかし一方で、全ゲノムシークエンシングのような手技により、菌株の相同性が以前よりも相当詳しく分かるようになっている。実際に電話から MRSA が検出されているわけであるから、携帯電話やキーボードが問題ない、というわけではないと思われるし、臨床検体は研究用に採取された検体ではないので、本研究から何らかの結論を導きだすのは難しいのではないだろうか。

整形外科手術室における手術室用靴の汚染の評価

Assessment of theatre shoe contamination in an orthopaedic theatre

K. Clesham*, P.R. Ryan, C.G. Murphy
*Galway University Hospitals, Ireland

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 299-302


人工関節感染症は関節形成術の深刻な合併症のひとつである。多数のプロトコールにより手術中の人工関節感染症の潜在的なリスクは軽減されるが、手術室用靴の管理に関するプロトコールは存在しない。我々の目的は、手術室用靴上の、人工関節感染症を引き起こすことが知られている細菌を評価することであった。40 の手術室用靴が分析され、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negative staphylococci)は 65%(N = 25)に、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(meticillin-susceptible Staphylococcus aureus)は 40%(N = 16)に、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)は 25%(N = 10)に存在した。飛び散った血の量は微生物汚染にほとんど相関しなかった。抗菌薬耐性株を含め、靴に寄生しているグラム陽性細菌は、手術室環境への潜在的な伝播経路をもたらしている。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
整形外科手術の際の医療従事者の「靴」の汚染に関する論文である。思った以上に高率(25%!)に靴が MRSA で汚染されている。ただこの靴は、複数の医療従事者で共有されていたり、洗濯される頻度もバラバラのようなので…日本での状況とはかなり違いそうである。ただいずれにせよ、「床は医療関連感染症に関連が低い」ことが定説であったが、近年では床に注目が集まりつつある。今後もこの領域の研究は増加しそうである。

歯科治療中のエアロゾルおよび飛散物の拡散を調査するためのATP の生物発光の使用

Use of ATP bioluminescence to survey the spread of aerosol and splatter during dental treatments

A. Watanabe*, N. Tamaki, K. Yokota, M. Matsuyama, S. Kokeguchi
*Tokushima University Graduate School, Japan

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 303-305


歯科治療(超音波歯石除去および専門家による機械的歯面清掃)中に生じたエアロゾルおよび飛散物は、潜在的な感染症の原因である。歯科治療前後の、作業者のマスク、ゴーグル、胸部および着衣で覆われた右腕、ならびに患者のゴーグル上の汚染パターンを、ATP の生物発光分析を用いて検討した。試験したすべての表面上の汚染が歯科治療後に有意に増加した。最大の汚染は患者のゴーグル上に見られた。したがって、歯科治療中に生じたエアロゾルおよび飛散物は、作業者と患者に感染症を伝播する可能性がある。ATP の生物発光は、表面汚染をモニタリングするのに有用な手段である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
歯科の治療中は口腔内から多くの飛散物があり、粘膜への直接曝露から医療従事者を守るために装着しているマスクやゴーグルは当然のことながら種々の病原体で汚染される。しかしながら、客観的にその汚染具合を把握することはできないため、汚染の実感が医療従事者にはなく、感染対策が疎かとなる可能性が高い。本論文では ATP を使用して歯科治療における汚染状況を客観的に評価し、その危険性を報告している。さらに、歯科治療中に発生するエアロゾルは空気中を漂い、空気感染をおこす危険性があり、治療中に発生する口腔内細菌あるいはウイルスを含むエアロゾル対策も感染予防対策の上では同時に考慮すべきであろう。

第 3 回スコットランド全国有病率調査の結果:住民健康維持活動は医療関連感染を予防するために今必要とされるか?

Results from the third Scottish National Prevalence Survey: is a population health approach now needed to prevent healthcare-associated infections?

