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カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌およびバンコマイシン耐性腸球菌の保菌者が偶発的に発見された場合、リアルタイム PCR が病院の業務の復旧を早めるか?

Can real-time polymerase chain reaction allow a faster recovery of hospital activity in cases of an incidental discovery of carbapenemase-producing Enterobacteriaceae and vancomycin-resistant Enterococci carriers?

R. Saliba*, C. Neulier, D. Seytre, A. Fiacre, F. Faibis, P. Leduc, M. Amara, F. Jauréguy, E. arbonnelle, J.-R. Zahar*, L. Marty
*IAME, UMR 1137, Université Paris 13, France

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 115-120


背景
糞便中のカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の保菌者の発見は、多くの国においてルーチンの診療業務となっている。アウトブレイク時に、接触患者における獲得を阻止するために、複数の公衆衛生機関が 1 週間毎に 3 回の直腸スクリーニングを推奨している。この対策は、比較的長期にわたる病床閉鎖や診療業務の減少と関連しており、費用がかかるようである。

目的
本研究の目的は、接触患者において CPE/VRE 獲得患者を特定するために、0 日目に実施する逆転写 PCR(RT-PCR、GeneXpert®)の陽性/陰性適中率を、従来の 1 週間毎に 3 回の培養による直腸スクリーニングの結果と比較して検証することである。

方法
2015 年 1 月から 2018 年 10 月に、多施設共同後向き研究を実施した。偶発的に発見された CPE/VRE の保菌または感染を有する発端患者から特定した接触患者すべてを含めた。各接触患者において、 0 日目の PCR(GeneXpert®)および推奨されている 1 週間毎に 3 回のスクリーニングにより検査を実施した。

結果
発端患者 22 例、接触患者 159 例を対象とした。1 患者あたりの 2 次症例数は平均 0.77、接触期間の平均は 10 日(1 日~ 64 日)であった。接触患者 159 例中 16 例(10%)が、観察期間に CPE/VRE 培養陽性となった。直腸スクリーニング陽性は、0 日目が 10 例、7 日目が 2 例、14 日目が 4 例であった。培養陽性の患者 16 例中 13 例が、0 日目の PCR で陽性であった。全体的に、1 週間毎に 3 回のスクリーニングと 0 日目の PCR の結果の一致度は 97.5%(159 例中 155例)であった。発端患者の発見 0 日目に接触患者において PCR(GeneXpert®)を実施したところ、1 週間毎に 3 回のスクリーニングと比較して、所要時間を 5 日~ 27 日に短縮できた。陽性適中率は 100%、陰性適中率は 98%であった。

結論
RT-PCR(GeneXpert®)の使用により、CPE/VRE獲得を阻止するために必要な 1 週間毎に 3 回の直腸検体採取を避けることができる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
陽性適中率は 100%、陰性適中率は 98%も問題ないので,スクリーニング検査としての価値は高い。一方で、菌株を必要とする場合には古典的な選択培地を用いての監視培養検査が必要である。


集中治療室におけるカルバペネム耐性グラム陰性菌獲得の予測

Predicting acquisition of carbapenem-resistant Gram-negative pathogens in intensive care units

L.F. Dantas*, B. Dalmas, R.M. Andrade, S. Hamacher, F.A. Bozza
*Pontifical Catholic University of Rio de Janeiro, Brazil

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 121-127


背景
多剤耐性グラム陰性菌による感染症は、現代における健康上の深刻な問題の一つで、特に集中治療室(ICU)において顕著であり、入院期間・感染率・費用・死亡率の増加と関連する可能性がある。

目的
本研究の目的は、ICUにおけるカルバペネム耐性を含む多剤耐性グラム陰性菌獲得を予測すること、このリスク因子を決定すること、この獲得が死亡率に及ぼす影響を評価することである。

方法
ブラジルの大規模な病院 1 施設の ICU に入院した患者を対象に、マッチさせた症例対照研究を 5 年間にわたり実施した。症例は、入院中にカルバペネム耐性を含む多剤耐性グラム陰性菌を獲得した患者と定義した。対照は、カルバペネム耐性を含む多剤耐性グラム陰性菌が検出されなかった患者と定義した。入院期間によって症例と対照をマッチさせた。ステップワイズ変数選択法を用いた多重ロジスティック回帰分析により、リスク因子を特定した。

結果
全体で症例 343 例、対照 1,029 例について分析した。カルバペネム耐性を含む多剤耐性グラム陰性菌を ICU で獲得した患者の 30 日死亡率は 37.6%であった。多剤耐性菌株獲得において統計的に有意で、より関連のある 5 つの変数が特定された。すなわち、Simplified Acute Physiology Score 3 のスコア増加、重度の慢性閉塞性肺疾患を有する患者、血液透析カテーテル留置、中心静脈カテーテル留置、人工呼吸器装着であった。開発したモデルにより、正確度が約 90%という良好な成績が示された。多剤耐性グラム陰性菌の獲得患者の死亡率は、多剤耐性グラム陰性菌の非獲得患者よりも 2.72 倍高かった。

結論
リスク因子の特定および予測モデルの開発は、早期発見と多剤耐性菌拡散の制御によって患者に有益となる可能性がある。確認された主要なリスク因子は、人工呼吸器装着と中心静脈カテーテルであり、これらの使用には特別な注意が必要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
Simplified Acute Physiology Score 3 のスコア増加、重度の慢性閉塞性肺疾患を有する患者、血液透析カテーテル留置、中心静脈カテーテル留置、人工呼吸器装着というリスク因子があることが判明したことにより、感染予防策の強化を行うことで感染のリスクが軽減できるのかどうかが次のチャレンジになるだろう。

