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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

経済学を味方にする

Make economics your friend

N. Graves*
*Queensland University of Technology, Australia

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 123-129


本稿では、経済学の分野を明確にし、なぜ経済学が有用であるかを述べる。感染症予防に従事する人々に関連する経済的転帰を評価する方法についてレビューするとともに、競合プログラムにおける最善策の選択に役立つ情報を意思決定者がどのように使用すべきか検討する。優れた経済学によって、資源の乏しい条件下で機能する感染予防サービスにより健康上の利益が高められると主張して、締めくくる。

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監訳者コメント
手指衛生遵守率の向上による感染予防などがいかに医療経済的にみてコストパフォーマンスが良いのかをデータで示すことによって、感染予防の徹底は医療経済的にコストパフォーマンスが良いので徹底すべきだということを周知することで、味方につける作戦を説いている。

スコットランドにおける 2010 年から 2016 年のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染後の死亡率の傾向:後向きコホート・症例対照研究

Trends in mortality following Clostridium difficile infection in Scotland, 2010-2016: a retrospective cohort and case-control study

A. Banks*, E.K. Moore, J. Bishop, J.E. Coia, D. Brown, H. Mather, C. Wiuff
*NHS National Services Scotland, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 133-141


背景
スコットランドにおけるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)の全国的サーベイランスにより、発生率の傾向を監視することができるが、死亡率の傾向は監視できない。

目的
2010 年から 2016 年のスコットランドにおける 15 歳以上の CDI 全症例について死亡率と関連する因子を評価すること。

方法
2010 年 から 2016 年のスコットランドにおける 15 歳以上の CDI 全症例を、入院および死亡のデータセットにリンクさせた。死亡率(30 日全死因)と関連する因子を評価するためにロジスティック回帰を用いた。入院症例サブセットおよびマッチさせた入院対照群の症例対照研究により、CDI が死亡率と入院期間に及ぼす影響を評価した。

結果
主に医療関連 CDI において、30 日全死因死亡率は 7 年間で低減した(20.5%から 15.6%、P < 0.001)。加齢、Charlson スコア高値、医療関連 CDI、ならびに肝疾患・心疾患・悪性腫瘍の併存は、より高い死亡率と関連した。ポリメラーゼ連鎖反応リボタイプとより高い死亡率との関連は認められず、リボタイプ 015 とリボタイプ 078 はより低い死亡率と関連していた。対照群と比較して、CDI 入院症例の 30 日死亡率の補正オッズ比(OR)は 2.67 であった(95%信頼区間[CI]2.42 ~ 2.94、P < 0.001)。症例群と対照群で死亡率は経時的に低減したのに対し、OR の傾向は比較的変化がなかった。CDI 発症により、感染日からの平均入院期間が 22.3%(95%CI 18.0 ~ 26.8%、P < 0.001)延長した。

結論
CDI は、30 日死亡率のほぼ 3 倍の増加と関連しており、感染日からの平均入院期間が 22.3%延長することで、医療資源への負担を増加させている。CDI 死亡率の低下傾向は、スコットランドの一般集団および病院の患者集団における全体的な死亡率改善による可能性がある。したがって、発生率の大幅な低下にもかかわらず、CDI は依然として深刻な医療問題である。

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監訳者コメント
医療関連 CDI と死亡率との関係を統計処理により、解明しようとする試みである。国内でCDI による死亡例はほぼないと考えられるが、リスク因子としての加齢、Charlson スコア高値、医療関連 CDI、ならびに肝疾患・心疾患・悪性腫瘍の併存は同様な分析を行う際に参考になる。

英国の大規模な 3 次病院におけるフィダキソマイシンの実臨床使用:再発性疾患の治療にどの程度有効か?

Real-world use of fidaxomicin in a large UK tertiary hospital: how effective is it for treating recurrent disease?

