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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

コロナウイルスの影響により一部、監修者のコメントおよびレーティングを未監修のまま掲載しておりますので、ご了承ください。

抗菌薬耐性菌および医療施設内のその他の水系病原体の拡散。現代の給水/衛生設備の不良な設計・構造・利用・維持の代償

Dissemination of antibiotic resistance and other healthcare waterborne pathogens. The price of poor design, construction, usage and maintenance of modern water/sanitation services

M.J. Weinbren*
*King’s Mill Hospital NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2020)105, 406-411

産業革命期に、古典的な水系病原体(コレラ/腸チフス)によって、安全な給水と衛生設備の開発が促された。その設備はこれらの病原体には効果的であったが、その他の細菌が建物の狭い水道管にバイオフィルムを形成する可能性を与えた。1976 年にレジオネラ菌が発見された。1967 年まで遡るエビデンス(1995 年、マンチェスターに於て、シンクからの飛沫で経静脈栄養が汚染されたことによる乳児死亡など)にもかかわらず、他の施設内水道配管日和見病原体の水系伝播であると認められるには、英国の医療サービスにおける2011年の新生児 4 例の死亡と報道機関の力を要した。医療施設の建設業界は概して、人間が本来備えている水の安全性への関心を欠いており、伝播に関する認識不足は、水系感染症による感染/死亡回避を進める上で大きな妨げとなる。強い耐性を示すグラム陰性菌の出現は、現代の排水システムのさらなる不備を浮き彫りにしている。これらの細菌はその拡散を高める特別な適応性がないと考えられ、われわれは単に、検出されずにいる感受性微生物がよくたどる経路に注目する。O’Neill レポートは、効果的な抗菌薬のない暗い将来について警告している。本レビューでは、現代の給水/衛生設備が、依然として患者の安全性(および公衆)へのリスクを示している理由に関してエビデンスを検討し、それらの設備が、コレラの現代版、すなわち抗菌薬耐性の拡散をもたらすなら、その設計に不備な点がありうることを示す。

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監訳者コメント
耐性菌の自然環境循環はヒト - 環境 - ヒトのみではなく、家畜等の動物をを介しても起こっている。生態系を崩さないようにしながら環境への抗菌薬による選択圧を減らすことが今後重要となる。

非流行施設におけるカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌の院内伝播予防のための隔離:義務とすべきか?

Cohorting for preventing the nosocomial spread of carbapenemase-producing Enterobacterales in nonepidemic settings: should it be mandatory?

D. Hilliquin*, A. Lomont, J-R. Zahar
*Hôpital Édouard Herriot, GH Centre, Hospices civils de Lyon, France

Journal of Hospital Infection (2020)105, 534-545

カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(carbapenemase-producing Enterobacterales;CPE)の世界的な拡散は、医療施設における隔離の実施を推奨する国内・国際的ガイダンスの策定につながっている。しかし、基質特異性拡張型β‐ラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌(extendedspectrum β -lactamase-producing Enterobacterales)の拡散に関する近年のデータからみて、アウトブレイクが発生していない施設での隔離の有用性には疑問の余地がある。この点で、拡散のリスクを制御するには個人の接触隔離で十分であろう。文献の記述的レビューを実施し、隔離が果たす役割を考察した。CPE は医療施設におけるアウトブレイクに関与し、耐性菌株蔓延の発生源とみなされる。CPE は、入院期間・入院費の増加、治療選択肢が少ないこと、そのため臨床的不成功および死亡のリスクが高くなることなど悪影響の原因となる。環境と物質も CPE に汚染されているとの報告があり、アウトブレイクの発生源となりうる。ガイドラインや公表文献により隔離の実施が支持されていても、この方法を義務化すべきであることを実証する無作為化研究はない。ほとんどの研究が記述的で、隔離は通常、アウトブレイク制御のためにいくつかある方法の 1 つである。人材や物的資源を必要とするすべての医療施設に隔離が適用されるとは限らない。手指衛生遵守、抗菌薬適正使用支援、接触患者サーベイランスなど他の方法を強化しなければならない。個々の感染リスク因子も評価すべきである。結論として、隔離の実施前に、局地的疫学および資源を評価する必要がある。

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監訳者コメント
CPE のもともとの菌種は常在性が強い菌であり、易感染性患者が保持すると生涯 CPE を背負うリスクもはらんでいる。治療の選択肢を温存するためには、施設内における CPE の蔓延を防ぐ必要がある。

急性期病院の多数の患者・医療従事者・環境のサンプル採取により明らかにされた黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の有意なリザーバである口腔内

The oral cavity revealed as a significant reservoir of Staphylococcus aureus in an acute hospital by extensive patient, healthcare worker and environmental sampling

A. Kearney*, P. Kinnevey, A. Shore, M. Earls, T.T. Poovelikunnel, G. Brennan, H. Humphreys, D.C. Coleman

*Dublin Dental University Hospital, University of Dublin, Ireland

Journal of Hospital Infection (2020)105, 389-396

背景
近年、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(methicillin-susceptible Staphylococcus aureus;MSSA)血流感染症の発生率が着実に増加しており、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)による血流感染症の発生率は著しく低下している。MSSA 保菌のスクリーニングはルーチンに実施されておらず、MRSA スクリーニングは全症例に対するものではない。したがって、院内環境における黄色ブドウ球菌の保菌圧の程度は不明である。

方法
3 次紹介病院の 9 つの入院病棟の患者および医療従事者を対象に、前向き観察研究を 2 年間にわたり実施した。参加者には、鼻腔スワブと含嗽液により MSSA と MRSAのスクリーニングを実施した。接触培地と能動的エアサンプリングにより環境表面と空気中の黄色ブドウ球菌も測定した。

結果
患者 388 例、医療従事者 326 名を登録し、接触培地での表面サンプル 758 個、空気サンプル 428 個を採取した。MSSA は、患者の 24%、医療従事者の 31.3%、空気サンプルの 16%、表面サンプルの 7.9%から回収された。MRSAは、患者の 6.4%、医療従事者の 3.7%、空気サンプルの 2.5%、表面サンプルの 2.2%から回収された。サンプリング法として前鼻孔のほかに口腔を加えたことで、口腔内保菌のみを示す患者が 30 例、医療従事者が 36 名特定された。


結論
現時点では十分に評価されていない口腔内は、院内黄色ブドウ球菌の重要なリザーバである。医療施設における保菌圧と個々の患者レベル(とくに、除菌の試みと失敗を繰り返している患者、リスクの高い手技を受けている患者)の両方の観点から口腔スクリーニングを検討すべきである。

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監訳者コメント
MRSA の慢性保菌者のスクリーニングのための監視培養を行う部位としては鼻前庭が最も適す。入院中の患者で医療者が介助し各種処置を行うことで口腔内にも一過性に検出されるが、汚染菌である可能性も高いために基本は鼻前庭部位からの監視培養で確認が必要である。

腹部大手術後の敗血症性急性呼吸窮迫症候群の患者における肺の微生物叢パターンは疾患の経過と相関する

Pulmonary microbiome patterns correlate with the course of disease in patients with sepsis-induced ARDS following major abdominal surgery

