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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

多剤耐性グラム陰性菌の制御のためのガイドラインを実践に移すことができるか?ガイドライン遵守の全国調査および使用されているガイドラインの比較

Can guidelines for the control of multi-drug-resistant Gram-negative organisms be put into practice? A national survey of guideline compliance and comparison of available guidelines

B.L. Lynch* , K. Schaffer
* Mater Misericordiae University Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2019) 102, 1-7


多剤耐性グラム陰性菌は、新たな世界的脅威となっており、これはアイルランドや各国における感染症発生率の上昇に反映されている。この脅威への対処は、感染予防・制御(IPC)ガイドラインの策定である。国内ガイドラインの遵守について評価するために、アイルランドの IPC チームへの調査を実施した。これらの調査結果を状況の中で捉えるために、アイルランドの Health Protection Surveillance Centre の IPC ガイドラインを、Healthcare Infection Society、欧州臨床微生物学・感染症学会、米国疾病対策センターのガイドラインと比較した。さまざまな種類の病院の 33%から回答を得た。その結果から、アイルランド全域におけるガイドライン実践のばらつきとともに、国際的にもガイドライン間の相違が浮き彫りにされた。多剤耐性グラム陰性菌スクリーニングのガイドラインの大部分を遵守しているという回答は 90%未満であった。病院間で隔離室の利用に差があり、利用可能な個室は平均 29%(2.6 ~ 100%)であり、多剤耐性グラム陰性菌を有する患者によっては、隔離されないこともある。個人防御用装備に関するガイドラインの適用に大きなばらつきがみられた。この調査によって、Health Protection Surveillance Centre ガイドラインの適用について実態を知ることができる。多剤耐性グラム陰性菌の IPC のための 5 種類のガイドラインの比較によって、調査結果を状況の中で捉える。 IPC の主な原則は、ガイドライン全体を通して標準的であるが、多剤耐性グラム陰性菌伝播の低減においてどのような実践が有効かつ費用効果的であることを示す研究に、意義があると思われる。

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監訳者コメント
ガイドラインは法律ではなく、記載内容の遵守には当然限界がある。法的拘束力を持たないガイドラインを遵守させるには、何らかのインセンティブが必要となる。病床稼働の観点から個室運用がままならない医療機関にとって理想論ばかりかき立てるガイドラインを遵守するゆとりはなく、国策としての改善策が求められる。

基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌の保菌または感染の臨床予測モデル:システマティックレビュー

Clinical prediction models for ESBL-Enterobacteriaceae colonization or infection: a systematic review

S. Mohd Sazlly Lim*, P.L. Wong, H. Sulaiman, N. Atiya, R. Hisham Shunmugam, S.M. Liew
*Universiti Putra Malaysia, Malaysia

Journal of Hospital Infection (2019) 102, 8-16


背景
特定のグラム陰性菌におけるβラクタマーゼ耐性は、死亡率、入院期間、入院費の増加と関連している。

目的
基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生腸内細菌科細菌の感染または保菌の既存の臨床予測モデルを特定し、厳密に評価すること。

方法
開始から 2018 年 4 月まで、電子データベース、参考文献一覧、引用文献を調査した。ESBL 産生腸内細菌科細菌の感染または保菌のリスクを予測するモデルとスコアの開発または検証、あるいはその両方が記載された文献を、言語を問わず抽出した。

結果
全体で 1,795 件の論文を抽出し、そのうち 4 件の論文をレビューの対象とした。含まれた研究は、異なる地理的地域で実施され、研究デザイン、選択基準、除外基準が異なっていた。すべてではないが、大部分の研究で、予測変数や転帰の評価において外部検証および評価者の盲検化がなされていなかった。すべての研究で、欠失データが除外され、大部分の研究では、欠失データのために除外した患者数が報告されていなかった。ESBL 産生腸内細菌科細菌の感染または保菌の 15 の予測因子が特定された。頻度の高い予測因子は、抗菌薬使用歴、入院歴、他の医療施設からの転院、手技(尿路カテーテル、侵襲的手技)の既往であった。

結論
研究デザインに限界とばらつきがあるため、臨床医は診療においてこの臨床予測モデルをいかに利用すべきか決める際、このような違いを考慮せざるを得ない。外部検証をしなかったことで、このモデルの一般化可能性は依然として課題である。したがって、意思決定の支援におけるこのモデルの有用性を確認するために、地域環境でのさらなる外部検証が必要である。

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監訳者コメント
システマティックレビューを実施し、質の高い報告書をとりまとめるには個々の論文の研究デザインの妥当性が最も重要である。選択した論文の研究デザインの乖離が激しければ、分析の俎上に載せることが困難となり、分析結果も惨憺たるものになる。

英国におけるカルバペネマーゼ産生グラム陰性菌の強化サーベイランスを目的とした電子報告システムの評価

An evaluation of the electronic reporting system for the enhanced surveillance of carbapenemase- producing Gram-negative bacteria in England

D. Jermacane*, C.M. Coope, D. Ironmonger, P. Cleary, B. Muller-Pebody, R. Hope, S. Hopkins, R. Puleston, R. Freeman, K.L. Hopkins, A.P. Johnson, N. Woodford, I. Oliver
*Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 102, 17-24


背景
2015 年 5 月、Public Health England は、カルバペネマーゼ産生グラム陰性菌の強化サーベイランスのための電子報告システムの利用を開始した。

