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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

コロナウイルスの影響により一部、監修者のコメントおよびレーティングを未監修のまま掲載しておりますので、ご了承ください。

多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の遺伝学、疫学、臨床像

Genetics, epidemiology, and clinical manifestations of multidrug-resistant Acinetobacter baumannii

P. Nasr*
*California State University, USA

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 4-11


アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)感染症は、世界中の病院で衛生上の新たな懸念事項となっており、長期入院患者において、より不良な臨床転帰を示す院内感染症と関連することが多い。感染管理には、感染菌株の迅速な同定、感染源の隔離、抗菌薬レジメンの適切な選択が含まれる。しかし、第一選択抗菌薬に対する耐性は、同等に有効な代替薬がないことと相まって、多剤耐性 A. baumannii 感染症の治療を困難にする。現在、多剤耐性 A. baumannii は、病院や長期ケア施設における衛生上の重大な懸念事項であり、出現率を制御するために迅速かつ継続的な防止策が必要である。本レビューでは、多剤耐性 A. baumannii の出現に影響を与える疫学、遺伝子マーカー、およびその他の因子の傾向について報告する。現行の対策および新たな対策、ならびに感染制御策について検討する。

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監訳者コメント
アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)感染症のリスク因子に関するレビューである。書かれているリスク因子は個々の論文でも以前から指摘されたことが基本である。



ロンドンの大規模な国民保健サービス(NHS)Trust の入院患者におけるカルバペネマーゼ産生菌保菌率を明らかにするための点有病率調査

A point prevalence study to determine the inpatient rate of carbapenemase-producing organisms at a large London NHS Trust

J. Henderson*, H. Ciesielczuk, S.M. Nelson, M. Wilks, M.N. Cummins
*Barts Health NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 12-19


背景
過去 10 年間に英国におけるカルバペネマーゼ産生菌種の増加が認められている。これらのうち、エンテロバクター目の“5 大”カルバペネマーゼ(KPC 型、OXA-48 型、IMP 型、VIM 型、NDM 型)が、もっとも頻度が高いと報告されており、さまざまな反応性スクリーニング、アウトブレイク、入院患者サーベイランス、診断用検体により同定されている。

目的
4 つのロンドン自治区(Tower Hamlets、Newham、Redbridge、Waltham Forest)の患者 250 万例を収容する Barts Health 国民保健サービス(NHS)トラストにおいて、点有病率調査により、入院患者のカルバペネマーゼ産生菌保菌率を明らかにすることを目的とした。

方法
同意が得られた患者の直腸スワブを採取し、同時に、病棟の医学専門領域、患者の出生国、海外渡航歴、入院期間、および過去の入院歴の詳細を収集した。スワブ検体を増菌培養し、mSuperCARBA 選択培地で 2 次培養した。マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法により、すべてのエンテロバクター目(Enterobacterales)、アシネトバクター(Acinetobacter)属菌、シュードモナス(Pseudomonas)属菌を同定し、EUCAST(European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing)ガイドラインに従い、ディスク拡散法により抗菌薬感受性試験を実施した。以前に発表した逆転写 PCR 法の修正版を用いて、全分離株で“5 大”カルバペネマーゼのスクリーニングを実施した。

結果
検査を受けた入院患者 977 例のうち、30 例の検体から 35 件のカルバペネマーゼ産生菌が分離された。もっとも検出頻度の高いカルバペネマーゼは NDM 型で、OXA-48 型が続き、全体の保菌率は 3.1%であった。分離された細菌は、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、大腸菌(Escherichia coli)であった。腎疾患病棟および高齢者ケア病棟の患者において、カルバペネマーゼ産生菌保菌率がもっとも高かったのに対し、集中治療室における保菌率は低かった。統計解析では、海外での入院歴、あらゆる入院歴、海外旅行(とくに、インド、パキスタン、バングラデシュへの旅行)が、カルバペネマーゼ産生菌保菌リスクの増大と関連することが確認された。

