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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

コロナウイルスの影響により一部、監修者のコメントおよびレーティングを未監修のまま掲載しておりますので、ご了承ください。

南アフリカの病院ネットワークにおける手指衛生遵守の責任の多面的枠組みの実行:助け合いの哲学の活用

Implementing a multi-faceted framework for proprietorship of hand hygiene compliance in a network of South African hospitals: leveraging the Ubuntu philosophy

A.J. Brink*, A.P. Messina, C. Maslo, K. Swart, D. Chunnilall, D. van den Bergh, for the Netcare Antimicrobial Stewardship and Infection Prevention Study Alliance
*University of Cape Town, South Africa

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 404-413


背景
低中所得国において、全病院レベルでの当事者意識の欠如および看護師不足を考えると、手指衛生の行動変容を大規模に実行するための理想モデルは不明である。

目的
この多面的な対策の目的は、手指衛生遵守に関して病院の説明責任を果たすことである。

方法
南アフリカの病院 50 施設において準実験研究を実施し(2015 年 11月から 2017 年 7 月)、逐次的な5 段階、すなわち、実行のガバナンスと集団の行動変容、グループ全体の系統的な状況分析、電子的支援による直接観察データの収集・解析アプリケーションの開発、着手と実行、説明責任を果たすガバナンスを組み入れた。手指衛生の 6 つの機会における病院内および病院間の相違を数値化し、記録された手指衛生遵守および行動のフィードバックを現場のチームに提供するために、病院の指導部に遵守データのダッシュボードを電子メールで週 1 回配信した。ベースライン(2016 年 7 月)と実施後(2017 年 7 月)の遵守率を比較した。

結果
病院の 16%(50 施設中 8 施設)で、ベースラインの手指衛生遵守率が 60%以下であったのに対し、実施後には病院の 48%(50 施設中 24 施設)で有意な改善が認められた(P < 0.01)。13 か月の観察期間を通して、523,422 回の観察が記録され、平均観察率は 1,000 患者・日 あたり 277 ± 223であった。病院グループ全体の平均遵守率は、2016 年 7 月には 77.4% ± 12.8%であったのが、2017 年 7 月には 85.2% ± 8.8%となり、7.8%改善した(P < 0.01)。

結論
南アフリカの多様な大規模病院グループにおける多面的手指衛生モデルの実施は、組織の体系および説明責任の変容、標準化された手指衛生遵守の管理、手指衛生の責任に導くフィードバックにつながった。

サマリー原文(英語)はこちら

教育的な話による介入が面会者の手指衛生遵守を改善しうるか?

Can educational speech intervention improve visitors’hand hygiene compliance?

S. El Marjiya Villarreal*, S. Khan, M. Oduwole, E. Sutanto, K. Vleck, M. Katz, W.B. Greenough
*Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health, USA

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 414-418

背景
簡易で安価な方法である手指衛生は、医療関連感染症(HAI)に関連する負荷を軽減する主要な介入であり続けている。職員の手指衛生遵守を改善するために多くの介入が検証されているが、病院の面会者の遵守率は相変わらず低く、このことが HAI のリスクおよび院内や市中への耐性菌伝播のリスクを高めている。

目的
病院の面会者における手指衛生遵守率の向上を目的とした教育的な話による介入の有効性を評価すること。

方法
本介入研究は、大規模大学病院の入院病棟において 2019 年 3 月から 6 月に実施した。教育的な話による介入の実施前後に、面会者の手指衛生遵守について観察した。介入期に面会者に教育的な話による介入を提供する目的は、手指衛生の重要性および正しい手指洗浄法について気づかせることであった。調査質問票を用いて介入後のデータを収集した。対応のない t 検定により介入前後の手指衛生遵守率を比較した。

結果
ベースラインの手指衛生遵守率は 9.73%であったのに対し、介入後は 87.06%まで増加した(P < 0.001)。手指衛生遵守の障壁は、手がふさがっていること、手指衛生用品の不適切な配置、手指衛生を習慣づけていなかったことなどであった。面会者が手指衛生を思い出す方法として好んだのは、口頭によるリマインダー(57%)、次いで、標識(38%)、リストバンド表示(5%)であった。

結論
教育的な話による介入により、面会者の手指衛生遵守率がかなり向上した。教育的な話による介入の持続可能性を評価し、また面会者の手指衛生遵守に対する他の障壁に対処するために、さらなる研究を推奨する。

サマリー原文(英語)はこちら

擦式アルコール製剤の擦り込み時間を 15 秒に短縮することにより手指消毒の有効性は低下しない

Hand antisepsis without decreasing efficacy by shortening the rub-in time of alcohol-based handrubs to 15 seconds

J.C. Harnoss*, S.J. Dancer, C.F. Kaden, R. Baguhl, T. Kohlmann, R. Papke, M. Zygmunt, O. Assadian, M. Suchomel, D. Pittet, A. Kramer
*University of Heidelberg, Germany

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 419-424


背景
新生児集中治療室(NICU)の看護師を対象とした以前の研究では、擦式アルコール製剤の抗菌作用は 30 秒ではなく 15 秒で得られ、手指消毒の回数が有意に増加することが示された。本研究は、低リスクの婦人科病棟の看護師を対象に、15 秒と 30 秒の消毒の成果を指先の微生物数および遵守率を測定することにより比較調査することを目的とした。

方法
独立した熟練観察者が、シフト中の手指消毒の回数および遵守率を測定した(クロスオーバーデザイン)。シフトの始めに母指を含む指先をソイブロス培地に浸してから、擦式手洗いを行い、その後、1 時間ごとに細菌数を計測した。手指消毒を伴う看護行為 Fulkerson スケールの汚染度クラスに分類した。昼休み直前に、試験参加者はランダムに決定された 15 秒または 30 秒の擦り込み時間に従い手指を消毒した。

結果
指先の細菌数の検査では、擦り込み時間 15 秒と 30 秒において差が認められなかった。対照とした昼休み前の手指消毒では、どちらの試験群においても有効性に差がみられなかった。擦式法を 15 秒間行った参加者は、30 秒間行った参加者と比較して手指消毒の実施率が高かった(P = 0.2)。15 秒試験では、遵守率が 54.7%から 69.5%に増加した。

考察
手指消毒時間の短縮により有効性は低下しなかった。診療における手指衛生遵守を改善するために、成功した多様な介入策の必須要素の範囲内で、擦り込み時間 15 秒への短縮について検討すべきである。

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インドにおける患者家族の手指衛生遵守:非公式の「第 4 カテゴリー」の医療従事者を教育することの重要性

Hand hygiene compliance of patients’ family members in India: importance of educating the unofficial ‘fourth category’ of healthcare personnel

M. Biswal*, A. Angrup, S. Rajpoot, R. Kaur, K. Kaur, H. Kaur, H. Kaur, N. Dhaliwal, P. Arora, A.K. Gupta
*Postgraduate Institute of Medical Education and Research, India

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 425-429


緒言
インドでは人材不足のため、近親者や親しい人に対する医療行為に、患者の家族が積極的に関わることがよくある。患者の家族は、世界保健機関(WHO)の「手指衛生の 5 つのタイミング」すべてにおいて患者とかなり接触している。本研究では、10 年におよぶ啓発キャンペーンが、患者介護者の手指衛生遵守に及ぼした影響を分析した。