D.A. Enoch*, R. Santos, C.J. Phillips, C. Micallef, M.E. Murphy, S.H. Aliyu, D. Massey, N.M. Brown
*Addenbrooke’s Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 142-146


研究病院におけるフィダキソマイシン使用の全経過をレビューした。初回再発(6 例)、2 回目の再発(8 例)、3 回目の再発(1 例)にフィダキソマイシンを使用した。1 例が第 1 次選択薬としてフィダキソマイシンを投与された。8 例が初期に治療に反応し、このうち 3 例は 90 日目に無症状、3 例は 30 日目に無症状のまま経過し、2 例は治療中止後 5 日目と 9 日目に再発した。4 例が治療に反応せず、このうち 2 例は糞便微生物移植、1 例は結腸切除術を必要とした。2 例が悪化、2 例が死亡した。フィダキソマイシンに対する忍容性は良好であった。これらの結果から、感染症のこの段階でのフィダキソマイシンの有用性は明らかではないことが示唆される。

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監訳者コメント
限られた事例数での検証なので、この論文からエビデンスを導き出すのは困難である。

成人集中治療室における医療従事者の手指衛生遵守の改善策:小規模なシステマティックレビュー

Strategies to improve hand hygiene compliance among healthcare workers in adult intensive care units: a mini systematic review

A.A. Alshehari*, S. Park, H. Rashid
*Ministry of Health, Saudi Arabia

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 152-158


背景
集中治療室(ICU)における医療従事者の手指衛生遵守率の低さは懸念すべきものである。

目的
成人 ICU における医療従事者の手指衛生遵守率の向上を図る有効な介入を特定すること。

方法
関連文献について、MeSH term と Text word の組み合わせ(例えば、hand hygiene、hand washing、compliance、adher*、improve*、develop*、intensive care unit)を利用して、OVID Medline および CINAHL の 2 つの主要な電子データベースを検索した。これは Google Scholar および記載の参考文献のハンドサーチにより補完した。次いで、特定した文献のデータを抽出し、品質を評価し、統合効果量に組み入れた。

結果
特定した 89 のタイトルと抄録のうち、最終的に 14 の文献を対象とした。全体的な研究の質は高かった。しかしながら、試験のデザイン・設定・サンプルサイズ・介入のばらつきによってメタアナリシスが不可能であった。したがって、ナラティブ統合を実施した。介入には、教育、観察、用品の提供、利用の改善、指導による支援が含まれ、単独または併用で試験され、1 件を除くすべての研究で良好な成績が得られた。管理支援、「用品」、教育とトレーニング、リマインダー、監査、成績のフィードバックの併用により、遵守率はベースラインの 51.5%から 80.1%に上昇し記録的な値となった。ただし、目的とするほぼ 100%まで遵守率を改善しうる介入の組み合わせはなかった。

結論
入手可能なデータからは、多様な介入が遵守率を「プラトー」レベルまで上げるのに有効であるものの、目的とする基準にまでは達しないということが示唆される。方法論的に適切な複合的介入の試験によって、ICU 職員の手指衛生遵守の改善を目指す介入のエビデンスが強化されるであろう。

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監訳者コメント
医療従事者の手指衛生遵守率の向上を図る有効な介入を特定するには研究デザインの統一か大規模研究を実施するしかない。

洗面台:友人か悪魔か?

The handwash station: friend or fiend?

M.J. Weinbren*
*Kings Mill Hospital NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 159-164


手洗いは、交差感染に対する鍵となる防御策で、洗面台(水と排水システム間のインターフェース)で行われる。洗面台について考慮の足りない配置/デザインおよび使用が、幅広くよくみられるが、付随するリスクがないわけではない。文献中で警告されてきたにもかかわらず、2012 年にベルファストで新生児の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)アウトブレイクが発生して水の管理における変更を余儀なくされるまで、関連する危険の認知について 45 年にもわたり注意が向けられなかった。リスクを最小限に抑えるには、洗面台の蛇口から出る水に対して、緑膿菌やその他の病原体の検査を行うだけにとどまらない全体的なアプローチが求められる。文献によって報告された、新生児病棟以外で洗面台と関連付けられたアウトブレイクは、多剤耐性微生物によるものが多く、カルバペネマーゼ産生微生物によるものが増えつつある。エビデンスによれば、水系伝播の大部分は検出されていないことが示唆されている。洗面台の現行のデザイン、使用および配置を改善するために実行し得ることは非常に多く、このことについて本稿では批判的に評価を行っている。

