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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

コロナウイルスの影響により一部、監修者のコメントおよびレーティングを未監修のまま掲載しておりますので、ご了承ください。

細菌の耐性制御における抗菌薬制限の役割:文献のシステマティックレビュー

Role of antimicrobial restrictions in bacterial resistance control: a systematic literature review

M. Chatzopoulou*, L. Reynolds
*University of London, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 125-136


背景
抗菌薬適正使用支援は、細菌の耐性制御の最も基本的な側面の一つと考えられている。多数のイニシアチブの中でも制限的な対策は病院環境で広く実施されている。しかし、その効果の可能性に関するデータの系統的な収集および評価はこれまで行われていない。

目的
病院環境での細菌の耐性化に対する制限的な方針の影響に関して、入手可能なエビデンスを特定・収集・評価すること。

方法
文献のシステマティックレビューを、PubMed/Medline、Embase、Global Health、CINAHL Plus のデータベースを用いて実施した。

結果
検索過程で計 5,555 件の論文を抽出し、29 件の研究を最終解析の対象とした。無作為化研究はなく、採用された観察的デザイン特有の限界が、安全な結論を導くことを妨げている。有益と思われる介入には、βラクタム系薬/ラクタマーゼ阻害薬の合剤を選択する方法での広域スペクトルセファロスポリン系薬の制限、およびフルオロキノロン系薬の制限が含まれている。抗菌薬の制限は、バンコマイシン耐性腸球菌(enterococci)制御の一翼を担う可能性もある一方で、エルタペネムの優先的使用という方法でのカルバペネム系薬管理は、期待される結果を示さなかった。情報価値のある比較分析には複雑な制限が課されていない。病院全体にわたる方針は、リスクの高い診療科に限定される方針よりも優れているかもしれない。カルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)は、単に規定の介入だけでは制御が難しいであろう。

結論
有効と推定される制限的な対策は、主に、不十分な試験の仮説および質の低いエビデンスによるものであった。したがって、この分野でもっとも有益な方針が採用されるように、質の高いシステマティック研究では、主題に関する理解を確認して展開する必要がある。

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抗菌薬管理介入:抗菌薬アレルギーが報告された入院患者における抗菌薬治療の最適化

Antimicrobial stewardship intervention: optimizing antibiotic treatment in hospitalized patients with reported antibiotic allergy

L. Lin*, J.E. Nagtegaal, P.C.A.M. Buijtels, E. Jong
*Meander Medical Centre, the Netherlands

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 137-143


背景
入院患者において報告された抗菌薬アレルギーは、より多くの有害事象、代替抗菌薬の使用、および長期入院と関連するようである。抗菌薬アレルギーが報告された患者のほとんどで表示が打ち消される可能性があるため、抗菌薬管理介入を設定した。

目的
報告された入院患者の抗菌薬アレルギーが、抗菌薬治療に及ぼす影響を明らかにすること、および積極的な抗菌薬管理介入により、推奨される抗菌薬治療からの不必要な逸脱を避けること。

方法
2019 年 3 月から 5 月にオランダの教育病院において、抗菌薬アレルギーが報告された入院患者を介入研究の対象とした。医師は研修を受け、アレルギー表示を理由に推奨される抗菌薬治療からの不必要な逸脱があった場合、電子カルテ内に推奨事項を提示され、その患者を薬物負荷試験の対象とした。

結果
抗菌薬アレルギーが報告された患者 492 例を特定し、入院件数は 558 件を占めた。抗菌薬アレルギーの表示により、推奨される抗菌薬治療が妨げられたのは 93 例であった。これらの患者のうち 68 例が薬物負荷試験の対象となり、42 例が負荷試験を受けた。42 例中 40 例(95%)でアレルギー反応が認められず、推奨される抗菌薬治療が実施された。薬物負荷試験後に2 例(5%)で重度ではない皮膚反応が生じ、代替抗菌薬レジメンを継続した。

結論
抗菌薬アレルギーの表示が報告された患者に、推奨される抗菌薬治療を提供するために、そして抗菌薬再曝露で問題がなければ、表示を打ち消すために、この抗菌薬管理介入を使用することができる。

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新生児集中治療室において多剤耐性エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)のアウトブレイクが疑われる場合の追加制御策としての抗菌薬レジメン変更

Alteration of antibiotic regimen as an additional control measure in suspected multi-drug-resistant Enterobacter cloacae outbreak in a neonatal intensive care unit

