JHIサマリー日本語版トップ

レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

果敢に戦うこと:感染予防におけるフェイクニュースの予期せぬ影響と、文脈が重要な理由

Fighting the good fight: the fallout of fake news in infection prevention and why context matters

A. Peters*, E. Tartari, N. Lotfinejad, P. Parneix, D. Pittet
*University of Geneva Hospitals and Faculty of Medicine, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 365-370


誤報は以前からあるとはいえ、フェイクニュースが世界の隅々にまで到達しうる範囲とスピードは近年特有の現象である。感染予防・制御の領域では、実践科学の分野とプロセスへの真摯な姿勢が、「不快な振動音」とフェイクニュースの被害からわれわれを防御するものと信じたい。この誤った認識によって、医療従事者は、誤報が公衆衛生に及ぼす悪影響を過小評価することになる。本稿では、感染予防・制御の領域と公衆の間で何が起こっているのか、その関連性に焦点を当てる。目的は、医学界と公衆の間で情報がいかに歪められ、増幅されているかを調査することと、さらに注意すべき問題のいくつかの概要を示すことである。管理が不十分な 1 件の研究でも、公衆衛生に深刻な悪影響を及ぼす可能性があること、そして、優れた管理の研究がねじまげられ、虚偽の内容を人々に信じさせる可能性があることを示した多くの症例研究に注目する。ピアレビュー無しで出版するオンラインジャーナルの公開と拡散という現在のシステムにおいて、「不快な振動音」とフェイクニュースは相当な被害を急速にもたらしうる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
フェイクニュースに振り回されると医療は混乱する。たとえば、それは施設内での単純な医療者の不注意で不適切な理解から発生する場合もあるし、国際的な有名科学雑誌への論文であったりしてもおかしくはない。情報のすべては信用できるのかどうかが問われる時代となった。

英国の手術部位感染症サーベイランスにおける急性期病院の今後の優先事項

Future priorities of acute hospitals for surgical site infection surveillance in England

G. Godbole*, C. Wloch, P. Harrington, N.Q. Verlander, S. Hopkins, A.P. Johnson, T. Lamagni
*Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 371-377


背景:
英国における 1997 年の Surgical Site Infection(SSI)Surveillance Service の着手以降、プログラムが継続的に拡大したことで、病院によるサーベイランスの対象とする手技に柔軟性が増した。プログラムがその後も病院のニーズに合致していることを確認することが常に重要である。

目的:
サービスの今後の指針を提供する手段として、サーベイランスの優先事項を評価し、理解するために、National Health Service(NHS)のすべての急性期医療施設を対象に調査を実施した。

方法:
英国 NHS の急性期医療施設の感染制御チームにウェブベースの調査を配信し、以下について確認し、順位付けするよう求めた。(i)現行の SSI サーベイランスの実施理由(ii)今後の SSI サーベイランスにおいて優先する手術カテゴリー(iii)それらのカテゴリーを優先する理由。

結果:
調査を配信した 161 の医療施設のうち 84(52%)から回答を得た。SSI サーベイランス活動を促進する因子として、ケアの質の評価がもっとも多いことが確認された。優先領域にかなりの多様性がみられ、最優先事項として 24 のさまざまな手術カテゴリーが選択された。15 以上の医療施設により実施された手術のうち、帝王切開(2.7)、人工股関節置換術(2.8)、冠動脈バイパス術(2.9)がもっとも上位に順位づけられた。現行のサーベイランスプログラムにおける 17 のカテゴリーはすべて、複数の医療施設により最優先事項として選択された。

結論:
病院の SSI サーベイランスにおける優先事項の大多数が、現行のプログラムに含まれているが、最上位の優先事項である帝王切開は含まれていない。優先領域の多様性を考慮すると、全国的プログラムの包括的な範疇のカテゴリーを維持することが、地域の優先事項に対処している病院を支援するために重要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
SSI サーベイランスは各医療機関の手術成績の一部であり、本来はすべての術式で実施し、消費者である患者が入院治療を受ける医療機関を選定する上での査定基準になるべきである。しかし、SSI サーベイランスにかかる労力を考えると、医療機関側ではどうしても感染のリスクの高い領域での実施に限定している医療施設がほとんどである。

英国の手術部位感染症の全国的サーベイランスを分析する:必要性と優先課題

Mapping national surveillance of surgical site infections in England: needs and priorities

R. Troughton*, G. Birgand, A.P. Johnson, N. Naylor, M. Gharbi, P. Aylin, S. Hopkins, U. Jaffer, A. Holmes
*Imperial College London, London, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 378-385


背景:
抗菌薬耐性が増加したことで、患者の安全性の改善を図るために重要な役割を担う効果的なサーベイランス対策によって、手術部位感染症(SSI)を予防することの重要性が強調されている。

目的:
現行の全国的サーベイランス活動に対して、SSI サーベイランスの全国的な必要性と優先事項を分析すること。

方法:
本研究では、英国 National Health Service(NHS)の 23 の手術に対応する病院の SSI サーベイランスについて分析した。以下のデータを収集した:(i)年間手術件数(ii)全国的な報告による SSI 発生率(iii)全国的な報告要件(義務、任意、要件なし)(iv)英国 NHS の病院 84 施設の調査による優先順位(v)文献による入院期間延長および費用。記述的分析および単変量分析を用いて、推定される SSI の負担、全国的なサーベイランス活動、病院報告による優先事項の関連性を検討した。

結果:
分析した 23 の手術カテゴリーのうち、病院による最優先順位の手術は、現行のサーベイランス(r = 0.76、P < 0.01)、義務的報告(33%対 8%、4%、P = 0.04)のみと関連した。サーベイランスを実施している病院、義務的報告、優先事項の選択の割合は、SSI の負担と一致しなかった。大腸手術(任意的報告)、帝王切開(要件なし)は、年間の SSI 総数に寄与する 2 大因子で、それぞれ 39,000 件(38%)、17,000 件(16%)であった。一方で、4 つの整形外科手術カテゴリー(すべて義務的報告)は、SSI 減少に寄与し、5,000件(5%)であった。また、大腸手術は関連費用が最大であった(年間 1 億 1,900 万ポンド)。

結論:
現行のサーベイランスと今後の優先事項は、SSI 発生率、手術件数、病院への費用と関連しなかった。SSI と関連費用に寄与する 2 大因子は、全国的サーベイランスの対象となっていない(帝王切開)か、任意とされている(大腸手術)。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
かなり意外な展開になっていることがこの論文から導き出されている。そもそも、限定的 SSI サーベイランスで実施部署を決定した際の基準はどこにあったのだろうか?
医療費ばかりでは SSI 実施のインセンティブとはならない。感染率の低いはずの術式で高い感染率になっている病院があれば、それ自体は大問題だからだ。

オーストリアの外科医を対象とした手術部位感染症予防のための抗菌薬による術前除菌処置に関連する現在の認識、実践、意見に関する調査

A survey on current knowledge, practice and beliefs related to preoperative antimicrobial decolonization regimens for prevention of surgical site infections among Austrian surgeons

L. Tschelaut*, O. Assadian, R. Strauss, J. Matiasek, M. Beer, G. Angerler, D. Berger-Grabner, E. Presterl
*IMC University of Applied Science, Austria

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 386-392


背景:
手術部位感染症(SSI)のリスクを低減させるために、術前除菌などさまざまな方法が検討されている。外科部門における術前除菌の実施の詳細について、オーストリアでは研究されていない。

