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レーティング:[監訳者による格付け]
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医療関連感染症および多剤耐性病原体(MDRO)の低減を図るクロルヘキシジンによる除菌:誰が、何を、どこで、いつ、何のために?★★

Chlorhexidine-based decolonization to reduce healthcare-associated infections and multidrug- resistant organisms (MDROs): who, what, where, when, and why?

S.S. Huang*
*University of California Irvine School of Medicine, USA

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 235-243


クロルヘキシジンを用いた清拭および鼻腔内ムピロシンによる体表面除菌は、医療関連感染症予防のための簡便な対処法となっている。この実践によって、誰が、どのような理由で、どんな時に利益を得るのか理解するために、この実践に関する臨床試験でのエビデンスをレビューする。最大の有効性を得るには適切な適用が必要とされるので、清拭および鼻腔内除菌の方法も検討する。現時点での有効性と、将来的に耐性が増幅する可能性の相反については、最後に論じることとする。

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監訳者コメント
生体の皮膚粘膜には正常細菌叢があり、過度の除菌によりかえって病原菌の付着しやすい環境が生まれる可能性がある。除菌を試みる上でもより特定の病原性細菌に限定して排除できるような方法が理想的である。また、頻回の負荷によっても耐性化しずらい化学物質を使用することが望ましい。

看護学生の教育のためのコンセンサスに基づく国際的な抗菌薬適正使用支援コンピテンシーの開発

Development of consensus-based international antimicrobial stewardshiP competencies for undergraduate nurse education

M. Courtenay*, E. Castro-Sánchez, R. Gallagher, J. McEwen, A.N.H. Bulabula, Y. Carre, B. Du Toit, R.M. Figueiredo, M.E. Gjerde, N. Hamilton, L. Jorgoni, V. Ness, R. Olans, M.C. Padoveze, J. Rout, N. van Gulik, Y. Van Zyl
*Cardiff University, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 244-250


背景
看護師が抗菌薬適正使用支援に貢献することに関して、国内外の政策立案者による認識が高まりつつある。看護学生への教育は、看護師として抗菌薬適正使用支援の役割と実践に向けて準備させる絶好の機会となるが、抗菌薬適正使用支援の教育を組み入れているのは、看護教育プログラムの 3 分の 2 にとどまり、推奨される抗菌薬適正使用支援の原則をすべて網羅しているのは、わずか 12%であった。また、看護師は、抗菌薬に関する知識が十分ではないと報告しており、抗菌薬適正使用支援という用語を聞いたことがない者が多かった。

目的
看護学生に対する教育に適した抗菌薬適正使用支援コンピテンシーの説明指標に関する国際的なコンセンサスを規定すること。

方法
2 段階のオンライン調査からなる修正デルファイ法により、看護師の教育と実践における処方および薬剤管理の専門知識、ならびに抗菌薬適正使用支援の専門知識をもつ 15 名からなる国際的なパネルメンバーを招いた。2019 年 2 月から 3 月にデータを収集した。

結果
参加者 15 名が専門家パネルのメンバーになることに同意し、そのうち 13 名(86%)が 1 回目の質問票に回答し、この 13 名(100%)が 2 回目の質問票に回答した。コンピテンシーに関する包括的な 6 領域、ならびに抗菌薬適正使用支援の実践に必須の 63 項目の説明指標に関してパネルメンバーのコンセンサスが得られ、一貫して高水準の合意に達した。

結論
コンピテンシーの説明指標に関して高水準の合意に達したことから、看護学生に対する教育および有資格看護師(補助看護師など新たな役割を担う者も含む)の抗菌薬適正使用支援活動を方向付けるために、コンピテンシーの説明指標を使用すべきである。

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監訳者コメント
APICでも本件は話題となっており、看護師が抗菌薬適正使用支援に関与できることが多く中心的な役割を担う一員たるべきであると考えられている。診療報酬加算の要件にも看護師が組み入れられており活躍が期待される一方で看護師の抗菌薬に関する教育が課題である。

薬剤師により使用されるチェックリストが病院の抗菌薬使用に及ぼす影響:患者における分割時系列研究

Impact of a checklist used by pharmacists on hospital antimicrobial use: a patient-level interrupted time series study

M. Fortier*, P. Pistre, V. Ferreira, M. Pinsonneault, J.M. Charbonneau, C. Proulx, A. Buisson, P. Morency-Potvin, D. Williamson, A. Ang
*Université de Montréal, Canada

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 251-258


背景
薬剤耐性につながる抗菌薬の誤用は、臨床医の関心を高めている。新たなツールの開発による抗菌薬適正使用支援プログラムの改善が、この問題解決の一部となる可能性がある。

