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★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

大腸菌(Escherichia coli)菌血症の負荷に影響する因子:西ロンドンにおける 2011 年から 2015 年のデータの多変量回帰解析

Factors that impact on the burden of Escherichia coli bacteraemia: multivariable regression analysis of 2011-2015 data from West London

O. Blandy* , K. Honeyford, M. Gharbi, A. Thomas, F. Ramzan, M.J. Ellington, R. Hope, A.H. Holmes, A.P. Johnson, P. Aylin, N. Woodford, S. Sriskandan
* Imperial College, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 101, 120-128


背景
抗菌薬耐性と院内感染が疾患負荷に及ぼす影響が懸念される中で、英国において大腸菌(Escherichia coli)菌血症の罹患率は高まりつつある。

目的
西ロンドンにおける大腸菌菌血症の負荷と重症度に対する、院内発症型大腸菌血流感染症および大腸菌の特異的な抗菌薬耐性パターンの相対的寄与を明らかにすること。

方法
2011 年から 2015 年の大腸菌菌血症の全症例において、患者および抗菌薬感受性に関するデータを収集した。感染症のカテゴリー(院内発症型または市中発症型)と、入院期間、集中治療室入室、30 日全死因死亡率の関連を検討するために、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。

結果
研究期間に大腸菌菌血症の罹患率は 76%増加し、これは主に市中発症型症例による。キノロン系、第 3 世代セファロスポリン系、アミノグリコシド系に対する耐性も研究期間を通して増加し、市中発症型と院内発症型の両方で発現した。院内発症型、キノロン系または第 3 世代セファロスポリン系に対する非感受性は、高齢であることと同様に入院期間延長の有意なリスク因子であった。7 日死亡率は 7%、30 日死亡率は 12%であった。高齢、併存疾患スコア高値、3 つのクラスの抗菌薬に対する耐性株による菌血症はすべて、30 日死亡率の有意なリスク因子であった。

結論
多剤耐性、加齢、併存疾患は、有害転帰の主要な誘因であった。大腸菌菌血症の増加は主に市中発症型感染症によってもたらされており、市中発症型症例の予防イニシアチブは、大腸菌感染症の量的負荷を減らすことに重点を置くべきであろう。

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監訳者コメント
市中で伝播する大腸菌などの耐性菌には、健常人でも感染するリスクがあり広範囲のヘルスケア領域でその蔓延が問題となる。在宅医療や介護医療の中での過剰な抗菌薬療法を控えることで耐性化を抑止する必要がある。

グラム陰性菌による血流感染症の半減計画:医療関連大腸菌(Escherichia coli)血流感染症の感染巣に対処する

Planning to halve Gram-negative bloodstream infection: getting to grips with healthcare-associated Escherichia coli bloodstream infection sources

J.A. Otter* , T.J. Galletly, F. Davies, J. Hitchcock, M.J. Gilchrist, E. Dyakova, S. Mookerjee, A.H. Holmes, E.T. Brannigan
* Imperial College London, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 101,129-133


背景
大腸菌(Escherichia coli)による血流感染症(BSI)の局所的な感染巣、リスク、抗菌薬耐性に関して徹底的に理解することが、予防戦略や治療法の的を絞るために必要である。

目的
医療関連大腸菌 BSI の感染巣および抗菌薬耐性についてレビューすること。

方法
我々の 2 次および 3 次ケア病院グループ内で、2014 年 4 月から 2017 年 3 月に発生したすべての医療関連(48 時間後)大腸菌 BSI 250 件において、感染巣および抗菌薬耐性プロファイルについてレビューした。尿路感染巣、消化管感染巣、発熱性好中球減少症に起因する BSI との疫学的関連を、単変量・多変量二項ロジスティック回帰モデルを用いて分析した。

結果
大腸菌 BSI は、2014/2015 会計年度には入院 10,000 件あたり 4.0 件であったのが、2016/2017 会計年度には 4.4 件と 9%増加した。89 例(36%)で尿路感染巣が認められ、このうち 30 例(34%)は尿道カテーテル関連尿路感染症(UTI)と分類された。45 例(18%)は発熱性好中球減少症と関連しており、38 例(15%)で消化管感染巣が認められた。症例と、外科的処置(11 例、4%)または血管内留置デバイス(7 例、3%)との関連は、ほとんどなかった。女性(オッズ比[OR]2.3、95%信頼区間[CI]1.2 ~ 4.6)、高齢(OR 1.02、95%CI 1.00 ~ 1.05)は、尿路感染巣と有意に関連した。消化管感染巣または発熱性好中球減少症と関連する BSI については、有意な関連は確認されなかった。分離株の 47%はシプロフロキサシンに、37%は第 3 世代セファロスポリンに、22%はゲンタマイシンに耐性を示した。

結論
消化管と発熱性好中球減少症を合わせると、地域的には大腸菌 BSI の 3 分の 1 を占めたが、全国的にはほとんど関連がみられなかった。大腸菌 BSI の増加傾向を抑えるために、地域的に、これらの感染巣に的を絞って取り組む必要がある。