目的:
国内の病院における患者の術前除菌の現状を分析することと、異なる外科領域の外科医を対象に、現時点でのこの方法に関する認識を評価すること。

方法:
複数の外科部門を有するオーストリアの全病院に 12 項目の構造化質問票を配布した。

結果:
回答した外科医の 3 分の 2(158 名中 103 名、65%)が、所属する外科部門でいずれかの種類の術前除菌を実施していると記載した。プロトコールの多様性がみられ、既知の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)保菌者のみの除菌から、患者のサブグループの除菌、あるいは待機的手術前のすべての患者における普遍的除菌などさまざまであった。もっとも使用頻度の高い抗菌性化合物はオクテニジン(60.2%)で、ムピロシン(38.8%)、トリクロサン(14.6%)、ポリヘキサニド(12.6%)、クロルヘキシジン(11.7%)、塩化ジデシルジモニウム(7.8%)と続いた。

結論:
オーストリアの病院では術前除菌がルーチンベースで実施されているようである。とはいえ、この方法は、さまざまなプロトコール・抗菌性化合物・職員によって実施されている。今回の調査から、術前除菌についてより情報を得ている外科医は、予防法の有用性をより確信している外科医でもあるということが確認されたので、今後の活動は、この領域でのより多くの比較研究の実施に焦点を当てるだけでなく、的を絞った教育も対象とすべきである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
オーストリアの病院では、術前除菌がルーチンベースで実施されているという事実だけでなく、除菌に使用している薬剤の耐性菌についても調べていく必要があるだろう。オクテニジンは、日本では除菌目的の使用はなされていない。

結腸手術後の手術部位感染症のタイミング、診断、治療:患者 1,263 例における前向きサーベイランス

Timing, diagnosis, and treatment of surgical site infections after colonic surgery: prospective surveillance of 1263 patients

D. Martin*, M. Hübner, E. Moulin, B. Pache, D. Clerc, D. Hahnloser, N. Demartines, F. Grass
*Lausanne University Hospital CHUV, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 393-399


背景:
手術部位感染症(SSI)は結腸直腸手術後にもっとも頻発する合併症であり、入院期間と費用に大きな影響を及ぼす。

目的:
結腸手術後 30 日以内の SSI の発生率、タイミング、治療について分析すること。

方法:
本研究は、Lausanne University Hospital(CHUV)における 2012 年 2 月から 2017 年 10 月までの連続した結腸手術症例の後向き分析による質改善プロジェクトである。独立した全国的サーベイランスプログラム(www.swissnoso.ch)により、SSI を術後 30 日まで前向きに評価した。感染症に対するドレナージ(直接的創部開口部、経皮的)および外科処置を含む治療法を評価した。

結果:
研究コホートは患者 1,263 例で、緊急対応として 532 例の処置を実施した(42%)。SSI が患者 271 例(21%)にみられ、中央値で術後 9 日目(四分位範囲[IQR]4 ~ 16)に発生した。具体的には、53 例(4%)は切開部表層、65 例(5%)は切開部深層、153 例(12%)は臓器/腔(吻合不全も含む)の感染症であった。切開部表層 SSI は中央値で術後 10.5 日目(IQR 7 ~ 15)、切開部深層 SSI は中央値で術後 10 日目(IQR 8 ~ 15)、臓器/腔 SSI は中央値で術後 8 日目(IQR 5 ~ 11)に発生した。64 例(24%)は退院後に診断された。術後 7 日目までに検出されたのは、臓器/腔感染症の 47%であったのに対し、切開部表層および切開部深層の感染症では 26%のみであった(P = 0.003)。133 例(49%)が外科的処置を必要とし、それ以外の症例は、全身麻酔を施行しないドレナージにより治療された(138 例[51%])。

結論:
臓器/腔感染症は術後早期に発生したのに対し、切開部感染症の大部分は 30 日間の全観察期間を経過した退院後に検出された。このことは、組織的で、徹底かつ独立したサーベイランスプログラムによる適切な追跡調査の重要性を強調するものである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

選択的結腸直腸手術後の臓器/腔感染症と関連する入院期間延長および死亡リスクを推定する多状態モデリング

Multistate modelling to estimate excess length of stay and risk of death associated with organ/space infection after elective colorectal surgery

E. Shaw*, A. Gomila, M. Piriz, R. Perez, J. Cuquet, A. Vazquez, J.M. Badia, A. Lérida, D. Fraccalvieri, A. Marron, N. Freixas, A. Castro, A. Cruz, E. Limόn, F. Gudiol, S. Biondo, J. Carratalà, M. Pujol, on behalf of VINCat colon surgery group
*Hospital Universitari de Bellvitge, Spain

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 400-405


背景:
医療関連感染症と関連する入院期間延長および死亡リスクを推定するために、時間依存性および競合イベントを明らかにすることが強く推奨される。

目的:
待機的結腸直腸手術を受けた患者において、臓器/腔手術部位感染症(SSI)が入院期間延長と院内死亡に及ぼす影響を評価すること。

方法:
スペインの病院 10 施設で 2012 年 1 月から 2014 年 12 月に待機的結腸直腸手術を受けた成人コホートを対象とした多施設共同前向き研究である。SSI を時間依存性の曝露とみなし、切開部(表層および深層)または臓器/腔の感染症と定義した。退院時生存と死亡を研究のエンドポイントとした。入院期間延長の平均日数は、患者が経験した状態に基づき重み付き平均を計算する多状態モデルによって推定した。臓器/腔 SSI が、退院時生存または院内死亡のリスクに及ぼす影響を評価するために、多変量 Cox 回帰モデルを用いた。

結果:
患者 2,778 例のうち 343 例(12.3%)が SSI を発症し、194 例(7%)が臓器/腔 SSI、149 例(5.3%)が切開部 SSI であった。切開部 SSI または非感染と比較すると、臓器/腔 SSI では入院期間が、それぞれ 4.2 日(95%信頼区間(CI)4.1 ~ 4.3)、9 日(95%CI 8.9 ~ 9.1)延長し、退院時生存のリスクが低下し(それぞれ、補正ハザード比[aHR]0.36[95%CI 0.28 ~ 0.47]、aHR 0.17[95%CI 0.14 ~ 0.21])、院内死亡のリスクが高まった(それぞれ、aHR 8.02[95%CI 1.03 ~ 62.9]、aHR 10.7[95%CI 3.7 ~ 30.9])。

結論:
待機的結腸直腸手術を受けた患者において、臓器/腔 SSI によって、大幅に、入院期間が延長し、死亡リスクが高まった。これらの結果は、待機的結腸直腸手術において医療負担がもっとも高い SSI として、臓器/腔 SSI を強固に位置づけるものである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

脳神経外科患者における表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)のメチシリンおよびリネゾリド耐性クローンに起因する院内脳室炎

Nosocomial ventriculitis caused by a meticillin- and linezolid-resistant clone of Staphylococcus epidermidis in neurosurgical patients

C. Rodríguez-Lucas*, J. Fernández, J.A. Boga, L. López-Amor, L. Forcelledo, E. Lázaro-López, M.R. Rodicio
*Universidad de Oviedo, Spain

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 406-410


背景:
脳神経外科手術後の脳室炎は主にコアグラーゼ陰性ブドウ球菌に起因する。リネゾリド耐性表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)の出現率は世界的に増加傾向にある。

