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レーティング:[監訳者による格付け]
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病院の建設/改修工事中の医療関連侵襲性アスペルギルス症の予防

Prevention of healthcare-associated invasive aspergillosis during hospital construction/renovation works

A.F. Talento*, M. Fitzgerald, B. Redington, N. O’Sullivan, L. Fenelon, T.R. Rogers
*Our Lady of Lourdes Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 1-12


医療関連侵襲性アスペルギルス症と病院の建設/改修工事との関連は十分に認識されている。この感染症は著しい病的状態や死亡の原因となる可能性があり、医療システムに実質的な負担をもたらす。この日和見感染症のリスクがある患者集団は増大しており、複数のトリアゾール系薬に対する耐性が世界的に出現している。そこで、急性期ケア施設において侵襲性アスペルギルス症の感染予防を図る多面的アプローチが必要となる。本稿は、医療関連アスペルギルス症予防のための Irish National Guideline のサマリーであり、公表済みの報告、国際的な臨床ガイドライン、正式な工学基準、技術指針に基づくものである。計画/建設前、建設中、建設後の各段階での侵襲性アスペルギルス症予防のための重要な推奨および対策について論じる。多領域専門家チームの関与、教育、および情報交換の重要性が強調される。

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監訳者コメント
日本でも米国の pre-construction risk assessment(PCRA)を導入する施設が増えている。国公立大学附属病院感染対策協議会のガイドラインでも PCRA が標準化されている。米国では州の法律で PCRA を規定している場合が多い。

集中治療室における全ゲノムシークエンシングを用いた黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の追跡

Tracking Staphylococcus aureus in the intensive care unit using whole-genome sequencing

S.J. Dancer*, C.E. Adams, J. Smith, B. Pichon, A. Kearns, D. Morrison
*Hairmyres Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 13-20


背景
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、世界中で未だに重要な細菌性病原体である。本研究は、1 カ所の 10 床からなる集中治療室(ICU)において、さまざまな環境リザーバ間の黄色ブドウ球菌を追跡するために、ブドウ球菌の既知の疫学を利用した。

方法
選択した手指接触面、職員の手指、空気の系統的スクリーニングを 10 か月間に 10 回実施し、試験期間を通して患者をスクリーニングした。黄色ブドウ球菌分離株の spa タイピングおよび疫学的解析を実施し、次いで、一塩基多型のデータを得るために全ゲノムシークエンシングを実施した。

結果
患者とリザーバ間の複数の伝播経路を調査した。34 件の伝播イベントがあり、そのうち 29 件は関連性が高く(SNP の違い 25 未満)、5 件は関連している可能性があった(SNP の違い 50 未満)。20 件(59%)の伝播イベントは、保菌患者とその患者自身の身体部位間で発生(すなわち、自己感染)、4 件(12%)は患者間の交差伝播と関連、4 件(12%)は患者と手指接触部位(ベッド柵、静脈内ポンプ)間で発生、4 件(12%)は空気中の黄色ブドウ球菌と職員の手指・ベッド柵との関連、2 件(6%)は、ベッドテーブル、ベッド柵、心電図モニターとの関連であった。

結論
保菌患者によって新たな黄色ブドウ球菌が ICU に頻繁にもたらされるため、保菌患者の区域内(あるいは近く)の手指接触部位に、その病原体の占める割合が拡大する。このような黄色ブドウ球菌の短期リザーバは、その後の患者に保菌/感染リスクをもたらす。ICU 関連黄色ブドウ球菌感染症の半数以上は、患者自身の細菌叢に由来し、職員の手指や空気が前方感染に関与することはまれである。ICU のブドウ球菌感染症の制御には、患者スクリーニング、手指接触面の組織的な清掃、継続的な手指衛生の強化が最善策である。

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監訳者コメント
分子疫学的解析手法の極みである全塩基配列の比較であるが、分析手法のすべては多型性を司る特定領域の比較によるもので、データベースのマネジメントが重要である。

国立整形外科病院における化膿レンサ球菌アウトブレイクの制御を目的としたリアルタイム全ゲノムシークエンシング★★

Real-time whole genome sequencing to control a Streptococcus pyogenes outbreak at a national orthopaedic hospital

H. Sharma*, M.R. Ong, D. Ready, J. Coelho, N. Groves, V. Chalker, S. Warren
*The Royal National Orthopaedic Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 21-26


背景
侵襲性疾患に関連する化膿レンサ球菌の全ゲノムシークエンシング(WGS)は、アウトブレイクの特定および調査のために使用されている。アウトブレイク制御を目的としたリアルタイムでの WGS の臨床応用はほとんどなされていない。

目的
国立整形外科病院において 1 例の菌血症死亡例が発生し、保菌者の特定および伝播阻止のためにリアルタイム WGS によるアウトブレイクの調査が促された。

方法
この前年の化膿レンサ球菌感染症の患者を特定するために、後向きサーベイランスを実施した。接触者追跡調査に際し、患者 4 例と職員 179 名を対象に化膿レンサ球菌保菌についてスクリーニングを実施した。同定された全分離株が emm 型であった。分離株サブセットのリアルタイム WGS を実施した。

結果
index case(発端症例)、患者 2 例、職員 8 名から化膿レンサ球菌分離株 12 株が同定された。6 株は emm 1.0 で、index case と職員 5 名の分離株であった。残りの分離株は異なる emm 型に属した。emm 1.0 の 6 株で WGS 解析を実施した。一塩基多型(SNP)解析により、5 株は識別不能で、SNP 間の距離が 0、1 株では SNP の違いが 1 カ所あり、近年の院内伝播の仮説を支持するものである。スクリーニング陽性の医療従事者は全員、ペニシリンまたはクリンダマイシンによる治療を受けた。さらなる症例は特定されなかった。

結論
WGS の分子識別能の向上により、化膿レンサ球菌症症例のクラスターが確認され、アウトブレイクが制御された。これは、侵襲性の化膿レンサ球菌アウトブレイクの管理におけるリアルタイム WGS の臨床的有用性を立証するもので、われわれは、ルーチンの診療業務として、その実施を推奨する。

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監訳者コメント
医療関連感染症の伝播経路の解析に次世代シークエンサーによる全ゲノム解析が安価で迅速に実施できるようになった。こうした解析手法は今後益々浸透していくことだろう。

神経障害リハビリテーション科におけるモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)の院内アウトブレイクの分子疫学的研究

Molecular epidemiology study of a nosocomial Moraxella catarrhalis outbreak in a neurological rehabilitation unit

P. Warnke*, T. Köller, B. Kreikemeyer, I. Barrantes, H. Mach, A. Podbielski
*University Medicine Rostock, Germany

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 27-34


背景
モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)は、特に人工呼吸器装着患者の上下気道感染症を引き起こす一般的な病原体で、直接的または間接的な接触によりヒト‐ヒト間で伝播する。しかし、この病原体による院内アウトブレイクの報告は少ない。

目的
医学的リハビリテーション施設におけるアウトブレイク期間に分離された M.catarrhalis 菌株のクローン関連性を明らかにするとともに、可能性のある伝播経路を解明するために、この菌株を分析すること。

方法
広範囲に及ぶ環境および医療従事者からのサンプリングを実施した。分離株 15 株の表現型および遺伝子型分析を、repetitive element palindromic(rep)‐ PCR法、全ゲノムシークエンシングを用いて実施した。さらに衛生対策の強化を組み入れた。

結果
患者の分離株 9 株、および職員のスクリーニング期間に 1 名の医師から分離された菌株を含む同時存在の別の分離株のクローン性を確認した。職員の無症状保菌者とアウトブレイク株の汚染媒介物のいずれについても、特別な介入が確認されなかったが、衛生面での一般的および特異的な最大限の予防策によりアウトブレイクは終息した。後向き分析では、アウトブレイク発生前 2 年間にわたり、M. catarrhalis 菌株の発現率の増加傾向が示された。それ以降および通常の衛生対策に戻ってからは、表現型の異なる M. catarrhalis 分離株を有する患者が 1 例確認されるにとどまった。

結論
神経障害リハビリテーション施設の患者 9 例を巻き込んだ初回の M. catarrhalis アウトブレイクについて報告した。可能性のある伝播経路を考察した。アウトブレイクの包括的分析から、確定菌種のルーチンでの検査室保存期間の延長が示唆された。

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監訳者コメント
従来の解析手法と全ゲノムシークエンシングを組み合わせたアウトブレイクへのアプローチである。エビデンスに基づく対策の徹底によりアウトブレイクの早期解決の糸口がつかめる。

新生児集中治療室におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌保菌のアウトブレイク:その調査と制御のための症例対照研究の利用および得られた教訓

