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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

コロナウイルスの影響により一部、監修者のコメントおよびレーティングを未監修のまま掲載しておりますので、ご了承ください。

世界保健機関による手指擦式製剤に関する最初の推奨と変更後の有効性

Efficacies of the original and modified World Health Organization-recommended hand-rub formulations

M. Suchomel*, J. Steinmann, G. Kampf
*Medical University, Austria

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 264-270

世界保健機関(WHO)推奨の擦式製剤は、少なくとも過去 10 年間にわたり世界中で使用されている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生により、その使用がさらに増えている。本稿では、最初の製剤および変更後の製剤について公表されている有効性データをレビューした。欧州規格(EN)に準拠した有効性データのみを確認した。最初の製剤の殺菌効果は、実際の条件下ではやや不十分であった(EN 1500 では 60 秒でのみ有効、EN 12791 では 5 分だと有効性が低すぎる)。アルコール濃度をより高くした 1 回目の変更では、衛生的擦式製剤と同程度に有効性が改善した(30 秒で有効)。2 回目(0.725%グリセロール)および 3 回目(0.5%グリセロール)の変更により、手術時手指消毒剤程度に有効性が改善する(それぞれ 5 分、3 分で有効)。最初および 2 回目の変更後の製剤の試験では、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)を含むエンベロープウイルスに対する活性が 30 秒で示された。エタノール製剤も、一部の非エンベロープ被験ウイルスに対して 60 秒で活性を示した(EN 14476 の浮遊試験)。製剤の in-vivo データより、汚染手指における殺ウイルス効果に関してより信頼できる結果が得られるであろうが、現時点ではデータが得られていない。それでも、直近の変更後の製剤は医療での使用に導入すべきである。

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監訳者コメント
世界保健機関(WHO)推奨の擦式製剤は世界中で使用されているため、その効果効能の評価は大変重要なプロジェクトである。国内における既存の製品群においても様々な成分が混在しているため、性能評価(消毒効果の評価)は製品ごとに実施すべきであろう。

個人防護具サージカルマスクの再利用を目的とした汚染除去による介入:システマティックレビュー

Decontamination interventions for the reuse of surgical mask personal protective equipment: a systematic review

D.J. Zorko*, S. Gertsman, K. OHearn, N. Timmerman, N. Ambu-Ali, T. Dinh, M. Sampson, L. Sikora, J.D. McNally, K. Choong
*McMaster University, Canada

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 283-294

背景
新型コロナウイルスのアウトブレイク期間における個人防護具の需要が増加しており、供給を維持するための介入手段を確立する必要性が生じている。サージカルマスクの再利用を可能にする汚染除去による介入については、ほとんどわかっていない。

目的
再利用を目的としてサージカルマスクの汚染除去による介入を評価した原著論文からのデータを特定し統合すること。

方法
サージカルマスク汚染除去による介入に関する前向き研究の原著論文(開始から 2020 年 4 月 8 日まで)について、MEDLINE、Embase、CENTRAL、Global Health、WHO COVID-19データベース、Google Scholar、DisasterLit、プレプリントサーバ、著明な学術誌を用いて検索した。引用スクリーニングは独立して2 回実施した。2 名の独立した評価者が、対象研究から研究の特性、介入、アウトカムを抽出した。注目するアウトカムとして、汚染除去による介入がサージカルマスクの性能および殺菌効果に及ぼす影響を含めた。

結果
7 件の研究が選択基準を満たした。1 件はマスク使用後に適用した加熱処理および化学的処理による介入がマスク性能に及ぼす影響を評価、6 件はマスク使用前に適用した抗菌効果とマスク性能の両方、またはどちらかを強化する介入を評価するものであった。マスク性能および殺菌効果がさまざまな試験条件で評価された。安全性アウトカムはほとんど評価されなかった。乾熱汚染除去によりマスク性能はきわめて良好に保持された。塩、N - ハラミン、ナノ粒子をコーティングしたマスクの殺菌効果は良好であった。