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監訳者コメント
こうした耐性大腸菌の論文の増加傾向は、もはや耐性大腸菌の蔓延が社会問題化していると言わざるを得ない。

医療関連グラム陰性菌血流感染症の季節、気象、予測因子:症例のみの研究

Season, weather and predictors of healthcare associated Gram-negative bloodstream infections: a case-only study

F.S. Rodrigues* , F.A. Clemente de Luca, A. Ribeiro da Cunha, C.M.C.B. Fortaleza
* São Paulo State University, Brazil

Journal of Hospital Infection (2019) 101, 134-141


背景
近年の研究では、医療関連感染症(HCAI)の季節性について報告されている。この現象と HCAI の他のリスク因子との関連は明らかではない。

目的
グラム陰性桿菌による医療関連血流感染症(BSI)の季節、気象、および通常の予測因子の相互作用を分析すること。

方法
ブラジルの教育病院において、症例のみの研究を実施した。2012 年 7 月から 2016 年 6 月にグラム陰性桿菌による BSI と診断された患者 446 例を研究に登録した。人口統計学的データ、併存疾患、侵襲的処置、抗菌薬使用についてカルテをレビューした。グラム陰性桿菌による BSI が発生した季節、診断日の気象パラメータを記録した。季節ごと(基準カテゴリー:冬)のグラム陰性桿菌による BSI および種々のグラム陰性桿菌(基準カテゴリー:大腸菌[Escherichia coli])による BSI の発生と関連する因子を分析した。単変量および多変量多項ロジスティック回帰モデルを用いて分析した。

結果
夏に診断されたグラム陰性桿菌による BSI は、クレブシエラ(Klebsiella)属菌(オッズ比[OR]5.33、95%信頼区間[CI]2.04 ~ 13.96)やアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)(OR 2.69、95%CI 1.04 ~ 6.96)に起因する割合が高く、クレブシエラ属菌と春の関連がみられた(OR 2.86、95%CI 1.14 ~ 7.18)。診断日の平均気温は、クレブシエラ属菌(OR 1.19、95%CI 1.07 ~ 1.33 )、A.baumannii(OR 1.20、95%CI 1.07 ~ 1.34)と関連した。

結論
通常のリスク因子を補正したモデルにおいても、暖候期および毎日の気温が、グラム陰性桿菌による BSI の病因に影響を及ぼした。これらの結果に関する説明の 1 つとして、医療関連病原体の季節性は微生物に本来備わっているもので、併存疾患、処置、または抗菌薬使用と関連しないということが考えられる。

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監訳者コメント

2014 年から 2016 年のスロベニア初となる OXA-48 および/または NDM カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)アウトブレイクの制御の成功

Successful control of the first OXA-48 and/or NDM carbapenemase-producing Klebsiella pneumoniae outbreak in Slovenia 2014-2016

M. Pirš* , T. Cerar Kišek, V. Križan Hergouth, K. Seme, M. Mueller Premru, S. Jeverica, M. Logar, T. Mrvič, B. Žnidaršič b, O. Jordan Markočič, T. Lejko Zupanc
* University Medical Centre Ljubljana, Slovenia

Journal of Hospital Infection (2019) 101, 142-149


背景
スロベニアにおいてカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)は散発的な発生にとどまっている。

目的
2014 年 10月から 2015 年 4月にかけて 3 次教育病院 University Medical Centre Ljubljanaで発生した、カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)と大腸菌(Escherichia coli)によるスロベニア初のアウトブレイクについて記述すること。

方法
CPE 陽性例は、CPE 感染または保菌のあらゆる患者と定義した。接触患者に関する厳格な定義づけも行った。交差感染を予防する方法は、厳格な接触予防策および専門医療従事者の配置とともに全 CPE 保菌者コホーティング、培養スクリーニングの結果が出るまでの全接触患者コホーティング、接触患者の系統的な直腸スクリーニング、全 CPE 陽性者とその接触者における識別タグ使用などであった。CPE に関する教育キャンペーンを実施した。臨床検体は標準的な方法により処理した。パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)により関連性を検討した。異なるパルソタイプに属するカルバペネマーゼ産生肺炎桿菌分離株において Multi-locus sequence typing 法を実施した。

結果
制御下でのアウトブレイク発生より前に、40 例の患者で OXA-48 および/またはニューデリー・メタロ‐β‐ラクタマーゼ(NDM)産生 CPE の保菌または感染を認めた。38 例で OXA-48 および/または NDM 産生肺炎桿菌が検出された。7 例で OXA-48 および/または NDM 産生大腸菌が肺炎桿菌とともに検出され、2 例ではカルバペネマーゼ産生大腸菌のみが分離された。アウトブレイクは、疫学的に関連する患者の ST437 と ST147 に属する、2 つの主要なカルバペネマーゼ産生肺炎桿菌クラスターを有するオリゴクロナールであった。

結論
最初の標準的な制御策はアウトブレイクを予防できなかった。問題が認識された時点での、厳格な感染制御策および医療従事者の教育が、アウトブレイク制御の成功に寄与した。