目的:
スペインの病院における 2013 年から 2016 年までのリネゾリド耐性表皮ブドウ球菌に起因する連続する脳室炎症例の臨床的、疫学的、微生物学的データを報告すること。

方法:
スペインの病院 1 施設におけるリネゾリド耐性表皮ブドウ球菌による脳室炎症例を、4 年間にわたり後向きにレビューした。感染患者の臨床的・疫学的データをレビューし、関与する分離株をパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)と multi-locus sequence typing 法により分類し、リネゾリド耐性の分子基盤を究明した。

結果:
リネゾリド耐性表皮ブドウ球菌による脳室炎の 5 例を検出した。患者は、体外脳室ドレーンの留置を必要とする脳出血や頭部外傷を有し、集中治療室(ICU)に比較的長期にわたり入室し(10 日から 26 日)、5 例のうち 3 例はリネゾリドによる治療歴があった。リネゾリド耐性表皮ブドウ球菌はすべて、同一の PFGE パターンを示し、ST2 に属し、同一のリネゾリド耐性メカニズムがみられた。具体的には、すべての分離株で、23S rRNA 遺伝子の 6 コピーそれぞれのドメイン V 領域に G2576T 変異がみられ、さらに、リボソーム蛋白質である L3 に Q136L と M156T の変異、L4 に 71GGR72 の挿入変異がみられた。

結論:
ICU におけるリネゾリドの高使用率(100 患者・日あたり 1 日投与量 7.72 ~ 8.10)によって、この耐性クローンが選択された可能性があり、おそらく、このクローンは、入院患者に定着できたであろう ICU において拡散するようになったと思われる。治療が困難なこの病原体の拡散を防止するため、そしてリネゾリドの治療効果を維持するために、感染制御と抗菌薬適正使用支援介入が必須である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
スペインの病院における、2013 年から 2016 年までの脳神経外科手術後に発生したリネゾリド耐性表皮ブドウ球菌による感染症のレビューを行った論文である。今後の対策として、感染制御と抗菌薬適正使用の強化はもっともであるが、1 施設での後向き調査からは、もう少し具体的な対応策について検討されてもよかったと思われる。

心臓手術における深部胸骨創感染症の予防:文献レビュー

Prevention of deep sternal wound infection in cardiac surgery: a literature review

R.J. Vos*, B.P. Van Putte, G.T.L. Kloppenburg
*St. Antonius Hospital, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 411-420


背景
深部胸骨創感染症は心臓手術の重篤な合併症の 1 つであり、死亡率、罹患率および治療費に関して重大な影響を及ぼす。過去数十年の間に、手術部位感染症予防の標準的なガイドラインに加え、深部胸骨創感染症予防における多数の具体策が開発され、評価を受けてきた。本レビューは、深部胸骨創感染症予防のためのこれらの具体策に焦点を当てた。

方法
深部胸骨創感染症予防における介入を評価するため、広範囲の文献検索を実施した。ランダム化比較試験の結果を示した文献は、介入の種類によって分類した。結果を収集し、可能であれば統合した。

結果
検索した 743 報の文献のうち、48 報のランダム化比較試験を選択した。研究は 12 分類に分けられ、術前、周術期および術後の予防策を含んだ。有効性が示された具体策は、抗菌薬予防投与(第一世代セファロスポリンを 少なくとも 24 時間迄は継続)、閉胸前のゲンタマイシンの局所投与、スチールワイヤー 8 本 を用いた胸骨閉鎖、コルセットまたはベストを用いた術後の胸部サポートであった。

結論
本研究では、心臓手術後の深部胸骨創感染症を防ぐ、現在の慣習において適用頻度が高くない複数の予防策を特定した。心臓手術における手術部位感染症予防のガイドラインを更新することが推奨される。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
深部胸骨創感染症予防における介入を評価した論文のレビューである。介入が項目毎にまとまっており、情報の整理に役立つ。

胸骨切開術後の縦隔炎におけるクロルヘキシジンによる皮膚消毒および胸骨下ゲンタマイシンスポンジの効果:前向き対照レジストリの患者 2,340 例の結果

Effect of chlorhexidine skin disinfection and retrosternal gentamicin sponge on post-sternotomy
mediastinitis: results from a prospective controlled registry of 2340 patients

T. Waldow*, T. Ghazy, T. Madej, K. Plötze, C. Birkner, A. Mahlmann, K. Matschke
*Dresden University of Technology, Germany

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 421-427


背景
胸骨切開術後の縦隔炎を減らすためには、複数の手法を取り入れる必要がある。しかし、これらの方策の単独での効果は十分に研究されていない。

目的
イソプロピルアルコール-グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)を用いた術前消毒および創傷閉鎖時の胸骨下ゲンタマイシンコラーゲンスポンジの局所適用に関して、単独で胸骨切開術後の縦隔炎を減少させる効果を評価すること。

方法
この前向き対照レジストリには、2012 年 10 月から 2014 年 8 月にかけて患者 2,340 例が登録された。患者は 4 つのグループに分けられた。グループ 1、2 ではイソプロピルアルコールで皮膚消毒を行い、グループ 3、4 ではイソプロピルアルコール- CHG で皮膚消毒を行った。グループ 2、4 では、胸骨下ゲンタマイシンコラーゲンスポンジを使用した。主要評価項目は、術後 30 日まで胸骨切開術後の縦隔炎の発症がないこととした。副次的評価項目は、手術部位裂開がないこととした。胸骨切開術後の縦隔炎の発症率の低さに関連する独立因子を明らかにするため、ステップワイズ回帰モデルを作成した。

結果
結果はグループ間で有意差があった(P < 0.0001)。グループ 4 では一次治癒の比率が最も高く(91.4%)、縦隔炎の発症率が最も低かった(0.9%)。多変量解析により、CHG およびゲンタマイシンスポンジの使用が統計的に有意であることが示された(それぞれ P = 0.026、0.013)。その他に有意な独立因子は、弁手術(P = 0.001)、体格指数(BMI) > 30 kg/m2P = 0.001)、術前発作(P = 0.005)、輸血(P = 0.022)であった。

結論
イソプロピルアルコール- CHG による術前皮膚消毒は、イソプロピルアルコール単独での消毒より優れており、推奨すべきである。胸骨下ゲンタマイシンコラーゲンスポンジを追加すると、縦隔炎の発症率はさらに低下する。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
消毒に用いられるアルコール製剤は速乾性で消毒効果が期待できる。このため、術前皮膚消毒に消毒用アルコールを含んだ製剤の使用が選択される場合が多い。

成人心臓手術部位感染症の減少および集学的共同研究の活用による経済的影響

Reducing adult cardiac surgical site infections and the economic impact of using multidisciplinary collaboration

L. Chiwera*, N. Wigglesworth, C. McCoskery, G. Lucchese, W. Newsholme
*Directorate of Infection, Guy’s & St Thomas’ NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 428-436


背景
心臓手術部位感染症(SSI)は深刻な結果をもたらし、患者および医療提供者にいくつかの課題を突きつけている。当病院では、報告された SSI の発生率上昇の中、患者安全の取り組みとして 2009 年に成人心臓 SSI のサーベイランスを開始した。これまではデータ収集が標準化されていなかったため、感染症の発生率は不明であった。

目的
当組織の標的に従って、質、安全性、効率を向上させるため、クリニカル・ガバナンスの組織内でエビデンスに基づいた的を絞った介入の展開を促進させるよう、SSI のデータ収集を標準化し、また SSI 発生率のベースラインを確立すること。