方法
2014 年 1 月から 2018 年 12 月にかけて、さまざまな病院環境の患者付添人を対象に、訓練を受けた感染制御看護師が 5 つのタイミングの各時点における手指衛生遵守について観察した。イベント数を総タイミング数で除したパーセンテージとして遵守率を測定した。

結果
計 7,302 回のタイミングが観察され、全遵守率は 46.1%(2014 年の 35.5%から、2018 年には 48.2%、P < 0.0001)であった。WHO によるタイミング 1、2、3、4、5 における遵守率は、それぞれ 51.0%、47.4%、67.6%、48.8%、24.3%であった。家族間では、新生児の母親の手指衛生遵守率(77%)が、その他(44.5%)と比べて極めて高かった(P < 0.0001)。さらに、外科病棟よりも内科病棟で、成人病棟よりも小児病棟で遵守率が高かった(いずれもP < 0.0001)。

結論
本稿は、低中所得国の病院環境における家族の手指衛生遵守に関する最初の研究である。この研究より、家族が教育を受けると、患者の介護をする際の手指衛生の遵守状況がかなり良好となり、とくに新生児の母親において顕著であることが示された。患者の付添人に手指衛生の重要性と方法について教育し、自立を促すことは、患者にとって多大な利益となる可能性があるので有意義である。

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噴霧式の擦式アルコール製剤による擦り込み:有効な手指衛生の代替法

Hand rubbing with sprayed alcohol-based hand rub: an alternative method for effective hand hygiene

J.B.X. Tan*, M.E.A. de Kraker, D. Pires, H. Soule, D. Pittet
*University of Geneva Hospitals and Faculty of Medicine, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 430-434

背景
手指衛生は感染予防制御において不可欠である。噴霧式の擦式アルコール製剤が、世界保健機関(WHO)推奨の液状の擦式アルコール製剤による擦り込み法と比べ非劣性であるかどうかは不明である。

目的
噴霧式の擦式アルコール製剤が、擦り込みの有無に関わらず、有効な手指衛生の代替(非劣性)法となりうるか否かを検証すること。

方法
擦式アルコール製剤(60%[v/v]イソプロパノール)を用いた実験室での試験を、European Norm 1500 に従い実施した。手指衛生を次の方法により実施した。(1)手掌に注いだ擦式アルコール製剤による擦り込み(2)噴霧式の擦式アルコール製剤による擦り込み(3)噴霧式の擦式アルコール製剤を手指に擦り込まずに塗布。手指を大腸菌(Escherichia coli)ATCC 10536 で汚染させ、その後、手指衛生と微生物学的サンプリングを行った。手指衛生後の細菌数の減少を分析するために、被験者のランダム切片を含む一般化線形混合モデルを用いた。

結果
計 19 例の医療従事者が試験に参加した。噴霧式の擦式アルコール製剤による擦り込みは、WHO が推奨する液状の擦式アルコール製剤による擦り込み法と比べて非劣性(マージン 0.6 log10コロニー形成単位[cfu]/mL)であり、細菌数の減少は、それぞれ 3.66 log10 cfu/mL(95%信頼区間[CI]1.68 ~ 5.64)、3.46 log10 cfu/mL(95%CI 1.27 ~ 5.65)であった。一方、噴霧式の擦式アルコール製剤を擦り込まなかった場合、非劣性が認められなかった(細菌数の減少 2.76 log10 cfu/mL[95%CI 1.65 ~ 3.87])。

結論
実験条件下では、手指の細菌数を減らすのに、噴霧式の擦式アルコール製剤による擦り込みは、手掌に注いだ擦式アルコール製剤による擦り込みと比べて非劣性であった。他の設定および他の病原体における評価の結果が出るまで、噴霧式の擦式アルコール製剤による擦り込みは、許容可能な手指衛生代替法となりうる。

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一律の方法を万人に適用しない:3 次病院における職種別の手指衛生遵守のためのメッセージ伝達の有効性

One size does not fit all: the effectiveness of messaging for hand hygiene compliance by profession in a tertiary hospital

S. Salmon*, M.Y. Phua, D. Fisher
*National University Hospital, Singapore

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 435-439

手指衛生遵守のための職種別のメッセージ伝達の有効性を検討するために、病院全体の調査に続き、影響・認識・改善すべき領域を調べる職種別フォーカスグループ・ディスカッションを実施した。結果より、手指衛生は感染予防プログラムの不可欠な要素であると十分に理解されていることが明らかになった。しかしながら、メッセージの受け入れと影響は職種間で異なり、個別化が必要であった。医療専門家グループにおいて感染予防に関連する変化の受け入れを改善するために、職種別のメッセージを考案する際は、動機づけ、影響力を持つ模範的な人物を生かすこと、社会的一体性について考慮すべきである。

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肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネマーゼ(KPC)遺伝子獲得の危険因子および複数の菌種による臨床転帰

Risk factors for Klebsiella pneumoniae carbapenemase (KPC) gene acquisition and clinical outcomes across multiple bacterial species

A.J. Mathers*, K. Vegesana, I. German-Mesner, J. Ainsworth, A. Pannone, D.W. Crook, C.D. Sifri, A. Sheppard, N. Stoesser, T. Peto, A.S. Walker, D.W. Eyre
*University of Virginia Health System, USA

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 456-468

緒言
カルバペネマーゼ産生エンテロバクター目獲得/感染症の危険因子および関連する臨床転帰は、菌種特有のクローン性アウトブレイクとの関連で評価されている。複雑な複数の菌種によるアウトブレイクの頻度が増加しつつあり、対応する分析は不足している。

方法
カルバペネマーゼ産生エンテロバクター目の厳密なスクリーニングプログラムにもかかわらず、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネマーゼ(KPC)産生菌の複数の菌種の伝播が蔓延している米国の大学医療センターおよび長期急性期ケア病院の入院患者の電子カルテを用いて、KPC 産生菌獲得に関する症例対照研究を 2010 年 12 月から 2017 年 1 月に実施した。症例は、入院して 48 時間経過後に 培養でKPC 産生菌の初回陽性が確認された患者で、保菌者および感染者(カルテにより決定)を含めた。対照は、直腸周囲の KPC 産生菌スクリーニングで少なくとも 2 回培養陰性で、培養陽性が確認されなかった患者とした。KPC 産生菌獲得の危険因子、獲得後の初回感染症、各感染症発症後の 14 日死亡率について、多変量ロジスティック回帰分析により特定した。

結果
症例 303 例(89 例が 1 回以上の感染症を発症)および対照 5,929 例において、KPC 産生菌獲得の危険因子は、入院の長期化、輸血、複雑な胸部病変、機械的換気、透析、カルバペネム系薬・βラクタム/βラクタマーゼ阻害薬への曝露であった。1 カ所の部門において、他の KPC 産生菌保菌患者への曝露が獲得の唯一の危険因子であり、患者間の直接伝播は重要な影響を及ぼさないことが示唆された。15 菌種の KPC 産生菌が認められ、61 例(20%)で 2 種以上の菌種の保菌/感染症がみられた。尿路以外の KPC 産生菌感染後の 14 日死亡率は 20%(感染症発症 97 例のうち 20 例)で、感染源制御を達成できなかったことと関連した。

