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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

コロナウイルスの影響により一部、監修者のコメントおよびレーティングを未監修のまま掲載しておりますので、ご了承ください。

単回使用マスクの汚染除去に関するエビデンス★★

Evidence for decontamination of single-use filtering facepiece respirators

A. Polkinghorne*, J. Branley
*New South Wales Health Pathology, Australia

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 663-669

上気道病原体保有が疑われる患者を治療する医療従事者にとって、単回使用マスクは重要な個人防護具である。2000 年代のパンデミック時の経験や、SARS-2-CoV-2 による 現在進行中である COVID-19 パンデミックは、呼吸器系ウイルスの長期的なパンデミックによる、世界的なマスク供給におよぼす重圧への懸念を浮き彫りにしている。マスクの汚染除去は、マスクの再使用を支持する 1 つの解決策とされており、汚染マスクの消毒効果に加えて汚染除去プロセスがマスクの性能に及ぼす影響についても検討を開始している文献が、過去 10 年以上にわたり増加傾向にある。物理的・化学的な汚染除去法は、紫外線照射による殺菌、蒸気滅菌、エチレンオキサイド、過酸化水素蒸気によるマスク処理について試験されており、これまでのところ、もっとも有望な結果が示されている。マスクの汚染除去のために、病院ですでに利用できる可能性があり、再利用されうる既存の設備が、これらの方法の多くで活用される。重要な点は、方法によっては家庭用器具でも再現でき、マスクの汚染除去の有用性が、医療環境以外にも広がることである。さまざまな微生物でマスクを実験的に汚染する技術を使用した場合、ほとんどの汚染除去法により、着用者および他者への感染源としてのマスクのリスクが無視できるレベルまで低減するようである。とはいえ、フィルターの性能、とくに処理後の粒子透過率は、処理法およびフィルター自体の型によって大きく異なる。マスクのルーチンでの汚染除去を支持するために、規制当局支援による緊急調査が必要である。緊急事態におけるこれらの方法は、医療従事者に起こりうるマスクの供給不足に対処する一戦略として、やはり慎重に検討すべきである。

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監訳者コメント
呼吸器防護具の再生処理を行う際に注意すべきは、病原体を確実に不活化できるか(消毒レベルより滅菌レベルが望ましい)、病原体不活化処理により吸器器防護具のもつフィルター性能が劣化しないか、病原体不活化処理により呼吸器防護具の素材に有害物質が吸着しないかなどに注意を払う必要がある。

エアロゾル発生手技と医療従事者の SARS-CoV-2 感染リスク:エビデンスの限界★★

Aerosol-generating procedures and infective risk to healthcare workers from SARS-CoV-2: the limits of the evidence

H. Harding*, A. Broom, J. Broom
*Sunshine Coast Hospital and Health Service, Australia

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 717-725

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)の伝播様式は、現在明らかにされつつある段階である。主に飛沫や直接接触により伝播すると考えられ、少なくとも日和見空気感染の可能性がある。医療従事者を適切に保護するために、エアロゾル発生手技が SARS-CoV-2 伝播のリスクを高めるか否かを明らかにする必要がある。SARS-CoV-2 に関するエビデンスがない状況において、このような手技を安全に実施するためのガイドラインでは、関連病原体の伝播のリスクを考慮すべきである。現時点では、何らかの特定の手技と関連する SARS-CoV-2 伝播について詳述するエビデンスはきわめて少ない。エアロゾル発生手技と一般的な呼吸器系病原体に関して未知の部分がまだ多く、臨床医がこの手技を実施する場合、自身へのリスクに確信が持てないでいると思われる。本レビューでは、エアロゾル発生手技と SARS-CoV-2 に関するエビデンス(およびエビデンスの未知の部分)の概要を示すことを目的とした。

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監訳者コメント
日和見空気感染(opportunistic airborne transmission)の概念は Roy and Milton の分類によるもので 2007 年版の隔離予防策のガイドラインで紹介されている。結核のように絶対的な頻度で空気感染が起こるのではなくまれにそのリスクが発生することを意味する。これまでに報告された知見をレビューしている。

COVID-19 の期間中に再使用する外科用マスクと N95 マスクのオートクレーブ滅菌およびエタノール処理:その性能と完全性への影響

Autoclave sterilization and ethanol treatment of re-used surgical masks and N95 respirators during COVID-19: impact on their performance and integrity

S.A. Grinshpun*, M. Yermakov, M. Khodoun
*University of Cincinnati, USA

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 608-614

背景
COVID-19 パンデミック時の外科用マスクと N95 マスクの需要はきわめて高く、その供給を大幅に超えている。これらの使い捨て用品では、通常、ルーチンの汚染除去および標準治療時の再使用が承認されていないが、このような実践は院内で広く発生している。米国疾病対策センターは、それを「緊急時対応戦略として」許可した。とはいえ、特定の汚染除去法が N95 マスクの性能に及ぼす影響に関して実施された試験は限られており、外科用マスクに関してはデータが示されていない。

目的
オートクレーブ滅菌および 70%エタノール処理(これらの方法は院内でのマスク再使用のためによく用いられている)による一般的な外科用マスクと N95 マスクの性能と完全性の変化に関して、これらのマスクを評価した。

方法
未使用のマスクと N95 マスク、およびさまざまな方法で処理したこれらのマスクにおいて、フィルターの捕集効率と圧力損失を計測した。エアロゾル化された単一ウイルス、その集塊、細菌、より大きな粒子担体など約 0.037 ~ 3.2 μm の粒子の捕集効率を計測した。

結果
オートクレーブ滅菌およびエタノール処理によって、初回の捕集効率およびフィルター通気性が損なわれる可能性がある。効果は、保護用品、粒子の大きさ、呼吸流量、処理の種類、その他の因子に左右される。さらに、オートクレーブ滅菌後、N95 マスクにおいて物理的破損が認められた。

結論
院内でのマスクの汚染除去および再使用を支持する対策は、本研究で得られたデータを検討しながら再評価すべきである。

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監訳者コメント
不織布素材は熱やアルコール処理を前提として作成されていないため、こうした処理では本来の機能を維持できないことが示されている。

ワクチン接種率の低い国における院内インフルエンザの罹患率および特徴

Incidence and characteristics of nosocomial influenza in a country with low vaccine coverage

D. Luque-Paz*, C. Pronier, B. Bayeh, S. Jouneau, C. Grolhier , A. Le Bot, F. Bénézit, V. Thibault, P. Tattevin
*Pontchaillou University Hospital, France

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 619-624

背景
フランスでは、インフルエンザのワクチン接種率が、リスクのある患者および医療従事者において低い。

目的
院内インフルエンザの罹患率、その特徴、転帰を評価することを目的とした。

方法
インフルエンザシーズン中、すべてのインフルエンザ確定例を後向きに評価した。入院後 48 時間以降に発症した入院患者を登録した。標準化された質問票によりデータを収集した。

結果
2017 年 11 月から 2018 年 4 月にかけて、呼吸器サンプルのポリメラーゼ連鎖反応分析により 860 例がインフルエンザ陽性であった。この陽性例のうち、204 例(23.7%)は入院後 48 時間以降に診断され、57 例(インフルエンザ全症例の 6.6%)は院内インフルエンザの適合基準を満たし、女性 26 例、男性 31 例で、年齢中央値は 82 歳(四分位範囲 72.2 ~ 86.9)であった。20 例(38.6%)がその直近(過去 6 か月未満)に季節性インフルエンザワクチン接種を受けていた。入院から発症までの期間、発症から診断までの期間の中央値は、それぞれ 11 日(7 ~ 19.5)、29 時間(15.5 ~ 48)であった。主に病床が 2 つある病室でインフルエンザが感染し(39 例、68.4 %)、14 例で曝露が確認された。院内感染例でのインフルエンザ B 型ウイルスの頻度は(57 例中 46 例、80.7%)、市中感染例(803 例中 359 例、44.6%)での頻度よりも高かった(P < 0.001)。3 か月時点の死亡率は 15.8%(9 例)であった。試験期間中の院内インフルエンザの罹患率は、1,000 病院日あたり 0.22 と推定された。

