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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

コロナウイルスの影響により一部、監修者のコメントおよびレーティングを未監修のまま掲載しておりますので、ご了承ください。

コロナウイルスの無生物表面上での存続および殺生物製剤による不活化 Persistence of coronaviruses on inanimate surfaces and their inactivation with biocidal agents

G. Kampf*, D. Todt, S. Pfaender, E. Steinmann
*University Medicine Greifswald, Germany

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 246-251

現在、新型ヒトコロナウイルス(SARS‐CoV‐2)の出現は、ヒトにおいて重症呼吸器感染症をもたらすとして世界的な健康上の懸念となっている。ヒト‐ヒト間伝播では、2 ~ 10 日の潜伏期間があると報告されており、飛沫、汚染された手指または表面を介して感染の拡大が進む。そこで、本稿では、ヒトおよび動物のコロナウイルスの無生物表面上での存続、ならびに化学的消毒に使用される(例えば、医療施設における)殺生物製剤による不活化対策について入手可能なあらゆる情報に関する文献をレビューした。22 件の研究の分析では、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス、中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス、流行性ヒトコロナウイルスなどのヒトコロナウイルスは、金属、ガラス、プラスチックのような無生物表面上で最長 9 日間存続しうるが、62 ∼ 71%エタノール、0.5%過酸化水素、または 0.1%次亜塩素酸ナトリウムによる表面消毒法により 1 分以内で効果的な不活化が可能である。その他の殺生物製剤(0.05 ∼ 0.2%塩化ベンザルコニウムまたは 0.02%クロルヘキシジンジグルコン酸塩など)の効果は低い。SARS‐CoV‐2 に対して使用できる特定の治療法はないので、進行中のアウトブレイクの阻止およびこの新型の感染性ウイルスの制御には、早期封じ込めとさらなる拡大の防止がきわめて重要であろう。

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「一律の方法を万人に適用するアプローチ」からオーダーメイドの感染予防へ From ‘one size fits all’ to personalized infection prevention

P. Gastmeier*
*Charité - University Medicine Berlin, Germany

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 256-260

100 年前には、多くの医療関連感染症(HAI)は外因性のものであり、これは、他の患者、医療従事者、または病院環境由来の微生物によって HAI が引き起こされたことを意味する。患者自身の微生物叢由来の内因性微生物に起因する割合は低かった。その間、多くの改善が成されてきた。患者の診断および治療に使用される器具のほとんどが、今では使い捨てのものである。それ以外の器具の再処理に使用される消毒法および滅菌法は、安全度が非常に高く(少なくとも高所得国では)、器具による交差伝播はごくまれな事象である。手指衛生も実質的に改善している。ドイツでは過去 12 年間に擦式手指消毒薬の消費が増加し、100%を超えている。過去の対策では、患者の疾患や病原体に関係なく、すべての患者にそれらを適用せざるを得ないため、「一律の方法を万人に適用するアプローチ」が妥当となる。
今日では、外因性 HAI の割合は低いとわれわれは理解している。大多数の HAI は内因性のものである。もちろん、微生物の伝播を予防するために、基本的または標準的な感染制御策に主眼を置くことは今なお必要である。だが、現在、大多数の HAI は内因性のものであるため、対策として、微生物伝播の予防だけでなく、感染予防にも重点的に取り組む必要がある。そこで、今こそオーダーメイドの感染予防アプローチが妥当となり、その実例を提示する。

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3 次病院における環境清掃法の効果を評価するための新規蛍光マーカーと環境表面培養の比較評価 Comparative evaluation of a novel fluorescent marker and environmental surface cultures to assess the efficacy of environmental cleaning practices at a tertiary care hospital

A. Dewangan*, U. Gaikwad
*All India Institute of Medical Sciences, India

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 261-268

背景
病院環境における多剤耐性菌伝播の制御のために、高頻度接触面の清掃はきわめて重要な措置である。とくに資源の乏しい施設では、簡便に実施可能で、信頼性のある技術により清掃方法が科学的に監視されれば、その方法はもっとも効果的になるであろう。

目的
病院環境の高頻度接触面の清掃の評価において、既存の市販蛍光マーカーシステムに匹敵する新規蛍光マーカーを特定するとともに、その有効性を評価すること。

方法
洗浄目的に使用される液体洗浄剤を、新規蛍光マーカーとした。さまざまな患者治療区域の高頻度接触面 250 カ所における清掃前後のサンプリングを、新規蛍光マーカーと好気性菌コロニー数を用いて実施した。2 つの方法間の一致率を Cohen のκ係数により評価し、比較した。微生物学的方法に対して、新規蛍光マーカー法の感度、特異度、陽性適中率、陰性適中率を算出した。

結果
2 つの方法間の全体的な一致率は 79.6%で、一致性は良好(κ = 0.60)であることが認められた。蛍光マーカー法の感度は 79.58%(95%信頼区間[CI]72 ~ 85.85%)、特異度は 79.63%(95%CI 70.79 ~ 86.78)、陽性適中率は 83.70%(95%CI 76.38 ~ 89.50)、陰性適中率は 74.78%(95%CI 65.83 ~ 82.38)であった。

結論
資源の乏しい施設での毎日の環境清掃法の評価において、本研究で使用された蛍光マーカーは、市販の蛍光マーカーに対して簡便かつ費用対効果の高い代替品となることが証明された。今回の蛍光マーカーの使用が一般化される前に、このマーカーと既存の蛍光マーカーを直接比較するさらなる研究を推奨する。

