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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

コロナウイルスの影響により一部、監修者のコメントおよびレーティングを未監修のまま掲載しておりますので、ご了承ください。

医療環境表面の微生物学的サンプリングをどのように実施するか?現在のエビデンスのレビュー

How to carry out microbiological sampling of healthcare environment surfaces? A review of current evidence

S. Rawlinson* , L. Ciric, E. Cloutman-Green
* University College London, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 363-374


病院の環境表面は病原体伝播の一因となるというエビデンスが増加している。しかし、これらの表面の最適なサンプリング法に関するエビデンスは一貫しておらず、この方法に関して指針または法規がない。本レビューの目的は、表面サンプリング法に関して、結果に影響を及ぼす可能性のある使用材料、処理法、および環境因子・生物学的因子などを含めた現在の文献を評価することである。ScienceDirect、Web of Science、PubMed で、関連するキーワードを用いて 2019 年 3 月より前に発表された研究を抽出した。抄録をレビューし、英語のピアレビュー専門誌のデータに基づく研究すべてを対象とした。病院環境の空気中および水中の微生物学的サンプリングは含めなかった。病院環境表面から検出された細胞またはウイルス粒子の数は、全体的に少なかったが、採取された表面の大部分が微生物学的に汚染されていた。検出された微生物のうち、多剤耐性菌および臨床的に重要な病原体が高頻度に分離され、その結果として、脆弱な患者にリスクをもたらす可能性があった。方法に大きなばらつきがみられ、入手可能なデータは不完全で、比較できなかった。サンプリング法に関して入手できた文献から、今後の研究における改善の可能性が乏しいことが示された。レビューに含まれた研究の多くが検査室ベースのものであり、臨床環境に存在する多くの不確定要素により、サンプルの回収が影響を受ける可能性のある実際の病院環境で実施されていない。したがって全体的な結論を導くのは困難であるが、医療環境の表面サンプリングにおけるルーチンのプロトコール策定のために推奨できるものがある。

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監訳者コメント
院内環境の微生物汚染を微生物学的な環境検査により、より定量的に評価可能なガイドラインが必要と考えられる。また昨今の乾性バイオフィルム(dry surface biofilm)についても検討を進めていく必要がある。

医療環境におけるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridioides difficile)の検出法

Approaches to the detection of Clostridioides difficile in the healthcare environment

R.J. Grainger* , N.T. Stevens, H. Humphreys
* Royal College of Surgeons in Ireland, Ireland

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 375-381


芽胞形成桿菌であるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridioides difficile)は、医療関連感染症の主な原因菌であり、無生物環境において長期間生存しうる。C. difficileを検出するための環境サンプリングはルーチンで実施されておらず、アウトブレイクの管理の一環として実施、また、研究プロジェクト期間に実施されることがある。われわれは、環境における C. difficile検出法をレビューするために、1980 年から 2018 年に発表された文献の調査を実施した。接触培地、コットンスワブ、フロックドスワブ、スポンジなど、環境スクリーニング用に容認されている多くのサンプリング法がある。最新の研究では、スポンジを用いたサンプリング法がもっとも効果的であり、より大きく、弯曲した領域のサンプリングを可能にする付加価値を有することが示唆されている。環境サンプルから C. difficileを検出する検査法として培養法がもっとも一般的である。しかし、使用される寒天培地の種類によって結果にばらつきがあり、所要時間が長くなる可能性がある。リアルタイム PCR などの分子解析は、糞便検体中の C. difficileの検出に使用されることが多いが、環境サンプリングにおける使用では検出の程度がさまざまである。分子技術によって、より信頼性が高く、より迅速な環境サンプリング法がもたらされるか否かを明らかにするために、さらなる研究が必要である。そのような環境サンプリング法がもたらされることにより、患者が十分に除染された病院環境に置かれていることを、感染予防・制御チームは再確認できる。

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監訳者コメント
Clostridioides difficile の検査方法に関する過去の検討を論文調査して分析した報告である。疫学調査においては、遺伝子検査と菌分離の両方が必要になる。

英国の医療関連感染症に関する研究の最優先順位

Top research priorities in healthcare-associated infection in the UK

P. Wilson* , K.S. Gurusamy, R. Morley, C. Whiting, B. Maeso, G. FitzGerald, S. Bennett, J. Bostock, D. Brealey, M. Cann, M. Kiernan, D. Leaper, M. Moore, B. Oppenheim, P. Thompson, A. Tingle
* University College London Hospital NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 382-387


背景
患者、介護者、医療従事者により重要とみなされる研究疑問と、多くの医療分野で実施される研究との不一致がみられる。患者や介護者の意見を取り込んで、医療関連感染(HCAI)における研究優先順位を評価した関連研究は、文献で特定されなかった。

目的
英国における HCAI の予防、診断、治療に関して研究の最優先順位を特定するために、Healthcare-Associated Infections Priority Setting Partnership を構築し、この全グループの意見を検討した。

