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英国の医学部学生に対する専門教育のためのコンセンサスに基づく全国的な抗菌薬適正使用支援コンピテンシーの開発

Development of consensus-based national antimicrobial stewardship competencies for UK undergraduate healthcare professional education

M. Courtenay* , R. Lim, E. Castro-Sanchez, R. Deslandes, K. Hodson, G. Morris, S. Reeves, M. Weiss, D. Ashiru-Oredope, H. Bain, A. Black, J. Bosanquet, A. Cockburn, C. Duggan, M. Fitzpatrick, R. Gallagher, D. Grant, J. McEwen, N. Reid, J. Sneddon, D. Stewart, A. Tonna, P. White
* Cardiff University, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 245-256


背景
医療専門家は、患者・医薬に関連する一連の適正使用支援活動に関与するため、抗菌薬適正使用支援について理解し取り組むことが重要である。医学部学生への教育は、医療専門家としてこれらの役割や活動に向けて準備させる絶好の機会となる。

目的
医学部学生に対する専門教育に適した共通の抗菌薬適正使用支援コンピテンシーに関する英国内のコンセンサスを得ること。

方法
2 段階のオンライン調査からなる修正デルファイ法により、看護師・助産師・薬剤師・理学療法士・足治療師の教育と実践における処方と薬剤管理の専門知識、ならびに抗菌薬の処方と適正使用支援の専門知識を持つ英国内の 21 名からなるパネルメンバーを招いた。2017 年 10 月から 12 月にデータを収集した。

結果
参加者 21 名が専門家パネルのメンバーとなることに同意し、そのうち 19 名(90%)が 1 回目の質問票に回答し、17 名(89%)が 2 回目の質問票に回答した。コンピテンシーに関する包括的な 6 つの記述(6 領域に細分)、ならびに医療専門家による抗菌薬適正使用支援に必須の 55 項目の説明指標に関してパネリストのコンセンサスが得られ、一貫して高水準の合意に達した。

結論
コンピテンシーに関する記述とそれに関連する説明指標において一貫して高水準の合意に達したことから、このコンピテンシーの枠組みは、医学部学生に対する専門教育、ならびに抗菌薬適正使用支援の理解と取り組みが重要となる医療提供をサポートする新たな臨床上の役割を担う従事者に対する教育を方向付けるために使用すべきである。コンピテンシーは基礎教育の到達目標であるが、さらに継続的な教育を目的として使用できる。

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監訳者コメント
デルファイ法は専門家の意見をアンケート形式で集め、それを繰り返すことで意見集約する方法である。社会人になってからではなかなか修正が効かない。学生の頃に王道ともいえる抗菌薬適正使用に関する知識と技術を取得して実臨床に望む医師を育てることが重要である。

革新的なサーベイランスと臨床決定支援システムによってサポートする抗菌薬適正使用支援プログラムの参加型実践

Participatory implementation of an antibiotic stewardship programme supported by an innovative surveillance and clinical decision-support system

A.S. Simões* , M.R. Maia, J. Gregório, I. Couto, A.M. Asfeldt, G.S. Simonsen, P. Póvoa, M. Viveiros, L.V. Lapão
* Universidade Nova de Lisboa, Portugal

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 257-264


背景
抗菌薬耐性により 2050 年までに 1 年あたり約 1,000 万人が死亡するとされる。抗菌薬耐性との闘いは衛生上の優先事項である。抗菌薬適正使用支援プログラムなど抗菌薬耐性を低減させるための介入を実施する必要がある。効果的に行うには、そうした介入や実践プロセスが、社会的・文化的背景と適合していなければならない。抗菌薬適正使用支援プログラムは複雑なため、組織体制と情報システムの両方を考慮しなければ、もはや改良できない。

目的
抗菌薬耐性の監視と抗菌薬処方の改善を図るために、医療従事者と連携したサーベイランスと臨床決定支援システムの共同デザインと実践により、抗菌薬適正使用支援プログラムをサポートすること。

方法
ポルトガルの 3 つの病院において、Design Science Research Methodology に従い、研究者と医療従事者間の参加型アプローチによってサーベイランスと臨床決定支援システムをデザインし、実践した。

結果
医療従事者の要望に基づき、患者・微生物学・薬剤に関するデータの可視化を統合して臨床決定を支援する HAITooL(リアルタイムのサーベイランス・臨床決定支援システム)を開発した。HAITooL は抗菌薬使用や抗菌薬耐性菌の発生率を監視し、アウトブレイクの早期発見を可能にする。また、エビデンスに基づくアルゴリズムを統合し、適切な抗菌薬処方をサポートする臨床決定支援ツールである。HAITooL は抗菌薬耐性感染症の監視をサポートする上で有用とみなされ、抗菌薬適正使用支援プログラムの持続可能性のために重要なツールである。

結論
抗菌薬適正使用支援プログラムの実践は、医療従事者や病院の背景や特定のニーズに適応していれば、抗菌薬耐性を監視し抗菌薬処方をサポートする HAITooL などのサーベイランスや臨床決定支援システムによって、より効果的になりうる。

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監訳者コメント
Design Science Research Methodology は、結果ベースの情報技術リサーチ手法であり、リサーチプロジェクトにおける評価と反復のための具体的なガイドラインを提供する。この論文では、患者の臨床経過と治療の過程を時間経過で視覚的に確認できるシステムの導入や感受性パターンのみやすい情報提供などを行い、抗菌薬適正使用支援プログラムの実践を推進している。

背景に応じた抗菌薬の最適化:オーストラリアの遠隔地の病院環境に関する面接による質的研究

Context-sensitive antibiotic optimization: a qualitative interviews study of a remote Australian hospital setting

J. Broom* , A. Broom, E. Kirby
* University of Queensland, Australia

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 265-269


背景
抗菌薬の最適化は、早急に取り組むべき国際的な課題である。機能する抗菌薬適正使用支援プログラムを保有する要件を含む規制の枠組みは、現在では、病院の領域を超えて、国内的・国際的に遍在する。とはいえ、医療は、結局のところさまざまな施設環境や社会的背景の中で提供される。特殊な医療環境において、抗菌薬の最適化対策の実施が不適切であったり、最適化の試みに対して逆効果になったりすることがあるという新たなエビデンスがある。

目的
オーストラリアの遠隔地の医療施設における抗菌薬使用とその環境での最適化戦略に関して、医療従事者の経験と見解を提示すること。

方法
オーストラリアのクイーンズランド州の遠隔地の病院 1 施設の医師、看護師、薬剤師を含む医療従事者 30 名対象に、質的な半構造化面接を実施した。

結果
分析によって、抗菌薬最適化のための主要な課題として 4 つのテーマが特定された。(i)外部から推進される抗菌薬適正使用支援、二の次になる地域に関する情報(ii)地域集団におけるリスク増大に関する認識、治療失敗とそれに続く抗菌薬過剰使用に対する重圧(iii)抗菌薬適正使用支援の障壁とみなされる医療階層構造を含む専門家間の関係力学(iv)一時的な代理職員が多数を占める臨床従事者、ならびにその他のプロセスの問題が重大な障害として認識された。

結論
ケア、施設の資源や構造上の制約、特定の集団の特異性(それに続く臨床上の“専門技能”)という状況に、抗菌薬規制と診療改善策が適合かつ配慮されていなければ、一般的にみても、成功する可能性は低いという結論が、当該施設における医療従事者の認識から得られた。

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監訳者コメント
遠隔地医療では必ずしも感染症の専門医がいるとは限らない。国内津々浦々に抗菌薬適正使用を浸透するためには、医療圏の抱える課題を認識して改善を行う必要がある。

イーストテキサス州農村部の病院における抗菌薬適正使用支援プログラムの特性

Characteristics of antimicrobial stewardship programmes in rural East Texas hospitals

J.C. Cho* , R.L. Dunn, F.S. Yu, G.A. Loredo, B.J. Brazill
* The University of Texas at Tyler, USA

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 270-275


緒言
抗菌薬適正使用支援プログラムは、抗菌薬耐性の出現の予防と管理のための第 1 の手段となる。農村部の施設では、抗菌薬適正使用支援サービスの提供に必要とされる所要人員・資源が不足していることがある。

方法
イーストテキサス州の Public Health Region 4/5N 範囲内の認定病院の薬局長または抗菌薬適正使用支援プログラム責任者に、電子的な調査を e メールで配信した。

結果
調査実施時に、抗菌薬適正使用支援プログラムの 60%は策定されてから 12 か月未満であった。すべての抗菌薬適正使用支援プログラムに薬剤師が関与しており、卒後教育によって感染症に対する正式な研修を受けているのは 1 名(5%)のみであった。抗菌薬適正使用支援プログラムの 90%が その推進者としての立場であるが、感染症に対する正式な研修を受けている医師は 5 名(27.8%)であった。大部分の施設が、抗菌薬適正使用支援の推奨案を 1 つ以上実践していなかった。抗菌薬適正使用支援プログラムが策定されてから 12 か月未満の場合と比較して、策定から少なくとも 12 か月は経過している場合、抗菌薬を静脈内投与から経口投与に変更するプロトコールを有する率(100%対 50%、P = 0.042)、適切な抗菌薬使用に関して患者や家族に教育を行う率(87.5%対 33.3%、P = 0.028)、抗菌薬購入費を追跡する率(87.5%対 33.3%、P = 0.028)が高かった。

結論
農村環境の施設は、さらなる資源、人員、抗菌薬適正使用支援プログラムを実践する時間を必要としており、さまざまな抗菌薬適正使用支援の実践を行っている。

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監訳者コメント
大都市圏以外での医療施設での抗菌薬適正使用は大きな課題であるが、専門医不在の医療圏での抗菌薬適正使用の推進にはまだまだ課題が多い。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus aureus;MRSA)感染症の低減を図るための国内戦略に関する日本と英国の比較

Comparison of national strategies to reduce methicillin resistant Staphylococcus aureus infections in Japan and England

S. Mizuno* , M. Iwami, S. Kunisawa, N. Naylor, K. Yamashita, Y. Kyratsis, G. Meads, J.A. Otter, A.H. Holmes, Y. Imanaka, R. Ahmad
* Kyoto University, Japan

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 280-298


背景
医療関連感染に対する国の対応は高所得国の間でも異なるが、背景因子に基づく比較可能性を分析することにより、介入方法の転用の可能性を評価することができる。

目的
日本と英国におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus aureus;MRSA)に対処するための国内レベルのアプローチから教訓を得ること。

方法
疫学的傾向と政策介入を比較する縦断的分析(2000 年から 2017 年)。感染症予防管理対策、サーベイランス、抗菌薬適正使用支援介入に関する 441 のテキストソースのデータを系統的に分類した。(a)種類:必須要件、推奨、または全国的キャンペーン(b)方法:制限的介入、説得的介入、本質に対する構造的介入(c)実施のレベル:マクロ(国)、メソ(組織)、ミクロ(個人)レベル。医療組織構造やメディアの役割も評価した。

結果
英国では、MRSA 血流感染症の報告数の顕著な減少を達成している。日本では減少したものの、MRSA は依然として主要な感染症である。両国とも薬剤耐性大腸菌(Escherichia coli)の出現により新たな脅威に直面している。英国では、国家的な義務的介入と構造的介入に焦点を置き、これらの介入は成果に基づく動機づけと罰則のメカニズムの組み合わせ、ならびに院内の集学的感染予防管理対策チームによりサポートされている。日本では、(義務的ではなく)推奨による介入と主に説得的介入に焦点を置き、介入はプロセスに基づく動機づけと任意のサーベイランスによりサポートされている。日本における開発領域には、専用のデータ管理支援の提供、医療従事者と公衆に向けた国内キャンペーンの実施が含まれる。

結論
政策介入は、地域の疫学的傾向に対応している必要があるが、医療システム、文化、公衆の期待の範囲内で許容できる。今後の感染症や経済的な問題に対して持続可能かつ柔軟なシステムを策定するために、国際比較による教訓は、介入の適切な組み合わせについて情報をもたらす一助となるであろう。

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監訳者コメント
英国と日本の研究者による日英の感染症に関する国家戦略の比較を行った論文である。表やグラフを読む際は、医療制度の違い、データ収集方法の違いなどから、直接比較が難しいことを理解して読む必要があると思われた。

手術室において乾燥耐性は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の高伝播性・耐性・感染症発生と関連する

Desiccation tolerance is associated with Staphylococcus aureus hypertransmissibility, resistance and infection development in the operating room

R.W. Loftus* , F. Dexter, A.D.M. Robinson, A.R. Horswill
* University of Iowa, USA

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 299-308


背景
乾燥耐性は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の生存と伝播リスクを高める。黄色ブドウ球菌の術中伝播を引き起こす因子をより理解することは、術中感染制御の革新的な改善につながる可能性がある。