結論
院内インフルエンザは高齢の入院患者において珍しいことではなく、深刻な影響をもたらす可能性がある。インフルエンザ B 型ウイルスが大きな比率を占めており、これは伝播性がより強いことおよび/または伝播クラスターを示唆するものである。

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監訳者コメント
インフルエンザ B 型ワクチンはより効果的な予防が得られるため、A 型と両方を接種することが望ましい。接種しておけば A 型の型が完全一致していなくても重症化を防ぐなどの効果が期待できる。

COVID-19 パンデミック時の疑い例に対する新たなコホーティングおよび隔離対策

A novel cohorting and isolation strategy for suspected COVID-19 cases during a pandemic

B. Patterson*, M. Marks, G. Martinez-Garcia, G. Bidwell, A. Luintel, D. Ludwig, T. Parks, P. Gothard, R. Thomas, S. Logan, K. Shaw, N. Stone, M. Brown
*University College London, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 632-637

背景
COVID-19 パンデミックは、感染予防・制御における重要な課題を提示している。COVID-19 感染が疑われる多数の患者が入院しており、曝露から他の患者を防御する能力を押さえ込む危険にさらしている。臨床上の疑いから確定検査までの遅延が、問題の複雑さを助長している。

方法
とくに重症化リスクのある患者におけるCOVID-19 院内感染を、最小限に抑えることを目的としたトリアージツールを実行した。COVID-19 の可能性および転帰不良のリスクにより定義したトリアージ区分に患者を分類した。区分 A(可能性低い;高リスク)、区分 B(可能性高い;高リスク)、区分 C(可能性高い;低リスク)、区分 D(可能性低い;低リスク)。これにより、もっともリスクの高い区分 A については、個室に隔離という優先順位を決定した。他の区分の患者は、隔離可能数が限界の場合、コホーティングされ、伝播を阻止するための追加介入を実施した。

結果
93 例について評価し、入院中に 79 例(85%)が COVID-19 の診断を受けた。COVID-19 と診断されなかった患者のうち、最初に区分 A にトリアージされたのは 10 例、区分 B は 0 例、区分 C は 1 例、区分 D は 4 例であった。したがって、隔離が必要な高リスク患者全員が個室に入院し、曝露から保護された。COVID-19 疑い例 28例(30%)は、低リスク(区分 C、区分 D)で、コホーティングが適格であると評価された。コホーティングされた患者において、有症状の院内獲得感染症は認められなかった。

考察
隔離およびコホーティングを決定するための臨床トリアージツールの適用は、とくに、重症化リスクがもっとも高い患者において、院内獲得 COVID-19 の伝播のリスクを低減すると考えられる。

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監訳者コメント
症候的に感染しているリスクの高い人と、感染した場合重症化する可能性の高い人などリスク管理は多面的であるべきである。究極、病室の感染予防策はこうしたパンデミック期には PCR 等で病原体診断がつくまでは個室隔離対応をすることが望まれる。

緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の局地的アウトブレイクの調査におけるパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)と全ゲノムシークエンシングによるタイピングの比較では、PFGE の精度が確認される

Comparison of pulsed-field gel electrophoresis and whole-genome-sequencing-based typing confirms the accuracy of pulsed-field gel electrophoresis for the investigation of local Pseudomonas aeruginosa outbreaks

D. Martak*, A. Meunier, M. Sauget, P. Cholley, M. Thouverez, X. Bertrand, B. Valot, D. Hocquet
*Centre Hospitalier Régional Universitaire, France

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 643-647

目的
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)をモデルとして、全ゲノムシークエンシング(WGS)による技術で明らかにされたクラスターに属する分離株が、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)により正確に認識されるかどうかを確認すること。

方法
1998 年から 2012 年に欧州の 7 つの病院で分離された ST395 P. aeruginosa 分離株 65 株を選択した。分離株を PFGE によりタイピングし、WGS により配列を決定した。3,831 の遺伝子を用いたコアゲノム複数部位塩基配列タイピング(cgMLST)解析を、独自のパイプラインを用いて実施した。

結果
PFGE により 8 つの pulsotype が同定され、cgMLST により 9 つのクラスターおよび 9 つの singleton が識別された。cgMLST による 5 つのクラスターと pulsotype(65 株中 31 株)は完全に一致した。PFGE により分類された明白な疫学的関連がない分離株が、部位を識別する cgMLST により分離された(65 株中 16 株)。これより、局地的アウトブレイクの調査に PFGE を続行すべきであることが示唆される。さらに重要な点は、高頻度突然変異分離株は、その親株と pulsotype が同一であったが(65 株中 16 株)、cgMLST では認識されなかった。これは、緑膿菌の蔓延時に生じる遺伝的浮動の加速による影響が、PFGE では、WGS によるタイピングよりも少なかったことを示している。

結論
WGS によるタイピングは論理的に新たな参照基準になっているが、本研究では、緑膿菌に起因する局地的アウトブレイクの調査のために、PFGE を確信をもって使用できることが示された。

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監訳者コメント
MLST 法は比較的広域の流行株把握に適し、ローカルな流行株の特徴把握は PFGE 法が適している。

化学消毒薬に対するカンジダ・オーリス(Candida auris)およびカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)のEuropean Standard EN 13624・EN 16615による感受性試験

Investigation of the susceptibility of Candida auris and Candida albicans to chemical disinfectants using European Standards EN 13624 and EN 16615

P. Müller*, C.K. Tan, U. Iβleib, L. Paβvogel, B. Eilts, K. Steinhauer
*Albstadt-Sigmaringen University, Germany

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 648-656

背景
カンジダ・オーリス(Candida auris)が 2009 年に最初に報告されて以来、この酵母は臨床現場における重要な病原体の 1 つとなっている。C. auris は医療施設のさまざまな表面で検出されるため、適切な消毒法の対象である。C. auris に対して有効性が証明されている消毒薬による予防法を実施する必要がある。

目的
C. auris の化学物質耐性を、European standard(EN)で確立されている代用試験微生物カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)と比較した。この方法により、EN 13624 および EN 16615 により試験した消毒薬が、C. auris に対して少なくとも同等に有効であるか否かについて結論が得られるであろう。

方法
化学物質に対する C. auris および C. albicans の感受性を、標準化された EN 試験プロトコルを用いて試験した。本試験では、EN 13624、EN 16615 により、市販の 2 種類の表面消毒薬(それぞれ、アルコールベース、四級アンモニウム化合物ベース)を調べた。さらに、2 種類の酵母菌種の生存率を、実際の条件をシミュレートする既定の試験表面で観察した。

結果
C. albicans と比較して、C. auris は、本試験で使用したアルコールベースまたは四級アンモニウム化合物ベースの消毒薬に対する感受性が有意に高いことが確認された。C. albicans は、EN 16615 の試験表面上の乾燥に対して耐性がより強く、回収率がより高かった。

結論
EN 13624 および EN 16615 による殺酵母作用を目標とする場合、C. albicans は適切な代用試験微生物であり、ヒト病原体 C. auris に対する有効性も内在する。

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監訳者コメント
カンジダ・オーリス(C. auris)はカンジダ・アルビカンス(C. albicans)とほぼ同等、あるいはそれ以上に、消毒薬に感受性が高いことを明らかにした論文である。エタノールも 50%以上で有効であり、通常の消毒で効果が期待できる。

流行中の OXA-48 産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)のスクリーニングのための簡単で信頼性の高いワークフローの前向き評価