方法
James Lind Alliance の優先順位づけの行使の原理におおむね従った。

結果
研究の優先順位について患者、介護者、医療従事者の意見を求め、次いで、この 3 グループの協議に対する 221 の有効回答から、計 259 の妥当性のある新たな研究疑問を特定した。優先順位づけパートナーシップの運営委員会は、50 の新たな疑問に対して優先順位を理論づけた。これらの疑問に対して、質の高い最近のシステマティックレビュー、すなわち、さらなる研究が必要であると結論づけられたものや、最近のシステマティックレビューの結論にもかかわらず、運営委員会がさらなる研究が必要であるとみなしたものはないことが、文献レビューにより立証された。中間調査で 50 の疑問を順位づけ、患者、介護者、医療従事者のグループディスカッションによる最終的な優先順位づけワークショップで、上位 32 の疑問から主要な 10 の研究の優先順位を合意により特定した。

結論
HCAI 関連の研究における上位 10 の優先領域を特定するために、James Lind Alliance の方法と原理による、患者、介護者、医療従事者を含めた優先順位決定プロセスを使用した。このような不確実性に対処するには、基礎研究、橋渡し研究、臨床研究、公衆衛生研究が必要とされるであろう。

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監訳者コメント
緊急性や被災者の数の多さなど、様々な観点から医療関連感染の中で重点的かつ優先的に取り組むべき課題を抽出し、その課題解決のための研究課題を決めるプロジェクトについて解説した論文である。

重症化と関連するクロストリジウム・ディフィシル
Clostridium difficile)リボタイプの 2 年間の分析

Two-year analysis of Clostridium difficile ribotypes associated with increased severity

R. Herbert* , J. Hatcher, E. Jauneikaite, M. Gharbi, S. d’Arc, N. Obaray, T. Rickards, M. Rebec, O. Blandy, R. Hope, A. Thomas, K. Bamford, A. Jepson, S. Sriskandan
* Imperial College Healthcare NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 388-394


背景
クロストリジウム・ディフィシル( Clostridium difficile)リボタイプによっては、再発や重症化など複雑な疾患表現型と関連し、特に、よく記述されている強毒型 RT027 が関連している。本研究の目的は、感染症を引き起こすリボタイプのパターンと、感染した場合の重症度との関連を明らかにすることである。

方法
2011 年から 2013 年に C. difficile検査のために大規模な診断検査施設に提出されたすべての糞便サンプルにおいて、ルーチン検査および培養を実施した。すべての C. difficile株をリボタイプに分類し、関連する臨床・人口統計学的な患者データを回収し、リボタイピングデータと関連付けた。

結果
C. difficileの分離株 705 株から、計 86 種類のリボタイプが同定された。RT002 と RT015 の検出頻度がもっとも高かった(22.5%、159 株)。強毒型 RT027 は 5 株のみであった(0.7%)。臨床情報が入手できた患者 450 例のうち 90 例(20%)が、C. difficile分離後 30 日以内に死亡した。RT220 は、もっとも頻度が高い 10 種類のリボタイプの 1 つであり、本研究で検出された RT002 および RT015、これら以外の全リボタイプと比較して、C 反応性蛋白の中央値の増加、30 日全死因死亡率の有意な増加と関連した。

結論
多様な C. difficileリボタイプは、C. difficile感染症の症状に関与している。C. difficile関連死亡率は近年低下しているが、重症化と関連する系統株の蔓延は、今後の死亡率増加の前兆といえるかもしれない。より重症の疾患と関連する RT220 など新たな系統株のサーベイランス強化が、病原性を分析するゲノム学的アプローチとともに必要とされる。

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監訳者コメント
遺伝子の系統により病原性の強い病原体を特定することができる場合、病原性の強い病原体が院内に入り込んできた場合の対策を強化し、感染のリスクを低減することができるようになるかもしれない。

疫学データと全ゲノムシークエンシングによるゲノム変異体を用いたバンコマイシン耐性腸球菌( vancomycin-resistant Enterococcus)の伝播経路のベイズ論に基づく再構築

Bayesian reconstruction of a vancomycin-resistant Enterococcus transmission route using epidemiologic data and genomic variants from whole genome sequencing

Y. Fujikura* , T. Hamamoto, A. Kanayama, K. Kaku, J. Yamagishi, A. Kawana
* National Defense Medical College Hospital, Japan

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 395-403


背景
バンコマイシン耐性腸球菌( vancomycin-resistant Enterococcus;VRE)のアウトブレイクは、病院における深刻な問題の 1 つである。伝播経路を推測することは適切な感染制御策を導入するための重要な因子であるが、その方法論は十分には確立されていない。

目的
VRE のアウトブレイク 1 件に関連する全ゲノムシークエンシング(WGS)データから抽出された配列変異体と患者の疫学情報を用いて、伝播モデルを再構築および評価すること。