目的
乾燥耐性が黄色ブドウ球菌の術中伝播と関連するかどうかを明らかにすることと、術中の感染制御を図る改善策の策定を推進するために、手術室において乾燥耐性を示す分離株の典型的な伝播動態を分析すること。

方法
274 の手術室環境の麻酔作業領域のリザーバから黄色ブドウ球菌分離株(173 株)を収集した。乾燥耐性を評価し、シークエンス型(ST)およびクローン伝播と関連する可能性を評価した。細胞の全ゲノム解析とパルスフィールド・ゲル電気泳動解析により、乾燥耐性を示す分離株を感染症の原因菌と比較した。

結果
黄色ブドウ球菌の ST5 型分離株は、術中のその他すべての ST 型よりも乾燥耐性が高かった(ST5 型:34 株、2 日目のコロニー形成単位[cfu]による生存率中央値 0.027%±0.029%、その他の ST 型:139 株、2 日目の cfu による生存率中央値 0.0091%±1.41%、補正 P = 0.0001)。ST5 型はクローン伝播のリスク増加と関連した(相対リスク 1.82、95%信頼区間 1.23 ~ 2.71、P = 0.003)。細胞の全ゲノム解析により、ST5 型の伝播は術後感染症と関連していた。

結論
乾燥耐性の増大は黄色ブドウ球菌の ST5 型分離株の術中伝播と関連しており、この株は術後感染症と関連づけられる。さらなる研究によって、乾燥耐性を示す術中の ST5 型株の低減が医療関連感染症の発生率に影響しうるかどうかを検討する必要がある。

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監訳者コメント
黄色ブドウ球菌の ST5 型分離株の乾燥耐性と術後感染症の関連を調べた論文である。本論文では、この株を想定した環境消毒とともに、手指衛生と患者の除菌を提案しており、リーズナブルだと思われた。

鼻咽頭保菌に由来する黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)株の病原性パターン

Virulence patterns of Staphylococcus aureus strains from nasopharyngeal colonization

S. Deinhardt-Emmer* , S. Sachse, J. Geraci, C. Fischer, A. Kwetkat, K. Dawczynski, L. Tuchscherr, B. Löffler
* Jena University Hospital, Germany

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 309-315


背景
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の鼻咽頭保菌率は集団内において 20 ~ 30%にも達することがあり、侵襲性感染症の原因となり得る。

目的
様々な年齢群における保菌率を調べ、黄色ブドウ球菌株に特異的な病原性パターンを分析すること。

方法
保菌率の分析を行うため、新生児、5 ~ 60 歳の健康ボランティア、および 80 歳超のナーシングホーム居住者を含む年齢群を対象として鼻咽頭スワブを調べた。黄色ブドウ球菌が回収された場合、遺伝子解析および病原性に関する表現型検査を細胞アッセイにより実施した。

結果
ボランティア 924 例において全保菌率は約 30%で、5 ~ 10 歳の被験者で最も高かった(49%)。新生児および 80 歳超の被験者では、クローンクラスターの分布に差が認められた。全体的にすべての年齢群の分離株で、感染症の発症を引き起こし得る病原性の特徴が示された。特に、新生児由来の分離株では、検査の対象とした他の分離株より高い細胞毒性作用をもたらした毒性遺伝子の保有率が高いことが示された。

結論
保菌由来の分離株にはすべての年齢群で病原性の特徴が認められ、これは侵襲性感染症の発症につながる可能性がある。したがって、感染症のリスクに応じて選択した患者に対して、除菌の方策を検討できるであろう。

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監訳者コメント
ドイツの健常人における黄色ブドウ球菌の保菌率と遺伝子解析を実施した論文である。5 ~ 10歳で保菌率が高いのは集団生活の影響があると思われるが、約 50%という結果には驚いた。

ノルウェーの市中および医療環境におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の疫学および spa 型の多様性

Epidemiology and spa-type diversity of meticillin-resistant Staphylococcus aureus in community and healthcare settings in Norway

F. Di Ruscio* , J.V. Bjørnholt, K.W. Larssen, T.M. Leegaar, A.E. Moen, B.F. de Blasio
* Norwegian Institute of Public Health, Norway

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 316-321


背景
ノルウェーではこの 10 年間に、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の発生率に顕著な上昇がみられる。ノルウェーは、MRSA の発生率が最も低い国の 1 つであり、病院環境において積極的な search and destroy 方針が実施されている。

目的
ノルウェーにおける市中感染型 MRSA および病院感染型 MRSA の報告率にみられる傾向を明らかにすること、ならびに病院環境の内外において MRSAの spa 型についてその多様性および循環状況を検討すること。

方法
2006 年から 2015 年にかけて、ノルウェーで報告された MRSA による感染症および保菌についてレジストリに基づく研究を実施した。市中感染型 MRSA および病院感染型 MRSA について spa 型の多様性および数を、生態学的多様性の新規指標(Hill数)を用いて比較した。

結果
本研究期間中、市中感染型 MRSA および病院感染型 MRSA の月あたりの報告率は、それぞれ 6.9 倍および 1.8 倍 に上昇していた。報告率の上昇は、保菌の方が感染症より急激であった。市中と病院の両環境において spa 型の分布は均等でなく、少数の spa 型が大部分を占め、多くは単独であった。spa 型の多様性は、市中感染型 MRSA の方が病院感染型 MRSA より、異なる spa 型の数が多く(685 対 481)、本研究期間に増加がみられた。しかし、大部分を占める主要な spa 型に関連する多様性は同様で、一定を維持していた。市中と病院の両環境において spa 型の推定重複率は高く、spa t002、t019 およびt008 の頻度が最も高かった。

結論
本研究の結果から、ノルウェーにおける市中感染型 MRSA と病院感染型 MRSA の疫学の間には強い関連があることが示唆される。市中感染型 MRSA の増加が速い傾向が今後数年も続くのであれば、医療環境における MRSA に対する現行のガイドラインおよび感染制御策を見直す必要があるかもしれない。

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監訳者コメント

心臓手術前の全患者に対する黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の鼻腔内保菌に対する普遍的除菌の 13 年にわたる経験:準実験研究(a quasi-experimental study)

Thirteen-year experience with universal Staphylococcus aureus nasal decolonization prior to cardiac surgery: a quasi-experimental study

A. Lemaignen*, L. Armand-Lefevre, G. Birgand, G. Mabileau, I. Lolom, W. Ghodbane, M-P. Dilly, P. Nataf, J-C. Lucet
*Hȏpital Bichat-Claude Bernard, France

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 322-328


緒論
心臓手術後の胸骨創感染症は重度の合併症である。予防策をとる中で、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の鼻腔内保菌に対する術前除菌が有効であることが、近年示されている。本準実験研究では、術前除菌が黄色ブドウ球菌に関連する胸骨創感染症の発生率に及ぼす影響を、19 年間にわたる前向きサーベイランスに基づいて評価した。

方法
分割による負の二項回帰を用いて、1996 年から 2014 年にフランスの大学病院 1 施設において、心臓手術後に再手術を必要とした黄色ブドウ球菌による縦隔炎の発生率の経時的変化を分析した。ムピロシンによる普遍的鼻腔内除菌が 2001 年 12 月に導入された。術前の黄色ブドウ球菌鼻腔内保菌と黄色ブドウ球菌による胸骨創感染症との関連を、2006 年から 2012 年の期間について分析した。

結果
心臓手術を受けた患者 17,261 例のうち、565 例(3.3%)が胸骨創感染症を発症し、181 例(1%)が黄色ブドウ球菌によるものであった。黄色ブドウ球菌による縦隔炎の発生率は、本研究期間を通じて有意に低下した(1996 年から 2001 年の 1.43% に対して、2002 年から 2005 年および 2006 年から 2014 年でそれぞれ 0.61% および 0.64%、P < 0.001)。分割による解析では、2002 年に有意な分割点が認められ、これは除菌の導入と対応していた。この介入にもかかわらず、術前の鼻腔内保菌(補正オッズ比 2.2、95%信頼区間 1.2 ~ 4.2)は、肥満、重篤な術前状態、冠動脈バイパス術、および弁置換術と冠動脈バイパス術の併用とともに、依然として黄色ブドウ球菌による縦隔炎の有意なリスク因子であった。

結論
心臓手術前の鼻腔内保菌に対する普遍的除菌は、黄色ブドウ球菌による縦隔炎を減らす上で効果的であった。黄色ブドウ球菌の鼻腔内保菌は、依然として黄色ブドウ球菌に関連する胸骨創感染症のリスク因子であった。

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監訳者コメント
19 年間という長期間にわたる前向きのサーベイランスの結果である。すでに既存の研究で心臓外科手術前の黄色ブドウ球菌の除菌により、術後の黄色ブドウ球菌による創部感染症が減少することは何度も報告されているが、除菌をしたとしても依然として黄色ブドウ球菌の鼻腔内保菌が、術後の黄色ブドウ球菌創部感染症のリスク因子であった。最近の研究では黄色ブドウ球菌の除菌治療を延長することで、さらに黄色ブドウ球菌による創部感染が減少するという報告もある1)。「除菌するか、しないか」の次の段階として「どう除菌するか」が議論される時期に来ているといえよう。

1) Saraswat MK, et al. Preoperative Staphylococcus aureus screening and targeted decolonization in cardiac surgery. Ann Thorac Surg 2017;104:1349-56.

新生児集中治療室(NICU)の大規模改修による常在メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の持続的伝播阻止の成功:介入研究の結果

Successful termination of sustained transmission of resident MRSA following extensive NICU refurbishment: an intervention study

A. Semple*, E. O’Currain, D. O’Donovan, B. Hanahoe, D. Keady, U. Ní Riain, E. Moylett
*National University of Ireland, Ireland

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 329-336


背景
新生児敗血症は、世界的に新生児病棟における罹患および死亡の主要原因である。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus aureus;MRSA)は、その主要な原因病原体となりつつある。多くの新生児病棟で、乳児における保菌および感染症の流行が認められ、その根絶は極めて困難なことが多い。

目的
新生児病棟の改修およびデザイン変更が MRSA 保菌の流行および感染症に及ぼす影響を評価すること。

方法_
アイルランド西部にある大規模大学付属教育病院 University Hospital Galway のレベル 2 ~ 3 の 14 床の1新生児病棟において 8 年間にわたる後向きレビューを実施した。新生児病棟の改修前後における各 4 年間のサーベイランス、保菌および感染症に関するデータを報告する。2008 年から 2015 年までの期間について、MRSA による保菌または感染症を有したすべての乳児に関する臨床的および微生物学的データを収集した。MRSA 分離株について分子タイピングデータを入手できた。分割時系列分析を用い、病棟改修を介入として分析した。

結果
当院の新生児病棟には、常在 MRSA 株の流行による持続的な伝播パターンが認められ、標準的な感染制御介入の反復実施にもかかわらず、これを根絶することができなかった。病棟の全面的な改修により、常在 MRSA 株の持続的伝播を止めることができた。当病棟の改修後、保菌率は低下し、活動性の感染症を発症する乳児はいなくなった。

結論
当院の新生児病棟において、病棟の全面的な改修およびデザイン変更により、MRSA 株の流行による持続的な伝播の阻止に成功したことを報告する。

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監訳者コメント
近年、微生物の水平伝播に医療環境表面が大きく関与していることが明らかになりつつある。本研究は NICU における MRSA の水平伝播に、医療環境表面が関係していることを間接的に示唆するものである。

新生児集中治療室におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)サーベイランスプログラムに対する薬剤に基づくネットワークモデルを用いた評価

Evaluating a neonatal intensive care unit MRSA surveillance programme using agent-based network modelling

N.D. Goldstein*, S.M. Jenness, D. Tuttle, M. Power, D.A. Paul, S.C. Eppes
*Christiana Care Health System, USA

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 337-343


背景
新生児集中治療室(NICU)におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus aureus;MRSA)のサーベイランスは一般的な感染予防策であるが、病棟におけるモニタリングの最適な実施頻度は明らかでない。

目的
様々なサーベイランスの実施頻度について、シミュレーションモデルを用いて比較すること。

方法
6 か月間にわたり乳児 52 例の NICU ネットワーク 100 件のシミュレーションを行い、MRSA の伝播について評価した。病棟全体のサーベイランスを1、2、3、4 週間ごとに行った場合について、NICU の現行方針である動的サーベイランス(スクリーニング陽性が 1 件以上の場合は毎週、それ以外の場合は 3 週間ごと)と比較した。各サーベイランス期間について、保菌を有する乳児に除菌レジメン(56%の効果)を実施し、利用可能であれば隔離室に移動させた。