目的
病棟の臨床薬剤師用の抗菌薬チェックリスト導入後の、入院患者における抗菌薬使用について評価すること。

方法
抗菌薬治療に関する病院薬剤師の評価を標準化するために、最適な抗菌薬使用の質的指標に基づくチェックリストを導入した。対照期間と介入期間に入院した成人の抗菌薬使用の数的指標を、個々の患者データの分割時系列分析により評価した。主要評価項目は、対象患者における在院 1,000 日あたりのあらゆる種類の抗菌薬治療日数(DOT)とした。副次評価項目は、基質特異性拡張型の抗菌薬治療日数(DOT-ES)、あらゆる種類の抗菌薬治療期間(LOT)、および薬剤師による介入回数とした。

結果
患者 1,619 例を対象とし、内訳はチェックリストの導入前の期間が 800 例、導入後の期間が 819 例であった。点推定値とその 95%信頼区間(CI)により示されるように、DOT、DOT-ES、LOT の傾向性に変化はなかった。DOT の数値に変化はみられなかったが、DOT-ESは 118 日(95%CI 209 ~ 28)減少、LOT は 51 日(95%CI 97 ~ 4)減少した。さらに、抗菌薬に関する薬剤師の介入が 18.7%(95%CI 14.0 ~ 23.5)増加し、経過記録の記載が 32.3%(95%CI 27.8 ~ 36.8)増加した。

結論
病棟の臨床薬剤師により使用される抗菌薬チェックリストの導入によって、あらゆる種類の DOT は減少しなかったが、DOT-ES および LOT は減少した。

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監訳者コメント
抗菌薬適正使用支援プログラムはまだまだ黎明期であり、様々な多施設の取り組みが参考になる。

院内発症医療関連クロストリジウム・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症のリスクに、地域社会での抗菌薬曝露が及ぼす残留影響:リンクさせた国内データによる症例対照研究

Residual effect of community antimicrobial exposure on risk of hospital onset healthcare-associated Clostridioides difficile infection: a case-control study using national linked data

J. Pan*, K. Kavanagh, C. Marwick, P. Davey, C. Wuiff, S. Bryson, C. Robertson, M. Bennie
*University of Strathclyde, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 259-267


背景
地域社会での抗菌薬曝露と市中獲得クロストリジウム・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症(CA-CDI)との関連は十分に立証されているが、医療関連 CDI(HA‐CDI)との関連は、それほど明らかにされていない。本研究では、地域社会での抗菌薬処方と HA‐CDI との関連を推定する。

方法
CDI 症例、地域社会処方箋、および入院について網羅されている国内の 3 つの患者データセットをリンクさせて、マッチングによる症例対照研究を実施した。確証が得られた HA‐CDI 全症例(2010 年 8 月 から 2013 年 7 月)を抽出し、性別、年齢、病院、入院日に基づいて、病院ベースの 3 つの対照群を症例群とマッチさせた。地域社会での抗菌薬処方と HA‐CDI との関連を推定するために、条件付きロジスティック回帰分析を実施した。計測されていない院内抗菌薬処方の影響を検討するために、感度分析を実施した。

結果
院内発症の HA‐CDI 新規症例で、初回入院前の 12 週間に退院歴のない 930 例が、マッチさせた 1,810 例と関連付けられた。地域社会での抗菌薬処方歴のない患者に対して、処方歴のある患者における HA‐CDI のオッズ比(OR)は 1.41(95%信頼区間[CI]1.13 ~ 1.75)であった。リスクの高い抗菌薬(セファロスポリン系薬、クリンダマイシン、アモキシシリン・クラブラン酸カリウム合剤、またはフルオロキノロン系薬)に曝露された患者の OR は 1.86(95%CI 1.33 ~ 2.59)であった。計測されていない院内処方の影響の可能性を調整後も、地域社会での曝露(とくに、リスクの高い抗菌薬)が依然として HA‐CDI リスクの増大と関連した。

結論
地域社会での抗菌薬曝露は、HA‐CDI の独立危険因子であり、病院で下痢を発症した患者に対するリスク評価の一部とみなすべきである。

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監訳者コメント
入院前過去半年間の、市中での抗菌薬投与と医療関連クロストリジウム・ディフィシル感染症発症リスクを検討した論文である。CDI 発症リスクが高いとされる 4 種類の抗菌薬を外来で投与することが入院中の CDI 発症に影響することが示された。入院中の抗菌薬投与だけでなく、外来処方のモニタリングも含めた AMR 対策の重要性を痛感させる論文である。


病院での抗菌薬使用を安全かつ実質的に減らすための ARK(Antibiotic Review Kit)介入の適応と実施:実現可能性調査

Adaptation and implementation of the ARK (Antibiotic Review Kit) intervention to safely and substantially reduce antibiotic use in hospitals: a feasibility study

E.L.A. Cross*, K. Sivyer, J. Islam, M. Santillo, F. Mowbray, T.E.A. Peto, A.S. Walker, L. Yardley, M.J. Llewelyn
*University of Sussex, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 268-275


背景
2 次医療における抗菌薬適正使用支援のイニシアチブは、抗菌薬処方の見直しを行う臨床医にかかっているが、見直しにおける抗菌薬治療を制限する意思決定は複雑である。