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監訳者コメント
アウトブレイク対策にはその実態を解析し、関係者が認識することにより対策の重要性の動機づけが明確化できる。こうしたアウトブレイク時の解析手法も日々進歩しており、近い将来はかなり短時間で分子疫学的情報が得られる装置が出てくるであろう。

北京の 5 つの大型集中治療室でのスタッフ、環境および患者におけるカルバペネム耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)伝播の前向き調査

Prospective investigation of carbapenem-resistant Klebsiella pneumonia transmission among the staff, environment and patients in five major intensive care units, Beijing

Zhongqiang Yan* , Yu Zhou, Mingmei Du, Yanling Bai, Bowei Liu, Meiliang Gong, Hongbin Song, Yigang Tong, Yunxi Liu
* Chinese PLA General Hospital, China

Journal of Hospital Infection (2019) 101, 150-157


背景
中国の 3 次病院 1 施設の 5 つの集中治療室(ICU)におけるカルバペネム耐性肺炎桿菌(CRKP)の重大なアウトブレイクを受けて、CRKP 保菌/感染患者を対象に前向き調査を実施した。

目的
疫学的に関連する ICU の患者、スタッフおよび環境における CRKP の拡散および伝播について記述すること。

方法
CRKP 感染/保菌症例に対する強化モニタリングを、リアルタイム院内感染症サーベイランスシステムにより実施した。各 CRKP 患者の病床の直接周囲環境、ならびにスタッフの手指/手袋/ガウンについてサンプル採取を行い、CRKP の有無について評価した。抗菌薬感受性検査、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)および全ゲノムシークエンシングを用いて、回収された分離株の同定および特性分析を行った。

結果
モニタリングを行った患者 2,750 例中、67 例が新たに CRKP 患者として同定され、患者から CRKP 分離株 11 株が回収された。病床の計 31.34%(67 床中 21 床)において1 つ以上の環境表面が検査陽性であり、環境サンプルの 7.99%(613 個中 49 個)および ICU スタッフサンプルの 3.57%(112 個中 4 個)が CRKP 陽性であった。選択した CRKP 分離株(N = 64)には、検討した抗菌薬のうちコリスチンおよびチゲサイクリン以外で中 ~ 高度の耐性が示された。リアルタイム院内感染症サーベイランスシステムのデータを MLST および PFGE の結果と合わせると、伝播が生じていると考えられる 9 つのクラスターが明らかにされた。これらの CRKP 分離株を全ゲノムシークエンシングにより分析したところ、これらの分離株において複数の抗菌薬耐性遺伝子およびプラスミドレプリコンが共通して広範に認められることが示された。2 つのカルバペネマーゼ遺伝子として blaKPC-2(64個中62個)および blaOXA-48(64個中2個)が同定された。これらの CRKP 分離株は、1 つ以上のプラスミドレプリコンを有していた。

結論
ICU の環境およびスタッフの手指、手袋またはガウンのコンタミネーションが、CRKP 患者で高頻度に認められた。本研究はまた、ICU において環境コンタミネーションと CRKP の細菌伝播との間に関連があるという仮説を支持している。

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監訳者コメント
カルバペネム耐性肺炎桿菌(CRKP)が検出された患者の 3 割で周囲環境から回収された検体から CRKP が検出された。本文によると、環境ではベッドリネン、枕、ベッド柵、床、デバイス関連では、鼻腔カテーテル、酸素マスク、吸引器などから主に検出されていた。昨今、環境消毒が話題となっているが、ICU などにおいては、早急に考えるべき課題であると思われた。

英国の病院におけるカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌のスクリーニング方法、発生率、検出の指針に関する調査

Survey of screening methods, rates and policies for the detection of carbapenemase-producing Enterobacteriaceae in English hospitals

C. Berry* , K. Davies, N. Woodford, M. Wilcox, C. Chilton
* University of Leeds and Leeds Teaching Hospitals NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 101, 158-162


多剤耐性グラム陰性菌は臨床上の大きな懸念事項である。カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)は、カルバペネム系薬などすべてのβ‐ラクタム系薬に耐性を示すとともに、大腸に定着する能力を有しており、その有病率の増加は重大な脅威となっている。伝播を最小限に抑えるために、CPE の腸管内定着の迅速かつ正確な検出は重要であり、結果的に、費用がかかり治療が困難な CPE 感染症を低減させる。現在のところ「ゴールドスタンダード」とされる CPE 検出法はない。英国の診断検査法の調査により、CPE の診断検査の方法と手順に、かなりのばらつきがみられた。

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監訳者コメント
英国内では、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)のゴールドスタンダートとなる検出法はなく、方法に大きなばらつきがあった、という論文である。日本においては、1 つの指標は「四学会連携提案 カルバペネムに耐性化傾向を示す腸内細菌科細菌の問題(2017)― カルバペネマーゼ産生菌を対象とした感染対策の重要性 ―(2017 年)」http://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=16 であろう。

オーストラリアの病院におけるカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌:高リスク病棟での点有病率スクリーニングの結果