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ノルウェーの病院における患者隔離による財務費用および一時的費用 Financial and temporal costs of patient isolation in Norwegian hospitals

H. Haugnes*, P. Elstrøm, O. Kacelnik, U. Jadczak, T. Wisløff, B.F. de Blasio
*Norwegian Institute of Public Health, Norway

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 269-275

背景
抗菌薬耐性菌の保菌患者または感染患者の隔離は、ノルウェーで実施される感染制御策の一つとして確立している。この隔離費用に関して、地域の信頼性のあるデータが必要である。

方法
3 つの急性期総合病院の感染症病棟において、医療の観点からのミクロ原価計算法による研究を、直接観察、職員登録、面接、調査データを用いて実施した。

結果
隔離による 1 日追加費用は、非寝たきり患者では 56.8 ユーロ(95%信頼区間[CI]42.4 ~ 72.7)、寝たきり患者では 87.5 ユーロ(95%CI 48.3 ~ 129.6)であった。これら合計費用のうち、労働費が最大の割合を占め(71 ~ 72%)、次いで、個人防護具費(21 ~ 23%)、廃棄物管理費(6 ~ 8%)であった。全体で、隔離特有の業務量は、非寝たきり患者では 1 日あたり 65 分、寝たきり患者では 1 日あたり 95 分で、主に、看護師による延長時間が占められた寝たきり患者のより高額な隔離費用は、主に個人の衛生の実践に使用される資源によるものであった。隔離されていた患者の退院後の病室清掃による 1 回限りの費用は、平均 14.0 ユーロ(95%CI 10.7 ~ 17.6)であった。

結論
本研究は、病院における患者隔離による資源の使用に関して新たな詳しいエビデンスを提示するものであり、衛生上の予防措置に対する今後の評価に情報を提供するために使用が可能である。今回の結果は、隔離患者が多い病棟への看護職員の追加配置を検討すべきであることを示唆している。

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造血細胞移植患者の病室における環境清浄度の微生物学的評価:国際細胞治療学会および欧州血液骨髄移植学会の合同認定委員会(JACIE)基準の実施 Microbiological evaluation of environmental cleanliness in haematopoietic cell transplant patient rooms: implementing JACIE standards

A. Zeneli*, M. Petrini, F. Foca, M. Bernabini, S. Ronconi, S. Montalti, E. Pancisi, V. Soldati, M. Golinucci, G.L. Frassineti, M. Altini
*Istituto Scientifico Romagnolo per lo Studio e la Cura dei Tumori (IRST) IRCCS, Italy

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 276-282

背景
造血細胞移植患者の病室の病原体の抑制により病院感染の予防を図るために、環境衛生はもっとも重要な対策の一つである。本研究は、JACIE による微生物学的モニタリング要件を受けてデザインし、予防隔離室の環境衛生を評価することを目的とした。

方法
好中球減少度が異なる患者の病室において、静止条件および作動条件で対象表面から採取した微生物量、ならびに受動的・能動的空気サンプルの微生物量の算出により環境の清浄度を評価した。さらに、微生物量が隔離予防策により影響されるかどうかも評価した。

結果
清浄度の失敗率は、対象表面については静止条件では 0%であったのに対して、作動条件では 37%であり、受動的・能動的空気サンプルについては 13%であった。好中球減少度が異なる患者の病室において失敗率の差が認められた(表面ではP = 0.036、受動的空気サンプルではP = 0.028)。感染症と微生物量との相関はみられなかった。

結論
病院衛生のモニタリングプログラムの強化と統合した微生物学的評価は、造血細胞移植患者における感染制御策の推進のために極めて重要な情報をもたらす。これらの結果は、臨床施設における清浄度評価のための厳格な基準の設定、および妥当性の確認を行う必要があることを強調するものである。

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5 つの高齢者向け長期ケア施設における銅合金接触面の特異的抗菌活性 Specific antibacterial activity of copper alloy touch surfaces in five long-term care facilities for older adults

M. Colin*, E. Charpentier, F. Klingelschmitt, C. Bontemps, C. De Champs, F. Reffuveille S.C. Gangloff
*Université de Reims Champagne-Ardenne, France

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 283-292

背景
医療関連感染症に関与する病原体は環境内、とくに高頻度接触面に急速に拡散し、この接触面は病原体のリザーバとなる可能性がある。

目的
本研究の目的は、フランスの 5 つの長期ケア施設において、接触面に自然発生する細菌汚染について調査するとともに、銅表面と対照表面から回収される細菌群を比較することである。

方法
1,300 超の表面から検体を採取した。接触面に定着する培養可能な細菌群の全体像を得るために、採取した細菌を同定した。さらに、特定の寒天培地を用いて溶血性のコロニーおよび推定病原体をスクリーニングし、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法により同定した。全体で 3,400 超のコロニーを分析した。

結果
接触面に優勢に存在したのはブドウ球菌(Staphylococcus)属およびミクロコッカス(Micrococcus)属の 2 種類で、それぞれ、対照表面の 51.8%、48.0%に発生した。バイオバーデンが相対的に低値のこれらの施設において、銅表面では、ブドウ球菌属、レンサ球菌(Streptococcus)属、ロゼオモナス(Roseomonas)属の 3 種類の発生頻度が効果的に低下した。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)などの病原性菌種がきわめて少数のサンプルで認められた。さらに、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌が、5 つの対照表面および 1 つの銅表面で認められた。

結論
医療施設の接触面の汚染は、施設のあらゆる場所で細菌の拡散源となりうる。今回の現場研究では、汚染頻度のほかに特定の細菌群によるバイオバーデンも、銅合金表面上で低下することが示された。

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環境汚染は患者に関連する特定の特徴によって説明可能か? Can environmental contamination be explained by particular traits associated with patients?