方法
Public Health England の推奨および特定した地域のリーダーと協力して、地域のデータ収集手順を標準化した。潜在的な実践上の懸念を特定し、一連の新たな取り組みを通してそれらの懸念に対してより効果的に対処できるように、共同して前向き SSI サーベイランスを実施した。医療スタッフは手術中および手術後に、専用のサーベイランスフォームに記入した。

結果
成人心臓 SSI の全体の発生率は、5.4%(2009 年)から 1.2%(2016 年)に低下し、冠動脈バイパス移植術の比率は 6.5%(2009 年)から 1.7%(2016 年)に低下した(P < 0.001)。グラム陰性細菌は SSI の重要な原因菌として認識されており、厳密な感染管理策の導入後は、より適切に抑制された。

結論
包括的な、エビデンスに基づいた感染管理の実践は、集学的な共同アプローチを通してうまく実行された。集学的な共同アプローチは、グラム陰性細菌、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、複数菌、全体的な SSI の負荷および/または関連コストを減少させる大きな可能性があるかもしれない。現在、我々は抗菌薬耐性と戦うため、国際的な取り組みと完全に一致するように継続的な質の改善を促進しようと、確立された SSI 詳細調査手順を用いてすべての SSI を調査している。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
月並みではあるが、心臓外科手術においてバンドルを作成し、サーベイランスを行うことによって SSI の発生率が低減したとする報告。実際のバンドルが付録として別途掲載されており、手術前(手術前日の 4% クロルヘキシジングルコン酸塩[CHG]浴やクリッパーによる除毛)、手術中(2% CHG + 70% イソプロピル アルコール による皮膚消毒や適切な抗菌薬の投与など)、JHI のホームページには実際に使用したサーベイランスフォームやバンドルの内容なども付録(appendix)として掲載されており参考になる。

早発型人工弁感染性心内膜炎のリスク因子:症例対照研究

Risk factors for early onset prosthetic valve endocarditis: a case-control study

R.Q. Garrido*, B. Pessanha, N. Andrade, M.G. Correia, C. Weksler, W. Golebiovski, G.F. Barbosa, M.M. Garrido, I.S. Martins, C.C. Lamas
*Infection Control Department, Instituto Nacional de Cardiologia, Brazil

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 437-443


背景
早発型人工弁感染性心内膜炎は心臓弁手術のまれな合併症の 1 つであり、移植中または術後早期における人工弁の汚染が原因の医療関連感染症とみなされている。

目的
どの因子が早発型人工弁感染性心内膜炎の罹患に関連する可能性があるか評価すること。

方法
2006 年から 2016 年にかけてコホート内症例対照研究を実施した。症例は心臓弁置換から 12 か月以内に、修正版 Duke 診断基準に基づいて、人工弁心内膜炎に明らかに罹患した患者であった。症例および対照は、年齢、性別、手術日および手術の種類によってマッチさせた。

結果
2,496 件の弁手術において、症例は 26 例であり、対照は 78 例であった。早発型人工弁感染性心内膜炎の発症率の中央値は 1.1%であった。特定された手術中のリスク因子は、クリオプレシピテートの 2 単位以上の使用(オッズ比[OR]5.95、95%信頼区間[CI]1.31 ~ 27.0)、ならびに血漿の 2 単位以上の使用(OR 2.73、95%CI 1.0 ~ 7.5)であった。術後期においては、関連する因子は血流感染症(OR 14.00、95%CI 1.49 ~ 131.77)、肺炎(OR 4.38、95%CI 1.21 ~ 15.84)、あらゆる感染症(OR 4.46、95%CI 1.63 ~ 12.21)、2 週間以上の中心静脈ライン(OR 5.33、95%CI 2.06 ~ 13.78)、透析カテーテルの存在(OR 3.22、95%CI 1.15 ~ 9.03)、新規の開胸手術(OR 3.89、95%CI 1.28 ~ 11.78)であった。12 か月時点での死亡率は、症例では 34.6%、対照では 6.4%(OR 7.73、95%CI 2.3 ~ 26.06)であった。

結論
早発型人工弁感染性心内膜炎の症例では、術後早期における感染症、侵襲的手技、外科的再介入がより多く、これらは新たに移植された人工弁の汚染を助長する。感染管理実践の強化を伴う予防的アプローチにより、早発型人工弁感染性心内膜炎の発症頻度が抑制される可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
早発型人工弁感染性心内膜炎は、術後 12 か月以内に発生する症例と定義されている。そのリスク因子の候補が本論文では紹介されているが、やはり周術期の血流感染や肺炎などの遠隔部位感染の OR が高く、手術部位感染症の予防では、創部だけでなく、遠隔部位の感染対策も重要であることを再認識させてくれる結果と言えよう。

経カテーテル大動脈弁置換術後の院内感染性心内膜炎:米国における National Inpatient Sample データベースの横断的研究

In-hospital infective endocarditis following transcatheter aortic valve replacement: a cross-sectional study of the National Inpatient Sample database in the USA

I. Yeo*, L.K. Kim, S.O. Park, S.C. Wong
*Icahn School of Medicine at Mount Sinai/The Mount Sinai Hospital, USA

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 444-450


背景
重症大動脈弁狭窄症患者に対する経カテーテル大動脈弁置換術の利用は増加している一方で、経カテーテル大動脈弁置換術後の院内感染性心内膜炎は十分に示されていない。

目的
経カテーテル大動脈弁置換術後の院内感染性心内膜炎を特定すること。

方法
National Inpatient Sample データベースを用いて、2012 年から 2014 年の間に経カテーテル大動脈弁置換術を受けたすべての患者を特定した。経カテーテル大動脈弁置換術後の院内感染性心内膜炎の予測因子を特定するため、多変量ロジスティック回帰を実施した。

結果
経カテーテル大動脈弁置換術を受けた 41,025 例の患者のうち、120 例(0.3%)が院内感染性心内膜炎を発症した。緑色レンサ球菌(20.8%)が院内感染性心内膜炎の最も頻度の高い原因細菌であり、続いて黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、16.7%)、腸球菌(enterococci、8.3%)であった。経カテーテル大動脈弁置換術後に院内感染性心内膜炎を発症した患者は、感染性心内膜炎を発症していない患者と比較して、死亡(20.8%対 4.1%、P < 0.001)、敗血症性ショック(16.7%対 0.8%、P < 0.001)、心原性ショック(12.5%対 3.4%、P = 0.02)、血液透析を必要とする急性腎障害(16.7%対 1.6%、P < 0.001)、輸血を必要とする出血(29.2%対 11.3%、P = 0.01)、心筋梗塞(12.5%対 2.1%、P < 0.001)、ペースメーカーの永久的な除去(4.2%対 0.05%、P < 0.001)の比率が有意に髙かった。経カテーテル大動脈弁置換術後の院内感染性心内膜炎の独立した予測因子には、低年齢(オッズ比[OR]0.92、95%信頼区間[CI]0.89 ~ 0.95)、薬物乱用(OR 48.9、95%CI 6.9 ~ 347.3)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染(OR 7.8、95%CI 1.4 ~ 44.4)が含まれた。