結果
サーベイランスの頻度が高くなるほど MRSA 保菌を有する乳児の平均数が減少し、サーベイランス実施当たりの検出件数が2.9 例(4 週間ごとのモニタリング)と高かったのが、0.6 例(毎週のモニタリング)と低くなった。保菌が持続する時間の平均は、307 時間(4 週間ごとのモニタリング)から 61 時間(毎週のモニタリング)に短縮した。その一方で、隔離室の利用可能な割合は逆の関連を示し、サーベイランスの頻度が高くなるほど隔離室の利用可能な割合は低下した(隔離成功率は、4 週間ごとのモニタリングでは 61%であったのに対し、毎週のモニタリングでは 49%)。動的サーベイランス方針では、2 週間ごとのサーベイランスプログラムの場合と同様の成績であった。

結論
効果的な MRSA サーベイランスプログラムには、資源の利用可能性と、保菌期間の延長により生じ得る不都合な点および侵襲性疾患発症の可能性とのバランスを取ることが必要とされる。より頻回のモニタリングにより除菌レジメンの使用が増加する一方、隔離室の利用可能な割合も低下する。

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監訳者コメント
NICU における MRSA のスクリーニング検査実施頻度と MRSA 検出頻度や隔離頻度の関係について、シミュレーションを用いて評価した研究である。本研究ではスクリーニング検査実施頻度を増やした方が MRSA 検出頻度が低下するという結果であったが、MRSA 検出患者で除菌を行っているということも検出頻度や隔離頻度に影響を与えている。今後は様々な感染対策の有効性について、本研究のような実際のデータを用いたシミュレーションによる評価が主流になっていくのかもしれない。

アンゴラおよびサントメ・プリンシペの入院患児およびその親におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の高い鼻腔内保菌率

Frequent MRSA nasal colonization among hospitalized children and their parents in Angola and São Tomé and Príncipe

S. Rodrigues*, T. Conceição, I. Santos Silva, H. de Lencastre, M. Aires-de-Sousa
*Universidade Nova de Lisboa, Portugal

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 344-349


背景
院内獲得メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の鼻腔内保菌率は、以前にはアンゴラのルアンダの小児科病院 1 施設で 23%、サントメ・プリンシペの総合病院 1 施設では 18%と推定された。

目的
アンゴラおよびサントメ・プリンシペの病院 2 施設の入院患児およびその親における黄色ブドウ球菌/MRSA の保菌率を評価すること。

方法
2017 年に、2 か国の入院患児 127 例およびその親 129 例を対象に、黄色ブドウ球菌/MRSA 保菌の検査のために鼻腔スワブを採取した。分離株について、mecA および Panton-Valentine leukocidin(PVL)遺伝子の有無を検査し、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)、spa タイピング、複数部位塩基配列タイピング(MLST)、およびSCCmec タイピングによりその特徴を明らかにした。

結果
患児 127 例中 20 例(15.7%)およびその親 129 例中 13 例(10.1%)に、 MRSA 鼻腔内保菌が認められた。以下の 3 系統が MRSA 分離株の 88%を占めた:(i)PFGE A-ST5-SCCmec IVa(15 例、45%)、spa 型 t105 と関連し、アンゴラのみで回収、(ii)PFGE N-ST8-IV/V(7 例、21%)、spa 型 t008/t121 と関連し、サントメ・プリンシペのみで回収、(iii)PFGE B-ST88-IVa(7 例、21%)、spa 型 t325/t786 と関連し、両国で回収。患児/保護者(親)15 組には、同一の MRSA 株(8 例)またはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌株(7 例)の保菌が認められた。PVL は分離株の 25%で検出され、これには MRSA 2 株(ST30-V および ST8-IVa)が含まれた。.

結論
入院患児とその親は MRSA の重要なリザーバである。感染制御策では、市中への MRSA の拡散を最小限に抑えるために、入院患児の親に焦点を当てるべきである。

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監訳者コメント
MRSA 保菌患児の親も一定の確率で同じタイプの MRSA を保菌していることが示された。小児入院患者の管理においては親の協力は必須であるが、感染管理の観点からも手指衛生などを始め、親に協力してもらうことが重要と考えられる。

再入院患者におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の保菌持続性★★

Persistence of meticillin-resistant Staphylococcus aureus carriage in re-admitted patients

C.J. Chiew*, H.J. Ho, M.K. Win, A. Tan, J.W. Lim, B. Ang, A. Chow
*Tan Tock Seng Hospital, Singapore

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 350-354


病院に再入院したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の既知の保菌者を対象に、MRSA の保菌持続性に関して期間およびリスク因子を検討するため、後向きコホート研究を実施した。MRSA の保菌は、既知の保菌者の大部分において最後の退院日から 2 年まで持続したため、少なくともこの期間は再入院時のスクリーニングを実施すべきである。長期入院歴のある高齢患者は持続性保菌のリスクが高いため、重点を置いて標的スクリーニングの取り組みを実施すべきである。既知の保菌者における MRSA の持続性保菌リスクを減らすうえで、適切な時期の退院計画が重要となる。

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監訳者コメント
MRSA 保菌の期間は、再入院時の感染拡大リスクを考える際に極めて重要である。過去の文献においても 1 年後で 50%前後、2 年後は 20 〜 30%前後で保菌が持続することがわかっており、1 ~ 2年以上経過すると保菌割合の減少はプラトーに達する(CID2009:48;910)との報告もある。これは MRSA 保菌を持続する病態(糖尿病、呼吸器疾患などの基礎疾患)があるためと考えられ、本論文でも同様の結果であった。これまでは北米や欧州からの報告であり、シンガポールという東南アジアでのデータであり、医療環境の違いはあるものの MRSA の持続保菌期間については大差のない結果であった。また、高齢と長期入院は持続保菌のリスク因子であることも過去の報告と変わらなかった。

台湾におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)シークエンス型 8(USA300)の出現、伝播および系統発生

Emergence, transmission and phylogeny of meticillin-resistant Staphylococcus aureus sequence type 8 (USA300) in Taiwan

Y-C. Huang*, C-J. Chen, C-C. Kuo, M-C. Lu
*Chang Gung Memorial Hospital, Taiwan

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 355-358


1995 年から 2015 年 10 月の間に台湾で採取された 5,308 株のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)分離株のプールから、10 例の患者の 12 株の感染分離株を含む 27 株(0.51%)の USA300 分離株が同定された。2005 年に最初の 2 つの分離株が同定され、2010 年以来 23 株の分離株が採取されてきた。系統発生解析により、地域のすべての分離株は北米の分離株に密接に関連していることと、10 例の患者由来の 13 株の地域分離株からなるクレードの存在が明らかになった。MRSA USA300 は台湾において 2005 年またはそれ以前から存在し、2010 年以来同定頻度が増加している。台湾では北米からの USA300 の輸入後に地域伝播が発生している。

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監訳者コメント
従来 MRSA は病院内で獲得する耐性菌であったが、2000 年頃から米国において黄色ブドウ球菌による壊死性筋膜炎を含む皮膚軟部組織感染症が米国内で流行し、それが PVL(パントンバレンタインロイコシジン)という毒素を産生する MRSA であることがわかり、CA-MRSA と呼ばれるようになった。一方病院で感染する MRSA は HA-MRSA と呼ばれた。この CA-MRSA の代表が USA300 と呼ばれる MRSA 株であり、SCCmec はIV 型、MLST は ST8 型であることがわかっている。北米大陸を越えて、世界中にこの株がひろがり、日本でも 2010 年頃から集団発生例がいくつか報告されている。台湾においても同様に 2005 年頃から伝播がはじまっており、USA300 株をもつ無症状保菌者が増加していることが本論論文の調査で判明している。

レビュー:低濃度のベンザルコニウム塩化物曝露に対する微生物応答の適応

Adaptive microbial response to low-level benzalkonium chloride exposure

G. Kampf*
*University Medicine Greifswald, Germany

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e1-e22


ベンザルコニウム塩化物は医療において広く用いられる殺生物薬の 1 つであり、主に表面消毒薬および消毒洗浄剤に使用される。本レビューの目的は、細菌が低濃度のベンザルコニウム塩化物の曝露に適応する潜在力を評価することであった。評価した 57 の細菌種の多くで、最小発育阻止濃度(MIC)の最大 4 倍の上昇が認められた。パントエア(Pantoea)属菌、エンテロバクター(Enterobacter)属菌、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus)および大腸菌(Escherichia coli)の菌株または分離株において、強い適応性の、主に安定的な MIC の変化が示された(それぞれ、500 倍まで、300 倍まで、200 倍まで、100 倍まで)。適応後の MIC の最大値は、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)で 3,000 mg/L、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)で 2,500 mg/L、エンテロバクター属菌で 1,500 mg/L、大腸菌および S. saprophyticus で 1,000 mg/L であった。選択された抗菌薬(アンピシリン、セフォタキシム、セフタジジムなど)および消毒薬(臭化ジデシルジメチルアンモニウム[didecyldimethylammonium bromide]、塩化ジデシルジメチルアンモニウム[didecyldimethylammonium chloride]、トリクロサン、クロルヘキシジンなど)に対する交差耐性が一部の分離株で認められた。バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)complex および大腸菌において、トランスポーターおよび排出ポンプ遺伝子の著しいアップレギュレーションが認められた。適応分離株は、ベンザルコニウム塩化物を主成分とする消毒薬の推奨濃度では死滅しない可能性が高い。患者ケアにおける、ならびに消費者製品や家庭製品などの他のすべての環境におけるベンザルコニウム塩化物の使用は、厳しく評価されるべきであり、健康への有益性または正当な公衆衛生への有益性が証明された適応に限定するべきである。少なくとも目的の用途において、有効性、忍容性、皮膚または素材への適合性が劣らない場合、選択圧がより低いまたは選択圧がない他の消毒薬を選ぶべきである。

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監訳者コメント
ベンザルコニウム塩化物は、陽イオン界面活性作用をもち、かつ低レベル消毒薬でもあり、環境整備に幅広く使用されている。本論文は種々の細菌に対して低濃度曝露をさせることで、抵抗性(本文では適応)が生じ、死滅させるにはより高い濃度が必要となり、日常的な使用はこの状況が起こる可能性がある。殺菌性が低下した結果、消毒薬としての効果と有益性が低下する危険性があることをこのレビューでは強調している。結論的には低濃度での曝露は細菌の MIC を 500 倍まで上昇させ、特にグラム陰性菌においてその傾向が強いことが示された。さらに、他の消毒薬や抗菌薬にも交差耐性を示し、トランスポーターや排出ポンプの機能上昇も認められた。しかしながら、使用現場においては試験管内の消毒抵抗性と菌塊がつくるバイオフィルムによる抵抗性とが混在することもあり、さらなる検討が必要である。

緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は実験室および模擬臨床環境においてオクテニジンに適応し、クロルヘキシジンおよび他の殺生物薬に対する耐性増加を引き起こす

Pseudomonas aeruginosa adapts to octenidine in the laboratory and a simulated clinical setting, leading to increased tolerance to chlorhexidine and other biocides

M.J. Shepherd*, G. Moore, M.E. Wand, J.M. Sutton, L.J. Bock
*Public Health England, Salisbury, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e23-e29


背景
オクテニジンは新生児集中治療室および熱傷集中治療室における感染予防に頻繁に用いられるが、そこでは緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が院内アウトブレイクを引き起こしてきた。

目的
緑膿菌に対するオクテニジン使用の有効性および影響を検討すること。

方法
数日にわたり緑膿菌の臨床分離株 7 株を、濃度を上昇させたオクテニジンに曝露させた。緑膿菌の親株およびオクテニジン適応緑膿菌に関し、様々な抗菌薬の適応度、1 分、5 分、24 時間後の最小殺菌濃度、および最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。病院の排水トラップ 1 つから分離した緑膿菌の集団に対する、オクテニジンおよびクロルヘキシジンの MIC も検討した。排水トラップは希釈したオクテニジン製剤に1 日 4 回 3 か月間曝露させたものであった。

結果
緑膿菌の浮遊培養の一部は、推奨されている曝露時間で、使用中のオクテニジン製剤の使用濃度の 50%を超える濃度において生存した。緑膿菌の 7 株は、濃度を上昇させたオクテニジンを継続的に曝露した後も安定に適応した。適応によりオクテニジン製剤およびクロルヘキシジンへの耐性が 32 倍まで増加した。1 株では、抗緑膿菌薬の MIC の上昇も引き起こした。模擬臨床環境で複数菌種に対して継続的にオクテニジンを曝露した後に、緑膿菌のオクテニジンおよびクロルヘキシジンに対する耐性も 8 倍までの増加が認められたが、この耐性はオクテニジンの除去により失われた。

結論
オクテニジン製剤の誤った使用は、不適切な汚染除去、ならびに緑膿菌のオクテニジンに対する耐性の増加さえ引き起こす可能性があり、他の殺生物薬(消毒薬)への交差耐性につながることもある。