結論
医療との接触、抗菌薬、侵襲的手技が、KPC 産生菌の保菌/感染症のリスクを高めており、これらは、複数の菌種のアウトブレイクに対する感染制御介入のターゲットの候補となることが示唆される。患者間伝播のエビデンスは限られていた。

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フランスのナーシングホーム入居者における基質特異性拡張型β‐ラクタマーゼ(ESBL)産生エンテロバクター目の保菌率・遺伝的多様性、および保菌と関連する因子

Prevalence, genetic diversity of and factors associated with ESBL-producing Enterobacterales carriage in residents of French nursing homes

M. Broussier, H. Gbaguidi-Haoré, F. Rachidi-Berjamy, X. Bertrand, C. Slekovec
*Centre Hospitalier Régional Universitaire, France

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 469-475
目的
フランスの地方のナーシングホームにおいて、基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生エンテロバクター目およびカルバペネマーゼ産生エンテロバクター目の保菌率と遺伝子型特性を明らかにすることを目的とした。保菌と関連する危険因子についても検討した。

方法
研究地域のナーシングホームに、2017 年 11 月から 2018 年 6 月までの点有病率調査を提案した。ボランティアの入居者において、ESBL 産生エンテロバクター目およびカルバペネマーゼ産生エンテロバクター目の保菌のスクリーニングを実施した。大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の分離株について、multi-locus sequence typing 法、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)、系統発生分類(大腸菌のみ)により遺伝子型を決定した。全体的なデータおよび個々のデータをランダム効果ロジスティック回帰により分析した。

結果
本研究は、ナーシングホーム 18 施設で実施し、患者 262 例を対象とした。52 例(19.8%)が少なくとも 1 種の ESBL 産生エンテロバクター目を保菌し、分離株 56 株が検出された(大腸菌 42 株、肺炎桿菌 11 株、その他 3 株)が、カルバペネマーゼ産生エンテロバクター目は検出されなかった。ESBL 産生大腸菌の大半(42 株中 27 株)は系統発生分類 B2 に属し、このサブタイプにおいて ST131 が過剰に検出された(27 株中 21 株)。PFGE 解析により、ナーシングホーム内で ST131 の交差伝播が明らかになった。ESBL 産生肺炎桿菌に関して、11 株中 9 株が ST663 に属し、PFGE により、ナーシングホームの 6 施設におけるクローンの拡散が示唆された。ESBL 産生エンテロバクター目保菌に対する個人レベルでの有意な危険因子は、共用バスルームの使用、抗菌薬使用歴、最近の入院歴であった。集団レベルでの有意な予防因子は、厳密な手袋使用遵守、医療施設によるナーシングホーム支援であった。

結論
本研究より、研究地域のナーシングホームは ESBL 産生エンテロバクター目の重要なリザーバであるが、カルバペネマーゼ産生エンテロバクター目保菌の入居者はいないことが示された。ナーシングホームの ESBL 産生エンテロバクター目の制御において、抗菌薬適正使用および排泄物の管理政策に重点的に取り組むべきである。

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韓国の病院の心臓科における給水器とシンク排水管の汚染に関連するカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌のアウトブレイク

Outbreak of carbapenemase-producing Enterobacteriaceae associated with a contaminated water dispenser and sink drains in the cardiology units of a Korean hospital

J. Jung* H-S. Choi, J-Y. Lee, S.H. Ryu, S-K. Kim, M.J. Hong, S.H. Kwak, H.J. Kim, M-S. Lee, H. Sung, M-N. Kim, S-H. Kim
*University of Ulsan College of Medicine, Republic of Korea

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 476-483

背景
カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)の伝播に対する病院の水環境の重要性への関心が高まっている。

目的
3 次病院 1 施設の集中治療室(ICU)および病棟を含む心臓科における大規模なアウトブレイク 1 件を報告すること。

方法
本研究は CPE 獲得のリスク因子を確認するための接触追跡、症例対照研究であり、環境サンプリングは 2018 年 7 月から 12 月の間の CPE のアウトブレイク中に実施した。

結果
アサン病院(Asan Medical Centre)の心臓科において、計 87 例の CPE 感染患者または保菌患者が特定された。blakpcblaNDM-1blaVIM または blaIMPblaOXA-48 を産生する微生物、ならびにこれらを併産する微生物を含む多様な微生物が特定された。症例対照研究により、歯磨きのために病棟の患者病室の浴室のシンクを使用することは、CPE の獲得に関連していたことが示された(83% vs 30%、P = 0.03)。環境培養を実施したところ、給水器から肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネマーゼ(KPC)産生大腸菌(Escherichia coli)が、患者病室のシンクからニューデリー・メタロ -β- ラクタマーゼ(NDM)1 産生シトロバクター・フレウンディー(Citrobacter freundii)およびエンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)が分離された。ICU の患者と給水器由来の KPC 産生大腸菌のパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)解析、ならびに患者とシンク排水管由来の NDM-1 産生 E. cloacae の PFGE 解析は、同じパルソタイプを示した。

結論
給水器およびシンク排水管は、本アウトブレイクにおいて可能性のある CPE のリザーバーとして疑われた。歯磨きのような汚染された水との密接な接触は、CPE 獲得のリスク因子として特定された。CPE のアウトブレイクを防ぐため、病院の水環境の管理だけでなく水環境システムの適切な使用に関する教育も実行すべきである。

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全ゲノムシークエンシングによって病院 1 施設のいくつかの場所にある複数の洗面台の U 字管において関連性が高い緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)株が同定される:排水パイプを経由した潜在的な病原体の輸送のエビデンス

Whole-genome sequencing identifies highly related Pseudomonas aeruginosa strains in multiple washbasin U-bends at several locations in one hospital: evidence for trafficking of potential pathogens via wastewater pipes


E.M. Moloney*, E.C. Deasy, J.S. Swan, G.I. Brennan, M.J. O’Donnell, D.C. Coleman
*Dublin Dental University Hospital, University of Dublin, Ireland

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 484-491

背景
手洗い用の洗面台の U 字管は、実質的に U 字管の至る所に存在する緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を含む、グラム陰性菌による院内アウトブレイクとの関連性が高まっている。U 字管を引き込む排水ネットワークは、病原性細菌を輸送する経路である可能性がある。

目的
緑膿菌を用いて病院の洗面台の U 字管の間の細菌の輸送を調査すること。

方法
緑膿菌の輸送を調査するため、ダブリン歯科大学病院の 5 カ所にある 25 個の洗面台の U 字管(外来診療所 2 において 10 個、救急救命科において 10 個、他の 3 つの場所において 5 個)を調査した。さらに、洗面台の蛇口のサンプル(N = 80)および本管から引き込んだ水道と水道水のサンプル(N = 72)から、緑膿菌の培養を行った。29 か月にわたって回収され選択された緑膿菌分離株について全ゲノムシークエンシングを行い、関連性は全ゲノム multi-locus sequence typing(MLST)法とペアワイズ一塩基多型(SNP)解析を用いて判断した。

