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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

コロナウイルスの影響により一部、監修者のコメントおよびレーティングを未監修のまま掲載しておりますので、ご了承ください。

抗菌薬適正使用支援における教育の役割

The role of education in antimicrobial stewardship

J. Satterfield*, A.R. Miesner, K.M. Percival
*University of Iowa College of Pharmacy, USA

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 130-141

医療機関において抗菌薬適正使用支援プログラム(ASP)の役割が拡大している。ASP 介入には教育的要素がしばしば含まれるが、現行のガイドラインでは、教育的介入は単独で使用すべきではなく、他の管理介入を支援するために使用すべきであると勧めている。教育的介入は処方者(一般医が多い)に向けて実施されることがもっとも多く、他の医療従事者に向けて(薬剤師、看護師、あるいは適正使用支援チームのメンバーにおいても)教育を提供する研究は少ない。教育的介入の実施頻度はもっとも高いが、単独ではなく、早期モニタリングとフィードバックなどの管理介入が同時に行われる。このような対策は、処方行動に良い影響を及ぼすようであるが、教育の効果を他の介入から離すことはできない。一般的な教育方法には、1 回限りのセミナー、オンラインでの e ラーニングモジュールなどがあるが、ソーシャル・メディア・プラットフォーム、教育的なビデオゲーム、問題解決型学習モジュールなどユニークな対策も採用されている。患者に対する教育は、院内処方者の教育および処方に影響を及ぼす地域密着型のより広範な取り組みと連動して行われることが多い。このような患者教育を評価する研究では、受動的な教育用小冊子がよく用いられ、上気道感染症の適切な治療に主眼が置かれることがもっとも多い。教育的介入は、ASP のその他の介入に不可欠な要素であると考えられるが、地域の公衆衛生介入の枠外で、単独の介入として使用を支持するエビデンスは不足している。今後の研究では、ASP 活動における教育のより広範な役割を明らかにするために、処方者以外への教育および上気道感染症以外の病態も対象とした教育的介入の有効性について重点的に取り組むべきである。

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監訳者コメント
感染症診療における抗菌薬の適正使用は、予防的抗菌薬処方・経験的治療・臓器や検出病原菌の種類や薬剤感受性情報に基づく抗菌薬療法選択など多岐にわたる。そのため、短時間の教育で賄える教育プログラムには限界があり、適正使用支援プログラムの必要性がでてくる。

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症の検査および治療における造影法:先端的な画像処理技術の役割

Imaging in the investigation and management of Staphylococcus aureus bacteraemia: a role for advanced imaging techniques

A.L. Goodman*, G.J. Cook, V. Goh
*MRC Clinical Trials Unit, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 234-241

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症(SAB)は、英国では毎年約 25,000 例の患者が罹患しており、90 日時点の粗死亡率は 30%と高い。迅速な感染源制御は敗血症および SAB のアウトカムを改善し、このことは敗血症のガイドラインにも記載されている。SAB に対する補助的な抗菌薬治療に関する最近の臨床試験では、SAB 再発の大多数が、感染源管理の不備と関連していることが確認された。この状況では、感染源を制御する能力が、感染巣の検出能によって制限されている可能性がある。心エコー像は今や、予測できない感染性疣贅の形成における未知の病巣を検出するツールとしてルーチンに使用されている。別の方法では見落とされる可能性のある病巣を検出する先端的な画像処理技術([18F]フルオロデオキシグルコース陽電子放射断層撮影/コンピュータ断層撮影[18F-FDG PET/CT]および磁気共鳴画像法[全身 MRI を含む])の有用性を調査するために文献をレビューした。未知の病巣は死亡率の上昇と関連するが、本稿では、病巣の検出の向上により感染源制御を改善することができ、結果としてSAB の転帰が改善されることを提示する。

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監訳者コメント
菌血症にいたる原因検索を血液培養検査だけで終わらせないで、侵襲性の少ない感染性疣贅のスクリーニングを行うことは治療予後に影響するために重要である。

エビデンスの強さはどこに?感染予防・制御のためのガイドラインのレビュー

Where is the strength of evidence? A review of infection prevention and control guidelines

B.G. Mitchell*, O. Fasugba, P.L. Russo
*University of Newcastle, Australia

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 242-251

医療における安全性と質の重要な側面は、感染予防・制御のためのガイドラインの実施である。しかし、このガイドラインの推奨事項の基礎となるエビデンスの強さについては、ほとんど知られていない。本研究の目的は、過去 10 年間に発表された感染予防・制御のためのガイドラインの推奨事項の強さについて示すことである。このレビューでは、国内および国際的な感染予防・制御の臨床ガイドラインに関して、政府および専門機関のウェブサイトを目的に沿って検索した。検索は 2009 年 1 月から 2019 年 4 月の公表文献に限定し、推奨事項を支持するエビデンスの強さを決定するために、正式な分類システムを用いた文献を使用した。ガイドラインの推奨事項を 21 の感染制御カテゴリーに分類した。データの記述的統合を実施した。
1,855 の推奨事項から成る計 31 件のガイドラインを対象とした。ガイドラインは主に米国(11 件、35.5%)とカナダ(9 件、29.0%)で作成された。多くのガイドラインで、Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation(GRADE)アプローチが使用された(6 件、19.4%)。大多数のガイドラインが、デバイス(316 件、16.9%)、感染経路別予防策(315 件、16.8%)の主題に従ってカテゴリー分類された推奨事項を含んでいた。大半の推奨事項(769 件、41.5%)は、記述的研究によるエビデンス、専門家の見解、質の低いエビデンスによってグレード分類された。
国内および国際的な政府機関または専門機関により作成された膨大な数の感染予防・制御のためのガイドラインがあり、多くが強固なエビデンスに基づくものではなかった。このことは、現時点ではエビデンスの質が低い一般的な予防活動について優先的に取り組むべき研究の機会が多いことを示している。

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監訳者コメント
2010 年前後以降、感染予防のための各国の公的ガイドラインは GRADE 等の体系的な質評価方法を重要視してきた。一方でガイドラインに引用される論文には研究デザインには問題がなくても症例数や処置内容に人的要因が関わるために、データが真反対の結論を導き出している場合もあり解釈に慎重さを要する場合もある。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の院内伝播リスク:香港の一般病棟環境における経験

Risk of nosocomial transmission of coronavirus disease 2019: an experience in a general ward setting in Hong Kong

S.C.Y. Wong*, R.T-S. Kwong, T.C. Wu, J.W.M. Chan, M.Y. Chu, S.Y. Lee, H.Y. Wong, D.C. Lung
*Queen Elizabeth Hospital, Hong Kong Special Administrative Region

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 119-127

背景
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2019 年 12 月に中国武漢市で最初に報告され、中国の国内外さまざまな都市に急速に拡散した。香港は 2019 年 12 月 31 日に COVID-19 への備えを開始し、医療施設内の院内伝播を抑えるために、公立病院における感染制御策を強化した。とはいえ、病院環境の COVID-19 に必要な感染経路別予防策に関する推奨は、飛沫・接触予防策から、空気感染隔離室に患者が入室した場合の接触・空気予防策までさまざまである。

目的
COVID-19 が診断される前に一般病棟の開放病室で治療を受けていた 1 例の患者を発端としたアウトブレイクの調査について述べること。

方法
接触者を確認し、検疫もしくは医学的サーベイランス、またはその両方での決定に際して、リスクを「濃厚」または「非濃厚」と分類した。サーベイランス期間に発熱もしくは呼吸器症状、またはその両方がみられた接触者から呼吸器検体を採取し、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検査を実施した。

結果
接触者追跡により、職員 71 名、患者 49 例が確認され、職員 7 名と患者 10 例が「濃厚接触者」の基準に合致した。28 日間のサーベイランスの終了時点で、接触者 52 例において 76 回の検査が実施されており、すべて陰性で、濃厚接触の患者全員と、濃厚接触の職員 7 名のうち 6 名も含まれた。残りの接触者はサーベイランス期間を通して無症状であった。

結論
調査結果から、SARS-CoV-2 は空気感染経路により蔓延しないことが示唆され、院内伝播は、サージカルマスク着用、手指衛生、環境衛生など基本的な感染制御策を注意深く実施することによって予防できる。