目的
ARK(Antibiotic Review Kit)は、入院患者において抗菌薬治療を中止することが安全である場合に、その中止を支援する行動変容介入ツールであり、4 つの要素(簡便なオンラインツール、処方決定ガイド、定期的なデータ収集とフィードバック処理、患者向け小冊子)で構成される。本研究の目的は、ステップウェッジ法によるクラスターランダム化比較対照試験による決定的な評価に先立ち、ARK 導入の可能性および受容性を評価することである。

方法
オンラインツールの取り込み、処方業務への意思決定ガイドの導入、見直し(反復点有病率調査による評価)による抗菌薬中止の決定率により、異なる介入要素の受容性を 12 週間にわたり評価した。情報小冊子に対する患者の認識を簡易質問票により評価した。

結果
介入の全要素の実践を導入することに成功した。さまざまな処方者および非処方者を含む職員 132 名がオンラインツールを使いこなし(急性期病床 100 床あたり 19.4 名)、その中には事前に特定した重要な役割を担う臨床スタッフの 97%(33 名中 32 名)が含まれる。12 週間の実施期間に 7 回の点有病率調査で評価した処方記録 588 件のうち、全体として 82%(各調査において 76% ~ 90%)で意思決定ガイドが使用された。抗菌薬中止率の中央値は、導入前が 9%であったのに対して、導入後は 36%(各調査において 29% ~ 40%)であった(P < 0.001)。

結論
急性期病院環境での処方後の見直しにおいて、ARK は 抗菌薬の安全な中止を支援するのに利用可能かつ受容可能な機能を提供する。

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監訳者コメント
急性期病院における ARK(Antibiotic Review Kit)と名付けられた 4 つの要素(簡便なオンラインツール、処方決定ガイド、定期的なデータ収集とフィードバック処理、患者向け小冊子)で構成された抗菌薬の中止を支援する行動変容介入ツールの実現可能性を調査した論文である。1 施設での取り組みであるが、AMR 対策バンドルの構築と評価は大変興味深い。


中心ライン関連血流感染症患者から分離したブドウ球菌(staphylococci)におけるクロルヘキシジン感受性

Chlorhexidine sensitivity in staphylococci isolated from patients with central line-associated bloodstream infection

K.I. Jun*, Y. Choi, K. Kwon, M.J. Shin, J.S. Park, K-H. Song, E.S. Kim, K-H. Park, S-I. Jung, S.H. Cheon, Y-S. Kim, N-R. Yoon, D.M. Kim, P.G. Choe, N.J. Kim, H.B. Kim
*Seoul National University College of Medicine, Republic of Korea

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 276-279


2011 年以来、韓国では 2%クロルヘキシジン含有 70%イソプロピルアルコール(2%クロルヘキシジンチンキ)が広く使用されてきた。中心ライン関連血流感染症を引き起こすブドウ球菌(staphylococci)のクロルヘキシジン感受性の変化を検討するため、2008 年から 2016 年の間に大学病院 5 施設の集中治療室で治療を受けた、成人患者由来の血液培養分離株 264 株を分析した。2%クロルヘキシジンチンキの導入前後で、クロルヘキシジンの最小発育阻止濃度および最小殺菌濃度、または耐性関連遺伝子の保有率の有意な変化は認められなかった。以上のように、中心ライン関連血流感染症を引き起こすブドウ球菌におけるクロルヘキシジン耐性増加のエビデンスは認められなかった。

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監訳者コメント
消毒薬の多用による微生物の消毒低感受性は、以前より懸念されている。これまでのところ、臨床上の問題に至った報告はないと思われるが、継続したモニタリングは必要であろう。

インド全域における抗菌薬使用の多様性:グローバル時点有病率調査による多施設共同研究

Variations in antibiotic use across India: multi-centre study through Global Point Prevalence survey

S.K. Singh*, S. Sengupta, R. Antony, S. Bhattacharya, C. Mukhopadhyay, V. Ramasubramanian, A. Sharma, S. Sahu, S. Nirkhiwale, S. Gupta, A. Rohit, S. Sharma, V. Raghavan, P. Barman, S. Sood, D. Mamtora, S. Rengaswamy, A. Arora, H. Goossens, A. Versporten
*Amrita Institute of Medical Sciences, India

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 280-283


本研究の目的は、インドにおける抗菌薬の処方パターンおよび処方慣行の多様性を評価することであった。2017 年 10 月から 12 月にかけて、インドの 3 次病院 16 施設において点有病率調査(PPS)を実施した。本調査には PPS の実施日に抗菌薬の投与を受けていたすべての入院患者が含まれ、収集したデータはアントワープ大学のウェブベースのアプリケーションを用いて解析した。全体で 1,750 例の患者を調査し、そのうち 1,005 例は合計 1,578 の抗菌薬の投与を受けていた。処方された抗菌薬のうち 26.87%は市中感染症のため、19.20%は病院感染症のため、17.24%は内科的予防のため、28.70%は外科的予防のため、7.99%は他の目的のためまたは処方理由不明であった。処方理由の記録や処方後の再評価スコアなどの抗菌薬処方の質の指標は低水準であった。本 PPS は幅広い抗菌薬の使用を示し、エビデンスに基づいた診療を促進するために抗菌薬適正使用支援が必要であることを明白にした。