結論
サージカルマスク汚染除去の安全性または有効性に関するエビデンスは限られている。現時点までの試験に使用された方法がさまざまであることから、サージカルマスクの汚染除去のためにもっとも有効かつ安全な介入に関して結論を導くことはできない。

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監訳者コメント
もともと再利用(再生処理による再使用)を前提として製造していない製品であり、その消毒効果を検定するには試験方法の開発も必要になる。膜表面のウイルス活性だけでなく内面に固着したウイルスの不活化についても検証が必要である。

患者ケアにおける手指衛生遵守に及ぼすホーソン効果

The Hawthorne effect on adherence to hand hygiene in patient care

E. Purssell*, N. Drey, J. Chudleigh, S. Creedon, D.J. Gould
*University of London, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 311-317

ホーソン効果(観察されていると意識することで引き起こされる行動変化)により医療従事者の手指衛生遵守が向上することが、多くの研究で示されているが、方法論的に堅固であるかどうか、影響の程度はどうか、どれくらい継続するか、臨床環境の全域で同じかどうかは明らかではない。本レビューの目的は、手指衛生におけるホーソン効果の評価のために使用される方法の厳密性、効果量推定、臨床環境間でのばらつき、および持続性を明らかにすることである。この目的のために、文献のメタアナリシスによるシステマティックレビューを実施した。9 報の研究が本レビューの基準を満たした。方法論的な質はさまざまであった。ホーソン効果は-6.9%~65.3%まで幅があった。集中治療室で実施された 1 報では 4.2%、移植部門では 16.4%であった。データが院内全体および総合病院グループより収集された場合、ホーソン効果はもっとも顕著であった。同じ病院で病棟間の差が明らかであった。ホーソン効果の期間が推定された 2 報の研究では、効果は一過性のようであった。方法論的な欠点にもかかわらず、レビューでは、一般病棟でホーソン効果の明らかなエビデンスが示された。ホーソン効果は、臨床の専門領域間で、また部門によって異なる可能性があるというエビデンスがある。今回のレビューにより、公然の調査で得られた遵守率について、誇張された可能性のある結果を報告するというジレンマを打開するために、ホーソン効果の評価に向けて標準化した方法の必要性が確認された。不定期の内密調査では、実際の手指衛生遵守率の推定がより良好となる可能性があるが、医療従事者におけるその受容性と実現可能性を検討する必要がある。

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監訳者コメント
手指衛生遵守とホーソン(見張り)効果については、かねてより多くの論文が発表されているが、見張りのいない状況下でいかに落ち込みなく実施が可能かどうかが課題である。

一国内の研究の複数の試験による熱傷創感染症の報告を標準化するために必要な 4 つの指標をコンセンサスにより明らかにする(ICon-B study)

Consensus demonstrates four indicators needed to standardize burn wound infection reporting across trials in a single-country study (ICon-B study)

A. Davies*, L. Teare, S. Falder, J. Dumville, M. Shah, A.T.A. Jenkins, D. Collins, B. Dheansa, K. Coy, S. Booth, L. Moore, K. Marlow, R. Agha, A. Young
*University of Bristol, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 217-225

緒言
熱傷創感染症の治療のためにエビデンスに基づく介入が必要である。試験間での熱傷創感染症の報告に使用される指標のばらつきによって、エビデンスの統合が制限されている。熱傷創感染症の一貫した報告は、コンセンサスにより最小限の指標を設定することでより促されるであろう。Infection Consensus in Burns study(ICon-B study)の目的は、熱傷創感染症のコアセット指標について専門家のコンセンサスを得ることである。

方法
システマティックレビューおよび専門家の意見により特定した熱傷創感染症の候補指標のリストの作成によって、コアセット指標を確立した。デルファイ法による調査では、英国の専門家の参加者が、熱傷創感染症患者における日常診療での使用・診断における重要性・観察の頻度に照らして指標を評価した。熱傷創感染症患者においてその指標が診断に重要であること、また日常診療で使用されることに参加者の 75%以上が合意した場合と、その指標の観察頻度が高いと参加者の 50%以上が評価した場合、コアセット指標に組み入れた。