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監訳者コメント
SARS-CoV-2 の伝播経路については、エアロゾルの発生する処置を行った際のエアロゾル感染についてリスク評価が必要となる。患者の咳嗽だけでなく医療処置行為にはエアロゾルを発生させるものが多く注意を要する。

オーストラリアにおけるカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌のアウトブレイク期間の保菌患者の入院費用

Hospitalization costs for patients colonized with carbapenemase-producing Enterobacterales during an Australian outbreak

A.J. Rodriguez-Acevedo*, X.J. Lee, T.M. Elliott, L.G. Gordon
*QIMR Berghofer Medical Research Institute, Australia

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 146-153

背景
カルバペネム産生腸内細菌科細菌は、増加傾向にあるカルバペネム系薬耐性グラム陰性菌群であり、米国では 9,000 例を超える病院関連感染症の原因となっている。医療の経済的かつ社会的負担を定量化する取り組みは、感染制御プログラムの実施のために資源計画の情報を提供するのに重要である。

目的
オーストラリアにおける OXA-181 カルバペネマーゼ産生大腸菌(Escherichia coli)のアウトブレイク期間の医療費を推定した。本研究の目的は、リスクの高い細菌の無症候性保菌患者における病院の経済的負担を把握することである。

方法
入院データおよび関連費用について州政府の公衆衛生部門から情報を得た。年齢、性別、入院病棟、診断区分について、保菌患者と非保菌患者をマッチさせた。医療費および入院期間の平均を一般化線形モデルにより調べ、時間依存性バイアス、患者年齢、病棟の位置について説明した。

結果
全体でみると、保菌患者の平均費用は(155,784 AU ドル、95%信頼区間[CI]77,892 ~ 285,604 AU ドル)は非保菌患者(25,964 AU ドル)よりも 6 倍多かった。75 ~ 79 歳のサブグループの平均費用は、35 ~ 39 歳の最若年サブグループと比較して 50%低かった(P = 0.02)。入院期間延長の平均は、保菌患者では 12 日(95%CI 3 ~ 21)であった。全費用における主な要因は看護であり、保菌患者では 44%、非保菌患者では 39%を占めた。

結論
公表された院内アウトブレイクの期間におけるカルバペネム産生腸内細菌科細菌の保菌患者は、非保菌患者よりも医療費が高かった。感染症患者により、病院のかなりの経済的負担が発生するが、保菌患者によっても発生する費用も多い。

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監訳者コメント
多剤耐性菌をマネジメントする上で、発症者だけの対応ではなく保菌者の対応の施設内アウトブレイクを阻止する上では重要である。どちらの対応にあたっても接触予防策を実施すると医療資源(人的資源や物質的資源)を消耗する。

大腸手術患者におけるケアバンドルの導入は、患者報告による手術部位感染症を効果的かつ持続的に減らす

Introduction of a care bundle effectively and sustainably reduces patient-reported surgical site infection in patients undergoing colorectal surgery

H.F. Dean*, E. King, D. Gane, D. Hocking, J. Rogers, A. Pullyblank
*North Bristol NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 156-161

背景
手術部位感染症(SSI)は、もっとも頻度の高い医療関連感染症の 1 つであり、とくに大腸手術後によくみられる。SSI は患者の罹病率および医療費の増加と関連する。退院後、とくに強化回復プログラムが実施される場合、SSI が発生することが多いので、そのモニタリングは困難である。

目的
大腸切除術を受けた患者において、患者報告による 30 日 SSI の効果的な評価法を開発すること。SSI 低減の維持を果たせる新たなケアバンドルを実施すること。

方法
Public Health England の SSI サーベイランス質問票を用いた。郵送および電話によるシステムなどいくつかのデータ収集法について試験した。4 つのエビデンスに基づく介入(2%クロルヘキシジンによる皮膚処置、手術に 4 時間を要した場合の抗菌薬反復投与、二重リング創縁保護、創縫合におけるトリクロサンコーティング縫合糸)を組み込んだ新たな SSI バンドルを当施設に導入した。システムの変更を導入し、その変更が持続可能であることを確認した。

結果
患者報告による SSI のもっとも信頼できる評価法は、郵送による質問票と非回答者に対する電話連絡であることが確認された。SSI サーベイランス質問票に対する回答率は、常に 75%を超えた。新たなケアバンドルの導入は、SSI 発生率を 20%から 10%へと有意に低下させ(P ≦ 0.0001)、これは 6 年間維持されている。

結論
患者報告による 30 日 SSI 発生率の信頼できる評価法について示した。この新たなケアバンドルの導入は、SSI 発生率を 20%から 10%に半減させた。

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監訳者コメント
大腸手術患者におけるケアバンドルの導入と患者報告による SSI の評価法について検討した論文である。退院後は、電話でのフォローアップを行い、電話での情報収集ができなかった場合は郵便で確認することで、75%を越える追跡率を保っていることは、素晴らしい成績である。

開頭術の術後肺炎:発生率、リスク因子、ノモグラムによる予測

Postoperative pneumonia after craniotomy: incidence, risk factors and prediction with a nomogram

D. Zhang*, H. Zhuo, G. Yang, H. Huang, C. Li, X. Wang, S. Zhao, J. Moliterno, Y. Zhang
* First Affiliated Hospital of Harbin Medical University, China

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 167-175

背景
術後肺炎は手術患者の合併症として 3 番目に多い。しかしながら、脳神経外科においてもっとも頻度の高い手技である開頭術の術後肺炎についてはほとんど知られていない。

目的
肺炎の発生率および肺炎と入院期間との関連の調査、リスク因子の特定、予測モデルとしてノモグラムの構築を目的とした。

方法
本研究集団は、American College of Surgeons のNational Surgical Quality Improvement Program の 2005 年から 2017 年のデータベースに基づいている。多変量ロジスティック回帰モデルおよび線形回帰モデルの両方を用いた。

結果
計 57,201 件の手術において術後肺炎の全発生率は 3.11%であった。リスク因子は、55 歳超、男性であること、体格指数(BMI)低値、糖尿病、機能的依存性、人工呼吸器依存、重度の慢性閉塞性肺疾患の病歴、高血圧症、全身性敗血症、白血球数 12,000 超、救急患者、American Society of Anesthesiologist 分類 3 度以上、全身麻酔、総手術時間 240 分超であった。10 の主要な因子をノモグラムに用いた(C 統計量= 0.803)。術後肺炎は、入院期間の延長と関連した。他の術後合併症と比較して、肺炎は入院期間の延長(4.7 日)に及ぼす影響が 2 番目に大きかった。

結論
本研究では、開頭術の術後肺炎に対する複数の術前リスク因子を特定した。男性であること、および BMI 低値を含む新たな因子により、さらなる研究が推奨される。この新規のノモグラムは、術後肺炎リスクを術前に評価するための信頼できるツールとしての機能を果たす。

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監訳者コメント
開頭術の術後肺炎の発生率とリスク因子を調査し、その結果から肺炎リスクを術前に評価するためのノモグラムを作成した研究である。肺炎の発生率は3.11%、1,778例であった。ノモグラムは 10 のリスク因子をスコア化し、そこからリスクを計算するものである。実用後の評価を知りたいところである。

内視鏡作業チャネルの損傷と細菌汚染に対する使用の関与

Contribution of usage to endoscope working channel damage and bacterial contamination

L.C.S. Santos*, F. Parvin, A. Huizer-Pajkos, J. Wang, D.W. Inglis, D. Andrade, H. Hu, K. Vickery
*Macquarie University, Australia

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 176-182

背景
バイオフィルム形成は、内視鏡チャネルの損傷部分と関連していることが示されてきた。処置・洗浄中の器具とブラシの内視鏡チャネル通過が、チャネルの損傷、細菌の付着およびバイオフィルム形成に関与しているという仮説を立てた。