An outbreak of meticillin-resistant Staphylococcus aureus colonization in a neonatal intensive care unit: use of a case-control study to investigate and control it and lessons learnt

N.M. Brown*, M. Reacher, W. Rice, I. Roddick, L. Reeve, N.Q. Verlander, S. Broster, A.L. Ogilvy-Stuart, A. D’Amore, J. Ahluwalia, S. Robinson, R. Thaxter, C. Moody, A. Kearns, J. Greatorex, H. Martin, M.E. Török, D.A. Enoch
*Cambridge University Hospitals NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 35-43


目的
新生児集中治療室(NICU)におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)アウトブレイクの調査と管理、および得られた教訓について記述すること。

方法
本稿は、3 次紹介病院の 40 床の NICU におけるアウトブレイクの報告および実施した症例対照研究で、ゲンタマイシン耐性 MRSA の保菌/感染乳児すべてを含めた。

介入
乳児の隔離、バリア予防策、清掃の強化、職員の手指衛生を含む実践の評価、および乳児の MRSA スクリーニングの増加など標準的な感染制御策を実施した。連続する MRSA 感染によって、NICU 全職員がスクリーニングを受けることになった。保菌乳児と職員の接触を評価するため、およびアウトブレイクの管理について情報を提供するために、症例対照研究を実施した。

結果
乳児 8 例が MRSA(spa 型 t2068)を保菌しており、そのうち 1 例は、その後、MRSA 菌血症を発症した。MRSA 保菌は、在胎週数がより短いこと、出生時体重がより少ないこと、双生児であることと有意に関連した。看護師 3 名が MRSA を保菌していたが、MRSA spa 型 t2068 保菌の看護師は 1 名(No. 45)のみであった。多変量ロジスティック回帰分析では、MRSA 保菌の独立危険因子として、看護師(No. 45)によるケアが特定された。

結論
どの看護師がどの乳児を(いつ)ケアしたのかに関する正確な記録の欠如のため、特定の看護師によるケアがもたらしたリスクの特定が困難になった。これがより明らかになっていれば、保菌看護師の早期発見が可能となり、その後の症例を回避しえた。本研究では、症例対照研究を用いることの有益性が強調され、大部分の看護師が保菌乳児との関連がないことが示された。

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監訳者コメント
古典的な記述疫学と分子疫学の癒合によるエビデンスの創出がこの事例では行われている。何より重要なのは、媒介物やその経路が分からないと対策がとりにくいことである。

イギリスの国民保健サービス(NHS)病院における尿道カテーテル関連感染症の疫学および医療経済的負担:確率モデリング研究

Epidemiology and health-economic burden of urinary catheter-associated infection in English NHS hospitals: a probabilistic modelling study

D.R.M. Smith*, K.B. Pouwels, S. Hopkinsi, N.R. Naylor, T. Smieszek, J.V. Robotham
*National Infection Service, Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 44-54


背景
イギリスの国民保健サービス(NHS)において、カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)およびカテーテル関連血流感染症(CABSI)は、医療関連感染症の主な原因であるが、予防に対する投資について情報を提供するための医療経済的エビデンスが不足している。

目的
2016/17 年に NHS トラストに入院した成人患者における尿道カテーテル関連感染症の医療経済的負担および予防の価値を定量化すること。

方法
CAUTI および CABSI の年間有病率ならびに、それらが関連する健康上の超過負担(質調整生存年[QALY])および経済的損失(2017 年ポンド)を推定するために、決定分析モデルを開発した。集団構造・モデルのパラメーター・関連する不確定性を推定するために、患者に関するデータセットおよび文献を統合した。カテーテルに対する予防的介入の健康面および経済面での有益性を推定した。シナリオ分析、確率的感度分析を実施した。

結果
本モデルにより、CAUTIは 52,085 件(95%不確定区間[UI]42,967~61,360)、CABSI は 7,529 件(95%UI 6,857 ~ 8,622)、そのうち、院内発症型感染症はそれぞれ、38,084 件(95%UI 30,236 ~ 46,541)、2,524件(95%UI 2,319 ~ 2,956)と推定された。カテーテル関連感染症により、在院日数超過が 45,717 日(95%UI 18,115 ~ 74,662)、死亡が 1,467 件(95%UI 1,337 ~ 1,707)、QALY 損失が 10,471 年(95%UI 4,783 ~ 13,499)となった。直接的な総病院費用は、推定で 5,440 万ポンド(95%UI 3,730 万 ~7,780 万ポンド)で、QALY 損失の経済的数値(1 QALYあたりの標準的な支払意思額閾値が 2 万ポンドと推定されている)は 2 億 940 万ポンド(95%UI 9,570 万 ~ 2億7,000 万ポンド)増であった。CABSI は、直接費用の 47%(95%UI 32 ~ 67%)、QALY 損失の 97%(95%UI 93 ~ 98%)を占めた。予防的介入がなされたすべてのカテーテルで、直接的な病院費用が 30 ポンド(95%UI 20 ~ 44ポンド)、QALY 値において 112ポンド(95%UI 52 ~ 146 ポンド)を節約できた。

結論
病院でのカテーテルに対する予防的介入は、かなりの医療経済的利益が得られる態勢にあるが、市中に向けた介入では、市中発症型感染症によってもたらされる大きな負担に対して的を絞る必要がある。

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監訳者コメント
医療経済学的に医療関連感染を分析することは、コスト意識につながり医療費抑制の観点からは重要な取り組みである。

シルバーポリテトラフルオロエチレンナノ複合材料コーティングの尿道カテーテルの in-vitro での抗菌性能および石灰化抑制能

In-vitro antibacterial and anti-encrustation performance of silver-polytetrafluoroethylene nanocomposite coated urinary catheters

L. Wang*, S. Zhang, R. Keatch, G. Corner, G. Nabi, S. Murdoch, F. Davidson, Q. Zhao
*University of Dundee, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 55-63


背景
カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)は、もっとも一般的な院内獲得感染症の一つであり、罹病率および死亡率の増加につながる。この主な理由は、尿道カテーテルに CAUTI を予防する能力がまだ備わっていないということである。

目的
抗感染性を有する尿道カテーテルを開発すること。

方法
効果的なシルバーポリテトラフルオロエチレンナノ複合材料コーティングを、シリコンカテーテル全体に施した。抗菌性能(大腸菌[Escherichia coli]に対する)および石灰化抑制能(プロテウス・ミラビリス[Proteus mirabilis]に対する)を試験するために 2 つの in-vitro 膀胱モデルをデザインした。各モデルに、2 つの異なる濃度の細菌懸濁液を注入した。

結果
非コーティングカテーテルと比較して、コーティングカテーテルは、カテーテル外表面の細菌の遊走およびバイオフィルム形成を有意に抑制した。尿道口を 106 細胞/mL で感染させた場合、細菌尿が発生するまでの期間の平均は、1.8 日対 4 日、102 細胞/mL で感染させた場合、6 日対 41 日であった。石灰化抑制試験では、コーティングカテーテルは、細菌濃度および尿 pH の上昇を強く抑制しなかったが、石灰化を有意に抑制した。103 細胞/ mL による膀胱内の細菌汚染後、閉塞までの時間は、36.2 ± 1.1 時間(非コーティング)から89.5 ± 3.54 時間(コーティング)に延長され、膀胱内の最初の細菌濃度とは無関係であることが認められた。さらに、コーティングカテーテルは、L929 線維芽細胞との優れた生物適合性を示した。

結論
シルバーポリテトラフルオロエチレンコーティングの Foley カテーテルについて、カテーテル留置中の CAUTI 予防の能力を確認するために、さらなる臨床試験を実施すべきである。

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監訳者コメントなし

年齢は単独では人工関節周囲感染症のリスク因子ではない

Age alone is not a risk factor for periprosthetic joint infection

D. Inoue*, C. Xu, H. Yazdi, J. Parvizi
*Rothman Orthopaedic Institute at Thomas Jefferson University, USA

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 64-68


背景
高齢患者における人工関節周囲感染症(PJI)の高い発生率の原因が、年齢単独によるものかまたは高齢患者における併存疾患の増加によるものなのかは分かっていない。

目的
年齢は単独では関節全置換術後の PJI のリスク因子でないという仮説を検討すること。

方法
この後向き研究では、単一施設において 2010 年 1 月 1 日から 2016 年 12 月 31 日の間に初回の人工股関節・膝関節全置換術を受けた患者 23,966 例をレビューした。国際コンセンサス会議の診断基準によって定義される PJI を発症した患者を特定した。すべての登録患者を、65 歳未満の患者群(N = 12,761)、65 歳から 74 歳の患者群(N = 6,850)、75歳以上の患者群(N = 4,355)の 3 群に分類した。多変量解析および傾向スコアマッチング分析を用いて、年齢と PJI の潜在的関連性を検討した。