結論
Barts Health NHS Trust において、NDM 型、OXA-48 型カルバペネマーゼなどを産生する カルバペネマーゼ産生菌の全体的な保菌率は 3.1%であり、ロンドンでの他の研究と同等である。腎疾患患者や高齢者でカルバペネマーゼ産生菌の負荷がもっとも高く、一方で、入院歴や海外への渡航歴はカルバペネマーゼ産生菌保菌リスクの増大と関連した。

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監訳者コメント
英国はインドなど英国連邦の国との結びつきが未だに深く、NDM 型などの陽性例などがその特徴を表している。

オランダの居住型ケア施設における VIM 型カルバペネマーゼ産生大腸菌(Escherichia coli

VIM-carbapenemase-producing Escherichia coli in a residential care home in The Netherlands

M.J. Bruins*, A.H. Koning ter Heege, M.I. van den Bos-Kromhout, R. Bettenbroek, M. van der Lubben, S.B. Debast
*Laboratory of Clinical Microbiology and Infectious Diseases, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 20-26


背景
カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)は、公衆衛生上の重大な脅威であり、その脅威は増大している。病院や長期ケア施設において、伝播予防のために保菌者を特定すべきであるが、感染制御のためのガイドラインが、あらゆるタイプのケア施設に適用できるとは限らない。

目的
オランダの居住型ケア施設(入居者は個室付きの集合住宅に居住するが、共有設備も使用する)における VIM 型メタロβ‐ラクタマーゼ産生大腸菌(Escherichia coli)のアウトブレイクの調査について報告すること。

方法
保菌率および定着率を評価するために、接触・環境に関する巡回スクリーニングを実施した。施設の内部特性により、特別の感染制御策が必要であった。接触予防策、衛生状態の改善、教育などの介入バンドルを実施した。

結果
全体で、居住者 110 例のうち、発端症例を含む CPE 保菌者 8 例が特定された。VIM 型 CPEの拡散は、共有領域の共用トイレの使用と関連した。最初の症例の発見から 7 か月後に全保菌者が VIM 陰性であることが確認され、1 年後、VIM 型 CPE は環境内にもはや検出されなかった。

結論
アウトブレイクの制御を達成するために特別なバンドルアプローチが必要であった。多剤耐性病原菌の拡散に効果的に取り組むために、現行のガイドラインは、あらゆるタイプの居住型ケア施設に合わせて変更すべきである。

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監訳者コメント
ケア施設における耐性菌の拡散、蔓延は我が国でも心配される課題である。日本においても同様な検討が必要と考える。

デンマークの救急部におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌およびカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌の検出:スクリーニングのための全国的なガイドラインの評価

Detection of meticillin-resistant Staphylococcus aureus and carbapenemase-producing Enterobacteriaceae in Danish emergency departments ― evaluation of national screening guidelines

H. Skjøt-Arkil*, C.B. Mogensen, A.T. Lassen, I.S. Johansen, M. Chen, P. Petersen, K.V. Andersen, S. Ellermann-Eriksen, J.M. Møller, M. Ludwig, D. Fuglsang-Damgaard, F.E. Nielsen, D.B. Petersen, U.S. Jensen, F.S. Rosenvinge
*Hospital Sønderjylland, Denmark

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 27-32


背景
多剤耐性菌は新たな問題となっている。院内伝播を避けるため、また抗菌治療法の的を絞るために、多剤耐性菌保菌患者の早期発見が必須となる。大多数の患者が専門の救急部を経由するので、この部門は早期発見に重要である。Danish National Board of Healthは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)およびカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)の保菌者の特定と隔離のための、曝露に基づく標的スクリーニングツールを開発した。

目的
急性期患者コホートにおいて、MRSA および CPE 保菌の検出のための全国的なスクリーニングツールを評価すること。(i)保菌患者が発見された場合(ii)保菌患者が隔離された場合に調査することを目標とした。

方法
本稿は、救急部を受診した成人を対象とした多施設共同横断調査である。患者は Danish National Board of Health 質問票に回答し、鼻、咽頭、直腸からスワブ検体を採取された。MRSA および CPE に関して、採取検体を検査した。スクリーニングの成績を計算した。