結果
緑膿菌はすべての U 字管から回収されたが、蛇口や水からは回収されなかった。83 の U 字管分離株は 10 のシークエンス型(ST)をもたらし、救急救命科、外来診療所 2 および他の 2 つの場所由来の ST560 と ST179 が優勢であった(70%)。ST560 は共通の下流管からも回収された。ST560 内と ST179 内の分離株は供給源にかかわらず関連性が高かった。ST560 はクラスター I(N = 25)とクラスター II(N = 2)に分けられ、対立遺伝子の差異および SNP の平均値はそれぞれ 3 と 0、2 と 5 であった。31 の ST179 分離株は、対立遺伝子の差異および SNP の平均値としてそれぞれ 3 と 12 を示した。

結論
ダブリン歯科大学病院のいくつかの場所の複数の U 字管において関連性の高い緑膿菌株が同定され、排水ネットワークを経由した輸送が示された。

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世界的な高リスククローンであるカルバペネム耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)ST16 の感染源としての集中治療室における手洗いシンク

Handwashing sinks as the source of transmission of ST16 carbapenem-resistant Klebsiella pneumoniae, an international high-risk clone, in an intensive care unit

Y. Feng*, L. Wei, S. Zhu, F. Qiao, X. Zhang, Y. Kang, L. Cai, M. Kang, A. McNally, Z. Zong
*West China Hospital, Sichuan University, China

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 492-496

カルバペネマーゼ遺伝子 blaNDM-5 を保有しているカルバペネム耐性肺炎桿菌(carbapenem-resistant Klebsiella pneumoniae;CRKP)シークエンス型 16 の分離株は、集中治療室 1 室の患者 2 例において院内血流感染症または腸管保菌を引き起こした。手洗いシンクが感染源であるという仮説を立て、集中治療室のすべての手洗いシンクのサンプル採取を行った。全ゲノムシークエンシングと解析によって、1 つのシンクが両方の患者の CRKP の保菌/感染源であり、患者間の共通クローンの直接感染ではないことが明らかになった。本研究は、手洗いシンクが多剤耐性病原体の重要な感染源であることを浮き彫りにした。体液の廃棄の禁止および塩素による日常の消毒を含むシンクの管理によって、感染が抑制された。

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監訳者コメント
近年相次いでいる「シンクを原因とする」CRE のアウトブレイクの報告である。問題となるのはシンクの管理であるが、本論文では体液の廃棄を厳しく禁じたことと、毎日 2,000 ppm の塩素溶液を 5 L 流したとある。

オゾン水を組み入れた新しいシンクデザインの評価

Evaluation of a new sink design incorporating ozonated water

J. Cooper*, Y. Himaras, T. Wong, E. Bryce
*Vancouver Coastal Health, Canada

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 497-502


背景
使用者による汚染を減らしバイオフィルムを減少させるため、新しいシンクおよび U 字トラップのデザインが開発されてきた。新しいシンクデザインおよびオゾンのような補助的な方策の実臨床での経験は限られている。

目的
新しいシンクデザインをはね返りに関して評価すること、ならびにオゾン水の機能を微生物バイオバーデンの減少に関して評価すること。

方法
シンクの横と後のプレキシガラスの遮蔽板に白い吸収紙を取り付けられるようにした、持ち運び可能なシンクユニットを作製した。塗装工のつなぎの作業服とマスクを着用した参加者は、30 mL のテンペラ絵の具を手に塗り、中性石けんで 20 秒間洗った。各参加者はこれを 5 回連続で繰り返し、累積した結果が記録された。大腸菌(Escherichia coli)はシンクユニットから出るオゾン水に曝露され、通常の水道水に曝露され、微生物生存に関して評価された。

結果
従来型のシンクと比較すると、SmartFLO3 シンクはシンク内と周辺区域内の環境汚染がより少なく、参加者へのはね返りもより少なかった。オゾン生成を強化するための改良にもかかわらず、活性酸素種の測定値は 0.3 ppm を超えず、有意な殺菌効果は実証されなかった。

結論
SmartFLO3 シンクははね返りを減らし、シンクからの病原体の伝播を減少させる可能性がある。本研究において生成された低濃度のオゾンでは、水道水単独と比較して明らかな殺菌効果は認められなかった。

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監訳者コメント
オゾンは日本でも様々な用途・場面で用いられているが、実臨床での効果を検証した研究は少ない。本研究は実臨床に近い状況を準備してオゾン水の効果を検証し、細菌学的な効果が得られなかったと結論している。日本でもより臨床に近い状況での検証が必要であろう。

超多剤耐性菌の無症候性保菌、自然消失を評価する簡単な方法

Asymptomatic carriage of extensively drug-resistant bacteria (eXDR), a simple way to assess spontaneous clearance

E. Farfour*, A.-G. Si Larbi, J. Couturier, M. Lecuru, J.-W. Decousser, A. Renvoise, F. Faibis, C. Lawrence, S. Nerome, D. Lecointe, on behalf of the RéFraLHHA Study Group
*Hôpital Foch, France

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 503-507

超多剤耐性菌の保菌期間は、回収するのが難しい可能性がある複数の因子に依存している。我々は回収しやすいパラメータ(連続したスクリーニング陰性の回数)を用いて超多剤耐性菌 の保菌期間を評価することを目的とする。131 例の超多剤耐性菌保菌者(バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム[Enterococcus faecium] 51 例、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌 80 例)を対象とした。連続したスクリーニング陰性の回数は超多剤耐性菌の消失に強く関連していた。7 か月間にわたり 3 回以上のスクリーニング陰性を示した患者はすべて、その後にスクリーニング陽性を示すことはなかった。個別的なリスク評価の一部としてスクリーニング陰性の回数を考慮することは、超多剤耐性菌に焦点を合わせた予防策を継続するか解除するかという決定に役立つ可能性がある。

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監訳者コメント
VRE や CRE は長期間にわたって保菌が続くため、「一度検出されたら生涯接触予防策をとる」とする意見もある。しかし本研究では、保菌検査で連続して陰性になることがその後の菌消失と相関したとしている。
日本でもこれらの耐性菌に対してはタイミングをみて保菌検査をすることが有用かもしれないということだろうか。

カナダの急性期病院の医療従事者におけるウイルス性呼吸器感染症の曝露源

Sources of viral respiratory infections in Canadian acute care hospital healthcare personnel

S. Buckrell*, B.L. Coleman, S.A. McNeil, K. Katz, M.P. Muller, A. Simor, M. Loeb, J. Powis, S.P. Kuster, J.M. Di Bella, K.K.L. Coleman, S.J. Drews, P. Kohler, A. McGeer, for the Canadian Healthcare Worker Study Group
*University of Toronto, Canada

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 513-521


背景
ウイルス性呼吸器疾患はアウトブレイクのよく見られる原因であり、一部の患者にとっては致命的になりうる。

目的
検査で確認されたウイルス性呼吸器感染症と、過去 7 日間の可能性のある曝露源との関連性を検討すること。

方法
本コホート内症例対照解析において、2010/11 年の冬から 2013/14 年の冬の間に急性呼吸器疾患を発症したカナダの病院 9 施設の医療従事者はスワブを提出し、ウイルス性病原体の検査が行われた。関連する疾患日誌と疾患を有しない参加者の週間日誌により、前の週に急性呼吸器疾患の症状を呈した人々との接触に関する情報が示された。試験の週と場所に基づいて呼吸器症状のない対照とマッチさせ、条件付ロジスティック回帰により症例間の関連性を評価した。