大腸菌(Escherichia coli)血流感染症のアウトカムと予防可能性:6 か月間の前向き観察研究

Escherichia coli bloodstream infection outcomes and preventability: a six-month prospective observational study

P.J. Lillie*, G. Johnson, M. Ivan, G.D. Barlow, P.J. Moss
*Hull and East Yorkshire Hospitals NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 128-133


背景
大腸菌(Escherichia coli)血流感染症(BSI)は一般的かつ深刻な問題であり、発生率および抗菌薬耐性は増加傾向にある。

目的
当該研究施設において、不良な転帰の誘発因子および予防可能な症例と関連する因子を解明すること。

方法
2017 年 11 月 1 日から 2018 年 4 月 30 日に、当該研究施設で入院治療を受けた成人の大腸菌 BSI 症例を前向きコホート研究の対象とした。臨床的・人口統計学的特徴、検査所見、ならびにBSI発症後の 7 日、30 日、90 日死亡率および入院期間を記録した。予防可能性に関する質的データを、2 名の感染症専門医が独立してレビューした。

結果
全体で、患者 188 例における症例 195 件を分析の対象とした。経験的抗菌薬に対する in-vitro での耐性が症例の 30.9%でみられた。30 日死亡率は 23.6%、入院期間の中央値は 7 日であった。多変量解析において、30 日死亡率は、Charlson スコア高値、住宅型介護施設居住、呼吸数増加、血清尿素高値と関連した。一方、入院期間の延長は、病院感染大腸菌 BSI と関連した。50 例の患者は回避可能な BSI であると考えられ、そのいずれもが医療関連感染症であり、尿路カテーテル使用による合併症、抗菌薬関連/手技関連合併症は、予防可能な範囲であった。

結論
大腸菌 BSI はかなりの死亡率をもたらし、死亡率または入院期間延長の修正可能なリスク因子はほとんどない。尿路カテーテル使用に対する注意は、発生率の低下にもっとも有効な方法のようであるが、英国の現在の低下目標は達成できないかもしれない。

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監訳者コメント
尿路カテーテル使用を控える&使用する場合には使用期間を最小限にすることが、大腸菌 BSIのリスク軽減に繋がることは、従来より明らかであり地道な取り組みの積み上げが重要である。

米国における多剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に起因する呼吸器感染症疑いの臨床的・経済的負担の増加

Incremental clinical and economic burden of suspected respiratory infections due to multi-drug-resistant Pseudomonas aeruginosa in the United States

Y.P. Tabak*, S. Merchant, G. Ye, L. Vankeepuram, V. Gupta, S.G. Kurtz, L.A. Puzniak
*Becton, Dickinson & Company, Franklin Lakes, USA

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 134-141


背景
多剤耐性緑膿菌(multi-drug resistant Pseudomonas aeruginosa;MDRP)は、患者および病院に悪影響を及ぼす可能性がある。

目的
米国の 78 の病院において、MDRP に起因する呼吸器感染症疑いの入院患者の超過死亡率および費用負担を、非多剤耐性緑膿菌(non-MDRP)に起因する呼吸器感染症疑いの入院患者と比較して評価すること。

方法
本研究では、米国疾病対策センターの定義に従って、病院感染の MDRP または non-MDRP を特定するため、重複のない呼吸器の供給源由来の緑膿菌分離株が入院から 3 日以上後に採取された入院患者の、電子的に保存された微生物学的データおよび転帰のデータを分析した。死亡率、入院期間、費用、運用損益、30 日再入院について、多剤耐性のリスクを推定した。入手可能な薬剤データのコホートを用いて、感度分析を実施した。

結果
523 例の MDRP および 1,381 例の non-MDRP の症例において、未補正の死亡率は 23.7%対 18.0%、多変量補正した死亡率は 20.0%(95%信頼区間[CI]14.3% ~ 27.2%)対 15.5%(95%CI 11.2% ~ 20.9%、P = 0.026)、平均補正延長 LOS は 6.7 日(P < 0.001)であった。症例あたりの超過費用は 22,370 US ドル(P = 0.002)であり、症例あたりの運用損失は 10,661 US ドル(P = 0.024)大きく、多変量補正した再入院率は 16.2%(95%CI 11.2% ~ 22.9%)対 11.1%(95%CI 7.8% ~ 15.6%、P = 0.006)であった。感度分析の結果も同様であった。

結論
患者および病院の特性を調整した後、non-MDRP に起因する感染症疑いと比較して、MDRP に起因する感染症疑いの患者は、死亡、再入院、入院期間延長のリスクがより高く、また、症例あたり 20,000 US ドルの費用増加および症例あたり 10,000 US ドルを超える純損失の増加となるリスクもより高かった。

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監訳者コメント
MDRP による感染症は、死亡、再入院、入院期間延長のリスクが non-MDRP 感染症より高いことが本研究により明らかとなっている。具体的に感染症を発症した際に、効果的な抗菌薬療法が得られない場合が多いことがその大きな要因になっている。

東ロンドンにおけるカルバペネマーゼ産生菌の地域有病率

Community prevalence of carbapenemase-producing organisms in East London

J. Henderson*, H. Ciesielczuk, S.M. Nelson, M. Wilks
*Royal London Hospital, Barts and the London NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 142-146