結果
対象患者 5,117 例のうち 16 例が MRSA、4 例が CPE を保菌していた。MRSA スクリーニングツールでは、保菌者検出の感度は 50%(95%信頼区間[CI]25 ~ 75)、保菌者隔離の感度は 25%(95%CI 7 ~ 52)であった。CPE スクリーニングツールでは、保菌者検出の感度は 25%(95%CI 1 ~ 81)で、隔離された CPE 保菌者はいなかった。

結論
MRSA および CPE の保菌者の大多数が、特定されずに救急部を経由したので、全国的なスクリーニングツールの使用は限られており、不必要に隔離された患者が多かった。

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監訳者コメント
なし

基質特異性拡張型β- ラクタマーゼ SHV2a 産生緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の局地的アウトブレイクにより、世界的な高リスククローン ST235 の新たな特有の亜系統の出現が明らかになる

Local outbreak of extended-spectrum β-lactamase SHV2a-producing Pseudomonas aeruginosa reveals the emergence of a new specific sub-lineage of the international ST235 high-risk clone

G. Royer*, F. Fourreau, B. Boulanger, M. Mercier-Darty, D. Ducellier, F. Cizeau, A. Potron, I. Podglajen, N. Mongardon, J.-W. Decousser
*University Hospital Henri Mondor, France

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 33-39


背景
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は病院感染の原因となる主な細菌性病原体の 1 つである。緑膿菌の疫学は非クローン性と考えられているにもかかわらず、特定の世界的な高リスクの多剤耐性クローンが認められてきた。

目的
SHV2a 産生緑膿菌株に起因する院内アウトブレイク 1 件に関する第一報として、この希少な基質特異性拡張型β- ラクタマーゼ(ESBL)を保有する新たな ST235 の特有の系統の出現について叙述すること。

方法
2018 年 5 月から 10 月の間に、フランスの教育病院 1 施設の心血管集中治療室に入院していた患者 4 例が多剤耐性緑膿菌分離株に感染した。血清型および抗菌薬感受性を試験した。また、全ゲノムシークエンス法を用いて、multi-locus sequence type(MLST)、コアゲノム MLST、レジストームを決定した。入手可能な ST235 ゲノムを用いて、一塩基多型に基づいた系統発生解析を実施した。

結果
4 株は、コリスチン、シプロフロキサシン、セフタジジム・アビバクタム、セフトロザン・タゾバクタムに対して感受性を示した。blaSHV2a は、同一のコアゲノム MLST プロファイル(4,162 の異なるアレルのうち 0 ~ 2)を示したこの血清型クラスター ST235-O11 の各ゲノムにおいて同定された。162 の ST235 ゲノムの系統発生解析により、4 つの他の菌株のみが blaSHV2a を保有し、フランスとアメリカ由来であり、アウトブレイク株と異なるにもかかわらず、ともにクラスター形成をしていることが示された。

結論
ST235 緑膿菌株において、共通の遺伝的背景を有し blaSHV2a ESBL を保有する亜系統は、別の場所から出現し、二次性の局地的アウトブレイクを引き起こすように思われる。

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監訳者コメント
なし

集中治療室における緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の外因性獲得:前向き多施設共同研究(DYNAPYO 研究)

Exogenous acquisition of Pseudomonas aeruginosa in intensive care units: a prospective multi-centre study (DYNAPYO study)

M. Coppry*, C. Leroyer, M. Saly, A-G. Venier, C. Slekovec, X. Bertrand, S. Parer, S. Alfandari, E. Cambau, B. Megarbane, C. Lawrence, B. Clair, A. Lepape, P. Cassier, D. Trivier, A. Boyer, H. Boulestreau, J. Asselineau, V. Dubois, R. Thiébaut, A-M. Rogues
*Universitéde Bordeaux, France

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 40-45


背景
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、依然として集中治療室(ICU)において最もよくみられる院内病原体の 1 つである。外因性獲得はアウトブレイクにおいて広く立証されてきたにもかかわらず、非流行性の状況ではその重要性は不明である。