目的
使用済みおよび新品の内視鏡チャネルにおける表面粗さと細菌の付着を、in vivo および in vitro で比較すること。

方法
臨床使用済みの(使用されなくなった)大腸内視鏡の生検チャネル 10 個と新品の大腸内視鏡の生検チャネル 7 個の表面粗さを、表面形状測定機によって分析した。in vitro 試験では、直径 3.0 mm の曲線状テフロンチューブに内視鏡用軟性生検鉗子を 100 回、200 回、500 回繰り返し通過させた。原子間力顕微鏡を用いて内面の損傷の程度を測定した。新品のテフロンチューブと鉗子を 500 回通過させたチューブの内面に付着した大腸菌(Escherichia coli)またはエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)の 37℃ 1 時間における数を、培養により測定した。

結果
使用済みの生検チャネルの平均の表面粗さは、新品の生検チャネルの表面粗さと比較して 1.5 倍大きいことが確認された(P = 0.03)。鉗子を 100 回、200 回、500 回通過させたテフロンチューブの表面粗さは、新品のテフロンチューブの表面粗さと比較して、それぞれ 1.05 倍、1.12 倍、3.2 倍大きかった(P = 0.025)。鉗子を 500 回通過させたテフロンチューブに付着した大腸菌および E. faecium の数は、新品のテフロンチューブに付着した大腸菌および E. faecium の数と比較して、それぞれ 2.9 倍(P = 0.021)、4.3 倍(P = 0.004)多かった。

結論
生検チャネルに損傷がある内視鏡の使用と細菌の付着増加との関連性が確認された。

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監訳者コメント
内視鏡の洗浄に用いるブラシの使用がチャネルを損傷させ、菌の付着に関与していることを検討した論文である。使用による損傷の見える化の手法が大変興味深いと思われた。

中国南部における抗菌薬耐性:2017 年の東莞市の前向きサーベイランスの結果

Antimicrobial resistance in southern China: results of prospective surveillance in Dongguan city, 2017

J. Wang*, M. Zhou, G. Huang, Z. Guo, J. Sauser, A. Metsini, D. Pittet, W. Zingg
*University of Geneva Hospitals and Faculty of Medicine, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 188-196

背景
中国において抗菌薬耐性(AMR)病原体に起因する感染症の負荷を推定した研究はほとんどない。

目的
中国・東莞市における AMR の概要を述べ、AMR 病原体に起因する市中感染症と医療関連感染症(HCAI)の頻度を評価すること。

方法
急性期病院 7 施設が 2017 年の抗菌薬感受性データを提供し、そのデータから「細菌と抗菌薬」の組み合わせを分析した。市中感染症の発生割合と HCAI の発生密度を算出するため、3 次病院 3 施設のデータを東莞の院内感染サーベイランスシステムから取得した患者データと統合した。

結果
計 16,548 の病原体を分析した。大腸菌(Escherichia coli)と肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)における第三世代セファロスポリン非感受性は、それぞれ 43.9%、30.2%であった。緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)とアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)におけるカルバペネム非感受性は、それぞれ 29.5%、50.9%であった。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の 4 分の 1 (26.3%)はオキサシリンに対して非感受性であった。第三世代セファロスポリンとフルオロキノロンの併用に対して非感受性の大腸菌に起因する HCAI の発生密度は 1,000 患者日あたり 0.09(95%信頼区間[CI]0.07 ~ 0.11)であった。大腸菌も肺炎桿菌も血液から分離された主要な病原体であった。多剤耐性大腸菌に起因する血流感染症の発生割合(14.9%)は、2017 年の欧州抗菌薬耐性サーベイランスネットワークの報告(4.6%)と比較すると有意に高かった。

結論
東莞市における非感受性の細菌と抗菌薬の組み合わせの発生頻度は、中国全体と比較して低かった。非感受性の細菌と抗菌薬の組み合わせは市中感染症と比較して HCAI で高頻度であった。東莞市における多剤耐性病原体に起因する血流感染症の発生割合は、欧州と比較して高かった。

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監訳者コメント:なし

整形外科診療所で患者情報取得のために使用される電子タブレットデバイス上の細菌数に対する殺菌ワイプと紫外線照射による減少効果:タブレットの清掃方法の評価

The effectiveness of germicidal wipes and ultraviolet irradiation in reducing bacterial loads on electronic tablet devices used to obtain patient information in orthopaedic clinics: evaluation of tablet cleaning methods

E.M. Allen*, M.F. McTague, C.P. Bay, J.G. Esposito, A. von Keudell, M.J. Weaver
*Harvard Medical School Orthopedic Trauma Initiative, USA

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 200-204

背景
電子タブレットデバイスは臨床と研究の両方の目的で患者情報を取得するために、外来診療所でよく使用されている。これらのデバイスには、しばしば細菌が定着している。この細菌数を減少させる清掃方法は多く挙げられる。

目的
本研究の主要目的は、殺菌ワイプまたは紫外線(UV)照射のいずれかによる定期的な清掃が、不定期の清掃と比較して細菌量の減少をもたらすかどうかを評価することであった。

方法
整形外科診療所において、各患者対応の間にタブレットを清掃する戦略に関するランダム化盲検試験を実施した。清掃方法は、殺菌ワイプ、UV 照射、またはタブレットが目に見えて汚れた時のみの清掃のいずれかに無作為に割り付けた。研究助手(処置を知らされていない)は、各診療日の初めと終わりにタブレットから細菌培養を採取した。

結果
各患者対応の間の殺菌ワイプの使用は、ルーチンの清掃なしと比較して細菌汚染量の著しい減少をもたらした(リスク比[RR]0.17、95%信頼区間[CI]0.04 ~ 0.67)。同様に、各患者対応の間の UV 照射の使用は、ルーチンの清掃なしと比較して有意に低い細菌汚染率につながった(RR 0.29、95%CI 0.09 ~ 0.95)。同定された細菌の大部分は皮膚の正常細菌叢であった。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)は同定されず、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(meticillin-sensitive Staphylococcus aureus)の低密度のコロニーのみが同定された。

結論
整形外科診療所において使用される電子タブレットは、ルーチンの清掃が実施されない場合は細菌が定着している。UV 照射または殺菌ワイプのいずれかのルーチンの使用は、この細菌負荷を有意に減少させる。潜在的な病原体への曝露を最小化するため、医療提供者は各患者対応の間にタブレットのルーチンの清掃を実施すべきである。

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監訳者コメント
臨床で使用される電子タブレットデバイスの表面の汚染と清掃による除去について検討した論文である。近年、病棟でタブレットが使用されることが増加してきており、簡便な方法と考えられる消毒薬を含有したワイプや紫外線照射が役立つことは、本論文でも考察されているように、定期的な清掃の実施のための有用なエビデンスになると思われた。

南アフリカ共和国・クワズール・ナタールの公立病院の環境におけるサルモネラ(Salmonella)属菌のサーベイランス

Surveillance of Salmonella spp. in the environment of public hospitals in KwaZulu-Natal, South Africa

B. Kennedy*, C.O. Shobo, O.T. Zishiri, L.A. Bester
*University of KwaZulu-Natal, South Africa

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 205-212

目的
南アフリカ共和国・クワズール・ナタールの 4 つのレベルの公立病院におけるサルモネラ(Salmonella)属菌の拡散を調査すること。

方法
Salmonella 属菌の同定は invA 遺伝子の増幅によって行った。分離菌に対して抗菌薬感受性試験、ならびに 8 つの耐性遺伝子(qnrAqnrBqnrStetAtetBtetC、tetGermB)と 3 つの病原性遺伝子(sitCspvAspv)の分子特性化を行った。分離菌間の遺伝的関連性は enterobacterial repetitive intergenic consensus(ERIC)-PCR 法を用いて明らかにした。

結果
94 の分離菌を採取した。分離菌の最大の供給源は地域病院であった。小児病棟は分離菌の分布率が最も高かった。看護師の机はサンプル採取を行ったすべての場所の中で最も多くの分離菌を含んでいた。分子タイピングによって、多様な分離菌を示す 22 のクラスターを得た。4 つの主要な ERIC 型が同定され、それぞれが特定の病院に固有であった。複数の病棟内の様々な場所で高度に近縁の分離菌が存在していたので、病棟を超えた拡散の可能性が示された。これらの場所の多くは医療スタッフの出入りが多い場所であった。10 の多剤耐性分離菌が確認された。

結論
本研究によって、環境の清掃と汚染除去を含む感染制御策は Salmonella 属菌の拡散を防ぐのに十分でない、または十分に遵守されていない可能性があることが示唆された。