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監訳者コメント
洗面台について、感染源、感染経路となり得るという視点からのレビューである。環境と感染の関連性については、今後さらにエビデンスが蓄積されているものと思われるが、現段階では判断は難しい。

中所得国の病院で医療従事者における手指衛生を改善するための介入の費用効果:モデルに基づく分析

Cost-effectiveness of interventions to improve hand hygiene in healthcare workers in middle-income hospital settings: a model-based analysis

N. Luangasanatip*, M. Hongsuwan, Y. Lubell, D. Limmathurotsakul, P. Srisamang, N.P.J. Day, N. Graves, B.S. Cooper
*Mahidol University, Thailand

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 165-175


背景
多面的介入は、医療従事者における手指衛生遵守率を高める上で効果的であるが、そのような介入が高所得国以外で費用効果的であるかどうかは不明である。

目的
中所得国における手指衛生遵守率の向上を目的とした、病院での多面的介入の費用効果を評価すること。

方法
控えめなアプローチを用いて、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)血流感染症の減少のみにより集中治療室における手指衛生介入が費用効果的になるかどうかを明らかにするため、モデルを構築した。MRSA 血流感染症の発生率に対して手指衛生介入が及ぼすと予想される影響を明らかにし、その費用効果を評価するため、伝達動態分析モデルと決定分析モデルを組み合わせた。得られた結果を一般化するために、一連の感度分析、ならびに伝播性に関する異なる想定を用いる仮説的シナリオを検討した。

結果
手指衛生遵守率をベースラインの 10%から 20%以上にまで高める介入は、MRSA 血流感染症を減少させるだけで費用効果的であると思われる。遵守率を 10%から 40%にまで高めることは、小児集中治療室では総入院日数 10,000 日あたり 2,515 米ドルの費用がかかり 3.8 質調整生存年(QALY)が獲得され、また成人集中治療室では総入院日数 10,000 日あたり 1,743 米ドルの費用がかかり 3.7 QALY が獲得されると推定された。ベースラインの遵守率が 20%を超えていない場合、遵守率の改善がわずか 10%であっても、介入は常に費用効果的である。

結論
効果的な多面的手指衛生介入は、ベースラインの遵守率が一般的に低い中所得国の集中治療室では、MRSA 血流感染症を予防するだけで費用効果的であると考えられる。遵守率がより高い場所では、遵守率をさらに改善するための介入の費用効果は、MRSA 血流感染症以外の病院獲得感染症に及ぼす影響に左右される。

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監訳者コメント

スイスの複数施設を有する地域病院 1 施設における多面的改善プログラムによる手指衛生遵守率の持続的改善

Sustained improvement in hand hygiene compliance using a multi-modal improvement programme at a Swiss multi-site regional hospital

A. Staines*, P. Vanderavero, B. Duvillard, P. Deriaz, P. Erard, F. Kundig, C. Juillet, O. Clerc
*University of Lyon 3, France

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 176-182


背景
手指衛生遵守の持続的改善に関する施設レベルでのエビデンスは乏しい。

目的
スタッフの手指衛生遵守に対して病院全体で実施された改善プログラムの影響および持続可能性を評価する。

方法
スイスのヌーシャテル州にある複数施設を有する 450 床の教育病院内で、すべての臨床スタッフの手指衛生遵守の傾向を、訓練を受けた観察者の直接観察により測定して分析すること。

介入
世界保健機関(WHO)の戦略に基づく多面的改善プログラムを実施し、全体の遵守率が少なくとも 80%に達することを目標とした。戦略の内容には、擦式アルコール製剤の利用可能性の向上、医療従事者の教育、2 か月ごとの遵守率測定、病棟レベルの結果についての病院内でのオープンな通知、ポイント・オブ・ケアでのリマインダー、専用の院内ニュースレターによる通知、リーダーの動機づけが含まれた。実施期間の後に、定着化期間が設定された。

結果
2012 年 9 月から 2014 年 3 月までに、合計で 33,476 件の観察が行われた(監査あたり平均 3,000 件を超える機会)。全体的な遵守率は、ベースライン時の 61.4%から 18 か月間の改善プログラム後には83.6%に改善し(P < 0.001)、さらに18 か 月後(すなわち、プログラム終了後18 か月後)に 85.3%と持続が認められた(P = 0.08)。同じ傾向(介入期間中の有意かつ臨床的に意味のある改善、18 か月後に持続)がすべての職種で認められた。