B. Pilmis*, T. Billard-Pomares, M. Martin, C. Clarempuy, C. Lemezo, C. Saint-Marc, N. Bourlon, D. Seytre, E. Carbonnelle, J-R. Zahar
*Groupe Hospitalier Paris Saint Joseph, France

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 293-297

背景
環境汚染に関連する患者のリスク因子についてはほとんど知られていない。

目的
環境汚染率を評価すること、ならびに個々のリスク因子を検討すること。

方法
前向きコホート研究を実施した。毎日、患者が入室している 5 病室が選択された。5 つの重要表面を 1 日 2 回、清掃の前と後に計画的に拭き取った。全患者の臨床的特徴を収集した。環境汚染と患者の特徴との関連性を評価するため、ロジスティック回帰分析を実施した。

結果
連続患者計 107 例が含まれ、1,052 件の環境サンプル採取を行った。19 例(18%)の患者は多剤耐性病原体(MDRO)を保菌している、または MDRO に感染していることがあらかじめ分かっていた。サンプル 723 件(69%)で≧1 cfu/cm2 の、112 件(11%)で>2.5 cfu/cm2 の細菌の増殖がみられ、結果として 62 病室(58%)が汚染されていた。1 つ以上の病原性細菌に対して陽性のサンプルを考慮すると、16 病室(15%)が汚染されていた。単変量解析と多変量解析によると、解析された変数で環境汚染と関連しているものはなかった。>2.5 cfu/cm2 の汚染された病室を考慮すると、3 つの因子が環境汚染に対して防御的であった。3 つの因子は、既知の MDRO 保菌者または感染者(オッズ比[OR]0.25、95%信頼区間[CI]0.09 ~ 0.72、P = 0.01)、尿路カテーテルを有する患者(OR 0.19、95%CI 0.04 〜 0.89、P = 0.03)、個室への入院(OR 0.3、95%CI 0.15 〜 0.6、P < 0.001)であった。

結論
本研究は非アウトブレイク状況において実施され、病原性細菌による環境汚染率が低いことが示された。環境サンプルのうち>2.5 cfu/cm2 の細菌の増殖がみられたのは 11%のみであり、それらは非病原性細菌に関連していた。環境汚染に関連するリスク因子は特定されなかった。

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術前消毒において示されたポビドンヨードアルコールの粘膜への影響 Mucosal impact of alcoholic povidone-iodine indicated in preoperative disinfection

F. Bruyère*, P. Laine, G. Saint-Jalmes, S. Malavaud, B. Pradere
*Service d'Urologie, CHRU Tours, France

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 302-304

背景
皮膚消毒として使用されるポビドンヨードアルコールは術後感染リスクを低下させるが、粘膜での使用に関するエビデンスはない。そのため、泌尿器科で手術を受けた男性の亀頭において忍容性試験を実施した。

目的
粘膜でポビドンヨードアルコールを使用することの安全性を確認すること。

方法
ポビドンヨードアルコールの亀頭の粘膜への使用の影響を、色彩色差計を用いて測定した。亀頭に皮膚病変がなく、経尿道的内視鏡手術を受けた白人男性が含まれた。(L*a*b*) の測定は、術前および術後に第三者 1 名によって行われた。広く認められた公式であるΔE = √(ΔL2 + Δa2 + Δb2) を用いてパラメータを比較した。

結果
平均年齢 68.9 ± 10.4 歳の患者 96 例が含まれた。L* に関して、術前術後の平均差は+2.36(P = 0.168)であった。a*b* に関して、術前術後の平均差はそれぞれ+0.13(P = 0.9085)、-0.12(P = 0.17089)であった。ΔE は13.92 ± 17.49 であった(有意差なし)。

結論
本研究は、生殖器の粘膜に対するポビドンヨードアルコールの影響を分析した初の研究である。本研究の条件ではポビドンヨードアルコールは粘膜に影響を与えず、安全に使用できることが示唆された。

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アジア人患者において層流は初回人工膝関節全置換術後の人工関節感染症リスクに影響しない Laminar flow does not affect risk of prosthetic joint infection after primary total knee replacement in Asian patients

B.J.X. Teo*, Y.L. Woo, J.K.S. Phua, H-C. Chong, W. Yeo, A.H.C. Tan
*Singapore General Hospital, Singapore

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 305-308

背景
層流(LAF)の役割は、リスク低下を再現できない複数の研究と矛盾している。2016 年の世界保健機関のガイドラインでは、優れた比較試験のこうした不足が明らかになった。