Prospective evaluation of an easy and reliable work flow for the screening of OXA-48-producing Klebsiella pneumoniae in endemic settings

C. Rodríguez-Lucas*, M.R. Rodicio, Y. Rosete, J. Fernández
*Unidad de Microbiología, Hospital El Bierzo, Spain

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 659-662

背景
カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)は公衆衛生に対する深刻な脅威の 1 つである。臨床微生物検査室は CPE のスクリーニングと確認のための効果的なプロトコールを必要としている。

目的
OXA-48 が流行中の病院 1 施設において、カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)のスクリーニングのアルゴリズムを前向きに評価すること。

方法
本アルゴリズムは、ルーチンの自動抗菌薬感受性検査の純度検査としての役割も果たすエルタペネムとテモシリンを用いたディスク拡散アッセイに基づいた。エルタペネムに対する最小発育阻止濃度> 0.5 mg/L または阻止円直径< 25 mm(判定基準 1)、ならびにテモシリンに対する阻止円直径< 12 mm(判定基準 2)のすべての分離株を、OXA-48 側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイおよび VIM、KPC、OXA-48 を標的とするマルチプレックス PCR により順次検査した。どちらの検査も陽性でない場合、modified Hodge test または CARBA NP test を使用した。

結果
2 年で 2,487 の肺炎桿菌を提示したアルゴリズムで評価し、378(15.20%)が両方の判定基準を満たした。これらのうち 98.68%(378 中 373)は OXA-48 産生株として、あるいは長期間同じ耐性表現型を維持した以前の CPE の分離株を有する患者由来として確認された。残りの 3 つの肺炎桿菌は VIM 産生株であった。判定基準 1 と 2 を満たすにもかかわらずカルバペネマーゼを産生しなかったのは、378 の分離株のうち 2 つ(0.53%)のみであった。

結論
記述したアルゴリズムは CPE の検出に関して最も感受性の高いカルバペネムと OXA-48 の検出に関して特異性の高いテモシリンのカットオフを組み合わせた。本アルゴリズムは臨床微生物検査室のルーチンのワークフローに適用する上で、信頼性が高く簡単であり、CPE 分離株の迅速な検出を可能にすることにより、感染制御策と標的を定めた抗菌薬レジメンの迅速な実施が可能となる。

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監訳者コメントコメント無し

クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)芽胞で汚染された表面の塩化ナトリウム由来電気化学的活性化溶液を用いた消毒

Disinfection of surfaces contaminated with Clostridioides difficile endospores using NaCl-derived
electrochemically activated solution

A. Medaglia-Mata*, R. Starbird-Pérez, E. Sánchez-Chacón, C. Rodríguez
*Instituto Tecnológico de Costa Rica, Costa Rica

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 670-677

背景
クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)は芽胞を介して伝播する。これらの構造に対するほとんどの消毒法では、次亜塩素酸ナトリウムやジクロロイソシアヌル酸ナトリウムといった塩素化合物を高濃度で活用している。しかし、これらの物質は望ましくない公衆衛生上の問題および環境問題と関連している。

目的
標準定量的試験法(EPA MO-21-03)を用いて塩化ナトリウム由来電気化学的活性化溶液(0.18%[w/v]次亜塩素酸ナトリウム、pH = 9.6 ~ 10.3)、市販漂白剤(5,000 ppm、2.83%[w/v]次亜塩素酸ナトリウム、pH = 5.6)、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム(1,000 ppm、pH = 6.8)が表面上の C. difficile の芽胞を不活化する効果を比較すること。

結果
multi-locus sequence typing のクレード 1 ~ 5 の代表的な参考株と野外株 10 株を分析した(N = 10)。菌株の系統学的背景にかかわらず、電気化学的活性化溶液(平均値 3.22、95%信頼区間[CI]0.40 ~ 5.56)は漂白剤(平均値 2.74、95%CI 0.12 ~ 5.50)およびジクロロイソシアヌル酸ナトリウム(平均値 2.02、95%CI 0.10 ~ 5.12)と比較して同等またはより良い対数減少値を示した。サイクリックボルタンメトリー測定によって電気化学的活性化溶液と次亜塩素酸ナトリウムの電気化学的挙動と開回路電位が類似していることが明らかになった。これと一致して、透過型電子顕微鏡によりこれら 2 つの化合物で処理された芽胞の形態の類似が観察された。要因計画によって活性化時間ではなく曝露時間が電気化学的活性化溶液の有効性に影響することが明らかになった。

結論
電気化学的活性化溶液と次亜塩素酸ナトリウムは機能的同等性を有しており、共通の作用機序を持つ可能性があることがわかった。

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監訳者コメント
塩化ナトリウム由来電気化学的活性化溶液が、クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)に対して、次亜塩素酸ナトリウムと共通の作用機序を持つことを調べた論文である。実際の現場への応用に際しては、複数の試験法により、有用性、再現性が検討されることが必要と考えられる。

オランダでの慢性創傷における溶血性アルカノバクテリア(Arcanobacterium haemolyticum)のアウトブレイク

Outbreak of Arcanobacterium haemolyticum in chronic wounds in The Netherlands

M.J. Bruins*, S.V. de Vries-van Rossum, R. Huiskes-Roerink, J.A. Wallinga, M. Waindrich, K. Creemers, J. Oskam, G.J.H.M. Ruijs, S.B. Debast, G.H.J. Wagenvoort
*Isala, Laboratory of Clinical Microbiology and Infectious Diseases, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 691-697

緒言
加齢と糖尿病や血管障害といった併存疾患は慢性創傷の発生率上昇に関与している。オランダの創傷専門施設に来院する患者の中で、2016 年の初めから慢性創傷培養における溶血性アルカノバクテリア(Arcanobacterium haemolyticum)の著しい増加が認められた。

目的
慢性創傷から培養された A. haemolyticum のアウトブレイクの調査を報告し、実行された感染予防策について述べること。

方法
合計で 50 の A. haemolyticum の分離株が分子タイピングのために標準検査施設へ送られた。医療従事者、環境および創傷治療に使用された物品から細菌培養と A. haemolyticum の PCR のためのサンプルを採取した。感染予防策は、教育、より良い無菌的な創傷治療の条件、衛生的な予防策を含むバンドルアプローチの中で実行された。在宅治療を受けるすべての患者において、感染予防策の実行前後に A. haemolyticum の検査の 2 回のスクリーニングラウンドを実施した。

結果
コアゲノム multi-locus sequence typing により、創傷治療を受けた患者由来の A. haemolyticum の分離株は同一であることが確認された。培養によって明確なアウトブレイクの原因を特定することはできなかった。しかし、2 名の看護師が複数の患者で使用した 3 つの鉗子は PCR により A. haemolyticum 陽性であることが確認された。感染予防策の実行前後の 2 回のスクリーニングラウンドにおいて、A. haemolyticum 陽性の患者の割合は 20%(99 例中 20 例)から 3%(104 例中 3 例)へ有意に減少した。その後、新たな症例は発生しなかった。

結論
この A. haemolyticum の最初のアウトブレイクは、汚染された器具の再利用によって引き起こされた。改善された感染予防策の実行と関与するすべての従事者の再教育によってアウトブレイクは制御された。現在のケア移行のトレンドに伴い、感染制御は主要な関心事の 1 つであるに違いない。

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監訳者コメント
溶血性アルカノバクテリアによるアウトブレイクは、汚染された器具の再使用が原因だった、という顛末である。病院では起きにくいことと思われるが、決めつけずに丁寧に調べることが大切だと思われた。

外科・内科患者における静脈内および尿路カテーテルの不適切な使用の発生率とリスク因子

Prevalence and risk factors of inappropriate use of intravenous and urinary catheters in surgical and medical patients

B.J. Laan*, M.C. Vos, J.M. Maaskant, M.I. van Berge Henegouwen, S.E. Geerlings
*University of Amsterdam, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 698-704