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監訳者コメント
日本でも行われている Global PPS のインドにおける結果である。本文中では周術期の予防抗菌薬としてセフロキシムが最も多く使用されている(36%)ことや、抗菌薬使用理由が約半数で不明なことなどが報告されている。

アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の保菌または感染に対するクロルヘキシジン浴の効果:システマティックレビューとメタアナリシス

Effect of chlorhexidine bathing on colonization or infection with Acinetobacter baumannii: a systematic review and meta-analysis

C.-Y. Fan*, W.-T. Lee, T.-C. Hsu, C.-H. Lee, S.-P. Wang, W.-S. Chen, C.-H. Huang, C.-C. Lee
*National Taiwan University, Taiwan

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 284-292


多剤耐性グラム陰性桿菌(MDRGNB)に起因する医療関連感染症(HAI)は、集中治療室(ICU)において罹患率が上昇している。HAI 予防のための一般的な戦略は、クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)を用いて患者を全身清拭することである。しかし、多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(multidrug-resistant Acinetobacter baumannii;MDRAB)に対する CHG 浴の有効性は依然として議論の余地がある。本研究の目的は、ICU における A. baumanniiの保菌および感染に対する CHG 浴の有効性に関して、システマティックレビューとメタアナリシスを実施することであった。開始日から 2018 年 6 月まで、PubMed、EMBASE、Web of Science および CINAHL で系統的な文献検索を実施した。ランダム化比較試験(RCT)、前後比較試験または分割時系列研究が含まれた。実験群または対照群で A. baumanniiを保菌している患者または A. baumannii に感染している患者と、保菌も感染もしていない患者の人数を、各研究より抽出した。国立衛生研究所の関連尺度によって質評価を実施した。変量効果モデルを用いて統合リスク比を算出した。18,217 例の患者から成る RCT 1 件と前後比較試験または分割時系列研究 12 件が含まれ、そのうち 8,069 例は CHG 浴群、9,051 例は対照群であった。CHG 浴は A. baumannii の保菌の減少に関連していた(統合リスク比 0.66、95%信頼区間[CI]0.57 ~ 0.77、P < 0.001)。4%のクロルヘキシジンは 2%のクロルヘキシジンより高い効果を示した(メタ回帰 P = 0.044)。CHG 浴は感染の非有意な減少に関連していた(統合 RR 0.41、95%CI 0.13 ~ 1.25)。本研究により、CHG 浴は ICU における A. baumannii の保菌を有意に減少させることが示唆された。しかし、CHG 浴が A. baumannii 感染症を減少させることができるかどうかを裏付けるためには、さらなる試験が必要である。

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監訳者コメント
日本ではほとんど見かけることがない多剤耐性アシネトバクター属菌に対する CHG 浴の有効性に関するシステマティックレビューである。有効性が認められたと報告している一方で、評価された研究の内容にはかなりの heterogeneity(異質性)があったとしている。CHG 浴の有効性は様々な研究で報告されているが、その実際の方法も含めて引き続き検証が続けられるであろう。

オランダにおける手術部位感染症の負荷:費用分析と障害調整生存年数

Burden of surgical site infections in the Netherlands: cost analyses and disability-adjusted life years

M.B.G. Koek*, T.I.I. van der Kooi, F.C.A. Stigter, P.T. de Boer, B. de Gier, T.E.M. Hopmans, S.C. de Greeff, on behalf of the Burden of SSI Study Group
*National Institute for Public Health and Environment (RIVM), the Netherlands

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 293-302


背景
手術部位感染症(SSI)は罹患率、死亡率および費用に関連している。

目的
オランダでの結腸切除術、乳房切除術および人工股関節全置換術後の、費用と障害調整生存年数における(深部)SSI の負荷を明らかにすること。

方法
オランダの SSI サーベイランスネットワークである PREZIES の 2011 年のデータを使用して、後向きの費用分析を実施した。SSI を有する曝露患者 62 例を、SSI を有さない非曝露患者(同種の手術)122 例とマッチさせた。患者記録は SSI の診断後 1 年まで調査対象とした。非曝露患者も同じ期間追跡した。費用は病院の観点(2016 年の物価水準)から算出し、費用の差は線形回帰分析を用いて検討した。疾患負荷は欧州疾病予防管理センターの欧州感染症負荷ツールキットを用いて推定した。SSI モデルは、可能であれば国および手術に固有のパラメータとともに、手術の種類によって指定した。

