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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

コロナウイルスの影響により一部、監修者のコメントおよびレーティングを未監修のまま掲載しておりますので、ご了承ください。

従来の感染経路の再評価:職業曝露の評価の改良モデルと感染予防

Realigning the conventional routes of transmission: an improved model for occupational exposure assessment and infection prevention

C.K. Brown*, A.H. Mitchell
*George Mason University, USA

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 17-23

感染性病原体の感染や保菌が疑われる患者または確認されている患者における標準的な感染経路別の予防策に関する現在の推奨は、職業感染症の可能性をもたらす自己汚染から医療従事者を守るというよりも、他の患者への微生物伝播の予防、換言すれば、医療関連感染症発生の予防に最適である。本稿は、現在推奨されている感染予防・制御策をレビューし、労働衛生の観点から予防・制御の改善を図るためのフレームワークを提示する。業務の実践および環境に起因する 2 つの曝露経路(接触およびエアロゾル)を用いたモデルを示し、特定の病原微生物が病院および市中環境の患者や他の非就業者に伝播していく典型的な経路から焦点を移す。

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隔離予防策が QOL に及ぼす影響:メタアナリシス

Impact of isolation precautions on quality of life: a meta-analysis

A. Sharma*, D.R. Pillai, M. Lu, C. Doolan, J. Leal, J. Kim, A. Hollis
*University of Calgary, Canada

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 35-42

隔離予防策が患者の精神的健康状態に及ぼす影響は、いまだ十分に定量化されていない。本研究の目的は、隔離予防策が患者の健康関連 QOL および抑うつまたは不安の尺度に及ぼす影響を評価するとともに、不安と抑うつに伴う 1 日あたりの費用を推定することであった。隔離予防策の影響に関する文献を EMBASE および PubMed のデータベース、Google Scholar で検索した。論文の 2 段階スクリーニングを独立して実施した。QOL および精神的負担のさまざまな尺度を用いて隔離患者と非隔離患者を比較した論文を対象とした。Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS-A[不安]、HADS-D[抑うつ])を用いてメタアナリシスを実施した。選択した文献の精神的負担尺度のスコアを効果量としてグラフに示した。不安と抑うつに伴う 1 日あたりの費用をメタアナリシスによるプール平均差を用いて推定した。106 報の論文のうち 94 報は選択基準に満たないため除外され、残る 12 報を全文レビューによるスクリーニングの対象とした。論文の全文レビュー後、実証的分析の結果を報告した 7 報が最終的に残り、この 7 報のうち 4 報がメタアナリシスの対象となった。HADS-A のプール平均差の推定値は -1.4(P = 0.15)、HADS-D のプール平均差の推定値は -1.85(P = 0.09)であった。精神的負担尺度の実証的分析において、1 報を除くすべての研究で負の影響が示された。精神的負担のメタアナリシスと実証的分析の結果より、全体的に隔離患者の方が深刻な状況にあることが示唆された。質調整生存年の観点から、不安と抑うつの 1 日あたりの推定費用は約 10 US ドルであった。