結論
WHO の戦略に基づくこの改善プログラムにより、病院全体および各職種において手指衛生遵守率が有意に改善した。この結果は介入後 18 か月間にわたり持続した。

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監訳者コメント

外来診療におけるリアルタイムの手指衛生通知機械学習システムの実施可能性

Feasibility of a real-time hand hygiene notification machine learning system in outpatient clinics

R. Geilleit*, Z.Q. Hen, C.Y. Chong, A.P. Loh, N.L. Pang, G.M. Peterson, K.C. Ng, A. Huis, D.F. de Korne
*KK Women’s and Children’s Hospital, Singapore

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 183-189


背景
入院環境における手指衛生遵守を改善するために様々な技術が開発されている。しかし、外来診療における手指衛生遵守を改善するための機械学習技術の実施可能性については、ほとんど知られていない。

目的
外来診療においてリアルタイム手指衛生通知機械学習システムを実施した場合の有効性、使用者の経験、および費用を評価すること。

方法
混合法による著者らの研究では、臨床医に対して初回患者接触の直前に手指衛生を行うよう自動的に通知を行うため、多職種チームにより赤外線検知センサーシステムを共同作成した。通知技術による効果は、ベースライン(通知なし)における手指衛生遵守率を、手指衛生が実施されるまで継続するリアルタイムの音声通知(介入 I)または 15 秒間続く通知(介入 II)と比較することで評価した。毎日のブリーフィングや半構造化された面接において、使用者の経験に関する情報収集を行った。システムの実施費用を算出し、現行の観察監査プログラムと比較した。

結果
ベースラインにおける初回患者接触前の手指衛生実施率の平均は 53.8%であった。手指衛生が実施されるまで継続するリアルタイムの音声通知により、全体的な手指衛生実施率は 100%に上昇した(P < 0.001)。最長 15 秒の音声通知の場合、手指衛生実施率は 80.4%(P < 0.001)であった。使用者は、リアルタイムでの通知の重要性を強調し、試作品で実施することにより、技術上の実現可能性の向上に貢献した。機械学習システムの年間運営コストは、推定で観察監査プログラムより 46%低かった。

結論
リアルタイムの手指衛生通知が実施できる機械学習技術は、手指衛生の改善およびモニタリングの両方において費用効果の高い有望なアプローチとなり、外来環境においてさらに開発を進める価値がある。

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監訳者コメント
これはすごいなぁ、というのが第一印象。機械が外来診療における医師の手指衛生をモニタリングし、手指衛生を行うまでブザーが鳴り続けるシステムの手指衛生遵守率は 100%(そりゃそうだろう)、15 秒間ブザーが鳴り続けるシステムの遵守率は 80.4%(よくブザーを無視できたなと感心するが)であったということだ。機械もすごいが、このシステムを導入できた病院もすごいなぁ、と思う。普通は医師が大反対しそうなものだ。感染防止策の遵守率を上げるにも、やはりこういうテクノロジーの力を借りなければいけないのだろうか。

剥離を促すスキンケアレジメンが手術室スタッフの皮膚における上皮鱗屑数に及ぼす効果:表面顕微鏡による研究

Effect of an exfoliating skincare regimen on the numbers of epithelial squames on the skin of operating theatre staff, studied by surface microscopy

A.G. Wernham*, O.L. Cain, A.M. Thomas
*University Hospital Birmingham, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 190-194


背景M
手術室スタッフの上皮鱗屑(皮膚鱗屑)の脱落は、関節置換術後の深部感染症の重要な要因である。これは重篤な合併症であり、患者にとって重大な合併症および医療システムにとって費用上の大きな影響をもたらす。手術室で清浄な空気を提供するために多大な努力が払われてきたが、皮膚上皮鱗屑の脱落を発生源において減らすことにはほとんど注意が払われてこなかった。