結果
SSI あたりの帰属原価は、21,569 ユーロ(人工股関節全置換術)、14,084 ユーロ(結腸切除術)および 1,881 ユーロ(乳房切除術)であり、主に入院期間の延長に起因していた。オランダの病院費はそれぞれ、1,000 万ユーロ、2,900 万ユーロ、60 万ユーロであった。オランダの疾患負荷は結腸切除術後の SSI に対して最大であるのに対し(障害調整生存年数は 3,200/年、150/SSI 100 件)、個人の疾患負荷は人工股関節全置換術後に最大であった(障害調整生存年数は 1,200/年、250/SSI 100 件)。乳房切除術に対するこれらの障害調整生存年数は 1 未満であった。3 種の手術に対する障害調整生存年数の総費用は 8,800 万ユーロを上回った。

結論
手術の種類に応じて、SSI は経済的にも、また完全に健康な年数の損失においてもかなりの負荷をもたらす。このことにより適切な感染予防策の重要性が明確に示された。

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監訳者コメント
オランダにおける 3 種類の手術の SSI の負荷について検証している。本研究のように、医療費や生存年数などで定量的に評価することにより、その影響が可視化され、重要性が理解される。特に障害調整生存年数(DALYs)を用いた医療関連感染症の評価は日本ではまだあまり行われておらず、検討の余地があるだろう。

脊椎手術における予防抗菌薬投与:単回投与と 72 時間投与プロトコールの比較

Antibiotic prophylaxis in spine surgery: a comparison of single-dose and 72-hour protocols

A. Maciejczak*, A. Wolan-Nieroda, M. Wałaszek, M. Kołpa, Z. Wolak
*St Lukas Hospital, Poland

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 303-310


背景
脊椎インストゥルメンテーション手術における予防抗菌薬単回投与の使用に関して一般的なコンセンサスがあるにもかかわらず、この方法を裏付けるエビデンスは強固ではない。

目的
前後比較研究によって、脊椎インストゥルメンテーション手術における手術部位感染症(SSI)予防のための予防抗菌薬の単回投与と 72 時間投与プロトコールの有効性を比較すること。

方法
2003 年から 2014 年の間に 1 つの脳神経外科で脊椎手術を受けた患者 5,208 例に関し、前向き非無作為化コホート研究を行った。脊椎インストゥルメンテーション手術における予防抗菌薬投与の 2 つのプロトコール(単回投与プロトコール[2003 年から 2008 年]および 72 時間投与プロトコール[2009 年から 2014 年])を比較した。インストゥルメンテーションを用いない脊椎手術を受けた患者は、両方の期間を通して予防抗菌薬の単回投与を受けた。評価項目は SSI の発生率とした。

結果
脊椎インストゥルメンテーション手術に関して、SSI の発生率は単回投与プロトコールでは 5.3%、72 時間投与プロトコールでは 2.2%であった(P < 0.01)。インストゥルメンテーションを用いない脊椎手術に関して、SSI の発生率は 0.8%(2003 年から 2008 年)および 1.2%(2009 年から 2014 年)であった(P = 0.054)。インプラントを用いる手術において、予防抗菌薬単回投与は 7.1%の SSI リスクを伴っており、予防抗菌薬の 72 時間投与を受けた患者の SSI リスクのほうが低い(3.6%)ということが、多重対応分析によって示された。

結論
我々の研究班において、データの個別のカテゴリーの分析により、予防抗菌薬の 72 時間投与は創感染リスクを最小限にするために最も重要な因子であることが示唆された。

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監訳者コメント
脊椎インストゥルメンテーション手術における周術期抗菌薬の投与期間についてのコホート研究であり、72 時間投与が SSI の発生率を優位に下げるとのことである。一方で、北米脊椎学会や欧州 CDC では単回投与がガイドラインで推奨されている。日本では「術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン」が日本化学療法学会・日本外科感染症学会から出されており、これによると脊椎インストゥルメンテーション手術では、48 時間以内とされているが、その推奨度は C1-Ⅲで、専門家の意見として科学的根拠はないが勧められる、としている。脊椎インストゥルメンテーション手術における SSI と周術医抗菌薬投与期間についてはさらなら検証が必要である。

複雑植込み型心臓電気デバイス感染症に対する皮膚消毒のバンドル:傾向スコアマッチングコホート研究

Bundled skin antiseptic preparation for complex cardiac implantable electronic device infection: a propensity-score matching cohort study

H.-C. Chen*, W.-C. Lee, Y.-L. Chen, T.-H. Tsai, K.-L. Pan, Y.-S. Lin, M.-C. Chen
*Kaohsiung Chang Gung Memorial Hospital, Chang Gung University, Taiwan

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 311-320


背景
植込み型心臓電気デバイス感染症は、植込み型心臓電気デバイスの植込み手技の主要な合併症の 1 つであり、入院を延長させ死亡を引き起こす可能性がある。

目的
複雑植込み型心臓電気デバイス植込み後の感染症を予防するための、皮膚消毒のバンドルの有効性を評価すること。

方法
本研究では、2012 年 7 月から 2017 年 12 月に植込み型心臓電子デバイスの植込み前に皮膚消毒のバンドルが実施された連続患者 1,163 例を分析した。植込み型心臓電子デバイスの植込み手技の複雑度にしたがって、患者を複雑植込み型心臓電気デバイス群(N = 370)と非複雑植込み型心臓電気デバイス群(N = 793)に分けた。複雑な手技は、ペースメーカーの交換、植込み型除細動器の植込みおよび心臓再同期療法、デバイスのアップグレード、またはリード修正と定義した。