V. Eichel*, C. Papan, S. Boutin, J. Põschl, K. Heeg, D. Nurjadi
*Heidelberg University Hospital, Germany

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 144-149


背景
新生児集中治療室(NICU)のルーチンでのスクリーニング監視において、特定のグラム陰性菌種の発生増加は、多剤耐性(MDR)菌の場合、特に顕著であり、選択圧によって引き起こされる可能性がある。

目的
NICU でアウトブレイクが疑われる場合の制御策として経験的抗菌薬レジメンの適用について、その有用性の観点から評価すること。

方法
アウトブレイクの後向き分析において、微生物検査および衛生状態の監視記録により、2017 年 12 月 1 日から 2018 年 3 月 31 日までの症例を特定した。さらに、MDR グラム陰性菌保菌のリスク因子を抽出した。全分離株について全ゲノムシークエンシング(WGS)を実施した。介入を明確にするために、制御策の文書調査および面談を実施した。感染制御策とともに、介入バンドルの一環として臨床的に容認できる場合は、第 3 世代セファロスポリン系薬の投与を回避し、代替抗菌薬に切り替えた。

結果
介入前の期間におけるルーチンでのスクリーニング監視では、第 3 世代セファロスポリン耐性エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)の直腸保菌が 9 例で認められた。感染制御バンドルの実施後、発生率は急速に低下した。WGS 解析より、2 種類の MDR- E. cloacae の伝播が明らかになり、大部分が新規症例であった。MDR グラム陰性菌保菌の罹患密度は、介入前では 1,000 患者・日あたり 7.94、抗菌薬レジメンの変更期間では 1,000 患者・日 あたり 1.68 であった。試験期間に MDR グラム陰性菌による感染症は発生しなかった。

結論
NICU においてアウトブレイクの状況が疑われる場合、MDR グラム陰性菌の発生を迅速に制御するために、選択圧を考慮して抗菌薬レジメンを変更することは、介入バンドルの一環として検討できるであろう。

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集中治療室 3 室における抗菌薬適正使用支援プログラムの影響の変動:2012 年から 2017 年のサーベイランスデータの時系列分析

Variable impact of an antimicrobial stewardship programme in three intensive care units: time-series analysis of 2012-2017 surveillance data

S. Abbara*, M. Domenech de Cellès, R. Batista, J.P. Mira, C. Poyart, H. Poupet, A. Casetta, S. Kernéis
*INSERM, France

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 150-157


背景
1,500 床の当院において 2012 年 と 2016 年に、処方前の許可制および処方後のレビューとフィードバックを連続的に実行した。

目的
集中治療室(ICU)3 室において、処方前の許可制および処方後のレビューとフィードバックが、カルバペネム系薬剤の使用と緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の耐性レベルに与える影響を評価した。

方法
カルバペネム系薬剤の使用(1,000 病床日あたりの 1 日規定用量[DDD])と緑膿菌の耐性(イミペネムおよび/またはメロペネムに非感受性[中等度の感受性+耐性]の割合)について、コントロールされた分割時系列手法を用いて分析した。2012 年から 2015 年(処方前の許可制)と 2016 年から 2017 年(処方前の許可制+処方後のレビューとフィードバック)の 2 つの期間を比較した。モデルは基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌の年間出現率に基づいて調整した。

結果
すべての ICU で処方前の許可制の期間にわたってカルバペネムの使用は安定しており、ICU1 でのみ、処方前の許可制+処方後のレビューとフィードバックの期間にわたって有意な勾配の変化があった(β2 = −12.8、95%信頼区間[CI]−19.5 ~ −6.1)。全 3 室において処方前の許可制の期間中、イミペネムからメロペネムへの切り替えがあった。緑膿菌の耐性は、ICU1 と ICU2 では試験期間にわたって安定しており、ICU3 では処方前の許可制+処方後のレビューとフィードバックの期間にわたって有意に低下した(β2 = −0.18、CI −0.3 ~ −0.03)。

結論
実際の状況において、単独のチームが主導する同一の抗菌薬適正使用支援プログラムを実施したところ、処方後のレビューとフィードバックの影響は ICU 間で均一ではなかった。抗菌薬適正使用支援プログラムの影響を推進する因子は、それらの費用効率が高いと証明できうる場所を標的にするため、比較可能な環境で実際の状況のデータを介してさらに評価を受けるべきである。