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監訳者コメント
サルモネラ属菌のような腸内細菌科細菌は、環境汚染の影響は比較的少ないと考えられているが、本研究では、看護師の机、電話、血圧計などかなり広範囲に環境汚染が見られることを示した。日本でも薬剤耐性腸内細菌科細菌の増加が問題になっているが、その対応として、環境汚染への対処にもさらなる配慮が必要かもしれない。

手術室の換気と人工股関節全置換術後の感染症による再置換のリスク:ノルウェーの人工関節登録制度の検証済みデータのアセスメント

Operating room ventilation and the risk of revision due to infection after total hip arthroplasty: assessment of validated data in the Norwegian Arthroplasty Register

H. Langvatn*, J.C. Schrama, G. Cao, G. Hallan, O. Furnes, E. Lingaas, G. Walenkamp, L.B. Engesæter, H. Dale
*Norwegian Arthroplasty Register, Haukeland University Hospital, Norway

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 216-224

背景
手術室の空気は、手術スタッフまたは患者自身から放出される空中細菌による手術部位感染症(SSI)のリスク因子の 1 つと考えられている。

目的
ノルウェーの人工関節登録制度に報告された初回人工股関節全置換術(THA)後の深部感染症による再置換術のリスクに対して、検証済みの手術室の換気データが与える影響を評価すること。

方法
2005 年から 2015 年の間にノルウェーの人工関節登録制度に THA を報告した 40 の整形外科部門が含まれた。すべての病院の初回 THA 時の手術室の換気の正確な種類は、先行研究で確認済みであった。一方向流型(UDF)システムは、小型・小容量・一方向垂直気流システム、大型・大容量・一方向垂直気流システム、一方向水平気流システムに細分類された。これらの 3 つの換気群を従来型の乱流混合換気と比較した。感染症による再置換の時期というエンドポイントと手術室の換気との関連性は、患者および手術関連の複数の共変数を調整した多変量 Cox 回帰モデルでの相対リスク(RR)の算出によって推定した。

結果
計 51,292 件の初回 THA が本アセスメントに適格であった。このうち 575 件は感染症により再置換が行われた。小型・小容量・一方向垂直気流システムおよび一方向水平気流システムの手術室では、従来型の乱流混合換気の手術室と比較して、THA 施行後の感染症による同程度の再置換のリスクが認められた。大型・大容量・一方向垂直気流システムの手術室において施工された THA は、従来型の乱流混合換気の手術室と比較して、感染症による再置換のリスクが低かった(RR 0.8、95%信頼区間[CI]0.6 ~ 0.9、P = 0.01)。

結論
大型・大容量・一方向垂直気流システムの手術室において施工された THA は、従来型の乱流混合換気システムの手術室で施行された THA と比較して、感染症による再置換のリスクが低かった。すべての UDF システムは類似しており害を及ぼす可能性があるという認識は、誤りと思われる。

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監訳者コメント
一方向の垂直空調システムで、かつ流量が大きい方が人工股関節置換術の SSI が少ないことが示された。手術室の空調と SSI の関係を評価した研究の中では、比較的対象患者・対象施設の多い研究である。

ヒータークーラーユニットの水サンプルからのマイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)の回収に対するチオ硫酸ナトリウムの効果

The effect of sodium thiosulfate on the recovery of Mycobacterium chimaera from heater-cooler unit water samples

E.E.H. Mak*, L.H. Sng, B.W.M. Lee, J.W.L. Peh, R.E. Colman, M. Seifert
*University of California, USA

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 252-257

背景
ヒータークーラーユニットは、心臓胸部外科手術後の患者における侵襲的なマイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)感染症の、近年の世界的なアウトブレイクに関与してきた。感染患者は長期間無症候性のままである傾向があるため、リアルタイムでのヒータークーラーユニットからの M. chimaera の検出は、進行中の M. chimaera のヒータークーラーユニット関連のアウトブレイクを食い止めるために必須である。M. chimaera の存在を評価するためのサンプル採取手順では、採取工程中のチオ硫酸ナトリウムの添加に関して相反する勧告が行われている。

目的
M. chimaera の回収と培養汚染に対するチオ硫酸ナトリウムの効果を調査すること。

方法
ヒータークーラーユニットの水サンプル 76 対(チオ硫酸ナトリウムあり、なし)を採取・処理し、Lowenstein-Jensen 斜面培地、Middlebrook 7H10 寒天培地、mycobacteria growth indicator tube に同時に投入して、37°Cで培養した。追加で 31 対のサンプルのサブセットを mycobacterial growth indicator tubes を培地として用い、30°Cで培養した。

結果
3 つの培地のそれぞれにおいてチオ硫酸ナトリウムあり、なしで 37°Cで培養された 76 のサンプルのうち、M. chimera は 21 サンプルの 1 分割量以上で同定された。

結論
チオ硫酸ナトリウムの存在は、多変数条件付きロジスティックモデルにおいて M. chimera の回収確率を有意に上昇させることはなく、チオ硫酸ナトリウムありとなしの分割量間の培養汚染率は同程度であった。mycobacterial growth indicator tubes で 30°C と 37°Cの両方で培養されたサンプルのサブセットにおいても、チオ硫酸ナトリウムの存在はやはり M. chimera の回収に関連していなかったが、培養汚染の減少には有意に関連していた。

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監訳者コメント
イギリスでは、抗酸菌の環境培養においてその回収率を上げるためにチオ硫酸ナトリウムの使用を推奨している。本研究ではチオ硫酸ナトリウムの有無による非結核性抗酸菌、なかでもM. chimeraの環境培養への影響を評価している。結果、一般細菌などのコンタミネーションを抑制する効果はあったということである。日本でも抗酸菌の環境培養を行う場合念頭に置いておかなければならない要素だと考えられる。

ナーシングホームの感染管理支援は米国の州保健局ごとに異なる

Support of nursing homes in infection management varies by US State Departments of Health

R. Dorritie*, D.D. Quigley, M. Agarwal, A. Tark, A. Dick, P.W. Stone
*Helene Fuld College of Nursing, USA

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 258-264

背景
多くの国では医療関連感染(HAI)が長期高齢者介護居住施設において問題となっている。米国では HAI はナーシングホームで頻発している。ナーシングホームでの感染制御の改善と HAI の減少を促進するために、州保健局の効果的な実践を明らかにすることが必要である。

目的
第一歩として、ナーシングホームでの HAI 予防に関連する多様な州の意図と活動を、系統的に検討し目録を作ることが目的であった。

方法
州保健局のウェブサイト、HAI に関する計画、および HAIの州の情報画像の環境スキャンを実施した。(1)ナーシングホームでの HAI を減少させる意図、(2)ナーシングホームでの HAI を減少させる活動、(3)ウェブサイトの使いやすさの 3 領域にわたる 16 項目に関するデータを収集した。

結果
ナーシングホームに対する州の感染管理支援は大きく異なっていた。大部分の州(92%)は州の HAI に関する計画の中でナーシングホームに言及しており、76%は州の情報画像にナーシングホームを含んでいた。半数は HAI 予防の諮問機関を有している一方で、3 分の 1 は州で HAI 予防の協働を行っていた。HAI の減少に関するトレーニング資料を含んでいたのは、ナーシングホームに言及した HAI に関する計画のうち 57%のみであった。最もよく見られる利用可能なトレーニングは、抗菌薬適正使用支援に関するものであった。

結論
米国の多くの州は、感染制御に関してナーシングホームに提供する支援に改善の余地がある。具体的な改善点には、(1)HAI の減少に関するトレーニング資料の提供を増やすこと(2)発生しやすい HAI に関するトレーニング資料に焦点を合わせること、(3)HAI の減少を目指した協働へのナーシングホームの関与が含まれる。州保健局の活動と居住者の転帰を関連付けるさらなる調査が必要である。

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監訳者コメント
米国各州における介護施設における感染対策へのサポートについて調査した研究である。日本でも行政との協力において参考にできる資料である。

酸化銅による処理を施した軟表面および硬表面が医療関連感染の発生率に及ぼす効果:2 期にわたる研究

The effect of copper-oxide-treated soft and hard surfaces on the incidence of healthcare-associated infections: a two-phase study