結果
検査で確認されたウイルス性呼吸器疾患は 814 例であった。ウイルス性疾患の補正オッズ比(aOR)は、疾患を有する家族(7.0、95%信頼区間[CI]5.4 ~ 9.1)、同僚(3.4、95%CI 2.4 ~ 4.7)、または他の社会的接触(5.1、95%CI 3.6 ~ 7.1)への曝露を報告している医療従事者がより高かった。呼吸器疾患を有する患者への曝露は、感染と関連していなかった(aOR 0.9、95%CI 0.7 ~ 1.2)。しかし、直接患者と接触する医療従事者のオッズはより高かった(aOR 1.3、95%CI 1.1 ~ 1.6)。曝露および患者との直接の接触の aOR は、インフルエンザに起因する疾患でも同様であった。

結論
地域社会および同僚との接触は、医療従事者におけるウイルス性呼吸器疾患の重要な曝露源であるが、呼吸器感染症を有すると認識されている患者への曝露は関連していない。患者との直接の接触に関連するリスクが比較的低いのは、無症状の患者または認識されていない感染症に関連する伝播を反映している可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
COVID-19 でも無症状病原体保有者、または症状発現直前のウイルス排泄および感染性が問題になっている。濃厚に接触する家族や同僚との接触による感染リスクが高いのはもっともなことであるが、診療における感染対策は、無症状者まで想定するとなると、やはり標準予防策の徹底が重要だという結論になるのだろう。

2 つの手法を用いた人工呼吸器関連肺炎のサーベイランス

Ventilator-associated pneumonia surveillance using two methods

T.H. Craven*, G. Wojcik, J. McCoubrey, O. Brooks, E. Grant, S. Keating, J. Reilly, I.F. Laurenson, K. Kefala, T.S. Walsh
*University of Edinburgh, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 522-528

背景
人工呼吸器関連肺炎のサーベイランスは、一部の症例は予防できうるが死亡の要因となる可能性もあるという懸念が理由で、質の指標の 1 つとして用いられている。全国的な報告のためにさまざまなサーベイランスの基準が存在しているが、大規模な直接比較は実施されていない。

方法
前向きコホート研究では、欧州疾病対策センターと米国疾病対策センターの、人工呼吸器関連肺炎に対してルーチンに使用される 2 つのサーベイランスの基準を、大規模な総合集中治療室 2 室に入院しているすべての患者に適用した。診断率および診断事象間の一致を比較した。

結果
研究期間中にリスクのある患者計 713 例が特定された。欧州のサーベイランスアルゴリズムは、1,000 人工呼吸器日あたり人工呼吸器関連肺炎 4.6 例(95%信頼区間[CI]3.1 ~ 6.6)の診断率を返し、米国のサーベイランスシステムでは診断率は 1,000 人工呼吸器日あたり 5.4 例(95%CI 3.8 ~ 7.5)であった。診断事象間の一致は不良であった(Cohen のカッパ係数 0.127[-0.003 ~ 0.256])。

結論
アルゴリズムは同程度の診断率を算出したが、事象の一致の不足により人工呼吸器関連肺炎の診断に対するアルゴリズム間の不一致が明らかになり、治療の質の指標としてのサーベイランスの役割を損ねる可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
人工呼吸器関連肺炎のサーベイランス基準はいまだに議論の絶えないところである。本研究でも陽性率は類似した結果であったが、該当した症例の一致率は低かった。何のためのサーベイランスかを明らかにし、その目的に合致した症例を拾い上げることができるような基準作りが必要である。

危機一髪?髭のある医療従事者における P2/N95 マスクの性能:BEARDS(BEnchmarking Adequate Respiratory DefenceS:適切な呼吸器防御のベンチマーキング)スタディの結果★★

A close shave? Performance of P2/N95 respirators in healthcare workers with facial hair: results of the BEARDS (BEnchmarking Adequate Respiratory DefenceS) study

I. Sandaradura*, E. Goeman, G. Pontivivo, E. Fine, H. Gray, S. Kerr, D. Marriott, J. Harkness, D. Andresen
*St Vincent’s Hospital, Sydney, Australia

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 529-533

P2/N95 マスクは、医療従事者を空気感染から守る。本研究では男性医療従事者 105 名(そのうち 38 名は髭をきれいに剃った状態)において、定量的なマスクの密着性に対する髭の影響を評価し、研究実施施設における男性の髭の比率を評価した。適切なマスクの密着を達成したのは男性医療従事者全体で 34 名(32%)のみであり、髭をきれいに剃った男性のうち 47%が含まれた。顔面の髭をすべて伸ばした状態の医療従事者で密着を達成した人はいなかった。髭の増加に伴って、適切なマスクの密着は有意に低下した(傾向の P 値< 0.01)。髭は男性従事者のうち 49%に存在した。本研究は、P2/N95 マスクの使用前の定量的フィットテストを支持するものである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
髭が N95 マスクの密着性を妨げることは過去から言われていることであるが、CDC も2017年 に髭と N95 について言及しているが、新型コロナウイルスの出現により再度注目されている。さらに NIOSH の規格は通過しているものの全く顔にフィットしない N95 マスクが巷にあふれている。N95 はあくまで 5μm 以下の微粒子の吸入を阻止するために着用するのであって、フィットテストは必須である。髭のデザインにより、N95 は大きくその効果が変化するため、髭の形状は重要である。ちなみに CDC が髭と N95 のフィット性をインフォグラフィックにしているので、是非参照して欲しい。
https://blogs.cdc.gov/niosh-science-blog/2017/11/02/noshave/

鼻腔内高流量酸素療法時における病原体拡散の可能性の評価★★

Assessment of the potential for pathogen dispersal during high-flow nasal therapy

M. Kotoda*, S. Hishiyama, K. Mitsui, T. Tanikawa, S. Morikawa, A. Takamino, T. Matsukawa
*University of Yamanashi, Japan

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 534-537

鼻腔内高流量酸素療法は、効果が高く、患者にとって快適であるため、病院における使用が増加している。しかし、患者の鼻腔内および口腔内に存在する病原体が圧縮空気によって拡散する可能性がある。本研究は、鼻腔内高流量酸素療法時における病原体拡散のリスクを検討することを目的とした。液体および細菌の拡散について、マネキンを用いた in vitro 実験系で評価を行った。高粘度の水または新鮮酵母溶液を、唾液および鼻腔粘膜分泌物の代用とした。拡散は顔および鼻カニューレの近接区域内に限定されたことから、鼻腔内高流量酸素療法により飛沫感染および接触感染のリスクは高まらないことが示唆された。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
鼻腔内高流量酸素療法(HFFC)の呼吸器感染症における使用については、賛否両論あり、特に現在世界的に流行している新型コロナウイルス感染症においては意見が分かれており、国により推奨度は異なる。本論文では、医療用マネキンを使用して、水分と真菌胞子を飛散させており、結論では最大でも 60 cm 以内であり、感染拡大には寄与しないと結論している。しかしながら、実際の患者では会話、咳、くしゃみ等によるエアロゾル発生が危惧されるため、日本呼吸器学会でも指針を出しているので参考にして欲しい。
HFNC を使用する時には、「空気感染対応が実施されており、入室時には医療従事者は N95マスク、患者にはサージカルマスク着用させる」などのコメントがなされている。(https://www.jrs.or.jp/uploads/uploads/files/information/20200424_COVID_HFNC.pdf