目的
人工膝関節全置換術を受けるアジア人患者において、LAF の使用および人工関節感染症(PJI)の発生率を分析すること。

方法
前向きに収集された単一の外科医のデータベースにて、2004 年から 2014 年に標準的なセメント使用後方安定型人工膝関節全置換術を受けた患者に関してレビューを行った。再置換、外傷性の症例および/または炎症性の症例は除外した。使用された気流の種類を特定した。すべての手術の術式および手術手順は同様であった。止血帯および挿入ドレーンはルーチンに使用されていた。膝蓋骨置換は行わなかった。患者は 2 年まで定期的に外来診療所で経過観察を受けた。患者は各来院時に PJI の発生の有無の評価を受けた。

結果
1,028 件の手術のうち、453 件(44.1%)は LAF が装備された手術室で実施されたのに対し、575 件(55.9%)は LAF が装備されていない手術室で実施された。年齢、性別、または手術側という点では、2 群間に有意差は認められなかった。PJI の全発生率は 0.6%(N = 6)であった。3 件(50%)はLAF が装備された手術室で発生したのに対し、3 件(50%)は LAF が装備されていない手術室で発生した。これは統計的に有意ではなかった。

結論
LAF システムは調達と維持にコストがかかる。人工膝関節全置換術後のアジア人患者において、最新の無菌操作、患者の最適化および予防的抗菌薬の使用を伴う状況で、LAF は PJI のリスクをさらに減らすようには思われない。

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監訳者コメント
1 名の外科医が約 10 年間に行った1,028例の PJI の手術例を対象にした後向きの症例対照研究である。研究期間前半が通常換気群で後半が LAF 群かと思ったが、そうではないようである。SSI 予防の研究全般に言えることだが、そもそも SSI の発生率が 0.6%と低い中で、1 つの介入効果を統計学的に示すのはなかなか難しい。本論文で LAF の有効性が否定されたとはいえないだろう。

ガーナの主要な教育病院における手術中の空気サンプルから分離した細菌と手術部位感染症の遺伝的関係 Genetic relationship between bacteria isolated from intraoperative air samples and surgical site infections at a major teaching hospital in Ghana

M.A. Stauning*, A. Bediako-Bowan, S. Bjerrum, L.P. Andersen, S. Andreu-Sánchez, A-K. Labi, J.A.L. Kurtzhals, R.L. Marvig, J.A. Opintan
*Copenhagen University Hospital, Denmark

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 309-320

背景
低中所得国において手術部位感染症(SSI)の発生率は高く、患者転帰の不良と医療費の超過を引き起こしている。手術室の空中細菌と SSI の因果関係は、分子レベルまたは遺伝子レベルでは確立していない。我々は低中所得国 1 か国において、手術中の空中細菌と SSI を引き起こす細菌の関係を研究した。

方法
待機的な清潔または準清潔外科手術中に、携帯型インパクターを用いて能動的エアーサンプリングを実施した。術後 3 日目、14 日目、30 日目に、電話および臨床検査による積極的な患者の経過観察を実施した。SSI および空気サンプルから回収した細菌分離株は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF)での同定、リボタイピング、全ゲノムシークエンス法(WGS)、メタゲノム解析によって比較した。

結果
128 例の対象患者のうち、116 例(91%)が経過観察を完了し、11 例(9%)が SSI を発症した。SSI の全症例において、手術中の空気サンプルから既知の病原性細菌が分離された。8 症例では、MALDI-TOF によって空気の分離株と SSI の分離株の一致が確認された。6 症例でリボタイプの一致が確認され、1 症例では WGS とメタゲノム解析の両方によって空気の分離株と SSI の分離株の同一性が示された。

結論
本研究では、手術中の高濃度の空中細菌、9%という SSI の発生率、ならびに手術中の空中細菌と SSI から分離した細菌の遺伝的な関連が示された。これは、低中所得国において手術中の空気の質を意識することの必要性を意味している。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
最新の微生物検査技術を用いたなかなかの力業研究である。空中浮遊菌と SSI の原因菌が一致したとのことで、そのほとんどがコアグラーゼ陰性ブドウ球菌属のようだ。研究が行われた病院はガーナの教育病院である。手術室の空気の清浄化が重要というよりも、やはり SSI の大半は術中の落下菌が原因であるということが改めて示されたという印象か。

ガーナの教育病院における手術部位感染症のサーベイランス:前向きコホート研究 Surveillance of surgical site infection in a teaching hospital in Ghana: a prospective cohort study

A. Bediako-Bowan*, E. Owusu, S. Debrah, A. Kjerulf, M.J. Newman, J.A.L. Kurtzhals, K. Mølbak
*University of Ghana, Accra, Ghana

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 321-327

背景
手術部位感染症(SSI)のサーベイランスシステムは、患者安全の評価基準の 1 つとして、医療施設が SSI の減少または予防を目的とした戦略を考案するのに役立つ。ガーナでは SSI をモニタリングするサーベイランスシステムは存在しない。

目的
SSI に対する認識を高めて SSI を制御するため、動向をモニタリングしアウトブレイクを検出するシステムを確立すること。

方法
2017 年 7 月 1 日から 2018 年 12 月 31 日に、Korle Bu 教育病院の一般外科部門において、SSI を特定するために 30 日間の積極的サーベイランスが行われた。本サーベイランスには、外科手術を受けた患者の毎日の入院患者サーベイランス、それに続く医療従事者立脚型の調査と患者立脚型の電話調査を用いた退院後サーベイランスが含まれた。我々は外科医に結果の 3 か月ごとのフィードバックを提供した。