背景
この 10 年間、カルバペネム耐性が急速に世界的に増加しており、懸念が高まりつつある。主役はカルバペネマーゼであり、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae )カルバペネマーゼ(KPC)、オキサシリナーゼβ–ラクタマーゼ 48(OXA-48)、イミペネマーゼメタロβ–ラクタマーゼ(IMP)、ヴェローナ・インテグロン由来メタロβ–ラクタマーゼ(VIM)、ニューデリー・メタロβ–ラクタマーゼ(NDM)が英国全域でも報告されてきている。しかし、これらの報告は、反応性スクリーニング、アウトブレイク制御、入院患者調査、診断用検体の組み合わせから得られたものである。したがって、真の地域有病率は不明である。

目的
バーツ・ヘルス NHS トラストが医療提供している地域におけるカルバペネマーゼ産生菌の地域有病率を明らかにすること。

方法
重複のない、地域の糞便試料 200 件の積極的スクリーニングを実施した。カルバペネマーゼ産生菌の保菌に関する潜在的なリスク因子を特定するため、検査室情報管理システムから患者の人口統計学的特性および海外旅行歴を抽出した。

結果
本研究の患者の年齢は 1 歳から 93 歳であり、男女均等に割り付けた。過去 1 年間の海外旅行は患者 200 例のうち 46 例(23%)に記載があり、最もよく訪問された国はバングラデシュ(4%)、インド(2.5%)、モロッコ(2%)、トルコ(1.5%)であった。しかし、患者 1 例のみがカルバペネマーゼ産生菌である NDM 産生緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)検査陽性となり、この患者はカリブ海へ旅行していた。

結論
英国の地域社会においてカルバペネマーゼ産生菌の有病率を調査した研究はこれまでにない。バーツ・ヘルス NHS トラストが医療提供している高リスクの患者集団を考慮すると、本研究において認められた有病率が低かったことは心強い。しかし、以前は高リスクとして分類されていなかった国々へ旅行することも、脅威をもたらす可能性があることは強調すべきである。

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監訳者コメント
東ロンドンのあるエリアでのカルバペネマーゼ産生菌の保有率を調査した論文である。結果は、何らかの消化器症状が有り受診した 200 例のうち、1 例のみ、NDM 産生緑膿菌を保有していた。しかし、対象者の 23%にあたる 46 例が 1 年以内の渡航歴があった。それ以外にも感受性低下が確認されており、その中には渡航歴がない人も多かった。渡航歴の確認は必須であるが、地域での健常人での耐性菌の保有率も考慮に入れる必要があると思われた。


河川水における肺炎桿菌カルバペネマーゼ(KPC)産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae )ST258 の最初の検出

First evidence of KPC-producing ST258 Klebsiella pneumoniae in river water

M. Jelić*, J. Hrenović, S. Dekić, I. Goić-Barišić, A. Tambić Andrašević
*University Hospital for Infectious Diseases, Croatia

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 147-150


本稿では、クロアチアの河川水における肺炎桿菌カルバペネマーゼ(KPC)‐2 産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae )の最初の症例について報告する。全体で、KPC‐2 産生肺炎桿菌の分離株 4 株について分析した。すべての分離株が同じ遺伝的系統を持ち、ST258 に属していた。分離株は、コリスチンに感受性を示す同一の多剤耐性プロファイルを示した。全分離株で、blaSHV-1aac(3’)-IIaac(6’)-Ibaph(3’)-Ia 遺伝子が検出された。また、サイズの異なる(約 140、230、225、220 kb)非接合性の単一 IncFII プラスミド上に、blaKPC-2 遺伝子が局在した。肺炎桿菌は河川水に最長 50 日間は生存可能であり、環境内に存続し拡散する能力が確認された。

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監訳者コメント
ここ数年、河川、海などの環境における耐性菌の状況が各地で調査され、その存在が確認されている。One Health という視点で考え、多方面の専門家がともに対策を検討すべき課題であると思われる。


タイの新生児集中治療室の乳児における抗菌薬耐性グラム陰性菌保菌

Antimicrobial-resistant Gram-negative colonization in infants from a neonatal intensive care unit in Thailand

T. Roberts*, D. Limmathurotsakul, P. Turner, N.P.J. Day, W.P. Vandepitte, B.S. Cooper
*Mahidol University, Thailand

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 151-155


南アジアや東南アジアの入院中の新生児において、抗菌薬耐性グラム陰性菌は感染および死亡の主な原因である。本研究の目的は、タイの新生児集中治療室の患児を対象に、抗菌薬耐性グラム陰性菌の保菌動態を明らかにすることである。登録患児 97 例のうち 52%は、入院中のある時点で基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌を保菌し、64%はカルバペネム耐性菌を保菌していた。急速な ESBL 陽性菌およびカルバペネム耐性菌の獲得が認められた。患児が抗菌薬耐性菌を保菌すると、その後の NICU 入室期間中、保菌状態は継続した。

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監訳者コメント
タイの新生児集中治療室の患児の 52%が ESBL 産生菌を保菌し、64%がカルバペネム耐性菌を保有していたという論文である。考察には、タイのコミュニティの調査では ESBL 産生菌保菌が 89%であったことが反映されているのでは、という記載があったが、母体の保菌についてのデータはなく、関連性は明らかではなかった。

カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌の保菌歴のある再入院患者におけるスクリーニング:スクリーニング方針変更の評価

Screening for carbapenemase-producing Enterobacteriaceae in previous carriers readmitted to hospital: evaluation of a change in screening policy

A. Tucker*, R. George, W. Welfare, P. Cleary, J. Cawthorne, A. Dodgson
*Public Health England North West, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 156-159