Carbapenemase-producing Enterobacteriaceae in Australian hospitals: outcome of point-prevalence screening in high-risk wards

J.A. Brett* , S.A. Johnson, D.R.M. Cameron, C.R. Lane, M. Easton, A. van Diemen, B. Sutton, A.L. Bull, M.J. Richards, L.J. Worth
* Victorian Healthcare Associated Infection Surveillance System (VICNISS) Coordinating Centre, Australia

Journal of Hospital Infection (2019)101, 163-166


オーストラリアの病院におけるカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)感染症の報告が増えているが、有病率は不明である。2016 年に Victorian 病院は高リスク病棟(集中治療室、血液病棟、移植病棟)でCPE 点有病率調査を実施した。43 の病院が 134 件の調査を行い、高リスク患者 2,342 例のうち 1,839 例(79%)にスクリーニングを実施した。他の病棟で 24 件の調査も実施した。患者の同意を得ることができなかったことが、不参加の主な理由であった。高リスク病棟において CPE 症例は検出されなかったが、他の病棟で 3 例が確認された。高リスク病棟では有病率が低いため、継続的なスクリーニングは推奨されない。患者同意の過程のレビューにより、選択的スクリーニングが推進される可能性がある。

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監訳者コメント
本結果をふまえ、Victorian 病院は定期的な CPE 点有病率調査(PPS)をやめ、保菌者が検出された場合は、最終の探知から 4 週間が過ぎるまで継続して毎週調査を行うことをガイドラインに盛り込んだ。

基質特異性拡張型βラクタマーゼまたはカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌の腟直腸保菌および母子伝播:横断研究

Vagino-rectal colonization and maternaleneonatal transmission of Enterobacteriaceae producing extended-spectrum β-lactamases or carbapenemases: a cross-sectional study

C. Jiménez-Rámila* , L. López-Cerero, M.V. Aguilar Martín, C. Vera Martín, L. Serrano, Á. Pascual, J. Rodríguez-Baño
* Hospital Universitario Virgen Macarena, Spain

Journal of Hospital Infection (2019) 101, 167-174


本研究の目的は、横断研究デザインを用いて、母親 815 例および新生児 800 例を対象に、基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌(ESBL-E)およびカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)について存在率およびリスク因子を明らかにすることであった。ESBL-E を保菌していたのは女性 59 例および新生児 13 例であった(それぞれ存在率 6.7%、95%信頼区間[CI]5.2 ~ 8.7 および 1.6%、95%CI 0.7 ~ 2.5)。CPE は検出されなかった。最も高頻度に認められた ESBL-E は CTX-M-14 および SHV-12 であった。垂直伝播は、保菌していた母親の 14% で発生していた。保菌のリスク因子は、母親については過去の妊娠における合併症、1 回以上の尿路感染症の既往、非白人、および主要な食事を外食している頻度が高いことであり、新生児については母親の保菌および経腟分娩であった。

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監訳者コメント

退院後における OXA-48 カルバペネマーゼ遺伝子を有するプラスミドの腸管内持続

Intestinal persistence of a plasmid harbouring the OXA-48 carbapenemase gene after hospital discharge

F. Lázaro-Perona* , J.C. Ramos, A. Sotillo, J. Mingorance, J. García-Rodríguez, G. Ruiz-Carrascoso, J.R. Paño-Pardo, J.R. Arribas b, R. Herruzo, F. Arnalich
* Hospital Universitario La Paz, Spain

Journal of Hospital Infection (2019) 101, 175-178


退院後における OXA-48産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の腸管保菌について検討するため、保菌歴のある被験者 22 例から便サンプルを採取した。退院後の期間は 33 日から 611 日で、再入院はなかった。8 例(36%)が blaOXA-48 遺伝子の保有者と同定された。これら全例において、病院で獲得された OXA-48 産生肺炎桿菌株は消失しており、blaOXA-48 遺伝子を有していたのは他の肺炎桿菌、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)および/または大腸菌(Escherichia coli)株であった。本研究の所見から、抗菌薬療法を受けていない人のかなりの割合で、腸管内において OXA-48 カルバペネマーゼ遺伝子を有するプラスミドの存在が数か月間にわたり持続することが示された。

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監訳者コメント
薬剤耐性腸内細菌科細菌の保菌期間に関しては様々な研究がある。本研究の興味深いところは、耐性菌は菌株としては消失していたものの、耐性遺伝子としては他の菌株に受け継がれて保存されていたという点である。ただしこれらの結果が臨床的にどのような意味があるかは今後の検討が必要である。

熱傷病棟の湿潤表面の清掃後のサンプルにおけるカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌の検出増加

Increased detection of carbapenemase-producing Enterobacteriaceae on post-clean sampling of a burns unit’s wet surfaces

S.A. Fernando* , T. Phan, C. Parker, T. Cai, T. Gottlieb
* Concord Repatriation General Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2019) 101, 179-182