目的
表面顕微鏡法を用いて皮膚表面鱗屑密度を算出するための新たな方法を開発すること、またこれを用いて手術室スタッフにおけるスキンケアレジメンの効果を評価すること。

方法
Z-stack イメージングによる表面顕微鏡法を用いて、石けんによる洗浄、剥離の促進、皮膚軟化剤の塗布の 3 段階を含むスキンケアレジメンの効果を視覚化した。次いで手術室での調査で USB 顕微鏡を使用し、検査前夜に 1 本の下肢にレジメンを適用した手術室スタッフの皮膚を撮像した。もう 1 本の下肢を対照として用いた。盲検化された 2 名の評価者が鱗屑密度の分析を行った。

結果
表面顕微鏡による Z-stack 画像から、スキンケアレジメンの観察が可能になった。また USB 顕微鏡により、皮膚鱗屑密度の評価に十分な画像が得られた。手術室スタッフにおいて、スキンケアレジメンの適用後、目視可能な皮膚鱗屑に 72.1%の減少が認められた。

結論
この効果が清浄室内における皮膚粒子の分散とどのように相関しているかを実証するためには、さらなる研究と、その後の手術室内の現場研究が必要である。

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監訳者コメント
手術部位感染、とりわけ人工関節置換術においては、手術中の術者の上皮の剝脱と落下が問題になる。本研究は適切なスキンケアによって上皮の剝脱が減少することと、簡単な USB 顕微鏡でそれを確認できることを示している。手術を行う者は、スキンケアにまで注意を払う必要がある、というわけである。

手指衛生遵守の改善に関して手指消毒剤の剤形(ゲル/泡/液体)と使用量が知覚特性および許容性に及ぼす影響

Impact of hand sanitizer format (gel/foam/liquid) and dose amount on its sensory properties and acceptability for improving hand hygiene compliance

R.E. Greenaway*, K. Ormandy, C. Fellows, T. Hollowood
*Sensory Dimensions Ltd, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 195-201


背景
効果的な擦式アルコール製剤および医療従事者による手指衛生ガイドラインの遵守は、医療現場における感染症伝播の予防において重要である。手指衛生ガイドラインの遵守は、教育、擦式アルコール製剤の入手のしやすさ、時間的制約、皮膚の健康状態、および擦式アルコール製剤使用中および使用後の知覚特性に対する使用者の許容性を含む、多くの要因の影響を受ける。

目的
擦式アルコール製剤の剤形(ゲル/泡/液体)および使用量(0.7 mL、1.5 mL、3 mL)が知覚特性および許容性に及ぼす影響を調査し、これが医療従事者の手指衛生遵守にどのように作用するかを検討すること。

方法
記述的知覚分析により、市場をリードする擦式アルコール製剤 10 製品(3 つはゲル、4 つは泡、2 つは液体、1 つはエアロゾル泡)の間で重要な知覚差が証明された。フォーカスグループではこれらの違いを裏付けた。

結果
すべての剤形において、最大使用量はより少ない使用量よりも取り扱いが困難であったため、好まれなかった。泡とゲルは、使用量が多いとよりべたつき、清潔感が少なくなり、乾燥に時間がかかった。液体はより清潔で滑らかで潤い感を与えたが、製品の取り扱いと塗布がより難しいことがこれらの利点を打ち消した。全体的に、ゲルおよび泡の剤形は液体よりも好ましかった。主な好ましい特性には、吸収の速さ、ソフトな/潤いある手触り、べたつかないこと、清潔感、および匂いが少ないことが含まれる。

結論
1.5 mL の使用量は、極端な悪影響を及ぼさずに最も受け入れられる特性をもたらした。泡は液体とゲルの両方の利点をもたらし、これらの利点を組み合わせたより広く受け入れられる剤形であるため、手指衛生遵守向上につながる可能性がある。

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監訳者コメント
好まれる手指衛生剤の量と剤型に関する論文で、結論としては、1.5 mL くらいの使用量で泡タイプのものが最も好評価であったということである。手指衛生剤メーカーである Deb が本研究のスポンサーというのが若干気になるところではある。手指衛生剤の評価を考えている人は、評価項目を参考にしてはどうだろうか。