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監訳者コメント
緑膿菌による院内感染症は集中治療領域、とくに新生児と熱傷の分野では致命的な感染症となる。オクテニジンは、皮膚や粘膜からの吸収がなく、毒性も低く、接触性皮膚炎もなく、さらに細胞障害性もクロルヘキシジンに比し低いことがわかっていおり、その結果皮膚の除菌、創部洗浄、消毒剤として 0.05 ~ 0.3%の濃度で幅広く使用されている。本論文の実験によりオクテニジン抵抗性の緑膿菌がオクテニジン曝露により発生することが判明した。さらにアミノグリコシドへの交差耐性を示す株が認められ、今後オクテニジンの使用方法について考慮する必要がある。

アデノウイルスの病院アウトブレイク後に実施した、流行性角結膜炎の一般的な原因であるアデノウイルス血清型 8、19、37 に対するアルコール系溶液の有効性の検討

Investigation of the efficacy of alcohol-based solutions on adenovirus serotypes 8, 19 and 37, common causes of epidemic keratoconjunctivitis, after an adenovirus outbreak in hospital

H. Uzuner*, A. Karadenizli, D.K. Er, A. Osmani
*Kocaeli University, Turkey

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e30-e36


背景
手指消毒薬は院内感染予防において非常に重要である。本研究の実施病院においてアデノウイルスによる流行性角結膜炎が頻発しているため、アデノウイルスに対するアルコール系溶液の効果を検討することが必要であった。

目的
手指消毒薬としてよく使用されるアルコール系溶液に関して、アデノウイルス血清型 8、19、37に対する有効性を検討すること。

方法
流行性角結膜炎の一般的な原因であるアデノウイルス血清型に対する、エタノール、イソプロパノール、クロルヘキシジンジグルコン酸塩(グルコン酸クロルヘキシジン)、n- ブタノールおよびこれらの消毒薬の異なる配合剤の有効性を検討した。消毒成分の効果は、EN-14476 に従った定量的懸濁試験法を用いて検討した。消毒薬は以下の通りに調整した。70%エタノール、70%イソプロパノール、70%エタノール+ 0.5%グルコン酸クロルヘキシジン、70%イソプロパノール+ 0.5%グルコン酸クロルヘキシジン、60%エタノール+ 10%イソプロパノール、60%エタノール+ 10%イソプロパノール+ 0.5%グルコン酸クロルヘキシジン、60%エタノール+ 10%イソプロパノール+ 1% n- ブタノール。消毒薬の効果は 30、60、120 秒の時点で評価した。

結果
60%エタノール+ 10%イソプロパノール+ 1% n- ブタノールにおいて、ウイルスタイターが最も大きく減少した。本溶液はアデノウイルス血清型 8、19、37 を、それぞれ 2.5 log10、3 log10、2.5 log10 減少させた。ウイルスタイターの減少が最も少なかったのは、70%エタノール+ 0.5%グルコン酸クロルヘキシジンおよび 70%イソプロパノール+ 0.5%グルコン酸クロルヘキシジンであった。これらの配合剤は、アデノウイルス血清型 19、37 を 1.62 log10 減少させた。すべての消毒薬は、EN-14476 によって効果の下限とみなされる 4 log10 を満たさないレベルの有効性を示した。

結論
本研究で使用したアルコール系溶液は、アデノウイルスの各血清型に対して十分な効果が認められなかった。さらに研究を行い、別のアルコール系溶液の効果を調査する必要がある。

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監訳者コメント
エンベロープを持たないアデノウイルスは消毒薬に比較的抵抗性であるとされるが、血清型ごとの効果を調べた報告は非常に少ない。今回の報告では低濃度のn- ブタノールの添加がエタノールの効果を強める結果となったが、n- ブタノールの添加が実用的であるかを含め、今後のさらなる検討が待たれる。

多剤耐性グラム陰性菌に対する次亜塩素酸ナトリウムの有効性

Efficacy of sodium hypochlorite against multidrug-resistant Gram-negative bacteria

A.T. Köhler*, A.C. Rodloff, M. Labahn, M. Reinhardt, U. Truyen, S. Speck
*University of Leipzig, Germany

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e40-e46


背景
ヒト医学および獣医学での治療失敗を引き起こす多くの細菌において、抗菌薬耐性の増加が認められてきた。消毒は医療現場での感染予防管理において必要不可欠な条件の 1 つである。塩素化合物は世界的に見て費用対効果が良く入手が容易である。

目的
次亜塩素酸ナトリウムの多剤耐性グラム陰性菌に対する有効性を明らかにすること。

方法
マクロ液体希釈法を用いて最小発育阻止濃度(MIC)を決定した。殺菌効果は、定性的および定量的懸濁試験を行い、その後、ステンレス鋼担体上で機械的処理なしの実地試験を行って測定した。ドイツ応用衛生協会(German Association for Applied Hygiene)のガイドラインに従った。

結果
結果は方法によって著しく異なった。次亜塩素酸ナトリウムの MIC は 0.1%または 0.2%であった。定性的懸濁試験により、殺菌濃度は MIC と比較して最大 500 倍低いことが明らかになった。これらの試験では、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は有意に感受性が低かった(P = 0.0025)のに対し、定量的懸濁試験では菌株間の有意差は認められなかった(P > 0.05)。実地試験により、接触時間 1 分では次亜塩素酸ナトリウムの殺菌濃度は 0.8 ~ 0.32%であり、接触時間がより長いとさらに殺菌濃度が低くなることが明らかになった。1 分では、クレブシエラ(Klebsiella)属菌 5 株は有意に感受性が低い(P = 0.0124)のに対し、緑膿菌の感受性の低さは確認されなかった。有機物負荷は有意に殺菌活性を阻害したのに対し、接触時間の影響はわずかであった。異なる試験結果により、細菌の感受性や耐性の評価にあたり、MIC の決定および定性的懸濁試験は不十分なアプローチである可能性が明確に示された。

結論
次亜塩素酸ナトリウムは、緑膿菌、アシネトバクター(Acinetobacter)属菌、クレブシエラ属菌を効果的に減少させ、とりわけ有機物が存在しない場合に効果が顕著であった。菌株および菌種ごとに特異的な感受性の違いは認められたが、概して多剤耐性グラム陰性菌の次亜塩素酸ナトリウムに対する耐性は高くないことが明らかになった。

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監訳者コメント
本検討では、A. pittiiA. baumanniiP. aeruginosaK. oxytocaK. pneumoniaeの 5 菌種が供試された。各菌種に対する次亜塩素酸の MIC は、いずれも実用上達成できる次亜塩素酸濃度よりも低かったが、菌種・菌株のみならず方法によっても異なる結果が得られており、その要因の解釈と方法の標準化は今後の検討課題でもある。さらに今回の結果は実用上、(1)有機物(蛋白質)の存在によって効果は大きく左右されること、(2)揮発による塩素濃度の低下によっても効果は下がること、に十分注意して解釈する必要があると考える。

バイオフィルムに注意!多様な医療表面上に存在する細菌を含む乾燥バイオフィルム;多施設共同試験★★

Beware biofilm! Dry biofilms containing bacterial pathogens on multiple healthcare surfaces; a multi-centre study

K. Ledwoch*, S.J. Dancer, J.A. Otter, K. Kerr, D. Roposte, L. Rushton, R. Weiser, E. Mahenthiralingam, D.D. Muir, J.-Y. Maillard
*Cardiff University, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e47-e56


背景
医療用のデバイスに関連する湿性バイオフィルムは広く研究されており、医療関連感染(HCAI)とのつながりもよく認識されている。しかし医療現場の環境表面上の乾燥バイオフィルムの存在については、ほとんど注意が払われてこなかった。

目的
病院の環境表面上の乾燥バイオフィルムの出現率、分布、多様性に関して検討すること。

方法
英国の別々の病院 3 施設から、最終的に洗浄済みの 61 の物品を入手した。培養法および走査型電子顕微鏡検査を用いて乾燥バイオフィルムの存在を調査した。バイオフィルム内の細菌の多様性は、リボソーム RNA 遺伝子間スペーサー解析-ポリメラーゼ連鎖反応および次世代シークエンシングを用いて解析した。

結果
61 のサンプルのうち 95%から複数の菌種を含む乾燥バイオフィルムを回収した。走査型電子顕微鏡検査によって乾燥バイオフィルムの存在量および複雑性を確認した。すべてのバイオフィルムは HCAI に関連するグラム陽性菌を含んでおり、サンプルの 58%でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)が発育した。乾燥バイオフィルムは、採取された物品の種類や、どの病棟で採取されたかにかかわらず、物理的組成が類似していた。病院2 施設から採取された乾燥バイオフィルムは主にブドウ球菌性 DNA を含んでいるのに対し、もう 1 つの病院の表面では Bacillus 属菌 DNA がより多く認められ、菌種の優位性には違いが認められた。

結論
医療現場でよく使用される物品において、病原細菌を含む乾燥バイオフィルムは、ほぼ普遍的に存在する。HCAI の伝播における乾燥バイオフィルムの役割は過小評価されている可能性がある。病院の環境表面に対する効果のない洗浄および消毒の実施により、そのリスクがさらに悪化するかもしれない。

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監訳者コメント
これまで我々が認識してきたバイオフィルム(いわゆるwet biofilm)は、医療関連感染の約65%に関与するという。一方、乾燥バイオフィルム(dry biofilm)の存在が近年明らかにされ、関連する菌種と HCAI への関与について検討が始まったばかりである。今回、医療機関および採取場所によって差はあるものの、ブドウ球菌、バチルス属が多くを占めたことは、保菌と伝播経路を考えるうえで非常に興味深く、また培養でこの 2 菌種の検出歴がなくとも、HCAI を引き起こしてきた例の一部は、乾燥バイオフィルムで説明できたかもしれないという推測も可能であろう。さらなる検討と知見の蓄積に期待したい。

人為的に汚染させた手袋着用の手指の消毒は、カテーテルバルブへの表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)伝播を低減させる

Disinfection of artificially contaminated gloved hands reduces transmission of Staphylococcus epidermidis to catheter valves

O. Assadian*, P.N. Humphreys K.J. Ousey
*Medical University of Vienna, Austria

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e57-e59


肉眼的に汚染されていない手袋が、同一患者への複数の臨床行為の際に使用される状況において、手袋着用の手指の消毒がますます推奨されている。このような消毒の実践が、臨床行為の際の細菌伝播の低減に寄与することを示すデータはないので、標準化された実験的研究を実施した。手袋着用の手指を消毒済みまたは未消毒の条件で、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)で汚染された鶏の胸肉に接触させた後、滅菌カテーテルバルブに接触させた。汚染された手袋により、カテーテルバルブに対し 5.18 log10 コロニー形成単位(cfu)の表皮ブドウ球菌が伝播した。汚染された手袋の消毒によって、伝播数は 0.78 log10 cfu と有意に減少した。手袋着用の手指の消毒は伝播リスクを低減させる可能性がある。

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監訳者コメント
手袋の上から手指衛生を行うことは、手袋の素材との相性もあり必ずしも推奨されていない。手袋を装着し続けることは医療従事者自身の曝露を低減する効果があっても、患者対応としては手袋を必要に応じて頻回に交換し、この間に手指衛生を行うことが基本となる。

医療環境において Codonics D6000TM 除菌システムを用いた短波長紫外線による携帯型タブレットデバイスの汚染除去

Ultraviolet-C decontamination of hand-held tablet devices in the healthcare environment using the Codonics D6000TM disinfection system

M. Muzslay*, S. Yui, S. Ali, A.P.R. Wilson
*University College London Hospitals NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e60-e63


携帯電話やタブレット型コンピューターは、微生物によって汚染される可能性があり、医療従事者と患者間における病原体の交差感染の潜在的なリザーバとなりうる。医療現場において、携帯電話の汚染を低減する方法に関して広く一般的に受け入れられているガイダンスはない。本研究の目的は、Codonics D6000TM 短波長紫外線(UV-C)除菌デバイスの有効性を検証することである。連日の除菌により、画面と保護ケースの汚染が有意に低減した(試験群)が、すべての保護ケースの汚染が除去できたわけではなかった(対照群)。除菌前の保護ケースの好気性菌のコロニー数中央値は、対照群では 52 cfu/25 cm2 (四分位範囲:33 ~ 89)、試験群では 22 cfu/25 cm2 (四分位範囲:10.5 ~ 41)であった。

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監訳者コメント
かつて白衣を紫外線殺菌して使用する器具が国内でも普及したが、照射が及ばないポケットの内側などにたいする配慮がないなどの点もあり使用されなくなった。紫外線殺菌の特徴として菌種によっては紫外線殺菌に時間がかかるなど課題がある。紫外線照射直後には菌がかなり低減していても、時間経過とともに残存していた菌が再度増殖することを本研究では指摘している。

脳神経外科用器具の洗浄の改善による医原性クロイツフェルト・ヤコブ病のリスク低減

Reducing the risk of iatrogenic Creutzfeldt-Jakob disease by improving the cleaning of neurosurgical instruments

