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レーティング:[監訳者による格付け]
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集中治療室の新生児における敗血症予測のためのグラム陰性菌の保菌のルーチンスクリーニング:システマティックレビューおよびメタアナリシス

Routine screening for colonization by Gram-negative bacteria in neonates at intensive care units for the prediction of sepsis: systematic review and meta-analysis

J. Seidel*, S. Haller, T. Eckmanns, T. Harder
*Robert Koch Institute, Germany

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 367-380


背景
新生児集中治療室において、グラム陰性菌による敗血症は罹患率および死亡率の重要な原因である。敗血症の予測と予防を目的とした新生児体表面のルーチンでの微生物学的スクリーニングの有益性については議論の余地がある。

目的
新生児の遅発性敗血症を予測するためのグラム陰性菌の体表面保菌のスクリーニングの予測的有用性を評価すること。

方法
遅発性敗血症を予測するための体表面スクリーニングの予測正確度を算出したデータについて報告されたあらゆるデザインの研究を対象に、システマティックレビューを実施した。バイアスのリスクを評価し、メタアナリシスを実施した。エビデンスの質は、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)法を用いて評価した。

結果
8 件の研究(すべてコホートデザイン)を適格とした。研究は、欧州、アジア、北米の 6 か国で実施され、参加者は計 4,829 例であった。全研究でバイアスのリスクが高かった。遅発性敗血症を予測する体表面スクリーニングの統合感度 は41%(95%信頼区間[CI]17 ~ 70)であったのに対し、統合特異度は 56%(95%CI 34 ~ 76)であった(階層化サマリー受信者動作特性[HSROC]モデル)。サブグループ解析では、スクリーニングを大腸菌(Escherichia coli)または肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)に絞った場合、特異度の統合推定値はより高かったが、感度の統合推定値はそうではなかった。GRADE 法によるエビデンスの質は非常に低かった。

結論
新生児の遅発性敗血症スクリーニングの予測的有用性に関して非常に質の低いエビデンスは少ない。遅発性敗血症の予測と予防において、体表面保菌ルーチンスクリーニングが潜在的に有用であることを明確にするために、無作為化試験など慎重に計画・実施される前向き研究が必要である。

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監訳者コメント
国内でも多くの施設で新生児の体表保菌スクリーニングが行われている。たとえば、便のスクリーニングで特徴的な細菌の検出割合が急増するなどの変化を捉えれば、それなりの意義はあるかもしれないが、漫然と保菌状況を監視する場合には耐性菌のスクリーニング培地を使用するなどの方法が必要であろう(体表面が適しているとは言いがたい)。

カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌の早期検出、管理、制御を図るツールキットの評価:英国の急性期病院トラストの調査

An evaluation of a toolkit for the early detection, management, and control of carbapenemase-producing Enterobacteriaceae: a survey of acute hospital trusts in England

C.M. Coope*, N.Q. Verlander, A. Schneider, S. Hopkins, W. Welfare, A.P. Johnson, B. Patel, I. Oliver
*University of Bristol, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 381-389


背景
カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)の病院アウトブレイク後、急性期病院環境における CPE の定着と感染症の早期検出、管理、制御を推進するために、Public Health Englandは 2013 年 12 月にツールキットを公表した。

目的
CPE ツールキットの認識、普及、実施、および有用性について検討することと、今後のガイダンスに情報を提供するために、その採用に際して障壁となりうる因子および推進しうる因子を特定すること。

方法
National Health Service の急性期トラストにおける横断調査を 2016 年 5 月に実施した。記述的解析および多変量回帰モデル解析を実施し、記述的回答をテーマごとに分析し、行動変容理論を用いて情報を得た。

結果
急性期トラストの大部分(92%)が、書面による CPE 対策を作成していた。CPE リスク患者のスクリーニングと隔離の継続的な遵守を報告したのは少なかった(75%)。CPE 予防の優先順位付けが下がり、また上層部の管理支援が弱まるにつれ、遵守はより不良となった。CPE ツールキットについての認識は高く、CPE 感染患者または保菌患者がいるトラストのすべてが、ツールキットを規定通りに使用(32%)、またはその施設の CPE 対策への情報を収集するために使用(65%)していた。こうした結果にも関わらず、CPE ツールキットガイダンスは、CPE 予防のための有効な手段とならない、または使用は実用的ではないと思っている回答者が多かった(80%)。

結論
CPE の予防と制御には、強固な感染予防対策が必要である。対策の成功は、規定通りの実行に関連する一連の複雑な要因、資源の不足、およびガイダンスの有効性に確信がないことにより妨げられることがある。

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監訳者コメント
いくらキレイなフロー図があってもマンパワーと資機材がなければ絵に描いた餅であるし、手指衛生遵守率の向上などプロセス管理も重要である。

カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌アウトブレイクの制御のための唯一の解決法はコホーティングか?単一施設での試験