背景
我々は以前に医療関連感染を防ぐ目的で、内科病棟において静脈内および尿路カテーテルの不適切な使用を減らすために RICAT(Reduction of Inappropriate use of intravenous and urinary CATheters)スタディを実施した。

目的
外科病棟と内科病棟を比較すること、ならびにカテーテルの不適切な使用のリスク因子を特定すること。

方法
2017 年 10 月から 2018 年 5 月に、オランダの大学病院 2 施設の外科病棟において横断研究を実施した。患者を 7 か月間隔週で前向きに観察した。不適切な使用は RICAT スタディの外科以外の病棟と比較した。

結果
合計で 409 例の外科患者が含まれ、1,781 例の内科患者と比較された。373 例の外科患者の 425 本の末梢静脈カテーテルのうち不適切な使用は 36 本(8.5%)で発生し、1,665 例の内科患者では 1,747 本の末梢静脈カテーテルのうち 400本(22.9%)であることと比較すると、差は 14.4%(95%信頼区間[CI]11.1 ~ 17.8、P < 0.001)であった。134 例の外科患者のうち尿路カテーテルの不適切な使用は 14 例(10.4%)で発生し、324 例の内科患者のうち 105例(32.4%)であることと比較すると、差は 22.0%(95%CI 14.7 ~ 29.2、P < 0.001)であった。大学病院 2 施設のサブグループ解析によりこれらの差が裏付けられた。末梢静脈カテーテルの不適切な使用の主なリスク因子は内科病棟への入院(オッズ比[OR]3.50、95%CI 2.15 ~ 5.69)であり、これは尿路カテーテルでの主なリスク因子の 1 つでもあった(OR 2.75、95%CI 1.36 ~ 5.55)。

結論
カテーテルの不適切な使用は外科病棟と比較して内科病棟でより発生しやすい。医療関連感染を減少させるための予防戦略は、不適切な使用の発生率が高い場所に第一に重点を置くべきである。

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監訳者コメント
カテーテルの不適切な使用が感染のリスクになることは疑う余地がないと思われる。原因分析とそれに基づいた対策、その評価についての続報が気になるところである。

医療従事者における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症のリスク因子の迅速な特定のための質改善ツール

Quality improvement tool for rapid identification of risk factors for SARS-CoV-2 infection among healthcare workers

M. Marmor*, C. DiMaggio, G. Friedman-Jimenez, Y. Shao
*NYU Grossman School of Medicine, USA

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 710-716

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの急速な拡大、個人防護具が入手困難であること、ならびに新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の伝播様式の不確実性が医療従事者の安全への懸念を増大させた。地域社会のリスクとの関連における COVID-19 の職業的リスクに関する系統的研究は困難であり、最近報告され始めたばかりである。様々な場所と影響を受けた多くの医療施設内での質改善の研究の進行が必要である。我々は小規模の質改善調査のテンプレートデザインを提案する。このような調査は迅速に実行し完了できる可能性があり、費用効率が高く、管理上または労働力の負担がほとんどかからない。また、地域社会のリスクを考慮に入れながらも職業的リスクを明らかにすることができ、調査を反復する間に短期の休止期間をとって容易に繰り返すことができる。本稿ではデザインと評価ツールを改良する共同の取り組みの開始を期待して、テンプレートデザインについて述べ、様々な医療施設の個別のニーズに合わせて容易に変更可能な調査の評価ツールを提案する。これらの方法はデータ管理および解析手法とともに、広く役立ち世界的に共有できる可能性がある。著者らの目標は、COVID-19 のパンデミック中の医療従事者の職業上の感染リスクを低下させることを目指した質改善調査を促進することである。

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監訳者コメントコメント無し

全ゲノムシークエンシングにより検出された optrA がコードする接合性プラスミドを保有するリネゾリド耐性およびバンコマイシン耐性 ST80 エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)による病院アウトブレイク

Hospital outbreak of linezolid-resistant and vancomycin-resistant ST80 Enterococcus faecium harbouring an optrA-encoding conjugative plasmid investigated by whole-genome sequencing

S.A. Egan*, S. Corcoran, H. McDermott, M. Fitzpatrick, A. Hoyne, O. McCormack, A. Cullen, G.I. Brennan, B. O’Connell, D.C. Coleman
*University of Dublin, Trinity College, Ireland

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 726-735

背景
リネゾリドは、多剤耐性グラム陽性細菌による感染症の治療に用いられる抗菌薬である。腸球菌におけるリネゾリド耐性の報告が増加しており、最近では optrApoxtA、または cfr によりコードされた耐性が増加している。

目的
リネゾリドおよびバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)による病院アウトブレイクについて、全ゲノムシークエンシングを用いて検討すること。

方法
2019 年 10 月に患者スクリーニング(分離株19 株、患者 17 例)および環境箇所(分離株 20 株)で回収されたバンコマイシン耐性 E. faecium 39 株について検討した。分離株について、PCR を用いて optrApoxtA および cfr のスクリーニングを行い、MiSeq 全ゲノムシークエンシング(Illumina)を実施した。分離株の関連性について、E. faecium コアゲノム複数部位塩基配列タイピング(cgMLST)を用いて評価した。リネゾリドおよびバンコマイシン耐性 E. faecium 1 株に対して、MinION ロングリード全ゲノムシークエンシング(Oxford Nanopore Technologies)と MiSeq ショートリードシークエンシングとのハイブリッドアセンブリを実施して optrA がコードするプラスミドの解明を試みた。

結果
分離株 20 株(51.3%)がリネゾリドおよびバンコマイシン耐性 E. faeciumoptrA 陽性であり、これには指標患者に由来するリネゾリドおよびバンコマイシン耐性 E. faecium が含まれた。密接に関連するシークエンス型(ST)80 の分離株 28 株のクラスターが cgMLST により同定され、これにはリネゾリドおよびバンコマイシン耐性 E. faecium 全 20 株、ならびにリネゾリド感受性のバンコマイシン耐性 E. faecium 8 株が含まれ、アレルの相違は平均で 2(範囲 0 ~ 10)であり、このことからアウトブレイクであることが示唆された。リネゾリドおよびバンコマイシン耐性 E. faecium 19 株(95%)が 56,684 bp の接合性プラスミド(pEfmO_03)を保有していた。残りのリネゾリドおよびバンコマイシン耐性 E. faecium では、pEfmO_03 に対する配列包括度 44.1%が示された。リネゾリドおよびバンコマイシン耐性 E. faecium における pEfmO_03 の存在と、アウトブレイクのクラスター分離株の密接な関連性から、単一株が拡散していることが示唆された。このアウトブレイクは、感染予防・制御および環境清掃策の強化、病棟への入院停止、ならびに病棟専門スタッフの配置によって終息した。

結論
全ゲノムシークエンシングは、ST80 リネゾリドおよびバンコマイシン耐性 E. faecium によるアウトブレイクの検討において、中心的な役割を果たした。感染予防・制御策の強化を速やかに実施したことで、このアウトブレイクは終息した。

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監訳者コメント
アイルランドからの報告であるが、プラスミドにリネゾリド耐性遺伝子が乗った E. faecium のアウトブレイクとのことである。恐ろしい話だ…ちなみにどのように治療されたのかについては記載がなかった。VRE アウトブレイクの対応の部分は参考になるかもしれない。

アシネトバクター属からのリアルタイム PCR による OXA-23 様、OXA-24 様、および OXA-58 様カルバペネマーゼの迅速検出

Rapid detection of OXA-23-like, OXA-24-like, and OXA- 58-like carbapenemases from Acinetobacter species by real-time PCR

M. Mentasti*, K. Prime, K. Sands, S. Khan, M. Wootton
*University Hospital of Wales, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 741-746