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クリミア・コンゴ出血熱ウイルスに起因する院内感染

Nosocomial infections caused by Crimean-Congo haemorrhagic fever virus

K. Tsergouli*, T. Karampatakis, A-B. Haidich, S. Metallidis, A. Papa
*Aristotle University of Thessaloniki, Greece

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 43-52

クリミア・コンゴ出血熱は急性熱性疾患であり、出血症状を伴うことが多く、症例致死率が高い。原因病原体はクリミア・コンゴ出血熱ウイルスであり、主にダニの刺咬・ウイルス血症の患者や家畜の血液または組織の曝露によってヒトに伝播する。ヒトからヒトへの伝播は、通常は病院環境で起こり、医療従事者が主に感染する。病院環境におけるクリミア・コンゴ出血熱ウイルスの伝播の経路および環境を明らかにするために、クリミア・コンゴ出血熱ウイルスの院内感染に関するレビューを実施した。
1953 年から 2016 年に、アフリカ、アジア、ヨーロッパの 20 か国において、クリミア・コンゴ出血熱ウイルスによる院内感染症例 158 例が報告されている。ほぼ全例(92.4%)が有症状で、全体の症例致死率は 32.4%であった。大多数の症例(92.0%)は病院外来で感染し、10 例(8.0%)は検査室で感染した。症例の大半が医療従事者(86.1%)において発生し、面会者(12.7%)、入院患者(1.3%)と続いた。感染率が最も高い医療従事者は、看護職員(44.9%)、医師(32.3%)で、次いで検査室職員(6.3%)であった。主要な伝播経路は経皮的接触(34.3%)であった。皮膚への接触が症例の 22.2%を占め、エアロゾルへの曝露(近接)(18.2%)、間接的接触(17.2%)、患者環境への曝露(8.1%)と続いた。
クリミア・コンゴ出血熱ウイルスは、症例致死率が高い院内感染症を引き起こす可能性がある。クリミア・コンゴ出血熱患者のケアおよび治療の期間に、標準的な接触予防策、バリア予防策、空気予防策を適用すべきである。患者の安全性を改善し、医療関連クリミア・コンゴ出血熱ウイルス曝露を減らすためには、クリミア・コンゴ出血熱が鑑別診断に適切に加えられるように、医療従事者向けのガイドラインおよび教育が必要である。これにより、早期診断と感染予防策の実施が可能になるであろう。

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バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)制御策の経済的評価:システマティックレビュー

Economic evaluation of vancomycin-resistant enterococci (VRE) control practices: a systematic review

C. MacDougall*, J. Johnstone, C. Prematunge, K. Adomako, E. Nadolny, E. Truong, A. Saedi, G. Garber, B. Sander
*Public Health Ontario, Canada

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 53-63

バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染症の予防は医療上の優先課題である。しかしながら、VRE 制御介入の費用対効果は不明である。本研究の目的は、VRE 制御策、例えば、スクリーニング、接触予防策、患者隔離などの経済的評価に関するエビデンスを統合することである。1985 年 1 月から 2018 年 6 月に英語で発表された文献を検索し、病院環境での VRE 制御策の経済的評価に関するものを対象とした。計 4,711 報の論文を抽出し、9 報の主要な研究が、設定した基準に合致した。すべての研究で何らかの VRE スクリーニング法および接触予防策について評価され、対象は院内の 1 病棟(または選択患者集団)から多数の医療施設まで多岐にわたる集団であった。使用された介入と比較に著しいばらつきがあった。研究の大半(7 報)が費用対効果分析を実施し、2 報は費用結果分析であった。すべての経済的評価が病院の視点からであった。4 報の研究では、VRE に特有の制御策強化の実施により、費用効果的/費用削減となることが示され、2 報の研究では、VRE に特有の制御策の中止は費用効果的ではないないことが示された。3 報の研究では、VRE に特有の制御策の漸減により、費用効果的/費用削減となることが示された。Joanna Briggs Institute(JBI)の経済的評価チェックリストに基づくと、対象とした研究の質は概して低く、重要な限界として、介入効果推定に関するバイアスリスク、感度分析の欠如などがあった。ほとんどの研究で、何らかの VRE スクリーニング法と接触予防策の使用が費用効果的であることが示されている。研究の質が低いことと、介入と比較対照の不均一性により、VRE に特有の制御介入の費用対効果について明確な結論が得られていない。有用なエビデンスを強化するために、さらに質の高い経済的評価が必要である。

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閉鎖環境および半閉鎖環境でのノロウイルスのアウトブレイクにおける環境サンプル中のノロウイルス検出

Norovirus detection in environmental samples in norovirus outbreaks in closed and semi-closed settings

E. Rico*, C. Pérez, A. Belver, S. Sabaté, E. Razquin, J. de Benito, L. Coronas, A. Domínguez, M. Jané, The Working Group for the Study of Outbreaks of Acute Gastroenteritis in Catalonia (PI16/02005)
*Sub-direcció Regional a Barcelona del Departament de Salut, Spain