Is cohorting the only solution to control carbapenemase-producing Enterobacteriaceae
outbreaks? A single-centre experience

C. Legeay*, V. Thépot-Seegers, H. Pailhoriès, D. Hilliquin, J.-R. Zahar
*University of Angers, France

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 390-395


背景
カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)は衛生上の重大な問題となっている。コホーティングは病院における CPE の拡散を制御する一助となりうるが、コストが高く実施が難しい。

目的
コホーティングが実施されたことのない病院において CPE の院内伝播と関連する病棟の変数を特定すること。

方法
院内伝播に関して連続した 14 日ごとの期間を比較する前向きコホート研究。各期間は以下の 2 つの条件を満たした。(i)CPE 保菌/感染で 48 時間以上入院した(ii)間接接触患者の 80 %が 2 回以上のスクリーニングを受けた。間接接触患者において CPE 感染症を獲得しなかった期間(a)と、1 件以上の CPE 感染症獲得が特定された期間(b)を比較した。CPE 伝播と関連する可能性のある変数、すなわち、保菌圧、医療従事者・患者比、手指衛生遵守、含水アルコール製品消費量、抗菌薬消費量、感染対策チーム(ICT)の病棟への関与について評価した。

結果
連続 2 週間から成る 68 の期間を対象として、このうち18(26.5%)の期間に 1 件以上の CPE 感染症獲得がみられた。多変量分析により、保菌圧(オッズ比[OR]1.12、95%信頼区間[CI]1.0 ~ 1.25、P = 0.042)、抗菌薬消費量(OR 2.41、95%CI 1.02 ~ 5.66、P = 0.044)は、CPE 院内伝播と関連した。医療従事者・患者比はこの両変数の影響を高めており、これは職員の不足が CPE 伝播に及ぼす影響を示唆するものである。

結論
CPE の拡散と関連する病棟の変数を理解することは、適切な解決法を策定する一助となりうる。保菌圧および抗菌薬消費は、医療従事者・患者比とともに院内伝播を惹起しているようである。保菌圧が高い状況では、CPE 保菌者を管理する専門の医療従事者が実践すべきである。ICT と抗菌薬適正使用支援チーム間の連携も、CPE の拡散の予防に極めて重要である。

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監訳者コメント
CPE がどのような経路で伝播するのかを考えれば、その対策は自ずと見えてくる。腸内細菌科細菌のリザーバは腸管であり、監視培養には便か直腸スワッブ検査が適しているし、手指衛生遵守にはそれなりの人手間を十分にあてがうことが必要である。いつまで排菌し続けているのか評価方法や考え方も重要である。

集中治療におけるカルバペネム耐性グラム陰性菌の保菌と感染症に積極的サーベイランスと感染制御対策が及ぼす影響

Impact of active surveillance and infection control measures on carbapenem-resistant Gram-negative
bacterial colonization and infections in intensive care

T. Karampatakis*, K. Tsergouli, E. Iosifidis, C. Antachopoulos, A. Karapanagiotou, A. Karyoti, N. Gritsi-Gerogianni, A. Tsakris, E. Roilides
*Hippokration General Hospital, Greece

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 396-404


背景
カルバペネム耐性グラム陰性菌感染症は、重篤な患者やその患者の入院転帰において世界的な脅威となっている。直腸部の監視培養によるカルバペネム耐性グラム陰性菌の早期検出と、接触予防策・適切な消毒薬の使用・清掃に関する職員の教育・手指衛生などルーチンの感染制御対策は、カルバペネム耐性グラム陰性菌の伝播拡散を低減しうる。

目的
流行地域の 3 次病院の 9 床の混合集中治療室において、感染制御対策の強化がカルバペネム耐性グラム陰性菌感染症に及ぼす影響を評価すること。

方法
カルバペネム耐性グラム陰性菌感染症の患者を対象とした準実験的研究において、6 か月間は後向きに評価し、その後 22 か月間は前向きに積極的サーベイランスプログラムに参加させた。積極的サーベイランスプログラム(週 1 回の直腸スワブ)は、感染制御対策または強化感染制御対策を併用する 2 つのサブ期間を設けて実施した。カルバペネム耐性グラム陰性菌の発生率、有病率、保菌圧、感染症、感染制御対策・強化感染制御対策の遵守について記録した。時系列分析および分割時系列分析を実施した。

結果
積極的サーベイランスプログラム実施期間における、強化感染制御対策のサブ期間には、感染制御対策のサブ期間と比較して、カルバペネム耐性グラム陰性菌の発生率・有病率・保菌圧の急激な低下傾向がみられた。線形傾向は、カルバペネム耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)感染症については 1,000 床・日 あたり 19.6 件から 8.1 件に減少(P = 0.001)、カルバペネム耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染症については 1,000 床・日 あたり 5.1 件から 1.79 件に減少した(P = 0.043)。これに対して、カルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)感染症は 1,000 床・日 あたり 5.2 件から 15.3 件に増加した(P = 0.001)。