目的
ICU 患者における外因性由来の緑膿菌の役割を明らかにすること。

方法
DYNAPYO コホート研究で 2009 年に採取されたサンプルを用いて、緑膿菌の獲得に関する時系列分析を行った。研究期間中、患者および水道水は週 1 回検査した。パルスフィールドゲル電気泳動を用いて、緑膿菌分離株の分子的な関連性を検討した。外因性獲得は、以前に ICU において他の患者または水道水から分離された緑膿菌のパルソタイプの同定として定義した。

結果
DYNAPYO コホートは、1,808 例の患者(10,402 のサンプル)および 233 の蛇口(4,946 のサンプル)を含んだ。患者 373 例由来の 1,515 の分離株および 81 の水道水サンプル由来の 375 の分離株のタイピングにより、296 のパルソタイプが同定された。分析により、患者 373 例のうち 170 例(45.6%)で外因性獲得が示された。同定されたパルソタイプは、患者 86 例では以前に他の患者から分離されており、患者 29 例では以前に水道水サンプルから分離されていた。結果は各 ICU ごとに異なった。

結論
緑膿菌の外因性獲得は、患者の半数で予防できた。本調査の総合的な結果は、ICU における外因性獲得の制御方法をより明確にするための、伝播経路およびリスク評価の手法に関する研究の必要性を裏付けている。

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監訳者コメント
なし

レボフロキサシン耐性ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia):入院患者におけるリスク因子と抗菌薬感受性

Levofloxacin-resistant Stenotrophomonas maltophilia: risk factors and antibiotic susceptibility patterns in hospitalized patients

C.H. Wang*, C.-M. Yu, S.-T. Hsu, R.-X. Wu
*Tri-Service General Hospital, Taiwan

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 46-52


背景
レボフロキサシンはステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)感染症の代替治療の 1 つと考えられてきた。しかし、レボフロキサシン耐性 S. maltophilia が世界的に出現しつつある。

目的
入院患者におけるレボフロキサシン耐性 S. maltophilia のリスク因子を検討すること。また、レボフロキサシン耐性 S. maltophilia 分離株の抗菌薬感受性パターンを明らかにすること。

方法
後向きマッチング症例 – 対照 – 対照研究において、レボフロキサシン耐性 S. maltophilia 患者(症例群)を 2 つの対照群(レボフロキサシン感受性 S. maltophilia 患者[対照群 A]、S. maltophilia 非感染患者[対照群 B])と比較した。レボフロキサシン耐性 S. maltophilia の発生に関するリスク因子の分析のため、条件付きロジスティック回帰を用いた。採取したレボフロキサシン耐性 S. maltophilia 臨床分離株におけるチゲサイクリン、セフタジジム、コリスチン、およびトリメトプリム/スルファメトキサゾールの感受性を明らかにした。

結果
計 105 例のレボフロキサシン耐性 S. maltophilia 患者、計 105 例のレボフロキサシン感受性 S. maltophilia 患者、計 105 例の S. maltophilia 非感染患者を分析した。最初の多変量解析(症例群対対照群 A)により、フルオロキノロンの使用歴はレボフロキサシン耐性 S. maltophilia の発生に有意に関連していることが明らかになった。また、2 番目の多変量解析(症例群対対照群 B)により、フルオロキノロンの使用歴、集中治療室への在室歴、異なるクラスの抗菌薬に対して以前に曝露された数は、レボフロキサシン耐性 S. maltophilia の発生に有意に関連していることが明らかになった。抗菌薬感受性を試験したすべてのレボフロキサシン耐性 S. maltophilia 分離株に関して、セフタジジム、トリメトプリム/スルファメトキサゾール、チゲサイクリン、およびコリスチンの耐性率は、それぞれ 42.0%、99.0%、78.0%、40.0%であった。

結論
レボフロキサシン耐性 S. maltophilia の抗菌薬感受性パターンにより多剤耐性が明らかになったが、これにより臨床医の治療選択肢がさらに制限される。レボフロキサシン耐性 S. maltophilia の発生を減らすため、抗菌薬の適切な使用、特にフルオロキノロンの適切な使用が必須である。