方法
当院におけるVRE のアウトブレイク 1 件の発生中に、患者および環境表面から 23 のサンプルを採取し、WGS を用いて解析した。ゲノムアラインメントの情報と患者の疫学データを組み合わせることにより、ベイズアプローチを用いて VRE の伝播経路を再構築した。アウトブレイクに関与するリスク因子を特定するため、伝播モデルを用いて評価およびさらなる解析を実施した。

結果
すべての VRE は、vanA(N = 8、1 つの環境サンプルを含む)および vanB(N = 15)の 2 つの VRE 遺伝子型から成る配列型 17 に属するエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)として同定された。ベイズアプローチを用いた再構築モデルによって、事後確率とともに伝播方向が示され、環境表面を介した伝播が明らかになった。さらに、一部の症例が VRE のスプレッダーの役割をしていることが明らかになったが、これにより適切な感染制御が妨げられる可能性がある。バンコマイシン投与はスプレッダーの有意なリスク因子として特定された。

結論
疫学データと WGS によるゲノム変異体を用いた伝播経路の再構築を目的とするベイズアプローチは、実際の VRE のアウトブレイクに適用でき、効果的な感染制御策の設計と実施に寄与する可能性がある。

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監訳者コメント
2018 年に防衛医科大学校病院にて発生した VRE 集団発生事例における菌株と疫学データの解析をおこなった論文である。ベイズアプローチによる伝播経路の解析により、スーパースプレッダーの存在が明らかになったことは、大変興味深い。

欧州連合/欧州経済地域における手術部位感染症の有病率と発生率:これらの指標はどのように関係するのか?

Prevalence and incidence of surgical site infections in the European Union/European Economic Area: how do these measures relate?

A.P. Meijs* , I. Prantner, T. Kärki, J.A. Ferreira, P. Kinross, E. Presterl, P. Märtin, O. Lyytikäinen, S. Hansen, A. Szőnyi, E. Ricchizzi, R. Valinteliėnė, S. Zerafa, S.C. de Greeff, T.C. Berg, P.A. Fernandes, M. Štefkovičová, A. Asensio, T. Lamagni, M. Sartaj, J. Reilly, W. Harrison, C. Suetens, M.B.G. Koek
* National Institute for Public Health and the Environment, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 404-411


背景
2011 年から 2012 年に欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、手術部位感染症(SSI)のような特定の種類の医療関連感染症(HCAI)の発生率の対象限定サーベイランスに加えて、欧州初の HCAI の点有病率調査(PPS)を開始した。

目的
ECDC の PPS データから、国および複数国の SSI の発生率を推定できるかどうかを検討すること。

方法
全体で、両方の ECDC のサーベイランスモジュールに参加した 15 か国の 病院 159 施設が含まれ、発生率サーベイランスにおける外科手術手技を、PPS の対応する専門領域に合わせて調整した。国の 1 日あたりの SSI の有病率は発生率サーベイランスのデータからシミュレートし、Rhame ˗ Sudderth の式を用いて PPS のデータから国および複数国の SSI の発生率を推定し、PPS のデータを含む線形モデルを用いて専門領域ごとの国の発生率を予測した。

結果
SSI の発生率サーベイランスに基づく 1 日あたりの SSI の有病率のシミュレーションによると、測定日に応じて有病率がランダムに変動することが示された。Rhame - Sudderth の式で推定された国の総発生率と観察された SSI の発生率の間の相関性は低かったが(相関係数は 0.24)、専門領域別の発生率の結果は、とりわけ対象患者数が多い場合により信頼性が高かった(相関係数の範囲は 0.40 ~ 1.00)。PPS データを含む線形予測モデルでは、説明分散の比率は低かった(0.40)。

結論
正確性が欠如しているため、SSI の発生率の推定を目的として PPS データを使用することは、SSI の発生率サーベイランスが実施されず、かつ十分に大きなサンプル数の PPS データが利用可能な状況でのみ推奨される。

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監訳者コメント
point prevalence survey(点有病率調査)は、通常のサーベイランスが継続したデータの収集であるのに対し、ある 1 時点でのデータを定期的に収集し解析する手法で、「スナップショット」とも呼ばれる。本論文は、SSI サーベイランスに対する PPS の有用性の評価を行ったものであり、サーベイランスの評価の重要性が再認識された。

整形外科におけるインプラント感染症を減少させる:整形外科インプラント手術後の術後感染に対する温風式加温装置と抵抗性布加温装置の加温技術の影響を比較したパイロット研究の結果

Reducing Implant Infection in Orthopaedics (RIIiO): Results of a pilot study comparing the influence of forced air and resistive fabric warming technologies on postoperative infections following orthopaedic implant surgery