P.E. Marik*, S. Shankaran, L. King
*Eastern Virginia Medical School, USA

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 265-271

背景
病院環境内の酸化銅含浸リネンおよび硬表面は、環境汚染を減少させ、それによって医療関連感染(HCAI)のリスクを低下させる可能性のある新技術の 1 つとして浮上してきた。

方法
本研究は2 期にわたる研究であった。第 1 期は前向きクラスター無作為化クロスオーバー臨床試験であり、本試験では当院の総合集中治療室(総合 ICU)の 1 群(8 床)は酸化銅含浸リネンを使用したのに対し、もう一方の群(8 床)は標準的な病院リネンを使用した。第 2 期は、酸化銅含浸リネンに加えてすべての硬表面に酸化銅による処理を施した、新たな ICU タワーへの ICU 3 室の移転を追った 2 年間の前後比較試験であった。HCAI は国家的医療安全ネットワークの定義を用いて記録した。

結果
第 1期には 1,282 例の患者が登録された。標準的なリネンを使用した患者と酸化銅含浸リネンの患者の間に HCAI の発生率の差は認められなかった。第 2 期ではクロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)による感染症の数に有意な減少が認められたが(1,000 患者日あたり 2.4 対 1,000 患者日あたり 0.7、発生率比 3.3、95%信頼区間[CI]1.4 ~ 8.7、P = 0.002)、中心ライン関連血流感染またはカテーテル関連尿路感染の発生率に差は認められなかった。

結論
酸化銅含浸リネン単独では、HCAI の発生率に対する効果は認められなかった。我々のデータは、酸化銅による処理を施した硬表面が C. difficile による感染率を低下させたことを示唆しているが、重要な交絡因子は除外できない。

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監訳者コメント
銅は以前より抗菌作用のある素材として研究されてきた。従来実験室レベルの研究は多くあったが、本研究は実臨床で銅を織り込んだリネンと銅を利用した環境表面の医療関連感染症に与える影響を評価した研究である。様々な交絡因子の関与が考えられる結果となったが、今後さらにこうした臨床現場での検証が進むであろう。

非デバイス関連感染症を最近きたした後に植込み型心臓電気デバイスの植込みを受けた患者の臨床アウトカム

Clinical outcomes of patients undergoing a cardiac implantable electronic device implantation following a recent non-device-related infection

H.-C. Chen*, Y.-L. Chen, W.-C. Lee, T.-H. Tsai, K.-L. Pan, Y.-S. Lin, M.-C. Chen
*Chang Gung University College of Medicine, Taiwan

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 272-279

背景
非デバイス関連感染症を最近きたした後に植込み型心臓電気デバイスの植込みを受けた患者の臨床アウトカムは不明である。

目的
植込み型心臓電気デバイスの植込みを受ける前に最近感染症をきたした患者の臨床アウトカムを評価すること。

方法
連続した患者(N = 1,237)を、最近感染症をきたした患者(N = 72)と最近感染症を有さなかった患者(N = 1,165)に分類した。最近の感染症は、医療記録のレビューにより確定し、これには症状および臨床所見、全身性炎症反応症候群の診断、ならびに quick Sequential Organ Failure Assessment(qSOFA)スコアを含めた。多変量ステップワイズロジスティック回帰分析を用いて、院内全死因死亡の独立予測因子を明らかにした。

結果
約 3 年間の追跡調査期間中に、患者 17 例が植込み型心臓電気デバイス感染症をきたし(1.4%)、植込み型心臓電気デバイス感染症の発生率は、症状および臨床所見による最近の感染症の有無によって有意差はなかった(2.8%対 1.3%、有意差なし)。しかし、最近感染症をきたした患者では、最近感染症を有さなかった患者と比べて、院内死亡率が有意に高かった(22.2%対 0.9%、P < 0.05)。多変量解析により、院内死亡の予測因子は植込み型心臓電気デバイス植込み前の最近の感染症(オッズ比[OR]20.3、95%信頼区間[CI]8.4 ~ 49.3、P < 0.001)および末期腎不全(OR 4.3、95%CI 1.4 ~ 12.8、P = 0.009)であった。

結論
最近感染症をきたした患者において、患者に発熱がなく、十分な期間の抗菌薬療法を受けている場合は、植込み型心臓電気デバイスの植込みは実施可能である。植込み前に情報を共有した意思決定に参加した患者に対して、最近の感染症により、とくに qSOFA スコア ≧ 2 の患者では、院内死亡リスクが高いことを伝えるべきである。

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監訳者コメント
人工物の関与に関わらず、外科的手術の前に遠隔部位感染症のコントロールは必須とされる。ただしそのエビデンスは個別の手術にそれぞれ存在するわけではない。植込み型心臓電気デバイスに関する本研究では、最近の感染症は十分に治療されている限りはデバイスの感染症と関係がなかったが、院内死亡率が高かった。これに関しては今後さらに検証が必要であるが、待てるようであれば、感染症の治療後、しばらく期間をおいてから植込み型心臓電気デバイスの手術を行うことも検討が必要であろう。

プロバイオティクスにより抗菌薬関連下痢症は予防できるか?多施設共同無作為化プラセボ対照試験の結果

Do probiotics prevent antibiotic-associated diarrhoea? Results of a multicentre randomized placebo-controlled trial

C. Rajkumar*, M. Wilks, J. Islam, K. Ali, J. Raftery, K.A. Davies, J. Timeyin, E. Cheek, J. Cohen, on behalf of the Investigators
*Universities of Brighton & Sussex, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 280-288

背景
抗菌薬関連下痢症は、抗菌薬使用の副作用であり、プロバイオティクスは抗菌薬関連下痢症を抑制することが示されている。

方法
多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施して、55 歳超の患者を対象に、抗菌薬関連下痢症およびクロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症の抑制における Lactobacillus casei DN114001(一般的な2 種類のヨーグルト配合細菌株を組み合わせた飲料とした)の役割を評価した。主要アウトカムは、2 週間の追跡調査期間中における抗菌薬関連下痢症の発生率とした。

結果
患者計 1,127 例(平均年齢 ± 標準偏差:73.6 ± 10.5)が、実薬群(N = 549)またはプラセボ群(N = 577)に無作為化された。両群について、プロトコールに従って追跡調査を行った。追跡調査期間中に抗菌薬関連下痢症をきたした患者の割合は、プロバイオティクス群では 19.3%(549 例中 106 例)であったのに対し、プラセボ群では 17.9%(577 例中 103 例)であった(未補正オッズ比 1.10、95%信頼区間 0.82 ~ 1.49、P = 0.53)。

結論
複数の英国の病院から登録されたこの高齢者集団において、抗菌薬関連下痢症の予防に関して特定のプロバイオティクス製剤に有益な効果があるという有意な所見は認められなかった。しかし、英国および他の多くの医療システムにおいて近年、抗菌薬適正使用支援における多くの変更、C. difficile 感染症発生率の全般的な低下、ならびに感染予防に対する意識向上、および看護実践における変更が認められてきた。これらの因子を考慮すると、今回の試験から、研究で用いられたプロバイオティクス製剤は抗菌薬関連下痢症の予防に役立たない、と最終的に結論付けることはできず、著者らの見解として、これらの変数の補正を行って、さらなる試験を実施する必要があると考える。

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監訳者コメント:
腸内常在細菌叢は、外部からの病原菌と競合して、栄養、腸管粘膜の表面レセプター、物理的スペースを守り、外敵の侵入を阻止し、腸内環境を最適に維持している。いわゆる「コロニゼーション・レジスタンス(定着阻止)」と呼ばれるものである。しかしながら、抗菌薬はこのバランスを崩し、外部の細菌の定着を許し、抗菌薬関連下痢症の原因となる。高齢者における腸管環境維持能力の低下(加齢による免役力低下)にともない発生する下痢、抗菌薬関連性下痢、CD 腸炎をプロバイティクス(細菌製剤)により防げないかとこれまで様々な研究が実施されてきたが、有用性が示唆されているものの、研究デザインと使用プロバイオティクスに多様性がありすぎるため、明確な有効性を結論づけるまでは至っていないというのが現状である。