S. Cairns*, C. Gibbons, A. Milne, H. King, M. Llano, L. MacDonald, W. Malcolm, C. Robertson, J. Sneddon, J. Weir, J. Reilly
*National Services Scotland, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 312-317


背景
医療関連感染(HCAI)は主要な公衆衛生上の懸念のひとつであり、また罹患および死亡の重要な原因のひとつである。HCAI の減少および抗菌薬耐性の阻止を目的とする方針の策定の参考にするため、地域、国、欧州全体の状況に特化した、強固かつ最新のエビデンス基盤が必要である。

目的
HCAI の有病率および抗菌薬の処方率を評価し、感染の負担軽減を目的とする介入の主な優先地域を特定すること。

方法
欧州の点有病率調査のために作成された欧州疾病予防管理センター(ECDC)のプロトコールを用いて、2016 年 9 月から 11 月の間に国民保健サービスの急性期、非急性期、小児の各病院、および独立病院を対象とする全国点有病率調査を実施した。

結果
HCAI 有病率は急性期成人患者集団 4.6%、小児患者集団 2.7%、非急性期患者集団 3.2%であった。成人患者において最も高頻度に報告された HCAI の種類は、尿路感染症および肺炎であった。抗菌薬の処方率は急性期成人患者集団 35.7%、小児患者集団 29.3%、非急性期患者集団 13.8%であった。調査時に治療を受けている頻度が最も高い感染症は、呼吸器、皮膚および軟部組織、消化器ならびに尿路の感染症であった。

結論
HCAI は、スコットランドにおける公衆衛生上の懸念のひとつであり続けている。尿路感染症および肺炎は、地域で発症するものおよび入院を要するものを含め、患者および医療提供に多大な負担をかけ続けている。感染リスクを上流で減少させることに焦点を合わせた広範な住民健康維持活動は、地域および病院環境の両方においてこれらの感染症を減少させる可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
ECDC によれば毎年 320 万例が、スコットランドでは毎年成人の急性期病院で 55,500 例が、それぞれ HCAI に罹患していると推計されている。HCAI の大半は予防可能であり適切な感染対策により減少させられるが、それよりもさらに上流にある事象、入院しないことが HCAI の根本的な予防策であることを本論文では指摘している。すなわち、日頃から住民の健康維持活動を推進することが、最終的な医療コスト削減になるという考え方であり、予防に優る治療はないということであろう。

ブラジルの成人集中治療室 28 施設における医療関連感染症の多病院点有病率研究★★

Multi-hospital point prevalence study of healthcare-associated infections in 28 adult intensive care units in Brazil

I.A. Braga*, P.A. Campos, P.P. Gontijo-Filho, R.M. Ribas
*Federal University of Uberlândia, Brazil

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 318-324


背景
医療関連感染症は、患者安全における世界的に重大な問題である。

目的
ブラジルの規模の異なる病院の集中治療室 28 施設における、感染症の有病率、病因、リスク因子およびパターンについての最新状況を報告すること。

方法
2016 年に、ブラジル南東部 Minas Gerais 州における 12 の地域から病院の集中治療室を 1 日の点有病率調査に組み入れた。病院は、大学病院とそれ以外の病院に分類した。調査対象とした集中治療室における滞在時間が、調査時点で 48 時間を超えていた全患者を対象とした。

結果
全体で、患者 303 例を調査対象とした。このうち、155 例(51.2%)が感染しており、123 例(79.4%)が少なくとも 1 つの集中治療室獲得感染症を有していた。集中治療室獲得感染症で最も多かったのは、肺炎(53.0%)および血流感染症(27.6%)であった。培養により細菌分離株 119 株が回収され、最も多かったのは、アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)(27.1%)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(27.1%)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(39.0%)であった。感染症のパターン別では、最も多かった病原体は、肺炎における緑膿菌(30.4%)、血流感染症におけるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negative staphylococci)(23.4%)および腸内細菌科細菌(Enterobacteriaceae)(23.4%)、ならびに尿路感染症における腸内細菌科細菌(47.6%)であった。