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 3-9

背景
環境表面は閉鎖環境および半閉鎖環境におけるノロウイルスのアウトブレイクの潜在的な感染媒体の 1 つである。環境サンプルの検査はアウトブレイクの制御に役立つ可能性がある。

目的
2017 年 1 月から 2019 年 3 月の間の、バルセロナ地方の閉鎖環境または半閉鎖環境(ナーシングホーム、学校、幼稚園、青少年の宿泊施設、病院および福祉医療センター)での急性胃腸炎のアウトブレイクにおけるノロウイルスによる環境汚染の程度を評価すること。

方法
前向きサーベイランス研究を行った。ノロウイルス急性胃腸炎のアウトブレイク 50 件のうち 46 件において、アウトブレイクの届け出がされた時と 10 日後に、閉鎖環境および半閉鎖環境の共用部分、トイレおよび台所の環境表面から環境サンプル(529 件)が採取された。環境サンプル採取に関する説明書を公衆衛生検査官に配布した。ノロウイルスは逆転写 PCR によって検出した。

結果
31 件(67.4%)のアウトブレイクにおいて、環境サンプルはノロウイルス陽性であった。ノロウイルスは、エレベーターのボタン(17 件中 4 件、24%)、トイレのハンドル(66 件中 16 件、24%)、手すり(34 件中 7 件、21%)で最も高頻度に検出された。初回のサンプル採取では陽性サンプルは主にトイレで確認され、2 回目のサンプル採取ではエレベーターのボタンとテレビのリモコン上でウイルスの残留がより多く確認された。ナーシングホームは、環境表面の汚染が最も多い(初回サンプルの 82%、2 回目のサンプルの 55%)タイプの環境であった。

結論
ウイルス検出の確率は、アウトブレイクの届け出または症状発現とサンプル採取との間の期間と無関係である。我々の結果は、閉鎖環境および半閉鎖環境での清掃手順と消毒における不備の可能性を示唆している。

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集中治療室 2 室における基質特異性拡張型β- ラクタマーゼ産生腸内細菌目細菌(extended-spectrum β-lactamase-producing Enterobacterales)およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)の獲得に対する保菌圧の影響:19 年間の後向きサーベイランス

Impact of colonization pressure on acquisition of extended-spectrum β-lactamase-producing Enterobacterales and meticillin-resistant Staphylococcus aureus in two intensive care units: a 19-year retrospective surveillance

S. Jolivet*, I. Lolom, S. Bailly, L. Bouadma, B. Lortat-Jacob, P. Montravers, L. Armand-Lefevre, J-F. Timsit, J-C. Lucet
*Bichat University Hospital, France

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 10-16

背景
保菌圧は集中治療室(ICU)獲得型多剤耐性菌(MDRO)のリスク因子の 1 つである。

目的
ICU 獲得型基質特異性拡張型β- ラクタマーゼ産生腸内細菌目細菌(extended-spectrum β-lactamase-producing Enterobacterales;ESBL-PE)およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)に対する保菌圧の長期的な個別の影響を評価すること。

方法
この後向き観察研究には、1997 年 1 月から 2015 年 12 月の間に ICU(内科および外科)2 室に入院したすべての患者が含まれた。入院時とその後毎週、直腸および鼻腔の監視培養を採取した。保菌または感染患者に対し、接触予防策が適用された。保菌圧は、全患者日に対する各 MDRO の陽性患者の患者日の比率として定義した。シングルレベルの負の 2 項回帰モデルを用いて、毎週の MDRO 獲得の発生率を評価した。