M. Kümin* , J. Deery, S. Turney, C. Price, P. Vinayakam, A. Smith, A. Filippa, L. Wilkinson-Guy, F. Moore, M. O’Sullivan, M. Dunbar, J. Gaylard, J. Newman, C.M. Harper, D. Minney, C. Parkin, L. Mew, O. Pearce, K. Third, H. Shirley, M. Reed, L. Jefferies, J. Hewitt-Gray, C. Scarborough, D. Lambert, C.I. Jones, S. Bremner, D. Fatz, N. Perry, M. Costa, M. Scarborough
* University of Oxford, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 412-419


背景
手術中の積極的加温は周術期低体温症を予防するが、有効性と術後感染率は加温技術によって異なる可能性がある。

目的
大腿骨頸部骨折後に人工骨頭置換術を受ける 65 歳超の患者において、温風式加温装置と抵抗性布加温装置が関連している術後感染率を比較する完全な試験に必要な患者登録とデータ管理戦略を確立すること。

方法
置換ブロック法で参加者を温風式加温装置または抵抗性布加温装置に 1 : 1 でランダムに割り付けた。低体温症は手術終了時の体温が 36°C未満として定義した。主要評価項目は、登録された参加者数および確定した深部手術部位感染の件数であった。

結果
18 か月にわたり 6 施設で合計 515 例の参加者をランダム化した。70.1%が経過観察を完了した。37 例の参加者が低体温であった(温風式加温装置群の 7.5%、抵抗性布加温装置群の 9.7%)。麻酔前と手術終了時の平均体温は同様であった。臨床主要評価項目に関し、温風式加温装置群では 4 件、抵抗性布加温装置群では 3 件の深部手術部位感染が生じた。術後感染を発症したすべての参加者は抗菌薬予防投与を受け、セメント人工関節を使用し、層流下で手術を受けた。また、いずれも低体温ではなかった。加温に関連する重篤な有害事象はみられなかった。

結論
手術部位感染は両群で特定された。パイロット試験から完全な試験へと進めることは可能だが、試験中止率の高さを考慮する必要があるだろう。

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監訳者コメント
なし

カンジダ血症患者における併存疾患の重症度に応じた中心静脈カテーテル抜去遅延の臨床的影響

Clinical impacts of delayed central venous catheter removal according to the severity of comorbidities in patients with candidaemia

Y-M. Lee* , D.Y. Kim, Y.J. Kim, K-H. Park, M.S. Lee
* Kyung Hee University Hospital, Republic of Korea

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 420-427


背景
カンジダ血症患者の臨床転帰に対する中心静脈カテーテル(CVC)の早期抜去の影響は、依然として議論の余地がある。本研究では、カンジダ血症患者における併存疾患の重症度に応じて CVC 抜去遅延が死亡率に及ぼす影響を評価した。

方法
2010 年 1 月から 2017 年 12 月の間に 3 次病院 1 施設において、カンジダ血症患者を遡及的(レトロスペクティブ)に集計した。併存疾患の重症度は、低い(Charlson 併存疾患指数スコア≦ 3)または高い(Charlson 併存疾患指数スコア≧ 4)として分類した。カンジダ血症発症から 2 日を超えた後に CVC を抜去した例または CVC を抜去しなかった例を、CVC 抜去遅延例として分類した。

結果
カンジダ血症の発症から 2 日以内に死亡した 18 例は除外し、合計で 239 例のカンジダ血症患者が含まれた。このうち 149 例は Charlson 併存疾患指数スコアが低く、90 例は高かった。Charlson 併存疾患指数スコアが低い患者において、敗血症性ショック(補正オッズ比[aOR]9.5)および CVC 抜去遅延(aOR 4.7)は 30 日死亡率の上昇に有意に関連していたのに対して、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)感染(aOR 0.2)および脳血管疾患(aOR 0.3)は 30 日死亡率の低下に関連していた。Charlson 併存疾患指数スコアが高い患者において、敗血症性ショック(aOR 13.0)は 30 日死亡率の唯一のリスク因子であった。Charlson 併存疾患指数スコアが低い患者において、CVC 抜去遅延は 30 日死亡率の上昇に関連していたが(50.0%対 20.3%、P = 0.001)、Charlson 併存疾患指数スコアが高い患者においては関連はみられなかった(50.0%対 47.9%、P = 0.87)。

結論
CVC の早期抜去により Charlson 併存疾患指数スコアが低いカンジダ血症患者の生存を改善する可能性があるが、Charlson 併存疾患指数スコアが高いカンジダ血症患者ではそのような防御効果は明らかでなかった。

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監訳者コメント
カンジダ血症の治療において CVC 抜去は最も重要な要素の一つとされている。本論文の結論は、Charlson 併存疾患指数スコアが高い患者では CVC 早期抜去の生存改善効果が乏しかったということだが、もともとこの群の死亡率は47.8%と高かった。このような群ではそもそも生存に関連する要素は様々なものがあると考えられ、本研究のような後向き研究で、CVC 早期抜去が生存改善に結びつかないと結論づけるのは早計と思われる(無理して抜いてもそこまでメリットがないという考え方はできるかもしれないが)。