F.C.F. Schmitt*, A. Lipinski, S. Hofer, F. Uhle, C. Nusshag, T. Hackert, A.H. Dalpke, M.A. Weigand, T. Brenner, S. Boutin
*Heidelberg University Hospital, Germany

Journal of Hospital Infection (2020)105, 438-446

背景
敗血症性急性呼吸窮迫症候群を有する患者は死亡率が高い。早期の標的抗菌薬療法は患者の生存のために欠かせない。病原菌同定のための次世代シーケンスによるアプローチの臨床使用は、診断能の改善をもたらす可能性がある。そこで、本研究の目的は、敗血症性急性呼吸窮迫症候群の患者において、肺の微生物叢の変化と、その結果もたらされるアウトカムへの影響を調査すること、ならびに病原菌同定のための次世代シーケンスによる診断法と培養による診断法を比較することである。

方法
本研究では 2 群に計 30 例の患者を登録した。その内訳は、腹部大手術後に敗血症性急性呼吸窮迫症候群を発症した患者 15 例、食道切除術を受けた患者 15 例(対照群)であった。急性呼吸窮迫症候群の患者群では、発症時(0 日)、5 日後、10 日後に血液サンプルを採取した。同時点に、培養による解析および次世代シーケンス解析用の気道上皮被覆液の採取ならびに肺微生物叢の経時的変化の評価のために、気管支肺胞洗浄を実施した。対照群では、気管支肺胞洗浄によるサンプルと血液サンプルをそれぞれ 1 回のみ採取した。

結果
急性呼吸窮迫症候群の患者は、対照群と比較して、α多様性が有意に低く(P = 0.007)、肺微生物叢の優位性が高かった(P = 0.012)。α多様性の指標は、集中治療室入室期間(P = 0.015)、機械的換気の必要性(P = 0.009)と相関した。急性呼吸窮迫症候群の患者の 42.9%で、培養による結果は陰性であったが、次世代シーケンスによる結果では細菌定着が認められた。

結論
敗血症性急性呼吸窮迫症候群は、患者の肺微生物叢の有意なバランス異常と関連し、このことは疾患の臨床経過と密接に相関する。

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監訳者コメント
敗血症性急性呼吸窮迫症候群は、患者の肺微生物叢の有意なバランス異常と関連し、このことは疾患の臨床経過と密接に相関するということは、肺微生物叢の有意なバランス異常を検査すれば、敗血症性急性呼吸窮迫症候群の診断がし易くなる可能性がありそうだ。

COVID-19 アウトブレイク時の医療従事者の安全性の確保を目的とした CE マーク非表示の呼吸用保護具の院内検証

In-hospital verification of non-CE-marked respiratory protective devices to ensure safety of healthcare staff during the COVID-19 outbreak

R.A.C. van Wezel*, A.C.T. Vrancken, M. Ernest, J. Laurensse, J.P.C.M. van Doornmalen Gomez Hoyos
*Catharina Hospital, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2020)105, 447-453

背景
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、世界的なマスク不足が発生している。具体的には、Conformité Européene(CE)認証の Filtering Face-Piece(FFP2)タイプのマスクである。この不足は、品質が不明確な代替マスクの病院への供給の増大を招いている。それでも、医療従事者が使用するマスクの品質は確保されなければならない。

目的
Catharina Hospital における COVID-19 の可能性のある患者または確定患者の看護や治療にあたる医療従事者の呼吸用保護具の品質確保を目的としたプロトコルを作成すること。

方法
マスクの品質を確保するために、適用規格に基づいたプロトコルおよび基準を作成した。Catharina Hospital においてプロトコルを実施した。プロトコルには、マスクの添付文書の検証、マスクの目視検査、粒子のマスク内への全漏れ率の測定などが含まれる。

結果
Catharina Hospital が受領したマスクの商標と種類の 67%は品質基準を満たしていなかった。

結論
通常使用される CE 認証済みのマスクは不足しているが、簡便な検証プロトコルにより、マスクの品質がチェックでき、保証される。この院内プロトコルを用いて、医療従事者は安全に使用できるマスクを配備しておける。

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監訳者コメント
N95 や DS2 と同等の性能規格である欧州規格の FFP2 であるが、当該規格品は COVID-19 のパンデミックのための世界的に品不足となっている。こうした状況で指定の規格認定を受けていない製品の導入にあたっては施設内で導入予定の製品の検定を行うべきである。それにしても輸入品に混じっているまがい物には注意したい。

波長 222 nm の短波長紫外線は広範囲の病原微生物を不活化する

Ultraviolet C light with wavelength of 222 nm inactivates a wide spectrum of microbial pathogens

K. Narita*, K. Asano, K. Naito, H. Ohashi, M. Sasaki, Y. Morimoto, T. Igarashi, A. Nakane
*Hirosaki University Graduate School of Medicine, Japan

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 459-467

背景
短波長紫外線(UVC)は数種類の病原体を不活化するために使用されてきた。従来の 254 nm の UVC と異なり、222 nm の UVC は哺乳類細胞に対して無害である。

目的
環境と医療施設においてよく見られるヒト病原体に対する 222 nm の UVC の消毒効果を検討すること。

方法
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(Escherichia coli)、ネズミチフス菌(Salmonella enterica subsp. serovar Typhimurium)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus、栄養細胞と芽胞)、クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes、栄養細胞と芽胞)、クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostoridioides difficile、芽胞)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans、酵母)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger、菌糸と胞子)、紅色白癬菌(Trichophyton rubrum、菌糸と胞子)、ネコカリシウイルス、A 型インフルエンザウイルスに対し、222 nm の UVC を様々な用量で照射した。残存する生きた細菌細胞と真菌細胞、ならびにウイルスの感染力を評価した。222 nm の UVC の殺菌効果を 254 nm の UVC と比較した。

結果
波長 222 nm の UVC は栄養細菌細胞、酵母、ウイルスに対して強力な殺菌効果があり、また 245 nm(原文のまま記載。254 nm の誤記載と思われる)の UVC と同じくらい効率的であった。さらに、222 nm の UVC は細菌の芽胞に対して 254 nm の UVC よりも強力な殺菌効果があった。222 nm の UVC の真菌の胞子と菌糸に対する殺真菌効果は 254 nm の UVC よりも弱かった。

結論
波長 222 nm の UVC は広範囲の病原微生物を不活化できた。254 nm の UVC と比較すると 222 nm の UVC は真菌の菌糸と胞子に対する殺菌効果が低かったが、細菌の芽胞に対しては強い殺菌効果があった。

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監訳者コメント
222 nm 紫外線は、ヒトの皮膚、目に安全であるとされ、日本でも、この波長を有する紫外線光源を用いた殺菌ランプの製品化に向けた研究が行われている。実臨床での利用には、安全性と有効性が求められるが、今後の動向に注視したい。

人工胃液中のノロウイルスの代用の表面での生存

Survival of a norovirus surrogate on surfaces in synthetic gastric fluid

C. Makison Booth*, G. Frost
*HSE Science and Research Centre, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 468-473