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監訳者コメント
ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)は弱毒性の日和見感染症の原因菌の一つである。検出されても定着のことが多く、治療対象とすべきかどうかは慎重な判断が必要であるが、好中球減少患者などでは、出血性の肺炎や菌血症の報告も多い。第一選択薬は ST 合剤であるが、副作用などのため使用しにくいことも多く、一方でカルバペネマーゼを染色体性に産生するため、カルバペネム系薬に自然耐性を示す。そこで第二選択薬としてキノロン系薬などが考慮される、という訳である。国内のS. maltophiliaの薬剤感受性に関する感受性サーベイランスのデータは限られているが、約 80%前後との報告がある。キノロン系薬の適正使用といえば、肺結核をマスクすることが有名であるが、S. maltophiliaのみならず緑膿菌や大腸菌、黄色ブドウ球菌などの一般細菌のキノロン耐性を選択することにも注意が必要である。

集中治療室における基質特異性拡張型β- ラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌(ESBL-E):患者の ESBL-E の保菌圧との強い相関がみられるが同一の菌種ではない

Extended-spectrum β-lactamase Enterobacteriaceae (ESBLE) in intensive care units: strong correlation with the ESBLE colonization pressure in patients but not same species

C. Lemarié*, C. Legeay, S. Lasocki, R. Mahieu, A. Kouatchet, L. Bahier, L. Onillon, M. Corre, M. Kempf, M. Eveillard
*Centre Hospitalier Universitaire, France

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 53-56


基質特異性拡張型β- ラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌(ESBL-E)による汚染のスクリーニングのため、集中治療室(ICU) 6 室のシンク排水管のサンプリングを行った。シンク排水管の汚染は高率(59.4%)であることが認められた。ICU ごとにデータを分析すると、⌈シンク排水管で分離された ESBL-E 種の数/サンプリングされたシンク排水管の総数⌋の比率は、⌈前年に ESBL-E の保菌が特定された患者の入院日数/前年の入院日数の総数⌋の比率と、高度に相関していた(Spearman 係数 0.87、P = 0.02)。同時に、ESBL-E 種の分布は患者とシンク排水管で有意差があった。

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監訳者コメント
近年、多剤耐性グラム陰性桿菌の院内伝播においてシンクなどの水まわりの汚染が関係しているとする報告が多い。しかし本論文のように、患者から分離される菌と、水まわりから分離される菌が完全に同一というわけではないようである。プラスミドによる耐性遺伝子の伝播は従来ヒトの腸内で起きると考えられてきたが、環境も含めたプラスミドによる耐性遺伝子の伝播の可能性について考えた方が良いのかもしれない。

多剤耐性グラム陰性桿菌の保菌者である母親から乳児への感染:システマティックレビューとメタアナリシス

Transmission of multidrug-resistant Gram-negative bacteria from colonized mothers to their infants: a systematic review and meta-analysis

A.N.H. Bulabula*, A. Dramowski, S. Mehtar
*Stellenbosch University, South Africa

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 57-67


背景
新生児敗血症は、依然として新生児死亡の主な原因の 1 つである。母親の細菌保菌は乳児への感染において主要な原因であり、それに続く母親由来の菌株による新生児敗血症の発生の可能性を伴う。

目的
多剤耐性グラム陰性桿菌(MDR-GNB)の保菌者である母親から乳児への感染を裏付ける分子的エビデンス、ならびに MDR-GNB 感染のリスク因子をレビューすること。

方法
保菌者である母親から乳児への MDR-GNB の感染の機序とリスク因子と規模、またはそのいずれかを検討する研究に関して、PubMed と Scopus を検索した。MDR-GNB 感染および新生児の感染の転帰の統合比率を決定するため、変量効果モデルによるメタアナリシスを実施した。

結果
8 件の研究はナラティブ記述に含まれ、6 件の研究はメタアナリシスに含まれた。5 件の研究では、保菌者である母親および乳児由来の分離株の関連性を評価するため、パルスフィールド・ゲル電気泳動を用いた。保菌者である母親から乳児への MDR-GNB の感染の統合比率は 27%(95%信頼区間[CI]8 ~ 47%)であった。基質特異性拡張型β- ラクタマーゼ(ESBL)産生腸内細菌科細菌は、母親と乳児のペアの間で感染する、最も高頻度に研究された MDR-GNB 病原体であった。MDR-GNB 病原体の母親から乳児への感染後の、新生児の保菌の転帰の統合比率は 19%(95%CI 3 ~ 35%)であった。