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監訳者コメント
24 床、10 床、16 床の 3 つの ICU ユニットにおける抗菌薬適正使用支援プログラムの実施と耐性の割合を検討した論文である。「処方前の許可制」が行われているところに「処方後のレビューとフィードバック」を追加し、それぞれの期間での緑膿菌の耐性の割合を比較しているが、変化なし ~ 低下となっていた。介入の遵守率が不明であるが、この施設では、処方前の許可制がよく機能しているのではと思われた。

外科集中治療における抗菌薬の意思決定:定性分析

Antibiotic decision making in surgical intensive care: a qualitative analysis

K. Rynkiewich*, D. Schwartz, S. Won, B. Stoner
*Washington University in St. Louis, USA

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 158-164


背景
病院、特に外科専門領域および集中治療室において抗菌薬は大量に使用されている。外科医と集中治療医による抗菌薬使用に、抗菌薬適正使用支援プログラム(ASP)は、次第に介入しつつある。しかし、重症外科患者が綿密な観察下に置かれうる病院診療の区域である、外科集中治療室(SICU)における抗菌薬の意思決定を特徴づけるものに関する情報は限られている。

目的
SICU における抗菌薬の意思決定を特徴づけるものを調査すること。

方法
アメリカの教育病院 2 施設で、計 160 時間の参与観察および 10 件の半構造化面接を実施した。データはテーマごとのコード化を用いて分析した。

結果
抗菌薬使用に関して、SICU の診療の 3 つの重要な特徴を明らかにした。(1)物理的な近接は SICU の臨床医に患者の状態の変化を強く認識させる、(2)患者の状態の情報伝達は SICU の臨床医による積極的な関与に依存している、(3)SICU の臨床医は抗菌薬の決定に関して、論争となり変動しうる自己決定権を有している。

結論
SICU における抗菌薬の意思決定は、患者症例に対するさまざまなレベルの物理的な近接と自己決定権を伴う複数の臨床医のチームを含む複雑なプロセスである。本研究により、SICU の臨床医のチームは患者症例に対する物理的な近接が増えているが、抗菌薬の決定に関する自己決定権はほとんどないことが確認された。これらの特徴が考慮されない場合、抗菌薬適正使用支援の介入によって、SICU での大量の抗菌薬使用への対処の成功が損なわれる可能性がある。

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監訳者コメント
SICU における外科医と集中治療医の抗菌薬の意思決定を特徴づける因子を観察と聞き取りにより調べた質的研究論文である。得られた結果は、外科医と集中治療医の特性を表しているものであった。

ブラジルの病院における抗菌薬使用量のグローバル時点有病率調査

Global point prevalence survey of antimicrobial consumption in Brazilian hospitals

A.P.M. Porto*, H. Goossens, A. Versporten, S.F. Costa, on behalf of the Brazilian Global-PPS Working Group
*Universidade de São Paulo, Brazil

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 165-171


背景
抗菌薬の不適切な使用と抗菌薬耐性率の上昇は、世界中で課題の 1 つとなっている。ブラジル政府によって抗菌薬適正使用支援が推奨されているにもかかわらず、ブラジルの病院における抗菌薬使用に関するデータは不足している。本研究の目的は、ブラジルの病院 18 施設において抗菌薬使用の点有病率調査を実施することであった。

方法
ブラジルの病院 18 施設は、2017 年に抗菌薬の使用量と耐性に関するグローバル時点有病率調査(Global-PPS)を実施した。本研究では抗菌薬の投与を受けている入院患者を登録した。データの収集は抗菌薬処方に関する詳細も含めた。データ入力、バリデーションおよび報告にはウェブベースのプログラムを使用した。Global-PPS はアントワープ大学が開発し、bioMérieux 社が資金援助した。

結果
1,801 例の患者が評価され、そのうち 941 例(52.2%)が抗菌薬の投与を受けていた。400 例(42.5%)の患者は 2 剤以上の抗菌薬の投与を受けていた。1,317 の全身使用の抗菌薬のうち、514(39%)は市中感染症に、533(40.5%)は医療関連感染症に、248(18.8%)は予防的使用のため処方された。最も高頻度に使用された抗菌薬はセフトリアキソン(12.8%)、メロペネム(12.3%)、バンコマイシン(10.3%)であった。肺炎または下気道感染症は最もよくみられる感染部位であった(29.2%)。概して、抗菌薬は主に非経口的に(91%)、また経験的に(81.2%)投与されていた。