結果
対象患者 23,423 例のうち、ESBL-PE の保菌患者は 2,327 例(10.0%)で 660 例(2.8%)の獲得を含み、MRSA の保菌患者は 1,422 例(6.1%)で 351例(1.5%)の獲得を含んでいた。ESBL-PE の獲得は、1997 年の 0.51/1,000 患者曝露日から 2015 年の 6.06/1,000 患者曝露日へ増加していた(P < 0.001)。対照的に、MRSA の獲得は 3.75/1,000 患者曝露日から 0.08/1,000 患者曝露日へと着実に減少していた(P < 0.001)。期間レベルの共変数を調整すると、前の週の保菌圧は ESBL-PE に関しては MDRO の獲得に関連していたが(P < 0.001[内科 ICU]、P = 0.04[外科 ICU])、MRSA に関しては関連していなかった(P =0.34[内科 ICU]、P = 0.37[外科 ICU])。ESBL-PE に関して、保菌圧の上昇は 100/1,000 患者日を超えると有意であった。

結論
保菌圧は ESBL-PE 獲得の発生率の上昇に関与していたが、MRSA には関与していなかった。本研究は、感染制御策は MDRO に合わせて特化すべきであることを示唆している。

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ブラジルの病院におけるエビデンスベースの感染予防業務の実行のための全国にわたる質改善イニシアチブの結果

Results of a national system-wide quality improvement initiative for the implementation of evidence-based infection prevention practices in Brazilian hospitals

M.M. de Miranda Costa*, H.T. Santana, P.J. Saturno Hernandez, A.A. Carvalho, Z.A. da Silva Gama
*Brazilian Health Regulatory Agency, Brazil

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 24-34

背景
病院では質改善の手法は医療関連感染(HCAI)に対処するために推奨されている。しかし内部のイニシアチブは広く研究されている一方で、外部の全体にわたる観点からの質改善の手法の適用と効果に関するエビデンスはほとんどない。

目的
ブラジルにおける規制介入による HCAI の予防推進を目的とした全国規模の質改善イニシアチブの効果を分析すること。

方法
ブラジル国家衛生監督庁は病院 1,869 施設を対象に、事前事後の準実験デザインで設計および評価した質改善の循環的な手法を実行した。HCAI の予防に関連するエビデンスベースの質の指標 11 個と複合的な評価基準 1 個を集め、共有し、評価した。そして、改善を目的とした介入は参加型の多面的な規制措置に基づいた。介入後、絶対的および相対的な改善を推定した。

結果
全体で、ベースラインの評価では病院 563 施設(30.1%の回答)、計 86,837 床が参加し、2 回目には病院 681 施設(36.4%の回答)、計 101,231 床が参加した。国のすべての地域において、特にベースライン時に参加した病院群で、複合的な評価基準(P = 0.001)と同様に 11 個の判断基準のうち 10 個が改善した(P < 0.05)。中でも「手指衛生のインフラ」は 100%に達し(ベースライン時 97.9%、P = 0.001)、「手指衛生の手順」は 96.9%(ベースライン時 92.9%、P = 0.001)、「手指衛生のモニタリング」は70%(ベースライン時 60.7%、P < 0.001)、そして「抗菌薬の処方手順の存在」は 80.7%(ベースライン時 73.2%、P < 0.001)であった。介入後、参加病院の HCAI 率は低下した(P < 0.05)。

結論
この質改善の循環的な手法は、患者安全のための全体の介入を先導するのに有用であった。外部の規制は、内部の HCAI 予防の全国的な促進において実行可能であり効果的であった。

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監訳者コメント
ブラジルにおける HCAI 予防のための国家的な取り組みとその効果に関する報告である。11 の項目について経時的に介入・評価を行い、改善したことを報告している。指標を決めて経時的に介入・評価する手法は病院単位の ICT にも参考になるのではないだろうか。

3 次病院における表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)のリネゾリドおよびメチシリン耐性クローンに起因する長期地域的流行の状況

Long-term endemic situation caused by a linezolid- and meticillin-resistant clone of Staphylococcus epidermidis in a tertiary hospital

C. Rodríguez-Lucas, M.R. Rodicio, J. Càmara, M.Á. Domínguez, M. Alaguero, J. Fernández
*Hospital El Bierzo, Spain

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 64-69

背景
リネゾリド(LZD)耐性表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)は増加しており、LZD の消費量が多い病棟におけるアウトブレイクに主に関連している。