A. Smith*, S. Winter, D. Lappin, A. Sherriff, I. McIvor, P. Philp, N. Suttner, S. Holmes, A. Stewart
*,University of Glasgow, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e70-e76


背景
英国において変異型クロイツフェルト・ヤコブ病を診断された患者は計 178 例で、保存された虫垂・扁桃組織に基づく有病率は最大で2,000 人あたり 1 人と推定されている。このことにより、感染症はまれだが、保菌は比較的多いことが示唆される。以前の研究の著者らは、手術器具を使用後と洗浄前に湿潤環境に保持することが、洗浄効果に有用であることを確認している。近年、英国の保健省・危険な病原体に関する諮問委員会(Department of Health/Advisory Committee on Dangerous Pathogens)は、洗浄後の手術器具の清浄度の閾値を、器具あたり蛋白質量 5 µ g 未満とすることを推奨している。

目的
脳神経外科用器具の清浄度を定量化すること、および洗浄の改善のための費用対効果策を検討すること。

方法
器具の蛋白質定量化のための 2 つの方法を使用した。1 つはドデシル硫酸ナトリウム溶出法とオルトフタルアルデヒド反応を用いた国際規格(ISO15883 規格)に基づくもので、もう 1 つは in-situ での蛋白質蛍光検出システム(商品名:ProReveal)で、器具あたりの蛋白質量が得られる。市販の屋内用の洗浄前湿潤剤の有効性に関する in-vitro 試験を、標準条件下で、人為的な試験用汚染物質とステンレススチール製のディスクを用いて実施した。in-vitro でのもっとも優れた洗浄剤の in-vivo 評価を、開頭術用器具一式で実施した。

結果
ProReveal 技術により、脳神経外科用器具 187 個のうち 163 個(87%)で、器具あたりの残存蛋白質が 5 µg 未満であることが確認された。英国国営医療サービス事業(National Health Service;NHS)の独自の商品であるプラスチック製バッグと滅菌湿潤創傷パッドの使用は、有効性に関して市販の洗浄前湿潤剤と同等であり、有意に安価であった。

結論
脳神経外科用器具の in-situ での蛋白質量低値、ならびに器具の湿潤状態保持における有益な効果が確認されたが、それ以外に器具の負荷パターンなど洗浄の重要な管理点も観察する必要がある。

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監訳者コメント
脳神経外科用器具の清浄度について Synoptics Health 社製の『ProReveal』検査は蛍光での微量蛋白質測定装置と従来法により残留蛋白質を測定した検証研究である。この方法で精度高く維持しつつ測定の経費が削減できると報告している。

マイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)によるヒータークーラーユニット汚染への対処:オーストラリアの Queensland 州における組織化された国際・国内的分野間の連携★★

Responding to Mycobacterium chimaera heater-cooler unit contamination: international and national intersectoral collaboration coordinated in the state of Queensland, Australia

J. Robertson*, S. McLellan, E. Donnan, K. Sketcher-Baker, J. Wakefield, C. Coulter
*Patient Safety and Quality Improvement Service, Australia

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e77-e84


背景
オーストラリアの Queensland 州における開心術後のマイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)感染症の index case(発端症例)の診断により、リスクの軽減を図る集中型の協調的対処が促された。

目的
M. chimaera によるヒータークーラーユニット汚染と患者感染に対する公衆衛生上の対処法について記述すること。

方法
M. chimaera によるヒータークーラーユニット汚染の脅威に対処するために、国内・国際的な協議によって公衆衛生部門の戦略が開発された。非結核性抗酸菌の届出と選択された処置に関するデータの統合を実施し、ヒータークーラーユニットの使用の可能性を入院記録によって特定した。水試料採取と試験プロトコールを標準化した。情報公開と患者への通知を行った。

結果
オーストラリアの Queensland 州において、現在までに患者 1 例で播種性 M. chimaera 感染症が診断されている。5 つの病院の LivaNova Stockert 3T ヒータークーラーユニット 12 個のうち 10 個(83%)が、検査で M. chimaera 陽性であった。全体で患者 5,650 例に対し、M. chimaera 曝露の潜在的リスクについて郵送で通知した。遠隔治療コールセンターの使用はわずかであった。他の 2 つのデバイス製造業者により製造された体外式膜型人工肺ヒーターユニットからも M. chimaera が検出され、そのうち 4 個は試運転前の検査で陽性であった。

結論
心臓手術における M. chimaera 曝露の可能性に対する Queensland Health 当局の対処法は、迅速な国際協力によって最適化された。州規模の協力は、接触患者に対する透明性のある一貫したアプローチと、公衆への潜在的リスクに関する情報提供を確実にした。継続的なリスク管理、臨床認識、臨床検査による診断の枠組みが確立された。Queensland 州では M. chimaera 感染症のさらなる症例は特定されていない。

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監訳者コメント
LivaNova Stockert 3T ヒータークーラーユニットの出荷時の非結核性抗酸菌であるM. chimaeraによる汚染は全世界に波及している。全世界で 5,000 台販売されており、うち国内には 500 台程度が販売されている。国内では Queensland Health のような取り組みはなされておらず、対応はすべて各医療機関に依存していることが課題である。

医療環境における乾燥表面バイオフィルムの移行:媒介体としての医療従事者の手指の影響

Transfer of dry surface biofilm in the healthcare environment: the role of healthcare workers’ hands as vehicles

D. Chowdhury*, S. Tahir, M. Legge, H. Hu, T. Prvan, K. Johani, G.S. Whiteley, T.O. Glasbey, A.K. Deva, K. Vicker
*Macquarie University, Australia

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e85-e90


背景
乾燥表面バイオフィルムは、病院内に長期にわたり存続し、医療関連感染症の伝播に重大な影響を及ぼす可能性がある。

目的
乾燥表面バイオフィルムが、病院表面から医療従事者の手指に移行する可能性があるかどうかを検証すること。

方法
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の乾燥表面バイオフィルムを、CDC Biofilm Reactor®︎のポリカーボネートクーポンとガラスクーポン上で 12 日間増殖させた。ポリカーボネート上で 1.8 × 106、ガラスクーポン上で 8.8 × 105 の細菌が増殖した。手袋を着用しない手指の示指と母指でクーポンを 30 cm の高さに持ち上げ、ウマ血液寒天培地に連続 19 回接触させることにより、移行について試験した。移行した細菌数をコロニー形成単位により測定した。乾燥表面バイオフィルムの湿潤がバイオフィルム移行に及ぼす影響について、5%中性洗剤で 5 秒間処置して試験した。

結果
乾燥表面バイオフィルムの細菌の 5.5% ~ 6.6%が、1 回の接触で手指に移行し、次いで、約 20%が 1 回の接触でウマ血液寒天培地に移行し、全体的な移行率はポリカーボネートクーポンで 1.26%、ガラスクーポンで 1.04%であった。洗浄剤処置は、クーポンからの細菌除去にほとんど影響を及ぼさなかったが、ポリカーボネートクーポン上で増殖したバイオフィルムについては、ウマ血液寒天培地への移行を 5.2%と有意に増加させた(P < 0.001)。手袋を着用しない手指によって多数の細菌が複数の媒介物に移行した。ポリカーボネートクーポンの 3 分の 1 で、最初の連続 5 回の接触中に 1,000 超のコロニーが移行した。乾燥表面バイオフィルムの 1 回の接触後 19 回まで、感染を引き起こすのに十分な細菌が移行した。

結論
乾燥表面バイオフィルムの細菌は、1 つの媒介物から複数の媒介物へと手指によって移行する。これは、乾燥表面バイオフィルムが病原体の持続的な環境要因となりうることを示唆するものである。

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監訳者コメント
環境表面の消毒の重要性が指摘されている。本研究は、実験的に乾燥表面を作り、そこに接触した手への菌の付着を調べたものである。本結果から、一度手指に付着した菌は、手を介して拡がることが示唆されたが、「乾燥表面バイオフィルムが病原体の持続的な環境要因となりうる」という結論に結びつけるには少し無理があるように思えた。

病院敷地の建物の解体中の空中浮遊アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)芽胞の濃度と、アゾール耐性を含む侵襲性アスペルギルス症の患者リスクの判定

Airborne Aspergillus fumigatus spore concentration during demolition of a building on a hospital site, and patient risk determination for invasive aspergillosis including azole resistance

L. Wirmann*, B. Ross, O. Reimann, J. Steinmann, P-M. Rath
*University Hospital Essen, Germany

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e91-e97


背景
免疫不全患者における侵襲性アスペルギルス症は、病院または病院隣接地での解体と関連している。近年、侵襲性アスペルギルス症のもっとも一般的な薬剤であるアゾールに耐性を示すアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)の臨床株が西欧で出現しており、世界的に拡散している。

目的
病院建物の解体により発症した患者において、アゾール耐性を含む侵襲性アスペルギルス症の潜在的リスクを究明すること。

方法
解体前・解体期間中・解体後のエアサンプリング、アゾール耐性のスクリーニング、非感受性分離株の遺伝子タイピング、および非感受性分離株を解体期間のアゾール耐性侵襲性アスペルギルス症患者の菌株と比較する。

結果
A. fumigatus 芽胞の平均濃度は、解体前(17.5 コロニー形成単位[cfu]/m3)、解体中(20.8 cfu/m3)(P = 0.26)、解体後(17.7 cfu/m3)(P = 0.33)の 3 期間において有意差がなかった。臨床医により確認された侵襲性アスペルギルス症症例数の解体期間と解体前年との比較では、有意差がみられなかった(44 例 対 42 例)。A. fumigatus 分離株 200 株のうち 30 株(15%)はアゾール耐性であった。アゾール耐性の環境・臨床分離株のマイクロサテライトをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅し、遺伝子タイピングを行ったところ、多クローン性の分布を示した。

結論
戸外での解体作業中、予防策の実施によって、免疫不全患者においてアゾール耐性を含む侵襲性アスペルギルス症リスクは増加しないことが、結果より示唆される。これらの結果を確認するために、さらなら前向き研究が必要である。

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監訳者コメント
ビルの解体工事中のアスペルギルスの飛散と免疫不全患者の感染症発症について調べた論文である。解体中のエアサンプリングでは A. fumigatus の明らかな飛散の増加が見られた。この研究では、感染リスクの増加は見られなかったものの、リスクとして捉え、対策を行う重要性が再確認された。この研究では、解体現場での散水、病棟の工事現場に面した窓の締め切り、免疫不全患者が移動する際のマスク着用など複数の対策がとられていた。

電気化学的活性化溶液を用いた U 字管の自動化洗浄および消毒により、病院の複数の洗面台の微生物汚染リスクを同時に最小限に抑える

Minimizing microbial contamination risk simultaneously from multiple hospital washbasins by automated cleaning and disinfection of U-bends with electrochemically activated solutions

E.C. Deasy*, E.M. Moloney, M.A. Boyle, J.S. Swan, D.A. Geoghegan, G.I. Brennan, T.E. Fleming, M.J. O’Donnell, D.C. Coleman
*University of Dublin, Trinity College Dublin, Ireland

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e98-e104


背景
病院の洗面台の U 字管における微生物バイオフィルムと関連する感染症のアウトブレイクの報告はますます増加傾向にある。以前の研究では、病院仕様ではない 1 つの洗面台において、U 字管の自動化汚染除去の試作法の有効性が確認された。その研究では、塩水から生成した 2 種類の電気化学的活性化溶液、すなわち洗浄特性を有する陰極液と消毒特性を有する陽極液が使用された。

目的
多忙な病院診療部における病院仕様の洗面台のU字管 10 本の汚染を同時に除去するために、大規模な自動化電気化学的活性化溶液を用いた処理システムを開発し試験すること。

方法
洗面台の排水口、U 字管、近位の廃水用配管に対して、自動的に 10 分間の陰極液処置、その後の 10 分間の陽極液処置を行うようなプログラムで制御されるシステムを開発し、週 3 回、5 か月にわたり実施した。未処置の洗面台 6 個を対照とした。U字管の定量的な細菌数を Columbia 血液寒天培地、Reasoner’s 2A 寒天培地、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)選択培地において、処置後および 24 時間後に測定した。

結果
U 字管処置による平均細菌密度(コロニー形成単位/スワブ)は、対照と比較して 3 logを超える減少を示し、すべての培地で減少は有意に大きかった(P < 0.0001)。24 時間後、すべての培地において、処置した U 字管の平均細菌数の有意な増加はみられなかった(P > 0.1)。試験中にもっともよく検出された微生物は緑膿菌であった。電子顕微鏡を用いた未処置の U 字管の内部試験では、洗面台の排水口接合部におよぶ密なバイオフィルムが観察されたのに対して、処置した U 字管にはバイオフィルムが存在しなかった。

結論
電気化学的活性化溶液を用いた、病院内の洗面台の複数の U 字管の同時自動化処置は、微生物汚染を一貫して最小限にするので、感染症の関連リスクも最小限に抑えられる。