背景
ノロウイルスは幅広い pH の緩衝液において生存できる。しかし、pH の変動が胃液の典型的な酵素的条件と組み合わさる場合、ノロウイルスの生存は予測しにくい。これに加えて、吐き出された嘔吐液が着地する素材(例えば安全ビニールまたはカーペット)も環境中のノロウイルスの生存レベルに影響する可能性がある。

目的
本研究はノロウイルスの代替のネコカリシウイルス(FCV)に関し、様々な pH の人工胃液の存在下で 4 種類の素材の上への散布後に生存を評価することを目的とした。

方法
FCV(1 × 106 プラーク形成単位[pfu]/胃液 100 μL)を含む様々な pH(1.5、2.5、3.5、4.5)の人工胃液 100 μL を 4 種類の素材(フォーマイカ、安全ビニール、綿布、カーペットタイル[2 cm × 2 cm])に播種し、回収前に 0、30、60 分放置し、プラークアッセイで生存ウイルスを同定した。

結果
FCV は pH が 2.5 と低い人工胃液において生存し、ある特定の素材と結び付く場合は pH が 1.5 と低くても 30 分以上生存することもあった。フォーマイカ(360 pfu/サンプル)と安全ビニール(380 pfu/サンプル)と比較して、より吸収性の高い素材である綿(1,900 pfu/サンプル)とカーペット(1,600 pfu/サンプル)から回収された生存ウイルス数の平均値はより大きかった。

結論
本研究により、FCV は pH が低い人工胃液において、特に吸収性の高い素材上でかなりの期間生存できることが示された。このことは、ノロウイルスのアウトブレイクの制御のために、効果的な清掃と汚染除去の方法、特に布地の室内装飾品と洗濯物に対する方法を確実にすることの重要性を強調している。

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監訳者コメント
フォーマイカは合成樹脂を意味する。これまでも、絨毯などの吸収性のある素材に嘔吐物が発生した場合の消毒の困難さは言われてきたところである。

ヒータークーラー装置における非結核性抗酸菌の多様性:前向きサーベイランスの結果

Diversity of non-tuberculous mycobacteria in heater-cooler devices: results from prospective surveillance

M.B. Kaelin*, S.P. Kuster, B. Hasse, B. Schulthess, F. Imkamp, M. Halbe, P. Sander, H. Sax, P.W. Schreiber
*University Hospital Zurich and University of Zurich, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 480-485

目的
心臓手術に関連するマイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)感染症の世界的なアウトブレイクは、元をたどるとヒータークーラー装置の汚染水のリザーバーに由来する感染性のエアロゾルに行き着いた。一般に非結核性抗酸菌(NTM)は水道設備に定着することが多く、医療器具を汚染する可能性がある。ヒータークーラー装置から収集されたサンプルにおける M. chimaera 以外の NTM の検出に関するデータは不足している。本研究では、5 台のヒータークーラー装置に関する 4 年以上にわたる抗酸菌の前向きサーベイランスの概要を述べた。

方法
2014 年に購入した新品の LivaNova 3T(ロンドン、英国)のヒータークーラー装置 5 台を前向きに追跡調査した。2014 年の 4 月中旬まで、ヒータークーラー装置は製造業者の推奨に従ってメンテナンスされ、続いて排気の排出を含む強化された院内の手順に従ってメンテナンスされた。抗酸菌のサーベイランスの培養物は、患者用および心筋保護用回路から月 1 回収集された水サンプル、ならびに空気サンプルで構成された。

結果
441 件の水サンプルのうち 170 件(38.6%)が NTM の増殖を示した。最も高頻度に検出された NTM は、M. chimaeraN = 120[67.4%])、マイコバクテリウム・ゴルドナエ(Mycobacterium gordonaeN = 35[19.7%])、Mycobacterium paragordonaeN = 17[9.6%])であった。NTMである M. chimaera および M. paragordonae の増殖は、ヒータークーラー装置の心筋保護用回路よりも患者用回路から採取した水サンプルにおいて有意によく見られた。150 件の空気サンプルのうち 3 件(2.0%)で NTM の増殖が見られた。

結論
ヒータークーラー装置の水サンプルにおける NTM の増殖はよく見られた。多様な NTM の菌種が検出され、M. chimaera が最も多かった。空気サンプルの大部分は陰性のままであった。M. chimaera 以外の NTM とヒータークーラー装置の汚染との関連性は明らかにされていないが、ヒータークーラー装置関連のマイコバクテリウム・アブセサス(Mycobacterium abscessus)のアウトブレイク 1 件の最近の報告により、潜在的な脅威であることが裏付けられた。

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監訳者コメント
LivaNova 3T は日本を含む世界各国で使用されており、汚染についての報告も複数ある。医薬品医療機器総合機構(PMDA)によると、2018 年までに国内で販売された機器については自主回収、汚染を防ぐための設計変更をおこなった機器との交換が行われている(https://www.info.pmda.go.jp/rgo/MainServlet?recallno=2-8775)。

積極的サーベイランスと接触隔離における適切な患者配置は、中国の小児患者でのカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(carbapenem-resistant Enterobacterales)感染症および保菌を著しく減少させた

Active surveillance and appropriate patient placement in contact isolation dramatically decreased carbapenem-resistant Enterobacterales infection and colonization in paediatric patients in China

L. Yin*, L. He, J. Miao, W. Yang, X. Wang, J. Ma, N. Wu, Y. Cao, L. Wang, G. Lu, L. Li, C. Lu, J. Hu, L. Zhang, B. Zhao, X. Zhai, C. Wang
*Children’s Hospital of Fudan University, China

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 486-494

背景
診療でのカルバペネムの使用の増加に伴いカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(carbapenem-resistant Enterobacterales;CRE)も増加しており、ヒトの健康にとってかなりの脅威となっている。

目的
CRE の保菌の積極的スクリーニングと CRE 患者の様々な配置の実行が CRE 感染症のリスクを低下させる効果を評価すること。

方法
2017 年から 2018 年の間に、CRE の高リスク部門(小児集中治療室、新生児集中治療室、新生児病棟および血液内科部門)全体で CRE の保菌のスクリーニングと CRE 患者の様々な配置を実施した。

結果
2018 年には CRE 陽性の新生児患者の 80%超は個室または同室で隔離され、非新生児患者の 50%超はコホートではない配置で隔離されていた。CRE の院内感染発生率は新生児集中治療室では 1.96% から 0.63%に低下し、新生児病棟では 0.57% から 0.30%に低下した一方で(全 P 値< 0.05)、他の部門では有意な変化は認められなかった。CRE の高リスク部門では、異なる入院期間(LOS)での CRE の保菌発生率は 8 日間から 14 日間および 14 日間を超える LOS で低下した(全 P 値< 0.05)。さらに新生児分離株では臨床株の 62.5%、スクリーニング株の 66.7%、院内感染株の 74.1%が CC17 群に属していた。一方、非新生児分離株では臨床株の 56.6%、スクリーニング株の 47.5%、院内感染株の 100%が CC11 群に属していた。新生児のカルバペネム耐性肺炎桿菌(carbapenem-resistant Klebsiella pneumoniae;CRKP)株では主なカルバペネマーゼ遺伝子は blaNDM-1(98%)であり、非新生児の CRKP 株では blaKPC-2(70%)であった。