背景
カルバペネマーゼ産生アシネトバクター属、特にアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)は、治療失敗および病院アウトブレイクと関連することが多い。したがって、特異的な耐性マーカーの迅速かつ信頼できる検出が最優先である。A. baumannii で検出されるカルバペネマーゼで最も頻度が高いものは、すなわちオキサシリナーゼ群(クラス D のβラクタマーゼ)に属する OXA-23 様、OXA-24 様、および OXA-58 様であり、特異的な阻害物質がないために表現型を同定することが難しいことがよく知られている。

目的
上記 3 つのオキサシリナーゼを検出・識別するためのマルチプレックスリアルタイム PCR アッセイをデザインし、妥当性の検証を行うこと。

方法
オキサシリナーゼの上記 3 つのサブファミリーに関する利用可能なすべてのバリアントを、Beta-Lactamase DataBase(http://bldb.eu/)からダウンロードして(2019 年 11 月)、Clustal Omegaを用いて配列のアラインメントを行い、Primer-BLAST を用いてオリゴヌクレオチドをデザインした。阻害を考慮するために内的対照を組み込んだマルチプレックスリアルタイム PCR アッセイを、Rotor-Gene Multiplex PCR Kit(Qiagen)を用いて Rotor-Gene Q(Qiagen)上で最適化し、幅広いβラクタマーゼ(多くの場合複数)を保有するとしてこれまでに特性づけられた 122 株のパネルを用いて妥当性の検証を行った。

結果
In silico アプローチにより、アラインメントされた OXA-24 様および OXA-58 様配列の保存領域においてオリゴヌクレオチドをデザインすることができた。記述された 42 の OXA-23 様バリアントのうち、OXA-27、OXA-166、OXA-811、OXA-812、および OXA-816 のオリゴヌクレオチド結合領域のいずれかに一塩基多型が存在していた。本アッセイの感度は 100%であり、特異度が高かった。阻害は認められなかった。

結論
本アッセイは、実施が容易で、約 70 分で結果が得られる。これにより、OXA-23 様、OXA-24 様、および OXA-58 様カルバペネマーゼを、2 つ以上が同時に存在していても、確実に検出および識別できる。

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監訳者コメント
アシネトバクター属菌の OXA 型カルバペネマーゼをリアルタイム PCR によって検出する方法に関する論文である。

化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenesemm75 による産後感染症のアウトブレイクの管理

Management of an outbreak of postpartum Streptococcus pyogenes emm75 infections

K. Trell*, J. Jörgense, M. Rasmuss , E. Senneby
*Lund University, Sweden

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 752-756

背景
化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)は、良く知られた産後感染症の原因であり、かなりの病的状態および死亡の原因となっている。

目的
産科病棟において S. pyogenes emm75 が原因となった産後感染症のアウトブレイクを制御するために実施された方策について記述すること。

方法
産後に感染症の徴候および症状を呈した患者を対象に、子宮頸部スワブおよび血液培養によってβ溶血性レンサ球菌の培養を行い、細菌分離株についてマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)により細菌種を同定し、emm 型を決定した。産科病棟の医療従事者から咽頭スワブを採取した。細菌分離株に対して全ゲノムシークエンシングを実施した。複数部位塩基配列タイピングおよび一塩基多型(SNP)数を明らかにし、指標ゲノムと比較した。

結果
3 か月のアウトブレイク期間中に、産科病棟で S. pyogenes emm75 による産後感染症 6 症例が同定された。分娩日と業務ローテーションを比較したところ、医療従事者 1 名が、5 症例の感染源である可能性が判明した。この医療従事者に対して咽頭スワブを再実施したところ、S. pyogenes emm75 が分離された。患者から分離された 5 株は、この医療従事者の分離株と疫学的に関連しており、その家族の分離株 2 株は同じ配列型(ST49)であり、医療従事者自身の分離株との SNP 数の差は 0 ~ 2 であったのに対し、6 番目の患者の分離株には関連は認められなかった。保菌者に対し、クリンダマイシンとリファンピシンによる根絶抗菌薬療法が実施された。全患者が静注抗菌薬療法を受け、回復した。

結論
3 か月にわたるアウトブレイクは、保菌者を同定して治療することで終息した。感染源の同定と全ゲノムシークエンシングが、アウトブレイク制御にとって重要であることが示された。

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監訳者コメント
A 群溶連菌(S. pyogenes)はあまり知られていないが家庭内感染や病院内アウトブレイクの原因となることがある。本研究は 6 例の同一 S. pyogenes による産後患者のアウトブレイクに関する報告である。

カルバペネム非感受性腸内細菌目細菌検出率において、病院の抗菌薬使用が及ぼす耐性機序別にみた影響:時系列分析

The influence of hospital antimicrobial use on carbapenem-non-susceptible Enterobacterales incidence rates according to their mechanism of resistance: a time-series analysis

E. Ortiz-Brizuela*, Y. Caro-Vega, M. Bobadilla-del-Valle, F. Leal-Vega, E. Criollo-Mora, B.A. López Luis, V. Esteban-Kenel, E. Torres-Veintimilla, A. Galindo-Fraga, A. Olivas-Martínez, E. Tovar-Calderón, P. Torres- González, J. Sifuentes-Osornio, A. Ponce-de-León
*Instituto Nacional de Ciencias Médicas y Nutrición Salvador Zubirán, Mexico

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 757-765

背景
カルバペネム非感受性腸内細菌目細菌(CNSE)は、大きく分けてカルバペネマーゼを産生するもの(カルバペネム産生腸内細菌目細菌[CPE])と、それ以外の耐性機序を有するもの(非カルバペネム産生 CNSE[NCP-CNSE])に分類できる。

目的
耐性機序別に見た CNSE の院内検出率の予測因子を明らかにすること。

方法
時系列分析(2013 年 7 月から 2018 年12 月)を行って、病院での抗菌薬使用および手指衛生遵守率と、CNSE 検出率との時間的関連を評価した。

結果
合計で、重複のない腸内細菌目細菌分離株 20,641 株が同定され、2.2%は CNSE であった。これらのうち、48.1% が CPE、51.9% が NCP-CNSE であった。CPE のうち、78.3%は遺伝子 blaOXA-232 を保有していた。伝達機能モデルが、CNSE、CPE、および OXA-232 CPE において同定され、これらによってそれぞれ変異の 20.8%、19.3%、および 24.2%が説明された。CNSE モデルおよび CPE モデルによれば、タゾバクタム・ピペラシリン使用の 100 患者日 あたり1 日規定用量 1 単位の増加ごとに、10,000 患者日あたり CNSE 症例 0.69 および CPE 症例 0.49 の増加に至るとされた。OXA-232 CPE モデルでは、タゾバクタム・ピペラシリン使用の 100 患者日 あたり1 日規定用量1 単位の増加ごとに、OXA-232 CPE 症例の10,000 患者日あたり 0.43 の増加に至ると推定された。伝達機能モデルは NCP-CNSE では同定されず、手指衛生遵守率と CNSE 検出率との間にも関連はなかった。

結論
タゾバクタム・ピペラシリンの使用は、CPE 院内検出率と時間的に関連し、その関連のほとんどは OXA-232 CPE に対する影響によって説明される。

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監訳者コメント
カルバペネム系薬の使用がカルバペネム耐性腸内細菌目細菌の増加につながることはしばしば示されているが、本研究ではカルバペネム系薬と同様のスペクトラムを持つタゾバクタム・ピペラシリンの使用でもカルバペネム耐性腸内細菌目細菌、中でもカルバパネマーゼを産生する腸内細菌目細菌が増加することを示している。

最適な給水システム管理による院内レジオネラ症の予防:3 種類の汚染除去方法の比較

Prevention of nosocomial legionellosis by best water management: comparison of three decontamination methods