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監訳者コメント
最近、病棟や ICU に設置されたシンクやシンク配水管が感染の伝播に関連した可能性が否定できないという報告が増えている。本研究は、食塩水を電気分解することで発生する酸性水とアルカリ水を用いて、病院に設置された洗面台の排水管の消毒と洗浄を行うことにより、細菌の増殖やバイオフィルムの発生を抑えることができた、というものである。今後の、臨床での応用研究が期待される。

OprD 介在性のイミペネム耐性を示す緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によるアウトブレイクにおける集中治療室の移設の影響および水道水の役割

Impact of intensive care unit relocation and role of tap water on an outbreak of Pseudomonas aeruginosa expressing OprD-mediated resistance to imipenem

A. Tran-Dinh*, C. Neulier, M. Amara, N. Nebot, G. Troché, N. Breton, B. Zuber, S. Cavelot, B. Pangon, J.P. Bedos, J. Merrer, D. Grimaldi
*Centre Hospitalier De Versailles, France

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e105- e114


背景
集中治療室の意図しない移設が、OprD 介在性のイミペネム耐性を示す緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(PA-OprD)による保菌/感染症のリスクに及ぼした影響を評価すること。

目的
主要目的は、緑膿菌分離株における PA-OprD の割合を、集中治療室の意図しない移設の前後で比較することであった。副次的目的は、PA-OprD の保菌/感染症を有する患者に対する汚染経路としての水道水の役割を評価することであった。

方法
2013 年 10 月から 2015 年 10 月にかけて単一施設観察前後比較研究を実施した。2014 年 10 月末に集中治療室が移設された。集中治療室に 48 時間以上入院していた患者から分離されたすべての緑膿菌株を対象とした。集中治療室において水道水検体を 3 か月ごとに採取した。患者および水道水から分離された PA-OprD 株について、パルスフィールド・ゲル電気泳動により遺伝子型決定を行った。

結果
合計で緑膿菌臨床分離株 139 株および水道水検体 19 個について分析を行った。PA-OprD 株の割合は、31% から集中治療室移設後には 7.7%に低下した(P = 0.004)。すべての PA-OprD 臨床分離株についてそれぞれ独自の遺伝子型が認められた。驚くべきことに、水道水には移設前後の期間において単一の PA-OprD 株の定着が認められたが、この単一クローンは臨床検体からは分離されたことがなかった。

結論
集中治療室の移設は、イミペネム耐性緑膿菌株の顕著な減少と関連した。患者から分離された PA-OprD 株が多クローン性であったこと、また水道水から患者への汚染伝播が認められなかったことから、緑膿菌による内因性の保菌/感染症に及ぼす環境の影響は複雑であることが示される。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
集中治療室移設の前後での、緑膿菌の臨床分離株の比較および、水道水中の緑膿菌の検出を比較を行った論文である。移設後も、水道水から単一株の緑膿菌が検出されたことに疑問を感じた。

病院内の単一集中治療室における手洗いシンク利用行動の分析

Characterizations of Handwashing sink activities in a single hospital medical intensive care unit

M. Grabowski*, J.M. Lobo, B. Gunnell, K. Enfield, R. Carpenter, L. Barnes, A.J. Mathers
*University of Virginia, School of Medicine, USA

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e115-e122


背景
手洗いシンクの排水管は、院内アウトブレイクにおける抗菌薬耐性細菌の潜在的なリザーバであると示されることが増えつつある。しかし、このような感染を促進する可能性のある行動パターンは、いまだに不明である。

目的
集中治療室(ICU)において、多剤耐性グラム陰性菌のシンク排水管をリザーバとした定着および患者への院内伝播を促進する可能性のある行動を明らかにすること。

方法
大学病院 1 施設にある ICU の 4 つのシンク(病室 2 室および患者用化粧室 2 室)において、人感センサー付きカメラにより捕捉した匿名化された行動と、定期的な直接観察を組み合わせた質の高い調査を実施した。

結果
病室(3,625 件)および付属の化粧室(1,185 件)について、60 日間にわたりシンクに関するビデオ 4,810 件の分析を行った。カメラが作動したがシンクの利用行動は発生しなかった偽陽性率は 38%(4,810 件中 1,837 件)であった。行動の分析を行ったビデオ 2,973 件中、観察された行動は 5,614 件で、評価の結果、37.4%が医学的ケア、29.2%が付随する行動、17.0%が手指衛生、7.2%が患者栄養、5.0%が環境ケア、4.2%が非医学的ケアであった。手洗いは全行動のわずか 4%(5,614 件中 224 件)であった。その後に得られたビデオ 2,748 件のサブ解析からさらに 56 種類の行動が分類され、それらにおいては、細菌の増殖を促すような、様々な栄養物がシンク内に廃棄されていた。

結論
ICU の手洗いシンクでは、手指衛生以外のいくつかの行動が日常的に行われていた。これらの行動は、院内伝播および排水管内での細菌増殖の促進をもたらす機序となる可能性がある。シンク排水管が多剤耐性細菌伝播のリザーバとなり得ることが明らかになったことから、病院のワークフローおよびシンク利用におけるデザイン変更が必要と考えられる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
近年カルバペネム耐性腸内細菌科細菌などのアウトブレイクでシンクが関係している可能性のあることが度々報告されている。本研究は「手洗い」シンクで実際にスタッフが何を行っているかをビデオカメラを用いて検討した研究で、実際には器具の洗浄や栄養剤の調整など手洗いとは関係のない行動が行われていた。日本でも手洗いシンクとそれ以外のシンクの使い分けを指導する機会が多いと思われるが、仮に区分していたとしても、実際にはそれは遵守されていないのかもしれない。非常に面白い着眼点の研究である。

救急ケア環境において空中微生物と表面微生物との間に関連はあるか?

Is there an association between airborne and surface microbes in the critical care environment?

J. Smith*, C.E. Adams, M.F. King, C.J. Noakes, C. Robertson, S.J. Dancer
*NHS Lanarkshire Hospital, NHS Lanarkshire, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e123-e129


背景
集中治療室(ICU)における空気の質に関するデータはほとんどなく、また受け入れられている基準はない。ICU 内の空気中病原体と院内獲得感染症リスクとの間に関連があるのか、あるとすればどのような関連なのかは、いまだに不明である。

目的
第1 に ICU における空気および表面の環境汚染の関連を調べること、第 2 に環境汚染とICU で獲得されたブドウ球菌感染症との関連について調べること。

方法
10 床の人工換気患者の ICU において 10 か月間にわたり 10 回のサンプリング日に患者、空気および環境のスクリーニングを実施した。患者近傍の接触箇所(N = 500)および空気(N = 80)について、総コロニー数および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のスクリーニングを行った。空気中のコロニー数と表面上のコロニー数の比較を、空気および表面のバイオバーデンについて提唱されている基準に従って行った。患者について、ICU で獲得されたブドウ球菌感染症の徹底的なモニタリングを行った。

結果
全体で、表面 500 カ所中 235 カ所(47%)で生菌数の基準(2.5 cfu/cm2 以下)を満たしていなかった。受動的サンプリングによる空気サンプルの半数(40 個中 20 個:50%)は、空気汚染指標の基準(2 cfu/9 cm プレート/時)を満たしておらず、また能動的サンプリングによる空気サンプル 40 個中 15 個(37.5%)は、清浄な空気の基準(10 cfu/m3 未満)を満たしていなかった。落下菌測定法によるデータは、表面における合格/不合格の割合により近く、表面の基準値を 0 ~ 20 cfu/cm2 で評価した場合に、空気の指標と表面との間の一致度が最も高かった。空気の場合と比較して、衛生上の合格/不合格の結果を最も高く反映すると考えられた表面の基準は 5 cfu/cm2 であった。ICU で獲得されたブドウ球菌感染症の検出率は、サンプリング実施日の間の 72 時間において、ベッドあたりの表面上のコロニー数と関連していた(P = 0.012)。

結論
受動的空気サンプリングにより、表面から得られたデータと同様の定量データが得られる。集中治療室における感染症リスクを評価する上で、落下菌測定法はルーチンの環境スクリーニングの代用として役立ち得る。

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監訳者コメント
病院の改修・解体工事における感染対策評価(infection control risk assessment;ICRA)では、ICU はハイリスクエリアに相当する。ICRA は基本的にはアスペルギルスなどの糸状菌を対象としたものであるが、本研究からは MRSA などのような一般細菌も関与するようである。空中の細菌が落下するから環境が汚染するのか、汚染した環境から細菌が舞い上がるのか、因果関係は明らかでない部分もあるが、いずれにせよ一定の清浄化は必要であるし、それが ICU や手術室ならなおさら厳密な清掃が求められるであろう。

6 施設の病院において銅浸漬処理を施したベッド用に複合的に用いられるリネンと患者用ガウンが医療関連感染症の発生率に及ぼした影響

Effect of copper-impregnated composite bed linens and patient gowns on healthcare-associated infection rates in six hospitals

J.P. Butler*
*Sentara Healthcare, Norfolk, USA

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e130-e134


背景
病院で使用するリネンおよび患者用ガウンには接触および汚染の発生が多くみられ、院内感染病原体の内因性の間接接触による空気伝播を引き起こす可能性がある。最近Sentara Healthcareでは、殺生物活性を有する酸化銅に浸漬したリネンを系列病院で採用した。

目的
リネンの交換により、医療関連感染症の発生率が低下したかどうかを評価すること。

方法
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)および多剤耐性病原体(MDRO)による医療関連感染症の発生率を、同様の患者背景を有するSentara Healthcareの 6 病院(計 1,019 床)において、殺生物処理を行っていない従来のリネンを殺生物作用のある酸化銅に浸漬したリネンに交換した前後(それぞれ期間 A1、A2 および A3、ならびに期間 B1、B2 および B3)で、並行する 3 期間(90 日、180 日および 240 日)で比較した。

結果
期間 B1、B2 および B3 では期間 A1、A2 および A3 と比較して、院内での C. difficile による医療関連感染症が 10,000 患者日あたりそれぞれ 61.2%(P < 0.05)、41.1%(P < 0.05)および 42.9%(P < 0.01)、MDRO による医療関連感染症が 1,000 患者日あたりそれぞれ48.3%(P > 0.05)、36.4%(P > 0.05)および 19.2%(P > 0.05)、C. difficile および MDRO による医療関連感染症を統合した場合は 1,000 患者日あたりそれぞれ 59.8%(P > 0.01)、39.9%(P < 0.05)および 37.2%(P < 0.05)減少した。

結論
分析を行ったSentara Healthcareの 6 施設の病院において、殺生物活性のある酸化銅に浸漬したリネンの使用により、C. difficile による医療関連感染症と、C. difficile および MDRO による感染症を統合した発生率の両方が有意に減少した。MDRO による医療関連感染症にも同様の現象が認められたが、統計学的有意性に達しなかった。これはおそらく、MDRO による医療関連感染症の発生率が、分析を行った病院において非常に低かったためと考えられる。

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監訳者コメント
海外では銀や銅などの抗菌素材を用いた様々な物品が医療現場で応用されている。私もアメリカの学会会場で銅を素材として用いたシンクやカーテン、そして本研究のようなリネンが展示されているのを見たことがある。本研究ではこのリネン採用後に CDI が減少したことを報告している。一般にこのような感染対策の前後比較によって 1 つの要素の変更が原因であることを証明するのは難しいことが多いが、1 つの参考にはなるであろう。

再使用可能な内視鏡用送水ボトル:本当に毎日交換する必要があるのか?

Reusable endoscopic water bottles: is daily renewal really necessary?