結論
本システマティックレビューは、保菌者である母親から乳児への多剤耐性腸内細菌科細菌と ESBL 産生腸内細菌科細菌、またはそのいずれかの感染と、それに続く乳児の保菌を強く裏付けている。保菌者である母親と乳児の間の MDR-GNB の感染に関与するリスク因子に関して、さらなる研究が必要である。

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監訳者コメント
母親と新生児間の耐性菌のやりとりは、その密接な関係を考慮すると当然のことと考えられる。その伝播経路は分娩時の垂直感染から始まり、母乳や食事など様々なものが考えられる。耐性菌の家庭内伝播を遮断することは困難であるが、こういった現状も受け入れながら、耐性菌の制御戦略を考えていくことも重要である。

成人および小児のあらゆる状況において尿路感染症予防のために水分補給を増やす:システマティックレビュー★★

Increased fluid intake for the prevention of urinary tract infection in adults and children in all settings: a systematic review

O. Fasugba*, B.G. Mitchell, E. McInnes, J. Koerner, A.C. Cheng, H. Cheng, S. Middleton
*St Vincent’s Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 68-77


背景
尿路感染症(UTI)予防のための抗菌薬を用いない介入は、UTI に対する抗菌薬処方と、それに伴う抗菌薬耐性の発現を抑えるための戦略として研究されてきた。水分補給を増やすことは UTI 予防のために広く推奨されているが、その有効性を示すエビデンスは知られていない。

目的
あらゆる状況の成人および小児における UTI に対する予防的介入として水分補給を増やすことの有効性に関する発表文献のシステマティックレビューを行うこと。

方法
5 つの電子データベースを設立時から 2019 年 2 月までについて検索し、UTI 予防における大量の水分補給(≧ 1.5 L/24 時間)と通常/少量の水分補給(< 1.5 L/24 時間)の有効性を評価した、発表済みのランダム化比較試験(RCT)および準実験研究を特定した。アウトカムは UTI の発生率とした。バイアスのリスクを、Cochrane Collaboration のツールを用いて評価した。特定された研究の件数が少なかったため、メタアナリシスはできなかった。したがって、ナラティブ統合を行った。

結果
関連する可能性のあった 2,822 報の論文中、RCT(個別無作為化試験)1 報およびクラスター RCT 1 報の 2 報が組み入れに適格であった。いずれの研究も、参加者、設定、サンプルサイズ、UTI の定義、および介入が異なっていた。RCT はバイアスのリスクは低いと評価されたのに対し、クラスター RCT はバイアスのリスクが高かった。プライマリケア診療所を受診した健康な閉経前女性を組み入れた RCT の方のみで、大量の水分補給に UTI 予防における統計学的有意な効果が示された。

結論
十分に適切な検出力を有する頑健な RCT がないことは、この介入のUTI 予防における有効性についてさらなる研究が必要であることを強調している。

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監訳者コメント
尿路感染症(UTI)は最もありふれた感染症であり、大半の例において抗菌薬が投与される。英国で処方される抗菌薬の 21%を UTI が占めており、成人女性の 3 人に 1 人は 24 歳になるまでに必ず一度は抗菌薬投与を受けているとされている。世界的に抗菌薬耐性が問題視されているなかで、UTI の予防は患者にとっても、医療費においても、メリットは大きい。UTI は反復することが多く、日常的に尿路感染症の患者に水分をとにかく多めに取り、尿量を増やすように外来で指導しているが、実は適切に無作為化された研究がないのが実情であることを示す論文である。

新規の光力学的コーティング処理法により患者周囲環境表面の微生物量が減少し、そのために病原体のさらなる伝播のリスクが抑制される:2 病院における実地研究

Novel photodynamic coating reduces the bioburden on near-patient surfaces thereby reducing the risk for onward pathogen transmission: a field study in two hospitals

A. Eichner*, T. Holzmann, D.B. Eckl, F. Zeman, M. Koller, M. Huber, S. Pemmerl, W. Schneider-Brachert, W. Bäumler
*University Medical Centre, Germany