結論
積極的な CRE の保菌のサーベイランスおよび CRE 陽性患者の適切な配置は、CRE 感染症のリスクを低下させる可能性がある。新生児と非新生児の CRKP 分離株は異なる CRE の分子的特徴を示しており、このことが CRE 感染症の予防と抗菌薬治療にさらなる恩恵をもたらしうる。

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監訳者コメント
コメント無し

2016 年の米国の高負担の急性期病院 8 施設における院内発症メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)血流感染症の調査

Investigation of hospital-onset meticillin-resistant Staphylococcus aureus bloodstream infections at eight high-burden acute care facilities in the USA, 2016

D.C. Ham*, I. See, S. Novosad, M. Crist, G. Mahon, L. Fike, K. Spicer, P. Talley, A. Flinchum, M. Kainer, A.J. Kallen, M.S. Walters
*Centers for Disease Control and Prevention, USA

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 502-508

背景
2005 年から 2012 年まで大幅に減少したにもかかわらず、院内発症メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)血流感染症(BSI)は病的状態と死亡の主な原因であり続けている。

目的
院内発症 MRSA BSI のリスク因子と根本的な原因を示すこと。

方法
本研究では高負担の短期療養型急性期病院 8 施設において院内発症 MRSA BSI を調査した。症例は、その前の 2 週間に MRSA 陽性の血液培養がない患者より 2016 年に入院 4 日目またはそれ以降に採取された血液検体からの最初の MRSA の分離と定義した。症例の人口統計学的データとリスク因子は診療記録の抽出によってレビューした。可能性のある感染症の臨床的原因は臨床医の委員会の合意によって決定された。

結果
適格症例 195 例のうち 186 例を調査した。症例はほとんどが男性(63%)であり、年齢中央値は 57 歳(範囲 0 ~ 92 歳)であった。BSI の前の 2 週間において症例の 88%は留置器具を有しており、31%は外科手術を、18%は透析を受けていた。最もよく見られた発生場所は集中治療室(ICU、46%)と step-down unit(19%)であった。最も多く特定された互いに排他的ではない臨床的原因は中心静脈カテーテル(46%)、非外科的創傷(17%)、手術部位感染症(16%)、人工呼吸器関連でない医療関連肺炎(13%)、人工呼吸器関連肺炎(11%)であった。

結論
器具および手術関連の感染症は、院内発症 MRSA BSI のよく見られる原因であった。これらの施設での院内発症 MRSA BSI の負担を減少させるために、器具および手術関連の感染症の現在の予防バンドルの遵守改善、ならびに ICU 患者や特定の留置器具を有する患者・特定の高リスクの手術を受ける患者に対する感染源管理に重点を置いた予防戦略が求められている。

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監訳者コメント
本論文の考察でも触れられていたが、過去 20 年近くにわたり対策が計画、実行され、耐性菌の問題は軽減されてきたものの、未だに MRSA 血流感染は院内感染の罹患率、死亡率に関与している。論文の最後に、昨年 CDC より発表された MRSA フォーラム BSI に関するガイドラインが紹介されていた。
Strategies to Prevent Hospital-onset Staphylococcus aureus Bloodstream Infections in Acute Care Facilities (https://www.cdc.gov/hai/prevent/staph-prevention-strategies.html

季節性インフルエンザウイルスの迅速診断とインフルエンザ病棟の入院患者のコホーティング:転帰の前向き分析

Rapid diagnosis of seasonal influenza virus and cohorting of hospitalized patients on an influenza ward: a prospective analysis of outcomes

B. O’Kelly*, A. Conway, C. McNally, S. McConkey, A. Kelly, E. de Barra
*Beaumont Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 509-517

背景
2017 年から 2018 年のインフルエンザシーズンは、それまでの数年と比較して負担が大きかった。季節性インフルエンザの患者の管理については十分に記述されていない。

目的
インフルエンザ専用病棟のインフルエンザ患者の管理が抗菌薬の使用と期間、入院期間(LOS)に与える影響を評価すること。

方法
2018 年 1 月 1 日から 2 月 28 日まで前向きコホート研究を実施した。救急部でインフルエンザと診断された患者は、感染症科または総合内科の管理下で 35 床のインフルエンザ病棟にコホーティングされた。収容人数が最大の時は、他の病棟で他科による管理を受けた患者もいた。

結果
91 例の患者が救急部からインフルエンザ病棟に入院し(感染症科 64 例、総合内科 27 例)、そのうち 38 例の患者はインフルエンザ A 型であった。感染症科によって管理された患者はほとんどの場合、総合内科によって管理された患者よりも早く経口抗菌薬に切り替えられた(中央値 3 日 vs 5 日、P = 0.049)。抗菌薬の使用期間は感染症科によって管理された患者のほうが総合内科によって管理された患者よりも短かった(中央値 7 日 vs 9 日、P = 0.016)。感染症科によって管理されたインフルエンザ病棟の患者の LOS は、非インフルエンザ病棟のインフルエンザ患者よりも短かった(中央値 5 日 vs 9 日、P = 0.007)。インフルエンザ病棟の患者の LOS は、感染症科によって管理された場合と総合内科によって管理された場合で有意差は認められなかった(中央値 5 日 vs 7 日、P = 0.30)。

結論
インフルエンザ病棟で感染症科によって管理されたインフルエンザ患者は、総合内科によって管理された患者と比較して静注および全体の抗菌薬の使用期間が短く、非インフルエンザ病棟のインフルエンザ患者と比較して LOS が短かった。

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監訳者コメント
タイトルが分かりにくいが、インフルエンザで入院した患者を感染症の専門家が診療した場合と一般内科が診療した場合の抗菌薬の使用量や入院期間の違いを評価した研究である。これらのパラメーターは概ね感染症専門家が診療した方が良好であった。可能であればそれが「なぜ」なのか一歩踏み込んで欲しいところである。

侵襲性フザリウム症の感染源としての病室の排水口:血液内科患者を対象とした解析

Drain outlets in patient rooms as sources for invasive fusariosis: an analysis of patients with haematological disorders

Y. Hino*, Y. Muraosa, M. Oguchi, M. Yahiro, K. Yarita, A. Watanabe, E. Sakaida, K. Yokote, K. Kamei
*Chiba University, Japan

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 518-526

背景
侵襲性フザリウム症は頻度が高く、治療用の抗真菌薬がないため致死性疾患であるため、侵襲性フザリウム症の予防は極めて重要である。しかし、フザリウム(Fusarium)感染症は、アスペルギルス(Aspergillus)やカンジダ(Candida)などの他の一般的な病原性真菌のように徹底した研究が行われていない。