結論
ブラジルの病院 18 施設において、高い抗菌薬使用率が認められた。抗菌薬は主に経験的に処方されていた。静注広域抗菌薬は最も高頻度に使用された抗菌薬であり、漸減の方針の強化が必要であることを示している。本 Global-PPS のデータは、抗菌薬適正使用支援プログラムと介入のモニタリングに非常に役立つ可能性がある。

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監訳者コメント
グローバル時点有病率調査(GPPS)は、世界的に行われているスナップショットサーベイランスの手法である。一般的なサーベイランスで行われる連続したデータの収集・解析ではなく、ある時点での状況を定期的に繰り返しモニターし比較することで、傾向を知ることができる。Global PPS のホームページ(http://www.global-pps.com/)に手法などの詳細が掲載されている。

韓国の病院における抗菌薬適正使用支援プログラムの現状:2018 年全国調査の結果

Current status of antimicrobial stewardship programmes in Korean hospitals: results of a 2018 nationwide survey

B. Kim*, M.J. Lee, S.M. Moon, S.Y. Park, K-H. Song, H. Lee, J.S. Park, M.S. Lee, S-M. Choi, J-S. Yeom, J.Y. Kim, C-J. Kim, H-H. Chang, E.S. Kim, T.H. Kim, H.B. Kim, Korea Study Group for Antimicrobial Stewardship (KOSGAP)
*Hanyang University College of Medicine, Republic of Korea

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 172-180


背景
抗菌薬適正使用支援プログラム(ASP)は、抗菌薬耐性に取り組む上で不可欠の戦略であることが示唆されている。

目的
韓国の病院における ASP の現状を調べること、適切な ASP の実施における問題と課題を明らかにすること、またより効果的な ASP の方針を作成するための基準を提供すること。

方法
米国疾病対策センター(CDC)の「Seven Core Elements of Hospital Antibiotic Stewardship Programs」に基づいて、以前2015 年に韓国で用いられた ASP に関する質問票を改定して質問票を作成した。ASP に参加している医師、例えば感染症専門医(IDS)、小児 IDS、および感染制御部門長などを対象とした。本調査には、ASP に関係する医師を病院当たり 1 名のみ参加させた。

結果
調査の回答率は 88.4%(95 施設中 84 施設)であった。ASP に参加している医療スタッフの人数は中央値で 3 名(四分位範囲[IQR]1 ~ 5)で、そのほとんどが IDS(中央値 2 名、IQR 1 ~ 2)であった。病院のうち、わずか 6.0%(84 施設中 5 施設)が常勤の ASP担当者を有していた。指定した抗菌薬を制限する方策は、韓国の病院で広く実施されていた(88.1%、84 施設中 74 施設)一方で、不適切な長期の抗微生物薬使用に対する介入、および抗微生物薬を非経口投与から経口投与に切り替える方策を実施していた病院の割合は、それぞれわずか 9.5%(84 施設中 8 施設)および 1.2%(84 施設中 1 施設)であった。韓国の病院において、時間、人員、および適切な代替策が不足していることが、ASP の確立にとって大きな障害であると認識されていた。

結論
韓国の病院における ASP は、主として 1 ~ 2 名の IDS によって実施されており、プログラムの内容のほとんどは指定した抗微生物薬を制限する方策であった。韓国の病院において適切な ASP が実施されるために、全国規模での支援が必要である。

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監訳者コメント
韓国における ASPの現状である。ASP に薬剤師が関与している病院が約 20%とかなり低いようである。また感染症専門医は 1 つの病院につき1 ~ 2名常勤しているようである。人材の不足はどこも同じである。

オランダの病院における医療関連感染症の有病率および抗微生物薬使用の実施率にみられる傾向:10 年にわたる全国点有病率調査

Trends in prevalence of healthcare-associated infections and antimicrobial use in hospitals in the Netherlands: 10 years of national point-prevalence surveys

T.E.M. Hopmans*, E.A. Smid, J.C. Wille, T.I.I. van der Kooi, M.B.G. Koek, M.C. Vos, S.E. Geerlings, S.C. de Greeff
*National Institute for Public Health and the Environment (RIVM), the Netherlands

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 181-187


背景
オランダの病院における医療関連感染症(HCAI)の有病率および抗微生物薬の使用状況は、病院の自主参加による隔年の全国点有病率調査(PPS)によって評価されてきた。