目的
この評価の目的は、提供されるデータの採取、適時性、完全性を調査することと、システムの導入において可能性のある阻害因子および促進因子を調査することである。

方法
評価は、サーベイランスデータの後向き解析および電子報告システム使用者との半構造化面接から成る。

結果
電子報告システムによって、カルバペネム耐性の調査に回された微生物の割合は、実施から最初の 12 か月にかけて 35%から 73%に増加し、データの採取は英国の各地域において大きく異なった。強化されたデータ領域の完全性は、提出された分離株の 78%で不良であった。電子報告システムにより報告した確認検査の結果によると、日数の中央値は、地域サービスでは 1 日、英国の照会研究所では 9 日であり、この研究所ではカルバペネマーゼ陰性を確定するために、さらに表現型検査を実施している。電子報告システムの利用を阻害する因子として、システム維持管理・技術支援・開発に向けて指定された持続的なリソースがないこと、電子報告システムをいつ、どのように使用するか、また作業量に関して明確でないことが挙げられる。不完全なデータにより、英国におけるカルバペネマーゼ産生グラム陰性菌の重要な危険因子や伝播経路について理解を深めることができなかった。

結論
英国において、電子報告システムは、カルバペネマーゼ産生グラム陰性菌の重要な危険因子に関する情報を収集しうる唯一のサーベイランスシステムであり、この蔓延の制御を図る公衆衛生対策のために情報を提供する。電子報告システムは、他のサーベイランスシステムよりも、カルバペネマーゼ産生グラム陰性菌に関してはより多くの情報を取り込むが、目的とする健康上の利益を提供するために、強化されたデータの適時性および完全性について実質的な改善が必要である。

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監訳者コメント
国レベルの網羅的なカルバペネマーゼ産生グラム陰性菌の電子報告システムの活用は、実態把握を可能にし、改善策を練るのに重要な役割を果たす。

再入院時のカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌の消化管保菌と抗菌薬曝露の影響

Carbapenemase-producing Enterobacteriaceae digestive carriage at hospital readmission and the role of antibiotic exposure

S. Evain*, C. Bourigault, M.-E. Juvin, S. Corvec, D. Lepelletie
*University of Nantes, France

Journal of Hospital Infection (2019) 102, 25-30


背景
カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)の保菌は、とくに細菌叢の変化がみられる患者において、退院後数か月間にわたり持続する可能性がある。

目的
OXA-48 CPE のアウトブレイク期間中に確認された OXA-48 CPE 陽性歴のある患者が、どの程度再入院したか特定すること、再入院時および再入院中における消化管の CPE 陽性またはCPE 陰性について評価すること、および抗菌薬曝露が再入院中の CPE 保菌状態に及ぼす影響を評価すること。

方法
2013 年 6 月から 2016 年 5 月までの CPE の全患者コホート(189 例)を調査データベースに登録し、病院内の具体的な患者集団数による毎日の情報およびアラートプログラムを用いて再入院時に系統的に確認した。コホートの各患者において、CPE 保菌のスクリーニングを再入院当日と、入院期間が 6 日を超えた場合は週 1 回、系統的に実施した。

結果
全体で、CPE 保菌歴のある患者 114 例(60.3%)が当院に再入院した。再入院の期間が 24 時間未満のためスクリーニングを受けなかった患者 12 例を除外すると、最初の再入院時に、88 例(86.3%)が CPE 陰性、14 例(13.7%)が CPE 陽性であった。研究期間中、CPE 陽性の 14 例は感染状況に変化がなく、CPE 陽性のままであった。陰性患者 88 例のうち、65 例は研究期間中、陰性のまま経過し、23 例は再入院時スクリーニングで陰性であったが、その後、CPE 陽性となった。CPE 陽性は、再入院期間の抗菌薬曝露と有意に関連した(P < 0.001)。

結論
再入院時スクリーニングで陰性であることが、必ずしも CPE 保菌の消失を予測しない。抗菌薬曝露が、持続的な CPE 陽性のリスクに影響するようである。

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監訳者コメント
CPE 保菌歴のある患者の再入院時の CPE 保菌について調べた論文である。再入院時のCPE 陽性率は14%、特に、3 か月以内の再入院患者で多く見られた。再入院までの期間と CPE 保菌への影響は、再入院時のスクリーニングポリシーを考える際に、1 つのリスクファクターとなりえる。

排泄物管理と基質特異性拡張型β‐ラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌の発生率との関連:医療従事者の知識と実践の影響

Association between excreta management and incidence of extended-spectrum β-lactamase producing Enterobacteriaceae: role of healthcare workers’ knowledge and practices

T.T.H. N’Guyen*, C. Bourigault, V. Guillet, A-C. Guille des Buttes, E. Montassier, E. Batard, G. Birgand, D. Lepelletier
*University of Nantes, France

Journal of Hospital Infection (2019) 102, 31-36


背景
近年、医療環境における基質特異性拡張型β‐ラクタマーゼ(ESBL)産生腸内細菌科細菌の伝播は、公衆衛生上の深刻な脅威となっている。

目的
医療従事者が排泄物をどのように管理しているか、ならびに、その管理と ESBL 産生腸内細菌科細菌の発生率との関連の可能性を評価すること。

方法
74 の医療部門における医療従事者 800 名および管理看護師 74 名を対象に、知識および実践について評価するため、ならびに、排泄管理に利用する備品を確認するために、2 種類の自記式質問票を用いて調査した。利用される備品、知識、および実践に関する成績について、事前に設定された閾値に基づき、良(スコア 1)、中等度(スコア 2)、不良(スコア 3)とスコア化した。線形回帰を用いて、医療従事者の知識・実践と ESBL 産生腸内細菌科細菌の発生率との関連を評価した。