手指衛生改善の世界的な進捗状況:WHO 手指衛生自己評価フレームワークを用いた 2 回の調査

Global hand hygiene improvement progress: two surveys using the WHO Hand Hygiene Self-Assessment Framework

C. Kilpatrick*, E. Tartari, A. Gayet-Ageron, J. Storr, S. Tomczyk, B. Allegranzi, D. Pittet
*World Health Organization, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 202-206


世界保健機関(WHO)は、2011 年および 2015 年に手指衛生自己評価フレームワーク(HHSAF)を用いて世界規模の調査を 2 回実施した。2011 年には 69 か国から 2,119 の医療機関が参加し、2015 年には 91 か国から 807 の医療機関が参加した。合計で、86 施設が両方の調査において結果を提出した。全体的なスコアは 335.1(標準偏差[SD]7.5)から 374.4(SD 90.5)に有意に増加した(P < 0.001)。WHO 地域でみると、東地中海、欧州および西太平洋の各地域でスコアがすべて有意に改善した(P < 0.01)。この結果は、世界的な手指衛生改善の取り組みにおける現状を示すものであり、施設における進捗状況の概要を示し、使用された評価ツールの価値を強調している。

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監訳者コメント
手指衛生自己評価フレームワーク(HHSAF)は、システム変更(一般病床で 10 床に 1 手洗いシンクかつ集中治療系では 1 床に 1 手洗いシンク、ペーパータオルを全シンクに設置など)、教育と訓練(手指衛生の教育訓練は、全員新規採用者に義務化し、全職員は年に1回など)、評価と結果還元(消毒剤や液体石鹸の消費量モニタリング、手指消毒剤の消費量が 1,000 患者あたり 20 L 以上、遵守率などの結果を半年に 1 回報告など)、現場での手指衛生ポスター掲示(手指衛生すべき場面や手順のポスター掲示など)、施設の安全文化(施設の管理者の積極的関与や手指衛生推進チームの設置など)5 項目、各 100 点で合計 500 点からなる評価システムで、合計点数で手指衛生の自施設での実施状況を評価することができる。地域別では、アフリカ地域を除く地域でこの 4 年間で改善されている。同じ評価方法で実施される世界的規模の調査は他になく、このデータがベンチマークとなる点でも非常に意味のある論文である。2019 年に次回の調査がおこなわれる。なお、HHSAF およびそれに関連する資料は、http://www.who.int/infection-prevention/tools/hand-hygiene/en/ を参照されたい。

手指消毒後の爪の微生物定着:質的パイロット研究★★

Nail microbial colonization following hand disinfection: a qualitative pilot study

M.Z. Wałaszek*, M. Kołpa, A. Różańska, B. Jagiencarz-Starzec, Z. Wolak, J. Wójkowska-Mach
*State Higher Vocational School in Tarnów, Poland

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 207-210


医療従事者による効果的な手指衛生は、院内感染予防の基本原則の 1 つである。本研究の目的は、手指衛生後の爪の微生物定着に関する質的検査の実施であった。結果は、爪の長さ(短い対長い)およびマニキュアの存在(自爪対マニキュア塗布)によって層別化した。潜在的な病原微生物の存在は、爪の長さ(オッズ比[OR]7.1、95%信頼区間[CI]1.83 ~ 27.39、P < 0.001)および紫外線(UV)ライトで硬化したマニキュアの存在(OR 7.2、95%CI 1.25 ~ 40.91、P < 0.05)と相関していた。爪が長い状態であったり、UV ライトで硬化したマニキュアをしているときは、手指衛生が有効でない可能性が高い。

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監訳者コメント
手指衛生において、つけ爪に病原性微生物が付着し、それを媒介としてアウトブレイクになったとの報告はこれまでいくつかの報告がある。一方でマニキュアをつけてもつけなくても、手指衛生に影響がなかったとする報告もある。近年マニキュアのコーティングの方法も増えており、本論文はマニキュアのコーティング方法による手指衛生への影響について検討されたものである。爪が長い(0.2 cm以上を長い)と細菌が指先から検出されやすいことは周知の事実であり、本論文でも同様の結論である。さらに UV ライトで硬化したコーティングで手指衛生が不十分になるのは、コーティングを剥げにくくするために爪を短くする手入れが実施しにくくなり、そのことが手指衛生が不十分になる一因であろうとの考察し、UV ライトを使用するマニキュアは医療従事者には禁止すべきとの結論に至っている。