ナイジェリアの医療施設において分娩時に感染予防・制御ガイドラインを実行する際に職員が経験する障壁と機会

Barriers and opportunities experienced by staff when implementing infection prevention and control guidelines during labour and delivery in healthcare facilities in Nigeria

H. Buxton* , E. Flynn, O. Oluyinka, O. Cumming, J. Esteves Mills, T. Shiras, S. Sara, R. Dreibelbis
* London School of Hygiene and Tropical Medicine, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 428-434


背景
感染症は世界で新生児死亡の 15%および妊産婦死亡の 10 分の 1 を占める。新生児と妊産婦の死亡を減らすためには、感染予防・制御を目的とするエビデンスに基づく実践が不可欠である。

目的
ナイジェリアの 2 つの州にある 6 つの医療施設の産科病棟と分娩室において、感染予防・制御(IPC)ガイドラインを実行する際に職員が経験する障壁と機会を明らかにすること。

方法
重要なインフラと器具を評価するため、6 つの医療施設の産科病棟と分娩室において構造化した調査を行った。職員の慣行と品質保証の手順を評価するため、看護師長と共に調査を完了した。データは、施設職員との面談で得た質的データを用いてトライアンギュレーションを行った。

結果
6 施設すべての分娩室において使用に適した手洗い設備(水と機能的な蛇口、石けんが利用できる)が存在していたが、産後病棟では使用に適した手洗い設備が存在していたのは 1 棟のみであった。すべての施設は見かけ上は清潔で、職員はプロトコールに従う強い意志を示した。懸念される分野としては、トレーニングの有効性、個人防護具の供給が十分でないこと、手指衛生の実践が十分でないこと、再生可能な医療器具を再処理するための手順が最新ではないことが挙げられた。

結論
安全な分娩と産後ケアのためには、手指衛生のプロトコールと使い捨ての個人防護具の使用の包括的な遵守が必要である。財政的、設備的および人的資源の制約が、本研究に含まれる施設の分娩病棟における IPC の効果的な実行に対する障壁である。推奨される暫定的な措置には、トレーニング内容の伝達を体系化するために推進者を導入すること、施設レベルでモニターおよびフィードバックをすることが挙げられる。

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監訳者コメント
ナイジェリアにおける分娩という環境下における感染対策遵守のバリアについて評価した論文である。Table にチェックリストが含まれており、日本でも産科・分娩領域での感染対策チェックリストとして使用できるのではないだろうか。

エンテロコッカス・ヒラエ(Enterococcus hirae)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、およびエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)は消毒に通常用いられる殺生物製剤に対して異なる感受性を示す

Enterococcus hirae, Enterococcus faecium and Enterococcus faecalis show different sensitivities to typical biocidal agents used for disinfection

M. Suchomel* , A. Lenhardt, G. Kampf, A. Grisold
* Medical University of Vienna, Austria

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 435-440


背景
エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)およびエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)は、院内感染症の病原体として知られている。しかし、消毒に用いられる殺生物製剤について、エンテロコッカス・ヒラエ(Enterococcus hirae)に対する殺生物活性が明らかにされている。

目的
臨床的に重要な細菌種である E. faecalisおよび E. faecium に対する殺生物製剤の有効性を評価する上で、E. hirae が適した細菌種であるかどうかを明らかにすること。

方法
EN 13727 に従った懸濁試験により、E. faecium ATCC 6057、E. faecalisATCC 47077 および E. hirae ATCC 10541 を用いて殺生物活性を評価した。グルタルアルデヒド、エタノール、塩化ベンザルコニウム、過酢酸および次亜塩素酸ナトリウムを使用し、殺生物製剤ごとに3種類の曝露時間を用いた。3種類の腸球菌について各製剤に対する感受性に大きな差がみられた場合、さらに2回の実験を行った。コロニー形成単位(cfu)数を常用対数値に変換した。複数回の実験の結果は、平均値と標準偏差で記述した。

結果
5 分間の曝露時間において、E. hirae E. faecium および E. faecalisと比較して、0.2%グルタルアルデヒドおよび 0.0125%過酢酸に対する耐性がより高かった一方、40%エタノールおよび 3%次亜塩素酸ナトリウムに対する感受性はより高かった。0.00125%塩化ベンザルコニウム(15 分間)に対してのみ、E. hirae の感受性は E. faecium および E. faecalisの中間であった。

結論
E. hirae は、腸球菌に対するグルタルアルデヒドおよび過酢酸の殺生物活性を評価するのに適した細菌種である。E. hirae は、殺生物活性の標的とする臨床病原体に E. faecium および E. faecalisを含める場合、エタノールまたは次亜塩素酸ナトリウムについては適した細菌種ではない可能性がある。