結果
平均 2.9 ± 1.7 年の追跡期間中に、患者 15 例(1.3%)が植込み型心臓電気デバイス感染症を発症し、軽度の感染症の発生率は 1.1%、重度の感染症の発生率は 0.2%であった。植込み型心臓電気デバイス感染症の発生率は、複雑植込み型心臓電気デバイス群と非複雑植込み型心臓電気デバイス群の間で有意差はなかった(それぞれ 1.1% vs 1.4%、非有意)。多変量解析により、手技の複雑度は植込み型心臓電気デバイス感染症の独立予測因子ではないことが示された。2 : 1 の傾向スコアマッチングの後、マッチさせた非複雑植込み型心臓電気デバイス群とマッチさせた複雑植込み型心臓電気デバイス群は、植込み型心臓電気デバイス感染症の発生率において、依然として有意差を示さなかった。

結論
皮膚消毒のバンドルは、複雑植込み型心臓電気デバイス植込み後の感染リスクの低下に効果的であり、広く適用できる戦略である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
近年、ペースメーカーや除細動器などのデバイス挿入が増加しており、挿入後の感染症は時に致命的となるため、これを予防するために周術期の皮膚消毒についてバンドルを作成して、発生率を抑えたとする報告である。皮膚消毒のバンドルとは、前夜にまず石けんを使用してシャワー入浴を実施後、①75%エタノールで前胸部全面を皮膚消毒し、前胸部全面を滅菌ガーゼで覆う。②皮切を加える 10 分前にポビドンヨード(PVP)で皮切予定部全体を中心から外へ円を描くように消毒し、乾燥させる。③75%エタノールで 2 回消毒し、さらに 3 回 PVP で消毒するという 3 段階のバンドルである。このバンドル作成にあたって、消毒効果の残存が認められるクロルヘキシジングルコン酸塩を使用することを考慮しなかったのはなぜであろうか?

幹細胞移植病棟において感染症をきたしやすい手技の施行前に手袋を装着した手指消毒が手指衛生に及ぼす影響★★

Effect of gloved hand disinfection on hand hygiene before infection-prone procedures on a stem cell ward

P. Fehling*, J. Hasenkamp, S. Unkel, I. Thalmann, S. Hornig, L. Trümper, S. Scheithauer
*Georg August University Goettingen, Germany

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 321-327


背景
感染症をきたしやすい手技の実施前であっても、手指衛生の遵守率は、(世界保健機関[WHO]によれば、適応2「無菌操作前」)依然として満足できるものではない。

目的
リソースに左右されないプロセス最適化戦略として手袋を装着したままで手指消毒の実施をすることにより手指衛生遵守率を改善すること。

方法
幹細胞移植病棟において、3 フェーズから成る介入研究を実施した。ベースラインで手指衛生遵守率を評価した(フェーズ 1)後、手袋を装着した手指消毒を指示し(フェーズ 2)、次いで制限して(フェーズ 3)、学習効果と時間効果に基づいて介入の評価と比較を行った。積極的サーベイランスにより、重症感染症の発生率ならびに病院獲得多剤耐性細菌の検出率を記録した。

結果
手指衛生遵守率は、手袋を装着した手指の消毒を指示した場合は 50%から 76%に有意に改善した(P < 0.001)。最も大きな上昇が認められたのは感染症をきたしやすい手技(WHO 適応 2)で、31%から 65%に上昇した(P < 0.001)。重症感染症は減少の傾向が認められた(1,000人年当たり 6.0 から 2.5)。一方、多剤耐性細菌の伝播には変化は認められなかった。

結論
手袋を装着した手指の消毒により手指衛生遵守率は有意に改善し、とくに感染症および感染予防に関連する活動において顕著であった。したがって、こうしたプロセス最適化は、極めて脆弱な患者集団において、追加で実施することが容易な、リソースに左右されないツールとなる可能性がある。

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監訳者コメント
これまで手袋の上から消毒することは御法度であったが、ドイツにおける幹細胞移植病棟という特殊な免疫能低下患者集団への新たな試みである。無菌操作の前の手指衛生は忘れがちであり、手袋を装着してから気づくことも多く、このような研究に至ったものと推察される。無菌操作前に限っての手袋の上からの手指消毒は効果的であることが推測される。実際、耐性菌獲得はそれ以外の手指衛生が関連するため減少は認められなかったが、カテーテル操作などの無菌操作の破綻により発生する重症感染症の発生率は減少傾向であり、新たな対策ツールとして興味深く、さらなる検討が望まれる。

複数の除菌プロトコール実施後の床および空気からのノロウイルス回収

Norovirus recovery from floors and air after various decontamination protocols

C.L. Ciofi-Silva*, C.Q.M. Bruna, R.C.C. Carmona, A.G.C.S. Almeida, F.C.P. Santos, N.M. Inada, V.S. Bagnato, K.U. Graziano
*Universidade de São Paulo, Brazil