目的
日本の血液内科患者における侵襲性フザリウム症の疫学について調べること、およびフザリウム症の感染経路を明らかにすること。

方法
2009 年から 2019 年の期間に、日本の血液内科疾患患者における侵襲性フザリウム症の 29 症例を後向きに解析した。侵襲性フザリウム症の感染源を明らかにするため、医療施設および介護施設の室内空気および排水口を対象とした室内環境調査を、培養に基づくメタゲノム解析を用いて実施した。最後に、エアロゾルおよび飛沫拡散試験を実施した。

結果
疫学試験から、侵襲性フザリウム症の主要な病原体は Fusarium solani species complex(FSSC)であること、また最も高頻度に認められた菌種は Fusarium petroliphilum であることが示された。ほとんどの患者が、入院中に侵襲性フザリウム症を発症する割合が高かった。Fusarium 菌を対象とした培養では、排水口サンプル 72 個中 26 個が陽性であった。空気サンプルからはFusarium 菌はほとんど検出されなかったのに対し、排水口で回収された分離株 108 株中 29 株はFusarium 菌と同定された。さらに、メタゲノム解析でも同様の結果が得られた。興味深いことに、室内の排水口から FSSC に属するFusarium 菌種が分離され、これらの分離株は侵襲性フザリウム症患者の分離株と類似していた。飛沫拡散試験では、Fusarium 菌のコロニーが 8 個から 17 個分離された。

結論
著者らの研究から、感染原因となったFusarium 属菌は、病院や介護施設の排水口に定着している可能性、また飛沫によるFusarium 菌の拡散が侵襲性フザリウム症の原因である可能性が示唆される。

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監訳者コメント
血液内科患者から分離された Fusarium 属菌の評価と、そのソースとしてシンクの排水口を提唱した研究である。排水口は様々な微生物のソースとして報告されているが、フサリウムもか、といったところである。

高齢者における肺炎後のクロストリジオイデス・ディフィシル(Clostoridioides difficile)感染症:どの抗菌薬でリスクがより低いか?

Clostridioides difficile infection after pneumonia in elderly patients: which antibiotic is at lower risk?

P. Bonnassot*, J. Barben, J. Tetu, J. Bador, P. Bonniaud, P. Manckoundia, A. Putot
*Hospital of Champmaillot, University Hospital, France

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 527-533

背景
クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostoridioides difficile)感染症(CDI)は、急性肺炎で入院して抗菌薬療法を受けている高齢者において、高頻度でみられる重度の合併症である。

目的
CDI の疾患負担とリスク因子について評価すること、また通常の抗菌薬レジメンのうちのどれが、急性肺炎後の CDI 発症リスクをより減らすことができるかを明らかにすること。

方法
2007 年から 2017 年までの間に、大学病院 1 施設の全病棟において急性肺炎で入院した75歳超の患者のうち、CDI を発症した患者全 92 例を、CDI を発症しなかった患者 213 例と比較した。以下と関連する因子について、ロジスティック回帰モデルを用いて評価した(i)院内および 1 年死亡率、(ii)CDI 発生率。

結果
急性肺炎後に CDI を発症した患者としなかった患者において、院内死亡率はそれぞれ 34% および 20%、1 年死亡率はそれぞれ 63% および 42% であった。交絡因子を補正したところ、CDI は肺炎後の院内死亡および 1 年死亡のリスクが 2 倍になることと関連した(それぞれ、オッズ比[OR]1.95、95%信頼区間[CI]1.06 ~ 3.58、および OR 2.02、95%CI 1.43 ~ 7.31)。抗菌薬の数が多いこと(抗菌薬当たりOR 1.89、95%CI 1.18 ~ 3.06)の方が抗菌薬投与期間(1 日当たり OR 1.04、95%CI 0.96 ~ 1.11)よりも、CDI のリスク上昇と関連した。他の抗菌薬と比較して、ペニシリン+βラクタマーゼ阻害薬が、CDI 発症リスクの低下と関連した(OR 0.43、95%CI 0.19 ~ 0.99)。

結論
高齢入院患者において CDI により、短期的および長期的に急性肺炎の疾患負担が大幅に増加した。もし確認されれば今回の結果は、急性肺炎の高齢患者において CDI の発症を抑えるための治療としてペニシリン+βラクタマーゼ阻害薬の使用が望ましいことを示唆している。

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監訳者コメント
CDI 患者は病院内死亡率が34%、1 年以内死亡率が 63%と高かった。CDI の危険因子として効菌薬の投与期間よりも抗菌薬の数の方が重要であった。また抗菌薬種別の検討ではβラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン系薬使用患者で CDI のリスクが低かった。以上は CDI の研究でよくある結果であるが、抗菌薬の数が危険因子であることや特定の抗菌薬のリスクの大小は参考になるかもしれない。

心臓手術後の人工呼吸器関連肺炎のリスク因子

Risk factors for ventilator-associated pneumonia following cardiac surgery

N. Hassoun-Kheir*, K. Hussein, Z. Abboud, Y. Raderman, L. Abu-Hanna, A. Darawshe, G. Bolotin, M. Paul
*Rambam Health Care Campus, Israel

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 546-551

背景
心臓手術後の人工呼吸器関連肺炎(VAP)は、予防可能な合併症であるが、有害なアウトカムと関連する。

目的
心臓手術後の VAP についてリスク因子およびアウトカムを評価することを目的とした。

方法
イスラエルの 3 次病院において、1 : 3でマッチさせた症例対照研究を実施した。対象には、2014 年 9 月から 2017 年 3 月までの間に胸骨切開による心臓手術を受けた成人患者を含めた。症例には、術後 30 日以内に VAP を発症した全患者を含め、コンセンサス基準を用いて定義した。対照は、年齢、性別および術式によってマッチさせた。手術データを前向きに収集し、他のデータは後向きに収集した。Cox 回帰を用いて、マッチさせたデータの補正解析を行った。

結果
手術を受けた患者 946 例中、心臓手術後に VAP を発症した患者 57 例を同定し(1,000 人工呼吸器日あたりエピソード 17.7 件)、対照 149 例とマッチさせた。VAP の有意な独立リスク因子は、うっ血性心不全(オッズ比[OR]2.357、95%信頼区間[CI]1.052 ~ 5.281)、集中治療室での再開胸(OR 10.213、95%CI 2.235 ~ 46.678)、術前血糖値(1 mg/dL の増加あたり OR 1.1010、95%CI 1.004 ~ 1.019)、術中赤血球輸血(1 単位あたり OR 1.542、95%CI 1.109 ~ 2.094)および肺高血圧症(OR 2.261、95%CI 1.048 ~ 6.554)などであった。VAP の原因として最も多かったのはグラム陰性菌であった。VAP は、死亡率の上昇、入院期間の延長、人工呼吸器装着の必要期間の延長、ならびにICU滞在期間の延長と関連した。

結論
心臓手術患者における術後 VAP は、重度の臨床アウトカムと関連する。著者らは、高リスク患者に対する予防措置実施の助けとなり得るリスク因子を同定した。

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監訳者コメント
心臓外科手術後の SSI ではなく VAP の危険因子を評価した研究である。危険因子として血糖値や術中の赤血球輸血などに加え、ICU における再開胸や肺高血圧、うっ血性心不全などがあげられている。VAP の研究として特定の状況のさらにその背景まで調べた論文として興味深い。