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監訳者コメント
日本でも消毒薬の有効性を評価する際に様々な菌種の菌株が使用されているが、そのうちの一つに本研究対象となっている Enterococcus hirae がある。本研究結果も含め、E. hirae が消毒効果の評価対象菌種として E. faecalisE. faecium の代替となりうるかは今後も検討されるだろう。

英国の地域総合病院におけるインフルエンザウイルス、RS ウイルス、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)およびノロウイルスに対するベッドサイドでの同時検査の実施に関する評価

A service evaluation of simultaneous near-patient testing for influenza, respiratory syncytial virus, Clostridium difficile and norovirus in a UK district general hospital

J. Haigh* , M.-T. Cutino-Moguel, M. Wilks, C.A. Welch, M. Melzer
* Royal London and Whipps Cross University Hospital, Barts Health NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 441-446


背景
Cepheid® GeneXpert®(GXP)検査は、ノロウイルス、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、インフルエンザ A 型/ B 型ウイルス、ならびに RS ウイルスについて同時に検査を行うことができる。

目的
マルチプレックス PCR 検査の中央実施と、地域総合病院における GXP 検査の院内実施について比較すること。

方法
2017 年 12 月から 2018 年 12 月に Whipps Cross University Hospital が受け取ったサンプルについて、最初に院内の検査室で検査を行ってから、中央検査のために Royal London Hospitalに送付した。Royal London Hospital では、独自仕様ではないマルチプレックス逆転写 PCR(RT-PCR)検査が実施され、GXP 検査では対象とされない消化器病原体または呼吸器病原体の検査も行われた。

結果
便サンプルおよび呼吸器サンプル計 1,111 個の処理を両施設で行い、呼吸器サンプルは 591 個、便サンプルは 520 個であった。中央実施の検査と比較して、GXP 検査の感度、特異度および陰性的中率はいずれも 97%を超えていたが、RS ウイルスは例外であった。RS ウイルスの検査では、感度は 66.7%(95%信頼区間[CI]24.1 ~ 94.0)であったが、陰性的中率は 99.7%(95%CI 98.6 ~ 99.9)であった。Royal London Hospital では、さらなる呼吸器または消化器ウイルスが 65(5.9%)検出され、多かったのはライノウイルスが 35(3.2%)およびアデノウイルスが 11(1.0%)であった。中央実施の検査と比較して、院内の呼吸器および消化器ウイルスのサンプル検査で短縮された時間の中央値は、それぞれ 19 時間 46 分および 17 時間 6 分であった。

結論
院内の GXP 検査は、中央実施によるマルチプレックス PCR 検査と比較して、インフルエンザウイルス、ノロウイルスおよびC. difficileに対して、感度、特異度および陰性的中率は 95%から 100%の範囲であることが示された。所要時間はより短くなり、より迅速な感染予防・制御のための意思決定が可能になった。当院の院内環境において、GXP 検査により陰性的中率が低下し、ノロウイルスおよびインフルエンザ A 型/ B 型によるアウトブレイクが減少する可能性が示された。

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監訳者コメント
従来のイムノクロマト法などの迅速抗原検査は 10 〜 20 分前後で、誰にでもできる、有用な POC(point of care)検査であったが、感度・特異度は 80 〜 90%前後と改善されているものの、十分とはいえなかった。しかしながら、近年、欧米を中心に感染症の遺伝子診断がこれまでの抗原検査と同様な簡易さで、特別な技術も不要、20 〜 60 分以内に結果報告が可能、多項目同時に実施、さらに感度・特異度は 95%以上、かつ日常診療で POC検査として使用可能となっている。この GXP もそのひとつであり、今後検査項目の充実と複数病原体の同時検出キットの開発が進んでゆくことであろう。ただし、検査コストが迅速抗原検査に比較して高く、費用対効果を必ず検討する必要がある。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、およびノロウイルスの検出を目的とした医療従事者によるポイント・オブ・ケア検査

Point-of-care testing by healthcare workers for detection of meticillin-resistant Staphylococcus aureus,Clostridioides difficile, and norovirus

S. Dewar* , D. Vass, F.M. MacKenzie, B.J. Parcell
* Royal Infirmary of Edinburgh, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 447-453


背景
地域総合病院の病棟におけるポイント・オブ・ケア検査としての、3種類の Cepheid GeneXpert® 検査、すなわち Xpert SA Nasal Complete、Xpert C. Difficile、および Xpert Norovirus の導入の実行可能性。

目的
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、およびノロウイルスを対象として、医療従事者のみによるポイント・オブ・ケア検査の 1 日 24 時間、週 7 日の提供を確立すること。

方法
Cepheid GeneXpert 検査の性能特性を、従来の中央検査室法との比較を、検体測定時間、処理プロセスの数、結果が得られるまでの時間、および診断精度を比較することで評価した。医療従事者からのフィードバックを収集して、患者フローと臨床ケアを改善する上で、この検査法を適用することでもたらされ得る付加価値を検討した。