英国の病院において、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)は、ますます深刻な問題となっている。伝播の予防には早期発見が必要である。本研究では、発生率がより高い病院 1 施設において、blaKPC 関連 CPE の保菌歴のある患者のスクリーニングの新たな方針について評価する。従来の方針は、「一度陽性になると、陽性が持続」を前提としていた。新たな方針では、迅速なスクリーニングとリスク評価を使用する。blaKPC 関連 CPE 保菌歴のある大部分の患者(76.5%)で、再入院時またはその後の入院中に blaKPC 関連 CPE が検出できなかった結果が示されたが、初回の結果が陰性であっても、継続的なスクリーニングが必要であることが示された。新たな方針では、リスクに基づくアプローチを適用し、発生率のより高いトラストにおいて隔離設備を優先させる。

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監訳者コメント
CPE 保菌歴のある患者の再入院にあたり、データを解析し、これまでに「一度陽性になると、陽性が持続」すると考えた対策から、繰り返しスクリーニングを行い、検出された場合に対策を実施する、にポリシーを変更した、という論文である。これに伴い、隔離のための病室の不足、不要な対策にかかる費用が軽減されると思われるが、長期データの解析による評価が必要であろう。


アイルランドおよびオランダのナーシングホーム入居者における基質特異性拡張型β- ラクタマーゼ(ESBL)産生大腸菌(Escherichia coli)の伝播はインフラの違いを反映している可能性がある

Spread of ESBL-producing Escherichia coli in nursing home residents in Ireland and the Netherlands may reflect infrastructural differences

E.M. Terveer*, M. Fallon, M.E.M. Kraakman, A. Ormond, M. Fitzpatrick, M.A.A. Caljouw, A. Martin, S.M. van Dorp, M.C. Wong, E.J. Kuijper, F. Fitzpatrick
*Leiden University Medical Centre, the Netherlands

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 160-164


ナーシングホーム 2 施設(オランダ、アイルランド各 1 施設)における有病率研究により、オランダの入居者 4 例(11%)およびアイルランドの入居者 6 例(9%)が 11 の基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生大腸菌(Escherichia coli)を保菌し、そのうち 10 は CTX-M-15 を含むことが認められた。同じ病棟の入居者 3 例に由来するオランダの分離株 4 つは大腸菌 O25:H4、配列型(ST)131 に属しており、全ゲノムシークエンシングによると同じクラスター型の一部であった。異なる 3 病棟のアイルランドの入居者 4 例は、同一の大腸菌 O89:H9、ST131、複合型1478 を保菌していた。アイルランドの 3 病棟の間の交差伝播は、ナーシングホームのインフラの違い、特に共用部分およびベッドが複数ある部屋に関する違いを反映している可能性がある。

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監訳者コメント
ナーシングホームにおける ESBL 産生大腸菌の保有状況をオランダとアイルランドで比較した研究である。アイルランドでは複数ベッドの部屋が多く、共用部分も限られ多くの居住者が利用するため、病棟をまたいだ交差感染が発生していたことから、ナーシングホームのインフラ(設備)が微生物の伝播に関与すると指摘している。納得の結果である。



ルーマニアの病院における NDM-1 カルバペネマーゼ産生株プロビデンシア・スチュアーティイ(Providencia stuartii)の拡散:多施設共同研究

Dissemination of NDM-1 carbapenemase-producer Providencia stuartii strains in Romanian hospitals:a multicentre study

S. Molnár*, M.M.M. Flonta, A. Almaş, M. Buzea, M. Licker, M. Rus, A. Földes, E. Székely
*University of Medicine, Pharmacy, Science and Technology of Tîrgu-Mureş, Romania

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 165-169


近年、複数のルーマニアの病院がプロビデンシア・スチュアーティイ(Providencia stuartii)株の分離の増加と、憂慮すべきカルバペネム耐性率について指摘している。P. stuartii の拡散に関する分子疫学的データを示すため、ルーマニアの異なる地域の 5 つの病院から収集された P. stuartii 77 株を分析した。すべての菌株は IncA/C プラスミドを保有しており、67 株は blaNDM-1 遺伝子を保有していた。パルスフィールド・ゲル電気泳動によって、6 つのクローンクラスターが識別された。主要なサブタイプは 5 病院すべてにおいて認められた。我々の研究により、抗菌薬使用の最適化およびカルバペネマーゼ産生 P. stuartii に対する対象限定サーベイランスといった、効率的な感染制御策の必要性が浮き彫りになった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
ルーマニアの 5 つの病院で、遺伝子学的に同一と考えられる NDM-1 を産生するP. stuartiiが検出されているそうだ。非常に懸念される状況である…。

病院の室内空気と、換気がバイオエアロゾルに与える影響:システマティックレビュー

Indoor hospital air and the impact of ventilation on bioaerosols: a systematic review

R.E. Stockwell*, E.L. Ballard, P. O’Rourke, L.D. Knibbs, L. Morawska, S.C. Bell
*QIMR Berghofer Medical Research Institute, Australia