目的
2007 年から 2016 年における HCAI 患者の存在率、リスク因子、および抗微生物薬使用にみられる傾向を記述すること。

方法
PPS では、調査日における患者の特性、医療デバイスおよび抗微生物薬の使用、ならびにHCAI の有病率が、日帰り病棟および精神科病棟を除いたすべての入院患者について報告されている。解析は、直線回帰および(多変量)ロジスティック回帰を用いて、病院内の患者クラスターを考慮して実施した。

結果
PPS のデータは、患者 171,116 例について報告されていた。入院中に発症した HCAI 患者の年間存在率は、2007 年の 6.1%から 2016 年には 3.6% に低下していた。傾向についての補正オッズ比(OR)は 0.97(95%信頼区間[CI]0.96 ~ 0.98)であった。最も顕著な傾向は、手術部位感染症(1.6% ~ 0.8%、OR 0.91[95%CI 0.90 ~ 0.93])および尿路感染症(2.1% ~ 0.6%、OR 0.85[95%CI 0.83 ~ 0.87])で認められた。2014 年以降、入院時の HCAI も記録されるようになり、約 1.5%と一定した有病率を示していた。入院期間の平均は、10 日から 7 日に短縮していた。抗微生物薬による治療を受けた患者の割合は、31%から 36%に上昇していた(OR 1.03[95%CI 1.02 ~ 1.03])。

結論
2007 年から 2016 年にわたり隔年で実施されていたPPS のデータから、入院中に発症した HCAI 患者の存在率は低下していたこと、入院時における HCAI 患者の発生率は一定であったことが示されている。入院中に発生した HCAI の補正 OR が 0.97 であったことは、発生率の真の低下は年間約 3%であったことを示唆している。

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監訳者コメント
PPS を継続的に行うことで、様々な指標のトレンドを明らかにすることができる。耐性菌のトレンドについてもデータが示されているが、もともとオランダは耐性菌の分離率が低く(CRE が腸内細菌科細菌の0.5%、3 世代セファロスポリン系薬耐性が腸内細菌科細菌の 5.8%、MRSA が黄色ブドウ球菌の0.7%!)、有意な減少は認めなかったとのことである。

救急部における抗菌薬処方に経験的治療の指針が及ぼす影響

Impact of an empiric therapy guide on antibiotic prescribing in the emergency department

K.M. Galanter*, J. Ho
*San Leandro Hospital, USA

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 188-192


今回の準実験研究では、救急部における経験的治療の指針の実施前後の各 3 か月間、適切な抗菌薬処方について比較した。米国感染症学会(Infectious Diseases Society of America;IDSA)ガイドラインに基づく全体的な抗菌薬処方の適切性は、経験的治療の指針の実施後には20.5%有意に増加した(P < 0.001)。市中感染肺炎および蜂窩織炎の処方は、それぞれ33.1%(P < 0.001)、35.5%(P = 0.002)改善した。広域スペクトル抗菌薬の使用率は13.6%減少した(P < 0.001)。介入後、処方者の 90.5%が、IDSA ガイドラインに基づく適切な処方を少なくとも 75%達成した(P < 0.001)。経験的治療の指針の実施後、適切な抗菌薬処方および広域スペクトル抗菌薬の使用率は有意に改善した。

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監訳者コメント
短報であるが、救急外来における抗菌薬治療ガイドの具体的な内容が記載されているので参考にされると良いだろう。

薬は効かない:抗菌薬耐性に関する世論の測定および世論への影響を図る演劇教育の評価

The drugs don’t work: evaluation of educational theatre to gauge and influence public opinion on antimicrobial resistance

R. Ahmed*, A. Bashir, J.E.P. Brown, J.A.G. Cox, A.C. Hilton, C.E. Hilton, P.A. Lambert, E. Theodosiou, J.Q. Tritter, S.J. Watkin, T. Worthington
*Aston University, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 193-197


抗菌薬耐性(AMR)に関する公衆の認識の向上は、効果的な抗菌薬管理対策における重要な要素である。「薬は効かない」と題した劇の実演を通して、AMR について公衆の関心を引くために、専門家委員会とともに演劇教育を使用した。AMR に関する観客の知識と理解を、演劇前後の質問票により評価した。演劇の実践および専門家委員会メンバーとの議論により、抗菌薬の誤用および処方など AMR に関する観客の知識と理解が有意に改善した。演劇教育は有益な学習体験を提供するとともに、公衆衛生上の重要なメッセージの普及を図る公衆参加による画期的な方法である。