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 328-334


背景
ノロウイルスは少量で感染性を有するため、糞便や嘔吐物による汚染後の床からの空気中ノロウイルス粒子の拡散は、感染制御にとって課題である。したがって、床の除菌の安全なプロトコールを確立することは、極めて重要である。

目的
複数の床の除菌手順の実施後に、床の上に残存するノロウイルス GII 粒子および空気中粒子の存在について評価すること。

方法
2 種類の床(ビニールおよび花こう岩)を、ノロウイルス GII を含有する 10%ヒト糞便で意図的に汚染させた。2 種類の除菌プロトコールとして、洗浄後に 1%次亜塩素酸ナトリウムを用いる消毒、または洗浄後に手動の紫外線 C 波デバイスを用いる消毒を実施した。スワブサンプルを床から採取し、空気サンプルをエアサンプラーを用いて採取した。TaqMan 法による定量的逆転写リアルタイム PCR を用いて解析を行った。

結果
洗浄後に 1%次亜塩素酸ナトリウムを用いる消毒プロトコールは、洗浄後の紫外線 C 波曝露より効果が高いことが示された(P < 0.001)。洗浄後の空気サンプル 36 個中 27 個でウイルス粒子が検出され、2 種類の床の間で有意差はなかった。洗浄後の空気サンプルでは平均で 617 ゲノムコピー / サンプルが認められたが、消毒後にこの値は段階的に減少した。

結論
ノロウイルス GII は床の洗浄中にエアロゾル化する可能性があり、その粒子が吸入され、次いで嚥下されたり表面上に定着する可能性がある。したがって、床の上に残存するウイルス粒子は、十分に除去しなければならない。洗浄後の 1%次亜塩素酸ナトリウムによる 10 分間の消毒は、優れた除菌プロトコールであることが示された。

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監訳者コメント
これまで床に残ったノロウイルスにより空気感染することが疫学的に報告されていたが、本論文では床の清掃処理時にエアロゾル化して空気中を浮遊することがエアサンプリングと定量的 RT-PCR 検査により証明されており、またウイルス粒子数は平均で 500 コピーを超えており、十分に空気感染する可能性があり、処理時には N95 マスクが必要であると論じている。床の吐物は徹底的に清掃と次亜塩素酸による消毒が必要であることを改めて証明した。なお、本論文で使用されている次亜塩素酸の濃度は 1%で、通常日本の医療施設で使用される 0.1% 〜 0.5%よりも濃度が高い。一方で、クロストリジオイデス・デイフィシル感染症における UV-C による環境消毒効果が話題となっているが、本実験においては UV-C は、次亜塩素酸よりも効果的ではなかった。結論をだすには、今後さらなる検討が必要であろう。

ノルウェーの医療機関で2005 年から 2018 年に発生したノロウイルスアウトブレイクの疫学と影響

Epidemiology and impact of norovirus outbreaks in Norwegian healthcare institutions, 2005-2018

L. Espenhain*, T.C. Berg, H. Bente, K. Nygård, O. Kacelnik
*Norwegian Institute of Public Health, Norway

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 335-340


目的
本研究の目的は、ノルウェーの医療機関におけるノロウイルスアウトブレイクの疫学と影響について初めて詳細に記述すること、およびアウトブレイクへの対応を改善し得る地域を明らかにすることであった。

方法
2005 年第 34 週から2018 年第 33 週に、病院および長期療養施設(LTCF)から報告されたすべてのノロウイルスアウトブレイクについて分析を行った。季節性、症状、ならびにスタッフおよび患者の例数を記録した。

結果
965 件(LTCF 740 件、病院 225 件)のアウトブレイクが報告され、罹患者は合計 20,544 例(うち医療スタッフは7,044 例)であった。1アウトブレイク当たりの症例数の中央値は、LTCF は 15 例[四分位範囲(IQR)8 ~ 25 例]、病院は 17 例[IQR 10 ~ 28 例]であった。すべての地域でアウトブレイクが発生していたが、研究期間中、 3 分の 1 の地方自治体において LTCFから少なくとも 1 件のアウトブレイクが報告された。アウトブレイクの始まりの時期は、病院の方が LTCF より約 4 週間早かった。医療スタッフの年間労働損失日数の推定平均は、1,590 日から 1,944 日の範囲であった。

結論
ノルウェーの医療機関におけるノロウイルスアウトブレイクは、ノルウェー全国で病院とLTCF の両方に大きな影響を及ぼしているようであり、とくに冬季は影響が大きかった。罹患の半数までが医療従事者であったという事実は、感染制御にさらなる焦点を当てる必要があることを強調するものであろう。加えて今回の結果は、病院で先にアウトブレイクが発生した場合に、その地域の LTCF に対して警告を発することによって、さらなるアウトブレイクの発生が防ぎ得ることを示唆している。