目的
LZD の使用という観点から、3 次病院 1 施設における LZD 耐性表皮ブドウ球菌の出現頻度を検討すること。

方法
2011 年から 2017 年の LZD 耐性表皮ブドウ球菌の出現頻度と LZD の使用(100 患者日あたりの 1 日規定用量[DDD]として表される)に関するデータを、後向きに分析した。選択された LZD 耐性表皮ブドウ球菌はパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)によって分類し、伝達性の LZD 耐性遺伝子のスクリーニングを行った。代表的な分離株を multi-locus sequence typing 法により分類し、リボソームの LZD 耐性メカニズムを検討した。

結果
全体で、435 の LZD 耐性表皮ブドウ球菌が検出され、LZD 消費量が多い集中治療室(ICU)(6.34 ~ 8.10 DDD)における出現頻度は 13.56%~ 32.93%であり、LZD の使用がかなり少ない残りの病棟(0.63 ~ 2.49 DDD)では、2.48%~ 6.80%であった。2013 年 6 月から 2014 年 6 月に回収された最初の LZD 耐性表皮ブドウ球菌分離株 44 株は、PFGE パターンによると近縁種であり、mecA 産生により 1 株を除いてすべてがメチシリン耐性であった。選択された分離株は ST2 に属し、SCCmec Ⅲ を保有し、23S rRNA 遺伝子の 6 コピーそれぞれのドメイン V 領域に G2576T 変異を有していた。分離株 44 株のうち 5 株(11.36%)は cfr 遺伝子陽性であった。

結論
LZD およびメチシリン耐性の ST2 クローンは ICU で確認され、また LZD の消費量の少ない病棟でも確認された。このことは、LZD の有効性を維持するため、病院のすべての部門において抗菌薬適正使用支援プログラムだけでなく感染制御策も実行および継続する必要があることを浮き彫りにしている。

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監訳者コメント
リネゾリドの表皮ブドウ球菌とそのアウトブレイクに関する報告である。耐性率とリネゾリドの使用量には相関が見られた。通常表皮ブドウ球菌であれば薬剤感受性まで行わないことも多いと思われるが、水面下でこのような耐性菌の増加が行っていないか、確認することも重要である。

2014 年から2015 年 に長期ケア施設で発生した長期の侵襲性 A 群レンサ球菌アウトブレイク:感染制御策および全ゲノムシークエンシング使用

A protracted iGAS outbreak in a long-term care facility 2014-2015: control measures and the use of wholegenome sequencing

S. Degala*, R. Puleston, R. Bates, R. Borges-Stewart, J. Coelho, G. Kapatai, V. Chalker, J. Mair-Jenkins
*National Infection Service, Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 70-77

背景
2014 年、長期ケア施設の入居者 2 例が、タイピングによる遺伝子型が同一(emm 11)の侵襲性 A 群レンサ球菌による感染症を発症し、1 例が死亡した。もう 1 例の入居者は回復したが、10 か月後に emm 11 遺伝子型の侵襲性 A 群レンサ球菌 による感染症のエピソードを再発した。この再発エピソードは、12 日以内に発生した第 3 の症例と関係し、さらなる調査が行われた。

目的
複数の技術を組み合わせて、今回のアウトブレイクが長期アウトブレイクであるかどうかを確定すること、伝播経路を解明すること、ならびに適切な感染制御策のための情報を提供すること。

方法
初発クラスターに対してルーチンの対応を行った後、第 2 の調査としてケア記録のレビューを含めた。これにより得られた情報を用いて、感染前の 10 日間における症例とスタッフおよび訪問者との相互関係についてのネットワークアナリシスを実施した。これらのデータを、症例に由来する分離株を用いたアウトブレイク後の全ゲノムシークエンシング、ならびにスタッフおよび入居者のスクリーニングと組み合わせた(A 群レンサ球菌分離株 44 株:11 株はアウトブレイクと関係し、33 株は孤発性の分離株)。