結果
医療従事者 688 名(86%)と管理看護師全員が調査に参加した。スコア 1、2、3 とした回答者の割合は、備品については、それぞれ 14.8%、71.6%、17.6%、知識について 30.1%、40.6%、29.3%、実践について 2.0%、71.9%、26.1%であった。単回帰数学モデルでは、医療従事者の実践の不良(スコア 3)が、ESBL 産生腸内細菌科細菌の発生率の増加と有意に関連した(P = 0.002)。

結論
医療従事者による排泄物管理の実践とESBL産生腸内細菌科細菌の発生率との間に正の相関がみられ、とくに外科病棟において顕著であった。多剤耐性菌の伝播をより制御するためには、医療従事者の知識と実践を強化する公衆衛生上の取り組みの策定が急務であり、この取り組みを感染制御プログラム内に統合すべきである。

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監訳者コメント
ESBL 産生菌の発生率と排泄物処理に関する医療従事者の知識と実践について調査した論文である。まとめると、適切な処理方法を理解していないことは ESBL 産生菌の発生率を上げる、ということになるが、論文の結果に掲載されている個々の因子は、日本においても、検討すべき課題であると思われた。

複雑性尿路感染症で入院した患者のカルバペネム非感受性グラム陰性菌感染症に起因する臨床的・経済的負荷

Attributable clinical and economic burden of carbapenem-non-susceptible Gram-negative infections in patients hospitalized with complicated urinary tract infections

Y.P. Tabak*, A.H. Sung, G. Ye, L. Vankeepuram, V. Gupta, E. McCann
*Becton, Dickinson and Company, USA

Journal of Hospital Infection (2019) 102, 37-44


背景
グラム陰性菌による複雑性尿路感染症(UTI)は、患者および病院に深刻な結果をもたらしうる。

目的
米国の 78 の病院において、カルバペネム非感受性グラム陰性菌(耐性/中等度)感染症に起因する臨床的・経済的負荷を、カルバペネム感受性グラム陰性菌感染症と比較して評価すること。

方法
重複のない尿由来のカルバペネム非感受性分離株およびカルバペネム感受性分離株すべてを分析した。サブセットは、複雑性 UTI を示す ICD-9-CM 主診断コードを有した。採取時間(入院後 3 日未満対 3 日以上)によって、分離株を市中発症型または病院発症型に分類した。カルバペネム非感受性グラム陰性菌感染群とカルバペネム感受性グラム陰性菌感染群の傾向スコアマッチングにより、死亡率、30 日再入院、入院期間(LOS)、病院費、および純損益(米ドル)について確認し、カルバペネム非感受性グラム陰性菌に起因する負荷を推定した。十分な患者数から成る 3 つのサブグループ(主診断が複雑性UTI・市中発症型、主診断が他の疾患・市中発症型、主診断が他の疾患・病院発症型)で分析を実施した。

結果
カルバペネム非感受性グラム陰性菌に起因する死亡リスク(58%)は、他の主診断・病院発症型サブグループのみで有意に高かった(オッズ比 1.58、95%信頼区間 1.14 ~ 2.20、P < 0.01)。カルバペネム非感受性グラム陰性菌に起因する 30 日再入院のリスクは、29%~ 55%の範囲であり(すべてP < 0.05)、経済的影響の平均は、LOS 延長 1.1 ~ 3.9 日(すべて P < 0.05)、総費用増加 1,512 ~ 10,403 米ドル(すべて P < 0.001)、純損失 1,582 ~ 11,848 米ドル(すべて P < 0.01)であった。全体的な負荷およびカルバペネム非感受性グラム陰性菌に起因する負荷は、他の主診断・病院発症型のサブグループでもっとも大きかった。

結論
カルバペネム非感受性グラム陰性菌感染症の患者は、カルバペネム感受性グラム陰性菌感染症の患者と傾向スコアをマッチさせた比較において、複雑性 UTI が主診断であるか否かにかかわらず、臨床的・経済的負荷がより大きく、この負荷は病院発症型の感染症においてもっとも大きかった。

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監訳者コメント
米国 78 病院から集められた 4 万件を超える尿由来のグラム陰性菌分離株とその背景について解析した論文である。サブグループ解析から得られた結果から病院発症型の尿路感染症の持つ負荷について明らかにした。

アシネトバクター―感染制御に対するトロイの木馬か?

Acinetobacter ― the trojan horse of infection control?