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 85-91


背景
患者周囲環境の表面は、病院獲得感染症の感染源として認識されている。患者周囲環境表面は、微生物汚染のリザーバとなり、これを介して保菌患者または感染患者から、感受性を有する患者に病原体が伝播する可能性がある。ルーチンの表面消毒だけでは結果として病原体の一時的な根絶が得られるのみであり、必然的に消毒と消毒の間の短期間での再汚染は避けられない。

目的
光線力学に基づく新規の抗菌コーティングを、実験室条件下、およびその後に 2 病院の実臨床条件下における実地研究により検証した。

方法
同一の表面に対して、光力学的コーティングまたは対照コーティングを施した。細菌数(コロニー形成単位[cfu]/cm²)の評価を、最長 6 か月にわたり定期的に行った。

結果
実験室での研究から、いくつかのヒト病原体に平均で最高 4.0 ±0.3 log10の減少が示された。患者周囲環境についての実地研究では、すべての対照コーティングにおける細菌数は平均で 6.1 ±24.7 cfu/cm² であることが示された。光力学的コーティングの場合の細菌数の平均は(1.9 ± 2.8 cfu/cm²)、有意に低いことが示された(P < 0.001)。2.5 cfu/cm² または 5 cfu/cm² というベンチマークを考慮すると、表面上における高細菌数の相対リスク低下は、それぞれ 48%(オッズ比 0.38、P < 0.001)および 67%(オッズ比 0.27、P < 0.001)であった。

結論
光力学的コーティングをルーチンの衛生策に加えて利用することで、患者周囲環境表面上の細菌数に、特に細菌数が大きい場合に、有意かつ持続的な減少が認められた。本概念実証研究で得られた有望な結果は、この新規技術が病院獲得感染症の頻度にどのような影響を及ぼすのかを明らかにするために、さらなる研究が必要であることを強調している。

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監訳者コメント
患者周囲環境の表面に付着あるいは定着している細菌を殺す試みはすでに 20 年以上前からあり、耐性菌や一般細菌に対する抗菌布や抗菌テープ等が現在でも市販されている。本論文では病院環境における環境汚染の程度が光力学コーティング処理で有意に減少することを証明しているが、この減少がどの程度病院内における交差感染に影響しているかは全く不明である。本当にわれわれが必要としているデータは環境のコロニー数が減ることは勿論のことであるが、当該細菌による交差感染が減ることであり、臨床的なアウトカムがどうなるかが知りたいところである。

プリオン病と、軟性内視鏡の再処理に推奨される手順:世界的な方針のレビューと簡素化アプローチの提案

Prion disease and recommended procedures for flexible endoscope reprocessing - a review of policies worldwide and proposal for a simplified approach

G. Kampf*, M. Jung, M. Suchomel, P. Saliou, H. Griffiths, M.C. Vos
*University Medicine Greifswald, Germany

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 92-110


いくつかのガイドラインでは、クロイツフェルト・ヤコブ病または変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の疑い例または確診例について、内視鏡に対する特別な処理、専用使用あるいは内視鏡洗浄・消毒装置の追加処理を推奨しているが、推奨の細部については大きなばらつきがある。そこで本研究では、プリオン病の疑い例または確診例における軟性内視鏡使用後の再処理に関するガイドラインについてレビューを行った。さらに、プリオン、クロイツフェルト・ヤコブ病、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病、化学的不活化、伝播/医療、疫学/医療、濃度/組織/ヒト、および内視鏡に関する文献について、Medline 検索を実施した。これまでに、軟性内視鏡を介して伝播されたクロイツフェルト・ヤコブ病または変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の症例は報告されていない。動物実験では、伝播が発生するためには、牛海綿状脳症(BSE)に感染した脳のホモジネート 0.1 ~ 5 g の経口摂取が必要であることが示されている。他の組織(例、回腸末端部)の場合、プリオンの最大濃度は少なくとも 100 倍低い。内視鏡の自動洗浄のみで、十二指腸内視鏡当たりの総残存蛋白量は 5.6 mg 以下と極めて低くなる。国によって推奨にはばらつきがあり、場合によって洗浄を追加する、アルカリ洗浄剤を使用する、固定性のある洗浄剤を使用しない、固定性のない消毒薬を使用するか単回使用用の消毒薬を使用する、などとなっている。水酸化ナトリウム(1 M)および次亜塩素酸ナトリウム(10,000 および 25,000 mg/L)は、動物の脳内に埋め込んだ汚染ワイヤを介した伝播の予防において極めて効果が高いが、内視鏡に関する有効性には疑問がある。間接的なエビデンスに基づくと、遅れて疑いが判明した患者において、使用直後のベッドサイドでの洗浄や、アルカリ洗浄剤のルーチンの使用、消毒前のいかなる段階でも固定性のある洗浄剤を用いないこと、およびシングルユースのブラシと洗浄液の使用を確実に行うことは、適切度に応じて妥当性が確認された再処理法として考慮してよいであろう。