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 175-184


ますます厳密になる感染制御・予防策の使用にもかかわらず、医療関連感染(HAI)は病院内で根強く持続している。潜在的な病原性を有するバイオエアロゾルの日和見性の空気伝播は、この持続に対して考えられる理由の 1 つかもしれない。したがって本研究では、病院内の異なる区域における室内バイオエアロゾルの濃度および組成、ならびに異なる換気システムの効果を系統的にレビューすることを目的とした。興味を引く論文を特定するため、電子データベース(Medline および Web of Science)で検索を行った。検索対象は 2000 年から 2017 年に英語で発表された論文に限定した。集まったデータは、異なる病院の区域および換気の種類の間の、1 m3 あたりのコロニー形成単位(cfu/m3)の平均値の違いを検討するために使用した。合計 36 報の学術誌の論文が適格基準に合致した。病院の異なる区域における総バイオエアロゾル濃度の平均値は、制限区域(13 cfu/ m3、95%信頼区間[CI]10 ~ 15)および公共区域(14 cfu/ m3、95%CI 10 ~ 19)と比較して、入院患者の施設において最も高かった(77 cfu/ m3、95%CI 55 ~ 108)。自然換気をしている病院の区域では、従来型の機械的換気システムを使用している区域(20 cfu/ m3、95%CI 16 ~ 24)と比較して、総バイオエアロゾル濃度が最も高かった(201 cfu/ m3、95%CI 135 ~ 300)。高機能な機械的換気システム(例えば、1 時間あたりの換気回数の増加、方向流、ろ過システムなど)を使用している病院の区域では、総バイオエアロゾル濃度が最も低かった(9 cfu/ m3、95%CI 7 ~ 13)。病院で高機能な機械的換気システムを運転することは病院の室内空気の質を改善するのに寄与し、HAI の空気伝播のリスクを減らすのに役立つ。

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監訳者コメント
換気システムの種類と空気中に検出される微生物の種類と量の相関に関するシステマティックレビューである。一方、臨床的な感染症の発生頻度との相関には触れていない。本研究領域においては重要なレビューである。

集中治療室の隔離室内の空気中のバイオバーデンに関する連続的モニタリングおよび高リスク活動の特定

Continuous monitoring of aerial bioburden within intensive care isolation rooms and identification of high-risk activities

L.R. Dougall*, M.G. Booth, E. Khoo, H. Hood, S.J. MacGregor, J.G. Anderson, I.V. Timoshkin, M. Maclean
*University of Strathclyde, Glasgow, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 185-192


背景
空気経路を介する病原体の伝播はしばしば過小評価され、病院施設において空気中の微生物汚染レベルが昼夜を通して変動する範囲については、ほとんど分かっていない。

目的
環境空気中のバイオバーデンの変動性および病棟での活動が影響しうる範囲の理解を深めるため、集中治療室(ICU)の隔離室内の空気の汚染レベルを 10 時間から 24 時間にわたって評価すること。

方法
入院患者が入室中および空室の隔離室内で、環境空気のモニタリングを実施した。シーブ型インパクターサンプラーを用いて、10 時間(8 時 ~ 18 時)および 24 時間(8 時 ~ 8 時)にわたり、15 分ごとに 500 リットルの空気サンプルを採取した。サンプルを採取し、部屋での活動を記録し、空気 1 m3あたりのコロニー形成単位(cfu)として細菌汚染レベルを記録した。

結果
試験した隔離室でのすべての状況にわたって、空気の汚染レベルにおける高度の変動性が認められた。空気中のバイオバーデンは部屋の占有率が上昇するにつれて増加し、試験中に最も長い間(10 日間)入室されていた部屋において、空気の汚染レベルは最も高かった(平均 104.4 cfu/ m3、範囲 12 ~ 510 cfu/ m3)。空室における数値(平均 20 cfu/ m3)および夜間の数値は最も低かった。

結論
空気汚染のピークは活動レベルの上昇に直接関連していた。本研究により、ICU の隔離室における 24 時間にわたる空気中の微生物レベルの変動性の範囲に関し明白なエビデンスが初めて示され、微生物の負荷と病棟での活動の間の直接的な相関が認められた。

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監訳者コメント
空中浮遊菌に関する研究は多数存在するが、経時的なモニタリングを行った研究は少ない。本研究によって、出入りするスタッフが増加することによって空中浮遊菌が増加することが示された。ICU や手術室では出入りするスタッフを最小限にするべき、という推奨を支持する研究結果である。

シンクデザインによる排水およびエアロゾル化による微生物汚染の低減

Mitigation of microbial contamination from waste water and aerosolization by sink design

K. Cole*, J.E. Talmadge
*University of Nebraska Medical Center, USA

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 193-199


背景
医療関連感染症は医療費、病的状態、死亡の増加の重要な原因であり、部分的にシンク、シンク排水管および接続された水系システムが関与するとされている。

目的
本研究用に新規にデザインした実験的シンク(手洗設備)により、空気中およびシンク台における微生物を含むエアロゾル化汚染物を低減できるかどうかを明らかにすること。

方法
実験的シンク(エアロゾル化および排水トラップの汚染を抑えるようデザイン)と対照としての病院のシンク(いずれも共通の排水システムに接続)の間で多重比較を実施した。実験的シンクには、紫外線、エアロゾル防止フード、オゾン水生成器、ならびに細菌増殖/エアロゾル化および排水トラップにおける細菌増殖を抑えるための洗浄システムが装備されていた。病院のシンクに通常廃棄される物質をシミュレートするため、栄養物質を添加した。表面採取用スワブ、平板培地および排水トラップについて、細菌および真菌による汚染レベルの評価を行った。

結果
実験的シンクでは、細菌および真菌による排水トラップ汚染が、最初のレベルより有意に低かった(トリプトソイ寒天培地およびサブロー寒天培地において99.9%)。排水トラップからのエアロゾルによる汚染物は、実験的シンクのほうが対照シンクより、トリプトソイ寒天培地(76%)およびサブロー寒天培地(86%)において有意に少なかった。