結果
3,267 例の対象患者のうち、331 例で SSI が特定され、罹患リスクは 10%であった。SSI に罹患した患者は、SSI に罹患しなかった患者と比較して、9 日長い入院日数と補正した相対的死亡リスク 2.3(95%信頼区間[CI]1.3 ~ 4.1、P = 0.006)を含む病的状態の悪化を経験した。SSI の 49%(331 例中 161 例)は、医療従事者立脚型の調査を用いて退院後に診断された。患者立脚型の電話調査は追加の 12 症例に寄与した。SSI の罹患リスクは、試験期間中に 12.8% から 7.5%へ低下した。

結論
退院後サーベイランスは、現在の医療従事者の存在を活用することにより実行可能であり、今回の結果はガーナにおける SSI のリスクの高さと負担を浮き彫りにした。SSI のモニタリングのためのフィードバックを伴うサーベイランスシステムは、SSI の減少に寄与する可能性がある。しかし、その影響についての確固たる結論のためには、より長い観察期間が必要である。

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監訳者コメント
ガーナにおける SSI のサーベイランスシステムの構築に関する論文である。

⌈Getting it Right First Time:最初に正しく医療を行う⌋の全国監査について外科医はどう思っているか?定性的評価による結果 How do surgeons feel about the ‘Getting it Right First Time’ national audit? Results from a qualitative assessment

G. Birgand*, R. Troughton, V. Mariano, S. Hettiaratchy, S. Hopkins, J.A. Otter, A. Holmes
*Health Protection Research Unit in Healthcare Associated Infection and Antimicrobial Resistance at Imperial College UK

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 328-331

手術部位感染症(SSI)の監査にさまざまなレベルで関与した 6 名の外科医との面接により、全国的な「Getting It Right First Time:最初に正しく医療を行う」の実践について評価した。有益な影響は、専門医間の新たな連携の構築、利害関係者関与の改善、SSI プロファイルの増加であった。浮き彫りにされた特定の知識格差は、参加者によってSSI 診断基準の要点までは認識していないということであった。方法論的な不備のため、収集したデータの質は不良と思われた。確保された時間がなく、責任が具体的に示されていない修練医に頼ると、監査は多大な時間を要し、プロセスを維持できないとされた。

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監訳者コメント
“Getting It Right First Time(GIRFT)”のコンセプトを一言で説明するのは難しいが、医療において不必要な回り道を削減し、「最初に」正しく医療を行うための活動である。イギリスでは SSI を含め 40 以上の医療の分野で取り組みが行われている。しかし本論文は、実際に担当者に面接を行うと、現実は理想とずいぶん解離がありそうだ、という内容である。”Choosing wisely”と若干似たところはあるが、”GIRFT”のコンセプトは知っておくと良いかもしれない。

待機的ストーマ逆転手術における局所陰圧閉鎖療法:英国の地域総合病院におけるパイロット研究の結果 Negative pressure wound therapy in elective stoma reversal surgery: results of a UK district general hospital pilot

A.P. Shah*, R. Kurian, E. Leung
*The County Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 332-335

ストーマ逆転手術における局所陰圧閉鎖療法の役割については、依然として不明である。その役割について評価するために、後向き非無作為化単一施設パイロット研究を実施した。手術創閉鎖術の術式および単一ブランドの局所陰圧閉鎖療法デバイスの選択は、外科医の選好に任せた。介入群では創合併症をきたした患者はいなかったが、対照群では 36 例中 5 例が手術部位感染症に関連する合併症をきたした。1 次創閉鎖術および局所陰圧閉鎖療法の使用により、ストーマ逆転手術における創合併症が減少し、これにより病院および地域における創管理の負担が減少する。このことには費用削減における意義があるが、さらなる研究が必要である。

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従来型の N95 マスクとナノファイバー使用 N95 マスクの密着性と使いやすさに関する看護手順の前後における比較 Comparing mask fit and usability of traditional and nanofibre N95 filtering facepiece respirators before and after nursing procedures

L.K.P. Suen*, Y.P. Guo, S.S.K. Ho, C.H. Au-Yeung, S.C. Lam
*The Hong Kong Polytechnic University, Hong Kong

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 336-343

背景
N95 マスク の信頼性は正しい装着次第である。使用中の不快感はコンプライアンスに影響する可能性があるため、マスクの使いやすさの受け止め方も同様に重要である。看護手順中の体の動きも顔面の密封漏れのリスクを増やす可能性がある。

目的
最も良くフィットした 3M 社製の N95 マスクとナノファイバー使用 N95 マスクの密着性と使いやすさを看護手順の前後で評価すること。また、これらのマスクの物理的特性も検討した。

方法
本実験研究は 1 集団の多重比較のデザインで行った。全体で 104 名の看護学生が参加し、最も良くフィットした 3M 社製の N95 マスクとナノファイバー使用 N95 マスクの装着時に 10 分間の看護手順を実施した。マスクの密着性と使いやすさの受け止め方を評価した。

結果
最も良くフィットした 3M 社製の N95 マスクの装着時は、ナノファイバー使用 N95 マスクの装着時と比較して、看護手順後に 100 以上のフィットファクターを得られなかった参加者がより多かった(33.7% vs 21.2%、P = 0.417)。また、顔面の温度、通気性、顔面への圧迫感、会話の明瞭度、かゆみ、マスクを適所に保つ難しさ、快適度の観点から、ナノファイバー使用 N95 マスクは最も良くフィットした 3M 社製のN95 マスクと比較して、より使いやすいことが明らかになった(P <0.001)。ナノファイバー使用 N95 マスクは、最も良くフィットした 3M 社製の N95 マスクと比較して、より軽く、より薄く、細菌ろ過効率も少し高かった。