A. Muzzi*, S. Cutti, E. Bonadeo, L. Lodola, V. Monzillo, M. Corbella, L. Scudeller, V. Novelli, C. Marena
*Fondazione IRCCS Policlinico San Matteo, Italy

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 766-772

背景
2000 年以降、国民保健サービスでは、病院の給水システムにおけるレジオネラ属菌評価の国際ガイドラインを採用している。レジオネラ属菌による水汚染の管理は、依然として院内感染症予防の最適な方法に関する研究対象である。

目的
コロニー形成単位(cfu)数および病院獲得レジオネラ症の症例数のモニタリングにより、3 種類の汚染除去方法を比較すること。副次的目的は、配水パイプに対する予防策の長期効果を評価することとした。

方法
サンプリング対象となる高リスク箇所の選択、ならびに 19 年間にわたり以下の 3 種類の消毒法について評価を行うためのプロトコールを作成した:超塩素処理(hyperchlorination)および熱衝撃(期間A、2000 年から 2005 年)、銅-銀イオン化(期間B、2006 年から 2010 年)、ならびにプレフィルタリングとフィルタリングの統合、パイプ保護製品、および二酸化塩素(ClO2)を用いた遠隔制御(期間C、2011 年から 2018 年)。

結果
衝撃消毒および超塩素処理の使用により、実施後速やかに汚染レベルの低下が得られたが、2 か月後には元のレベルに上昇した。銅-銀イオン化および ClO2 消毒では両方とも、汚染レベルの安定的かつ持続的な低下が示された。上記の 3 つの期間を通じて、レジオネラ属菌による症例 6 例が期間 A に、6 例が期間 B に、そして 3 例 が期間 C に発生した。配水管のダメージに関しては、効果的な銅-銀レベルは腐食および石灰化を引き起こした。

結論
銅-銀イオン化および ClO2 はいずれも、レジオネラ属菌による汚染を適切に制御した。ClO2 は陽性箇所の数を有意に減少させ(P<0.001)、配水管にダメージを与えなかった。

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監訳者コメント
水中のレジオネラ菌属の制御を目標とした消毒方法に関する論文である。なかでも二酸化塩素処理が有用であったと報告している。

確立された感染予防・制御策は、病室から病院環境への SARS-CoV-2 拡散を防げるか?

Do established infection prevention and control measures prevent spread of SARS-CoV-2 to the hospital environment beyond the patient room?

J. Jerry*, E. O’Regan, L. O’Sullivan, M. Lynch, D. Brady
*Mater Misericordiae University Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 589-592

感染症伝播における病院環境の役割は十分に報告されている。伝播様式が研究段階にある新興感染症において、拡散を防ぐために、患者隔離、手指衛生、病室退出時に外す個人防護具、環境清掃など厳重な感染予防・制御策を実施すべきである。環境検査では、COVID-19 患者により患者領域が汚染されていたが(26 カ所中 11 カ所、検査の 42.3%)、一般病棟の領域の汚染はわずかであり(30 カ所中 1 カ所、3%)、清掃後にウイルスが検出されたのは、破損が認められた 1 カ所のみであることが確認された(25 カ所中 1 カ所、4%)。

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監訳者コメント
COVID-19 の環境整備によるコントロールに関する論文である。一般的な接触予防策に環境消毒を加えることで、SARS-CoV-2 による環境汚染をコントロールできることが示されている。

迅速フィードバックによる臨床現場(in-situ)シミュレーションを用いた COVID-19 に対する部門の準備強化★★

Enhancing departmental preparedness for COVID-19 using rapid-cycle in-situ simulation

A. Dharamsi*, K. Hayman, S. Yi , R. Chow, C. Yee, E. Gaylord, D. Tawadrous, L.B. Chartier, M. Landes
*University Health Network, Canada

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 604-607

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して、システムに基づく安全性に関する潜在的脅威の特定および解決を容易にするために、迅速フィードバックによる臨床現場シミュレーションプログラムを開発した。シミュレーションには COVID-19 の可能性のある呼吸不全例を含め、燐光を発するエアロゾルが飛散するよう改良したマネキンを用いた。36 名が臨床現場シミュレーションの 5 つのセッションに 6 週間にわたり参加し、さらに 20 名がこれらのセッションを観察した。参加報告により、4 領域(職員、個人防護具、供給/環境、情報伝達)の潜在的な安全性脅威が特定された。これらの脅威は、その後の反復処理において対処され、解決された。臨床現場シミュレーション後、参加者の 94%が、COVID-19 の可能性例をケアする準備がより整ったと感じていた。

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監訳者コメント
臨床現場における実地訓練をおこない、迅速に修正を加えながら現場で働く医療従事者を教育することは、新型コロナウイルス感染症のように、医療従事者の安全を確保するために、一刻も早く適切な対応が求められる場合には極めて有効である。いわゆる PDCA サイクルは半年から 1 年のサイクルで実施されるが、これでは間に合わない。現場の医療従事者とともに実地訓練をしながら、現場で修正を加えることにより、早期に安全な感染予防策が実施可能となる。

SARS-CoV-2 検出における高速だが、処理能力が低い定量的逆転写 PCR(RT-qPCR)システムの評価

Evaluation of a high-speed but low-throughput RT-qPCR system for detection of SARS-CoV-2


J. Sakai*, N. Tarumoto, Y. Orihara, R. Kawamura, M. Kodana, N. Matsuzaki, R. Matsumura, K. Ogane, T. Kawamura, S. Takeuchi, K. Imai, T. Murakami, S. Maesaki, T. Maeda
*Saitama Medical University, Japan

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 615-618

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こす重症急性呼吸器症候群コロナウイルス‐2(SARS-CoV-2)の出現に伴い、高速かつ簡便な検出技術を世界中の医療最前線に置くべきである。本研究では、SARS-CoV-2 の検出における GeneSoC(小型で、高速往復流動型の定量的逆転写 PCR[RT-qPCR]システム)の有用性を評価した。その結果は、SARS-CoV-2 を迅速に同定するうえで、このシステムの使用を支持するものであった。このアプローチは、COVID-19 患者の初回治療戦略における重要な選択に寄与しうる。

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監訳者コメント
本論文は、日本で開発された迅速 PCR の機器である。多検体処理はできないものの、わずか 15 分で従来の PCR と同程度の感度特異性をもつため、救急外来や緊急入院などでの対応に役立つ POCT 機器として有用と考えられる。しかしながら、RNA を抽出する操作が必要であるため、抽出処理の時間が律速段階となる点が今後解決すべき部分である。すでに 30 分程度でできる簡易 RNA 抽出キットもあり、それらと組み合わせれば迅速な検査できる可能性もあり、今後さらなる検討が必要である。

リハビリテーションプールと治療のための水環境における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)伝播の予防

Preventing SARS-CoV-2 transmission in rehabilitation pools and therapeutic water environments

S. Romano-Bertrand*, L-S. Aho Glele, B. Grandbastien, D. Lepelletier, on behalf of the French Society for Hospital Hygiene
*Montpellier University, France

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 625-627

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は主に呼吸の飛沫および汚染された表面との接触によって伝播される。SARS-CoV-2 は糞便から回収されることがあるが、レクリエーション水域における主要な汚染経路である糞便-経口伝播のエビデンスは認められていない。清掃と消毒の標準的な手順、微生物制御および衛生上のルールは、微生物にかかわらず感染リスクを予防することを目指している。我々はロックダウンの段階的な終了と病院活動の回復という観点から、患者に必須のリハビリテーション・ケアを確保しながら SARS-CoV-2 の伝播を制御する具体的な勧告を出すために、リハビリテーションプールと治療のための水環境における SARS-CoV-2 の伝播リスクを評価した。