医療従事者を対象とする手洗い製剤の標準試験 ASTM E1174 を用いたオゾン水の評価

Evaluation of ozonated water using ASTM E1174 for standardized testing of handwash formulations for healthcare personnel

K. Nakamura*, K. Saito, J. Kashiwazaki, T. Aoyagi, K. Arai, Y. Hara, S. Kobari, H. Mori, K. Ohashi, Y. Takano, M. Kaku, K. Kanemitsu
*Fukushima Medical University, Japan

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 211-213


オゾン水での手洗いによる細菌の除去を、標準試験法 ASTM E1174 を用いて評価した。30 人の健康ボランティアを 3 群(オゾン水、抗菌性石けんと水、非抗菌性石けんと水)に無作為に割り付けた。オゾン水で手を洗う、または抗菌性石けんと水で手を洗うことによって、3 log10 cfu の減少が達成された。しかし、オゾン水は非抗菌性石けんと水よりも有意に優れてはいなかった。オゾン水は目に見える汚れや体液による汚染がない場合は、少なくとも非抗菌性石けんと水と同程度まで細菌を手から除去できる可能性がある。

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監訳者コメント
日本からの論文である。オゾン水の手洗いの効果を見たものであるが、オゾン水は有機物により容易に失活するため、器具の消毒では 50 ppm を使用した論文もあり、有機物が多く付着しやすい手指で、現在の 4 ppm の濃度が手洗いに適しているかどうかをさらに追加検討する必要がある。消毒薬全般において言えることだか、in vitro の実験系での効果は、有機物がある臨床現場とは大きく条件が異なるため、臨床現場で使用する消毒薬の濃度よりもはるかに低濃度で殺菌効果が認められる。本論文での 4 ppm のオゾン水と石鹸と流水による手洗いとは除菌効果においては同等であり、現時点で手指衛生の新しい方法として、オゾン水を積極的に推進するにはさらなるエビデンスが必要である。

米軍病院において入院患者を看護する職員の手指衛生に対する姿勢の評価

Assessing hand hygiene attitudes of inpatient nursing personnel in a US military hospital

G.F. West*, M. Resendiz, M.B. Lustik
*Tripler Army Medical Center, USA

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 214-217


病院感染のうち 10%から 40%は、医療従事者の手指による交差汚染に起因している。本研究では、固定した米軍施設 1 カ所において、軍服および病院提供のスクラブを着用している参加者の手指衛生の頻度を調査した。これらの服装を着用時に行った手指衛生の回数の中央値は、1 時間あたり 10 回 であった。しかし職員の 3 分の 2 が、軍服によって手指衛生を行いにくくなったと述べた。手指衛生を向上させるために、軍関係者は看護職員が長袖の軍服を着用するよう義務付けた方針を見直すべきである。非軍事施設においても、長袖の衣服が手指衛生に及ぼす影響について検討した方がよい。

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監訳者コメント
軍服の着用を義務付けている米軍医療施設での、手指衛生に及ぼす服装の影響を調査した報告である。手を洗う/擦式消毒薬を使用する回数は軍服とスクラブとで変わらなかったが、長袖の軍服が手指衛生の徹底に不利となると答えた割合は、軍服を着用している時よりも、スクラブを着用している時に有意に多かった。服装という基本的なファクターがやはり手指衛生に関する意識を左右するという具体的な一例であるかもしれない。

医療関連感染に起因する入院期間延長の推定:統計的方法論によるシステマティックレビューおよびメタアナリシス

Estimating excess length of stay due to healthcare-associated infections: a systematic review and meta-analysis of statistical methodology

S. Manoukian*, S. Stewart, S. Dancer, N. Graves, H. Mason, A. McFarland, C. Robertson, J. Reilly
*Glasgow Caledonian University, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 222-235