結論
経カテーテル大動脈弁置換術後の患者の 0.3%において、同一の入院期間中に感染性心内膜炎が発生し、結果として死亡を含む有害事象の発生率がより高かった。より低年齢、薬物乱用の履歴がある、または HIV に感染している患者は、経カテーテル大動脈弁置換術後の院内感染性心内膜炎のリスクがより高く、周術期の用心深い予防策が有効である可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
経カテーテル大動脈弁置換術における感染性心内膜炎の疫学に関する重要な報告である。その発生頻度が 0.3%と非常に低いことや原因微生物として口腔内の常在菌である緑色レンサ球菌が多いこと、リスク因子として薬物乱用や HIV などが挙げられていることなど、自然弁の感染性心内膜炎と疫学が類似していることから、その発症機序や予防は周術期の対策というよりも、一般的な感染性心内膜炎の予防策が重要であるように思われる。

予期せぬ症例を明らかにすることを目的とした未検出のマイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)感染症の迅速なアップデート★★

Fast update of undetected Mycobacterium chimaera infections to reveal unsuspected cases

F. Acosta*, L. Pérez-Lago, M.J. Ruiz Serrano, M. Maírn, T.A. Kohl, N. Lozano, S. Niemann, M. Valerio, M. Olmedo, M.J. Pérez-Granda, M.R. Pérez Pérez, E. Bouza, P. Muñoz, D. García de Viedma
*Instituto de Investigación Sanitaria Gregorio Marañón, Spain

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 451-455


マイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)は、ヒータークーラーユニットの汚染が原因で、世界中で警戒されている。M. chimaera 感染症の未検出の症例を調査するため、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイム PCR)に基づいた手順を実行した。PCR で 16SrRNA が陰性の感染性心内膜炎患者の 59 の人工心臓弁において、PCR は陰性であった。臨床的に重要なマイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)-マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacterium intracellulare)複合体(MAC)分離株 15 株のうち 1 株において、PCR により M. chimaera を後向きに同定したが、この 1 株は、別の施設において心臓弁置換を受けた患者に対応するものであった。全体のゲノム配列決定により、この患者が世界的なアウトブレイクの起因株が関与する、スペインで最初の症例であることが証明された。これらの結果により、未検出の M. chimaera 感染症に対する後向きの追跡の意義が浮き彫りになった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
心臓手術時に使用するヒータークーラーユニットがM. chimaeraによって汚染されることが原因となる心臓手術患者におけるM. chimaeraによる手術部位感染症が世界的な問題になっている。本症例は M. avium-intracellulare complex(MAC)感染症と診断されていた症例の中で、実際にはM. chimaeraが感染していたことを報告し、未診断、あるいは見逃されている症例が存在する可能性を指摘している。日本では本菌による感染症はほとんど報告されていないが、正確に同定されていない可能性もあり、引き続き注意が必要である。

インフルエンザシーズン中の成人における RS ウイルスの負荷:過小評価された病態★★

Respiratory syncytial virus burden among adults during flu season: an underestimated pathology

M. Kestler*, P. Muñoz, M. Mateos, D. Adrados, E. Bouza
*Hospital General Universitario Gregorio Marañón, Spain

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 463-468


背景
インフルエンザ様症候群を有する成人患者において、RS ウイルスの役割に関する情報は不足している。

目的
通常のインフルエンザシーズン中に、呼吸器症状を有する成人患者における RS ウイルスの臨床的特徴を評価すること。

方法
2015 年 12 月から 2016 年 2 月に、スペインの 3 次病院において前向き試験を実施した。欧州疾病予防管理センターの基準に従い、試験対象には、市中獲得または病院/医療関連インフルエンザ様疾患のどちらかを有する成人患者のみが含まれた。サンプルは迅速遺伝子検査法(Xpert® Flu/RSV)を用いて分析した。RS ウイルス陽性患者を、ランダムに RS ウイルス陰性の対照群およびインフルエンザ陽性対照群と比較した。

結果
本試験には、インフルエンザ様呼吸器感染症の患者 1,200 例が含まれた。サンプル全体のうち、114 例(9%)はインフルエンザ陽性であり、95 例(8%)は RS ウイルス陽性であった。RS ウイルス陽性患者とインフルエンザ陽性患者を比較すると、RS ウイルス陽性患者はより高年齢であり(57.7 歳対 48.9 歳、P = 0.03)、その疾患は医療関連である頻度が高かった(95 例中 26 例[27.3%]対 114 例中 5 例[1.7%]P < 0.001)。RS ウイルス陽性患者はまた、抗菌薬を処方されている頻度も有意に髙く(95 例中77 例[81.0%]対 114例中 70 例[61.4%]P < 0.001)、入院が必要となる頻度も高かった(95 例中 93 例[97.8%]対 114 例中69 例[60.5%]P < 0.001)。死亡率も RS ウイルス陽性患者において有意に髙かった(95 例中 14 例[14.7%]対 114 例中7 例[6.1%]P = 0.04)。

結論
RS ウイルスは、インフルエンザシーズン中の中等度から重度の呼吸器感染症の主要な原因の 1 つである。RS ウイルスの獲得は院内感染または医療関連感染であることが多く、インフルエンザウイルス感染症より有意に死亡率が高かった。確実に隔離策を実施し伝播を防ぐため、第一段階の診断法としての迅速遺伝子検査法の使用は必須である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
RS ウイルス感染症は、乳幼児における肺炎や細気管支炎の原因ウイルスとして広く知られており、慢性肺疾患や免疫不全の成人においても重症化することが知られている。一方、一般成人における知見は十分ではない。本論文では、RS ウイルス感染症の成人における重要性が過小評価されていることに言及している。RS ウイルスが高齢者や院内感染での発生が多く、さらに死亡率も上昇させるため、インフルエンザ様疾患における鑑別診断において RSV 感染症を診断することは、感染対策上適切な予防策をとるうえで重要であるが、現時点では日本ではイムノクロマト法による迅速検査も成人では診療報酬上は認められていない。すでに日本の医療関連施設でも RS ウイルスによるアウトブレイクが複数報告されている。インフルエンザ様疾患の原因微生物のひとつが RS ウイルスであり、近年は遺伝子増幅により迅速に十数種類の原因微生物を同定するキットが米国米国食品医薬局(FDA)でも認可され、呼吸器感染症の診断に利用されている。ウイルス性の場合には抗菌薬の使用を中止することで耐性菌対策として、抗菌薬適正使用推進の一翼を担っている。

手指乾燥手法に応じた病院のトイレの細菌による環境汚染:多施設共同研究★★

Environmental contamination by bacteria in hospital washrooms according to hand-drying method: a
multi-centre study

E. Best*, P. Parnell, J. Couturier, F. Barbut, A. Le Bozec, L. Arnoldo, A. Madia, S. Brusaferro, M.H. Wilcox
*Microbiology, Leeds Teaching Hospitals, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 100, 469-475


背景
手指衛生は感染予防の基本要素の 1 つであるが、手指乾燥手法が潜在的病原菌の伝播リスクに影響するかどうかを検討した研究はほとんどない。

目的
多施設共同、クロスオーバー試験を実施し、ペーパータオルまたはジェット式空気ドライヤー(ダイソン社)のいずれかによる手指乾燥を行うトイレの細菌汚染レベルを比較すること。

方法
病院 3 施設(イギリス、フランス、イタリア)において 12 週間にわたり、合計 120 のサンプル採取セッションを行った。細菌は空気、複数の表面、塵埃から培養した。トイレの利用者数(患者/訪問者/職員)は外からモニタリングした。