結論
手指衛生の強化、接触予防策・教育・監査・フィードバックの方針を併用する積極的サーベイランス、介入などの感染制御対策の強化は、流行地域のカルバペネム耐性肺炎桿菌およびカルバペネム耐性緑膿菌を低減しうる。

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監訳者コメント
カルバペネマーゼ産生菌の多くはバイオフィルムを産生している。手指衛生の強化、接触予防策・教育・監査・フィードバックとともに環境の清拭消毒に塩素系の消毒薬を使用すると効果的である。

肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネマーゼ産生カルバペネム耐性腸内細菌科細菌の既知の保菌患者における持続的保菌を予測する臨床因子

Clinical factors predicting persistent carriage of Klebsiella pneumoniae carbapenemase-producing
carbapenem-resistant Enterobacteriaceae among patients with known carriage

Y.K. Kim*, S.A. Song, J.N. Lee, M. Oh, K.M. Jo, H-J. Kim, J.H. Lee, J. Park, H-J. Jang, H-K. Kim, S. Kiem
*Inje University College of Medicine, Republic of Korea

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 405-412


背景
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)保菌の自然持続期間、および持続的保菌と関連する因子に関する情報は限られている。

目的
肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネマーゼ(KPC)産生 CRE の持続的保菌と関連する臨床変数を評価すること。

方法
2015 年 6 月から 2016 年 12 月に入院し、直腸スワブまたは臨床培養により KPC 産生 CRE 保菌者と特定された患者のデータを後向きにレビューした。初回獲得後 3 か月間の追跡培養データを有する患者を対象とした。持続的保菌と関連する臨床変数を評価するために回帰モデルを用いた。

結果
適格患者 100 例のうち 50 例(50%)で 3 か月以内に自然除菌が認められた。3 か月後も培養陽性であった 50 例(50%)のうち 26 例は、6 か月後も KPC 産生 CRE を保菌していた。多変量解析では、再入院(補正オッズ比[aOR]9.96、95%信頼区間[CI]1.13 ~ 87.98、P = 0.039)、入院期間(aOR 1.03、95% CI 1.01 ~ 1.05、P = 0.003)、臨床培養陽性(aOR 6.26、95% CI 1.28 ~ 30.54、P = 0.023)、カルバペネム使用(aOR 9.15、95% CI 1.85 ~ 45.27、P = 0.007)が、6 か月後の持続的保菌の予測因子であった。

結論
結果から、臨床検体に KPC 産生 CRE が検出されたカルバペネム使用中の患者、特に入院回数が多く、入院期間が長い患者は、初回獲得から 6 か月後も保菌状態が持続する可能性が高いことが示唆される。今回の情報は、CRE 保菌状態の適切な予測により先制攻撃的隔離の対策を調整するうえで、またリスク因子の層別化により積極的サーベイランスを確実にするうえで有用である。

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監訳者コメント
直腸スワブまたは臨床培養により KPC 産生 CRE 保菌者と特定された患者のデータから持続的に保菌する要因について調べた論文である。同様の研究はこれまでにも報告されているが、臨床検体から検出された患者で長期間保菌状態が続いたことは、対策を考える上で、重要な因子であると思われた。

イタリアの 1 大学病院におけるカルバペネム耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の院内伝播:分子疫学的研究

Nosocomial transmission of carbapenem-resistant Klebsiella pneumoniae in an Italian university hospital: a molecular epidemiological study

G. Sotgiu*, B.M. Are, L. Pesapane, A. Palmieri, N. Muresu, A. Cossu, M. Dettori, A. Azara, I.I. Mura, C. Cocuzza, S. Aliberti, A. Piana
*University of Sassari, Italy

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 413-418


目的
疫学的傾向を評価するために、イタリアの 1 大学病院で侵襲性感染症患者から分離され肺炎桿菌カルバペネマーゼ(KPC)産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)株の表現型および遺伝子型プロファイルを記述すること。

方法
侵襲性菌血症患者を対象に KPC 産生肺炎桿菌株を検出するために、イタリアの University Hospital of Sassari において前向き観察研究を実施した。分離株は表現型により同定した。カルバペネマーゼ産生について、表現型タイピングおよび遺伝子型タイピングを用いて評価した。blaKPC遺伝子の配列決定、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)および複数部位塩基配列タイピング(MLST)を実施した。

結果
2015 年から 2017 年の期間中に、肺炎桿菌による侵襲性感染症 46 症例が記録された。患者の 3 分の 2(67.4%)は男性で、平均年齢は 69.4 歳であった。ほとんどの患者は、少なくとも 1 つの合併症を有し(56.5%)、および/または以前に入院したことがあり(70.5%)、81.8%が現在または最近に医療機器を使用しており、85.4%が最近、抗菌薬曝露を受けていた。死亡率は 52.3%であった。多剤耐性パターン(カルバペネム、フルオロキノロン、第 3 世代/第 4 世代セファロスポリンを含む)が、すべての肺炎桿菌分離株にで示された。KPC-3 および KPC-2 はすべての株で産生が認められた。最も多くみられた配列型は、512(91.3%)および 101(8.7%)であり、3 つのクラスター(A、A1 および B)に分類された。