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監訳者コメント
SARS-CoV-2 は、エンベロープをもつ RNA ウイルスであり、基本的に水の中での長期生存は難しく、塩素系消毒剤に弱いため、リハビリテーション・プールの維持管理ができておれば、本ウイルスによる感染の危険性は極めて低い。したがって、感染がおこるとすれば、不適切な水質管理と利用者の分泌物や排泄物によるプール水の汚染と考えられる。新型コロナウイルス感染症の感染予防対策として、3 つのカテゴリに分類している。①技術的な水質管理(消毒、水質モニタリング[化学物質や細菌など]と環境管理[器材の消毒])、②患者の利用規則と健康管理(脱いだ服を決められたロッカーに保管、リハビリの前後でシャワー浴、マスク着用や手指衛生など)、③スタッフの感染対策(プール外で勤務するスタッフのマスク着用、フィジカル・ディスタンスの維持、手指衛生など)である。ここで最も重要なことは、まず呼吸器症状や嘔吐・下痢の症状の患者にプールを利用させないことであろう。

オクテニジンの鼻腔内投与と患者全例に対するクロルヘキシジン浴はシンガポールの長期ケア施設においてメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)の獲得を減少させられる

Intranasal octenidine and universal chlorhexidine bathing can reduce meticillin-resistant Staphylococcus aureus acquisition in an extended care facility in Singapore

A. Chow*, J. Wong, W. Zhang, B.-F. Poh, B. Ang
*Tan Tock Seng Hospital, Singapore

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 628-631


メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)は長期ケア施設で蔓延している。我々は 2013 年 1 月から 2019 年 6 月に 100 床のリハビリテーション病院 1 施設において準実験的前後比較研究を実施した。この期間を通じて患者全例に対するクロルヘキシジン浴が実行され、2017 年 9 月からは MRSA 保菌者に対するオクテニジンの鼻腔内投与が追加された。分割時系列分節回帰分析によって、入院時の MRSA の保菌と手指衛生遵守の調整後、MRSA 獲得に関してオクテニジンの鼻腔内投与の実行前に一定のトレンドが観察され(調整係数の平均 0.012、95%信頼区間[CI]-0.037 ~ 0.06)、実行時に即時の減少が見られ(-2.145、95%CI -0.248 ~ -0.002、P = 0.033)、続いて実行後に有意な減少が見られた(-0.125、95%CI -0.248 ~ -0.002、P = 0.047)ということが明らかになった。

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監訳者コメント
MRSA 保菌は、長期リハを実施するリハビリテーション病院においては重要な問題であり、鼻腔や皮膚の保菌は感染源となるため、除菌することが効果的とされている。鼻腔は MRSA の重要なリザーバーであるため、ムピロシンによる鼻腔除菌とクロルヘキシジン浴の併用が MRSA 除菌には有効であることが認識されているが、ムピロシン耐性が問題化している。オクテニジンによる鼻腔の除菌効果についての研究は不十分であり、本論文ではオクテニジン鼻腔塗布とクロルヘキシジン浴の併用によるMRSA 除菌効果を院内でのMRSA 獲得率で検討し、その効果を確認している。

購入データ:安全状況の代わりとなるもの

Purchase data: a proxy for safety status

A. Wong*, H. Nguyen, R. Eley, M. Sinnott
*Princess Alexandra Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 657-658

本研究では、オーストラリアの主要な 3 次紹介病院 1 施設における鋭利物損傷の発生率を明らかにするための購入データの利用について示した。購入された物品 100,000 個あたりの損傷の発生率は注射針で 2.65、外科用メスの刃で 12.60 であった。これらの数値は以前に本手法を用いて報告された数値よりも低かった。縫合針による損傷の発生率はこれまで報告されていなかったが、購入された物品 100,000 個あたり 31.89 であった。このような方法で算出された発生率のデータは、施設職員の安全対策に関する方針と実践を知らせるために、購入費の見積もりとともに利用できる可能性がある。

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監訳者コメント
鋭利器材による損傷は、医療従事者にとって職務上最も感染リスクの高いものであり、予防のための安全確保は必須である。これまで鋭利物による損傷は発生率により評価され、機器の使用数や手技頻度を分母にして算定されていた。分母を器材購入数や中央材料部への依頼数にしている文献もあり、本論文では鋭利器材の購入数を利用して鋭利物による損傷の割合を算出することで、新機材を購入した場合の機器購入の費用とその効果についても評価することができ、有用であるとしている。

手洗い用石けんがカルバペネマーゼ産生および非産生腸内細菌目細菌の個体群動態に与える影響の評価

Assessing the impact of handwashing soaps on the population dynamics of carbapenemase-producing and non-carbapenemase-producing Enterobacterales

M.A. Boyle*, A.D. Kearney, B. Sawant, H. Humphreys
*Royal College of Surgeons in Ireland, Ireland

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 678-681

カルバペネマーゼ産生菌は手洗いシンクに残留し、耐性菌の環境リザーバーとなっている。本研究では手洗い用石けんがカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)および非産生腸内細菌目細菌の個体群動態に与える影響を評価した。多くの分離菌は医療用に市販されている 2 つの手洗い用石けんの有無にかかわらず最少培地で増殖した。石けん A は大腸菌(Escherichia coli)を除くすべての分離菌を増殖させた。石けん B は増殖を引き起こさなかった。処方間の主な違いは、石けん B が防腐剤および増感剤である DMDM ヒダントインを含有していることであった。これらの結果は、CPE が石けんを用いた一般的な手洗いによって環境内で残存し、維持されている可能性があることを示しているが、さらなる研究が必要である。

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監訳者コメント
腸内細菌目細菌には、大腸菌、赤痢菌、サルモネラ属、セラチア属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、シトロバクター属などが入り、なかでもカルバペネマーゼを産生する耐性菌(CPE)としては、大腸菌、エンテロバクター属、クレブシエラ属が主である。これらの耐性菌の環境での生存は、医療従事者の手指あるいは医療器材を介した院内感染の原因となる。過去の報告では蛋白含有量の多い石けんでは肺炎桿菌は、手洗いシンクのドレインパイプで増殖し、バイオフィルムを形成する。本論文では実験結果から、DMDM ヒダントインが CPE のシンクでの残存を妨げている可能性を考察しているが、本剤は手荒れの原因ともなるため、慎重な対応が必要となる。手洗い用石けんの含有成分により CPE の手洗いシンクおよび排水ドレインでの耐性菌の生存に影響する可能性があり、今後手洗い製剤の選択にも注意が必要であることを示唆している。

香港、日本、シンガポールにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の伝播クラスターからのスーパースプレッディングの推測

Inferring super-spreading from transmission clusters of COVID-19 in Hong Kong, Japan, and Singapore

K.O. Kwok*, H.H.H. Chan, Y. Huang, D.S.C. Hui, P.A. Tambyah, W.I. Wei, P.Y.K. Chau, S.Y.S. Wong, J.W.T. Tang
*The Chinese University of Hong Kong, Hong Kong Special Administrative Region of China

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 682-685

アウトブレイクにおけるスーパースプレッディングイベント(SSE)は流行の性質を変えることがある。したがって公衆衛生チームが進行中のアウトブレイクにそのようなイベントが関与しているかどうか判定することは有益であり、介入を行いやすい可能性がある。我々は香港、日本、シンガポールにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症例に疫学的に関連するクラスターの経験的データから基本再生産数(R0)、分散係数(k)を推定した。これによりこれらのアウトブレイクの初期段階でSSEの有無を推測することができた。k 値が比較的大きいと、SSE と互換性のある大きなクラスターサイズの可能性は低いことが示唆された。

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監訳者コメント
2020 年 3 月 3 日時点での香港、日本、シンガポールでの COVID-19 のクラスターからのスーパースプレッドイベント(SSE)の推測。日本では SSE が起こりやすい環境として「三つの密」が有名になった。3 国とも流行初期には基本再生産数(R0)も低く、COVID-19 の流行が制御されているのがわかる。分散係数(k)はデータの分布の広がりを表す指標のことである。