湿潤表面のバイオフィルムは、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)を含む多剤耐性グラム陰性菌のリザーバの 1 つである可能性がある。環境的な感染源の認識は、2 次的な患者への伝播を減少させる上で重要である。熱傷病棟のシャワールームの床排水管由来の環境サンプルにおいて、清掃後に採取した場合は清掃前に採取した場合と比較して、blaIMP-4 CPE の検出増加がみられたことを報告する。清掃中のバイオフィルムの破壊が多剤耐性菌の検出増加の原因である可能性を提案する。今回の結果により、湿潤環境は認知度は低いが、CPE 伝播の潜在的原因の 1 つという役割を持つことが浮き彫りになった。
清掃前のサンプルに焦点を合わせた環境スクリーニングのみでは、環境汚染を過小評価してしまう可能性が高い。

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監訳者コメント
なんと、清掃「後」の方が、清掃「前」よりも、検出される耐性菌の菌量が「増加」するという論文である。清掃によってバイオフィルムを破壊した方が、その中の菌の検出が増加するというのである。この発想はなかったな…「清掃前のサンプルだけで評価してはいけない」ということで、「清掃したから大丈夫だろう」という発想は、特にバイオフィルムを形成する細菌の場合は当てはまらないということだろうか。今後の同様の研究に注目である。

ナーシングホームにおけるカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌の制御戦略:アウトブレイク 3 件から得た展望

Control strategy for carbapenemase-producing Enterobacteriaceae in nursing homes: perspectives inspired from three outbreaks

C. Legeay* , R. Hue, C. Berton, H. Cormier, R. Chenouard, S. Corvec, G. Birgand
* Angers University Hospital, France

Journal of Hospital Infection (2019) 101, 183-187


フランス西部のナーシングホーム 3 施設におけるカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)のアウトブレイク 3 件を、後向きに評価した。近隣の病院への入院時に、CPE の保菌または感染が全体で 10 例検出された。それらの症例において、抗菌薬の使用または身体的な脆弱性の高さはほとんどみられなかった。ナーシングホームは、CPE の蔓延を抑制するための地域戦略に含めるべきである。

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監訳者コメント
ナーシングホームも CPE のアウトブレイク・水平伝播の重要なソースになるとする報告である。ただし考察では、ナーシングホームで厳密な接触予防策をすべきだとするのではなく、まずは標準予防策を徹底すべきだとしている。日本でも長期療養施設における感染対策はまだ議論が始まったところである。このような研究結果やわが国の耐性菌の検出状況も見ながら、日本の長期療養施設での感染対策を考えていく必要があるだろう。

日帰り手術後の手術部位感染症に関するシステマティックレビュー:有病率の頻度論およびベイズ論に基づくメタアナリシス

A systematic review of surgical site infections following day surgery: a frequentist and a Bayesian meta-analysis of prevalence

D. Pivot* , G. Hoch, K. Astruc, D. Lepelletier, A. Lefebvre, J-C. Lucet, M. Beaussier, H-J. Philippe, C. Vons, J-P. Triboulet, B. Grandbastien, L.S. Aho Gléléa
* University Hospital, Dijon, France

Journal of Hospital Infection (2019) 101, 196-209


背景
1990 年以降、いくつかの研究により、日帰り手術に関連する安全性および患者の満足度に焦点が当てられた。しかし、今日まで、手術部位感染症(SSI)の全有病率を検討したメタアナリシスは行われていない。

目的
日帰り手術後の SSI の全有病率を、手術手技の種類にかかわらず推定すること。

方法
日帰り手術後の SSI の有病率について、2016 年 6 月以前のすべての研究を対象として、手術手技の種類にかかわらず、システマティックレビューおよびメタアナリシスを実施した。DerSimonian と Laird の方法を用いた統合ランダム効果モデルにより、全有病率を推定した。二重逆正弦変換を用いて、割合の分散の安定化を行った。感度分析を実施してこの方法の頑健性を検証した後、単変量および多変量メタ回帰を用いて、発表日、研究実施国、研究対象集団、専門科の種類、コンタミネーションのレベル、日帰り手術後の患者の術後来院日、および病院ケアの実施時間の影響を検討した。

結果
観察研究および無作為化研究の両方を含め、90 報の論文を分析した。日帰り手術を受けた患者の SSI 全有病率は推定で 1.36%(95%信頼区間 1.1 ~ 1.6)であり、ベイズ確率は 96.5%が含まれ、1 ~ 2%の区間であった。論文の発表日は SSI 有病率と関連しており(相関係数 -0.001、P = 0.04)、また専門科(消化器科手術と消化器科以外の手術との比較)には SSI 有病率と関連する傾向が認められた(相関係数 0.03、P = 0.064)。

結論
本メタアナリシスから、手術手技にかかわらず日帰り手術後の SSI 有病率は低いことが示された。

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監訳者コメント
日帰り手術は 1960 年代に米国や英国等で開始され、その手技は確実に発展してきている。日帰り手術のメリットは、患者医師共に満足度が高く、予定の立てやすさ、低コストなことである。しかしながら、そのメリット以外に、術後の合併症、特に手術部位感染は退院後に発生するため注意深い経過観察が必要である。日帰り手術の開始後、年代が進むにつれて SSI の発生率は減少し、通常の入院手術とほぼ変わらないか、低いことが報告されている。しかしながら、より健康な患者が日帰り手術を選択されているというバイアスの結果、SSI が低いとする報告もある。本論文は日帰り手術の SSI に関する初めてのメタ解析の論文であり、その意義は大きい。今後入院手術と日帰り手術の両者について同一の手術手技での比較研究が必要である。

術前の無症候性細菌尿:人工関節感染症のリスク因子か?