極めて安定性の高い次亜塩素酸製剤と創傷治療に用いられる殺菌薬との殺菌効果の比較:バイオフィルムを有するまたは有さない微生物に対する in vitro 研究

Antimicrobial efficacy of a very stable hypochlorous acid formula compared with other antiseptics used in treating wounds: in-vitro study on micro-organisms with or without biofilm

R. Herruzo*, I. Herruzo
*Universidad Autónoma de Madrid, Spain

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 289-294

背景
多くの消毒薬が創傷治療に用いられている。

目的
ClHO(Clortech®)の創傷、健康な皮膚、および粘膜に対する殺菌効果を、他の消毒薬と比較すること。

方法
13 種類の殺菌製剤の殺菌効果について、8 種類の微生物(3 種類のグラム陽性菌、3 種類のグラム陰性菌、2 種類の酵母菌)を細菌保持体(綿生地)に播種して検討した。さらに、バイオフィルムの形成を認める黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対する効果の喪失について、効果の高かった 6 種類の製剤を評価した。

結果
クロルヘキシジン(1%)は、1 分間での殺菌効果が最も高かった。5 分間では、ClHO 500 mg/L および 1,500 mg/L が、対象とした他の消毒薬と比べて同程度か、より優れた活性を示した。ClHO 300 mg/L により、10 分間で同等の効果が達成された。バイオフィルムのために効果がほとんど失われた製剤はクロルヘキシジン 1%であった一方、ポビドンヨード(PVP)-I 1% および ClHO 300 mg/L または 500 mg/L では、バイオフィルムによる影響は中等度であった。バイオフィルムがある場合に最も高い効果を示したのは ClHO 1,500 mg/Lであった。

結論
ClHO は低度から中等度の濃度(300 mg/L または 500 mg/L)で効果の高い消毒薬であり、5 ~ 10 分間で創傷および粘膜に用いることができる。低濃度の ClHO は、対象とした他の消毒薬とともに、バイオフィルムがある場合に効果が低下するか、大きな影響を受けた。ClHO 1,500 mg/L は、バイオフィルムの有無にかかわらず極めて効果が高く、健康な皮膚に対して 5 分間で使用可能である。

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監訳者コメント
次亜塩素酸を創傷消毒に使用するための予備実験であるが、臨床応用には越えるべきハードルがいくつかある。本剤はゆっくりとした消毒効果や残存効果がないことから、一般的に術野消毒には使用されていない。一方、創傷が感染し、1 グラムあたりの菌量が 106 を超えると創傷治癒に影響するため、菌量を減らし、壊死組織を除去する必要がある。感染すると様々な炎症反応が惹起され、様々な蛋白溶解酵素が産生される結果、上皮化が阻害され創傷の治癒が遅延する。したがって、消毒剤は必要であるが、バイオフィルムに邪魔されず、かつ細胞傷害性のないものを選択することが必要であり、次亜塩素酸が実際にどれほど有効なのかは今後の臨床研究を待つしかない。

抗菌薬耐性菌による医療関連感染症の直接医療負担:中国からの経験的エビデンス

Direct medical burden of antimicrobial-resistant healthcare-associated infections: empirical evidence from China

X. Liu*, D. Cui, H. Li, Q. Wang, Z. Mao, L. Fang, N. Ren, J. Sun
*Wuhan University, China

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 295-305

背景
抗菌薬耐性と医療関連感染症は、グローバルな公衆衛生上の最大の課題に含まれ、広範に重なり合っている。こうした感染症は、多くの病的状態と死亡をもたらし、医療システムに負担を与え、直接費用および間接費用の増大をもたらしている。

目的
本研究では、中国の公立 3 次病院において、抗菌薬耐性菌による医療関連感染症に起因する直接医療負担の分析を行い、規制当局担当者と病院管理者の両者に対して、医療関連感染症の制御および抗菌薬耐性の封じ込めをよりよく行うための情報を提供することを目的とした。

方法
傾向スコアマッチング(γ = 0.25σ、近傍法による 1:1 マッチング)を適用して、2013 年から 2015 年の期間に、中国湖北省の公立 3 次病院 5 施設において後向きコホート研究を実施した。記述分析、Pearson のχ2検定、Mann-Whitney のU 検定、Wilcoxon の符号順位検定、ならびに対のある/独立 2 群の Z/T 検定を実施した。統計学的有意性レベルを P < 0.05 に設定した。

結果
2013 年から 2015 年にかけて全体で、抗菌薬耐性菌による医療関連感染症による入院患者当たりの総超過医療費は、非医療関連感染症の入院患者に対して 15,557.25 米ドルであり、抗菌薬耐性菌による医療関連感染症による入院患者当たりの総超過入院期間は、非医療関連感染症の入院患者に対して 41 日であった(P < 0.001)。

結論
抗菌薬耐性が関与すると、医療関連感染症による超過医療費は増大し、病院のベッド回転率に影響を及ぼす。医療費増大の大部分は、患者とその家族の負担となる。これらの結果は、より効果的な医療関連感染症の制御と抗菌薬耐性の封じ込めの必要性を示している。抗菌薬耐性が関与する医療関連感染症の医療、社会および経済における負担を推定するには、全国的な研究が必要とされる。

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監訳者コメント
医療関連感染は、医療安全上の大きな課題であり、そこに耐性菌が加わると、合併症や死亡率に大きく影響し、ひいては膨大な医療コスト増加につながることは全世界の共通した事実であり、認識でもある。本論文は、中国湖北省のにおける1,000 ~ 2,000床の 5 つの公的病院を対象として、点有病率調査を実施し、耐性菌による医療関連感染症がもたらす超過医療費と入院延長のマイナス面を指摘したものである。中国の医療全体を代表しているものではないものの、たとえ医療体制が異なっていても、耐性菌による医療関連感染のもたらす結果、すなわち医療費増大は共通である。

呼吸器サンプルからのカルバペネマーゼ、CTX-M、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)関連遺伝子および mecA/C の検出における ELITe MGB アッセイの正確度

Accuracy of the ELITe MGB assays for the detection of carbapenemases, CTX-M, Staphylococcus aureus and mecA/C genes directly from respiratory samples

M. Boattini*, G. Bianco, M. Iannaccone, L. Charrier, A. Almeida, G. De Intinis, R. Cavallo, C. Costa
*University Hospital Città della Salute e della Scienza di Torino, Italy

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 306-310

緒論
下気道細菌感染症は、呼吸不全、集中治療室入室および医療費増大につながり得る重篤な臨床状態となる場合がある。カルバペネマーゼおよび基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生腸内細菌科細菌、ならびにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)は、特に医療関連感染症において、大きな問題となっている。本研究は、下気道細菌感染症患者に対する適切な治療および感染制御を促進するために、分子アッセイによりカルバペネマーゼ、ESBL および MRSA をコードする遺伝子を呼吸器サンプルから直接検出できるかどうかを明らかにすることを目的とした。

方法
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)、ESBL および MRSA/SA を対象とした ELITe MGB アッセイを、下気道細菌感染症を有して入院した患者 318 例から採取した呼吸器サンプル 354 個に対して直接実施した。分子アッセイの結果を、ルーチンの培養ベースの診断ツールによる結果と比較した。

結果
CRE ELITe MGB キットの陽性的中率および陰性的中率は、それぞれ 75.9%(95%信頼区間[CI]60.3 ~ 86.7)および 100%であった。ESBL ELITe MGB キットの陽性的中率および陰性的中率は、それぞれ 80.8%(95%CI 63.6 ~ 91.0)および 99.1%(95%CI 96.6 ~ 99.8)であった。MRSA/SA ELITe MGB キットの陽性的中率および陰性的中率は、それぞれ 91.7%(95%CI 73.7 ~ 97.7)/100%および 98.3%(95%CI 89.8 ~ 99.3)/96.8%(95%CI 81.6 ~ 99.5)であった。

考察
主要な抗菌薬耐性遺伝子を呼吸器サンプルから直接検出する分子アッセイの妥当性評価の結果、培養ベースの結果と比較して、高い正確度が示された。主要なカルバペネマーゼ、ESBL、S. aureus およびメチシリン耐性をコードする遺伝子を検出する分子アッセイは興味深いツールであり、下気道細菌感染症患者に対する適切な抗菌薬療法および感染制御実践の最適化を促進する可能性がある。