ヒータークーラーユニットの消毒および洗浄:懸濁液およびバイオフィルムに対する殺菌

Disinfection and cleaning of heater-cooler units: suspension- and biofilm-killing

J.O. Falkinham III*
*Virginia Tech, USA

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 552-557

背景
心臓手術患者における、マイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)またはマイコバクテリウム・アブセサス(Mycobacterium abscessus)による非結核性抗酸菌(NTM)感染症は、人工心肺装置のヒータークーラーユニットから産生される NTM エアロゾルが感染源とされている。

目的
NTM の菌数を減らし、それにより NTM エアロゾル産生の可能性を予防することを目的とした、ヒータークーラーの貯水槽を消毒するためのプロトコールを作成すること、またヒータークーラーの貯水槽における消毒後の再播種を抑制することを目的とした、ヒータークーラーの表面バイオフィルム形成を防ぐためのアプローチを開発すること。

方法
米国疾病対策センター(CDC)の検査室用バイオリアクター 1 台およびヒータークーラー 1 台に、M. chimaera または M. abscessus を播種して、複数の消毒プロトコールを対象に、水サンプルおよびバイオフィルムサンプル中の NTM のコロニー形成単位(cfu)を減少させる能力、ならびに消毒後における NTM の再発生を遅らせる能力を評価すること。

結果
酵素処理洗浄剤と Clorox® の併用は、ヒータークーラーの貯水槽サンプル中の M. chimaera cfu の減少において、Clorox 消毒薬単独の場合と同等の効果を示した。しかし、これらの抗酸菌の再出現は、酵素処理洗浄剤と Clorox の併用により、Clorox 消毒薬単独の場合と比較して12 週間の遅延が認められた。

結論
酵素処理洗浄剤と Clorox の併用は、効果的な消毒処理法であり、ヒータークーラーの貯水槽における M. chimaera の再発生を有意に遅延させた。

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監訳者コメント
ヒータークーラーユニットは心臓外科手術後の非結核性抗酸菌感染症の原因として今やよく知られている。本論文はその予防のための消毒方法について検討したものである。日本でも使用されている器材であり、消毒に困られている方は是非一読を。

表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)による人工関節感染症の病理発生:毒性遺伝子の同定により感染性株と共生株を識別できるか?

Pathogenesis of Staphylococcus epidermidis in prosthetic joint infections: can identification of virulence genes differentiate between infecting and commensal strains?

A. Sánchez*, N. Benito, A. Rivera, L. García, E. Miró, I. Mur, Y. González, C. Gutiérrez, J.P. Horcajada, P. Espinal, F. Navarro
*Hospital de la Santa Creu i Sant Pau, Spain

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 561-568

背景
表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)はヒト皮膚細菌叢の共生細菌であり、人工関節感染症(PJI)の原因微生物となることが多い。これまでに、S. epidermidis について感染性株と共生株の集団を識別するための単一マーカーは同定されていない。

目的
2 つの集団の識別を可能にする遺伝子マーカーをみいだすこと。

方法
PJI 患者から得た S. epidermidis 株 50 株、健康なヒトの皮膚から得た 50 株(共生株)、ならびに一次関節置換術を受けた患者の手術野から得た 17 株について解析した。これらの 3 群について、抗菌薬感受性プロファイル、ST 型、バイオフィルム形成、ならびに毒性因子を検討した。手術野に由来する株は、これまで他の 2 群と比較されたことはなかった。

結果
PJI 患者に由来するS. epidermidis 株は、共生株および手術野株と比べて抗菌薬耐性を有する割合が有意に高かった。共生株および手術野株では、幅広く様々な配列型が認められた。主要なST 型は ST2 であり、これは PJI 株でのみ認められた(44%)。バイオフィルム形成には、群間で差は認められなかった。毒性遺伝子 sdrF および bhp、完全な ica オペロン、ならびに挿入配列 IS256 が、PJI 株において有意に多く認められた。対照的に、遺伝子 embp および hld、ならびにアルギニン異化可動性要素が、共生株では多く認められた。手術野株は、感染性株と共生株を識別する上で妥当な対照群となると考えられる。

結論
特徴的な性質の組み合わせによって、PJI における S. epidermidis について感染性株と共生株を識別することが可能であるが、単一のマーカーでは識別できない。

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監訳者コメント
PJI の原因菌は、ブドウ球菌属が約 4 割を占め、その半数は表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)である。表皮ブドウ球菌は近年黄色ブドウ球菌につぐ重要な PJI 起炎菌であるが、常在菌であるため分離されても起炎菌と汚染菌との鑑別が極めて難しい。しかしながら、病原性に関連する遺伝子を複数組み合わせることでその区別ができそうであり、判断に迷った時の助けになるが、日常的に実施するにはコストと時間がかかるため、現時点では現実的ではないかもしれない。

中国の武漢において COVID-19 に感染し、入院した最前線の医療従事者 80 名の臨床的特徴

Clinical characteristics of 80 hospitalized frontline medical workers infected with COVID-19 in Wuhan, China

X. Wang*, W. Liu, J. Zhao, Y. Lu, X. Wang, C. Yu, S. Hu, N. Shen, W. Liu, Z. Sun, W. Li
*Huazhong University of Science and Technology, China

Journal of Hospital Infection (2020)105, 399-403

中国において 1,000 名を超える医療従事者が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染している。2020 年 1 月 10 日から 2 月 24 日までに、医療従事者計 80 名が武漢の同済医院に入院し、57 名は重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)確定例、23 例は臨床的診断例であった。年齢中央値は 39 歳(四分位範囲 32 ~ 48.5 歳)、49 例(61.25%)が女性で、1 例が死亡した。発症時にもっとも頻発した症状は、発熱(65 例、81.25%)、咳嗽(47 例、58.75%)、倦怠感(28 例、35%)、筋肉痛(19 例、23.75%)、喀痰(19 例、23.75%)、下痢(15 例18.75%)であった。単一の当施設に患者として入院した最前線の医療従事者は、武漢市や各地の他の患者と比較して、いくつかの特有な臨床・検査所見を示した。

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監訳者コメント
これまでに COVID-19 の重症化に関連する検査所見としては、CRP、LDH、D ダイマー、フェリチン、トロポニン、クレアチニン、リンパ球数、KL-6 などがある。入院した医療従事者80 名 のうち、職種では看護師 41 名、医師 23 名、その他が 16 名であった。基礎疾患は10名(12.5%)が高血圧であり、糖尿病や心疾患、COPD などは 2%前後であった。重症者は 2 名のみで、人工呼吸器が使用され、うち 1 名が死亡している。すべての患者において D ダイマーの上昇はなかった。男女差が認められた検査は、血小板数、APTT、クレアチニンであった。80 名という限られた数であり、医療従事者と一般患者との差については言及することは難しい。

COVID-19 パンデミックの状況下、どんな用途にどんなフェイスマスク?フランスのガイドライン★★

What face mask for what use in the context of the COVID-19 pandemic? The French guidelines