Pre-operative asymptomatic bacteriuria: a risk factor for prosthetic joint infection?

R. Weale* , F. El-Bakri, K. Saeed
* Basingstoke Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 101, 210-213


背景
感染症は、人工関節置換術施行後のまれな合併症である。待機的手術における術前の無症候性細菌尿の影響、ならびに術後の人工関節感染症リスクについては、十分に理解されていない。

目的
股関節および膝関節に対する関節全置換術を受けた患者における無症候性細菌尿の有病率を評価すること、ならびに関節全置換術施行後 2 年以内に診断された人工関節感染症の有病率と、無症候性細菌尿が人工関節感染症発症の独立リスク因子であるかどうかを明らかにすること。

方法
膝関節単顆置換術/膝関節全置換術または股関節全置換術を受けた患者を対象に、5 年間にわたる後向きレビューを実施した。術前 1 年以内の尿サンプルを分析し、無症候性細菌尿の患者を同定した。主要アウトカムは、術後 1 年以内の人工関節感染症とした。

結果
患者計 5,542 例を組み入れた。これらのうち、4,368 例で術前の尿培養結果が記録されていた。無症候性細菌尿の有病率は、4,368 例中140例(3.2%)であった。人工関節感染症の全発生率は 5,542 例中 56 例(1.01%)であった。これらの人工関節感染症患者のうち、33 例で術前の尿培養結果が記録されていた。感染症発生率は、無症候性細菌尿群で 5%(140 例中 7 例)、非無症候性細菌尿群で 0.61%(4,228 例中 26 例)、ならびに尿サンプルが得られていなかった群で 1.96%(1,174 例中 23 例)であった(P < 0.001)。無症候性細菌尿から回収された分離株は、人工関節感染症患者 7 例中 1 例で回収された分離株と同じ微生物であった。

結論
無症候性細菌尿と人工関節感染症との関連は統計学的に有意であったが、尿分離株は人工関節と関係しておらず、このことからこの関連は因果関係とは考えられないことが示唆される。

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監訳者コメント
高齢化と疾患保有者の増加により、人工関節置換術数は増加している。人工関節感染症(PJI)は重大な術後合併症であり、QOL に大きく影響する。手術室の無菌層流、器具の厳格な滅菌術、精力的な術創管理により外因性因子は減少したが、患者自身の常在菌叢による内因性感染が残っている。英国のガイドラインでは、尿検査は術前のルーチン検査として推奨されているが、陽性だった場合の対応については規定されていない。本論文では無症候性細菌尿はの危険因子となりうるのか?という疑問に対する 1 つの答えがでている。PJI の原因菌は表皮ブドウ球菌や黄色ブドウ球菌などのグラム陽性球菌(GPC)であり、グラム陰性桿菌(GNR)が原因となることはまれである。一方、無症候性細菌尿は大腸菌などの GNR が大半である。

両側関節の同時関節全置換術は段階的関節全置換術と比べて深部感染症リスクを高めるか?メタアナリシス

Does simultaneous bilateral total joint arthroplasty increase deep infection risk compared to staged surgeries? A meta-analysis

C. Xu* , P. Qua, T. Deng, K. Bell, J. Chen
* General Hospital of People’s Liberation Army, China

Journal of Hospital Infection (2019) 101, 214-221


背景
いくつかの研究が、同時両側関節全置換術または 1 次関節全置換術後に実施する段階的両側関節全置換術を受けた患者を対象に、人工関節周囲感染症の発生率を比較している。しかし、これらの研究は統計学的検出力が不十分であった。

目的
メタアナリシスを実施して、同時両側関節全置換術では段階的両側関節全置換術と比べて深部感染症の発生率が高くなるかどうかを明らかにすること。

方法
すべての研究を、PubMed、Embase、Cochrane Library databases、Web of Science、PEDro、CINAHL、SPORTDiscus、および Scopus から抽出した。メタアナリシスを実施して、同時両側関節全置換術および段階的両側関節全置換術の患者において人工関節周囲感染症の発生率を比較した。

結果
全体で 16報の研究が、同時両側関節全置換術を受けた患者 36,765 例および段階的両側関節全置換術を受けた患者 71,558 例を対象としていた。統合したデータから、人工関節周囲感染症の発生率は同時両側関節全置換術のほうが段階的両側関節全置換術より低かった(0.84%対1.57%、オッズ比[OR]0.57、95%信頼区間[CI]0.49 ~ 0.66、不均一性 I2 = 0%、P = 0.74)。サブグループ解析では、統合したデータから、人工関節周囲感染症には同時両側関節全置換術群と段階的両側関節全置換術群の間で、2 群のベースラインの人口統計学的背景が同様の場合は有意差がないことが示された(4 研究、OR 0.55、95%CI 0.21 ~ 1.40、不均一性 I2 = 0%、P = 0.77)。統合したデータから、同時両側関節全置換術群の人工関節周囲感染症発生率は、段階的手術の間隔が 3 か月以内の段階的両側関節全置換術群と同様であることが示された(3 研究、OR 1.22、95%CI 0.38 ~ 3.88、不均一性 I2 = 0%、P = 0.42)。