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監訳者コメント
細菌性下気道感染症は、重症化すると集中治療を要し、入院期間の延長と医療費の高騰をもたらす。下気道感染症患者に対しては通常広域抗菌薬が経験的に投与されるが、適切な起炎菌同定がなければ、抗菌薬の適正使用ができず、菌交代症により耐性菌の選択をもたらすこととなる。したがって、耐性菌を迅速かつ正確に検出することは、治療上も感染対策上も重要となる。肺炎において起炎菌が同定されるのは約 30%であり、培養同定法は結果報告までに数日を要することから、早期の抗菌薬の適正使用を妨げる。すでに遺伝子検査は血液培養では一般化しているが、下気道検体での検討は不十分である。CRE、ESBL 産生菌、MRSA などを検出する個々のキットが準備されており、核酸抽出から遺伝子増幅までを全自動でできる装置(ELITe InGenius™)に、このキットを装填するだけで、わずか 3 時間で結果を報告する。本キットの使用により早期に耐性菌を検出し、その施設や地域での薬剤感受性率を同時に利用すれば、適切な抗菌薬の選択と早期の治療開始が可能となるばかりか、同時に感染対策が可能となり耐性菌拡大防止にもつながる。しかしながら、遺伝子検査の欠点は生菌と死菌の区別がつかず、また菌量が不明であり保菌と感染症との区別が難しい点が今後の解決すべき課題である。

ドイツにおける末梢静脈カテーテルの管理およびガイドラインの実施:全国調査

Management of peripheral venous catheters and implementation of guidelines in Germany: a national survey

S.J.S. Aghdassi*, C. Geffers, M. Behnke, A. Gropmann, P. Gastmeier, T.S. Kramer
*Charité-Universitätsmedizin Berlin, Germany

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 311-318

背景
末梢静脈カテーテルは、使用頻度が高いため、カテーテル関連感染症とその予防に関して重要である。2017 年にドイツで、末梢静脈カテーテル関連感染症予防のための国内ガイドライン改訂版が発行された。

目的
末梢静脈カテーテル取り扱いの実践について記述すること、またドイツの急性期病院において、末梢静脈カテーテル関連感染症予防を目的とした国内ガイドラインの発行 10 か月後における実施状況について評価すること。

方法
院内病棟における末梢静脈カテーテルの管理に関するオンライン調査を実施した。このために、ドイツの医療関連感染症国内サーベイランスシステムに参加している急性期病院 1,191 施設に参加を呼びかけた。各病院に対し、集中治療室、ならびに内科病棟および外科病棟に関する調査に回答するよう求めた。本調査への参加は任意とした。

結果
合計で、病院 701 施設(回答率 59%)が参加し、病棟 1,449 カ所(集中治療室 599 カ所、内科病棟 446 カ所、外科病棟 404 カ所)に関するデータを提供した。病棟の約 43%が、必要に応じて新しい国内ガイドラインを導入していると報告した。末梢静脈カテーテル関連感染症を対象とした組織化されたサーベイランスは、病棟の 21%のみで確立されていた。病棟の 94%は、全般的感染予防教育の一環として末梢静脈カテーテルの取り扱いに関する内容を含めていると報告したが、トレーニング法に関する質問には様々な回答がみられた。病棟の約 59%は、末梢静脈カテーテル挿入前の皮膚消毒としてアルコールと残存性のある消毒薬の組み合わせをルーチンでは用いていないと報告した。

結論
全体的に、ドイツにおける末梢静脈カテーテル管理はよく組織化されている。しかし、改善の余地が、特にサーベイランスの検討、ならびに選択された国内ガイドラインの実施として特定された。

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監訳者コメント
血流感染症は、急性期病院での医療関連感染の主要原因のひとつであり、なかでもカテーテル関連血流感染症は予防可能な血流感染症でもある。中心静脈カテーテルは、主に集中治療を要する重症患者に挿入されるため、カテーテル関連感染症を発症すると重篤化するため、挿入から維持管理までの感染予防策が重視され、サーベイランスの実施率も高い。一方で、末梢静脈カテーテルは、一般病棟でも日常的に容易に挿入でき、挿入期間も短いため、感染予防策については決して十分に実施されているとは言えない。本論文は、ドイツにおいて 2017 年 1 月発表の末梢静脈カテーテル感染予防ガイドラインの実施状況を調査したものだが、2017 年12 月の時点で半分以上の施設で自施設に適合させたマニュアルが作成されていないことが判明した。カテーテル管理に関する教育訓練を含め、本ガイドラインの現場への普及が今後の課題である。

再発性クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症に対する糞便細菌叢移植:経口凍結乾燥カプセルの経験★★

Faecal microbiota transplantation for recurrent Clostridioides difficile infection: experience with lyophilized oral capsules

E. Reigadas*, E. Bouza, M. Olmedo, S. Vázquez-Cuesta, L. Villar-Gómara, L. Alcalá, M. Marín, S. Rodríguez-Fernández, M. Valerio, P. Muñoz
*Hospital General Universitario Gregorio Marañón, Spain

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 319-324

背景
糞便細菌叢移植(FMT)は、難治性および再発性クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症(CDI)に対する効果の高い治療法である。FMT はその優れた効果にもかかわらず、ほとんどの医療センターにおいてルーチンの手技となっていない。凍結乾燥カプセルに基づく FMT の経験はほとんどなく、欧州の諸施設によるデータは得られていない。本稿では、再発性 CDI 治療を目的とした、経口凍結乾燥カプセルを用いた FMT の著者らの経験を記述する。

方法
単一施設において、2018 年 1 月から 2019 年 5 月にかけて FMT を受けた、再発性 CDI 患者の前向きに記録した症例シリーズについて分析を行った。主要転帰は、2 か月間にわたり再発のない CDI を治癒と定義した。総合的治癒は、FMT 再施行後 2 か月以内に CDI 再発のない下痢の解消と定義した。FMT の手技は、1 回の投与時に 4 ~ 5 錠の凍結乾燥カプセルの摂取とした。糞便ドナーの全例について、厳格なスクリーニングを行った。

結果
FMT を患者 32 例に施行した。一次治癒が患者の 81.3%で達成され、総合的治癒率は 87.5%であった。凍結乾燥カプセルを用いた FMT は忍容性が良好であった。凍結乾燥カプセルを用いた FMT により、FMT 手技に関連する有害事象も、その後の合併症も報告されなかった。

結論
この初の臨床経験から、経口凍結乾燥製剤に基づく FMT は、再発性 CDI に対して、安全で忍容性が良好であり、効果が高かった。経口凍結乾燥カプセルの投与は、ルーチンの病院診療として実施可能であり、FMT のより広範な使用を可能にするであろう。

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監訳者コメント
CDI の治療はこれまでバンコマイシンやメトロニダゾールなどの抗菌薬が標準的治療とされている。その後モノクロナール抗体(ベズロトクスマブ)や、新規の CDI の選択的抗菌薬であるフィダキソマイシンが再発症例への治療的ブレイクスルーとして登場してきたが、費用対効果については前者は劣ることがわかっている。便移植の登場は、初回効果が高く、再発率も低く、費用も安価である点で、画期的な治療法である。しかしながら、便を使用するという点で、ドナーの選択、便の処理、保管と投与経路の問題に加え、患者の心情的な抵抗があるのも事実である。凍結乾燥したドナーの糞便をカプセル化することで、保存から投与までが容易となり、ドナーバンクの有効活用も可能となり、今後の展開が期待される。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19):英国において最前線の医療従事者はいかに準備するか?

COVID-19: how prepared are front-line healthcare workers in England?