背景
医療関連感染(HCAI)は世界中の何百万人もの患者に影響を及ぼしている。HCAI は、主に入院期間を延長させることで医療費の増加を生んでいるが、これらの費用の算出は時間依存性バイアスのために複雑になっている。費用対効果の高い感染予防策(IPC)に確実に投資するためには、HCAI に起因する入院期間延長の正確な推定が不可欠である。

目的
HCAI を有する患者と有さない患者で生じた入院期間の差を推定するために用いられてきた主な統計的手法を特定するとともに、それをレビューすること。さらにすべての統計的アプローチの潜在的なバイアスを明らかにし考察すること。

方法
データベースとして PubMed、CINAHL、ProQuest および EconLit を用いて、1997 年から 2017 年 4 月までのシステマティックレビューを実施した。本試験に合うように調整したNewcastle-Ottawa Scale(NOS)を用いて研究の質の評価を行った。統計学的方法は、時間固定型または時間依存型に分類されたが、前者は時間依存性にバイアスを生じていた。延長した入院期間(推定値)が研究によってどの程度異なるかを示すために、2件のメタアナリシスを例として取り上げた。

結果
延長した入院期間を算出している研究として、92 個が抽出された。大半の論文は時間固定法を採用していた(75%)。NOS によると、時間依存法を用いた研究は質が高い。時間固定法を用いた研究は、HCAI に起因する入院期間延長を過大評価している。メタアナリシスの実施は、研究デザインおよび報告形式が様々であるため難易度が高い。研究間の差異は、母集団の不均一性、症例定義、原因微生物、薬剤感受性によってさらに大きくなった。

結論
方法論は過去 20 年にわたり発展してきたが、時間固定法に依存したエビデンスがいまだにかなり多く存在している。費用対効果の高いIPCへの投資について情報を提供するためには、確固たる推定が必要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
医療関連感染によって入院期間が延長し、それによる医療費がかさむという報告は数多く存在するが、解析にあたって、延長した入院期間を正確に推定するのは実は難しい。今後、時間依存型の手法による知見が蓄積されるとともに、現実的な妥当性の評価が望まれる。

医療環境における清掃と消毒の実践に関する国際調査

An international survey of cleaning and disinfection practices in the healthcare environment

N. Kenters*, T. Gottlieb, J. Hopman, S. Mehtar, M.L. Schweizer, E. Tartari, ISAC working group Infection Prevention and Control, E.G.W. Huijskens, A. Voss
*Albert Schweitzer Hospital, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 236-241


背景
抗菌薬耐性は、緊急性の高い世界的な健康上の優先事項の 1 つとなっている。基本的な衛生習慣および病院環境の清掃と消毒は、病原体の交差伝播を防ぐ上で重要である。

目的
我々の知る限りでは、医療施設での清掃と消毒の実践に関して世界的な違いを評価した研究はない。本稿に記載した電子的調査は、世界中の医療施設での清掃の実践における違いを評価するために開発された。

方法
International Society of Antimicrobial Chemotherapy(ISAC、旧 ISC)の感染制御ワークグループは、30 の多項選択問題を含む調査を作成した。これらの質問は、世界中の医療現場における現状の清掃の実践内容を評価するために作成された。

結果
オンライン調査には、23 カ国を代表する計 110 名の医療従事者が参加した。96%の施設では書面による清掃方針が存在した。70%の施設では雇用時に清掃スタッフの訓練が行われていた。ただし清掃の実践内容とモニタリングの状況は様々であった。

結論
この調査により、環境の清掃と消毒に対する取り組みに関して、世界中で大幅に異なる実状を認識し、評価することができた。清掃と消毒に関するガイドライン(レコメンデーション)を作成することで、実践内容を改善し、世界的な(ミニマム)スタンダードを設定することができるであろう。

サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
清掃と消毒は、施設間差のみならず、世界的な地域差も大きい。特に清掃については、本邦で受託業者の基準や業務の実施方法は定められているが、清潔の保持の指標となる基準の設定はなされておらず、その取り組みはそれぞれの医療機関に任されてきた。厚生労働科学研究費「標準的な院内清掃のあり方の研究班」では、院内清掃ガイドラインを平成 27 年度に作成、公表した。本論文のような横断的な取り組みと、各国の個別の策定とが有機的に結びつき、清掃分野における進歩と向上が加速することに期待したい。

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