結論
同時両側関節全置換術は段階的両側関節全置換術と比較して、術後の人工関節周囲感染症のリスクを高めない。これら2種類の術式を評価するための質の高いエビデンスを得るために、さらなる研究が必要である。

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監訳者コメント
膝関節および股関節の両側関節全置換術に関して、同時実施と段階的実施についてどちらを選択するかについては EBM に基づいたガイドラインがない。人工関節周囲感染症は主要な合併症であり、発生した場合の精神的・経済的影響は大きい。これまでの人工関節周囲感染症の発生率についての研究では、症例数が少なく、執刀医によるバイアス(同一執刀医が、1 回の手術で片方の後に反対側の手術を連続的に実施するのか、左右同時に別々の外科医が執刀するのかなど)、手術間隔が異なるなどにより統計学的解析力が不十分であったが、本論文は過去の 16 論文をメタ解析とともに種々のサブ解析を実施しているが。しかしながら、本論文で引用した論文の大半が後向き研究であるため、さらなら大規模な無作為前向き研究が必要である。

肥満と喫煙および炎症性関節症の交互作用は人工関節周囲感染症のリスクを増加させる:中国漢民族における傾向スコアマッチング研究

Interaction of obesity with smoking and inflammatory arthropathies increases the risk of periprosthetic joint infection: a propensity score matched study in a Chinese Han population

C. Xu* , H. Guo, Q. Wang, P. Qu, K. Bell, J. Chen
* General Hospital of People’s Liberation Army, China

Journal of Hospital Infection (2019) 101, 222-228


背景
肥満を人工関節周囲感染症(PJI)発症の独立したリスク因子の 1 つとして特定した研究は多いが、肥満と PJI 関連の他の因子との相乗的影響は不明なままである。さらに、対象を中国人集団に特化して PJI のリスク因子を調査した研究はほとんどない。

目的
中国人集団において肥満と PJI の関連性を検討し、肥満と PJI 発症に関する他のリスク因子との相乗的影響を明らかにすること。

方法
2008 年から 2015 年の間に、単一施設で初回の人工股関節全置換術または人工膝関節全置換術後に PJI の診断を受けた患者 307 例を特定した。各症例は、試験期間において初回の人工股関節全置換術または人工膝関節全置換術後に PJI を発症しなかった対照例と複数の重要なパラメータを一致させた傾向スコアを用いてマッチングを行った。多変数ロジスティック回帰モデルを用いて、体格指数(BMI)と PJI の発症リスクとの関連性を評価した。年齢、性別、手術の種類、喫煙状態、アルコール摂取、糖尿病、炎症性関節炎、肝疾患および腎疾患について、交互作用解析および層別解析を実施した。

結果
多重ロジスティック解析により、肥満は PJI のリスク増加に関連していることが示された(オッズ比[OR]2.48、95%信頼区間[CI]1.66 ~ 3.69)。連続変数として解析した場合、BMI もPJIのリスク増加に関連していた(BMI において 1 kg/m2 増加につき OR 1.08、95%CI 1.02 ~ 1.14)。交互作用解析において、肥満であり喫煙者の患者は、肥満であり非喫煙者の患者と比較して、PJI 発症の OR が高かった(OR 3.54 対 1.55、交互作用の P 値 = 0.031)。同様に、肥満であり炎症性関節炎を有する患者は、肥満であり炎症性関節炎の既往がない患者と比較して、OR がはるかに高かった(OR 3.9 対 1.55、交互作用の P 値 = 0.029)。肥満と PJI の関連性において、その他の有意な交互作用は認められなかった。

結論
中国漢民族において、肥満は PJI 発症の独立したリスク因子の 1 つである。外科医は、喫煙するまたは炎症性関節炎を有する肥満患者は、PJI のさらなるリスク増加にさらされていることに注意すべきである。

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監訳者コメント
これまで PJI には、手術の既往、糖尿病、栄養不良、病的肥満、CKD、喫煙、アルコール、男性、外傷後の関節炎、炎症性関節炎、免疫不全など多くのリスク因子が指摘されてきた。今回の検討は母集団を中国漢民族とし、肥満およびこれらの交絡因子の影響を解析したものである(ただし手術が施行された全数は明らかにされていない)。各因子の影響の提示の他、BMI が25 ~ 30の場合の PJI のリスク増加の程度も明らかにされており、日本人にも参考になる結果といえる。

感染または保菌している同室患者および前入室患者への曝露は、同じ微生物による医療関連感染症のリスクを増加させる

Exposure to infected/colonized roommates and prior room occupants increases the risks of healthcare-associated infections with the same organism