結論
本研究では、調査したブラジルの病院における集中治療室獲得感染症の全体的な有病率は、大部分の欧州諸国や米国で報告されたものより高いことが明らかになった。感染症のより多くの割合が、非発酵グラム陰性細菌によるものであった。これらの観察結果は、抗菌薬使用率が高かったことと併せて、ブラジルの公衆衛生課題における医療関連感染症の優先度を高めることが緊急に必要であることを明らかに示している。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
中~低所得国であるブラジルにおいて、集中治療室(ICU)における感染症(ICUAI)の有病率は、平均約 50%で、高いところでは 78%と ICU における感染症発生が極めて高い。ICUAI が高率である理由として、感染対策を含めた医療行為に対して訓練された職員が不足している、感染症検査へのアクセスが悪い、適切なインフラがないなどの医療資源の不足に問題があるとしている。起炎菌がわからないために広域抗菌薬が使用される、その結果耐性菌の選択がおこる、さらに手指衛生やデバイス管理などの不十分な感染対策により耐性菌は拡大するという悪循環を示す。本論文でも、カルバペネム系、広域セファロスポリン、バンコマイシンの多用が明らかとなっており、ポリミキシンの使用が同時に多いことは、カルバペネム耐性菌をはじめとする多剤耐性菌の蔓延を物語る。ブラジルにおける多施設共同調査により ICUAI の実態が明らかとなったが、改善すべき課題は多く、医療資源の限界もある。しかしながら、抗菌薬耐性の地球全体への拡散を懸念するならば、先進国はこれらの国々への医療資源の投入についても考慮しなければならないであろう。

日本の大学病院 4 施設における初の多施設点有病率調査★★

The first multi-centre point-prevalence survey in four Japanese university hospitals

H. Morioka*, M. Nagao, S. Yoshihara, H. Ohge, K. Kasahara, N. Shigemoto, T. Kajihara, M. Mori, M. Iguchi, Y. Tomita, S. Ichiyama, T. Yagi
*Nagoya University Hospital, Japan

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 325-331


背景
日本政府は抗菌薬耐性に対する国の行動計画を採用しており、これは薬物耐性病原体および抗菌薬使用を減らすことを目的としている。点有病率調査(PPS)は、病院における疫学に関する情報を得るために有用な調査法であるが、これまで日本では、多施設を対象とした PPS が実施されていない。

目的
日本の複数の大学病院を対象に、病院における疫学、医療関連感染症、および抗菌薬使用について全般的な情報を検討すること。

方法
2016 年 7 月、日本の大学病院 4 施設において標準化されたプロトコールを用いて多施設 PPSを実施した。

結果
患者計 3,199 例を組み入れた。年齢および入院期間は、中央値でそれぞれ 64 歳および 10 日であった。計 246 例(7.7%、95%信頼区間[CI]6.8 ~ 8.7)が 256 件の活動性医療関連感染症を有しており、933 例(29.2%、95%CI 27.6 ~ 30.8)が 1,318 件の抗菌薬処方を受けていた。医療関連感染症で最も多かったのは肺炎および消化器系感染症(N = 42、16.4%)であり、原因微生物で最も多かったのは腸内細菌科細菌(N = 49、30.8%)であった。医療関連感染症に対して最も多く処方されていた抗菌薬は、カルバペネム(N = 52、17.8%)、抗 MRSA 抗菌薬、および抗緑膿菌活性を有するセフェム系薬であった。外科手術時の予防投与として、抗菌薬処方 278 件中 46 件(16.5%)が経口薬であった。各病院における医療関連感染症および抗菌薬使用の割合は、それぞれ 4.8% ~ 9.5%および 19.3% ~ 35.0%の範囲であった。