結果
侵襲性 A 群レンサ球菌感染症の確定症例 3 例中 2 例が死亡した(1 例は 2 回のエピソードを経験した)。すべての侵襲性 A 群レンサ球菌感染症症例、および 2015 年の非侵襲性分離株 6 株は emm 11 遺伝子型(全ゲノムシークエンシングによる単系統性のクレード)であった。ネットワークアナリシスにより、2015 年の侵襲性 A 群レンサ球菌感染症症例間において、スタッフ‐訪問者間の相互関係を介した間接的接触のみが示された。この結果から、共通の感染源、ならびに 11 か月の期間中にわたる保菌者および/または環境汚染を介した伝播拡大が示唆された。

結論
このアウトブレイクから、ルーチンの対応の一環としてスタッフ/入居者のスクリーニングおよびタイピングを行うことの利益が明らかにされた。ネットワークアナリシスおよび識別能の高い全ゲノムシークエンシングにより、アウトブレイクが長期にわたっていたことが明らかにされ、衛生および感染制御の問題に関する所見が支持され、我々の疫学上の理解への寄与が認められた。

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アウトブレイク時における脳脊髄液シャント感染症のリスク因子:症例対照研究

Risk factors for cerebrospinal fluid shunt infections during an outbreak: a case-control study

A.K. McAlpine*, L.J. Sauve, J.C. Collet, D.M. Goldfarb, E. Guest, P.J. McDonald, A. Zheng, J.A. Srigley
*British Columbia Children’s Hospital, Vancouver, Canada

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 78-82

背景
脳脊髄液シャント感染症アウトブレイクの報告として発表されているものはほとんどない。2017 年から 2018 年に、British Columbia Children’s Hospital において、新しい手術室への移行および使用するカテーテルの変更に伴って、脳脊髄液シャント感染症の増加が認められた。

目的
アウトブレイクがどのようにして検出されたのかを記述するために調査を実施して、アウトブレイク時の脳脊髄液シャント感染症の原因、関連するリスク因子、ならびにアウトブレイクを制御する試みとして実施された変更を明らかにすることを試みた。

方法
後向き症例対照研究。研究対象集団には、シャントの新規設置または交換を受けた患者を含めた。単変量ロジスティック回帰モデルを各変数にフィットさせた。P 値< 0.2 が認められた関連を、さらなる調査の対象候補と見なした。

結果
脳脊髄液シャント感染症症例が 6 例、対照者が 19 例であった。原因微生物は、各症例によって異なっていた。さらなる調査対象とする基準を満たしたリスク因子は、シャント術時に新生児であること(オッズ比[OR]9.0、95%信頼区間[CI]0.7 ~ 125.3、P = 0.10)および消化器疾患を有していること(OR 3.8、95%CI 0.5 ~ 26.2、P = 0.18)のみであった。使用された手術室または手術スタッフとの関連は認められなかった。アウトブレイクへの対応として、手術室間の人的移動を制限し、サージカルマスク着用の厳格な遵守を強化し、以前に使用した脳脊髄液シャントカテーテルへの交換が実施された。

結論
修正可能なリスク因子で脳脊髄液シャント感染症と関連していたものはなかった。手術プロトコール変更の実施後、アウトブレイクと見なされる脳脊髄液シャント感染症のさらなる症例は同定されなかった。