結論
イタリアの 1 大学病院において、侵襲性感染症患者における KPC 産生肺炎桿菌の検出率は、2015 年以前に算出された検出率よりも高かった。本研究により、イタリアの他の研究による報告と同様、カルバペネマーゼ変異型のうち KPC-3 の重要性が確認された。高い死亡率および合併症率は、KPC 産生肺炎桿菌感染症と関連しているようである。

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監訳者コメント

尿中の腸内細菌科細菌の耐性パターンは、症候性と無症候性の患者で同様である

Resistance patterns of Enterobacteriaceae in urines are similar in symptomatic and asymptomatic patients

A. Romero Palacios*, F. Al Dhufairi, C. Ellis, D. Smyth, L.M.D. Mieusement, A. McGeer, D. Mertz
*McMaster University, Canada. Canada

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 419-421


尿培養によるアンチバイオグラムは、尿路感染症(UTI)の経験的治療の指針として使用されている。しかし、尿培養のほぼ 50%は無症候性細菌尿を有する患者由来である。無症候性細菌尿を有する患者の腸内細菌科細菌が、UTI 患者と同様の耐性パターンを示すかどうかは不明である。そこで、本研究では、無症候性細菌尿を有する患者と症候性 UTI 患者の抗菌薬耐性パターンを比較することを目的とした。耐性パターンに大きな差がみられなかったため、無症候性細菌尿を有する患者を含むアンチバイオグラムによって経験的治療の選択が決定されうる。

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監訳者コメント
本論文より、尿培養によるアンチバイオグラムを作るときに、保菌と有症状を区別する必要はないことが再確認できたと思われる。

十二指腸内視鏡検査:カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌によるアウトブレイク時の消化器科治療経路における交差伝播の促進因子

Duodenoscopy: an amplifier of cross-transmission during a carbapenemase-producing Enterobacteriaceae outbreak in a gastroenterology pathway

C. Bourigault*, F. Le Gallou, N. Bodet, N. Musquer, M.-E. Juvin, S. Corvec, N. Ferronnière, S. Wiesel, J. Gournay, G. Birgand, M. Le Rhun, D. Lepelletier
*Nantes University Hospital, France

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 422-426


2015 年 10 月に同じ十二指腸内視鏡による検査を受けた患者 5 例において、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌として OXA-48 産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)が同定された。この内視鏡は、これらの症例間における唯一の疫学的なリンクであった。不十分な消毒プロセス後の十二指腸鏡の一過性コンタミネーションが伝播の原因であった可能性がある。

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監訳者コメント
海外における十二指腸内視鏡を介したカルバペネム耐性腸内細菌科細菌のアウトブレイクの報告に対応して厚生労働省医政局地域医療計画課が「十二指腸内視鏡による多剤耐性菌の伝播について」と題して情報提供を行ったのは 2015 年 3 月のことである。十二指腸内視鏡には鉗子台や鉗子起上ワイヤーチャンネルといった特殊な構造があり、その部分が十分に洗浄・消毒できないことが原因と考えられている。本論文はこれに関連した一連の論文の 1 つと言うことができよう(しかし結局この十二指腸内視鏡からは CPE は検出されていないのだが)。

市中獲得クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile):疫学、リボタイプ、リスク因子、病院および集中治療室における転帰、現行および新規の治療法

Community-acquired Clostridium difficile: epidemiology, ribotype, risk factors, hospital and intensive care unit outcomes, and current and emerging therapies

E. Ofori*, D. Ramai, M. Dhawan, F. Mustafa, J. Gasperino, M. Reddy
*Clinical Affiliate of the Mount Sinai Hospital, USA

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 436-442


背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)の疫学的状況には過去 30 年間で変化がみられる。

目的
市中における CDI に関する研究をレビューすること。

方法
PubMed、MEDLINE、Embase、Google Scholar、Scopus、ClinicalTrials.gov および Cochrane のデータベースを含む電子データベースにおいて、2000 年から 2017 年にヒトを対象として実施され、疫学、リスク因子、リボタイプ、病院および集中治療室における転帰、ならびに市中獲得型 CDI の管理について評価した研究を検索した。さらに、他の関連研究を特定するために参考文献を手作業で検索した。