Yi-Le Wu* , Xi-Yao Yang, Xiu-Xiu Ding, Ruo-Jie Li, Meng-Shu Pan, Xue Zhao, Xiao-Qian Hu, Jing-Jing Zhang, Li-Qi Yang
* The Second Affiliated Hospital of Anhui Medical University, China

Journal of Hospital Infection (2019) 101, 231-239


背景
医療環境における病原微生物の生存は、医療関連感染症(HAI)の罹患において重要な役割を果たしている。

目的
本メタアナリシスは、病原微生物が同室患者および以前の入室患者(前入室患者)から他の入院患者へ伝播し、結果として HAI のリスクを増加させる可能性があるかを検討するために実施した。

方法
PubMed(1966 年 1 月から)および Embase(1974 年 1 月から)を検索し、2018 年 3 月までの研究を特定した。Newcastle-Ottawa Scale を用いて研究の質の評価を行った。I2 検定を用いて異質性を評価した。より控えめな推定を示すランダム効果モデルを適用した。サブグループ解析、累積メタアナリシス、出版バイアス評価、および感度分析を実施した。すべての統計解析は統計ソフトウエア Stata のバージョン 9 を用いて行った。

結果
33,153 例の被験者を含む 12 件の研究で、感染または保菌している同室患者への曝露によるリスクが報告された。また、49,839 例の被験者を含む 9 件の研究で、感染または保菌している前入室患者によるリスクが報告された。感染または保菌している同室患者(オッズ比[OR]2.69、95%信頼区間[CI]1.61 ~ 4.49)および前入室患者(OR 1.96、95%CI 1.36 ~ 2.68)への曝露は、同じ微生物による HAI のリスク増加に関連していた。感度分析結果では、総合所見の大きな変化は示されなかった。出版バイアスは検出されなかった。

結論
本メタアナリシスにより、感染または保菌している同室患者および前入室患者への曝露は、同じ微生物による HAI のリスクを有意に増加させることが示された。保健当局および病院は、現在の消毒と隔離に関する基準やプラクティスは医療環境における病原体の伝播を阻止するのに十分でないことが多いという事実をより重要視すべきであり、この事実により最終消毒と間欠消毒の強化および HAI 減少のための厳重な隔離が正当化される可能性がある。

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監訳者コメント
今回のメタアナリシスで得られた同室患者、前入室患者からの HAI リスク増加は、これまでの研究結果と我々医療従事者の業務上の感覚からも頷けるものであろう。環境の最終消毒の手法、および有用性と限界に関する検討結果も集積されつつあり、最終消毒に関して感染管理担当者と清掃担当者によるバディシステムの有効性を示唆した報告もある。

病院および地域環境において、総コロニー数による全体のバイオバーデンは臨床的重要性が高い病原体の存在を予測しない

Overall bioburden by total colony count does not predict the presence of pathogens with high clinical relevance in hospital and community environments

F.C. Widmer* , R. Frei, A. Romanyuk, S. Tschudin Sutter, A.F. Widmer
* University Hospital and University of Basel, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2019) 101, 240-244


背景
医療関連感染症(HAI)は何百万もの患者に影響を及ぼし、罹患率および死亡率を上昇させている。HAI の病原体は患者自身の菌叢および環境の両方に由来しており、多剤耐性菌を含む。

目的
異なる種類の高頻度接触面におけるバイオバーデンを測定すること。また培養された菌は菌種レベルまで同定し、臨床的重要性が低いものと高いものとに層別化すること。

研究デザイン
3 次病院 1 施設および都市環境において、バイオバーデンと臨床的重要性が高い病原体の存在との関連性を検討する。

方法
全体のバイオバーデンは、臨床的重要性が高い病原体の検出向上のためトリプチックソイ接触寒天培地および 2 種類の選択寒天培地を用いて評価し、総コロニー数を計測した。分離株は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF)を用いて菌種レベルまでルーチンに同定した。臨床的重要性が高い病原体の定義は、米国疾病対策センターがまとめたリストに基づいた。

結果
全体で、477 の表面(うち 153 は病院由来、324 は公的に利用可能な施設または器材由来)から接触寒天培地1,431 枚の培養を採取した。うち73 検体から臨床的重要性が高い病原体が1 つ以上検出された。総コロニー数は臨床的重要性が高い病原体の存在との相関性が乏しいことが確認された。

結論
総コロニー数は臨床的重要性が高い病原体の存在をほとんど予測せず、環境微生物調査の結果を解釈困難にした。MALDI-TOF によって環境由来の多数の分離株を低コストで同定できる。環境汚染に関する今後の研究では、発育した微生物の同定にはMALDI-TOF を用いるべきである。

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監訳者コメント
本検討で得られた、臨床的重要性が高い微生物数と総コロニー数との乖離は、我々医療従事者の日常的な感覚とも合っているのではないだろうか。環境微生物調査では目的に沿い、どのような手法を用いてどこまで同定するのかが重要であるが、細菌叢の予想が立てにくい場合も多い。MALDI-TOF の利活用は有用なアプローチとして期待できるものといえる。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.