結果
16 か月の研究期間中に、計 1,170 件の検査が実施された。Cepheid GeneXpert 検査により、3 種類すべての微生物の同定において、所要時間、処理ステップ、および結果が得られるまでの時間が有意に短縮された。中央検査室による検査との全般的な一致度は、3 種類すべての検査で 98%を超えていた。スタッフから、ポイント・オブ・ケア検査には臨床的有用性に関して有益な影響があったとのフィードバックが得られた。

結論
MRSA 検出のためのXpert SA Nasal Complete、Xpert C. Difficile、および Xpert Norovirus は、病棟環境における医療従事者のみが実施するポイント・オブ・ケア検査として使用可能である。各検査は、1 日 24 時間、週 7 日にわたり使用され、病床管理および患者ケアにおいて有益な影響をもたらす可能性がある。

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監訳者コメント
本 Xpert システムは、それぞれの測定用キットに採取した検体を直接投入したのち、機器にセットするだけの、極めて平易に実施できる POC 検査である。また機器の大きさもノートパソコン 1 台分の広さがあれば設置できる程度であるため、病棟の片隅で運用可能である。したがって、臨床現場で特定の感染症を迅速かつ高感度・高特異度で測定が可能となり、その結果を感染対策に迅速に反映できるという大きなメリットがある、しかしながらこれまでの検査よりもコスト高となり、費用対効果の十分な検討が導入前には必要である。

南ヨークシャーにおいて全ゲノムシークエンシングにより同定された地域医療関連多剤耐性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)株の循環

Circulation of a community healthcare-associated multiply-resistant meticillin-resistant Staphylococcus aureus lineage in South Yorkshire identified by whole genome sequencing

L. Utsi* , B. Pichon , N. Arunachalam, A. Kerrane, E. Batten, M. Denton, R. Townsend, K.N. Agwuh, G.J. Hughes, A. Kearns
* Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 454-460


背景
多剤耐性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)による皮膚および創傷感染症の 7 症例からなるクラスターが、南ヨークシャーの小さな都市地域で検出された。最初の微生物学的調査から、分離株は全て、イングランドでまれに認められるspa型(t1476)に属していることが示された。

目的
南ヨークシャーにおける t1476 MRSA の疫学について記述すること。

方法
後向きおよび前向きの症例確認を、地域の複数の微生物学検査室と連絡を取りながら進めた。公衆衛生調査として、症例 9 例のサブセットについて臨床記録の詳細なレビューなどを行った。t1476 MRSA について、遺伝子解析および系統樹解析を実施した。

結果
2014 年 12 月から 2018 年 2 月の期間に、t1476 MRSA 感染症例 32 例が同定された。症例は、高齢の成人であった(年齢 50 ~ 98 歳)。9 例のサブセットについて医療曝露を調べたところ、地域看護師の 1 チームとの頻繁な接触が認められ、1 例を除いて、診断を受ける前に他の 1 例と同日に治療を受けていた。サンプル採取の時点で入院していた症例はいなかった。詳細な調査にもかかわらず、地域看護師のスタッフに保菌者は発見されなかった。長期にわたる保菌者/大量排菌者は発見されなかった。系統樹解析から、南ヨークシャーで発生した t176 MRSA 感染症例は単一系統であったこと、また英国の他の地域に由来する同じ MRSA 株(N = 15)、ならびに公表されているタンザニア由来の遺伝子型とは異なっていることが明らかになった。

結論
遺伝子解析および疫学解析により、2012 年から 2013 年にかけて南ヨークシャーに侵入した多剤耐性 MRSA クローンの市中伝播が、特定のリスク集団に関連した空間‐時間的クラスターが検出される前に発生していたことが明らかにされた。サーベイランスデータから、循環が継続していることが示唆される。

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監訳者コメント
CPFX:R,CLDM:R,DOXY:R,EM:R, GM:R, ST:R の多剤耐性 MRSA クローンが、新たなる流行株として英国南ヨークシャー地方で発見され、調査が実施された。本株の一部は特定の地域介護ケアを介して拡大したことが推測された。この株の由来として、ST8-t1476-SCCmecⅤ クローンでタンザニア・コンゴ共和国で確認されているが、本株クローンとの繋がりは認められず、その起源は不明である。今後 MRSA 菌血症の国家サーベイランスによるMRSA 耐性クローンの監視と疫学調査が進み、さらなる知見が得られるであろう。感染対応策として、地域の看護スタッフへの感染対策の直接教育と訓練、さらには地域コミュニティでの標準的感染対策のレベルを高く維持することが、MRSA や他の耐性菌の感染リスクを減らすこととなる。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)鼻腔内・咽頭内保菌と抗菌薬全身投与の追加に焦点を置いた除菌:デンマークにおける経験