D. Jouck*, K. Magerman, L. Bruckers, L. Waumans, A. Forier, M. Blommen, D. Walgraeve
*Jessa Hospital, Belgium

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e135-e137


大部分のガイドラインは、内視鏡用送水ボトルを少なくとも毎日、新たに殺菌したまたは高レベル消毒を行った送水ボトルと交換することを推奨している。しかし、これらの推奨はすべて、主として専門家の意見やアウトブレイクの報告に基づいたものである。著者らは、送水ボトルを最長 5 日間使用する消化管内視鏡検査部門で用いられる送水ボトルの水の質を検討した。その結果から、送水ボトルの再使用を 1 日を超えて行うことは不適切であることが示された。送水ボトルを毎日交換することを勧める専門家の意見は、5 日後に交換するよりも理にかなっており、より安全な選択肢である。

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監訳者コメント
消化器内視鏡による薬剤耐性腸内細菌科細菌のアウトブレイクがしばしば報告されており、主には消化器内視鏡の消毒が不十分であることが原因とされているが、消化器内視鏡が適切に消毒されていたとしても、送水ボトル中の水が汚染されていると、せっかく消毒した内視鏡が再汚染することになる。わが国で 2013 年に作成された消化器内視鏡の感染制御に関するマルチソサエティ実践ガイドでは、送水ボトルは「使用後に洗浄と乾燥を毎日行い、少なくとも週 1 回滅菌する」となっている。本研究はこの推奨を支持するものである。皆さんの施設では送水ボトルは適切に管理されているだろうか。

病院の気管支鏡に関連するマイコバクテリウム・マシリエンゼ(Mycobacterium abscessus subsp. massiliense)の伝播による偽性アウトブレイク

Hospital bronchoscopy-related pseudo-outbreak caused by a circulating Mycobacterium abscessus subsp. massiliense

N. Fernandes Garcia de Carvalho*, A.C. Rodrigues Mestrinari, A. Brandão, L. Souza Jorge, C. Franco, H. da Silveira Paro Pedro, M.G. de Lucca Oliveira, P.E. Blaz Trombim, D. Brandão, L. Ferrazoli, E. Chimara
*Instituto Adolfo Lutz, Brazil

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e138-e141


サンパウロ州の Adolfo Lutz Institute では、多くの医療部門においてマイコバクテリア検査を実施しているが、2008 年に、同病院で気管支鏡検査を受けた患者においてアウトブレイクの可能性があると同定した。本研究は、分離株のクローン関連性を分析することを目的とした。患者 28 例、ならびに気管支鏡 1 本および自動化内視鏡再処理機 4 機から採取した水から分離されたマイコバクテリウム・マシリエンゼ(Mycobacterium abscessus subsp. massiliense)分離株に、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)で高い類似性が認められた。この分離株は給水システムでは検出されなかったことから、感染患者により気管支鏡が汚染され、その後の患者においてさらなる培養偽陽性結果が認められたと考えられた。

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監訳者コメント
非結核性抗酸菌(NTM)は環境中のいたる場所に認められ、バイオフィルムを形成するため、一旦器具に付着定着すると容易に洗浄消毒では殺菌除去することは不可能となる。過去にブラジルで NTM の上水道給水システム内への定着による偽性アウトブレイクがあり、本例もその可能性が疑われた。調査では給水から NTM が検出されなかったことから、気管支鏡を介した汚染と判断されている。NTM のなかには 2%グルタラールに抵抗性が示す株が存在しており、ブラジルのガイドラインでは消毒薬として 2%グルタラールではなく0.2%の過酢酸を推奨している。本例でも消毒薬を過酢酸へ変更するとともに、配水管を交換することにより、この偽性アウトブレイクは終息している。

内視鏡汚染の検出におけるアデノシン三リン酸測定の妥当性★★

The validity of adenosine triphosphate measurement in detecting endoscope contamination

C.E. McCafferty*, D. Abi-Hanna, M.J. Aghajani, G.T. Micali, I. Lockart, K. Vickery, I.B. Gosbell, S.O. Jensen
*Ingham Institute for Applied Medical Research, Australia

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e142-e145


背景
内視鏡検査は、消化管疾患の診断および管理にとって極めて重要であるが、感染症伝播のリスクがある。オーストラリアでは、患者の感染症予防のため、内視鏡に対する微生物学的検査を月 1 回から3 か月に 1 回行う。内視鏡の使用頻度はこの検査頻度より高いため、このサーベイランス法では感染症伝播が発生する前に汚染を検出できない可能性がある。

目的
高レベル消毒前の内視鏡汚染を検出する上での、標準的な微生物学的培養と並行してのアデノシン三リン酸(ATP)測定の使用について評価すること。これにより得られた結果を用いて、ATP およびコロニー数(cfu/mL)のレベルを下げるうえでの用手洗浄の有効性を確認することも目的とした。

方法
Liverpool Hospital の内視鏡部門において、臨床用途の胃内視鏡 17 本および大腸内視鏡 24 本から、高レベル消毒を行う前に洗浄の 3 段階においてサンプル採取を行った。次いで、これらのサンプルのコロニー数および ATP 測定値を計測した。

結果
大腸内視鏡から採取したサンプルにおける cfu/mL と相対発光量(RLU)の間の相関は 0.497(95%信頼区間[CI]0.28 ~ 0.66)であった(P < 0.0001)。胃内視鏡から採取したサンプルにおける cfu/mL と RLU の間の相関は 0.377(95%CI 0.08 ~ 0.61)であった(P = 0.0138)。RLUとcfu/mL の測定値には、予備洗浄と用手洗浄の後で有意な減少が認められた(P < 0.005)。

結論
高レベル消毒前に採取したサンプルで測定した ATP と cfu/mL の間に有意な相関が認められた。予備洗浄および用手洗浄により、ATP および微生物量が有意に減少することが示された。ATP 測定は、ごくわずかな訓練で数分以内で実施でき、容易に解釈できる結果を得ることができる。本研究の結果は、高レベル消毒後の内視鏡汚染を検出するためのスクリーニングツールとしての ATP 測定の有用性に関する研究がさらに必要であることを示している。

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監訳者コメント
消化器内視鏡(食道胃内視鏡と大腸内視鏡)の洗浄レベルの評価として、オーストラリアではで内視鏡の細菌培養により汚染を定期的にチェックすることがガイドラインで決められている。細菌培養はコロニー数測定のため少なくとも一晩の培養が必要であり、洗浄効果を直ちに知ることはできない、一方、ATP 測定は環境清掃や手指衛生の程度を簡便に評価する方法として利用されている。検体採取から測定結果表示まで数分であり、測定機器も安価である。しかしながら、細菌数と ATP の値には強い相関がないことが実用を阻んでいる。一方で、本論文のように、細菌数と弱いながらの相関があり日常的な洗浄評価方法として培養法の補助に使用できるかもしれない。ただし、現場で使用する酵素洗浄剤は ATP 値を上昇させる「正の効果」があるため、実際に現場で使用するにはさらに検討が必要である。

日常的ケア活動において微生物伝播をもたらし得るリスク行動:縦断的観察症例研究★★

Risk behaviours for organism transmission in daily care activities: a longitudinal observational case study

M. Lindberg*, B. Skytt, B-M. Wågström, L. Arvidsson, M. Lindberg
*Faculty of Health and Occupational Studies, Sweden

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e146-e150


背景
医療スタッフの感染予防行動に関する理解は、長年、医療関連感染症の予防にとって中心的な要素であると見なされてきた。不十分な手指衛生遵守状況および器材/機器/表面の不適切な取り扱いは、微生物伝播を引き起こし得る主要なリスクとなる。状況に応じた諸条件の果たす役割、ならびに医療スタッフの感染予防行動に関するさらなる研究が必要とされる。こうした知識が得られれば、行動を変化させるための新たな介入戦略を開発することが可能になろう。

目的
日常的ケア活動において長期的に微生物伝播をもたらし得るリスク行動を明らかにすること。

方法
患者に関わる活動を実施している医療スタッフに対する非構造化観察を、18 か月にわたり 12 回実施した。

結果
微生物伝播をもたらし得るリスク行動は、日常的ケア活動において頻繁に発生しており、この結果から、その発生は長期的にある程度一定であることが示された。ケア活動の中断は、微生物伝播のリスクを高めることに寄与し、その結果として医療関連感染症につながり得る。

結論
医療関連感染症のリスクを低減するための介入は、以下のことに取り組む戦略に焦点をあてる必要がある:手指衛生遵守率、器材/機器/作業時の服装(プラスチックエプロンの未着用など)/環境表面の取り扱い、ケア活動の中断(医療スタッフの感染予防行動を十分変容可能である場合)。

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監訳者コメント
医療スタッフの感染予防対策を理解するためには、「行動分析」重要であるにもかかわらず、これまでは手指衛生の観察や介入に注目するあまり、微生物伝播の危険行動の頻度についての分析が十分されていない。行動に影響する因子としては、大きく動機付けと職場環境の 2 つがある。前者は、他人の行動のような社会的刺激、患者ケアの度合い、自己防御の必要性、ポスター掲示などの視覚的合図である。後者は、手指衛生の時間的余裕や利便性、感染予防策の正しい知識、遵守率の情報開示、職場の雰囲気などである。これらの因子を改善することで、行動変容につながり、微生物伝播が減ることが予測される。

中心ライン関連血流感染症の低減を目的とした全州プログラムにおける病院別介入の実施

Implementation of tailored interventions in a statewide programme to reduce central line-associated bloodstream infections

D.B. Assis*, G. Madalosso, M.C. Padoveze, R.D. Lobo, M.S. Oliveira, Í. Boszczowski, J.M. Singer, A.S. Levin
*Center of Disease Control, São Paulo State Health Department, Brazil

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e163-e168


背景
低 ~ 中所得国における中心ライン関連血流感染症(CLABSI)に対する実施戦略について調べた研究はこれまでにほとんどない。

目的
成人集中治療室における CLABSI 発生率を低減するための病院別介入を実施すること。

方法
ブラジル、サンパウロ州において State Health Department は実施戦略を 2 サイクル実行した。サイクル 1(56 病院)は探索的とし、サイクル 2(77 病院)は、第 1 サイクルで生成された仮説を確認するためにデザインされ、各 3 相(介入前、介入、介入後)から構成された。両サイクルには、医療従事者の知識の評価、実践の観察、および CLABSI 発生率の月 1 回の報告などが含まれた。サイクル 1 では対数‐正規混合モデルを用いて CLABSI 発生率の低下と有意に関連する変数を選択した。サイクル 2 ではCLABSI 発生率の評価を行った。

結果
医療従事者の実践は介入後に改善した。サイクル 1 では、CLABSI 発生率の低下は、最初の CLABSI 発生率が 1,000 カテーテル日あたり 7.4 を超えていた病院(P < 0.001)および末梢挿入式中心静脈カテーテル(PICC)の使用を導入した病院(P = 0.01)でより顕著であった。最初の CLABSI 発生率が高かった病院ではシミュレーションにより、発生率が 36%(95%信頼区間 9 ~ 63)低下すると予測されることが示され、これは介入の種類によらなかった。サイクル 2 では、介入期間中に全体的な CLABSI 発生率の低下がみられ、平均発生率は介入後にさらに低下したものの、発生率の 90 パーセンタイル値が高かった。

結論
実施戦略は感染症発生率に対して、実施された具体的な介入とは独立して影響を及ぼした可能性がある。しかし、介入後期間に発生率低下を持続できるかが依然として課題である。

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監訳者コメント
実施された介入内容は、3 つのカテゴリーに分けられる。挿入時は、鎖骨下静脈の選択、挿入前の手指消毒、皮膚消毒にアルコール含有消毒剤を使用、身体全体を覆うドレープの使用とキャップ・マスク(マキシマルバリアプレコーション=MBP)、滅菌ガウン、滅菌手袋の使用である。カテーテル操作時では、ハブの消毒、操作前の手指消毒である。さらにカテーテル挿入部ドレッシング操作に関しては、透明ドレッシング剤の使用、皮膚消毒にアルコール含有消毒剤の使用、ドレッシング交換前後の手指消毒、ドレッシング部位の乾燥と清潔保持である。本論文では上記の介入項目の中で多くの改善が認められたが、挿入時の介入項目うち手指消毒と MBP で有意な改善が認められなかった。

韓国の集中治療室における 10 年間にわたる器具利用率の動向:サーベイランスの新しい側面としての器具利用率

Trends in device utilization ratios in intensive care units over 10-year period in South Korea: device utilization ratio as a new aspect of surveillance

E.J. Kim*, Y.G. Kwak, S.H. Park, S.R. Kim, M.J. Shin, H.M. Yoo, S.H. Han, D.W. Kim, Y.H. Choi, J.H. Yoo, KONIS Steering Committee
*Ajou University School of Medicine, Republic of Korea

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e169-e177


背景
医療器具関連感染は患者安全に関連する重要な課題の 1 つである。医療器具関連感染率を低下させるためには、不必要な器具の利用を減らすことが重要である。

目的
Korean National Healthcare-associated Infections Surveillance System(KONIS)を通じて収集された、任意参加した病院の 10 年にわたる器具利用率の経時動向を検討すること。

方法
本研究には 2006 年から 2015 年に KONIS に参加した集中治療室 190 室における器具利用率が含まれた。器具利用率は、器具利用日数対患者入院日数の比率として算出した。プールした器具関連感染発生率および器具利用率は参加した毎年算出し、1 年ごとの動向を分析した。

結果
1 年ごとの人工呼吸器利用率は 0.40 から 0.41 へと有意に上昇し(F = 6.27、P < 0.01)、尿路カテーテル利用率は有意差はないものの 0.83 から 0.84 へと上昇し(F = 1.66、P = 0.10)、中心ライン利用率は 0.55 から 0.51 へ低下したものの有意差はなかった(F = 1.62、P = 0.11)。サブグループ解析において、「内科 ICU」(F = 2.79、P < 0.01)および「900 床超の病院」(F = 3.07、P < 0.01)は人工呼吸器利用率の有意な上昇に関連していた。