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監訳者コメント
脳室シャント術は小児の水頭症治療に実施されるが、合併症は起こりやすいく、その主なものは閉塞、感染、機械的なシャント不良、ドレナージ過剰、カテーテル遠位端の不良などである。過去の報告では小児患者では、実施一年で 30 ~ 40%、2 年で約 50%とされている。シャント感染のリスク因子として、未熟児、低年齢、過去のシャント感染、水頭症の病態、胃瘻の留置などがあげられている。さらに周術期のリスク因子としては、脳外科医の経験や内視鏡使用、手術時間、不適切な皮膚処理、頭髪の剃毛、術野が広すぎること、脳脊髄液漏、手術手袋の破損などが報告されている。本論文で指摘された二つのリスク因子はこれまでの報告と同様であり、発見後に実施された複数の予防対策によりアウトブレイクは終息した。本アウトブレイクでのシャント感染の起炎菌は、半数が黄色ブドウ球菌を含むブドウ球菌属で、クレブシエラ属や緑膿菌が検出され、通常ブドウ球菌属が大半を占める既報とは異なるが、その原因は不明である。外科的操作におけるアウトブレイクは同一菌ではない場合もあり、早期に「おかしい、異常だ」と発見し、周術期の手技の見直しが必要である。

急性期病院レベルにおけるWHO Infection Prevention and Control Assessment Frameworkの検証★★

Testing of the WHO Infection Prevention and Control Assessment Framework at acute healthcare facility level

S. Tomczyk*, S. Aghdassi, J. Storr, S. Hansen, A.J. Stewardson, P. Bischoff, P. Gastmeier, B. Allegranzi
*World Health Organization, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 83-90

背景
モニタリングおよび評価は、感染予防・制御の実施における不可欠の部分である。著者らは Infection Prevention and Control Assessment Framework(IPCAF)を開発し、急性期医療施設における感染予防・制御プログラムの中核要素に関する世界保健機関(WHO)のガイドラインを促進することを試みた。

目的
IPCAF ツールの世界規模での使用における有用性および信頼性を評価すること。

方法
IPCAF は、WHO の 8 つの中核要素に従って感染予防・制御の実施レベルを評価するための質問票とスコア判定法から成る。同ツールについて、事前に定性的評価を実施して改訂を行い、選択した言語に翻訳した。病院の便宜的サンプルに対して、最終的な検証への参加を呼びかけた。各病院において 2 名以上の感染予防・制御専門家が、独立して IPCAF および有用性質問票にオンラインで回答した。同ツールについて内的一貫性および観察者間信頼性、あるいはクラス間相関係数を評価し、有用性質問票の結果を記述的に要約した。

結果
合計で、46 カ国、病院 181 施設、および 324 名の個人が参加した。回答者のうち、52 名(16%)が低所得国、55 名(17%)が低中所得国出身だった。回答者の 52%は、IPCAFを 1 時間以内で記入した。全体として、内的一貫性は十分であり、クラス間相関係数は高かった(0.92、95%信頼区間 0.89 ~ 0.94)。10 項目の質問は信頼性が低く(クラス間相関係数< 0.4)。これらの項目については、有用性に関するフィードバックと専門家の意見に従って、改訂を検討した。

結論
WHO IPCAF について、頑健な多国間研究により検証を行い、必要に応じて改訂した。それにより、同ツールは医療施設における感染予防・制御の改善にとって効果的なものとなった。

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監訳者コメント
感染予防対策活動の内容を定量的評価(点数化)することは重要で、まず現状を評価した後に改善点を含め次期活動を計画し、計画実施後に再度評価し、実施前と比較することで、病院の感染対策の質改善につながる、すなわち PDCA サイクルを回すことである。2017 年に作成されたこの WHO の IPCF は、急性期病院のためのツールであり、8 つの主要項目(コアエレメント:CC)から構成されている。CC は自由記載はなくクローズドの質問形式で、各項目 100 点満点となっている。具体的に、①感染予防策のプログラム(ICP チームに最低 1 名の専従者、対策委員会の積極的サポート、微生物検査室の信頼性など)②ガイドライン作成(手指衛生、感染経路別対策、カテーテル関連血流感染防止、感染性廃棄物、ガイドライン遵守状況調査など)、③教育訓練(専門家による教育訓練、定期的な職員教育、清掃業者や患者ケアに関与する職員の定期的教育、教育プログラムの効果判定)、④サーベイランス実施(SSI、デバイス関連、特定部門[ICU/NICU]など)など)、⑤多方面からの感染対策実施に関する戦略と介入(システム変更、教育訓練、監視とデータ還元、安全文化など)、⑥実践現場での監査と還元(明確な目標を掲げた計画実施状況の監視、監視項目の職員への明示、手指衛生自己評価など)、⑦仕事量・人員・ベッド占有率(適切な人材配置、国際基準に準拠した病棟設計、ベッド間隔など)、⑧設備と環境、器材(水道の水質、手指衛生設備、室内換気など)があり、これらを自己評価することで自身の病院の感染対策が組織的に動いているかを確認できるので、是非一読することをお薦めする。