結果
コホート全体での PJI の発生率は 0.72%(23,966 例中 171 例)であった。年齢以外のすべての変数を調整した多変量解析により、65 歳から 74 歳の患者の PJI の発生率(オッズ比[OR]0.89、95%信頼区間[CI]0.55 ~ 1.42、P = 0.62)または 75 歳以上の患者の PJI の発生率(OR 0.69、95%CI 0.36 ~ 1.32、P = 0.26)は、65 歳未満の患者と比較して、統計学的有意差は認められないことが明らかになった。

結論
交絡変数を調整した場合、年齢は単独では PJI のリスク因子でない。PJI の発生率に対する年齢の影響を評価する研究では、PJI に関与する他の交絡変数を考慮に入れるべきである。

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監訳者コメント
年齢そのものは、単独では人工関節周囲感染症のリスク因子ではない、という論文である。プロペンシティスコアマッチングでも、群間で有意差のある因子はなかった。気になるところである。

栄養不良と関節全置換術後の人工関節周囲感染症および手術部位感染症との関連性:システマティックレビューとメタアナリシス

Association of malnutrition with periprosthetic joint and surgical site infections after total joint arthroplasty: a systematic review and meta-analysis

A.G. Tsantes*, D.V. Papadopoulos, T. Lytras, A.E. Tsantes, A.F. Mavrogenis, A.V. Korompilias, I.D. Gelalis, C.G. Tsantes, S. Bonovas
*Attikon University Hospital, Greece

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 69-77


背景
栄養不良といくつかの有害転帰とを関連付けるエビデンスが増えつつある。

目的
観察研究の包括的メタアナリシスによって、栄養不良と人工膝関節全置換術(TKA)・人工股関節全置換術(THA)後の手術部位感染症(SSI)・人工関節周囲感染症(PJI)との関連性を検討すること。

方法
データベースである PubMed および Scopus で 2018 年 12 月までの期間を対象に系統的検索を実施し、また、主要な整形外科学会の最近の会議録でも実施した。適格な研究のデータを抽出・統合し、統合オッズ比(OR)と 95%信頼区間(CI)を推定した。

結果
250,000 例を超える被験者に関する独立したコホート研究 8 件を報告した、論文 7 報が含まれた。SSI と PJI は栄養不良の患者でより発症しやすい(それぞれ、OR 2.49、95%CI 2.13 ~ 2.90、OR 3.62、95%CI 2.33 ~ 5.64)。SSI と栄養不良との関連性は、TKA 後(OR 2.42、95%CI 1.94 ~ 3.02)と THA 後(OR 2.66、95%CI 1.64 ~ 4.30)の両方で明らかであった。同様に、TKA 後(OR 2.55、95%CI 1.10 ~ 5.91)も THA 後(OR 3.10、95%CI 1.84 ~ 5.25)も PJI は栄養不良と関連していた。最後に、PJI は初回の置換術後(OR 3.58、95%CI 1.82 ~ 7.03)と再置換術後(OR 3.96、95%CI 2.47 ~ 6.33)の両方で栄養不良と相関していた。研究条件別のサブグループ解析によって、病院ベースの研究における PJI と栄養不良との関連性(OR 6.02、95%CI 3.07 ~ 11.81)および集団ベースの研究における PJI と栄養不良との関連性(OR 2.80、95%CI 1.76 ~ 4.44)が確認された。

結論
栄養不良は、関節全置換術後の PJI および SSI と関連している。これらの結果の裏付けや反証のためには、さらなる質の高い研究が必要である。

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監訳者コメント
栄養不良と関節全置換術後の人工関節周囲感染症および手術部位感染症との関連性をメタアナリシスの手法を用いて調べた論文である。結果として、関連性があることが確認された。さらに、栄養不良は術後の入院期間の延長や再入院率の上昇、創傷治癒の遅れなど様々な合併症にもつながってくる。栄養管理の重要性が再認識された。

クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)芽胞の感受性評価を目的とする 4 フィールドテスト方法論に従った検査法の検査室間の再現性

Interlaboratory reproducibility of a test method following 4-field test methodology to evaluate the susceptibility of Clostridium difficile spores

S. Gemein*, J. Gebel, B. Christiansen, H. Martiny, L. Vossebein, F.H.H. Brill, M. Decius, M. Eggers, T. Koburger-Janssen, M. Meckel, S. Werner, B. Hunsinger, T. Selhorst, G. Kampf, M. Exner
*University Hospital Bonn, Germany

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 78-84


背景
殺芽胞性の表面消毒は、医療機関におけるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の伝播を制御するために推奨されている。EN 17126 は懸濁液における殺芽胞活性を決定するための方法を提供し、欧州標準として承認されてきた。さらに、殺芽胞性表面試験が提唱されてきた。

目的
4 フィールドテスト(EN 16615 試験法)に従って、C. difficile 芽胞調製液の殺菌製剤に対する感受性を評価するための検査法の、検査室間の再現性を明らかにすること。

方法
9 つの検査室が参加した。C. difficile の NCTC 13366 芽胞を使用した。3 通りの懸濁液において芽胞の感受性を決定するため、グルタルアルデヒド(1%および 6%、15 分)、ならびに過酢酸(PAA、0.01%および 0.04%、15 分)を使用した。

結果
9 つの検査室での変動する結果(0.37 ~ 1.49)より、1%グルタルアルデヒドの 10 進対数減少の平均値は 1.03 であり、再現性は 0.38 であることが明らかになった。6%グルタルアルデヒドの効果はより強かった(平均値 2.05、範囲 0.96 ~ 4.29、再現性 0.86)。PAA での結果も同様であった。3 通りの清潔な条件下で接触時間 15 分で殺芽胞活性(4 フィールドテスト)を決定するため、5% PAA に基づく 見本の殺菌製剤を、0.5%(無効濃度)および 4%(有効濃度)で使用した。0.5%で使用した場合は全体の log10 減少は2.68(範囲2.35 ~ 3.57)、4%で使用した場合は 4.61(範囲3.82 ~ 5.71)であることが明らかになった。最初は汚染されていなかった 3 つのテストフィールドにおいて残留汚染が 50 cfu/25 cm2 未満であったのは、0.5%では検査室 9 室中 1 室であり、4%では 9 室中 7 室であった。

結論
検査室間の再現性は安定していると思われる。

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監訳者コメント
EN 16615 試験法は、消毒薬の菌量を減少させる能力を評価するための欧州の標準的な試験法である。複数の検査室での試験の結果は、消毒薬のC. difficile に対する有効性と、試験の再現性を示した。

医療関連クロストリジウム・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症を有する患者の死亡率および入院期間の予測因子:カナダ、アルバータ州の集団を対象とした研究

Predictors of mortality and length of stay in patients with hospital-acquired Clostridioides difficile infection: a population-based study in Alberta, Canada

J. Leal*, Ronksley, E.A. Henderson, J. Conly, B. Manns
*University of Calgary, Canada

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 85-91


アルバータ州における医療関連クロストリジウム・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症を有する成人患者 5,304 例(病院数 101)の集団を対象とした 5 年間後向きコホート研究において、30 日全死因死亡率は 12.2%、寄与死亡率は 4.5%であった。75 歳超の患者は、寄与死亡の確率がもっとも高く(オッズ比[OR]9.34、95%信頼区間[CI]2.92 ~ 29.83)、平均入院期間の差が最大であった(11.7 日、95%CI 8.2 ~ 15.2)。新たな知見は、入院時の白血球数の増加が、寄与死亡率の低下と関連したことであり(OR 0.67、95%CI 0.50 ~ 0.90)、これはさらなる研究に値する。加齢は、漸増的かつ有意にあらゆるアウトカムと関連した。

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監訳者コメントなし

カンジダ・オーリス(Candida auris)は、in vitroでバイオフィルムの再形成特性を示す:環境内残存の影響

Candida auris exhibits resilient biofilm characteristics in vitro: implications for environmental persistence

B. Short*, J. Brown, C. Delaney, L. Sherry, C. Williams, G. Ramage, R. Kean
*College of Medical, Veterinary and Life Sciences, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 92-96


医療環境内の表面は、薬剤耐性病原体の伝播に重要な役割を果たしている。カンジダ・オーリス(Candida auris)は、環境表面上に長期間生存しうる新興の多剤耐性酵母である。今回の試験では、14 日後に細胞凝集体形成能により生存率が上昇しており、これはバイオフィルム関連遺伝子のアップレギュレーションと一致することを明らかにした。さらに、凝集株は臨床濃度の次亜塩素酸ナトリウムに耐性を示し、処理 14 日後に依然として生存可能であった。環境表面に付着し存続する C. auris の能力から、この真菌性病原体の生態をさらに理解する必要性を強調する。