サマリーの原文(英語)はこちら

監訳者コメント
クロイツフェルト・ヤコブ病およびその疑い例で使用する内視鏡の洗浄・消毒に関してはエビデンスが少なく、さらにそのエビデンスをどのように総括・理解するか迷うことも多い。散発的に報告される情報を随時総括していくことも手間がかかる。本レビューはそのような総合的な理解に役立つものであり、随時参照する文献としておきたい。

低栄養状態と脊椎手術後の手術部位感染症との関連:システマティックレビューとメタアナリシス

Association of malnutrition with surgical site infection following spinal surgery: systematic review and metaanalysis

A.G. Tsantes*, D.V. Papadopoulos, T. Lytras, A.E. Tsantes, A.F. Mavrogenis, P. Koulouvaris, I.D. Gelalis, A. Ploumis, A.V. Korompilias, T. Benzakour, G. Tsivgoulis, S. Bonovas
*Attikon University Hospital, Greece

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 111-119


背景
脊椎手術後の手術部位感染症(SSI)は、臨床的に頻度の高い問題であり、臨床的および社会経済的に重大な帰結をもたらす。低栄養状態は、他のさまざまな外科手技において SSI と関連づけられている。

目的
低栄養状態が脊椎手術後の SSI のリスク因子であるかどうかを検討すること。

方法
2 つの電子データベース(PUBMED、SCOPUS)および Cochrane Library に登録されている文献について、設立時から 2019 年 5 月の間で系統的に検索を行った。脊椎手術を受けた患者を対象に、SSI のリスク因子として低栄養状態を評価したコホート研究および症例対象研究を、組み入れに適格とした。低栄養状態は臨床検査値や国際疾病分類第 9 版(ICD-9)の関連コードにより定義した。SSI を対象とするアウトカムとし、2 名の評価者が独立して研究データを抽出、各研究におけるバイアスのリスクを評価した。ランダム効果モデルを用いて、プールした効果を推定した。

結果
合計で、22 報の研究(後向きコホート研究 20 報、症例対照研究 2 報)、患者 175,000 例以上(うち 2.14%が術後 SSI を発症)が解析対象となった。SSIの発症率は低栄養状態の患者の方が高かった(オッズ比[OR]2.31、95%信頼区間[CI]1.75 ~ 3.05)。術前の低栄養状態は、胸腰椎および仙骨部手術を受けた患者において SSI と有意に関連した一方、頸椎手術を受けた患者では有意差は認められなかった。サブグループ解析では、病院ベースの研究(OR 3.16、95%CI 1.84 ~ 5.43)および集団ベースの研究(OR 2.00、95%CI 1.63 ~ 2.46)の両方で同様の結果が認められた。

結論
低栄養状態は、脊椎手術後の SSI 発症のリスク上昇と関連する。術前の栄養状態の改善によって SSI 発生率を下げられるかどうかを調べるために、さらなる質の高い研究が必要である。

サマリーの原文(英語)はこちら

監訳者コメント
低栄養状態と脊椎手術後の SSI 発症リスクについて、今回得られた結果は実際の臨床上でもおよそ頷けるところであろう。低栄養状態からみた SSI 発症率低下のための方法の工夫が、今後も求められる。

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