結論
本多施設 PPS では、日本の大学病院における詳細な医療関連感染症データおよび特徴の明確な抗菌薬使用が記録された。医療関連感染症を低減し、抗菌薬耐性に対する国の行動計画を達成するための実行可能な計画を策定するためには、さらなる調査が必要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
日本初の多施設の PPS である。データ収集は、ECDC(欧州疾病管理センター)のプロトコールを日本向けに修正したものを使用している。医療関連感染(HCAI)を発症した患者では、長期入院、血液疾患、造血幹細胞移植、血管留置カテーテル挿入、尿道留置カテーテル挿入、気管切開などが HCAI 非発症患者と有意に差があった。示された結果は、大学病院という特殊な医療環境からのものであり、日本における HCAI の実態を代表するものではないものの、日本での代表的な大学病院での HCAI の状況を知る上で重要である。一般病院での PPS 実施をすることで、真の日本の HCAI の状況を把握でき、その結果をふまえて薬剤耐性(AMR)対策を計画することができる。平成 30 年 4 月の診療報酬改定で「抗菌薬適正使用支援加算」が新たに追加された。多くの医療施設が抗菌薬適正使用支援プログラムを実施しているが、その内容についてはまだ手探りの状況である。今後、医療費削減と AMR 対策をより有効にするためには、全国規模の PPS の実施が必要であろう。

院内発症ニューモシスチス感染症の検討:アウトブレイク中およびアウトブレイク後のニューモシスチス遺伝子型の縦断的スクリーニングの有用性★★

Investigation of nosocomial pneumocystis infections: usefulness of longitudinal screening of epidemic and post-epidemic pneumocystis genotypes

G. Nevez*, S. Le Gal, N. Noel, A. Wynckel, A. Huguenin, Y. Le Govic, L. Pougnet, M. Virmaux, D. Toubas, f, O. Bajolet
*Université de Bretagne Loire, France

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 332-345


背景
2008 年 9 月 から 2009 年10 月にかけて Reims University Hospital(フランス)の腎臓病棟において、患者 25 例(うち 22 例は腎移植レシピエント)がニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jirovecii)感染症を発症したが、この病棟では過去 14 年間に散発症例が4 例診断されたのみであった。

目的
このアウトブレイクについて、患者の接触者および P. jirovecii 遺伝子型を調査した。

方法
伝播マップを作成した。クラスター内の患者(18 例がニューモシスチス肺炎患者、7 例が保菌患者)、関係のない対照患者 10 例(6 例がニューモシスチス肺炎患者、4 例が保菌患者)、アウトブレイク後 3 年間に同じ病棟で P. jirovecii 感染症と診断された他の 23 例(9 例がニューモシスチス肺炎患者、14 例が保菌患者)について、P. jirovecii 遺伝子型をDHPS、ITS および mtLSU rRNA 配列を用いて決定した。

結果
同じ遺伝子型の菌を保有する患者間で、11 件の接触が観察された。ニューモシスチス肺炎患者 3 例および保菌患者 1 例が、index case(発端症例)の可能性があると思われた。クラスター集団および対照集団で最も多く認められた遺伝子型は同じであった。しかし、その頻度はクラスター集団の方が対象集団より有意に高かった(P < 0.01)。同じ遺伝子型がアウトブレイク後の集団でも同定されたことから、同じ菌株がさらに第 2 のアウトブレイクを生じたもので、感染予防策の破綻と同時期であったことが示唆された。

結論
これらの結果は、ニューモシスチス肺炎患者と保菌患者の両方が感染源となる可能性について、新たなデータを追加するものである。感染患者(保菌患者を含めて)のP. jirovecii 遺伝子型について縦断的にスクリーニングを行っていくことは、病院内におけるこの真菌の循環を明らかにする上で必要であると考える。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
現在、P. jirovecii 感染症は、既に感染していた菌が再活性化して発症するよりも、新規に外部から感染する方がより多いと考えられている。腎移植患者が院内で P. jirovecii 感染症患者に接触し、新規に感染し、集団発生した例は海外・国内ともに認められていたが、本報告では、アウトブレイクがいったん終息した数年後まで含めて解析した点が特に評価できる。複数の菌株が同時に感染している可能性や、同じ菌株による第 2 のアウトブレイクが生じた要因、さらには ST 合剤による化学予防の期間に関しても、本報告の内容から考察できる課題は多い。一読をお勧めする。