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監訳者コメント
カンジダ・オーリスがバイオフィルムを形成し、次亜塩素酸ナトリウムに耐性を示すことは、医療環境において問題となり得る。医療環境の消毒の検討は益々重要になってくると思われる。

新生児および小児において、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)関連カテーテル血流感染症を治療するために、中心静脈カテーテルを速やかに抜去すべきか?フランスの大学病院における 8 年間(2010 年 から 2017 年)の後向き解析

Should central venous catheters be rapidly removed to treat Staphylococcus aureus related-catheter bloodstream infection (CR-BSI) in neonates and children? An 8-year period (2010-2017) retrospective analysis in a French University Hospital

L. Boussamet*, E. Launay, E. Thomas, C. Gras Leguen, D. Lepelletier
*University of Nantes, France

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 97-100


カテーテル関連血流感染症の治療は、カテーテルの抜去の有無に関わらず、経験的な抗菌薬治療に基づいている。本研究の目的は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)によるカテーテル関連血流感染症を有する新生児および小児において、カテーテルを速やかに抜去する、または速やかに抜去しない場合の不成功の発生について比較することである。治療不成功は、血液培養陽性の持続、局所/全身性の合併症の発症もしくは悪化、または再発と定義した。患者 225 例におけるカテーテル関連血流感染症 54 例(保存的治療 33 例、非保存的治療 21 例)について分析し、不成功は、それぞれ、10 例、3 例であった(P< 0.002)。カテーテルを速やかに抜去する非保存的治療は、不成功率の有意な低下と関連するようであり、推奨すべきである。

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監訳者コメント
黄色ブドウ球菌菌血症において、中心静脈カテーテルを温存した群は、抜去した群に比べて持続菌血症や再発などが多かったとする論文である。しかし症例数がそれぞれ 33 例および 21 例と少なく、またそれぞれの臨床背景も評価されていないため、この結果をもって新生児でも黄色ブドウ球菌菌血症で速やかに中心静脈カテーテルを抜去すべきであると結論付けるのは早急だろう。

ヒューマンファクターデザインを適用した感染経路別予防策の使用に対する医療従事者の遵守改善:前向き多施設研究

Improving healthcare worker adherence to the use of transmission-based precautions through application of human factors design: a prospective multi-centre study

V.R. Williams*, J.A. Leis, P. Trbovich, T. Agnihotri, W. Lee, B. Joseph, L. Glen, M. Avaness, F. Jinnah, N. Salt, J.E. Powis
*Sunnybrook Health Sciences Centre, Canada

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 101-105


感染経路別予防策の重要な要素は個人防護具(PPE)の使用であるが、医療従事者の遵守は依然として最適とはいえない。感染経路別予防策の遵守改善のため、(1)標識の改善、(2)標識の設置の標準化、(3)一体化顔面シールド付きマスクの導入、(4)PPE の入手しやすさの改善、を含むヒューマンファクターに基づく介入を実施した。医療従事者の正しい PPE の着用は、有意な改善がみられた(79.7% vs 56.4%、P< 0.001)。この取り組みは教育単独よりも効果的かもしれないが、持続可能性および医療関連感染症の伝播に対するその後の影響を明らかにするために、さらなる研究が必要である。

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監訳者コメント
「ヒューマンファクターに基づいた介入」というが、主には標識(ポスター)の活用である。ホームページからポスターが自由にダウンロードできるようになっている。

病院を清潔にするための 4 ステップ:観察、計画、清掃、乾燥

Four steps to clean hospitals: LOOK, PLAN, CLEAN and DRY

S.J. Dancer*, A. Kramer
*Hairmyres Hospital, NHS Lanarkshire, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, e1-e8


背景
今や清掃および汚染除去は感染制御に不可欠と認識されており、工程をさらに詳細に検討するのはタイムリーである。これは、清掃の慣行は保健医療の区域内で大きく異なるからであり、不明瞭な職務で時間とエネルギーの両方が不必要に浪費されている可能性が高い。さらに、不十分な清掃は感染リスクを減らすのではなく、感染リスクを高める可能性さえある。工程は系統的評価の恩恵を受け、各要素がエビデンスに基づいた規則正しい手順内に配置されるはずである。

方法
清掃のマニュアルの面、病原体のリザーバーと伝播、手指衛生、職員の義務、ならびに患者の快適さに焦点を合わせ、「病院の清掃」に関して文献検索を実施した。

結果
病院における体系的な清掃に対して、エビデンスに基づいた実践的な取り組みを提示する文献は特定されなかった。したがって、本レビューは使用されているベッドスペースの、日常の清掃のために、簡便な 4 ステップの指針を提案する。ステップ 1(観察)は、清掃する場所の視覚的評価について記述している。ステップ 2(計画)は、清掃前にベッドスペースでの準備が必要な理由について論拠を示している。ステップ 3(清掃)は、表面の清掃/汚染除去について取り上げている。ステップ 4(乾燥)は、表面を乾燥させる最終段階である。

結論
実践的な清掃のガイダンスを提示する文献がないことを考慮し、本レビューはエビデンスを入手できる場合はエビデンスに基づいた、またはエビデンスがない場合は正当と判断した 4 ステップの手順を提案する。各ステップは提示され、考察およびリスク評価が行われている。体系的な清掃工程はケアの全体的な質における信頼性を高めるのに加え、すべての人に対してアウトブレイクを含む医療関連感染のリスクを低下させる可能性が高い。

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監訳者コメント
病院清掃に関するレビューである。具体的な清掃の方法などが写真入りで記載されており、清掃マニュアルの見直しなどをする場合にはエビデンスとして参考となる良い文献である。

超清浄空気システムと、「層流システムは関節全置換術後の深部感染を予防できない」という主張

Ultraclean air systems and the claim that laminar airflow systems fail to prevent deep infections after total joint arthroplasty

W. Whyte*, B. Lytsy
*University of Glasgow, Glasgow, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, e9-e15


世界保健機関は 2016 年に手術部位感染症を予防するためのガイドラインを発表した。本ガイドラインは、層流換気システムは関節全置換術後の感染症リスクを減らすために使用する必要はないという、条件付きの推奨を含んでいた。この推奨は主に、病院感染サーベイランスレジストリの情報のシステマティックレビューおよびメタアナリシスに基づいていた。この推奨は、Charnley と英国医学研究協議会によって先に実施された主要な研究において発表された情報と相反している。本論文の第 1 の目的は、医学研究協議会の研究を再考および説明し、その研究に対する批判に答えることである。第 2 の目的は、最近の一部の研究で、超清浄空気システムが関節全置換術後の関節深部感染を減らすことを実証できなかった理由を示すことである。本論文では超清浄空気システムによって微生物保有粒子の平均大気中濃度を 10/m3 未満に、また望ましくは 1/m3 未満にすれば、関節全置換術後の関節深部感染は、従来の方法で換気された手術室よりも少なくなることを明らかにしている。

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監訳者コメント
本論文は、人工関節置換術において、層流換気システムが SSI 減少を目的として使用されるべきではないという 2016 年の WHO ガイドラインの推奨に対する反論(つまり、層流換気システムは SSI 予防に有用であると主張したい)を目的としている。この議論に興味のある読者は一読してみてはどうだろうか。

「レールから離れて」:病院のベッド柵のデザイン、汚染、ならびに微生物生態学の評価

‘Off the rails’: hospital bed rail design, contamination, and the evaluation of their microbial ecology

M.A. Boyle*,A. Kearney, P.C. Carling, H. Humphreys
*Royal College of Surgeons in Ireland, Ireland

Journal of Hospital Infection (2019) 103, e16-e22


患者付近の環境の微生物汚染は、認知されている院内の病原体のリザーバーの 1 つである。病院のベッド、特にベッド柵は、観察研究・介入研究において、頻繁にまた重度に汚染されていることが示されてきた。長年にわたってベッド柵のデザインの複雑さが進んできた一方で、これらの表面の微生物汚染は十分に評価されてこなかった。発表された多くの研究において、極めて重要であるデザインの可変部分に関しては記述されておらず、結果を他の環境へ外挿することを困難にしている。本報告では、病院のベッドとベッド柵の進化する構造、異なるデザイン要素の微生物汚染への潜在的影響および病原体伝播における役割についてレビューする。我々の知見は、環境衛生調査の一環として、ベッド柵および同様の患者区域の表面の汚染レベルを正確に評価するための標準評価手順を明確にする必要性を裏付けている。