L. Teare*, N. Martin, W. Elamin, K. Pilgrim, T. Tredoux, J. Swanson, P. Hoffman
*Broomfield Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 102, 45-53


背景
地域の熱傷集中治療室(ICU)において、OXA-23 産生および OXA-51 産生多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumanii)の 5 件の症例が発生した。3 例は国外の他の地域(ドバイ、ムンバイ)から移送され、入院時に保菌していた。2 例は、最適な予防策にもかかわらず、多剤耐性 A. baumanii を獲得した。2 例とも同室でケアを受けていた。

方法
地域の熱傷 ICU における多剤耐性 A. baumanii アウトブレイクに関する多領域専門家による調査。

結果
最初の症例の伝播機序は、共用の廊下に多剤耐性 A. baumanii を飛散させるような、手術室の動きによる汚染空気であったと考えられる。最初の症例と2 例目のあいだに手術室に入った多剤耐性 A. baumanii 感染患者はいなかった。2 件の獲得例の内 2 件目の症例の伝播機序は、患者の使用後に汚染除去が不十分であったシャワーユニットによると考えられる。

結論
接触予防策および環境清掃が最適な状況でのアウトブレイクにおいて、他の伝播機序について慎重に検討することが重要である。これを怠ると、伝播の真の原因に対処することができず、問題が再発する可能性がある。熱傷治療施設内の熱傷手術室は、陰圧で管理されるようデザインすべきであると推奨されている。これは、一般的な手術室の換気と反対である。シャワーが使用される場合、耐性菌を有する患者の使用後に、シャワーヘッドとホースの両方を交換すべきである。非接触式消毒装置(過酸化水素の散布など)の作用について再考する必要があり、室内の「トロイの木馬」的なあらゆる事項に対して、常に警戒すべきである。

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監訳者コメント
日本でも多剤耐性アシネトバクター属菌の持ち込みとそれに引き続いた院内拡散によるアウトブレイクが度々報告されている。まずは持ち込み例に注意すること、そしてそこからの 2 次的な拡散に注意することが重要である。特にアシネトバクター属は本事例のように単純な接触予防策の遵守のみでは封じ込めできないことが度々報告されている。知らない間に潜入し、知らない間に拡散する、まさに「トロイの木馬」のような細菌である。

心臓胸部外科手術患者における基質特異性拡張型β‐ラクタマーゼ産生エンテロバクター・クロアカエの院内アウトブレイク:原因と影響

Nosocomial outbreak of extended-spectrum β-lactamase-producing Enterobacter cloacae among cardiothoracic surgical patients: causes and consequences

A. Noël*, C. Vastrade, S. Dupont, M. de Barsy, T.D. Huang, T. Van Maerken, I. Leroux-Roels, B. Delaere, L. Melly, B. Rondelet, C. Dransart, A.S. Dincq, I. Michaux, P. Bogaerts, Y. Glupczynski
*Infection Control Unit, CHU UCL Namur, Belgium

Journal of Hospital Infection (2019) 102, 54-60


背景
腸内細菌科細菌は、医療関連感染症の主要な病原体として認識されている。

目的
ベルギーの大学病院で心臓胸部外科手術患者において発生した基質特異性拡張型β‐ラクタマーゼ産生(ESBL)エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)の院内アウトブレイクについて報告すること。

方法
repetitive element-based PCR 法および multi-locus sequence typing を用いた分子タイピングを含む疫学的・微生物学的調査に基づき症例を確定した。症例対照研究に続く現地評価により、リザーバである可能性の確認、患者と経済への影響に関する後向き評価を実施した。

結果
3 か月の期間に、患者 42 例で、同一のクローン系列に属する CTX-M-15 産生 E. cloacae 菌株の感染または保菌が認められた。獲得は、主に集中治療室(23 例)、心臓胸部外科病棟(16 例)でみられた。1 例を除く全員で、E. cloacae 獲得の前に、心臓胸部手術歴、手術室における同一の経食道心エコー診断用プローブによる検査歴があった。微生物培養の結果が陰性であったが、疑わしいプローブを排除することで、アウトブレイクが速やかに終息した。全体的に見て、アウトブレイクは、感染患者における高死亡率(40%)および多額の費用(266,550 ユーロ)と関連した。

結論
アウトブレイクの原因と推測される器機の使用中止により、速やかな終息がもたらされたことから、心臓胸部手術中を通して使用される、手動消毒の経食道心エコー診断用プローブの汚染と、アウトブレイクとの関連が間接的に示された。

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監訳者コメント
経食道心エコー診断用プローブは、しばしば感染対策において見落とされがちな器具である。2018 年 7 月に心エコー図ガイドライン作成委員会から「経食道心エコー図検査実施についての勧告(2018 年改訂版)が出ている。こちらに「プローブはセミクリティカルに分類される」とあり、具体的な洗浄・消毒方法が記載されているので是非参考にされたい。
http://www.jse.gr.jp/contents/guideline/data/TEE_guideline2.pdf(2019 年 5 月アクセス)

実験モデルシステムにおいて、流しからのカルバペネム耐性腸内細菌科細菌の拡散は排水管の位置と排水速度と関連する

Carbapenem-resistant Enterobacteriaceae dispersal from sinks is linked to drain position and drainage rates in a laboratory model system

P. Aranega-Bou*, R.P. George, N.Q. Verlander, S. Paton, A. Bennett, G. Moore, TRACE Investigators’ Group
*Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 102, 63-69


背景
病院の流し、排水トラップ、排水管には、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)が生息しうる。

目的
蛇口から供給される水が直接排水管に流れる流しや、後方に排水管のある臨床用の手洗い用流しからの、CRE 拡散について調査すること。さらに、高速および低速の排水の影響について評価した。

方法
排水トラップは、CRE が定着することで知られている。病院の排水トラップを取り外し、実験用のモデルシステムに設置した。新しい排水トラップも設置し、CRE を人工的に播種した。細菌が流しから拡散される可能性を、サイクロン式エアサンプラー法および/または落下菌測定法によって評価した。