結果
イギリスのトイレは利用者数が 9 倍多かった。ジェット式空気ドライヤーよりもペーパータオルを使用したトイレの方が細菌汚染が少なかった。フランスとイギリスでは汚染は同等であったが、イタリアのトイレでは汚染が著しく少なかった。すべての場所において、回収した細菌の総量は、ジェット式空気ドライヤーの表面の方がペーパータオルのディスペンサーよりも有意に多かった(中央値 100 ~ 300 対 0 ~ 10 cfu、すべての場所で P < 0.0001)。イギリスとフランスでは、ジェット式空気ドライヤーを使用したトイレの床から細菌が有意に多く回収された(中央値 24 対 191 cfu、P < 0.00001)。イギリスのジェット式空気ドライヤーの表面は、ペーパータオルよりもメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(meticillin-susceptible Staphylococcus aureus)の回収頻度は 3 倍高く、回収量は 6 倍多かった(ともにP < 0.0001)。イギリスのジェット式空気ドライヤーの表面または設置されたトイレの床では、ペーパータオルの表面または設置されたトイレの床よりもメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の回収頻度が 3 倍高かった(21 対 7 cfu)。腸球菌(enterococci)および基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生細菌は、イギリスのジェット式空気ドライヤーを設置したトイレの床において、ペーパータオルを設置したトイレの床よりも有意に多く回収された(P < 0.0001)。フランスではジェット式空気ドライヤー使用中に、ペーパータオル使用中と比較して 2 倍の頻度で塵埃から ESBL 産生細菌が回収された。

結論
表面の細菌汚染における有意差に関して、糞便関連細菌および抗菌薬耐性細菌を含む多数の例が観察され、ジェット式空気ドライヤーを使用したトイレはペーパータオルを使用したトイレよりも汚染レベルが高かった。手指乾燥手法は、実環境の細菌伝播(空気感染)リスクに影響を与える。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
手指衛生は感染対策における重要な要素であるが、手指の乾燥にあまり注意が向けられていないのが現状である。ペーパータオルよりもジェット式空気ドライヤーがより多くの細菌が手指乾燥時に飛散し、周囲を汚染し、感染拡大のリスクが増加するというのが本論文での結論であり、医療施設においてペーパータオルよりもジェット式空気ドライヤーを使用するメリットはこの結果からは導くことはできなかった。すなわち、手指衛生における手指の乾燥に関して医療現場においては、細菌学的にも、また騒音や乾燥時間等を考慮するとペーパータオルを使用することが優先される。事実、英国 NHS の病院建設ガイダンスにおいても、「医療現場に手指乾燥のためにドライヤーを設置すべきではない」としている。

侵襲性 A 群レンサ球菌によるアウトブレイク:寒天培地による落下菌測定法を用いた医療従事者の会陰部からの菌排出調査★★

Outbreak of invasive group A streptococcus: investigations using agar settle plates detect perineal shedding from a healthcare worker

N. Mahida*, K. Prescott, C. Yates, F. Spencer, V. Weston, T. Boswell
*Nottingham University Hospitals NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e209-e215


背景
医療環境において A 群レンサ球菌(GAS)感染症のアウトブレイクが発生することがある。 患者への伝播は時に、保菌した医療従事者および/または汚染された環境が関与している。

目的
高齢者ケア内科病棟において 6 か月間にわたり発生した医療関連 GAS 感染症のアウトブレイクの調査および制御について記述すること。

方法
患者 4 例が GAS 感染による敗血症を発症し、臨床的に明らかな感染部位が認められなかった。アウトブレイク対応チームが調査を実施し、GAS 症例の後向きレビュー、前向き症例発見、医療従事者のスクリーニング、およびスワブ採取と落下菌測定法の両方を用いた環境サンプリングを行った。即時に実施した制御策として、感染源の隔離、ならびに塩素系消毒薬と過酸化水素による病棟環境のさらなる洗浄などを行った。

結果
前向き患者スクリーニングにより、咽喉部の GAS 保菌を有する患者が新たに 1 例同定された。落下菌測定法による GAS 陽性は、当該病棟の医療従事者 1 名の存在と強く関連することが認められ、その後この医療従事者が会陰部に GAS 保菌を有することが明らかになった。この医療従事者が使用していた、病棟に隣接する控え室にある布張りの椅子にも汚染が検出された。全体で、無症状の医療従事者 3 名に咽喉部の GAS 保菌が、医療従事者 1 名に会陰部と咽喉部の両方の保菌が認められた。すべての分離株は、タイピングにより emm 28 遺伝子型であることが判明した。

結論
本稿は、内科病棟で発生した GAS 感染症アウトブレイクの調査において、アウトブレイクの発生源の同定における落下菌測定法の使用の有用性を示した初のアウトブレイク報告である。本報告に基づいて著者らは、GAS によるアウトブレイク時に医療従事者のスクリーニングを行う場合は咽喉部と会陰部のサンプル採取を行うことを推奨する。臨床区域ならびに隣接する控え室には、GAS などの病原性細菌がこうした環境を汚染する可能性があるため、柔らかな布張りの家具は置くべきでない。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
GAS は健常人の咽頭や皮膚で時に検出されるグラム陽性球菌で、本菌による咽頭炎以外に、菌血症、壊死性筋膜炎や劇症型A 群レンサ球菌感染症(STSS)などの重症感染症を引き起こす。本菌は症状の有無にかかわらず、保菌者の咽頭からの飛沫感染や感染創部や皮膚病変から接触感染により伝播する。これまで、シャワーやビデなどの器具やカーテンなどの環境が供給源となり、医療従事者の手指を介したアウトブレイクの報告が多数ある。本論文では積極的な環境調査および保菌者調査を実施した。病棟での落下細菌検査を連日(7 日間)実施し、GAS の保菌者の存在を疑い、特定の医療従事者の勤務と落下細菌陽性結果とが有意に関連性があること、さらに咽頭および会陰部からの分離株とアウトブレイク株とのタイプが一致したことから、医療従事者からの伝播と判明した。

平時に流行がない病院環境において発生したバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)による大規模アウトブレイクを制御するための推奨事項★★

Recommendations for the successful control of a large outbreak of vancomycin-resistant Enterococcus faecium in a non-endemic hospital setting

F.N.J. Frakking*, W.S. Bril, J.C. Sinnige, J.E. van’t Klooster, B.A.W. de Jong, E.J. van Hannen, M. Tersmette
*St Antonius Hospital, Nieuwegein and Utrecht, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e216-e225


背景
教育病院において約 2 年間にわたり、バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium:VRE)の 3 つの流行クローンによる大規模アウトブレイクが発生した。

目的
このアウトブレイクの制御およびこの教育病院における VRE の根絶に成功した戦略を記述すること。

方法
患者 3 例で VRE が検出された後に感染制御介入を開始した。隔離予防策、洗浄および接触者追跡を行ったにもかかわらず継続的な伝播が認められた後に、病院全体でのサーベイランスを開始した。衛生に関する教育と規律を強化した。これらの介入を実施したにもかかわらず、アウトブレイクを制御するために追加の方策、例えば過酸化水素蒸気による病棟の消毒、および VRE に対応する隔離病棟の設置などを行うことが必要となった。最終的に、化学療法を受けている血液内科患者に対するシプロフロキサシン予防投与を中止した。