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監訳者コメント
ベッド柵は代表的な「高頻度接触面」であり、その清掃の重要性は以前から繰り返し指摘されてきた。一方で本論文中でも写真で紹介されているとおり、ベッドの操作パネルが配備されるなど、ベッド柵は「進化」している。本論文はありそうでなかったベッド柵に特化したレビューである。

抗菌ワイプの有効性に対する試験手順および組み合わせる素材の影響

Impact of test protocols and material binding on the efficacy of antimicrobial wipes

R. Wesgate*, A. Robertson, M. Barrell, P. Teska, J-Y. Maillard
*Cardiff University, Cardiff, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, e25-e32


背景
有効な清浄/消毒製品の使用は、医療表面における病原体を制御するために重要である。市販のワイプ製品の数が増えるにつれて、製剤と不適切な素材の組み合わせにより製品の有効性が低下するという懸念がある。本研究の目的は、幅広い有効性試験手順を使用し、4 製剤に関してよく使用されるワイプの素材3 種類と組み合わせた前後で、有効性を明らかにすることであった。

方法
四級アンモニウム製品 2 製品、過酸化水素製品 1 製品および中性洗剤 1 製品を、マイクロファイバー、綿または不織布の素材と組み合わせ、2 つの表面試験(ASTM E2197-17、EN13697-15)および 2 つの「製品」試験(ASTM E2967-15、EN16615-15)によって、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する有効性を検討した。

結果
全体的に見て、異なる素材を使用することによる製剤の有効性への影響は、0.5%v/v で使用されたアルキル(C12-16)ジメチルベンジルアンモニウム塩化物製品を除いて限定的であった。過酸化水素製品は、使用された素材にかかわらず最も有効であった。ワイプ試験 ASTM E2967-15 の結果は表面試験の結果と一致していたが、はるかに厳密性が低い EN16615-15 の結果とは一致しなかった。

結論
素材により吸収される製剤の量が異なるにもかかわらず、ワイプ布の素材の種類が異なっても、強力な消毒剤の有効性に対しては大きな影響を及ぼさない可能性がある。四級アンモニウム製剤は低濃度で使用された場合、よりリスクが高い可能性がある。実施された標準試験に応じて有効性に大きな違いがみられ、ラベル上の製品特長を作成するために試験を選択する際には、より高い厳密性が必要であることを裏付けている。

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監訳者コメント
医療関連感染症における環境の重要性への注目が高まる中、様々なワイプ製剤が発売されている。しかしその有効性は画一的なものでなく、使用されている消毒薬の種類と濃度はもちろん、ワイプの素材や有効性の評価系など様々な要素によって変化することを示唆する論文である。

バイオフィルムに対する酸化消毒剤の有効性への消毒剤処方および有機汚染物の作用

Effect of disinfectant formulation and organic soil on the efficacy of oxidizing disinfectants against biofilms

D. Chowdhury*, A. Rahman, H. Hu, S.O. Jensen, A.K. Deva, K. Vickery
*Macquarie University, Australia

Journal of Hospital Infection (2019) 103, e33-e41


背景
医療環境における乾燥表面上に発生するバイオフィルムは、消毒剤に対する耐性を増してきた。本研究は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)乾燥表面バイオフィルム単独に対する処方された酸化消毒剤の活性を、黄色ブドウ球菌に活性を持つ成分を含む製品と比較した。

方法
乾燥表面バイオフィルムは、米国疾病対策センター(CDC)のバイオリアクターにおいて、水分補給および脱水の交互のサイクルで生育させた。消毒剤の有効性は、30 秒の中性洗剤の処理の前後に標準汚染物の存在下または非存在下で検討した。バイオフィルムは過酢酸(Surfex、Proxitane)、過酸化水素(Oxivir、6%過酸化水素溶液)および塩素(Chlorclean、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム錠剤)で 5 分間処理された。残留バイオフィルムの生存率および質量は、それぞれ平板培養およびタンパク質分析によって決定された。

結果
バイオフィルムの生存率は、塩素系製品では 2.8 log10 低下し、Proxitane では 2 log10 低下したが、これらの製品は汚染物の存在下ではいずれのバイオフィルムも殺菌できなかった。対照的に、Surfex は汚染物の存在下で完全にバイオフィルムを不活性化させた(力価で 6.3 log10 低下)。過酸化水素製品は乾燥表面バイオフィルムに対してほとんど効果がなかった。汚染物の存在下および非存在下の除去されたバイオフィルムの質量は、塩素で 30%未満であり、Surfex で およそ 65%であった。消毒前の洗剤による処理は効果がなかった。

結論
完全に処方された消毒剤の添加物は活性成分と相乗的に働くことができ、したがって汚染物の悪影響を軽減しながら、バイオフィルムの殺菌を促進することができる。購買担当者は有効性試験の結果を求めること、また、有効性試験が生物学的汚染物および/またはバイオフィルムの存在下で実施されたかどうか考慮することが推奨される。

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監訳者コメント
乾燥表面のバイオフィルムに対する各種市販消毒薬の有効性を比較した研究である。実験系によって消毒薬の有効性が異なることを示唆している。消毒薬選択における様々な根拠の一つになるだろう。

液体培地中および固体物質上におけるアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の生存ならびに消毒薬の効果の分析★★

Analysis of Acinetobacter baumannii survival in liquid media and on solid matrices as well as effect of disinfectants

Z. Bravo*, M. Orruño, T. Navascues, E. Ogayar, J. Ramos-Vivas, V.R. Kaberdin, I. Arana
*University of the Basque Country (UPV/EHU), Spain

Journal of Hospital Infection (2019) 103, e42-e52


背景
アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)は医療関連感染症の原因であり、病院内の無生物表面において苛酷条件下(例、消毒または乾燥)で生存する可能性が高い。

目的
液体培地中、ならびに病院環境を模した表面上における A. baumannii の生存戦略および持続生存する能力について理解を深めること。

方法
4 種類の A. baumannii 株(ATCC 19606T および 3 つの臨床分離株)について、温度、栄養欠乏状態、無生物表面上での持続生存、ならびに消毒薬への曝露が生存に及ぼす影響を、蛍光顕微鏡を用いた総細胞数および生存細胞数、ならびに標準培養法による培養可能細胞数のモニタリングにより検討した。

結果
細菌生存への影響は、温度(20°C で維持された細胞は、少なくとも 30 日間培養可能な状態に留まった)および物理的環境(乾燥下で細胞は 37°C でストレスに抵抗性を示した)により差が認められた。さらに、持続生存は以下の 2 つの適応パターンに関連していた:一方は生存しているが培養不可能な状態への移行、他方は明らかに増加と減少の繰り返しモデルに従うこと。消毒薬(市販の漂白剤および四級アンモニウム化合物)の効果に関する試験中に、これらの抗菌化合物による処理では A. baumannii の細胞集団は殺滅されず、培養可能な細胞集団の減少が誘導されたが、一部の細胞は培養可能な状態に留まった。

結論
病院に通常存在する表面を模した様々な表面上で長期にわたり持続生存する能力は、消毒処理後の A. baumannii の生存能力とともに、集中治療室におけるアウトブレイク再発の原因となり得る。

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監訳者コメント
アシネトバクター・バウマニー(AB)は、言わずと知れた日和見感染菌であり、最近のレビューでは 22 カ国で 150 のアウトブレイクが報告されている。グラム陰性桿菌であるにもかかわわらず、乾燥環境に強いことがこれまでにも報告されており、本論文ではその AB の生態についての研究である。本結果は環境整備の重要性を再認識させてくれる。実際、日本で多剤耐性 AB のアウトブレイクが報告(下記URL参照)され、環境や医療機器・器材への汚染除去に苦慮したことが報告されている。
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000072943.pdf

手術器具の複雑なデザインが効果的な洗浄の障害となり、バイオフィルム形成を促進する★★

Complex design of surgical instruments as barrier for cleaning effectiveness, favouring biofilm formation

L.K.O. Lopes*, D.M. Costa, A.F.V. Tipple, E. Watanabe, R.B. Castillo, H. Hu, A.K. Deva, K. Vickery
*Federal University of Goiás, Brazil

Journal of Hospital Infection (2019) 103, e53-e60


背景
不十分な再処理を受けた再利用可能な手術器具は感染性病原体を保有している可能性があり、次いでこうした病原体が、複製に適した部位に伝播する可能性がある。

目的
20 サイクルの汚染、洗浄(手動、または手動後に自動)および蒸気滅菌が、整形外科手術に用いられる高度に複雑な再利用可能な手術器具に及ぼす累積作用を明らかにすること。