2017 年から 2018 年のギリシャでの麻疹流行時における医療従事者の罹患と関連する費用:実臨床における疾患関連費用分析

Costs associated with measles in healthcare personnel during the 2017-2018 epidemic in Greece: a realworld data cost-of-illness analysis

H.C. Maltezou*, X. Dedoukou, E. Pavi, M. Theodoridou, K. Athanasakis
*Department for Interventions in Healthcare Facilities, Greece

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 91-94

麻疹は医療従事者にとって職業リスクの 1 つである。2017 年から 2018 年のギリシャで医療従事者において麻疹症例計 117 例が認められた。著者らは、そのうち 46 名と連絡が取れた。連絡が取れた医療従事者のほとんどは、合併症を伴う重篤な臨床経過をたどり、症例の 67%で入院を要した。すべての医療従事者が長期欠勤したと報告し、欠勤期間は平均で 21.2 就業日(範囲 3 ~ 60 日)であった。医療従事者の 54.3%は、症状を有しながらの就業が平均で 2.3 就業日(範囲 1 ~ 7 日)であったと報告した。麻疹による平均の疾患関連総費用は、医療従事者 1名当たり 4,739 ユーロであった。医療従事者で認められた 117 例における直接・間接の総費用は554,494 ユーロにのぼり、これは真の費用より低い推定値であると考えられた。

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監訳者コメント
ギリシャにおける麻疹の医療従事者の罹患と関連する費用の報告。麻疹罹患に伴うコストを推定しているが、実際には自己負担費用や接触者の追跡などの感染管理に対する費用などが含まれておらず実際の費用はさらに高額になる。麻疹に罹患したスタッフのほとんどが完全に予防接種を受けていなかったことから、改めて医療従事者に対する予防接種プログラムの重要性が理解できる。

クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症疑い症例の便サンプルの検査処理におけるBristol Stool Form Chartスコア判定法の有用性

Usefulness of the Bristol Stool Form Chart scoring system for the laboratory processing of faecal samples in suspected Clostridioides difficile cases

R.A. Corrigan*, K. Sithamparanathan, C. Kenny, T.H.N. Wong
*Stoke Mandeville Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 95-97

クロストリオイデス・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)は、入院患者にとって依然として脅威である。下痢(Bristol Stool Form Chart スコア 5 ~ 7 と定義)を有し、別の原因が考えられないすべての患者に対して、CDI の検査を行うこととした。サンプルは、検体容器の4 分の 1 を満たすこととした。検査室で CDI の検査を行うべきサンプルの決定における Bristol Stool Form Chart による下痢の定義の使用について評価を行った。本研究では、グルタミン酸脱水素酵素陽性で、毒素陽性のサンプルの 3 分の 2 が、Bristol Stool Form Chart スコア 5 未満と判定された。したがって、Bristol Stool Form Chart は、検査室において CDI の検査を行うべきサンプルの決定に用いるべきではない。

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監訳者コメント
CDI の検査を行う基準として Bristol Stool Form Chart による便の性状評価が行われ、スコア 5 以上での検査が推奨されており、日本の CDI 診療ガイドラインでも採用されている。レターでも指摘されているように、本研究では Bristol Stool Form Chart のスコア 5 未満の検体はトキシン陽性 C. difficile 保菌が含まれている可能性があり、そうであれば過剰診療につながる可能性もある。本研究をもって CDI 検査を Bristol Stool Scale での便の性状評価に用いるべきではないと結論付けることはできない。

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