結果
合計で 39 報の論文が組み入れ基準を満たした。過去 10 年間で市中獲得型 CDI の発生率はほぼ倍増していた。CDI の全症例のうち約半数は、市中獲得と考えられた。若年、女性、乳児の存在、プロトンポンプ阻害薬または特定クラスの抗菌薬の頻回使用、または農場や家畜の近くでの居住は、市中獲得型 CDI のリスクを高めた。さらに、すべての市中獲得型症例の約 40%が入院を必要とし、その場合に重症度は高病原性のリボタイプ 027 および 078 に関連し、転帰は不良であった。治療パラダイムに関する新しいデータにより、臨床ガイドラインの改訂と第3相臨床試験において 2 つのワクチン候補がもたらされた。しかし、現在の治療戦略に対するリボタイプ特異的な提案はなされていない。

結論
市中獲得型 CDI は、増大しつつある公衆衛生上の脅威および医療システムへの負担となっている。この傾向を止めるためには、集学的多職種が関与するアプローチが必要となるであろう。

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監訳者コメント
過去 10 年間で市中獲得型の CDI が倍増しているというショッキングな報告である。ただし重症例の原因となった CDI のリボタイプは 027 や 078 といった日本では分離頻度の少ないリボタイプである。余談であるが監訳者も最近 30 歳代の男性の市中獲得型CDIを経験した。日本でも市中獲得型 CDI については注意深く観察が必要であろう。

好酸性乳酸桿菌(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(L. casei)、およびラクトバチルス・ラムノサス(L. rhamnosus)株を配合した特定のプロバイオティクスによるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症の一次予防:エビデンスを評価する

Primary prevention of Clostridium difficile infections with a specific probiotic combining Lactobacillus acidophilus, L. casei, and L. rhamnosus strains: assessing the evidence

L.V. McFarland*, N. Ship, J. Auclair, M. Millette
*University of Washington, USA

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 443-452


クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)は、世界的に主要な医療関連感染症およびアウトブレイクの原因となっている。様々な革新的治療法が開発されてきたが、多面的な感染制御プログラムを用いた予防戦略は CDI 発生率の低減にこれまで成功していない。C. difficile 感染症の主なリスク因子は、抗菌薬の使用によるものであり、一般的には保護作用を有する消化管内の微生物叢の破壊である。特定のプロバイオティクスの補充は、抗菌薬関連下痢症や CDI を含めた様々な有害な転帰を予防する上でこれまでのところ有効である。しかし、どのプロバイオティクス株が CDI を予防し得るかについての合意は得られておらず、様々なプロバイオティクス製品を対象とした研究を統合した場合、メタアナリシスでは高い不均一性が報告されている。我々は、C. difficile 感染症予防における臨床的有効性を評価するために、十分なエビデンスを有するプロバイオティクスに関する文献を検索し、3 つの乳酸菌株(好酸性乳酸桿菌[Lactobacillus acidophilus]CL1285、ラクトバチルス・カゼイ[Lactobacillus casei]LBC80R、ラクトバチルス・ラムノサス[Lactobacillus rhamnosus]CLR2)を配合した特定のプロバイオティック製品(Bio-K+)について、医療環境での CDI 予防における有効性に焦点を当てた。このプロバイオティクス製品に関する文献について、電子データベース(PubMed、Google Scholar)、感染性疾患および感染制御に関する学術会議の抄録、およびプロバイオティック製造企業からの広報を利用して検索を実施した。C. difficile 感染症を抑制する Bio-K+ の作用機序を支持するエビデンスが発見され、優れた安全性および忍容性プロファイルを有することが判明した。Bio-K+ を投与する無作為化対照試験および施設レベルでの介入によるエビデンスは、C. difficile 感染症の発生率が低下することを示している。このプロバイオティクス製品は、抗菌薬投与を受けた患者に投与するならば、医療関連 CDI の一次予防の一翼を担う可能性がある。

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監訳者コメント
ずいぶん「Bio-K+」推しの論文だが、それもそのはず Bio-K+ の会社の人が著者に入っている。もちろん論文執筆にあたっての資金提供も行われている。それらも差し引いた上で、CDI の予防(あるいは治療)におけるプロバイオティクス製品については引き続き興味のあるところである。

クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の分類法により病院獲得感染症の発生率が過大に推定される

Clostridium difficile classification overestimates hospital-acquired infections

A. McLure*, A.C.A. Clements, M. Kirk, K. Glass
*Australian National University, Australia

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 453-460


背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症は、一部の病院獲得型あるいはその他の市中獲得型の感染症とともに、入院患者での発生率が高い。国際ガイドラインでは、入院後 2 日を超えて症状発現が生じた場合に、その症例を病院獲得型に分類する。この分類法は、サーベイランスおよび感染制御のための情報を提供するが、これまでに実証的研究またはモデル化研究によってその妥当性が確認されていない。

目的
C. difficile 感染症獲得に関する現在の分類法を、シミュレーションモデルを参照標準として用いて評価すること。

方法
C. difficile の伝播を、様々な病院環境のシナリオでシミュレーションした。0.25 時間から 40 日間の範囲におけるカットオフを用いて、分類法の感度、特異度および精度を算出した。病院獲得型であった症例の割合を正確に推定した最適なカットオフ、ならびに同等の感度と特異度を有するバランスの良いカットオフを特定した。