方法
新しい軟性髄内リーマーおよび深さゲージを、5%ヒツジ血および109 cfu/mLの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(ATCC 25923)を含有するトリプトン大豆ブロスに 5 分間浸漬して汚染させた。最悪ケースのシナリオを再現するため、再利用可能な手術器具を 7 時間乾燥させ、以下のいずれかを実施した:(a)蒸留水で洗浄、(b)手動洗浄、(c)手動洗浄後に自動洗浄(参照標準)および蒸気滅菌。汚染、洗浄および滅菌のサイクルを 20 回反復実施した。アデノシン三リン酸の測定を洗浄手順後に行い、細菌数および残存蛋白量の測定を、10 回目および 20 回目の再処理後に 3 回実施した。走査電子顕微鏡を用いて、20 回目の再処理後に再利用可能な手術器具上における汚染物およびバイオフィルムの有無を確認した。

結果
手動洗浄および手動+自動洗浄により、すべての再利用可能な手術器具において、アデノシン三リン酸および残存蛋白質の量が有意に減少した。生きた細菌は、滅菌後には検出されなかった。しかし、走査電子顕微鏡により自動洗浄後に汚染物が検出され、手動洗浄後にバイオフィルムを含めた汚染物が検出された。

結論
複雑なデザインの再利用可能な手術器具において、20 サイクルの汚染および再処理の実施後に、参照標準の洗浄法を用いても、汚染物および/またはバイオフィルムが認められた。深さゲージは分解可能であるが、生物学的残存物およびバイオフィルムがその内腔に蓄積していた。これらの再利用可能な手術器具の現行のデザインにより、生物学的汚染物をすべて除去することができず、患者転帰に有害な影響を与える可能性がある。

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監訳者コメント
使用後の手術器具の再生工程において、洗浄は最も重要な工程であり、不適切であるとバイオフィルム形成をもたらし、細菌特に黄色ブドウ球菌等が残存する結果となり、術後感染の原因ともなるため、適切に洗えない器具を再生利用してはならないのが鉄則であろう。しかしながら、これまで医療機器の洗浄不十分により洗浄後滅菌され使用されるという事件がいくつも発生している。確実に洗浄できない医療器具の再生後の使用は不適切であり、器具の設計段階から分解洗浄の可能な構造と仕組みを考慮すべきである。しかしながら、平成 30 年には単回使用医療機器の再製造についての法整備が実施され、一定の基準をクリアすれば医療機器製造販売会社が単回使用医療機器の再製造及び販売が可能となっている。米国や英国でもこのような再利用がすでに実施されている。
(医薬品医療機器総合機構 https://www.pmda.go.jp/about-pmda/news-release/0046.pdf

ハイブリッド手術室におけるイメージングのための天井設置型システムの使用が術中のコロニー形成単位値に及ぼす影響

Effect of using ceiling-mounted systems for imaging in hybrid operating rooms on the level of colony-forming units during surgery

A.A.L. Traversari*, S.P.M. van Heumen, A.W.J. Hoksbergen
*The Netherlands Organisation for Applied Scientific Research TNO, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2019) 103, e61-e67


背景
ハイブリッド手術室における大型イメージングシステムの使用が増加しつつある。しかし、こうした天井設置型システムが術中の空気の質に及ぼす影響については、これまで研究されていない。

目的
術中の手術創の近傍および器械台の近傍におけるコロニー数(cfu)/m3 を評価すること。

方法
4 病院のハイブリッド手術室4 室において測定を実施した。術中に、能動的スリットエアーサンプラーを用いて少なくとも 3 個のサンプルを採取した。その日の手術スケジュールの最後に、天井設置型システムの移動を含めたシミュレーションも実施した。平均コロニー数の基準は、術中については 10 cfu/m3 以下、個々のサンプルについては 30 cfu/m3 以下と設定した。

結果
手術創近傍の中央値は 1 cfu/m3、器械台では 2 cfu/m3 であった。しかし、ハイブリッド手術室の 1 室(手術 16 件中 2 件)では、器械台が一方向流型システムの直下に置かれておらず、器械台における平均コロニー数が基準を超えていた。この手術室における手術の 1 件では、個別サンプルの最大値も基準を超えていた。

結論
天井設置型イメージングシステムを一方向流型システムと組み合わせることで、手術野近傍および器械台における コロニー数が、術中の基準値とした 10 cfu/m3 を十分に下回るようにすることができる。器械台が一方向流型システムの直下に置かれていない場合、コロニー数は高くなる。

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監訳者コメント
ハイブリッド手術室(HOR)は近年心臓血管外科、整形外科、脳神経外科などにおいて頻繁に利用されているが、術野の細菌汚染の程度の評価はこれまでなかった。術野空間の細菌汚染は術後感染症の一因となるため、清浄な空気が必要であり、一方向流性(UDF)の換気システムが必要となる。本論文では、3 × 4 m四方の UDF システムとの組み合わせで、10 cfu/m3 未満を確保できること、そし必ず UDF システムの直下に配置されることが重要であると結論している。「手術医療の実践ガイドライン 2018 年版」の第 13 章「手術部建築設備」には、HOR の設備条件が書かれてある。
http://jaom.kenkyuukai.jp/images/sys%5Cinformation%5C20181005141824-E4C70A57A1474FC1EFB70FE0707C7B22404DEB8D366192F32FD16509A9016B68.pdf

交差感染/使用者の観点による手洗い用蛇口のデザインに関する観察研究:根本的に再考すべき時か?★★

Observation study of water outlet design from a crossinfection/user perspective: time for a radical re-think?

M.J. Weinbren*, D. Scott, W. Bower, D. Milanova
*Kings Mill Hospital NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, e68-e72


背景
手洗いは交差感染に対する極めて重要な防御であり、手洗いステーションで行われる。肘操作用蛇口は、正しく使用されなければ(手指で操作)接触頻度が高い物体となり、交差感染の経路となる可能性がある。

目的
病院のスタッフによって肘操作用蛇口がどのように使用されているか、様々な病棟区域において正しいタイプの手洗いステーションが Health Building Note(HBN)00-10 Part C: Sanitary Assemblies(臨床、調理および検査区域における手を使わずに操作できる蛇口)に従って設置されているかどうか、ならびにデザイン/設置に関して正しい使用の遵守に影響する可能性のある因子について検討すること。

方法
蛇口使用の観察を、4 つの手洗いステーションの上にビデオカメラを設置して行った。蛇口の適切性のレビューを、著者らの 2 名が、病棟区域を訪れ、遵守が HBN の推奨に反していないか評価することで実施した。肘操作用レバーの設置角度の測定を、分度器を用いて、また肘操作用レバーの操作角度に応じた水温の測定を較正済みの熱電対を用いて行った。

結果
スタッフの 92%が蛇口を開くために、68%が蛇口を閉めるために手指を使っており、手指が再汚染された可能性があった。使用者の 70%超が、レバーを 45 度以上動かしていた。肘操作用レバーのほぼ半数が正しく設置されておらず、常に水が流れている状態あるいは後部パネルから 3.5 cm 以内に設置されていて、肘による操作が極度に困難になっていた。HBN に従った蛇口タイプの選択は、集中治療室ではほとんど間違えていたが、病院の新築区域でも間違えた選択が認められた。

結論
手洗いは交差感染に対する極めて重要な防御であるが、蛇口の不適切な選択と間違えた使用により、その有効性が損なわれている。デザインと間違えた設置により、肘操作用レバーの操作における意図された意味がさらに損なわれている。同様に懸念されるのは、現状ではこのリスクがほとんど認識されていないことである。手洗いの安全性を向上させる機会はあるが、それには英国保健省および製造者から使用者に至るまでの幅広い層を関与させることが必要となる。

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監訳者コメント
英国の Health Building Note(HBN)(医療施設建築覚書)には、病院設備の設計に関して細かく取り決められており、これに従って「手洗いシンク」も設置され、蛇口はセンサーまたは肘操作で水が出るようにすることとされている。本論文では実際の利用状況を観察すると、肘操作のレバーを手で操作している医療従事者が圧倒的に多いこと、またレバーの位置も肘操作できないような設定になっており、交差感染のリスクを増やしていると警告している。日本でも HBN のような医療施設の設備に関する具体的な指針がが必要である。
https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/148497/HBN_00-10_Part_C_Final.pdf

歯科用ハンドピースに対する機械的洗浄の有効性の評価

Evaluation of the mechanical cleaning efficacy of dental handpieces

Damien Offner*, Lucien Brisset, Anne-Marie Musset
*Université de Strasbourg, France

Journal of Hospital Infection (2019) 103, e73-e80


背景
歯科用ハンドピースには、再使用の前に汚染除去が行われる。徹底的な洗浄は効果的な滅菌にとって必要条件であり、これにより安全性の保証と交差感染の予防を行うことができる。