中国の寝たきりの入院患者における尿路感染症の有病率、発生率およびリスク因子:前向き多施設共同研究

Prevalence, incidence, and risk factors of urinary tract infection among immobile inpatients in China: a prospective, multi-centre study

C. Zhu*, H. Liu, Y. Wang, J. Jiao, Z. Li, J. Cao, B. Song, J. Jin, Y. Liu, X. Wen, S. Cheng, X. Wu
*Chinese Academy of Medical Sciences & Peking Union Medical College, China

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 538-544

背景
寝たきりの入院患者は尿路感染症(UTI)のリスクが高い。寝たきりの入院患者における UTI に関するさらなる疫学データが必要である。

目的
中国全域の病院 25 施設の寝たきりの患者における UTI について、有病率、発生率およびリスク因子を検討すること。

方法
本研究は全国的な多施設共同横断的調査である。我々は 3 次病院 6 施設、非 3 次病院 12施設、地域病院 7 施設を採用した。寝たきりの患者から入院期間中に、人口動態、臨床関連変数および UTI 特有の変数に関するデータを取得した。単変量解析および多変量解析を実施し、二項ロジスティック回帰分析を用いてリスク因子を特定した。

結果
寝たきりの患者 23,985 例のうち、393 例が UTI を有していた。寝たきりの入院患者における UTI の有病率と発生率は、それぞれ 1.64%(23,985 例中393 例)、1,000 患者日あたり 0.69 であった。カテーテル関連 UTI の感染率は、1,000 尿路カテーテル日あたり 2.25 であった。我々は、より長い寝たきりの日数、より長い入院期間、内科病棟にいること、留置尿道カテーテルの存在、長期間の留置カテーテル、グルココルチコイドの使用、女性、糖尿病、高年齢が、UTI の独立したリスク因子であることを確認した。

結論
寝たきりの患者は一般集団と同様の UTI のリスク因子を有していただけでなく、いくつかの追加のリスク因子も有していた。寝たきりの入院患者集団における UTI の管理には、より大きな注意を払う必要がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
寝たきり患者における尿路感染賞(UTI)の発生に関するリスク因子の同定であるが、従来のリスク因子としては、女性、UTI の既往歴、性活動歴、殺精子剤の使用、膣感染症、糖尿病、肥満に加えて尿道留置カテーテルの存在と長期留置は、よく知られている、本論文では、寝たきり患者においての新たなリスク因子として、長期臥床とステロイドの使用が同定された。しかしながら、UTI の起炎病原体や耐性菌等についての解析がなされていない。

病院 1 施設における Mycobacterium paragordonae の偽性アウトブレイク:給水システムの蛇口に設置されたエアレータ/整流器が関与する可能性

Pseudo-outbreak of Mycobacterium paragordonae in a hospital: possible role of the aerator/rectifier connected to the faucet of the water supply system


I. Takajo*, C. Iwao, M. Aratake, Y. Nakayama, A. Yamada, N. Takeda, Y. Saeki, K. Umeki, T. Toyama, Y. Hirabara, M. Fukuda, A. Okayama
*Miyazaki University Hospital, Japan

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 545-551

背景
病院において、給水システムが関与する非結核性抗酸菌(NTM)による偽性アウトブレイクが以前に報告されている。著者らは 2014 年に日本の病院 1 施設において、改築および改修後の臨床サンプルで NTM が分離される頻度が高いことを報告した。

目的
NTM について、それらが病院の給水システムと関連する可能性について、また予防措置の結果について分析すること。

方法
NTM について検査を行うため、院内の複数病棟において給水システムから環境サンプルを採取した。NTM 陽性の結果が得られた場合は、ポリメラーゼ連鎖反応検査(PCR)を用いてさらなる分析を行った。

結果
NTM の PCR 産物から、検査を行ったほとんどのサンプルで Mycobacterium paragordonae陽性の結果が示された。分析対象とした患者のうちでこれらの細菌による何らかの疾患を発症した者はいなかったため、このイベントは偽性アウトブレイクと考えられた。給水システムを調べたところ、病院の改修時に最近設置されたエアレータ/整流器から採取されたサンプルは、これらの細菌について検査陽性であることが明らかになった。そこで、病院内でエアレータ/整流器を取り外し、患者が水道水を飲まないようにする措置を講じた。その後、病院内で NTM に陽性のサンプルの頻度が減少した。

結論
本研究は、病院における M. paragordonae による偽性アウトブレイクの可能性を明らかにした数少ない研究の 1 つであり、これにより、そもそも病院内でエアレータ/整流器を使用すべきかどうかという疑問が提起された。なぜなら、これらの器材のメッシュ構造は給水における NTM の増殖を促進する可能性があるためである。環境に由来する細菌のサーベイランスが、特に病院の改築/改修後には、再強調される。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
非結核性抗酸菌(NTM)による偽性アウトブレイクは病院内の水道水の汚染で報告されており、本論文では「水道の蛇口のエアレータ」に定着したことが原因であった。水道の蛇口のエアレータ・整流器の目的は、水の流れの真直度と直径を制御し、シャワー状に拡散させて、水量の節約と水跳ねを防げることとされている。水道蛇口からの NTM は、時に免疫低下患者(血液悪性腫瘍、臓器移植、透析、AIDS)の感染症の原因となるため、病院において水道水の管理は見逃されがちであるが院内感染対策上注意が必要である。

ギリシャの新生児集中治療室において国特有の文化と状況が医療従事者の感染予防に関する認識に及ぼす影響

Influence of national culture and context on healthcare workers’ perceptions of infection prevention in Greek neonatal intensive care units

V. Triantafillou*, I. Kopsidas, A. Kyriakousi, T.E. Zaoutis, J.E. Szymczak
*Children’s Hospital of Philadelphia, USA

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 552-559

背景
新生児集中治療室(NICU)における医療関連感染症(HAI)は、病的状態、死亡および医療費の増大をもたらす結果となる。ギリシャの NICU における HAI の発生率は、欧州の中でも最も高い方である。この環境において、HAI の伝播および予防介入の実施に影響を及ぼす因子を明らかにすることが必要である。

目的
ギリシャの NICU において HAI 予防に関する医療従事者の認識を明らかにすること。

方法
アテネの病院 3 施設に勤務する NICU スタッフ(医師および看護師)および感染予防関係者(感染症治療医および感染制御看護師)を対象に定性的面接を実施した。面接はギリシャ語で行い、英語に書き起こして翻訳し、グラウンデッド・セオリーの改変アプローチを用いて分析した。