血液内科患者のバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の保菌および感染:クローン関連性、病原性および耐性のプロファイル

Vancomycin-resistant enterococci isolates colonizing and infecting haematology patients: clonality, and virulence and resistance profile

A.P. Marchi*, L.V. Perdigão Neto, R.C.R. Martins, C.F. Rizek, C.H. Camargo, L.Z. Moreno, A.M. Moreno, M.V. Batista, M.S. Basqueira, F. Rossi, U. Amigo, T. Guimaraes, A.S. Levin, S.F. Costa
*Universidade de São Paulo, Brazil

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 346-355


背景
バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)は、血液内科患者においても保菌・感染がみられる重要な微生物である。しかしながら、VRE の病原性がその保菌および感染に果たす役割については議論がある。

目的
感染あるいは保菌している VRE 株の系統、病原性および耐性のプロファイルの特徴を明らかにすること、ならびにそれらが血液内科患者の転帰に及ぼす影響をロジスティック回帰モデルを用いて明らかにすること。

方法
患者 76 例から得た分離株 86 株(エンテロコッカス・フェシウム[Enterococcus faecium]80 株およびエンテロコッカス・フェカーリス[Enterococcus faecalis]6 株)を評価した。耐性および病原性遺伝子については PCR 法を行い、さらにパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)と主要なクラスターに対しては全ゲノムシークエンシングを実施した。二変量および多変量解析を実施して、患者の転帰における病原性遺伝子の役割を評価した。

結果
すべての分離株が vanA 遺伝子を保有していた。病原性遺伝子に関しては、分離株の 96.5%が esp 遺伝子を、69.8%が gelE および asa1 遺伝子を保有していた。VRE 感染症患者の分離株は、保菌患者の分離株より病原性が強く、gelE 遺伝子を保有する割合が高かった(P = 0.008)。asa1 遺伝子を保有する VRE による感染症では死亡率が高かったが(P = 0.004)、多変量モデルにおいては優勢なクローンのみが依然として保護的因子であった。E. faecium 分離株は、CC17 に属する 7 つの ST 型(ST78、ST412、ST478、ST792、ST896、ST987、ST963)に分類された。E. faecalis はシークエンシングの結果、ST9(CC9)に属していた。

結論
E. faecium が優勢で、感染症患者の分離株は保菌患者の分離株より病原性が強く、gelE 遺伝子を保有する割合が高かった。asa1 遺伝子を保有する VRE による感染症は、致死的な転帰と関連するようであった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
血液疾患患者での腸球菌感染症、特に VRE 感染症は、治療上も感染対策上も非常に大きな問題である。血液疾患患者から分離された VRE の病原性、分子疫学を、感染症例と保菌例で比較したのが本検討である。検討範囲を広げたり、他の地域で追試する必要性があるが、本テーマにおいては不明な点が多く、その解明の嚆矢となる貴重な情報と思われる。

分娩第 1 期における生理食塩水浣腸は新生児のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)保菌率を低下させるか?:無作為化対照試験

Does saline enema during the first stage of labour reduce the incidence of Clostridium difficile colonization in neonates? A randomized controlled trial

A.M. Nada*, R.A. Mohsen, Y.M. Hassan, A. Sabry, N.S. Soliman
*Cairo University, Egypt

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 356-359


背景
母親に対する直腸浣腸は、分娩中における新生児の細菌曝露を低減し、これにより新生児のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)保菌のリスクを低減する可能性がある。本研究の目的は、分娩第 1 期における生理食塩水浣腸について、新生児の C. difficile 保菌を減らす上での有効性を明らかにすることであった。