結果
22 か月の期間にわたり、VRE 保菌者 242 例が同定された。これらのうち、患者 128 例(53%)は病院全体のサーベイランスのみで検出された。3 つの流行クローン、すなわちST494-vanAN = 160)、ST78-vanAN = 23)および ST117-vanB>N = 32)が検出された。可能性のある接触者が合計で 5,614 例同定された。VRE 伝播は 23 病棟中 13 病棟で発生していた。患者 22 例(7 例は菌血症)の臨床検体から VRE が回収された。2014 年 1 月以降、これらの VRE クローンのさらなる伝播は認められなくなった。

結論
今回のアウトブレイクに対して国際ガイドラインに従った感染制御策は十分に
実施したが、これを制御するには不十分であった。その十分な実施が明らかになったのは、持続的な病院全体のスクリーニングを実施した後であった。病院全体で発生したこの VRE アウトブレイクの制御の実施は成功したが、多大な取り組みを必要とした。流行クローンの最終的な封じ込めおよび根絶が達成されたのは、過酸化水素蒸気による環境デコンタミネーション、厳格な隔離予防策、VRE 用の隔離病棟、および抗菌薬管理によってであった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
EU の中でもメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含む耐性菌が非常に少ないオランダの聖アントニウス病院で発生した大規模な VRE アウトブレイクへの対策に関する論文である。このアウトブレイクを終息させた病院は以下のような、平時の感染対策に関する推奨をあげている。1) VRE アウトブレイクがない病院:少なくとも年 4 回、4 日以上入院している病院の全患者に対して便のスクリーニングを実施する。2) VRE 陽性患者を 1 例検出:接触予防策と電子カルテ上で VRE 陽性を表示、保菌者との接触患者は 4 ~ 5 回のスクリーニングを実施。3) アウトブレイクが疑われる:VRE のタイピングを実施と患者の分類(陽性、疑い、陰性)、さらにコホーティング、感染対策の改善強化、清掃手順の遵守について監査する。4) アウトブレイクが確定:スクリーニングのための培養検体増加に対して検査室と調整、情報共有技術のサポート、職員への通達、患者・関連病院・保健所等への通知と公表、対策状況のフィードバック、スクリーニング対象患者の選定、アウトブレイク対応チームの設置、VRE 陽性患者の病室の過酸化水素蒸気による消毒、患者病室と感染伝播が疑われる器材の清掃状況の評価、抗菌薬の使用制限、5) 感染対策実施にもかかわらず感染拡大:VRE 病棟の設置も考慮、6) アウトブレイク制御後:発生した病棟の定期的(毎月)保菌スクリーニングと海外から入院してきた患者の保菌調査、である。

マスク非着用が医療従事者における結核菌(Mycobacterium tuberculosis)伝播につながる

Unmasking leading to a healthcare worker Mycobacterium tuberculosis transmission

K.L. Holden*, C.W. Bradley, E.T. Curran, C. Pollard, G. Smith, E. Holden, P. Glynn, M.I. Garvey
*Queen Elizabeth Hospital Birmingham, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e226-e232


背景
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)は、世界的に重大な保健衛生上の負担となっている。この感染症は、個々の症例および市中のアウトブレイクとして発生する他、まれに院内アウトブレイクを生じる。英国のような有病率が低い国であっても、結核は医療従事者にとってリスクをもたらす。

目的
Queen Elizabeth Hospital Birmingham において、肺結核を有する患者 1 例が入院した 12 か月後に発生したアウトブレイクを報告すること。

方法
疫学調査とアウトブレイクの調査を行うとともに、アウトブレイクのさらなる拡大防止を目的とした、アウトブレイクの同定と制御策の決定における全ゲノムシークエンシングの役割を明らかにし、報告した。

結果
患者 1 例で開放性結核の診断が下された後、医療従事者 1 名が活動性結核を有しており、伝播が確認され、また初発患者に接触した医療従事者 7 名において潜在性結核感染症が認められた。注目すべき点として、潜在性結核感染症の患者全員が、結核の他のリスク因子を有していた。全ゲノムシークエンシングのルーチンの使用により、初発患者と活動性結核を有する医療従事者とのアウトブレイク上の関連が同定され、著者らの調査に情報を提供した。

結論
アウトブレイク当時の国内ガイドラインに従って呼吸器防護具を用いずに実施されたエアロゾル発生処置の際に、曝露が生じた可能性が極めて高い。アウトブレイク後、強化した感染制御策が実施されるようになった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
開放性結核患者との接触から 12 か月で医療従事者に活動性結核が発症した事例である。診断・検査・感染対策の開始の遅れがあり、結核罹患が判明した医療従事者はすべて、十分な感染対策を行わない状態でエアロゾルを発生させる処置に携わっていた。中には 1 日だけではあるが、治療開始から 14 日経過したために感染対策を解除した日があり(後になってこの日の検体も塗抹陽性が判明)、この日の接触で感染してしまった例があった。実際の結核の院内感染対策を考えるうえで、教訓となる事例である。

2002 年から 2009 年にかけてドイツのリハビリテーション腫瘍科クリニックで発生した同じサルモネラ(Salmonella enterica)血清型 Infantis クローンによる複数回のアウトブレイク

Recurrent outbreaks caused by the same Salmonella enterica serovar Infantis clone in a German rehabilitation oncology clinic from 2002 to 2009

T. Miller*, S. Brockmann, M. Spackova, J. Wetzig, C. Frank, Y. Pfeifer, P.G. Braun, R. Prager, W. Rabsch
*National Reference Centre for Salmonella and Other Enteric Pathogens, Germany

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e233-e238


背景
2002 年 8 月から 2009 年 8 月にかけてドイツのリハビリテーションクリニックで発生した、サルモネラ(Salmonella enterica)血清型 Infantis によるサルモネラ症の複数回のアウトブレイクについて、微生物学的調査を行った。

目的
伝播の発生源を特定すること、またS. enterica 血清型 Infantis 分離株の特性を明らかにすること。

方法
これらのアウトブレイクに関連して、以下より分離した分離株についてファージ型別による評価を行った:患者 98 例、調理スタッフ 2 人、5 つの食品サンプル、調理室設備から採取したスワブ 4 個、鶏の糞便サンプル 3 個および下水サンプル 1 個。検査したすべてのS. enterica血清型 Infantis 分離株(N = 113)は、ファージ型 29 に関連していた。さらに、分離株 113 株中 44 株を無作為に選択して、XbaI マクロ制限分析およびパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)によるタイピングを行った。

結果
分離株 44 株のタイピングにより、再発した感染症は単一クローン PT 29/XB27 + 44(44 株中 42 株、95.5%)が原因と判明した。最も可能性の高い伝播経路は、2009 年に発生した最後のアウトブレイクを解析した本研究によって同定された。伝播経路は、調理室設備(汚染された木製の床が発生源)における交差汚染に加えて、調理スタッフの中に保菌者がいたことが組み合わさったことが明らかになった。

結論
本研究により、この病院に特異的な疫学プロセスに関する重要な特徴の詳細が示され、流行クローンであるS. enterica血清型 Infantis の長期間にわたるリザーバが、裏庭にいた家禽の群、あるいは調理場の無生物リザーバに存在することが示唆された。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
7 年にわたるアウトブレイクの原因調査と追究の報告である。保菌者(患者、スタッフ)、環境、動物の 3 者が複雑に関連し、さらに長期間の保菌が事態を複雑にさせた中での解明であり、興味深い。一読をお勧めする。