結論
微生物汚染を抑制することは、主要な汚染源となる室内シンクによる院内感染症の制御にとって不可欠である。今回の実験的シンクを用いた研究から、オゾン水によるシンク表面の定期的な洗浄、排水トラップ由来の水の汚染除去、ならびに紫外線を用いた表面の汚染除去により、微生物を含んだエアロゾル生成および表面の汚染が抑制され、あわせて患者の曝露を低減し、病院獲得感染症を減らす可能性がある。

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監訳者コメント
近年、強毒株の C.difficile や耐性菌の出現により、環境整備は感染対策のなかでも重視されている。特に手洗い設備は、手洗シンクの構造により交差感染の供給源となる危険性があるが、あまりそのリスクが顧みられていない傾向にある。設計工学と感染制御の全面的協力により、①エアロゾルや汚染物の中の病原体の同定、②感染防止の観点からみたシンクデザインの評価と改善、③シンクの維持管理のための最適化された方法を確立することにより、より良いデザインのシンクが生まれるであろう。


病院感染下痢症の有病率、原因および管理に関する横断研究★★

Cross-sectional study of the prevalence, causes and management of hospital-onset diarrhoea

D. Mawer*, F. Byrne, S. Drake, C. Brown, A. Prescott, B. Warne, R. Bousfield, J.P. Skittrall, I. Ramsay, D. Somasunderam, M. Bevan, J. Coslett, J. Rao, P. Stanley, A. Kennedy, R. Dobson, S. Long, T. Obisanya, T. Esmailji, C. Petridou, K. Saeed, K. Brechany, K. Davis-Blue, H. O’Horan, B. Wake, J. Martin, J. Featherstone, C. Hall, J. Allen, G. Johnson, C. Hornigold, N. Amir, K. Henderson, C. McClements, I. Liew, A. Deshpande, E. Vink, D. Trigg, J. Guilfoyle, M. Scarborough, C. Scarborough, T.H.N. Wong, T. Walker, N. Fawcett, G. Morris, K. Tomlin, C. Grix, E. O’Cofaigh, D. McCaffrey, M. Cooper, K. Corbett, K. French, S. Harper, C. Hayward, M. Reid, V. Whatley, J. Winfield, S. Hoque, L. Kelly, I. King, A. Bradley, B. McCullagh, C. Hibberd, M. Merron, C. McCabe, S. Horridge, J. Taylor, S. Koo, F. Elsanousi, R. Saunders, F. Lim, A. Bond, S. Stone, I.D. Milligan, D.J.F. Mack, A. Nagar, R.M. West, M.H. Wilcox, A. Kirby, J.A.T. Sandoe
*Leeds Teaching Hospitals NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 200-209


背景
イングランドの英国国民保険サービスは病院に対して、病院感染下痢症に関するデータを収集するよう指示している。現在、病院感染下痢症に関するデータは得られていない。

目的
内科病棟、外科病棟および高齢者ケア病棟における病院感染下痢症の有病率、病因および管理について明らかにすること。

方法
2016 年に冬季の 1 日および夏季の 1 日にデータを収集した英国の病院について、ボランティアサンプルを対象に横断研究を実施した。72 時間以上入院していた患者を対象に、病院感染下痢症(定義:研究日前日にBristol Stool Scaleのタイプ 5 ~ 7 の排便 2 回以上、かつ入院後48時間超で下痢を発症)のスクリーニングを行った。病院感染下痢症の病因および管理に関するデータを前向きに収集した。

結果
32 病院(急性期病院16、教育病院16)の 141 病棟においてデータが収集された。病院感染下痢症の点有病率は4.5%(5,142例中230例、95%信頼区間[CI]3.9 ~ 5.0%)であった。病院感染下痢症の有病率は、教育病院(5.9%、95%CI 5.1 ~ 6.9%)は急性期病院(2.8%、95%CI 2.1 ~ 3.5%)の 2 倍であった(オッズ比 2.2、95%CI 1.7 ~ 3.0)。可能性のある理由が少なくとも 1 つ同定されたのは 230 例中 222 例(97%)であった:107 例(47%)には関連する基礎疾患があり、125 例(54%)は抗微生物薬を投与されており、195 例(85%)は下痢の原因となることが知られている薬剤を投与されていた。検査を受けた 75 例中 9 例が、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)毒素陽性であった(4%)。80 例(35%)では、下痢の医学的評価が記録されていた。医療記録に病院感染下痢症の記録がある場合、C. difficile の検査を受けている割合が高かった(検査を受けた患者 78%に対し、検査を受けなかった患者 38%、P < 0.001)。144 例(63%)は、下痢発症後に隔離されていなかった。

結論
病院感染下痢症は高頻度にみられる症状で、英国の医療システム全体で毎日数千人の患者が発生している。ほとんどの患者は病院感染下痢症を引き起こす可能性のある複数の原因(主として医原性)を有していたが、医学的評価を受けていたのは 3 分の 1 のみであった。ほとんどの患者は C. difficile の検査を受けておらず、隔離もされていなかった。

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監訳者コメント
2008 年に英国保健省は、“Clostridium difficile infection: How to deal with the problem”において、入院中の下痢症患者に対する対応策として、対応策の頭文字をとって SIGHTを推奨している。すなわち①Suspect:C. difficile感染症を疑い、②Isolation:隔離、③Gloves:手袋とエプロンによる接触感染対策、④Handwashing:石鹸と流水による手洗い、⑤Test:CD 感染症の検査、の 5 つの対応である。しかしながら、本論文の 2016 年の調査では、これらの英国保健省が出した対応策が 8 年後に実施した調査においても十分に徹底されていなかったことが明らかとなった。日本においても「入院中の下痢症」に対しては、このような 5 つの対応を即座に実施することが、CD 感染症に限らず院内発生の下痢症の感染拡大防止に必要である。