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監訳者コメント
抗菌薬耐性(AMR)は世界的な問題であるが、一般人が AMR の重要性を理解し、さらに行動変容にまで繋げることは至難の業である。これまでパンフレット、ポスター、ビデオ、そしてソーシャルメディアを通じて、情報発信してきたが決して十分な効果が得られているとは言えない。一方、演劇教育はこれまで HIV や喫煙で実施された実績がある。本論文では演劇により AMR を理解してもらう試みを実施している。シナリオは 3 部構成で、①大半がウイルス性の呼吸器感染症にもかかわらず一般人が抗菌薬処方を期待する、②抗菌薬の適正使用にむけた取り組み、③不必要あるいは不適切な抗菌薬使用による耐性菌感染症発症の結末、そして演劇終了後に専門家と AMR と抗菌薬適正使用について議論する、という構成である。演劇の導入により一般人の理解が進み、行動変容につながるという結論である。


レーティング:★

日本の新生児集中治療室における選択された感染制御戦略の実施状況に関する調査

A survey of the implementation status of selected infection control strategies in neonatal intensive care units in Japan

S. Suga*, T. Hoshina, S. Ichikawa, S. Araki, K. Kusuhara
*University of Occupational and Environmental Health, Japan

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 200-206


背景
感染制御戦略はすべての新生児集中治療室(NICU)で実施されているが、戦略の詳細は施設によって異なるようである。本調査の目的は、日本の NICU における感染制御戦略の現在の実施状況を調査すること、および新生児病棟におけるアウトブレイク予防のための適切な戦略を明らかにし、推奨することであった。

方法
本調査では、選択された感染予防・制御策(積極的サーベイランス培養およびスタンダードプリコーション[標準予防策])について、日本周産期・新生児医学会に登録された日本の NICU/新生児病棟 453 施設を対象に、2018 年 5 月に質問票を用いて調査を行い、現在の実施状況および方法を記録した。

結果
回答率は 48.1%(レベル Iの施設:25.5%、レベル II の施設:55.9%、レベル III の施設:64.2%)であった。サーベイランス培養は週 1 回実施されており、ほとんどの病棟ですべての細菌を対象に行われていた。過去 5 年間にアウトブレイクを経験したレベル III の施設の割合は、レベル II の施設よりも有意に高かった(55% 対 27%、P = 0.0003)。しかし、マスク着用が推奨されている頻度は、レベル III の施設(55.7%)の方がレベル II の施設(67.9%)よりも低かった。NICU におけるアウトブレイクの原因病原体として最も高頻度に報告されたのは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)であった。

結論
日本の新生児病棟における感染予防・制御策の実践は、病原体に対する積極的サーベイランス培養の実施およびスタンダードプリコーション(標準予防策)の使用に関して、幅広いばらつきが認められた。国内ガイドラインおよびエビデンスに基づく推奨が、日本の新生児病棟における現行の感染予防・制御策の実践を合理化し、標準化するために必要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
NICU は過去においてエビデンスよりは慣習に囚われた感染対策が実施されていた。不必要な靴の履き替え、ガウン、手袋、マスクなどであったが、時代と共にその慣習は、医学的根拠に基づいた対策に変わってきた、本論文では NICU の感染対策が均一化されていない現状を報告している。日本の NICU における根本的な問題は、これらのソフト的な感染対策よりも、ハード面に問題がある。すなわち、1 人あたりのベッド周囲の面積の狭隘さである。狭さの故に多くの NICU のベッド回りには、さまざまな物品が整理整頓できずに置かれている光景を目の当たりにするにつけ、広い面積と十分なベッド間隔の必要性を痛感する。

レーティング:★

病院における潜在的病原体の媒介物としての携帯電話:微生物叢の分析により隠れた汚染物質が明らかに★★

Mobile phones as fomites for potential pathogens in hospitals: microbiome analysis reveals hidden contaminants

R. Simmonds*, D. Lee, E. Hayhurst
*The University of South Wales, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 207-213


背景
臨床環境で用いられているスマートフォンは潜在的に病原性細菌を保有しており、このことが感染リスクをもたらす可能性がある。これまでの複数の研究は、培養に基づく方法に依拠していた。