結果
排水トラップを人工的に汚染し、CRE 定着を排水トラップの水にとどめた場合、急速に排水した流し(P = 0.004)および/または後方に排水管のある流し(P = 0.002)からの細菌の拡散は有意に少なかった。排水トラップを自然に汚染させて、CRE がトラップ、配管、排水管に定着した場合、流しの排水と排水管の位置に有意な相互関係がみられた(P < 0.001)。低速の排水では、後方に排水管のある流しからの拡散は、蛇口の下に排水管のある流しよりも、ほぼ30倍少なかった(P < 0.001)。高速の排水の場合も、後方に排水管のある流しのほうが、CRE の拡散が比較的少なかった。ただし、この場合、統計学的に有意差はなかった(P = 0.7)。汚染された水しぶきは、流しから
1 m は飛散する。

結論
排水速度が遅く、蛇口の真下に排水管を備えたデザインの流しは、排水トラップおよび排水管への CRE 定着のリスクが増大し、病棟環境を汚染する。

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監訳者コメント
CRE の拡散と流し(シンク)の汚染について、度々報告されている。今後、本研究のような基礎的検討が増え、微生物汚染に強いシンクが開発されるものと思われる。

集中治療室における多剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の長期アウトブレイク時に消毒用デバイスがシンク排水管定着および患者保菌に及ぼす効果★★

Effects of a disinfection device on colonization of sink drains and patients during a prolonged outbreak of multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa in an intensive care unit

E. de Jonge*, M.G.J. de Boer, E.H.R. van Essen, H.C.M. Dogterom-Ballering, K.E. Veldkamp
*Leiden University Medical Centre, the Netherlands

Journal of Hospital Infection (2019) 102, 70-74


背景
集中治療室(ICU)のシンク排水管には、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)などの細菌の定着が高頻度でみられる。

目的
ICU での多剤耐性緑膿菌の長期アウトブレイク時におけるシンク排水管への消毒用デバイスの設置が、細菌のシンク定着や患者保菌に及ぼす影響を検討すること。

方法
2010 年から、多剤耐性緑膿菌のクローン性アウトブレイクが発生していた。2013 年 4 月にICU サブユニット A において、これらのシンク排水管のサイホンを、熱と電気機械的振動によって排水を消毒するデバイスに交換した。他のユニットでは、サイホンを新しいポリ塩化ビニルプラスチック製サイホンに交換した(対照)。2016 年 2 月に、消毒用デバイスを ICU サブユニット B にも設置した。

結果
ベースライン時のシンク定着率は、ICU Aでは 51%、ICU Bでは 46%であった。介入後にICU A における定着率は 5%(P < 0.001)に減少した一方、ICU B(対照)では 62%であった。ICU B に消毒用デバイスを設置後、定着率は、ICU A および B においてそれぞれ 8.0%および 2.4%であった(ベースラインとの比較でいずれも P < 0.001)。ICU 患者における保菌率は、ICU A では入院患者 1,000 例あたり8.3 から 0に(P < 0.001)、ICU B では入院患者 1,000 例あたり 2.7 から 0.5に(P = 0.1)減少した。

結論
ICU のシンク排水管への多剤耐性緑膿菌の定着は、シンクのサイホンに消毒用デバイスを用いることで効果的に制御された。患者における保菌も有意に減少し、このことからシンク排水管は緑膿菌による臨床的アウトブレイクの発生源となり得ること、また消毒用デバイスはこうしたアウトブレイクを阻止する上で有用となる可能性があることが示唆される。

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監訳者コメント
ICU のシンク配水管に定着した緑膿菌が ICU 内でのアウトブレイクの発生源になるという、一見信じがたい結果である。シンク配水管には細菌が定着することは以前から知られているが、患者への感染伝播の源となっていることの証拠は十分ではなく、さらに細菌の検出は原因ではなく結果であるとこれまで理解されていた。本論文はそれを覆し、感染源となりうるという結果である。緑膿菌定着の解決策に使用した装置は熱と振動によりサイホン部分でバイオフィルムを形成する細菌を殺菌するというものである。近年日本でも配水管に取り付けることで熱により配水管内に定着している菌を殺菌できる機器が入手できるようになっており、感染予防効果に関する検討が開始されるであろう。

蛇口で制御せよ:集中治療室における緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の水系伝播を抑制する★★

Tap out: reducing waterborne Pseudomonas aeruginosa transmission in an intensive care unit

M.I. Garvey*, M.A.C. Wilkinson, K.L. Holden, T. Martin, J. Parkes, E. Holden
*Queen Elizabeth Hospital Birmingham, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 102, 75-81


背景
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は普遍的に存在し、免疫不全の重篤患者における重要な日和見感染病原体である。院内緑膿菌アウトブレイクは、病院の水系システムが原因とされている。

目的
蛇口の汚染を低減する工学的介入について、ならびに介入後の臨床的効果について記述すること。

方法
集中治療室(ICU)内の選択した蛇口に新しい蛇口を設置した。実験的に緑膿菌で人工的に汚染した後、これらの蛇口をウォッシャ−・ディスインフェクターでの洗浄消毒により効果的に汚染除去ができたことが示された。ICU 内の新しい蛇口から水サンプルを 8 か月間にわたり週 1 回採取し、膜濾過法により緑膿菌の菌数を計数した。臨床サンプルによる緑膿菌サーベイランスをルーチンに実施した。