目的
歯科用ハンドピース専用のデバイスによる洗浄の有効性を評価すること。

方法
PIDTests© は、透明な材質から成る特許取得済みのチューブで、洗浄デバイス内でハンドピースの代わりに用いるようデザインされている。これを、Soil Test©(Browne/STERIS)により人工的に汚染させた。PIDTests© を各ハンドピースアダプターに接続して、以下の 4 つの洗浄器を研究対象として 3 サイクルを実施した:X-Cid 2©(Micro-Mega)にPIDTests© 計 9 本、iCare+©(NSK)にPIDTests© 9 本、DAC Universal©(W&H)にPIDTests© 18 本、およびBioDA 80©(VR2M)にPIDTests© 24 本。目視評価およびビウレット反応試験を実施した。

結果
研究対象とした洗浄器のうち 3 つ(X-Cid2©、iCare+© および DAC Universal©)において、すべての PIDTests© で内表面および外表面に Soil Test© の残存物が認められ、洗浄効果が不十分であったことが示唆された。BioDA 80© のみが、すべての PIDTests© で残存汚染物が認められず、ビウレット検査の結果も陰性で、洗浄は効果的であった。

結論
製造者は、シナーサークル(洗浄プロセスの有効性に影響を及ぼす代償的パラメータ、例えば圧力、温度、時間、洗浄剤濃度などをグループ化したもの)洗浄器のパラメータを最適化すべきであり、これにより洗浄効果を向上させ、歯科外科医が安全性を保証できるようにすべきである。PIDTests© のみがハンドピース専用の洗浄消毒器における洗浄効果に関して目視評価の指標となったツールであったが、製造者は洗浄効果を評価するための高性能かつ妥当性のあるツールの開発に引き続き努めていくべきである。

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監訳者コメント
平成 29 年 9 月 4 日付けで「歯科医療機関における院内感染対策の周知について(依頼)」(医政歯発 0904第 2号)と題して歯科用ハンドピースの滅菌処理についての通達が、厚生労働省医政局歯科保健課長名でだされている。これは厚生労働科学研究の調査で、4 割の歯科診療施設において滅菌処理がされずに患者間で使用されている事実が明らかとなったことを受けている。しかしながら、ハンドピースは複雑な構造であり、滅菌が適切に実施されるためには洗浄が適切に実施されなければならない。本論文では、ハンドピース専用洗浄器の洗浄評価を、ダミー・デバイスを使用して実施し、機器毎に洗浄能力に差があることを明らかになるとともに、さらなる洗浄効果の評価のためのツールが必要である。

病院において一方向流型置換気流システムのシステム性能に有意な影響を及ぼすデザイン上の変数

Design variables with significant effect on system performance of unidirectional displacement airflow systems in hospitals

A.A.L. Traversari*, S.P.M. van Heumen, F.L.J. van Tiem, C. Bottenheft, M.J. Hinkema
*The Netherlands Organisation for Applied Scientific Research TNO, the Netherlands

Journal of Hospital Infection (2019) 103, e81-e87


背景
手術室および器械保管室の周辺から発生する、微生物を含有する粒子の取り込みの予防における気流換気システムの有効性は、多くの変数の影響を受ける。換気システムのデザインの違いが、有効保護率、すなわち備品用キャノピーの表面積に対する保護区域の面積の比に影響を及ぼす可能性が考えられる。しかし、この比に対して優位な影響を及ぼすデザイン変数が何であるのかについての分析はこれまで行われていない。

目的
手術室および器械保管室においてどのデザイン変数が気流換気システムの性能(有効保護率)に有意な影響を及ぼすかを評価すること。

方法
オランダ国内のすべての総合病院および教育病院(N = 77)に対し、手術室および器械保管室について、各病院の標準化された(システム停止時測定法)義務的システム評価報告のデータを提出するよう依頼した。病院施設計 22 カ所を含む19 病院(25%)から、十分な完全かつ均一な情報が提供され、結果として手術室 101 室および器械保管室 23 室について測定データが得られた。このデータセットを、Statistical Package for Social Sciences(SPSS)統計解析ソフトを用いて解析した。

結果
手術室については、有効保護率の重要な予測因子は、キャノピーの形状、備品用キャノピー下の空気流速、キャノピースクリーンの高さ、システムのタイプ、およびキャノピーの大きさであった。これらの有意な予測因子(P< 0.05)により、本データセットにおける結果の 48%が説明された。器械保管室については、有効保護率の有意な予測因子は、排気エアターミナルの位置、キャノピースクリーンの高さ、およびキャノピーの大きさであった。これらの有意な予測因子により、本データセットにおける結果の 66%が説明された。

結論
解析対象として得られたデータセットに基づいた結論として、備品用キャノピーの表面積に対する保護区域の面積の比(有効保護率)は、キャノピーを囲むスクリーンの存在および高さ、備品用キャノピーの表面積、およびキャノピー下の供給空気の流速に関連して改善する。この情報は、一方向流型置換気流システムの今後のデザインにとって指針として用いることができる。

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監訳者コメント
周術期感染症において手術室の気流の重要性は、1960 年代に一方向流型換気システム(UDF)の導入により人工大腿骨頭置換術後の感染症を減らすことに成功したことにはじまる。2014 年オランダでは UDF システムのガイドラインがだされ、2017 年以後定期的に気流の環境状況を把握することが要求されている。本論文では予め決められた測定箇所にさらに追加して測定することで、より実際の気流状況を把握することができ、キャノピーが大きければ有効保護率も改善することが判明している。また、給気キャノピーの大きさ、風速、給気側と下流域の温度差、排気装置の位置、無影灯の種類、キャノピー周囲にある部分的スクリーンなどは、有効保護率に影響を及ぼすため、一方向流型置換気流システムのキャノピーおよびそれに関係する設備のデザインは重要である。手術室の換気システムについて詳細を知りたい場合は、以下の URL に本論文の著者が詳細に解説している。https://cris.maastrichtuniversity.nl/portal/files/31377961/c6260.pdf

60%および 70%イソプロパノールは「イソプロパノール耐性」エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium )に対して有効である

Isopropanol at 60% and at 70% are effective against ‘isopropanol-tolerant’ Enterococcus faecium

J. Gebel*, S. Gemein, G. Kampf, S.J. Pidot, N. Buetti, M. Exner
*University Hospital Bonn, Germany

Journal of Hospital Infection (2019) 103, e88-e91


エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium )ATCC 6057、ST 796(イソプロパノール耐性株)、ならびにエンテロコッカス・ヒラエ(Enterococcus hirae )ATCC 10541について、イソプロパノールの殺菌能を調べた(EN13727)。60%および 70%イソプロパノールは、15 秒ですべての菌株に対して有効(≧ 5.38 log10 減少)であったが、23%イソプロパノールは無効であった(≦ 15 分で< 0.99 log10 減少)。続いて4 フィールドテストを用い、E. faecium に対する 70%イソプロパノールの効果を試験した。8 mL は 1 分では十分な効果がみられなかったが(< 5 log10 減少)、16 mL は有効であった(≧ 5.85 log10 減少)。使用量が適切であれば、60%および 70%イソプロパノールは E. faecium に対して有効であると安心してよいであろう。

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監訳者コメント
昨年、23%イソプロパノールに耐性を示す E. faecium がオーストラリアから報告され、さらにスイスではこの中の ST796 が侵襲性感染症の集団発生を生じていたことが明らかになった。加えてこの E. faecium は 70%イソプロパノールによる表面消毒にも抵抗性を示した。本報告は、これらの報告を追試する意味もあり、十分な濃度と接触時間を確保すれば60%~ 70%のイソプロパノールはいまだ有効であるとの結果が得られた。ただしイソプロパノール・アルコール耐性の機序はまだ不明といえ、今後も詳細な検討とデータの集積が必要である。

高リスクのクローンに属する多剤耐性菌によって産生されたバイオフィルムに対するポリヘキサニド・ベタイン溶液の活性比較

Comparative activity of a polyhexanide-betaine solution against biofilms produced by multidrug-resistant bacteria belonging to high-risk clones