結果
面接を行ったのは 37 名の回答者(20 名が医師、17 名が看護師)であった。HAI 予防に対する主な障害として以下の 4 点が特定された:(1)リソース不足によるスタッフ不足、および狭隘な医療スペース、(2)HAI 予防に関する知識不足、(3)ギリシャ特有の文化規範(ピラミッド型の意思決定システム、公務員が給料以上に働こうとしないこと、個人的体験の方がエビデンスに基づく知識より優れているという信念、社会的課題に対する能動的ではなく受動的な対応など)、(4)国内における感染予防インフラの不足。回答者らは、これらの障害を克服するには、組織的なイニシアティブ、HAI に関わる実践成績に関する質の高いデータ、HAI 予防をめぐる実践への関与を構築するための人間関係、ならびにピラミッド構造を利用して「トップダウン」で変化を促進することによって可能であると考えていた。

結論
ギリシャの NICU において HAI 予防介入を実施するには、ケア提供を取り巻く状況を考慮し、国に特有の文化に特に注意を払う必要があるだろう。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
ギリシャの医療制度は国民皆保険制度であり、基本的にすべて無料で公的医療が提供され、医療費は出来高払制であり、病院の多くが公立であり、したがって医療従事者は公務員であることが特徴である。一方で、ギリシャは EU 諸国の中でもトップレベルの耐性菌の割合であることも知っておく重要な事項である。その様な背景のなかでの、NICUの 現状を報告した本論文は、スタッフ不足や狭隘なスペースなどは日本においても共通した事情であるが、国民性は明らかに異なっている点では救われる。この状況改善のために、不要な感染による医療コスト増大の自覚と積極的な感染対策の知識強化、個々の病院と国家的なサーベイランス体制の構築が必要と述べている。

米国で導入化学療法を受けている血液内科患者における入院中のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症による過剰な負担

Excess burden associated with Clostridioides difficile infection in haematological patients occurring during hospitalization with induction chemotherapy in the USA

L. Duhalde*, L. Lurienne, S.M. Wingen-Heimann, L. Guillou, R. Buffet, P.-A. Bandinelli
*Da Volterra, France

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 560-566


背景
血液疾患患者は、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症(CDI)を発症するリスクが高い。

目的
本研究は、米国において導入化学療法のための入院中に発症した CDI に関連する入院期間の延長および医療費の増大について記述することを目的としていた。

方法
米国のデータベース Truven Health Analytics® のデータを利用して後向き解析を実施した。急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、ホジキンリンパ腫、および非ホジキンリンパ腫のために導入化学療法を受けている患者の包括的入院データを解析した。入院中に発症した CDI 患者と対照者について、直接医療費および入院期間の症例対照比較を、厳密なマッチングアルゴリズムを用いて実施した。

結果
2014 年 1 月から 2017 年 12 月に患者計 2,611 例が組み入れられた。基礎疾患で多かったのは非ホジキンリンパ腫(43.5%)および急性骨髄性白血病(38.4%)で、患者の15%は幹細胞移植を受けていた。マッチングにより、CDI 症例 105 例を対照者 801 例と比較した。CDI 症例では対照患者と比較して入院費が平均で 36,113 米ドル高く(P=0.009)、CDI 症例では入院期間が平均で 8.9 日長かった(P=0.003)。

結論
今回の所見は、米国では導入化学療法を受けている血液内科患者において CDI に関連する負担が非常に大きいことを示している。この患者集団では特に、CDI 予防の必要性が高い。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
CDI 発症による医療費と入院期間の増大は当然であるが、本論文は血液悪性腫瘍患者における CDI に特化し、それらの医療費と入院期間を研究している点でオリジナリティをもつ。過去の報告では白血病患者の 3.5% 〜 7%で CDI 発症が報告されている。CDI 発症により、入院費用が約 36,000 ドル(約 385 万円)も余分にかかるという事実に驚愕する。CDIの原因菌である C. difficile は長期にわたり、環境に生存するため、徹底した環境整備と接触感染対策が必須であることはいまさら言うまでもない。CDI 感染症発症による予後の悪化が予測される。

EN 14348 および EN 14563 による蛍光ベースの迅速検出アッセイにおける結核菌殺菌効果の比較

Comparison of a rapid detection fluorescence-based assay targeting tuberculocidal efficacy with EN 14348 and EN 14563

K. Steinhauer*, K. Teckemeyer, P. Goroncy-Bermes
*Schülke & Mayr GmbH, Germany

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 567-563

背景
消毒薬の結核菌殺菌効果を評価することを目的として蛍光性マイコバクテリウム・テラエ(Mycobacterium terrae)を用いた迅速検査が最近報告されている。検査結果が得られるまでの時間は、これまでの検査と比べて大幅に短縮された。

目的
蛍光アッセイを用いた検査法を欧州規格(EN)と比較すること、また迅速検査法について、特に定量的懸濁試験を含めて検証を行うこと。

方法
定量的懸濁試験および定量的浸漬試験を、それぞれ EN 14348 および EN 14563 に従って実施した。定量的浸漬試験と、その後の緑色蛍光蛋白ベースの殺菌効果判定を、以前に報告した方法で実施した。検査対象の殺菌薬として過酢酸ベースの製剤を用いた。

結果
殺菌薬に対する EN 14348 による定量的懸濁試験および EN 14563 による定量的浸漬試験から、濃度 1%で 15 分間の接触時間後に結核菌殺菌効果が示された。この結果、蛍光アッセイで得られたデータから、殺菌薬濃度 1%で 15 分後に効果が示され、この殺菌薬使用後に生きた抗酸菌はいないことが示された。したがって、結核菌殺菌効果を示すために使用した同じ変数が、EN 14348 による定量的懸濁試験および EN 14563 定量的浸漬試験、あるいは緑色蛍光蛋白ベースの迅速検査法を適用して認められた。

結論
緑色蛍光蛋白ベースの迅速検査法は、十分確立された EN 試験手順(フェーズ 2、ステップ 1、およびフェーズ 2、ステップ 2 の両試験を含む)と同等の成績を示し、使用した殺菌薬で検討した濃度および接触時間で、殺菌薬の試験として迅速かつ高感度の評価ツールとなる。

サマリー原文(英語)はこちら


監訳者コメント
結核菌への消毒薬の効果の評価を従来の欧州規格(EN)では21日以上かかっていたところを緑色蛍光蛋白ベースの迅速検査法を行って10~12日に短縮できたという報告である。日本では結核が減少傾向にあるものの輸入例の割合が増えており、決して過去の感染症ではない。結核菌への消毒効果の評価にはこのような迅速な方法も今度検討される。

コアゲノム複数部位塩基配列タイピングは家畜関連メチシリン耐性黄色ブドウ球菌クローン複合体 398 によるコストのかかる院内アウトブレイクへの対処に不可欠のツール

Core genome multi-locus sequence typing as an essential tool in a high-cost livestock-associated meticillin-resistant Staphylococcus aureus CC398 hospital outbreak

M.L. Slott Jensen*, M. Nielsine Skov, H. Pries Kristiansen, A. Toft, H. Lundgaard, H. Gumpert, H. Westh, A. Holm, H.J. Kolmos, M. Kemp
*Odense University Hospital, Denmark