Danish experience of meticillin-resistant Staphylococcus aureus eradication with emphasis on nose-throat colonization and supplementary systemic antibiotic treatment

I.S. Petersen* , J.M. Christensen, A.B. Zeuthen, P.B. Madsen
* Slagelse Hospital, Denmark

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 461-464


本研究の目的は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)保菌に関して、鼻腔内・咽頭内保菌と抗菌薬全身投与の追加に焦点を置いた Danish Board of Health の治療指針を評価することである。患者 358 例のうち鼻腔内 MRSA(58例)または咽頭内 MRSA(183 例)の保菌患者を対象に、MRSA 除菌治療の結果について分析した。3 回目の投与後の累積除菌率が鼻腔内(71%)、咽頭内(73%)で同等であるという結果にもかかわらず、初回投与後の除菌率は、鼻腔内(66%)のほうが、咽頭内(41%)よりも良好であることが、デンマークの MRSA 治療指針により明らかになった。本研究により、保菌に対する治療への抗菌薬全身投与の追加は、有益な作用を示さないことが確認された。

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監訳者コメント
デンマークでの MRSA の除菌指針は、①ムピロシン 5 日間(咽頭キャリアは 10 日間)、②クロルヘキシジン石けんを用いた全身洗浄、③清掃・洗濯となっており、病院内伝播リスクの高い患者、受診や入退院の頻繁な患者では、薬剤感受性に基づいて主にクリンダマイシンを 7 ~ 10 日間投与することとなっている。最初の除菌に失敗すると 2 回目の除菌を、そしてそれも失敗すると 3 回目の除菌を行ったが、除菌率が咽頭よりも鼻腔で高いのは、これまで知られていたことと合致しており、新規性はない。ただし抗菌薬の全身投与の追加については、行わなかった群の方がむしろ除菌率は高かった。全身投与を追加した患者を鼻腔内、咽頭内に分けた場合の結果を示してはいないが、全身投与が保菌率を高める可能性さえ危惧される。

乾燥表面のバイオフィルムを除去するのは困難

Difficulty in removing biofilm from dry surfaces

F. Parvin* , H. Hu, G.S. Whiteley, T. Glasbey, K. Vickery
* Macquarie University, Australia

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 465-67


感染制御のためには清掃が欠かせない。本報告では、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のバイオフィルムは、乾燥させた浮遊細菌(planktonic bacteria)よりも除去することが有意に困難であることを明らかにした。1 回の拭き取りで、乾燥浮遊細菌の 99.9%超(> 3 log10)が除去されたのに対して、バイオフィルムについては、標準的な拭き取り法による 50 回の拭き取りで除去されたのは 96.66%(1.4 log10)にとどまった。

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監訳者コメント
バイオフィルムには、拭き取りによる力学的な除去が有効であるが、それに対して抵抗性を示すことも容易に想像できる。様々な評価法があるが、本研究は直線運動による拭き取りの強さと回数を変えて、通常の溶液中の細菌(浮遊細菌)と比較して、バイオフィルム産生状態がどのくらい抵抗性を示すのか、定量的に評価したものである。バイオフィルム産生状態では、10 ~ 20回の拭き取りではほとんど菌は除去できず、50 回行ってようやく約 30 分の 1 になったにすぎなかった。これ以上の検討は行っていないが、回数を増やしても浮遊細菌のレベルまで達することは不可能であろうし、実際には拭き取り周辺部の汚染や、手指への付着といった問題も出てくる。バイオフィルム除去という課題は大きく、複雑といえる。

薬剤耐性真菌に対する消毒薬の有効成分の in-vitro 活性

in-vitro activity of active ingredients of disinfectants against drug-resistant fungi

R. Stauf* , D. Todt, E. Steinmann, P-M. Rath, H. Gabriel, J. Steinmann, F.H.H. Brill
* Paracelsus Medical University, Germany

Journal of Hospital Infection (2019) 103, 468-473


過酢酸およびエタノールの殺菌活性を、真菌の臨床分離株 9 株および標準菌株 4 株につして検討した。エタノールは濃度 50%(v/v)で酵母に対して有効であり(≧4.0 log10 減少)、濃度 80%(v/v)で糸状菌に対して有効であった。いずれも曝露時間は 1 分であった。過酢酸は 0.25%溶液で酵母に対して有効であり、0.5%溶液で糸状菌に対して有効であった。いずれも曝露時間は 5 分であった。多剤耐性株を含む臨床分離株は、消毒薬の有効成分に対するin-vitro の実験系において、標準菌株と比較して同等またはより高い感受性を示した。

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監訳者コメント
本研究ではAspergillusCunninghamellaScedosporiumといった糸状菌、およびExophiala(黒色真菌で、酵母、菌糸の両形態をとる)について殺菌活性を調べており、これらの菌に対する消毒薬の活性の基礎的データとして、今後も有用な情報となると思われる。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.