目的
病院スタッフのスマートフォンにおける微生物汚染の量および多様性について、培養に基づく方法と培養を用いない方法によって明らかにすること。抗菌薬耐性を有する潜在的病原体の存在率を明らかにすること。病院スタッフと対照群の携帯電話について微生物集団を比較すること。

方法
病院スタッフ 250 名および対照群の参加者 191 人のスマートフォンから、スワブ検体を採取した。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および腸内細菌科細菌の分離株について、抗菌薬耐性プロファイルを明らかにした。スワブ検体を、スタッフが勤務する病院内区域に従って分類し、DNA を抽出した。携帯電話の微生物集団の特性を、Illumina MiSeq メタバーコーディング*パイプラインを用いて明らかにした。

結果
ほとんどすべての病院スタッフ(99.2%)のスマートフォンが、潜在的病原体によって汚染されており、細菌のコロニー形成単位(CFU)は病院スタッフの携帯電話の方が対照群より有意に高かった。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)およびバンコマイシン耐性腸内細菌科細菌(VRE)は、病院スタッフの携帯電話でのみ検出された。メタバーコーディング*により、培養に基づく方法と比べて、グラム陰性菌による汚染がはるかに多いこと、また汚染の多様性がはるかに高いことが示された。病院スタッフ群では、バチルス(Bacillus)属菌が有意に多かった。

結論
本研究から、臨床環境におけるスマートフォンの使用増加に伴う潜在的リスクを低減するための感染制御策を検討する必要性が強く示されており、また環境のスワブ採取の場合の培養に基づく方法の限界が強調されている。

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監訳者コメント
IT の発達により、患者確認から電子カルテ入力にいたるまで、医療安全の推進と相まって、多くの病院スタッフが入力端末としてスマートフォンを持ち歩く状況が発生している。また、医師は個人のスマートフォンを携行し、端末を利用して情報検索をしている実情があり、本論文の結果は予測されたことであり、驚くにはいたらない。実際、スマートフォンを毎日清拭する医療スタッフは 10%以下で、28.4%が週 1 回、62.0%は一度も拭いたことがなかった。また、医療スタッフのスマートフォンのコントロール画面表面の菌数は3 〜 5倍であった。また、1 日平均 200 回程度の画面への接触があり、常に手の汗や有機物を栄養源にして細菌が定着増殖することとなる結果、VRE や MRSA などの耐性菌のリザーバーとなる可能性がある。過去には聴診器が耐性菌のリザーバーになる可能性があるとして問題となったが、次はスマートフォンである。
*訳注)PCR 法で DNA を遺伝子増幅後、次世代シーケンサーを使用して塩基配列を決定し、さまざまな細菌の DNA の配列を解析し、対象物に存在する細菌を同定する方法


レーティング:★★

心肺バイパスによる心臓手術後の播種性マイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)感染症の診断・治療・予防のための International Society of Cardiovascular Infectious Diseases ガイドライン

International Society of Cardiovascular Infectious Diseases Guidelines for the Diagnosis, Treatment and Prevention of Disseminated Mycobacterium chimaera Infection Following Cardiac Surgery with Cardiopulmonary Bypass

B. Hasse* M.M. Hannan, P.M. Keller, F.P. Maurer, R. Sommerstein, D. Mertz, D. Wagner, N. Fernández-Hidalgo, J. Nomura, V. Manfrin, D. Bettex, A. Hernandez Conte, E. Durante-Mangoni, T.H.-C. Tang, R.L. Stuart, J. Lundgren, S. Gordon, M.C. Jarashow, P.W. Schreiber, S. Niemann, T.A. Kohl, C.L. Daley, A.J. Stewardson, C.J. Whitener, K. Perkins, D. Plachouras, T. Lamagni, M. Chand, T. Freiberger, S. Zweifel, P. Sander, B. Schulthess, J.E. Scriven, H. Sax, J. van Ingen, C.A. Mestres, D. Diekema, B.A. Brown-Elliott, R.J. Wallace Jr., L.M. Baddour, J.M. Miro, B. Hoenl, the M. chimaera ISCVID Investigators and ISCVID Executive Committee
*University Hospital and University of Zurich, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 214-235


心肺バイパス術後の患者において、マイコバクテリア感染症に関連した罹病率および死亡率は高く、これらの患者の診断・予防・治療の国際的な指針を作成するために、専門家のコンセンサスに基づく見解の必要性が増している。本稿では、International Society for Cardiovascular Infectious Diseases(ISCVID)が、予防(病院疫学の分野)、臨床上の管理(感染症専門医、心臓外科医、眼科医、その他)、検査室診断(微生物学者、分子診断)、機器管理(潅流技師[パーフュージョニスト]、心臓外科医)、および公衆衛生の面から作成した見解を述べる。