結果
介入前は、ICU の水サンプル採取により、いずれかの一時点において蛇口の 30%で緑膿菌陽性が認められ、全ゲノムシークエンシングのデータから、水から患者への伝播が少なくとも 30%発生していたことが示された。新しい蛇口の設置後、これらの蛇口から週 1 回採取したサンプルでは緑膿菌陰性であり、緑膿菌の臨床分離株の数が 50%減少した。

結論
蛇口の設置と、緑膿菌陰性の維持により、ICU において緑膿菌の臨床分離株の回収数を大幅に減少させることができる。

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監訳者コメント
緑膿菌は生活環境のいたる場所に生息し、免疫不全患者における重要な日和見感染病原体である。緑膿菌は湿潤環境を好むため、本菌によるアウトブレイクが発生した場合には水場が関与することとなる。水道の蛇口と配管は微生物がバイオフィルムを作り、都合の良い定着場所となる。水道蛇口の細菌の定着によるアウトブレイクはこれまでも多数報告されており、本論文は細菌のバイオフィルム形成防止を目的に新たにデザインされた蛇口で、取り外し可能で分解後オートクレーブができるようになっている。蛇口に微生物が定着するとなかなかこれを除去することが困難となり、蛇口へのフィルターの装着か、あるいは予算がかかるが蛇口の交換となる。この新たな蛇口は、注ぎ口や混合バルブを含めた蛇口一体が取り外しできるという新たな発想で作られている。この導入効果については多施設共同での検討が必要である。

集中治療室においてカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)が定着したシンク排水管の汚染除去法としての酢酸使用と、CPE 感染症に対するその効果★★

Acetic acid as a decontamination method for ICU sink drains colonized by carbapenemase-producing Enterobacteriaceae and its effect on CPE infections

D. Smolders*, B. Hendriks, P. Rogiers, M. Mul, B. Gordts
*Ziekenhuis Netwerk Antwerpen, Belgium

Journal of Hospital Infection (2019) 102, 82-88


背景
カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)は新興病原体であり、公衆衛生にとって重大な懸念をもたらしている。ベルギーにおいて、OXA-48 カルバペネマーゼ耐性遺伝子が最も高頻度で同定されている。集中治療室(ICU)のシンク排水管には、グラム陰性菌の定着が発生することが知られている。ICU における環境汚染と CPE 感染症との関連は確立されている。特定の ICU における CPE の長期流行は制御が難しいことが示されている。

方法および結果
ICU の病室にあるほとんどすべてのシンクから、いずれも OXA-48 耐性遺伝子を有する様々な CPE 株が分離された。25%酢酸 250 mL を用いて週 3 回シンクの汚染除去を行うこととした。シンク排水管への定着について、その後最長 6 か月にわたり追跡調査を行った。CPE の定着が認められたシンクの数と、CPE の保菌または感染が認められた患者の人数の両方において、流行が根絶されたと考えられるレベルにまで大幅な減少がみられた。すべての分離株について、汚染除去に使われるのと同等またはそれ以下の濃度の酢酸により in vitro 増殖が阻止された。疫学分析により、汚染されたシンクと ICU の入室患者における CPE 獲得との間に正の有意な関係が示され、このことから汚染されたシンクが流行の環境リザーバとして重要であることが示唆された。

結論
酢酸を用いたシンク排水管の汚染除去は、加熱シンクや水を用いない患者ケア(訳者注:手洗いシンクを廃止して速乾性手指消毒剤のみの手指衛生を主体とする患者ケア)などといった他の方法に代り得る有用な代替法であり、特に他の選択肢が短期的に利用できない場合に有用である。酢酸は安価で、広く入手しやすく、効果的であり、安全性および技術的な観点から管理が容易である。

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監訳者コメント
ベッドサイドの手洗いシンクの汚染は CPE の供給源となり、感染の重要なリスク因子となることが報告されている。シンクの排水管への CPE の定着により、エアロゾル化した菌により伝播することが判明している。本論文では、25%の酢酸にによるシンクの排水管処理により、シンク配水管からの CPE の検出率の減少と共に新規 CPE 患者が減少し、酢酸処理の効果が認められた。25%と高濃度の酢酸が必要なのは、配水管中のサイホン内の水で希釈されるためである。

2 本の軟性尿管鏡の間における多剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)伝播と尿路感染症アウトブレイク:内視鏡の汚染除去における脆弱性★★

Transmission of multi-drug resistant Pseudomonas aeruginosa between two flexible ureteroscopes and an outbreak of urinary tract infection: the fragility of endoscope decontamination

J. Kumarage*, K. Khonyongwa, A. Khan, N. Desai, P. Hoffman, S.K. Taori
*Kings College Hospital NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 102, 89-94


目的
軟性内視鏡は汚染除去が難しく、内視鏡関連感染症が増加している。本報告は、英国の 3次病院において軟性尿管鏡に関連して発生した臨床的感染症の増加後に同定された多剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のアウトブレイクについて記述する。

方法
臨床部門、検査部門および中央汚染除去部門の記録を精査して、この問題の規模を明らかにし、使用された内視鏡との関連を調べた。尿管鏡の操作手順、内視鏡部門および中央汚染除去部門の監査を実施した。内視鏡からサンプルを採取して培養するとともに、内視鏡の構造的統合性を調べた。回収されたすべての分離株についてタイピングを実施した。