病院アウトブレイクの可能性がある場合に標識するためのウェブベースのツールの評価:複数の方法を混合して用いた研究

Evaluation of a web-based tool for labelling potential hospital outbreaks: a mixed methods study

B. Leclère*, D.L. Buckeridge, D. Lepelletier
*Nantes University Hospital, France

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 210-216


背景
サーベイランスデータにおいてアウトブレイクの標識を行うことは、アウトブレイク検出を目的とした高度の分析法のトレーニングをするために必要であるが、この作業を行うためのソフトウェアツールは存在しない。

目的
アウトブレイクの可能性がある場合に標識するためのウェブベースのツールについて、感染制御担当者にとっての使いやすさを評価すること。

方法
複数の方法を組み合わせた研究デザインを用いて、フランスおよびカナダの専門家 25 名が、アウトブレイクの可能性がある場合を同定するためのウェブベースのソフトウェアについてどのように双方向使用を行ったかを評価した。23 種類の微生物による 1 年発生率を示した時系列データについて、各専門家がこのソフトウェアを用いて 11 ~ 12 件ずつ後向きにレビューした。使用者のソフトウェアにおける双方向使用を記録し、混合効果モデルを用いて分析した。使用者のコメントを、定性的方法により分析した。

結果
完了された 240 件のレビューから、アウトブレイクの可能性がある場合として 439 件標識され、ほぼ半数は可能性が高いとされた。使用者の回答と行動の間に有意な不均一性が認められた(評価時間、異なるオプションの使用)。専門家の本ツールにおける双方向使用にも有意な教育効果が認められたが、これは専門家の回答に影響を及ぼさなかったようであった。回答コメントの内容分析では、感染制御担当者にとって早期のアウトブレイク同定は困難であることが示されたが、同時に、ルーチンのサーベイランスにおける評価と同様に、ウェブソフトウェアが有用である可能性も示された。

結論
双方向性のウェブソフトウェアは、感染制御担当者にとって使いやすいとともに有用であった。そのルーチン業務への導入は、専門家にとってアウトブレイクの可能性がある場合の同定を助けるとともに、自動検出アルゴリズムのトレーニングを目的としたデータを生成できる可能性がある。

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監訳者コメント
感染予防の世界においても、近年の IT の進歩は、データウエアハウス(DWH クラウド、あるいはコンピューター・アルゴリズムなどの技術により、大きく進歩し、感染症サーベイランス、耐性菌モニタリング、手指衛生遵守状況の把握など可能となっているが、未だに「アウトブレイクの早期検出」は満足のゆく結果がだせていない。このアプリケーションは、①できる限りアウトブレイク判断に必要なデータが取得できる、②疑わしいアウトブレイクを検索するため対話式である、③アウトブレイクを追跡でき記録に残せる、④複数のユーザーが同時に使用可能、を条件として開発された。相応の評価はされているが、アウトブレイクの早期発見にはさらなるアプリ開発が必要であることには間違いない。日本では J-SIPHE という全国レベルのサーベイランスが開始された、興味のある方はHP(https://j-siphe.ncgm.go.jp/Overview)を参照して頂きたい。
「全国の医療機関における感染症診療状況、感染対策への取り組みや構造、医療関連感染の発生状況、主要な細菌や薬剤耐性菌の発生状況及びそれらによる血流感染の発生状況、抗菌薬の使用状況等に関する情報を集約させ、さらに、それらを参加医療機関や参加医療機関の地域等が活用していくことを目的とするものです。また、データの集約による日本の National data base の構築としての役割も担っています。」

母乳バンクにおける母乳搾乳キット洗浄の 2 法の比較★★

Comparison of two methods for cleaning breast pump milk collection kits in human milk banks

B. Flores-Antón*, J. Martín-Cornejo, M.A. Morante-Santana, N.R. García-Lara, G. Sierra-Colomina, J. De la Cruz-Bértolo, C. Martín-Arriscado-Arroba, D. Escuder-Vieco, M. Soriano-Ramos, F. Chaves, C.R. Pallás-Alonso
*Hospital Universitario 12 de Octubre, Spain

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 217-222


背景
母乳搾乳キットの適切な汚染除去は、乳児にとって安全な母乳を確保するためにも、またドナーの母乳の廃棄を避けるためにも不可欠である。

目的
母乳搾乳キットの汚染除去の 2 つの方法を評価すること。英国国立医療技術評価機構(NICE)による低温殺菌処理前の培養基準に従って培養検査を行うとともに、廃棄されたドナー母乳の割合を算出した。

方法
前向き比較研究で、割り付け比率を 1:1とし、微生物学者を盲検化した。

参加者
マドリードの母乳バンクにおける新規ドナー 47 人。

介入
研究対象群(N = 21):使用後に水と洗浄剤で洗浄し、さらにマイクロ波殺菌バッグ内で蒸気による汚染除去を行った母乳搾乳キット。対照群(N = 26):洗浄、すすぎ、および乾燥のみ。ドナーあたり5 個のサンプルを採取:手の搾乳による初回サンプルと、それ以降は同じ搾乳ポンプと方法を用いた 4 個のサンプル(週 1 回)。