結果
推奨されている 2 日というカットオフは、すべてのシナリオにおいて、またベースシナリオでは、100%を超えるところ(>100%)において、病院獲得型症例の発生率を過大に推定した。現在の入院中に獲得された症例の同定において、2 日というカットオフは良好な感受性(96%)を示したが、特異度(48%)と精度(52%)が低かった。ベースシナリオでは 5 日というカットオフがバランスが良く、6 日というカットオフが最適であった。検討したほぼすべてのシナリオにおいて、最適なカットオフおよびバランスの良いカットオフは 2 日を超える場合であった(範囲:それぞれ4 ~ 9日および2 ~ 8日)。

結論
C. difficile 感染症を分類するための現行のガイドラインは、すべてのモデルシナリオにおいて、病院で獲得された症例の割合を過大に推定する。誤分類バイアスを低減するために、入院後 5 日以内に症状が発現している場合、その感染症は入院前に獲得されたものと分類すべきである。

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監訳者コメント
これまで入院 48 時間を越えた場合の発症を病院内獲得による C.difficile 感染症(以下 CDI)として疫学統計上の基準が設定されていたが、CDI の潜伏期が不明であるものの、これまでの報告では入院後から発症までの中央値は 2 週間前後とされており、現在の基準では市中感染をし入院中に発症した CDI 例も病院内獲得として過剰に算出されている可能性が高い。本論文では数学的モデルを使って、適切な感度、特異度、精度を設定することを試みたところ、入院後 6 日をカットオフとすることで、病院内獲得と判定できるとしている。また、過去の報告では病院内獲得と判断された CDI の 20%前後が、真の施設内伝播であるとされており、今後 CDI の疫学統計上の定義の見直しが必要であろう。

カナダのオンタリオ州南部の高齢患者および医療施設入居者におけるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)保菌の疫学上および微生物学上の特性を調べる★★

Examining the epidemiology and microbiology of Clostridium difficile carriage in elderly patients and residents of a healthcare facility in southern Ontario, Canada

G. Mallia*, J. Van Toen, J. Rousseau, L. Jacob, P. Boerlin, A. Greer, D. Metcalf, J.S. Weese
*University of Guelph, Toronto, Canada

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 461-468


背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)は急性期病院においては広範に研究されてきたが、長期ケア施設(LTCF)については、推定されるリスク因子(例、年齢、抗菌薬使用、医療システムの利用など)の頻度が高いにもかかわらず、情報が限られている。

目的
急性期病院 1 施設およびその提携 LTCF の高齢患者および入居者における C. difficile 保菌を評価すること。

方法
LTCF 入居者および病院の高齢患者(65 歳超)884 例から便スワブ検体を採取した。選択的培養、PCR リボタイピングおよび毒素遺伝子分析を実施した。

結果
急性期病院では検体 410 個中 92 個(22.4%)、LTCF では検体 474 個中89個(18.8%)で C. difficile が回収された。LTCF ではリボタイプ 027(35%)およびリボタイプ 020(10.4%)が多かったのに対し、急性期病院ではリボタイプ AI-82/1(20.7%)およびリボタイプ O(14.1%)が多かった。LTCF では、C. difficile 保菌はプロトンポンプ阻害薬の使用歴、交互作用項として男性入居者と治療のための入院等による不在歴、およびフルオロキノロンの使用歴に関連した C. difficile 感染症(CDI)の既往が関連していた。急性期病院では、C. difficile 保菌は、在院期間、経管栄養、抗菌薬使用、免疫抑制療法およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)保菌と関連し、また交互作用項としてセファロスポリン使用とフルオロキノロン使用、CDI の既往とセファロスポリン使用、CDI の既往とフルオロキノロン使用の組み合わせと関連した。

結論
急性期病院患者および LTCF 入居者において、CDI の見かけ上の発生率は低いにもかかわらず、C. difficile 保菌が高頻度に認められた。プロトンポンプ阻害薬との関連が示されたことは、この広く使用されている薬物クラスが C. difficile 保菌において重要である可能性を示すさらなるエビデンスとなる。多様な遺伝的多様性が認められ、これにより C. difficile 獲得において未特定の複数の経路が存在する可能性が強調される。

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監訳者コメント
CDI は病院内で獲得し抗菌薬投与をきっかけに発症することが一般的であったが、リボタイプ 027 などの強毒株の北米での流行により、その疫学的状況は病院内外で共に変化している。これまで多くの研究が急性期病院において実施され、多くのことが明らかとなってきた。しかしながら、CD の無症候性保菌者が CDI の重要な要素であるにもかかわらず、長期療型施設(LTCF)における疫学的情報に関して十分なデータがない。本論文では、長期療養型施設での CD 保菌が 19%に達することが判明した。CDI 発症がまれであることから、CD 保菌が CDI 発症に保護的に作用している可能性を示唆するが、その病態生理については不明であり、保菌患者が院内あるいは施設内伝播における供給源となるため注意が必要である。また、急性期病院と LTCF の間での患者の移動が、高い CD 保菌率と関連しているかもしれない。また、CD 保菌にプロトンポンプ阻害薬(PPI)の服用も大きく影響している可能性が示唆され、高齢者への安易な PPI の処方に警鐘をならさなければならないだろう。