結果
患者 13 例が、2 本の軟性尿管鏡と関連する臨床的感染症を発症した。第 1 の尿管鏡では感染が知られた患者により、また第 2 の尿管鏡では第 1 の尿管鏡により感染した別の 1 例の患者での使用により定着が発生したと考えられた。特定されたリスク因子は、表面の傷、両方の尿管鏡の外側カバーが引っ張っられたりしわを寄せられたこと、使用直後のベッドサイドでの尿管鏡洗浄の不実施、尿管鏡使用から汚染除去まで一晩遅延したこと、洗浄消毒後の乾燥不十分、ならびに接続バルブの使用状況の追跡不能などであった。

結論
軟性内視鏡の汚染除去が十分かどうかは、多数のステップに左右される。世界的に多剤耐性微生物の発生が増加するなか、内視鏡操作者および汚染除去部門による軟性内視鏡操作手順の厳格なモニタリングが極めて重要である。

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監訳者コメント
軟性内視鏡の内腔の不十分な洗浄以外にも、内視鏡の洗浄消毒の確実性を阻害するいくつかの因子が本論文で指摘されている。軟性尿管鏡に限らず、すべての軟性内視鏡において消毒効果を不確実にする因子として、表面の傷、外側カバーのしわ、使用直後の外部・内腔の洗浄不足、洗浄消毒後の乾燥不十分、使用後から汚染除去までの遅延があり、今一度内視鏡の洗浄消毒のプロセスを丁寧に見直すとともに、厳重なプロセスのモニタリングが必要である。

日本における病院ごとのカルバペネム使用:全国生態学的研究★★

Hospital-by-hospital carbapenem use in Japan: a nationwide ecological study

D. Morii*, R. Kokado, K. Tomono
*Graduate School of Medicine, Osaka University, Japan

Journal of Hospital Infection (2019) 102, 101-107


背景
日本の医療システムは、1961 年以来、国民皆保険制度に基づいてきた。これまで、全国規模での病院ごとの抗菌薬使用は記録されてこなかった。

目的
全国規模で病院ごとのカルバペネム使用の分布を明らかにすること、ならびに日本で利用可能な病院データから予測モデルを構築すること。

方法
日本政府により公表されているオープンデータを用いて生態学的研究を実施した。カルバペネムによる治療期間の分布(1,000 患者日あたり)を分析し、予測モデルを構築した。粗分布および実測値対予測値の比の分布により、大量使用病院の上位 1%をリスト化し、比較した。病院特性で層別化した 3 つのサブカテゴリー(3 次、2 次救急、および出来高払い制)、および 2 つの年齢群(16 ~ 65 歳および 65 歳超)の患者について解析を行った。

結果
16 ~ 65 歳の年齢群における治療期間中央値は、3 次病院が 7.24日、2 次救急病院が 3.28 日、および出来高払い制病院が 1.42 日であった。65 歳超の年齢群における治療期間中央値は、3 次病院が 17.28 日、2 次救急病院が 14.43 日、および出来高払い制病院が 8.21 日であった。多変量線形回帰分析を行うため、各モデルにおいて、病院特性に基づいて考え得る予測因子から様々な組み合わせの共変量を選択した。

結論
単一の予測モデルがすべての病院に適合することはなかったため、カルバペネムの大量使用病院を特定するには個々の病院に合わせたモデルが必要である。今回の結果は、医療における抗菌薬使用に関する今後の研究において、参考となる基準を提供するとともに、将来の政策にとって有用となる可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
オープンデータとして公開されている DPC データを使用し、国内 3,500 以上の医療機関でのカルバペネム系抗菌薬の使用状況を調べた報告である。特性の異なる医療機関を 3 群に分けるとともに、関連する共変量を 4 個設定して解析を行っている。DPC データを使用した点、およびカルバペネム系が使用されやすい医療機関群を一国レベルで調べ得た点でも、貴重かつ非常に興味深い報告といえる。共変量との相関性の結果が意味するところは様々であろうが、本検討は今後の同テーマの研究の出発点・比較対象となるであろう。

成人における黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)による髄膜炎:メチシリン耐性株およびメチシリン感受性株による感染症の比較コホート研究

Staphylococcus aureus meningitis in adults: A comparative cohort study of infections caused by meticillin-resistant and meticillin-susceptible strains

V. Pintado*, R. Pazos, M.E. Jiménez-Mejías, A. Rodríguez-Guardado, B. Díaz-Pollán, C. Cabellos, J.M. García-Lechuz, J. Lora-Tamayo, P. Domingo, E. Muñez, D. Domingo, F. González-Romo, J.A. Lepe- Jiménez, C. Rodríguez-Lucas, A. Gil, I. Pelegrín, F. Chaves, V. Pomar, A. Ramos, T. Alarcón, E. Pérez-Cecilia
*Hospital Ramón y Cajal, Spain

Journal of Hospital Infection (2019) 102, 108-115


背景
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)による髄膜炎はまれな院内感染症で、通常は脳神経外科手術に起因するが、特発的に発生する例が時にみられる。

目的
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびメチシリン感受性ブドウ球菌(MSSA)による髄膜炎の特徴を比較すること、ならびに MRSA 感染症および抗菌薬の併用療法を含めた死亡の予後予測因子を調べること。

方法
スペインの11 施設の病院に入院した黄色ブドウ球菌による髄膜炎の成人 350 例(1981 から 2015 年)を対象とした後向きコホート研究。ロジスティック回帰および傾向スコアマッチングを用いて、予後予測因子について解析を行った。