血液腫瘍患者におけるカテーテル関連血流感染症のサーベイランス:2 つの定義の比較

Surveillance of catheter-related bloodstream infections in haemato-oncology patients: comparison of two definitions

C.E.M. de Mooij*, W.J.F.M. van der Velden, P.E. Verweij, A.F.J. de Haan, L.F.J. van Groningen, C. Meijer, J. Hopman, N.M.A. Blijlevens
*Radboud University Medical Center, the Netherlands

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 686-690

オランダでは、PREZIES サーベイランスが中心静脈カテーテル(CVC)関連血流感染症(CRBSI)の登録およびサーベイラインに用いられている。我々は、このオランダの定義が、国際的に用いられている CRBSI、中心ライン関連血流感染症(CLABSI)、および粘膜バリア障害が検査で確認された血流感染症(MBI-LCBI)の定義と、いかに相関しているかを検討した。我々は、オランダの PREZIES による CRBSI の定義は、マルチルーメン CVC で管理を受けている血液腫瘍患者における CVC ケアバンドル のサーベイランスコントロールにとって適切であると結論付けた。

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監訳者コメント
マルチルーメン CVC で管理を受けている血液腫瘍患者では、オランダの PREZIES による CRBSI の定義は国際的に使用されているIDSA- CRBSIの定義と相関しており、筆者らはオランダのデータを使用して国際的なデータでベンチマークできると述べている。

手指衛生の実施が現在どのようにモニタリングおよび評価を受けているかに対する医療従事者の態度

Healthcare workers’ attitudes to how hand hygiene performance is currently monitored and assessed

K-R. Cawthorne*, R.P.D. Cooke
*Swansea University, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 705-709

手指衛生の遵守率を高く維持する上で、医療従事者の関与は重要である。しかし、手指衛生遵守のモニタリング方法に関する医療従事者の態度については、報告が少ない。本研究では、直接観察を手指衛生モニタリングにおけるゴールドスタンダードと見なす医療従事者の視点について調査した。さらに、新規モニタリング技術に対する医療従事者の意見について調査した。英国国民保健サービス(NHS)のトラスト 2 施設の全スタッフに電子メールで調査票を送付し、1,120 件の回答を分析した。回答の多くは看護スタッフおよび医師が占めており、医療従事者の 58%は直接観察による手指衛生遵守の評価を強くは推奨していなかった。スタッフは、代替的な新規技術の検討に対しては肯定的であった。

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監訳者コメント
英国では手指衛生遵守の標準的なモニタリング方法である直接観察法の限界が認識されており、半数以上の医療従事者が直接観察法を強く推奨していない点が興味深い。改めて直接観察法の問題点を認識するのによい論文である。

英国の地域小児病院の小児科における抗菌薬管理プログラム Paediatric antimicrobial stewardship programmes in the UK’s regional children’s hospitals

S. Vergnano*, A. Bamford, S. Bandi, F. Chappel, A. Demirjian, K. Doerholt, M. Emonts, L. Ferreras-Antolin, A. Goenka, L. Jones, J.A. Herberg, L. Hinds, O. McGarrity, P. Moriarty, S. O’Riordan, M. Patel, S. Paulus, D. Porter, K. Stock, S. Patel
*University of Bristol, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 736-740

小児集中治療および小児感染症部門を有する英国の地域小児病院において、小児科抗菌薬管理プログラムの特徴を記述するために調査を行った。構造化されたアンケートを小児科抗菌薬管理プログラムのコーディネーターに送付した。「監査およびフィードバック」を17 施設中 13 施設で実施した。微生物学主導の施設では、抗菌薬の制限を行っている割合が高く(75%、これに対して小児感染症学主導の施設では 33%)、広域抗菌薬に重点を置いている割合が高く、血液培養陽性の患者にレビューを行っている割合が高かった。小児感染症学主導の施設では、電子処方または薬物チャートから患者を同定し、すべての抗菌薬についてレビューを行っている割合が高かった。現在のところ、小児科抗菌薬管理プログラムが確立されている。

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監訳者コメント
英国での小児科抗菌薬管理プログラムの報告。微生物学主導の施設と小児感染症学主導の施設でプログラムの考え方にかくも違いがあることは興味深い。日本で小児病院だけでなく、総合病院で微生物学主導と臨床感染症学主導で同様の調査をしても面白いかもしれない。

2018 年ロンドン南部における麻疹の持続的伝播と同時期に発生した麻疹の院内アウトブレイクのマッピング

Mapping a nosocomial outbreak of measles, coinciding with a period of sustained transmission in South London in 2018

J.P. Vink*, L.B. Snell, K. Bernard, H. Mitchell, R.T. Heathcock, R. Cordery, W. Newsholme
*Guy’s and St Thomas’ NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 747-751

ロンドンにおける麻疹のアウトブレイクについて記述する。これには、2 か国にわたる病院2 施設および 1 地域社会における症例 34 例が含まれた。指標患者が院内で発生した後、ワクチン未接種の売店従業員から医療スタッフへの伝播を介して拡散が広がり、このことは、臨床現場にいない病院スタッフにまで職業衛生方針を広めることの重要性を強調している。十分なワクチン接種を受けていない地域内の旅行者集団へのさらなる拡散は、集団免疫が得られていなければ麻疹は拡散するということを再び思い起こさせる。その後、現地における麻疹の伝播が英国において再確立された。

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監訳者コメント
病院の売店従業員を介して拡がった麻疹のアウトブレイクの英国での報告。日本環境感染学会の医療関係者のガイドラインにおいても麻疹ワクチンの対象者は「業務として病院に出入りする者」が含まれているが、実際には売店や食堂などの従業員まで対象としている施設は多くないと推察される。施設内の不特定多数との接触はあるが盲点となりやすい職種であり、注意が必要である。

イタリア南部ナポリの感染症専門病院における医療従事者間の COVID-19:横断的調査研究の結果

COVID-19 among healthcare workers in a specialist infectious diseases setting in Naples, Southern Italy: results of a cross-sectional surveillance study

F.M. Fusco*, M. Pisaturo, V. Iodice, R. Bellopede, O. Tambaro, G. Parrella, G. Di Flumeri, R. Viglietti, R. Pisapia, M.A. Carleo, M. Boccardi, L. Atripaldi, B. Chignoli, N. Maturo, C. Rescigno, V. Esposito, R. Dell’Aversano, V. Sangiovanni, R. Punzi
*UOC Infezioni Sistemiche e dell’Immunodepresso, Italy

Journal of Hospital Infection (2020) 105, 596-600

2020 年 3 月 から 4 月にわたり、イタリアのナポリにある感染症専門病院において無症状の医療従事者を対象に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の調査研究を実施した。すべての医療従事者に対して、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)を対象とした遺伝子検査と血清学的検査を、2 回行った。医療従事者 115 名に検査を行い、このうち 2 例の感染症例が RT-PCR により同定され、医療従事者 2 例が 血清SARS-CoV-2 IgG陽性であった。現在の感染症例と、過去の感染疑い症例を合わせた有病率は 3.4%であった。医療従事者における感染率は、比較的低かった。感染していた医療従事者のほとんどは、過去 30 日間は無症状であり、医療従事者に対する COVID-19 スクリーニングの定期的な実施の必要性が裏付けられる。

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監訳者コメント
イタリアの感染症専門病院の無症状の医療従事者を対象とした COVID-19 スクリーニングの報告。医療従事者の感染には市中感染と職業感染があるが、感染症専門病院は感染者が多く訪れるものの,トレーニングした医療従事者が対応しており感染リスクは必ずしも高くなく、実際には市中で感染するリスクが高い。市中感染を考慮すると感染症専門病院であるなしにかかわらず、市中での有病率が高い時には医療従事者に対する COVID-19 スクリーニングの定期的な実施を検討すべきかもしれない。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.