方法
本研究は、2016 年 1 月から 2016 年7 月にかけて、エジプトの Cairo University Hospital で実施した。合併症のない経腟分娩を行った無症状の母親およびその新生児で、いずれも下痢を認めない者を組み入れた。検討群には生理食塩水浣腸を実施し、対照群には介入を行わなかった。分娩から 1 週間後に新生児から便検体を採取した。プライマリーアウトカムは、便培養による C. difficile の検出、および ELISA による C. difficile トキシンA、B の直接検出とした。

結果
年齢、妊娠回数、出産回数、BMIおよび妊娠期間について、2 群は同等であった(P > 0.05)。検討群、対照群のそれぞれ 13.54%および 37.63%の便検体から C. difficile が検出された(P < 0.001)。さらに検討群の 22.92%、対照群の 53.76%で、便からトキシンA、Bが直接検出された(P < 0.001)。

結論
本研究から、分娩第 1 期における母体の生理食塩水浣腸は、新生児のC. difficile の腸管保菌のリスクを低減する上で有用な手段であることが示唆された。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
かねてより幼児で C. difficile の保菌率が高いことが判明していたが、児には分娩時あるいは分娩後早期に伝播するのではないかと推測されていた。母親の膣や環境が可能性として挙げられていたが、本検討はその仮説に基づき、分娩第 1 期に浣腸を行うことで母親の腸管細菌叢からの曝露を少なくし、児のC. difficileの保菌が少なくできるか、調査したものである。2 群で差を認めた興味深い結果であったが、トキシン陽性者数に比し、培養陽性者数が低い結果でもあった。この点や、菌株の特徴も含んだ、より詳しい追試に期待したい。

血液培養においてアシネトバクター・ピッティー(Acinetobacter pittii)はアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)より頻度が高い:フランスの 1 病院における経験

Acinetobacter pittii isolated more frequently than Acinetobacter baumannii in blood cultures: the experience of a French hospital

H. Pailhoriès*, C. Tiry, M. Eveillard, M. Kempf
*L’UNAM Université d’Angers, France

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 360-363


本研究では、院内で発生したアシネトバクター・カルコアセティクス(Acinetobacter calcoaceticus)-アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)complex 血流感染症の特徴を評価した。2010 年から 2017 年に発生したA. calcoaceticus-A. baumannii complex 血流感染症73 例中54.8%がアシネトバクター・ピティー(Acinetobacter pittii)、39.7%がA. baumannii、5.5%が Acinetobacter nosocomialis であった。多剤耐性はA. baumanniiで有意に多く認められた。30 日死亡率では、A. baumanniiと非 baumanniiA. calcoaceticus-A. baumannii complex 血流感染症との間で差はなかった。他の諸研究とは対照的に、本研究では、院内発症A. calcoaceticus-A. baumannii complex 血流感染症の多くは非baumanniiA. calcoaceticus-A. baumannii complexと関連していた。本研究は、これらのアシネトバクター属菌が医療関連感染の重要な病原体であることを明らかにし、A. calcoaceticus-A. baumannii complex内の菌種を同定することの重要性を強調している。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
微生物検査室で汎用されている自動同定機械ではA. calcoaceticus-A. baumannii complex内の菌種を正確に同定できない。A. pittiiA. nosocomialisA. baumannii と非常に近縁であるため従来同定には遺伝子検査を要していたが、質量分析の登場で迅速かつ容易にこの区別が可能になってきている。このような背景から、臨床分離株における各菌種の分離頻度が明らかにされ、病原性、分子疫学上の知見が蓄積されつつある。本検討はフランス中西部の 1 医療機関からの報告であるが、医療機関ごとの経時的データと、地域ごとの横断的データの蓄積が、今後のアシネトバクター感染症の理解を大きく前進させるものといえよう。

サイト内検索

Loading

アーカイブ

最新のコンテンツ

Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.