J. Machuca*, R. Lopez-Rojas, F. Fernandez-Cuenca, Á. Pascual
*Hospital Universitario Virgen Macarena, Spain

Journal of Hospital Infection (2019) 103, e92-e96


本研究の目的は、高リスクのクローンおよび/または多剤耐性菌のクローンのバイオフィルムに対するポリヘキサニド(ポリヘキサメチレンビグアナイド)・ベタイン(PHMB-B)の効果を、2%クロルヘキシジンと比較して検討することであった。両方の消毒薬の最小発育阻止濃度は微量希釈によって決定した。バイオフィルムに対する PHMB-B およびクロルヘキシジンの効果は、分光光度法および細胞生存アッセイによって評価した。PHMB-B は市販濃度で、供試したすべての病原体の 24 時間、48 時間、1 週間のバイオフィルムを減少させた。PHMB-B は 2%クロルヘキシジンと比較して、グラム陰性菌の 24 時間、48 時間のバイオフィルムおよびグラム陽性菌の 7 日間のバイオフィルムに対し、より活性が高かった。まとめると、これらのバイオフィルムにおいて PHMB-B の活性は 2%クロルヘキシジンより優れていた。

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監訳者コメント
ポリヘキサニドは、コンタクトレンズの洗浄保存剤として使用されているが、黄色ブドウ球菌に対する活性や、局所投与としての急性外傷性創傷への効果についても知見が得られている。バイオフィルムに対する効果が証明され、詳細な情報が明らかになることは、コンタクトレンズのみならず、デバイス一般について本剤の用途が広がる可能性を意味すると思われる。

アルコール放出ドアプレートの service evaluation:手指衛生への追加

Service evaluation of alcohol-release door plates: an addition to hand hygiene

M.H. Wilcox*, A. Dyche
*Leeds Nuffield Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, e97-e100


アルコールを放出するドアプレート「Surfaceskins」の設置が、医療従事者によるルーチンの衛生用アルコールハンドジェルの使用に及ぼす影響を検討するため、service evaluation(使用評価)を行った。手術室 2 室に Surfaceskins のドアプレートを設置した後、医療従事者によるアルコールハンドジェルディスペンサーの使用はおよそ 2 倍に増加した。しかし Surfaceskins のドアプレートがルーチンの手指衛生の代わりになるというエビデンスは認められなかった。ドアプレートは、医療環境において、さらにはドアに頻繁に触れることによって感染予防が損なわれやすい環境(例えば、トイレ、レストラン)において、ルーチンの手指衛生の有用な補助手段となると結論づけられる。

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監訳者コメント
本検討では、出入口にドアプレートを置くという介入そのものが、ハンドジェルディスペンサーの使用頻度にも影響を及ぼした(実際に介入期間が終了すると、ディスペンサーの使用頻度も減少した)。スタッフの手指衛生に関する意識・心理的な効果をも明らかにする結果となった。

マイクロファイバー材料に洗浄剤/消毒薬を使用した場合、水のみの使用と比べて微生物による表面の汚染が改善する

Combining detergent/disinfectant with microfibre material provides a better control of microbial contaminants on surfaces than the use of water alone

A. Robertson*, M. Barrell, J-Y. Maillard
*Cardiff University, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, e101-e104


現在、マイクロファイバークロスと、水、洗浄剤または消毒薬との併用が、病院における清掃に推奨されている。本研究では、マイクロファイバークロスと、水または洗浄剤/消毒薬または殺芽胞製剤との併用について、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)およびクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)芽胞に対する有効性を、標準試験ASTM2967-15を用いて検討した。洗浄剤/消毒薬または殺芽胞製剤の使用は、水のみの使用と比べて、細菌および芽胞の生存抑制能、ならびに表面間における微生物の伝播抑制能が有意に優れていた(分散分析[ANOVA]、P< 0.001)。水のみとマイクロファイバークロスの併用は効果がより低く、殺生物製剤の代わりに使用すべきではない。

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監訳者コメント
マイクロファイバークロスによる拭き取りは、清掃効果が期待され、芽胞の伝播を防ぐと考えられてきた。ただし今回の検討では殺芽胞製剤を併用した場合、除去効果が高く、伝播も少なかった。現在、介護・療養型施設の環境に C. difficle の芽胞が存在し、高齢者に伝播、発症させる経路が注目されており、このような経路の遮断の方策に、本検討は有用かもしれない。

医療施設において蒸気滅菌処理後の湿潤状態を定量するための調査

A survey to quantify wet loads after steam sterilization processes in healthcare facilities

J.P.C.M. van Doornmalen*, F. Tessarolo, N. Lapanaitis, K. Henrotin, A. Inglese, H.W. Oussoren, R. Queiroz de Souza
*Eindhoven University of Technology, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2019) 103, e105-e109


医療施設において、蒸気滅菌後の医療機器の湿潤状態は受け入れ難い。しかし日常業務におけるその頻度についてはほとんど明らかにされていない。4 つの全国滅菌組織、すなわちオーストラリア(Sterilising Research Advisory Council of Australia[Vic]、Inc.[VIC SRACA]、ベルギー(Vereniging sterilisatie in het ziekenhuis[VSZ])、イタリア(Associazione Italiana Operatori Sanitari addetti alla Sterilizzazione - Società Scientifica[AIOS])、およびオランダ(Vereniging van Deskundigen Steriele Medische Hulpmiddelen[VDSMH])を介してオンライン調査票を配布した。125 の病院滅菌施設のうち 78%が湿潤状態を認めると返答したが、それは月 1 回から毎回の滅菌と幅があった。通常、湿潤状態は「水滴が存在すること」と定義されており、こうした湿潤物は再パッキング後に再滅菌されていた。湿潤状態が広く認められること、ならびにそれが再処理の回数および費用に影響することを考えると、湿潤状態を減らすための戦略が必要である。

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監訳者コメント
蒸気滅菌後、滅菌物に水分が付着していることは認められやすいが、水がたまる器具・器材・状況と、水の量は様々であり、どこまでを有意な水の「たまり」(上記の「湿潤状態」)とするかは一定していなかった。今回の調査でも、「水滴」なのか「水のたまり」なのかは意見が分かれた。この水が、2 次的に汚染されてしまうことが危惧されるが、本検討はそのような可能性への対策を考えるうえで、基本的なステップになると思われる。

医療環境における新デザインの臨床用手洗い用洗面台による飛沫産生の評価

Evaluation of droplet production by a new design of clinical handwash basin for the healthcare environment

S. Yui*, M. Muzslay, K. Karia, B. Shuttleworth, S. Ali, N. Dudzinska, P. Wilson
*University College London Hospitals, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, e110-e114


手洗い用洗面台から発生する飛沫は、医療環境における細菌源となる可能性がある。飛沫を少なくする新しい洗面台について、シミュレーションした手洗いを行った際の、飛沫の抑制能力を評価した。この洗面台を、医療環境で広く用いられている 2 つの従来型洗面台と比較した。洗面台を検査システム上に載せ、手洗いを行う場合と行わない場合について、蛇口から 30 秒間水を流した。飛沫は、蛍光色素により可視化した。従来型の洗面台では、30 秒間の流水時に 1,000 個を超える飛沫が形成され、2 m を超えて拡散することが分かった。新しい洗面台では、手洗い時に形成される飛沫数が有意に少なく、拡散する距離も短縮した。

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監訳者コメント
洗面台から飛散・跳ね上がる飛沫が医療従事者や周辺の環境に飛ぶことによって、細菌の汚染が広がることはかねてから問題となっていた。このため飛散・汚染の少ない洗面台へと改良が進んでいる。本研究はその一例であり、改良はまだ途上であろう。今後の検討とさらなる改良に注目したい。

歯学部の歯科用ユニット給水管路における微生物学的水質管理

Microbial water quality management of dental unit water lines at a dental school

C.M.C. Volgenant*, I.F. Persoon
*University of Amsterdam and Vrije Universiteit Amsterdam, the Netherlands

Journal of Hospital Infection (2019) 103, e115-e117


歯科用ユニットの給水管路の汚染は、歯科診療所において微生物の拡散源となる可能性がある。本研究では大規模歯学部において、歯科用ユニット給水管路中の水の微生物数を経時的に調査した。231 の歯科用ユニットから採取した水の質について、1 年半にわたり 3 回検査を行った(175 の学生クリニックの歯科用ユニットと、56 のスタッフクリニックの歯科用ユニットを含めた)。スタッフクリニックの歯科用ユニット給水管路は、オランダの基準要件である 100 コロニー形成単位(cfu)/mL を満たしていた。学生クリニックの歯科用ユニット給水管路でこの基準要件を遵守する数が増加していることから、各現場のプロトコールは十分である一方、遵守率には改善の余地があることが示唆された。

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監訳者コメント
歯科用ユニットの水質および細菌混入については、国内でもかねてから議論され、実際の菌数の計測、次亜塩素酸の使用による菌数抑制、レジオネラ汚染と対策など報告が増えつつある。しかしながら給水汚染の制御法については未確立で、現実的な対応の模索が続いている。海外を含めた情報を検討し、さらに議論と対策の実施が進むことに期待する。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.