結論
ナノファイバー使用 N95 マスクは、最も良くフィットした 3M 社製の N95 マスクと比較して、有意により使いやすいことが明らかになった。看護手順を実施後に顔面の密封漏れが検出されたように、使用者を一貫して防護できるマスクは存在しない。コンプライアンスを高め、使用者の呼吸保護を確実にするため、試作品のデザインのさらなる改良が必要である。

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日本の 3 次ケア病院の看護師における個人防護具使用の遵守率:ばらつきが生じる理由 Adherence to personal protective equipment use among nurses in Japanese tertiary care hospitals: what determines variability?

S. Morioka*, T. Tajima, Y. Sugiki, K. Hayakawa, N. Ohmagari
*National Center for Global Health and Medicine Hospital, Japan

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 344-349

背景
看護師は患者と頻繁に接触するが、看護師の個人防護具(PPE)遵守率は低く、このことが感染制御における大きな課題となっている。

目的
個々の特定の因子について PPE 遵守率に及ぼす相対的影響を検討すること。

方法
逐次的 2 段階混合法デザインを用いた。定性的研究として、2018 年 5 月 から7 月にかけて半構造化面接を実施した。定量的研究として、2019 年 1 月 から3 月にかけて、全国横断調査を実施し、日本の 3 次ケア病院 28 施設の看護師 735 名に質問票を郵送した。

結果
定量的研究において、解析可能な 435 件(59.2%)の回答が得られた。線形回帰分析により、「患者に感染症の徴候がみられる場合、標準予防策が基本的な感染症対策であり、これらの対策は感染症が認められなければ終了できる」という知識がないことは、低い PPE 遵守率と有意に関連していた一方、抗菌薬耐性菌アウトブレイク、またはアウトブレイクによるによる病棟閉鎖、ならびに「私が感染症の拡散の原因に決してなってはならない」という信念は、高い PPE 遵守率と有意に関連していた。各項の標準化相関係数のβおよび t 値はそれぞれ、−0.344、−7.784、0.090、2.089、0.088、2.018 であった。

結論
本調査では、PPE 遵守率に寄与する看護師に関連する因子を系統的に同定した。良好なアウトカムを得るための実用的なアプローチとして、適切な PPE 使用についての十分な知識の提供、ならびにアウトブレイクや病棟閉鎖の経験の共有により、看護師の教育を行うことを我々は提案する。

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日本の入院患者におけるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症のリスク因子および関連する死亡率:多施設前向きコホート研究 Risk factors for Clostridioides difficile infection in hospitalized patients and associated mortality in Japan: a multi-centre prospective cohort study

H. Honda*, H. Kato, M.A. Olsen, K.A. Reske, M. Senoh, T. Fukuda, Y. Tagashira, C. Mahe, E.R. Dubberke, the Clostridioides difficile infection Japan study group
*Tokyo Metropolitan Tama Medical Center, Japan

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 350-357

背景
集団の特性と抗菌薬処方実践から、日本の入院患者集団ではクロストリジウム・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症(CDI)のリスクが高いことが示唆されるが、日本における CDI の疫学については十分理解されていない。

目的
本前向きコホート研究の目的は、日本の病院 12 施設における CDI の疫学を検討することであった。

方法
臨床的に重要な下痢を有する患者を組み入れた。便検体のC. difficileについて、病院の検査室でトキシン A および/または B に対する酵素免疫測定法(EIA)を用いた検査を行い、中央検査室で毒素産生性検査培養および核酸増幅検査を実施した。CDI のリスク因子、および CDI が死亡率に及ぼす影響について検討した。

結果
合計で臨床的に重要な下痢を有する患者 566 例を本解析に組み入れた。計 152 例が、トキシン A/B に対する EIA、毒素産生性検査培養または核酸増幅検査により CDI の診断を受けた。CDI に関連する因子には、アルブミン低値(補正オッズ比[aOR]1.56、95%信頼区間[CI]1.03 ~ 2.34)および便検体採取前の入院期間 18 日超(aOR 1.73、95%CI 1.09 〜 2.75)などであった。CDI は、単変量解析で死亡率上昇と関連したが(OR 1.6、95% CI 1.0 〜 2.6)、多変量解析では死亡率上昇と関連しなかった。

結論
日本における CDI のリスク因子は、米国および欧州で同定されたリスク因子と同様であった。しかし CDI は、臨床的に重要な下痢を有するこの患者集団において死亡率上昇と関連しなかった。

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侵襲性肺アスペルギルス症:基礎疾患として造血器悪性腫瘍を有する患者と固形癌を有する患者の比較分析 Invasive pulmonary aspergillosis: comparative analysis in cancer patients with underlying haematologic malignancies versus solid tumours

R.W. Dib*, M. Khalil, J. Fares, R.Y. Hachem, Y. Jiang, D. Dandachi, A.-M. Chaftari, I.I. Raad
*The University of Texas MD Anderson Cancer Center, USA