小児および思春期児童でのクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)関連下痢症の予防における経口プロバイオティクスの費用効果分析

Cost-effectiveness analysis of oral probiotics for the prevention of Clostridium difficile-associated diarrhoea in children and adolescents

N. Li*, B. Zheng, H-F. Cai, Y-H. Chen, M-Q. Qiu, M-B. Liu
*Medical University Union Hospital, China

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 469-474


背景
入院している小児および思春期児童におけるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)関連下痢症(CDAD)の発生率は年々増加している。小児の CDAD は、医療システムに大きな経済的負担をかけている。プロバイオティクスは生菌で、宿主の微生物バランスを改善し、腸内細菌叢の乱れを是正し、病原性細菌の保菌リスクを低減すると考えられる。

目的
費用効果分析を行い、抗菌薬投与を受けている小児および思春期児童における CDAD 予防を目的としたプロバイオティクスの経済性を評価した。

方法
臨床的有効性、効用および費用のデータを組み合わせた決定木モデルを使用した。感度分析を行ってモデルの結果の頑健性を判定した。

結果
「経口プロバイオティック」戦略および「プロバイオティクスなし」戦略は、患者にそれぞれ 0.05876 質調整生存年(QALY)および 0.056 QALY がもたらされ、それぞれにかかった費用は16,668.70ドルおよび20,355.28ドルであった。経口プロバイオティクス戦略はより高い QALY とより低いコストを示し、費用を節減する戦略である。この結果は、感度分析により頑健であることが示された。

結論
医療システムの観点からは、入院して抗菌薬療法を受けている小児および思春期児童における CDAD 予防戦略としての経口プロバイオティクスは、CDAD のリスクを低減するとともに、費用を節減する戦略である。

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監訳者コメント
これまでプロバイオティクスの CDAD 発症の予防効果については成人でのものがあるが、小児でのデータは極めて少ない。プロバイオティクスの投与により小児における CDAD 発症を予防することができるかという命題に対して、過去の論文のメタアナリシスにより有効性を検証しているが、使用されたプロバイオティクスは 4 つの研究において異なっており、個々での効果を検証することはできていない。しかしながら総じてプロバイオティクスは小児における CDI のコストを下げることができており、今後個々のプロバイオティクスでの予防効果の研究が待たれる。

コスタリカの国立高齢者病院におけるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の分子疫学と抗菌薬耐性

Molecular epidemiology and antimicrobial resistance of Clostridium difficile in a national geriatric hospital in Costa Rica

A. Jiménez*, R. Araya, D. Paniagua, Z. Camacho-Mora, T. Du, G.R. Golding, G. Leandro-Astorga, C. Rodríguez, C. Quesada-Gómez
*Hospital Nacional de Geriatría y Gerontología, Costa Rica

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 475-480


背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)の疫学は世界中で急速に変化している。しかし、高齢者専門病院で流行している C. difficile の遺伝子型および抗菌薬への耐性に関する知識は不十分または存在しない。

方法
コスタリカの国立高齢者病院 1 施設において、CDI の分子疫学に関する前向き研究を 11 か月間実施した。

結果
対象患者は様々な併存疾患を有していたが、いずれも CDI と関連していなかった。これらの症例で得られた 32 株を解析すると、3 つの新しいリボタイプを含む多クローン性が判明し、かつ抗菌薬に対して高レベルの耐性を有していることが明らかになった。このような菌株の多様性にもかかわらず、最も高頻度のタイプは NAP6/RT002 および NAP2/RT001 であった。NAP9/RT017 は市中獲得に関連していた。なお患者の下痢発症前に 19 種類の抗菌薬が使用されていた。特定の遺伝子型が感染症発症または重症度に関連しているということはなかった。

結論
この高齢者病院で観察された多種の菌株と抗菌薬への耐性に基づくと、これらの結果は、世界の CDI の疫学の全体的な理解の向上に寄与し、高齢者集団を対象としたサーベイランスプログラムの実施に役立つ。

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監訳者コメント
我が国でC. difficileが初めて分離されたのは高齢者専門病院においてである(1979 年)。以来、我が国でも高齢者におけるC. difficileの疫学・分子疫学について知見が集積されてきた。本邦の分子疫学は海外とは異なることが知られているが、本邦の中で、高齢者、非高齢者でどの程度異なるかはまだ情報が少ない。時間的な変化もあることが予想される。高齢者を含む広範囲な分子疫学サーベイランスが継続して行われることが非常に重要である。