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 574-581

背景
家畜関連メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(livestock-associated meticillin-resistant Staphylococcus aureus;LA-MRSA)クローン複合体 398 は、病院内で伝播して罹患および死亡を引き起こす可能性がある。LA-MRSA クローン複合体(CC) 398 の院内伝播を阻止するための経済的コストについては、ほとんど報告されていない。伝播の早期検出は、介入の規模を減少させる可能性がある。

目的
伝播の連鎖に対するコアゲノム複数部位塩基配列タイピング(cgMLST)の検出能を評価すること、またLA- MRSA CC398 の院内伝播の発見後にさらなる拡散を阻止するための介入にかかるコストを推定すること。

方法
院内におけるLA-MRSA CC398 の伝播エピソード 2 件において患者 5 例が発生した。まず、標準的な介入として、患者および医療従事者に対する MRSA スクリーニングなどを実施した。分離株 5 株と、他の入院患者から得た疫学的関連のない MRSA CC398 分離株 17 株について全ゲノムシークエンシングを行った結果を、一塩基多型の比較および cgMLST により解析した。伝播の制御にかかるコストを、関連するデータ源から算出した。

結果
分離株 5 株は、ドラフトゲノム配列において最高 2 つの一塩基多型が認められ、他の分離株とはある程度距離のある、院内伝播のクラスターに関わっていたことが疑われた。cgMLST により、分離株 5 株は同じ配列型に分類され、散発分離株とは(2 株を例外として)異なっていた。さらに、cgMLST により伝播分離株 5 株は他のすべての分離株と分離された。アウトブレイクに対する介入の経済的コストは患者当たり 11,000 ユーロを超えていた。

結論
LA- MRSA CC398 は院内伝播を起こす可能性があり、その伝播に対する介入には多大なコストがかかる可能性がある。cgMLST はLA- MRSA の院内伝播のサーベイランスに有用である。

サマリー原文(英語)はこちら


監訳者コメント
LA-MRSAは養豚を中心に欧米で蔓延しており、CC398もしばしば院内伝播を引き起こす。特にMRSAの人の有病率の低いデンマークで問題となっている。欧米から生きた豚が輸入されることを考えるとCC398が日本国内に入ってくることも予想される。One Healthの観点からも畜産領域のMRSAのMLSTなどの遺伝子タイピングも重要であるが、日本で院内伝播として問題となるのは先の話であろう。

介護施設における抗菌薬スチュワードシップ:関係者にとって重要なアウトカム

Antimicrobial stewardship in care homes: outcomes of importance to stakeholders

H.Q. Nguyen*, D.T. Bradley, M.M. Tunney, C.M. Hughes
*Queen’s University Belfast, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 582-591


背景
介護施設における抗菌薬スチュワードシップの改善を目的とした試験において評価されたアウトカムにみられる不均一性は、エビデンスの質を損なってきた。この領域におけるエビデンスの解釈と統合を容易にするために、コアアウトカムセットが必要である。

目的
介護施設における抗菌薬スチュワードシップの改善を目的とした介入にとって重要であると、主要な関係者によって見なされるアウトカムを明らかにすること、ならびに今後の研究において使用が検討されるような、精緻化したアウトカムのリストを作成すること。

方法
対面または電話による半構造化面接を、主要な関係者に対して実施した。介護施設における抗菌薬スチュワードシップについてこれまで実施された無作為化対照試験で報告されたアウトカムを、面接におけるトピックガイドに含めた。参加者によって示唆されたアウトカム候補を同定するために内容分析を実施し、次いでさらなるレビューを行った。

結果
無作為化対照試験で報告された 27 のアウトカムを、精緻化した12 の包括的アウトカムにまとめた。参加者(研究者 6 名、医療従事者 31 名、および介護施設入居者の家族 4 名)との面接により、参加者にとって重要な 40 のアウトカムがさらに同定された。これら 52 のアウトカムの中で、抗菌薬の総数、抗菌薬処方の適切性、およびガイドラインの遵守は、ほとんどの参加者によって強調されたアウトカムであった。52 のアウトカムすべてをレビューした後、介護施設における抗菌薬スチュワードシップに関する試験で使用可能と思われる、精緻化した 14 のアウトカムのリストを作成した。

結論
介護施設における抗菌薬スチュワードシップに関する一連のアウトカム候補が同定され、その一部はこれまでの研究で報告されていなかった。精緻化した 14 のアウトカムリストは、介護施設における抗菌薬スチュワードシップに関する試験のためのコアアウトカムセットに適したものとして使用されることになろう。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
アイルランドで行われた介護施設における抗菌薬スチュワードシップのアウトカムに関する研究。日本では医療機関における抗菌薬スチュワードシップは整備が進められているが、介護施設においてはほとんど整備がされていない。介護施設においては十分な検査も行われずに抗菌薬が使用されていることも多く、介護施設における抗菌薬スチュワードシップを考える上で参考になる。

菌血症のルーチンの検出を目的とした 12 年間にわたる好気性単独の血液培養についての解析

Twelve year analysis of aerobic-only blood cultures for routine detection of bacteraemia

S. Stoneham*, W. Schilling, A. San Francisco, M. Llewelyn
*Royal Sussex County Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 592-596


検体採取の実践は、血流感染症の診断における血液培養結果の正確度を左右する。本研究において中心となった急性期病院で、好気性サンプルの量と数を増やすために、ルーチンの好気性単独の血液培養を導入した。より小規模の別の急性期病院では、好気性と嫌気性のペア培養をルーチンで送付した。培養結果と検体採取の実践を 2 病院間で比較したところ、嫌気性培養では回収された病原体が多く、これには通性嫌気性菌が含まれた。培養量および送付されたサンプル数は、国内の推奨に達していなかった。好気性培養の単独使用という方針により、培養された血液量は増加しなかった。これらの結果に基づき、中心となった急性期病院においてルーチンの培養として好気性と嫌気性のペア培養を再導入している。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
改めて血液培養において、好気性培養だけでなく、嫌気性培養も必要であることが示された。

気送管の危険:あなたが使っている容器はどれほど清潔か?

Perils of the pneumatic tube: how clean are your pods?

P. McMullen*, P. Lewis, O. McGugan, K. Mortimer
*St Helens and Knowsley Teaching Hospitals NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 597-599


気送管システムは、物品を効率的に輸送する上で病院にとって有用な設備であるが、さらなる研究によって気送管システムにはリスクを伴う可能性があることが示された。著者らは、気送管システム内で用いられる輸送容器について、特定の注意すべき微生物、すなわちメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)およびカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)を用いて汚染の程度を検討した。その結果、汚染細菌として VRE(53%)および MRSA(3%)が認められ、いずれも消毒の実施後にわずか 3%(VRE)および 0%(MRSA)にまで減少した。しかし、使用後の輸送容器にはすぐに再汚染が発生した。著者らの結果は、気送管システムが潜在的な病原体を病院全体に輸送する効率的な方法となりうることを示している。

サマリー原文(英語)はこちら


監訳者コメント
気送管の薬剤耐性菌汚染リスクはしばしば報告されており、ルーチンで衛生管理を行う必要性が示された。特にVREなどの汚染が多いことから、院内でVREが検出されている場合は気送管がリザーバーの一つとして考えられうる。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.