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監訳者コメント
M. chimaeraM. intracellulareM. avium に近縁の遅発育抗酸菌であり、心臓血管外科手術の体外循環に用いられる冷温水装置の汚染によって、創感染、播種性感染の患者が多発したことで知られる。今回のガイドラインは本菌による感染症の診断・治療・予防の多方面にわたってまとめられたものであり、先進的な試みといえよう。なお本菌の正確な同定は、遺伝子同定を用いても容易ではなく、全ゲノム解析による近縁種との系統関係を解析した検討においても、種としての独立性に疑問を呈する意見がある。

レーティング:★


冠動脈バイパス術前にチカグレロルまたはクロピドグレルの投与を受けた患者における感染性合併症

Infectious complications in patients receiving ticagrelor or clopidogrel before coronary artery bypass grafting

M. Dalén*, F. Biancari, E-CABG Study Group Collaborators
*Karolinska Institutet, Sweden

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 236-238


抗血小板薬のチカグレロルは殺菌活性を有することが最近確認されてきており、in vitroin vivo のマウスモデルで実証され、さらなる臨床試験が必要とされている。本研究の目的は、チカグレロルまたはクロピドグレルを術前に投与された患者において、冠動脈バイパス術後の感染性合併症を評価することであった。多施設共同試験において、単独の冠動脈バイパス術より前にチカグレロルまたはクロピドグレルを投与されたすべての成人患者を対象として選定した。傾向スコアマッチングを使用した。評価項目は、すべての胸骨創感染症、深部胸骨創感染症、および術後に院内で使用された全抗菌薬であった。含まれた 2,311 例の患者のうち、1,293 例(55.9%)がクロピドグレルの、1,018 例(44.1%)がチカグレロルの術前投与を受けた。全体の解析および傾向スコアマッチング解析の両方において、チカグレロル群での感染性合併症の発生率は、クロピドグレル群と同程度であった。我々の知見は、冠動脈バイパス術を受けた患者において、チカグレロルの臨床的に意義のある殺菌効果を裏付けるものではなかった。

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監訳者コメント
先行研究によると、チカグレロルはブドウ球菌を含む主にグラム陽性球菌に殺菌能を有するとされている。ただし試験管上の最小発育阻止濃度に比べ、通常投与量で達成される血中濃度は低いことが判明していた。本研究のアウトカムは胸骨創感染であり、微生物の種類は問わない。また術前 2 日以内にチカグレロル、クロピドグレルを投与していた患者はさらに限定される。対象患者、アウトカムの対象としての微生物と感染症の種類、併用していた抗菌薬の種類などを変更した今後の解析が待たれる。

不十分な退院後追跡調査による手術部位感染症の過少報告を減らすための医療データベースの使用

Use of health databases to deal with underreporting of surgical site infections due to suboptimal post-discharge follow-up

C. Gagliotti, R. Buttazzi, A. Ricciardi, E. Ricchizzi, G. Lanciotti, M.L. Moro
Agenzia sanitaria e sociale regionale Emilia-Romagna, Italy

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 239-242


本研究では、イタリアの一地域において手術部位感染症(SSI)に関して実施されている特別なサーベイランス(SIChER)とその他のデータソースを併せ、さらに少数の症例を対象としたレビューを統合した、統合サーベイランスについて述べる。術後のフォローアップに関し、退院データ、微生物検査データおよび救急部のデータベースから追加の情報を取得した。これらのデータに基づき、患者 76 例をSSIの可能性のある症例として再分類し、医療トラストの代表者にリバイスをしてもらった。最終的に SSI の新規症例として 45 例が確認され、これにより SSI 発生率は 1.13%から 1.45%に上昇した。本研究で提案した方法は、正確であり、経時的に持続可能なようである。

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監訳者コメント
SSI の発生率の見積もりは、複数のデーターベースを併用した細かな解析によって精密になり、増えることは予想できる。この場合、データーベースの情報のどの部分を組み入れるかという基準、および組み入れた例が実際に妥当であるかという検証が、重要になってくるであろう。大きな地域よりも、限られた地域や、連携した医療機関のグループを扱うことの方が、このような取り組みにより適した規模かもしれない。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.