糞便微生物移植後のカルバペネム耐性腸内細菌科細菌とバンコマイシン耐性腸球菌の保菌消失の比較:前向き比較試験

Clearance of carbapenem-resistant Enterobacteriaceae vs vancomycin-resistant enterococci carriage after faecal microbiota transplant: a prospective comparative study

A. Dinh*, H. Fessi, C. Duran, R. Batista, H. Michelon, F. Bouchand, R. Lepeule, D. Vittecoq, L. Escaut, I. Sobhani, C. Lawrence, F. Chast, P. Ronco, B. Davido
*Versailles Saint-Quentin University, France

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 481-486


背景
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の保菌は世界中で増加している。糞便微生物移植(FMT)は、除菌のための魅力的な選択肢のように思われる。本研究では、CRE と VRE の保菌がFMT によって消失するかどうか評価することを目的とした。

方法
2015 年 1 月から 2017 年 4 月の間に、CRE または VRE を消化管に保菌し FMT を受けた患者を対象として多施設試験を実施した。本研究では成人患者を対象とし、FMT の前の週の 1 回を含む、1 週間間隔・ 3 回連続で直腸スワブを採取し、CRE ないし VRE の保菌を確認している。なおFMT 時に免疫抑制がある患者または抗菌薬の処方を受けている患者は除外した。除菌の成功は、直腸スワブを FMT 後 7 日目、14 日目、21 日目、28 日目、および月 1 回 3 か月間実施したうち、少なくとも連続 2 回以上陰性(ポリメラーゼ連鎖反応[PCR]および培養)であることによって判定した。

結果
17 例の患者が含まれ、年齢中央値は 73 歳(四分位範囲[IQR]64.3 ~ 79.0)であった。FMT 前の CRE または VRE の保菌期間の中央値は 62.5 日であった(IQR 57.0 ~ 77.5)。FMT の 1 週間後、8 例中 3 例の患者で CRE の保菌が消失し、9 例中 3 例の患者で VRE の保菌が消失した。3 か月後、8 例中 4 例の患者で CRE の保菌が消失し、8 例中 7 例の患者で VRE の保菌が消失した。定性 PCR の結果は培養と一致した。6 例の患者(各群 3 例)が追跡調査中に抗菌薬の投与を受けた。有害事象は報告されなかった。

結論
本研究では、おそらく症例数が少ないため、CRE および VRE の消失率に有意差はなかったが、傾向は認められた。これらのデータは、より大きなコホートとランダム化試験によって確認するべきである。

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監訳者コメント
多剤耐性菌の除菌に FMT が有効な手段であるかどうかについて、現在まさに報告が増えつつある。小規模の研究で、評価はまだ固まっていないが、本研究で観察された CRE よりも VRE の方が除菌率が高かったという結果は興味深い。この結果は、腸内細菌叢とその代謝、腸管免疫の複雑な関わりの中で考察されるべきことかもしれず、新しい知見につながる可能性があるが、まずは今後の追試の結果が待たれるところである。

韓国の長期ケア施設からの転院患者に対するカルバペネム耐性腸内細菌科細菌、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)および毒素産生性クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の積極的サーベイランス

Active surveillance for carbapenem-resistant Enterobacteriaceae, vancomycin-resistant enterococci and toxigenic Clostridium difficile among patients transferred from long-term care facilities in Korea

J-H. Hwang*, J.S. Park, E. Lee, J.Y. Bae, K-H. Song, P.G. Choe, W.B. Park, J.H. Bang, E.S. Kim, S.W. Park, N.J. Kim, M. Oh, H.B. Kim
*Seoul National University Bundang Hospital, Republic of Korea

Journal of Hospital Infection (2018) 99, 487-491


長期ケア施設から病院に転院した患者を対象に 10 か月間のアクティブサーベイランスを実施し、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)および毒素産生性クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の保菌について評価した。直腸検体 282 個から、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CPEは認められなかった)を有する患者 4 例(1.4%)、VRE を有する患者 59 例(21%)、毒素産生性 C. difficile を有する患者 20 例(7.1%)が判明した。本研究期間中に VRE 感染症のアウトブレイクは発生しなかった。CPE 保菌の検出率が低かったことから、長期ケア施設からのすべての入院について CPE のスクリーニングを行うことは費用効果的でないこと、また VRE を対象としたスクリーニングおよび接触予防策の実施については再考すべきであることが示唆された。

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監訳者コメント
長期療養型施設における多剤耐性菌の保菌については、本邦でも報告が増えつつある。MRSA や ESBL 産生グラム陰性桿菌が対象となりやすく、ESBL 産生菌の保菌割合が高いことも指摘されているが、本検討のように CRE、C. difficile まで調査対象を拡げるかについては現在不明確である。各国でこのような取り組みが進むであろうが、知見の蓄積と解析、ならびに対策立案とその効果予測は今後もますます重要になるであろう。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.