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監訳者コメント
人口 530 万人のノルウェーには、60 カ所の病院と 950 カ所の LTCF が存在する。今回の検討は、ノルウェー全体でのノロウイルス感染症サーベイランスの結果であるが、国家規模、医療機関・LTCF・人口の密度、地理的特徴を考慮しつつ解釈すると、非常に興味深い。全数報告制度および医療機関から LTCF へのアラート制度についても述べられており、この点も参考になろう。

呼吸器リスクを有する小児科患者におけるヒトボカウイルスおよびヒトライノウイルスによる院内感染症★★

Nosocomial infection by human bocavirus and human rhinovirus among paediatric patients with respiratory risks

H. Kobayashi*, M. Shinjoh, K. Sudo, S. Kato, M. Morozumi, G. Koinuma, T. Takahashi, Y. Takano, Y. Tamura, N. Hasegawa
*Keio University School of Medicine, Japan

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 341-348


背景
迅速検査により検出されない呼吸器ウイルスによる院内感染症は、診断されないことが多い。背景疾患を有する小児患者にとって、院内感染症は致死的となり得る。

目的
迅速検査により検出されない呼吸器ウイルスによる感染症発症と、呼吸器リスクとの関係を明らかにすること、および感染制御の管理を向上させること。

方法
日本の 3 次病院の小児科病棟における、ヒトボカウイルスおよびヒトライノウイルスによる院内感染症のエピソード 2 件について後向きに検討した。感染制御上の方針について決定するために、ウイルスの同定は PCR 法によって行った。同じ種のウイルスが異なる患者で検出された場合には、その相同性について解析した。呼吸器リスクと発症との関連は、統計解析によって評価した。

結果
ヒトボカウイルスおよびヒトライノウイルスによるアウトブレイクにおいて、呼吸器リスクを有する患者のそれぞれ 3 例および 4 例が呼吸器症状を発症した。ヒトボカウイルスアウトブレイクの患者 2 例およびヒトライノウイルスアウトブレイクの全 4 例で、ヌクレオチド配列が系統的に近縁であった。両方のアウトブレイクにおいて、呼吸器リスクを有する患者で呼吸器症状を発症したのは、全くリスクのない患者と比べて、有意に多かった(それぞれP = 0.035 および 0.018)。発症患者を呼吸器リスクを有する患者から隔離したところ、さらなる院内感染症の発生はなかった。

結論
呼吸器リスクを有する患者は発症しやすく、かつこれらのウイルスの院内伝播による重症の症状を来たしやすい。小児科病棟では、標準予防策だけでなく、呼吸器症状を有する患者は、たとえ迅速検査で陰性であっても隔離するという方針をとるべきである。

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監訳者コメント
ウイルス性呼吸器感染症のうち、抗原検査で診断が難しいウイルスによる場合、院内伝播の早期検出と対策の開始は、抗原検査が利用できるものに比べて遅くなりやすい。今回の国内の大学病院におけるボカウイルス・ライノウイルスによる事例では、このような早期検出が迅速になされ、それを感染対策にすみやかにフィードバックさせえたことが、伝播を最小限にできた要因として重要であろう。現状では呼吸器ウイルスの遺伝子検出を迅速に行える施設は限られているが、我々が日常経験的に行っている「症状とリスクを勘案した早期隔離」が裏付けられたと言ってもよいであろう。

腫瘍患者におけるヒトパラインフルエンザウイルス 3 型のアウトブレイクの分子疫学

Molecular epidemiology of an outbreak of human parainfluenza virus 3 among oncology patients

E.S. Bailey*, E. Lobaugh-Jin, B. Smith, C. Sova, J. Misuraca, N. Henshaw, G.C. Gray
*Duke University, Durham, USA

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 349-353


血液腫瘍科の患者で発生したヒトパラインフルエンザウイルス 3 型の院内アウトブレイクを、4 週間にわたり 12 例について記録した。曝露歴およびヒトパラインフルエンザウイルス3 型の分子解析から、このアウトブレイク中には市中感染および院内伝播の両方が発生していたと推測した。パラインフルエンザウイルス3 型の分子解析からはさらに、腫瘍科病棟の複数の患者において、連鎖的に伝播が生じていたことが示唆された。そして伝播には媒介物の移動や訪問者、病棟内の活動が関連していたことが後に明らかとなった。この院内伝播は、感染対策チームによる高度な清掃手順を含めた介入の後、食い止めることができた。

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監訳者コメント
ヒトパラインフルエンザウイルス(HPIV)は免疫不全者に感染した場合、重症な下気道感染症を生じうる。4 つの血清型があり、症状と疫学状況が異なるが、このうち 3 型(HPIV-3)は肺炎例や入院を要する例で最も割合が高い。今回の報告は、患者家族が親しくなり、お互いの親密な交流と物品の共有があったことが、一つの伝播要因であった。これまで、造血幹細胞移植患者での院内伝播や、呼吸器症状のない/軽微な患者からの伝播についても報告が相次いでいるが、本報告も参考になる事例と思われ、一読をお勧めする。

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