イングランド北部の熱傷病棟における多剤耐性緑膿菌(MDRP)によるアウトブレイク:複雑な環境における感染予防・制御の難しさ

An outbreak of multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa in a burns service in the North of England: challenges of infection prevention and control in a complex setting

V. Decraene*, S. Ghebrehewet, E. Dardamissis, R. Huyton, K. Mortimer, D. Wilkinson, K. Shokrollahi, S. Singleton, B. Patel, J. Turton, P. Hoffman, R. Puleston
*National Infection Service, Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e239-e245


背景
熱傷患者は院内感染を来たすリスクが高く、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は創傷感染症および全身感染症の原因として最も頻度の高いものの 1 つである。熱傷患者の緑膿菌感染症とそれによる死亡は非常に多い。

目的
熱傷専門病棟における多剤耐性緑膿菌(MDRP)によるアウトブレイクを記述すること、また広範な疫学的、微生物学的および環境調査の実施にもかかわらず感染伝播のリザーバーを同定することの難しさを示すこと。

方法
多職種チームによるアウトブレイク制圧のための調査。

結果
他国からの熱傷患者の病院間移送後、入院時の検査によりその患者が、MDRP を保菌していることが明らかになった。その後、2015 年 11 月から 2017 年 9 月にわたり、さらに 9 例の患者が MDRP に感染した。初発症例とその後の症例の発生の間に比較的長期間の間隔があったことから、感染のリザーバと拡散の機序を確実性をもって同定することができなかったが、熱傷病棟の環境および設備の汚染が寄与因子であった可能性がある。

結論
熱傷専門病棟における感染伝播の予防は非常に困難であり、緑膿菌のアウトブレイクにおけるリザーバーの同定と根絶は必ずしもできない場合がある。本研究は、接触頻度の高い無生物表面が緑膿菌の院内伝播において重要な役割を果たすという新たなエビデンスを提供することで、文献的にも貢献するものである。こうした表面は、次の患者の接触の前に効率的に汚染を除去してしまうか、単一の患者への使用に限るべきである。注意を高めることが極めて重要であり、感染予防・制御手順の厳格な遵守により、患者の感染症の獲得と拡散のリスクを低減することが可能になる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
MDRP に感染した熱傷患者の感染対策を進め、制御していくうえで、環境の関与の度合いを推測することは容易ではない。水治療設備、手洗い、排水口など緑膿菌が存在しやすく、かつ感染伝播のソースとなりうる候補が多数存在する。今回のような事例の報告を複数丁寧に読み解いていくこと、そして現実の事例での具体的な経路推測と予防策を考えていくことが、基本的とはいえ重要なアプローチではなかろうか。なお熱傷ではしばしばAcinetobacterも関与するが、これに対する予防策を考える参考にもなろう。

中国のNICUにおけるカンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosissensu stricto による真菌血症の院内アウトブレイク

Nosocomial outbreak of Candida parapsilosis sensu stricto fungaemia in a neonatal intensive care unit in China

L. Qi*, W. Fan, X. Xia, L. Yao, L. Liu, H. Zhao, X. Kong, J. Liu
*Army General Hospital, PLA, China

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e246-e252


背景
カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)は真菌血症の一般的な原因菌であるが、C. parapsilosis 感染症のアウトブレイクは中国ではほとんど報告されていない。

目的
2017 年の 7 月から 10月にかけて、中国の総合病院内のNICUにおいて発生した C. parapsilosis sensu stricto による真菌血症の院内アウトブレイクを詳細に記述すること。

方法
真菌血症症例の疫学および特性を調べ、サーベイランスサンプルを収集した。Vitek 2 Compact System、Internal Transcribed Spacer(ITS)シークエンシング、および Random Amplified Polymorphic DNA(RAPD)タイピングを実施して、分離株の同定を試みた。抗真菌薬に対する感受性検査をすべての血流分離株に対して実施した。

結果
本期間中に、新生児 16 例が C. parapsilosis sensu stricto 真菌血症と診断された。認められた所見は、白血球減少、血小板減少、およびクラックルなどであった。15 例は治癒したが、1 例は重度の併存疾患を有しており、死亡した。分離株は、フルコナゾール、アムホテリシン B、イトラコナゾール、ボリコナゾール、および 5-フルオロシトシンに感受性であった。計 313 個のサーベイランスサンプルを収集したが、環境サンプル 16 個および超音波技師の手指から採取したサンプル 1 個において C. parapsilosis sensu stricto が検出された。環境サンプルが陽性となったのは、ワイピングクロス、蛇口、シンク、手術台、洗面所の溜まり水、人工呼吸器 1 台、および超音波プローブ 1 本などであった。血液分離株とサーベイランス分離株のRAPD パターンはすべて同一であった。一連の感染制御策を実施した後、このアウトブレイクは制御され、終息した。

結論
汚染された環境がこのアウトブレイクと関連していた。NICU においては、免疫不全患児に対する綿密な注意、徹底的な環境消毒、および手指衛生を強化すべきである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
湿潤した環境である NICU ではカンジダ感染症のリスクは高く、大きな脅威となる。特に粘膜バリアの破綻の容易さ、多くのデバイス、多数のスタッフによる多くの手技・ケアがカンジダ定着・伝播に大きく関与する。またC. parapsilosisはキャンディン系抗真菌に低感受性であるために、キャンディン系の使用の多い状況ではさらに発生リスクが高まる。今回の集団発生では、既に環境も深刻に汚染されていたが、このような例での制御は非常に難しいことが予想される。他報告と合わせて読むことをお勧めする。

硝子体内注射後に発生した急性眼内炎のアウトブレイク調査におけるマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)の有用性

Utility of MALDI-TOF mass spectrometry in an outbreak investigation of acute endophthalmitis following intravitreal injection

A. Angrup*, S. Krishnamoorthi, M. Biswal, V. Gautam, P. Ray, A. Agarwal, M.R. Dogra, R. Singh, D. Katoch, V. Gupta
*Post Graduate Institute of Medical Education and Research, India

Journal of Hospital Infection (2018) 100, e253-e256


ベバシズマブは腫瘍血管新生を阻害する組換えヒト化モノクローナル抗体であるが、脈絡膜新生血管の治療に承認外使用が可能である。この薬物の使用後にアウトブレイクが報告されているが、原因は製造時のコンタミネーションか、単一のバイアルから異なる患者に複数回の投与を行なったためのいずれかであった。当施設において、著者らはベバシズマブの硝子体内注射後に発生した 1 件の眼内炎アウトブレイクを調査し、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)を用いて、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)が原因菌であることを迅速に同定し、ベバシズマブの汚染されたバイアルが感染源であることを確認した。本研究の結果は、感染源および病原体の迅速な同定が、適切な感染対策に必要であることを強調するものであった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
眼内炎患者から採取された少量の硝子体内容物から、原因微生物を培養で証明できる例は少なく、技術的にも容易ではない。今回の事例では、一部の例でグラム染色が陽性となり、硝子体液を増菌するステップを経て、検体から直接 MALDI-TOF MS を行い、28 例全例で高いスコアでそれを証明しえた。最終的に本菌が発育したのは 10 例であったので、MALDI-TOF MS の有用性は高いものであった。そしてこのような MALDI-TOF MS の応用を迅速に行い、感染対策に応用できたシステムならびに意識を評価したい。

サイト内検索

Loading

アーカイブ

最新のコンテンツ

Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.