結論
韓国において、人工呼吸器利用率は 1 年ごとの有意な上昇傾向を示した。尿路カテーテル利用率および中心静脈ライン利用率は、有意ではないが低下傾向を示した。医療器具利用率を確実に低下させるためには努力が必要である。

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監訳者コメント
高度医療は多くの医療器具を長期にわたって体内に挿入あるいは装着することとなり、その結果器具が微生物の侵入門戸となる。侵入した細菌は、そこで定着増殖し、細菌感染症を引き起こし、時に致命的な感染症をとなりうる。したがって、血管内留置カテーテル、尿道留置カテーテル、挿管による人工呼吸器などの使用は、医療器具関連感染症と密接に関係し、その管理については徹底した感染対策が必要となる。しかし、根本的にはこれらの医療器具を使用しない、あるいは使用してもできる限り短期間で抜去することが、医療器具関連感染症を起こさないための最良の方法である。本論文では 300 床以下の施設は組み込まれておらず、参加施設は韓国の全病院の約 62%であり、患者の重症度が不明など、母集団に偏りがあるため、この結果でもって韓国全体を語ることはできないが、主要な急性期病院での状況を知ることはできる。

短期型末梢静脈カテーテル関連血流感染症を減少させるための介入:発生率および死亡率への影響

Interventions to decrease short-term peripheral venous catheter-related bloodstream infections: impact on incidence and mortality

P. Saliba*, A. Hornero, G. Cuervo, I. Grau, E. Jimenez, D. Berbel, P. Martos, J.M. Verge, C. Tebe, J.M. Martínez-Sánchez, E. Shaw, L. Gavaldà, J. Carratalà, M. Pujol
*Bellvitge University Hospital, Spain

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e178-e186


背景
短期型末梢静脈カテーテルは医療関連血流感染症の重要な感染源の 1 つであり、また予防可能な死亡原因の 1 つである。

目的
短期型末梢静脈カテーテル関連血流感染症に関連する発生率および死亡率を低下させるために行われた介入の有効性を評価すること。

方法
介入には、末梢静脈カテーテル関連血流感染症の継続的なサーベイランス、エビデンスに基づく勧告と対象病院固有のデータを参考に定めたカテーテル挿入と維持管理に関する予防策の実行、現場スタッフの啓蒙活動、病棟回診による院内ガイドラインの遵守の評価が含まれた。ポアソン回帰モデルを用いて年率の動向を推定した。

結果
2003 年 1 月から 2016 年 12 月までに、大学病院 1 施設の入院患者において、末梢静脈カテーテル関連血流感染症 227 件のエピソードが特定された。患者の平均年齢は 67 歳(標準偏差 14 歳)、69%は男性であり、Charlson スコアの中央値は 3(四分位範囲 2 ~ 5)であった。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)によるものは 115 件(50.7%)であった。30 日死亡率は 13.2%であった。介入の実行後、末梢静脈カテーテル関連血流感染症のエピソードは 30 件(10,000 患者・日あたり 1.17 件、2003 年)から 8 件(10,000 患者・日あたり 0.36 件、2016 年)へと有意に減少した。黄色ブドウ球菌が引き起こしたエピソードは、18 件(10,000 患者・日あたり 0.70 件、2003 年)から 3 件(10,000 患者・日あたり 0.14 件、2016 年)へと減少し、死亡数は 7 例(10,000 患者・日あたり 0.27 例、2003 年)から 0 例(10,000 患者・日あたり 0.00 例、2016 年)へと減少した。

結論
サーベイランス、集学的な戦略の実行、ならびに医療従事者の院内ガイドライン遵守に関する定期的な評価の実行により、末梢静脈カテーテル関連血流感染症の持続的な減少がもたらされた。この減少は黄色ブドウ球菌による血流感染症の発生率およびそれに関連した死亡率に大きな影響を与えた。

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監訳者コメント
末梢カテーテル関連感染症および血流感染症の疫学と予防については、カテーテルの使用頻度が莫大であることに比して、情報・エビデンスが少なく、また注目されにくい状況が続いていた。本検討は、複数の対策を有機的に複合させた組織的な活動・介入を長期間行った成果を示したものである。医療事情の差はあるものの、今回の結果は、本邦で常時 900例の入院がある病院でも月間 1 例末梢カテーテル関連菌血症が発生するかどうか、ということになる。継続することもまた非常な労力と工夫を必要とする。一読をお勧めする。

バイオフィルム関連のカテーテル感染症治療を目的とするエタノールロック療法の至適レジメン:in vitro 試験

The optimal ethanol lock therapy regimen for treatment of biofilm-associated catheter infections: an in-vitro study

B. Alonso*, M.J. Pérez-Granda, A. Rodríguez-Huerta, C. Rodríguez, E. Bouza, M. Guembe
*Instituto de Investigación Sanitaria Gregorio Marañón, Spain

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e187-e195


背景
エタノールロック療法は、カテーテル関連血流感染症の保存的な管理を目的とする抗菌薬の代替治療の 1 つとして用いられている。しかし、レジメンまたは用量に関して明確な合意には達していない。

目的
細菌および真菌のバイオフィルムの代謝活性低下を目的とする、十分に低濃度のエタノールを含むエタノールロック溶液を見つけること。

方法
in vitro モデルを用いて、24 時間であらかじめ形成した黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC29213、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis、臨床分離株)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)ATCC33186、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)ATCC14058、大腸菌(Escherichia coli)ATCC25922 のバイオフィルムに対し、6 つの異なる時点で、60 IU のヘパリン含有および非含有の 3 つの濃度のエタノール(25%、40%、70%)を試験した。バイオフィルムの代謝活性低下はテトラゾリウム塩アッセイを用いて測定し、エタノールロック療法は代謝活性が 90%を超えて低下した場合に成功とみなした。その後、最も成功したレジメンのエタノール濃度のみについて、エタノールロック療法の各レジメンの終了から 24 時間以内と 7 日後に、再成長の阻害を調査した。

結果
40%エタノール+60 IU のヘパリンを、24 時間、72 時間、および24 時間を 7 日間施行するレジメンにおいてのみ、エタノールロック療法の最大の効果が達成された(P < 0.05)。しかし、いずれのレジメンも 7 日間の治療の間に 45%の再成長阻害に達することはなかった。

結論
我々の in vitro データによれば、細菌および真菌のバイオフィルムの代謝活性をほぼ根絶するために、40%エタノール+ 60 IU のヘパリンの 72 時間投与は十分なものである。エタノールロック療法後の菌の再増殖を検討するため、今後も研究が必要である。

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監訳者コメント
本研究では 5 菌種について、エタノールロック(エタノール濃度25%、40%、70%)を単回施行(2 時間施行、24 時間施行、72 時間施行)、複数日施行(1 日2 時間を 7 日間施行、1 日 3 時間を 7 日間施行、24 時間を 7 日間施行)した結果を比較したものである。総じて、エタノール濃度を 40%以上に保ち、さらに長い接触時間を取ることがバイオフィルム抑制に有効といえた。しかしながら再成長阻害に対する効果は十分でなかった。つまり連続して長時間接触させても取り除けるわけではないので、抑制が弱まれば容易に増殖しうることを意味する。本研究はヒト血清を用いてはいるものの in vitro の検討であり、抗菌薬ロックとの併用を含む、実臨床への応用とその効果については、まだ予測しがたい面が大きい。

発展途上国の新生児集中治療室(NICU)におけるクロルヘキシジン浴の中心ライン関連血流感染に対する効果

Effect of chlorhexidine baths on central-line-associated bloodstream infections in a neonatal intensive care unit in a developing country

D. Cleves*, J. Pino, J.A. Patiño, F. Rosso, J.D. Vélez, P. Pérez
*Fundación Valle del Lili-Icesi University, Colombia

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e196-e199


新生児において、医療関連感染、特に中心ライン関連血流感染(central-line-associated bloodstream infections;CLABSI)は悩ましい問題である。本研究では準実験的研究を介して、発展途上国(コロンビア)のNICU 1 室におけるクロルヘキシジン浴の CLABSI 率への影響を示す。準実験的研究は 62 か月(2012 年 1 月から 2017 年2月)にわたり実施され、クロルヘキシジン浴のプロトコールが実行された 2014 年 7 月の前後で 2 期に分けられた。1,000 中心ライン日あたりの CLABSI 率は、プロトコールの実行後に 8.64 から 4.28 へ低下した。クロルヘキシジン浴の導入は新生児における CLABSI の件数を減少させるように思われる。

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監訳者コメント
本検討では 2%クロルヘキシジンに浸漬した 2 枚の清拭布を用い(1 枚は上半身用、もう1 枚は下半身用)、体重 1 ㎏以上は生後 2 日目から 1 日 1 回、1 ㎏未満は生後 7 日目から週 2 回、清拭を行った。清拭による物理的除去が有効であった面もあると思われ、S. epidermidisEnterobacterSerratia 菌血症では減少がみられた。しかしながらS. aureusKlebsiella 菌血症は増加しており、総じて菌種をまたいだ減少を示した訳ではなかった。NICU 内での S. aureusKlebsiella 発生について情報はないが、清拭でコントロールできる範囲は限定的で、NICU 内の種々の状況を勘案した、発生抑制につながる複数の方策を併用することではじめて CLABSI が抑制できることを改めて示唆しているように思われる。
未熟児・新生児におけるクロルヘキシジンの使用については、皮膚組織への影響や体内に吸収されての影響など今後評価を十分におこなっておく必要がある。安易に試みるべき、予防措置ではない。

汚染リスクを最小化するためのニードルレスコネクターのスクラブ手技★★

Scrubbing technique for needleless connectors to minimize contamination risk

K. Satou*, R. Kusanagi, A. Nishizawa, S. Hori
*Evaluation Centre, R&D Headquarters, Terumo Corporation, Japan

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e200-e203


本研究の目的は、汚染リスクを最小化するためのニードルレスコネクターの適切なスクラブ手技を検討することであった。細菌の物理的除去を目的とする極めて効果的なスクラブ手技を実証するため、ニードルレスコネクターをゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)の芽胞で汚染し、その後スクラブした。本研究により、最も細菌の除去率が高いのは、動脈圧迫止血とほぼ等しい力をアクセスポートに加え、アルコール綿でアクセスポートを一直線にスクラブし、さらに新しいアルコール綿を使ってこの手順をもう一度繰り返す方法であることが示された。

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監訳者コメント
needleless connector、いわゆる閉鎖式輸液セット用のコネクター部分は、表面に凹凸があるため菌を十分に拭うことができず、さらに複雑な内部構造のためそれが繁殖しやすく、カテーテル関連感染症・菌血症の原因となることがかねてより指摘されてきた。本検討では、芽胞を付着させたコネクターをモデルとし、様々なスクラブ法による除去率の違いを調査している。臨床上、貴重な情報であると思われる。一読をお勧めする。

重症患者における緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に起因する侵襲的デバイス関連感染:10 年にわたる進化

Invasive device-associated infections caused by Pseudomonas aeruginosa in critically ill patients: evolution over 10 years

F. Álvarez-Lerma*, P. Olaechea-Astigarraga, M. Palomar-Marítnez, M. Catalan, X. Nuvials, R. Gimeno, M.P. Gracia-Arnillas, I. Seijas-Betolaza, ENVIN-HELICS Study Group
*Hospital del Mar, Spain

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e204-e208


2007 年から 2016 年の 10 年にわたり緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が原因で引き起こされた侵襲的デバイス関連感染を、ENVIN-HELICS レジストリ(スペインの集中治療室 200 室)のデータに基づいて評価した。緑膿菌のわずかな減少が見られ大腸菌(Escherichia coli)が病因の首位であった直近の 2 年間を除き、緑膿菌は首位の病原体であった。研究期間を通して、緑膿菌に起因する感染症の割合は 12.0%から 14.6%の間のままであった。イミペネム、メロペネム、セフタジジム、セフェピム、タゾバクタム・ピペラシリンに対する耐性株は有意な増加が認められた。多剤耐性株、ならびに超多剤耐性株と汎多剤耐菌株の合計も増加した。抗緑膿菌抗菌薬に対する耐性は依然として懸案事項の 1 つである。

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監訳者コメント
スペインでは ICU で発生した感染症のサーベイランスシステムが稼働しており(ENVIN-HELICS レジストリ)、本検討ではこのデータベースの中から VAP、血管内カテーテル関連菌血症、カテーテル関連尿路感染症を侵襲的デバイス関連感染症として集計している。そして VAP の 19%、カテーテル関連菌血症の 6%、カテーテル関連尿路感染症の 12%が緑膿菌によるものであったが、驚いたことにカルバペネム系の約半数、セフタジジム、セフェピム、タゾバクタム・ピペラシリンの約 4 割が既に耐性になっていた。ICUにおける重症な医療関連感染の治療手段が失われる過程をみているようで、慄然とした思いにかられる。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.