転帰
プライマリーアウトカム:汚染が原因で廃棄されたドナー母乳の割合。セカンダリーアウトカム:手による搾乳と搾乳ポンプにより得られたサンプル中の細菌叢の比較。

結果
合計で 217 の母乳サンプルが収集され、47 は手による搾乳、170 はポンプ搾乳(78 は研究対照群)であった。洗浄後にマイクロ波殺菌バッグで蒸気による汚染除去を行った母乳搾乳キットでは、洗浄のみで蒸気による汚染除去を行わなかった母乳搾乳キットと比べて、廃棄されたドナー母乳の割合が低く(1.3%対 18.5%、P < 0.001)、腸内細菌科細菌(1.3%対 22.8%、P < 0.001)およびカンジダ(Candida)属菌(1.3%対 14.1%、P < 0.05)によって汚染されたサンプルの割合が低かった。蒸気による汚染除去を行った母乳搾乳キットによるサンプルと、手による搾乳によるサンプルの間では、細菌汚染に差は認められなかった。

結論
洗浄後にマイクロ波殺菌バッグで蒸気による汚染除去を行った母乳搾乳キットを使用すると、廃棄に至るドナー母乳の量と、病原性のある細菌が含まれるサンプルの数を少なくできる。

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監訳者コメント
母乳を搾乳後、冷凍保存して輸送し、ドナー母乳として他児に寄付する母乳バンクが現在増加している。バンクに到着後、冷凍した母乳を解凍して細菌検査を行い、菌数と菌種を調べるが、NICE は総細菌数が>10 5 CFU/mL、あるいは腸内細菌科細菌や黄色ブドウ球菌が>10 4 CFU/mLの場合は母乳を廃棄するよう勧めている。搾乳キットの接着部分(シリコンゴム製など)は頻繁に使うものであり、洗浄しても微量の母乳が残っていれば、菌の繁殖の温床になる。家庭で電子レンジで容易に行うことができ(本検討では 1日 1 回であった)、さらにこの結果は家庭での授乳にも応用することができるので、非常に有用な結果が得られたといえる。

2 歳未満の術後の小児におけるタウロリジン・クエン酸ロック溶液の予防的な使用がカテーテル関連感染症の件数に及ぼす影響

Effects of prophylactic use of taurolidine-citrate lock on the number of catheter-related infections in children under 2 years of age undergoing surgery

M. Łyszkowska*, G. Kowalewski, M. Szymczak, D. Polnik, A. Mikołajczyk, P. Kaliciński
*Children’s Memorial Health Institute, Poland

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 223-226


中心静脈アクセスにはカテーテル関連感染症(CRI)の発症リスクがある。本研究の目的は、タウロリジン・クエン酸溶液の予防的な使用が CRI の発生数に及ぼす影響を評価することであった。小児 86 例に 97 本のカテーテルが挿入されたが、これを無作為に以下の 2 群に分けた:標準的な無菌操作を受けた T(-)群(N = 49)と、それに加えて経静脈栄養や薬剤投与の合間にタウロリジン・クエン酸溶液でラインを満たした T(+)群(N = 48)である。CRI の発生は、T(-)群は 16 件、T(+)群は 1 件であり、この差は有意であった(P < 0.05)。タウロリジン・クエン酸溶液の使用は、CRI 予防において安全かつ効果的な方法のようである。

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監訳者コメント
タウロリジン・クエン酸はアミノ酸のタウリンに由来し、これまでロック療法として用いた場合、細菌・真菌のカテーテル感染が減少する一方、本剤の投与による一過性の副作用は 8%未満とも言われていた。本研究では 2 歳未満の小児に、1 日 2 時間以上ロック療法を行った際の有効性を判定している。一方で Journal of Hospital Infection (2012) 80, 304-309.では血液悪性腫瘍の小児を対象とした成績が報告されており、こちらも合わせて参照されたい。バイオフィルム抑制作用が効果を高めた可能性があり、この点がより明らかにされることに期待したい。

漂白洗浄ワイプに新規の色素添加剤を加えるとステンレススチールの腐食が減少する

Novel colour additive for bleach disinfectant wipes reduces corrosive damage on stainless steel

K. Tyan*, K. Jin, J. Kang
*Kinnos Inc., USA

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 227-230


漂白洗浄ワイプは、病院内の環境表面や器材を腐食させる。本研究では、広く用いられている 2 種類の漂白洗浄ワイプについて、色素添加剤 Highlight® を添加した場合と添加しない場合のステンレススチールの腐食率を定量し、表面の腐食ダメージの低減に Highlight® が及ぼす影響を明らかにすることを試みた。2 種類の漂白洗浄ワイプはそれだけを使用すると重度の腐食が発生したが(5 ミル[mil]/年超、1 ミルは0.001 インチ[inch])、Highlight® の添加により腐食率が有意に低下し(2 ミル/年未満)、金属の変色が防がれた。これらの結果は、Highlight® により漂白洗浄ワイプの有害な腐食作用が抑制され、医療現場の表面清掃におけるワイプの使用可能性が広がることを示唆している。

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監訳者コメント
色素添加剤 Highlight® は青色色素で、漂白洗浄ワイプの表面に線状にたらして用いる。このようにして青色になったワイプを使って環境表面を拭うと、拭った範囲が青色に可視化され、明瞭になる。使用後は自然に乾燥し、青色は退色する。本検討では次亜塩素酸を含む 2 種類のワイプ(Clorox、PDI Sani-Cloth)に、Highlight® がまざる場合とそのままの場合で金属変色性・腐食性を比較したが、漂白洗浄ワイプの利便性を向上させるとともに、短所の克服を目指したものといえる。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.