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 358-364

背景
侵襲性肺アスペルギルス症は造血器悪性腫瘍と関連することが多いが、固形癌とも関連して発生する。

目的
造血器悪性腫瘍患者と固形癌患者において、侵襲性肺アスペルギルス症に関する診断のアプローチおよび治療のアウトカムを比較すること。

方法
2004 年から 2016 年 までの期間、連続的に集積した侵襲性肺アスペルギルス症の症例について後向き研究を実施し、確定診断例(proven cases)および臨床診断例(probable cases)を対象に評価を行った。基礎疾患として固形癌または造血器悪性腫瘍を有する、ないしは侵襲性肺アスペルギルス症診断の1年以内に造血幹細胞移植を受けた、18 歳以上の患者を組み入れた。

結果
解析対象とした患者 311 例中、225 例が造血器悪性腫瘍を、86 例が固形癌を有していた。固形癌患者は、造血器悪性腫瘍患者と比較して、慢性閉塞性肺疾患(COPD)やその他の肺疾患の既往を有する割合、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)感染症を有する割合、ならびに侵襲性肺アスペルギルス症発症の前に放射線療法を受けていた割合が高かった(すべて P < 0.01)。固形癌患者では、抗真菌薬単剤治療およびボリコナゾールベースの治療を受けた割合が高かった(それぞれ 87% 対 56%、P < 0.0001、および 77% 対 53%、P = 0.0002)。1 次抗真菌薬の投与期間の中央値は、固形癌患者のほうが長かった(64 日対 20 日、P < 0.0001)。抗真菌薬療法の完全あるいは部分的な奏効は、固形癌患者の 66%、造血器悪性腫瘍患者の 40%で達成された(P = 0.0001)。12 週時点で、全死亡率は両患者間で同様であったが、侵襲性肺アスペルギルス症に起因する死亡率は、造血器悪性腫瘍患者のほうが高かった(30% 対 18%、P = 0.04)。

結論
抗真菌薬の単剤療法は、固形癌患者のほうが造血器悪性腫瘍患者よりも多く行われていた。固形癌患者は造血器悪性腫瘍患者よりも、抗真菌薬療法への反応が良好であり、12 週時点での侵襲性肺アスペルギルス症に起因する死亡率が低かった。

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監訳者コメント
侵襲性肺アスペルギルス症の臨床像と治療選択、経過、予後は、患者の基礎疾患や合併症に左右されるところが大きい。本研究で示された 2 集団での傾向は、本邦における日常診療でも首肯できる内容といえるのではないだろうか。

プロピジウムモノアジド-リアルタイム PCR によるヒータークーラーユニットを用いた非結核性抗酸菌検出の所要時間の短縮 Reduction of turnaround time for non-tuberculous mycobacteria detection in heater‒cooler units by propidium monoazide‒real-time polymerase chain reaction

S. Ditommaso*, M. Giacomuzzi, G. Memoli, R. Cavallo, A. Curtoni, M. Avolio, C. Silvestre, C.M. Zotti
*University of Turin, Italy

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 365-373

背景
侵襲性非結核性抗酸菌(NTM)感染症は、開胸心臓バイパス術を受けて、汚染されたヒータークーラーユニットに曝露された患者に、世界的にみられる新興感染症である。このアウトブレイクの研究は、ヒータークーラーユニットのエアロゾルサンプルや水サンプルから分離された細菌の培養によって行われてきたが、こうした従来型の方法では検査感度が低く、サンプルの汚染率が高く、所要時間が長い。

目的
リアルタイム PCR によりヒータークーラーユニットで NTM を検出するための、簡便かつ効果的で、検査所要時間が短く、信頼性の高い培養結果が得られる方法を開発すること。

方法
イタリアの病院 7 施設のさまざまなヒータークーラーユニットから得た水サンプル計 281 個を対象に、NTM についてプロピジウムモノアジド‒ PCR アッセイおよび従来の培養検査により同時にスクリーニングを実施した。得られた結果の解析は、培養検査を基準として行った。

結果
(i)培養検査とプロピジウムモノアジド‒ PCR における結果の一致度は、サイクル閾値(CT)のカットオフ値を 38 未満とした場合は85.0%であったのに対し、CT 値を 43 未満とした場合は80.0%であり、Cohenのκ相関係数は中等度であった。(ii)CT のカットオフ値を 42 未満とすることが、陽性サンプルの予測においてより適切と見なされた。(iii)対象とする DNA 濃度が水サンプル中で低いことから、検査に必要な水の最低量は 1 L である。

結論
環境サンプルにおける NTM の迅速検出を目的としたプロピジウムモノアジド‒ PCR の使用は、ヒータークーラーユニットが NTM 感染の曝露源であるかどうかを確認するために強く推奨される。信頼性が高く簡便なこの方法は、検査所要時間が従来法より短く(1 ~ 2 日対 8 週間)、これにより感染制御戦略の改善およびヒータークーラーユニットの効果的な管理が可能になる。

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監訳者コメント
プロピジウムモノアジドは、二本鎖 DNA を修飾する細胞膜不透過性の色素で、生菌の選択的な定量を可能にするとされる。今回の PCR 法は、ヒータークーラー・環境中という菌量が少なく、かつ生菌を検出したい条件において、特に有用性が期待される。ただし菌数が少なく、汚染が生じやすいことは、PCR の結果の解釈を難しくさせる短所ともいえ(サイクル数である CT 値が多い増幅は、汚染の可能性も高くなりやすい)、これが CT 値のカットオフ値の設定に関わってくる。実用において標準化と工夫が求められるが、本報告の価値は高いと考える。