結果
MRSA 髄膜炎は 118 例(34%)、MSSA 髄膜炎は 232例(66%)であった。術後感染症(91% 対 73%)および院内獲得(93% 対 74%)は、MRSA 髄膜炎の方が MSSA髄膜炎より有意に頻度が高かった(P < 0.001)。併用療法を受けていた患者は 118 例(34%)であった。30 日全死亡率は 23%であった。多変量解析では、死亡は重度敗血症または敗血症性ショック(オッズ比[OR]9.9、95%信頼区間[CI]4.5 ~ 22.0、P < 0.001)、特発性髄膜炎(OR 4.2、95%CI 1.9 ~ 9.1、P < 0.001)、McCabe-Jackson スコアで急速または最終的に致死的(OR 2.8、95%CI 1.4 ~ 5.4、P = 0.002)、MRSA髄膜炎(OR 2.6、95%CI 1.3 ~ 5.3、P = 0.006)、および昏睡(OR 2.6、95%CI 1.1 ~ 6.1、P < 0.029)と関連していた。術後感染症例では、死亡は脳脊髄デバイス留置(OR 7.9、95%CI 3.1 ~ 20.3、P < 0.001)と関連していた。

結論
MRSA 髄膜炎と MSSA 髄膜炎の臨床的および疫学的な差異は、術後感染症および特発性髄膜炎という発症機序の違いによって説明される可能性がある。髄膜炎および基礎疾患の重症度に加えて、MRSA 髄膜炎では死亡率の上昇が認められた。抗菌薬の併用による生存率の上昇は認められなかった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
MRSA 髄膜炎と MSSA 髄膜炎が、手術との関連等、発症機序と臨床背景に関する点で違いがあるのは予想されていたが、今回複数の医療機関による、長期的かつ大規模な検討で、それを詳しく明らかにすることができた。一読をお勧めする。

比較ゲノミクスにより同定された短時間の軽い接触による結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の院内伝播★★

Nosocomial Mycobacterium tuberculosis transmission by brief casual contact identified using comparative genomics

J. Seto*, Y. Otani, T. Wada, Y. Suzuki, T. Ikeda, K. Araki, K. Mizuta, T. Ahiko
*Yamagata Prefectural Institute of Public Health, Japan

Journal of Hospital Infection (2019) 102, 116-119


本稿では、短時間の軽い接触による結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の院内伝播による 1 症例を報告する。山形県においてルーチンに行われているvariable number tandem repeat検査により、患者 2 例から検出された結核菌の臨床分離株が互いに区別できない遺伝子型を示すことが分かった。両患者には、同じ日に同じ病院の待合室に居合わせたという疫学的な関係があった。比較ゲノミクスを行ったところ、2 つの分離株間の一塩基バリアントはわずか 2 個のみであったため、上記の待合室で最近、結核伝播が発生したと結論付けられた。これらの結果から、感染性のある結核患者の物理的隔離は、短時間の軽い接触による予測外の院内伝播を予防するためにも必須の制御策であることが示唆された。

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監訳者コメント
結核菌の全ゲノム解析によって、病院の待合での短時間の接触が感染契機であることが明らかになったという貴重な報告である。接触の状況とともに、診断がつかない段階で投与されていたフルオロキノロンによって、キノロン耐性変異が生じていた結果も述べられている。是非本文を参照されたい。

多剤耐性カンジダ・オーリス(Candida auris)に対するオクテニジン二塩酸塩および紫外線C 波の抗真菌活性

Antifungal activity of octenidine dihydrochloride and ultraviolet-C light against multidrug-resistant Candida auris

P. Ponnachan*, V. Vinod, U. Pullanhi, P. Varma, S. Singh, R. Biswas, A. Kumar
*Amrita School of Biotechnology, Amrita Vishwa Vidyapeetham, India

Journal of Hospital Infection (2019) 102, 120-124


多剤耐性カンジダ・オーリス(Candida auris)によるアウトブレイクが、現代医学における大きな脅威として登場してきた。皮膚保菌および環境汚染がアウトブレイクの予測因子であることが明らかにされているため、著者らは C. auris 臨床分離株を用いて紫外線 C 波(ピーク波長254 ± 2 nm の水銀蒸気ランプを使用)、およびオクテニジン二塩酸塩の抗真菌活性について評価を行った。オクテニジン二塩酸塩は、臨床現場で現在用いられている濃度(0.05 ~ 0.1%)よりはるかに低い濃度(0.00005 ~ 0.0004%)で効果を有することが認められた。走査電子顕微鏡画像から、0.0005%オクテニジン二塩酸塩への曝露により 6 時間以内で C. auris 分離株が破壊されたことが示された。紫外線 C 波により、15 分間の曝露ですべての C. auris 分離株を殺滅できた。

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監訳者コメント
オクテニジン二塩酸塩は、細胞膜・細胞壁の変性を生じ、グラム陽性菌、陰性菌、酵母に対し広い活性を有するとされる。本誌上においても MRSA の除菌結果が報告されたことがある(Journal of Hospital Infection 2010; 74, 199-203)。さらにクロルヘキシジンと同様の残存効果に加え、抗バイオフィルム効果を有し、既に創洗浄剤などで商品化されている。デバイスや器材表面上の状態での検討が今後求められるが、1 つの方法として、その効果と有用性、現実的な応用に関し、注目される薬剤と思われる。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.