D. Lepelletier*, B. Grandbastien, S. Romano-Bertrand, S. Aho, C. Chidiac, J.-F. Géhanno, F. Chauvin, for the French Society for Hospital Hygiene and the High Council for Public Health
*French Society for Hospital Hygiene, France

Journal of Hospital Infection (2020)105, 414-418

COVID-19 パンデミックの状況下、フェイスマスクの着用は、病院だけでなく市中でも一般的になり随所で目にするようになった。とはいえ、一般市民は、その特性を問わずサージカルマスクや filtering facepiece(FFP)マスクを使用しており、もっとも曝露される人々、つまり医療従事者における世界的な供給不足をもたらしている。このことは、マスクを合理的に使用するために、マスクの種類ごとに適用を明確化する緊急性を強調するものである。本稿では、医療従事者用の呼吸用保護具の合理的な使用に関するフランスの見解を述べる。

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監訳者コメント
COVID-19 の感染経路は、①咳・くしゃみによる飛沫感染、②目鼻口などの粘膜への接触感染である。マスク着用は、病院のみならず一般社会においても当たり前になっている。その結果マスクの供給不足が発生し、医療現場への供給が制限される事態となり、フランス政府は、「マスク着用に関するガイドライン」を制定した。微粒子マスクは、FFP2 が N95 に相当するが、この着用はエアロゾル発生時に限定され、医療用サージカルマスクの着用も適応は日本と大きく変わりはない。大きく異なるところは、着用時間が定められており、サージカルマスクは最大 4 時間(WHOは 6 時間)で交換、湿ってくれば直ぐに交換する、FFP2 は 8 時間以内でメーカーの指示(再使用と単回使用)に従うとなっている。これ以外のマスクについては医療現場での使用は推奨されていない。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する医療従事者の知識、姿勢、実践および障壁の認識:パキスタンの横断的調査★★

Knowledge, attitude, practice and perceived barriers among healthcare workers regarding COVID-19: a cross-sectional survey from Pakistan

M. Saqlain*, M.M. Munir, S.U. Rehman, A. Gulzar, S. Naz, Z. Ahmed, A.H. Tahir, M. Mashhood
*Quaid-I-Azam University, Pakistan

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 419-423

パキスタンの医療従事者の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する知識、姿勢、実践を評価するため、実証済み(クロンバックのα[Cronbach’s alpha]= 0.077)の自己記入式質問票を使用した。COVID-19 に関して医療従事者は知識が豊富であり(93.2%、N = 386)、前向きな姿勢を持ち(平均値 8.43[標準偏差 1.78])、実践に優れる(88.7%、N = 367)という結果が示された。医療従事者は、感染対策に使用する器材が限られていること(50.7%、N = 210)、伝播に関する知識が乏しいこと(40.6%、N = 168)が感染制御の主な障壁だと認識していた。薬剤師は他の医療従事者よりも実践に優れる傾向が強いことが回帰分析により示された(オッズ比[OR]2.247、95%信頼区間[CI]1.11 ~ 4.55、P = 0.025)。本研究によってパキスタンの医療従事者は知識が豊富であることが分かったが、知識と実践の特定の部分に隔たりがあり、注意が必要である。

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監訳者コメント
2019 年 12 月 31 日に中国武漢において原因不明の肺炎の集団発生が WHO に報告され、その原因ウイルスが分離同定され、SARS-CoV-2 と命名された。2020 年 3 月 11 日には、世界的なパンデミックと宣言された。2020 年 8 月末で2,500 万例が感染し、84 万例の死者が WHO から報告されている。2 月 26 日に第 1 例の発生後、8 月末で 29 万例の感染者と 6,300例の死者がパキスタン政府より報告されている。この感染症に対する知識の欠如と誤解は、現場での医療従事者の発見を遅らせ、結果的に多くの二次感染者が院内で発生することとなる。本調査では、知識と姿勢および実践が、各々で互いに正相関しており、これらの 3 つの要素が COVID-19 の診療において必要であることを示している。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連する擦式アルコール製剤、フェイスマスク、医療用手袋、ガウンの不足:患者と医療従事者の安全を確保するためのリスクに適合したアプローチの提案★★

COVID-19-associated shortage of alcohol-based hand rubs, face masks, medical gloves, and gowns: proposal for a risk-adapted approach to ensure patient and healthcare worker safety

G. Kampf*, S. Scheithauer, S. Lemmen, P. Saliou, M. Suchomel
*University Medicine Greifswald, Germany

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 424-427

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、医療界や一般市民からの擦式アルコール製剤、医療用手袋、フェイスマスク、ガウンに対する非常に大きな需要を生み出した。これらの物品の深刻な不足に直面する病院が増えている。我々は、患者と医療従事者の十分な安全をできるだけ長く確保するためのリスクに適合したアプローチを提案する。

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監訳者コメント
手指消毒剤、マスク、手袋、ガウンなどの医療材料が世界的に供給不足に陥っていることは周知の事実であり、その結果医療現場での医療従事者の安全確保が危うい状況となっている。本来なら石けんと流水で十分であるにもかかわらず、手指消毒剤が様々な公共の場や店舗等に設置され、各個人の家庭でも購入される結果、必然的にアルコールの需要が増加し、医療現場での不足が発生している。本提案では、不足時には「製品としての手指消毒剤」は医療従事者と免疫不全の患者のみに優先し、病院への訪問者は希釈したアルコールで良く、一般人は石けんと流水の手洗いとしている。手指消毒剤の製品が不足した場合の代替案として自家調製することとし、80%w/w エタノールまたは 75%w/w イソプロパノール、0.725%グリセロール(皮膚保護)、0.125%過酸化水素(調製時に混入する芽胞を殺すため)を添加したもの(WHO 推奨の修正処方)としている。現在日本でも手指消毒剤は不足しており、これらに類似した対応が実際に行われている。

2020 年のイランの病院職員における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防行動に関連する因子:防護動機理論(PMT)の適用

Factors associated with preventive behaviours of COVID-19 among hospital staff in Iran in 2020: an application of the Protection Motivation Theory

S. Bashirian*, E. Jenabi, S. Khazaei, M. Barati, A. Karimi-Shahanjarini, S. Zareian, F. Rezapur-Shahkolai, B. Moeini
*Hamadan University of Medical Sciences, IR Iran

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 430-433

本研究は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する医療従事者の予防行動を、防護動機理論(PMT)に基づいて予測するために実施した。この横断的・分析的研究は、イランのハマダーンの医療従事者 761 名を対象に、多段階無作為抽出法を用いて実施した。医療従事者の COVID-19 に対する予防行動は比較的望ましい水準と評価された。PMT に基づくと、脅威評価と対処評価は、COVID-19 の予防行動を実施する防護動機の予測因子であった(P < 0.001)。意志も、COVID-19 の予防行動を予測するものであった(P < 0.001)。職員のトレーニングプログラムを計画する際に、職員の自己効力感と予防行動の有効性に関する知識を考慮することが推奨される。