気送管の輸送システムは潜在的病原体を伝播するか?大学病院 1 施設における衛生リスクの評価 Do pneumatic tube transport systems transmit potential pathogens? A hygienic risk assessment in a university hospital

L. Khaznadar*, S.J. Dancer, A. Petersmann, U. Seifert, H. Below, R. Papke, M. Suchomel, T. Kohlmann, A. Kramer
*University Medicine Greifswald, Germany

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 374-380

背景
1 医療施設におけるバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)のアウトブレイクを受けて、本研究では 1 台の気送管の輸送システムが伝播チャネルである可能性を検討した。

方法
受け取りステーションおよびエントリーラックから塗抹法によりサンプル採取を行った。気送管輸送システムの清掃に用いたスポンジを 0.89%の食塩水に浸漬し、回路で輸送した。気送管および洗浄スポンジから、洗い流し法を用いて微生物を回収した。空気汚染がないかを検出するため、受け取りステーションにおいてエアーサンプリングを行った。さらに送付用チューブを人為的に大腸菌(Escherichia coli)K12 NCTC 10538 および表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)DSM 20044 で汚し、実際に輸送して、チャネル汚染を調べた。

結果
通常の操作においては、気送管輸送システムからの排気や、送付チューブ内に病原体は検出されなかった。送付チューブのエントリーラックは、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌や好気性桿菌、糸状菌、バンコマイシン感性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)により汚染されていた。E. coli は持続力が弱いため、気送管輸送システムによる細菌伝播の検出には適していないことが示されたが、S. epidermidis はより持続力が強かった。菌で汚染したチューブは輸送システムに通した後でも、S. epidermidis のレベルはごくわずかしか低下しなかった。その後、消毒液に浸漬したスポンジをシステム内に通し、これにより最初の試行から S. epidermidis が完全に除去された。

結論
気送管輸送システムの衛生管理をルーチンに行うことで、病原体伝播の可能性は非常に低くなるが、エントリーラックは定期的に消毒すべきである。本研究を実施した施設における VRE アウトブレイクには、気送管輸送システムは関連していなかったと考えられる。

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監訳者コメント
気送管輸送システムは、国内では「エアシューター」や「気送子」といった名称で呼ばれることがあり、複数の形態が存在する。日常的に使用されている場合、その汚染については注意が払われにくい場所の 1 つと思われる。使用システム・使用法・衛生状態の保持の状況は施設間で異なるが、本検討の着眼点と方法、得られた結果はユニークといえ、非常に参考になるといえる。

直腸スワブからのカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌の直接スクリーニングにおけるポリメラーゼ連鎖反応検査の評価:診断法に関するメタアナリシス Evaluation of polymerase chain reaction assays for direct screening of carbapenemase-producing Enterobacteriaceae from rectal swabs: a diagnostic meta-analysis

R. Saliba*, L-S. Aho-Glélé, D. Karam-Sarkis, J-R. Zahar
*Université Paris 13, France

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 381-389

分子アッセイは、陽性となった血液培養からの直接的なカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)の迅速検出において信頼度が高く、病原体同定に要する時間が大幅に短縮することが、近年実証されている。直腸スワブに分子アッセイを用いる場合の性能について検証した研究はほとんどなく、感染制御における分子アッセイの有用性に関して包括的な結論は得られていない。本研究の目的は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて直腸スワブから CPE を検出する方法について、診断検査としての全般的な正確度に関するレビューと評価を行うことであった。電子データベースである PubMed を 2019 年 10 月 1 日までの期間で検索を行い、言語の制限および発表日の制限は行わなかった。まず、研究の論点についての概念を明確化し、「カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌」、「遺伝子検査」、「検査による検出」および「直腸スクリーニング」とした。2 名の評価者が独立して、研究のスクリーニング、データの抽出、および QUADAS-2 ツールを用いた質の評価を行った。統計解析については、Stata ソフトウェアを用いて二変量解析を行った。全体で、143 報の論文のスクリーニングを行い、16 報を解析対象とした。対象論文中 5 報(31%)が、CPE アウトブレイクを背景に実施された研究であった。1 報の研究(6%)は、他の臨床検体(血液または気道分泌物)から CPE が事前に検出されていた患者を組み入れていた一方、それ以外の研究(63%)は保菌のリスクが高いとみなされた患者から直腸スワブを採取していた。評価対象とした分子アッセイは、感度は 0.95(95%信頼区間[CI]0.902 〜 0.989)と比較的良好で、特異度は 0.994(95% CI 0.965 〜 1)と優れていた。遺伝子検査法は、それまで隔離されていなかった入院患者が予期せずキャリアと判明した場合、周囲の患者もCPE のキャリアであるかどうかスクリーニングを行う上で、有用で正確度の高い診断ツールと考えられる。

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監訳者コメント
採取が容易な直腸スワブを用いて、CPE を信頼度高く検出できるかは、関心の高いところであろう。便中の菌量・遺伝子量、遺伝子検査手法と感度、対象とする遺伝子領域の違いによって、左右されるところが大きいと考えられるが、研究結果の集積のみならず、それらの包括的な解析と、研究の方向性の調整ならびに実用上の検討もまた、重要と言える。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.