K. Prescott*, E. Baxter, C. Lynch, S. Jassal, A. Bashir, J. Gray
*Nottingham University Hospitals NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 142-145

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに備えて、英国 National Health Service(NHS)の体制整備を図る国家的な取り組みが進行中である。とはいえ、このような介入の効果は知られていない。この点を踏まえて、英国の大規模な 2 つの急性期 NHS 病院トラストにおける最前線の医療従事者を対象に、このウイルスに対する備えの自信および認識のレベルを評価するために横断調査を実施した。調査からは、COVID-19 に対する医療従事者の準備はある程度の成功をおさめているが、とくに検査診断に関して医療従事者を教育することに、さらに取り組む必要性が確認された。

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監訳者コメント
2020 年 2 月時点での英国 2 施設の医療従事者に対する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する備えの認識の評価。質問中で検体採取が最も自信がない項目となったが、その他の質問は医療関連感染を類推させる質問ではなかったことから当然の結果と言える。

血液培養陽性検体からカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)を迅速検出するための RESIST-5 O.O.K.N.V. アッセイと NG-Test Carba 5 アッセイ:比較試験

RESIST-5 O.O.K.N.V. and NG-Test Carba 5 assays for the rapid detection of carbapenemase-producing Enterobacterales from positive blood cultures: a comparative study

G. Bianco* , M. Boattini, S.A.V. van Asten, M. Iannaccone, E. Zanotto, T. Zaccaria, A.T. Bernards, R. Cavallo, C. Costa
*University Hospital Città della Salute e della Scienza di Torino, Italy

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 162-166

本稿では、特徴づけられた腸内細菌科細菌分離株 130 株を添加した血液培養検体から直接、RESIST-5 O.O.K.N.V. アッセイと NG-Test Carba 5 アッセイの性能を前向きに比較した。全体的に見て、両アッセイとも、KPC 型カルバペネマーゼおよび OXA-48-like カルバペネマーゼを検出する感度は 100%であった。KPC-31 および KPC-33(それぞれ、KPC-3 および KPC-2 の D179Y 点変異バリアント)は、両アッセイにより検出できなかった。これらは、カルバペネマーゼ活性は低いが、セフタジジム・アビバクタムに対する耐性を示す。血液培養からの細菌ペレットにおいて、NDM 型および VIM 型のカルバペネマーゼが、RESIST-5 O.O.K.N.V. アッセイにより、それぞれ 50.0%、52.2%検出されたのに対し、NG-Test Carba 5 アッセイでは 100%検出された。4 時間の初期継代培養によって、RESIST-5 O.O.K.N.V. アッセイを実施することにより、このアッセイの感度はそれぞれ 100%、95.6%に改善した。

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監訳者コメント
カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)の検出頻度が高い地域では本研究のような血液培養検体での迅速検出が重要となるだろう。

中国・河南省の医療従事者における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する知識、態度、実践

Knowledge, attitude, and practice regarding COVID-19 among healthcare workers in Henan, China

M. Zhang*, M. Zhou, F. Tang, Y. Wang, H. Nie, L. Zhang, G. You
*Zhengzhou University, China

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 183-187

本研究では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する医療従事者の知識、実践、態度を分析した。2020 年 2 月 4 日から 2 月 8 日に、中国・河南省の病院 10 施設の計 1,357 名の医療従事者を対象とする横断的調査を実施した。調査対象のうち医療従事者の 89%は新型コロナウイルス感染症の十分な知識を有し、85%超はウイルスによる自己感染を懸念しており、89.7%は新型コロナウイルス感染症に関する正しい慣行に従っていた。知識レベルに加えて、業務経験と職種を含むリスク因子の一部は、新型コロナウイルス感染症に関する医療従事者の態度および実践に影響を与えた。職種、業務経験、労働時間、学歴、および最前線の医療従事者であることに関連するリスクから医療従事者を守るため、対策を取る必要がある。

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監訳者コメント
中国・河南省での 2020 年 2 月時点での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する医療従事者の知識、実践、態度を分析。医療従事者の教育レベルに応じた感染防護のトレーニングの必要性、最前線の医療従事者の過労の回避など、日本でも参考になる点がある。

擦式アルコール製剤、オゾン水、または石けんと水による手指消毒の効果:再考の時期か?

Effects of hand disinfection with alcohol hand rub, ozonized water, or soap and water: time for reconsideration?

H.J. Breidablik*, D.E. Lysebo, L. Johannessen, Å. Skare, J.R. Andersen, O. Kleiven
*Helse Førde HF, Center of Health Research, Norway

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 213-215

擦式アルコール製剤の大腸菌(Escherichia coli)に対する除菌効果を試験し、オゾン処理した水道水または石けんと水を用いた手洗いと比較した。アルコール製剤は参加者 35 人中 10 人においてすべての細菌を除菌したが、消毒後の残存の平均は 2,330(標準偏差[SD]4,227)cfu/mL であった。一方、オゾン水は参加者 55 人中 10 人においてすべての細菌を除菌し、残存の平均はわずか 538(SD 801)cfu/mL であった(P = 0.045)。石けんによる手洗いは最も効果的であり、参加者 20 人中 6 人において細菌を完全に除菌し、残存の平均は 98(SD 139)cfu/mL であった(P = 0.048[対オゾン水]、P = 0.018[対アルコール製剤])。

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監訳者コメント
WHO では医療関連感染の予防にアルコールによる手指消毒を強く推奨している。ただし、肉眼的に汚れがある場合やアルコールに無効な病原体に曝露した後などには石けんと流水による手洗いを行う必要性がある。本研究では有効性においてアルコールによる手指消毒が石けんと流水による手洗いに劣っているが、アルコールによる手指消毒は短時間でほとんどの微生物を除去でき、特別な設備が必要ないことなどから、この結果をもって石けんと流水による手洗いを優先させることにはならない。また、オゾン水による手指消毒は一般的ではないが、石けんと流水による手指消毒に劣っており、改めて導入を検討する必要はないだろう。

アウトブレイクがアウトブレイクになるのはいつか?文献および退院データを用いて、クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症発生率の変化がいつアウトブレイクと見なされるかを明らかにする

When is an outbreak an outbreak? Using literature and discharge data to define Clostridioides difficile incidence changes referred to as outbreaks

C.C. Cohen*, G. Azhar, L. Muggy
*RAND Corporation, USA

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 225-231

予想を超えた臨床的に注意すべきクロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症(CDI)の増加(すなわちアウトブレイク)には、合意された定義が存在しない。病院の見地から CDI 発生率の増大がどの程度の規模になった場合にアウトブレイクとなるのかについての理解は、後向き解析にとって重要である。本研究では、文献においてアウトブレイクとして報告された CDI 発生率指標を明らかにし、Healthcare Cost and Utilization Project(HCUP)の退院データと比較した。文献では、アウトブレイク期間と基準期間との間で、発生率の中央値が 4.1 倍に変化すると報告していた(N = 26、最低で 2 倍の発生率)。しかし、月間発生率におけるこの規模の変化は、HCUPのデータでは 1 回しか認められなかった(病院 20 施設、2012 年 から 2014 年)。したがって、文献では極端なアウトブレイクの例を示している可能性がある。

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監訳者コメント
CDI のアウトブレイクを定義する研究。本研究からは CDI 発生率が 2 倍になることと 1SD の増加の両方でモニタリングするのがひとつの方法と考えられる。

患者に対して医原性クロイツフェルト・ヤコブ病の曝露について通知する

Informing patient contacts about iatrogenic CreutzfeldteJakob disease

A.R. Brodbelt*, J. Vinten, S. Larkin
*The Walton Centre NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 325-328

過去に脳神経外科手術を受けた患者で、思いがけず孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(sCJD)の診断が下される場合、曝露に関する通知を行うという決定は難しいものになり得る。ある患者が、脳神経外科手術を受けた 3 年後にsCJDを発症した。曝露の可能性のある患者が 29 例、曝露した患者が 26 例いた。12 例が質問票に回答した。患者の大部分は、曝露について知ることを望み、対面で知らされることを望んだ。またそれらの患者らにとって、口頭および書面で可能性は低いと保障されたとしても、疾患の発症が主要な懸念であった。患者に対してsCJDとの曝露があったことを知らせるのは難しいことであり、患者にとって大きな不安をもたらす可能性がある。対面での話し合い、相談窓口、およびフォローアップが役立つ可能性がある。

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監訳者コメント
クロイツフェルト・ヤコブ病の曝露について患者に知らせることはは発症の可能性は低いとしても患者に大きな不安を与えるため、難しい問題である。そうだとしても本研究のように知らされることを望んでいる患者は多く、十分に説明した上で不安に対するフォローができる体制をとる必要がある。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.