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監訳者コメント
イランにおける COVID-19 に対する医療従事者の予防行動を防護動機理論(PMT)に基づいて予測するために 2020 年 3 月に実施した研究。世界的に共通する普遍的な課題であり、日本においても参考になる。

ポルトガルの医療従事者および一般集団における COVID-19 リスクの認識

Risk perception of COVID-19 among Portuguese healthcare professionals and the general population

D. Peres*, J. Monteiro, M.A. Almeida, R. Ladeira
*Healthcare Community Center of Porto IV, Portugal

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 434-437

ポルトガルの医療従事者および一般集団における COVID-19 のリスク認識評価について、3,403 人を雪だるま法で評価を行ったところ、感染する確率が高いと考えていたのは医療従事者では 54.9%であったのに対し、一般集団では 24.0%であり(P < 0.001)、その4 分の 1 以上が自身の家族が感染する可能性があると考えていた。予防的隔離については、70%以上がその有効性に同意した。かなりの割合で、医療の準備が十分ではないと考えていた(一般集団50.1% 対 医療従事者63.5%、P < 0.001)。保健当局のコミュニケーションについては、約 60%が「中程度」に満足しているとした。今回のパンデミックが 3 か月から 6 か月で制御され得ると考えていたのは、一般集団では 46.7%、医療従事者では 52.8%であった(P = 0.01)。

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監訳者コメント
ポルトガルでのCOVID-19 のリスク認識評価を 2020 年 3 月に Google フォームでアンケート調査を行い、医療従事者と一般集団で比較した研究である。医療従事者の方が危機感が強い傾向にあるが、両者ともに約半数がパンデミックは早期に制御できると考えている点が興味深い。

イタリア南部プッリャ州バーリの大学病院における SARS-CoV-2 に曝露された医療従事者を対象とした予防および防御策

Prevention and protection measures of healthcare workers exposed to SARS-CoV-2 in a university hospital in Bari, Apulia, Southern Italy

L. Vimercati*, A. Dell’Erba, G. Migliore, L. De Maria, A. Caputi, M. Quarato, P. Stefanizzi, D. Cavone, D. Ferorelli, S. Sponselli, F. Mansi, S. Tafuri
*University of Bari, Italy

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 454-458

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)関連感染症は、公衆衛生に重大な影響を及ぼし、医療従事者は高い生物学的リスクに曝されている。本稿では、イタリアの バーリ大学病院で、医療従事者のリスクを低減するために導入された予防措置について報告する。この予防措置には、予防措置の強化、および医療従事者の接触データを収集するための報告システムの活用が含まれていた。プロトコールの導入後 30 日の観察期間に、感染確定症例 23 例(全医療従事者の 0.4%)が報告された。この結果から、医療従事者の接触に関する正しい管理が、院内クラスターを防ぐために不可欠であることが示されている。

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監訳者コメント
イタリアの大学病院における SARS-CoV-2 感染防止プロトコルの報告。医療従事者が適切な防護なしに濃厚接触した場合は 14 日間の自宅隔離が推奨されているが、本プロトコルでは 7 日の自宅隔離の後、鼻咽頭スワブを行い 24 時間空けて 2 回陰性であれば職場復帰可能としており、隔離期間を短縮する方法として参考となる。

紫外線照射殺菌による多剤耐性病原体カンジダ・オーリス(Candida auris)の不活化

Inactivation of the multi-drug-resistant pathogen Candida auris using ultraviolet germicidal irradiation

A.R. Lemons*, T.L. McClelland, S.B. Martin, W.G. Lindsley, B.J. Green
*National Institute for Occupational Safety and Health, Centers for Disease Control and Prevention, USA

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 495-501

背景
カンジダ・オーリス(Candida auris)は多剤耐性の病原性真菌であるが、世界的に医療環境における新たな脅威となっている。医療環境で一般的に用いられている化学消毒薬の C. auris に対する不活化効果にはばらつきがあることが示されているため、特に C. auris を不活化するためにデザインされた信頼できる消毒プロトコールが必要である。

目的
紫外線照射殺菌について、臨床的に重要な C. auris 株を不活化するための方法として検討した。

方法
C. auris 分離株 10 株およびカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)分離株 2 株を、紫外線エネルギーに曝露させ、それぞれの分離株を不活化するために必要となる紫外線線量を明らかにした。紫外線リアクターを用いて、各分離株(106 個/mL)を 10 ~ 150 mJ/cm2 の範囲にわたる 11 種類の線量の紫外線に曝露させ、細胞の生存を評価するために培養を行った。

結果
指数関数的減衰モデルを各線量反応曲線に適用して、各分離株について不活化速度定数を算出したところ、C. auris では0.108 ~ 0.176 cm2/mJ の範囲、C. albicans では 0.239 ~ 0.292 cm2/mJ の範囲であった。指数関数的減衰モデルでは 99.9%を超える不活化について正確な推定はできなかったため、ロジスティック回帰モデルを適用して、99.999%の不活化に必要となる線量についてより正確な推定を行った。このモデルを用いたところ、C. auris(103 ~ 192 mJ/cm2)の不活化には C. albicans(78 ~ 80 mJ/cm2)の不活化よりも有意に大きな紫外線エネルギーが必要となった。

結論
紫外線照射殺菌は C. auris の不活化に実施可能な方法であるが、分離株による感受性の違いを考慮に入れなければならない。今回の線量反応データは、医療環境において検証するための紫外線照射殺菌における照射線量に関する戦略を推奨する上で極めて重要である。

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監訳者コメント
日本においては Candida auris の報告がまれであることや、紫外線照射殺菌装置が普及していないことを考慮すると現時点では重要性は高くないが、今後の動向によっては重要度が高くなる可能性がある。

アデノシン三リン酸(ATP)は手指消毒の効果を評価するための代理指標になるか?

Can adenosine triphosphate be a proxy measure in evaluation of hand disinfection effect?

H.J. Breidablik*, D.E. Lysebo, L. Johannesen, Å. Skare, J.R. Andersen, O.T. Kleiven
*Helse Førde HF, Norway

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 558-560

汚染された手指は、病原体の伝播に寄与する可能性がある。医療関連感染症の予防において、理想的には消毒法の有効性を簡便な方法で評価できるようにすべきである。微生物培養は標準法であるが、同法は複雑で時間がかかる手法であり、スワブを用いたアデノシン三リン酸(ATP)の測定は極めて多く用いられている代理法(生物発光)となっている。著者らは、人工的に汚染させた手指に対して、3 つの手指消毒法が大腸菌(Escherichia coli)の殺滅に及ぼす効果を、培養および ATP 測定を並行して用いて行った。ATP 測定は、生存している細菌だけでなく、手指に存在する生物材料の総量を反映してしまうため、不適切な方法であることが示された。

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監訳者コメント
ATP は日本でも医療環境や医療器具などの清浄度を評価するために微生物培養に代わる簡便な検査として行われているが、本研究によって手指衛生の効果の評価には不向きであることがわかる。3 つの手指消毒法で培養と ATP 測定を比較しているが、アルコール擦式消毒薬において ATP の減少が乏しかった点が興味深い。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.