結果
システマティックレビューにより 195 の指標が確認され、同じ意味の指標を 1 つにまとめて 29 の調査指標に減らした。デルファイ法による調査には英国の専門家75名が参加した。第一ラウンドと専門家パネルによるコンセンサス会議を経て、コアセット指標に次の 4 つの指標を組み入れた。発熱、紅斑の拡大、白血球数の変化、病原菌の存在である。

考察および結論
エビデンスの統合を容易にするために、一国内で専門家の情報に基づく系統的アプローチを実施し、熱傷創感染症のアウトカムを報告する試験において一貫して報告されるコアセット指標を開発した。今後の研究では、国際的な専門家によるコアセット指標の検証が必要である。

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監訳者コメント
コメント無し

SARS-CoV-2 の安定性および感染性に影響する因子★★

Factors affecting stability and infectivity of SARS-CoV-2

K-H. Chan*, S. Sridhar, R.R. Zhang, H. Chu, A.Y-F. Fung, G. Chan, J.F-W. Chan, K.K-W. To, I.F-N. Hung, V.C-C. Cheng, K-Y. Yuen
*University of Hong Kong, People’s Republic of China

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 226-231

背景
2019 年後半、新型ヒトコロナウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2[SARS-CoV-2])が中国の武漢で出現した。このウイルスは 200 を超える国々を巻き込む世界的パンデミックを引き起こしている。SARS-CoV-2 はヒトへの適応性が高く、ヒトからヒトへ容易に伝播する。

目的
さまざまな環境および pH 条件下で SARS-CoV-2 の感染性を調べることを目的とした。実験室での種々のウイルス不活化法および家庭用消毒剤のSARS-CoV-2 に対する有効性を検討した。

方法
乾燥状態または溶液中の残存ウイルスを、Vero E6 細胞を用いて各温度で培養後0、1、3、5、7日目に定量した。室温にて(20 ~ 25°C)さまざまな消毒剤および pH 溶液で処理後、ウイルスの生存率を測定した。

結果
SARS-CoV-2 は、室温にて乾燥状態で 3 日から 5 日間、溶液中で 7 日間の生存能を保持できた。SARS-CoV-2 は、pH 4 ~ 11という広範囲の条件下で数日間、室温では糞便中に 1 日から 2 日間検出できたが、感染性は 5 log 低下した。一般的に使用される種々の消毒剤および実験室での不活化法はウイルス生存率を効果的に低下させることが確認された。

結論
本研究により、環境表面上の SARS-CoV-2 の安定性が確認され、糞口感染の可能性が示唆された。よく使用される固定液、核酸抽出法、熱不活化により、ウイルス感染価が有意に低下することが確認されたことから、SARS-CoV-2 パンデミック期間における病院や検査室の安全性を確保することができると考えられる。

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監訳者コメント
SARS-CoV-2 にたいする様々な処理にによる影響を調査した論文であり、参考になる。

カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の病室間伝播の潜在的な発生源としてのトイレ排水

Toilet drain water as a potential source of hospital room-to-room transmission of carbapenemas-producing Klebsiella pneumoniae

L. Heireman*, H. Hamerlinck, S. Vandendriessche, J. Boelens, L. Coorevits, E. De Brabandere, P. De Waegemaeker, S. Verhofstede, K. Claus, M.A. Chlebowicz-Flissikowska, J.W.A. Rossen, B. Verhasselt, I. Leroux-Roels
*Ghent University Hospital, Belgium

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 232-239

背景
カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)は欧州で急速に出現し、院内アウトブレイクに関与している。

目的
Ghent University Hospital の熱傷部門での CPE のアウトブレイク後に、CPE が排水によってトイレ間に広がり、そこから患者に伝播する可能性があるかどうかを調査した。

方法
当院の熱傷部門は、2017 年に OXA-48-産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)のアウトブレイクを経験し、3 つの各病室に入院する患者 5 例が感染した。一般的な発生源を調査するために、シンク、シャワー、シャワーストレッチャー、ベッドの手すり、ナーシングカート、トイレ、排水から環境サンプルを採取した。肺炎桿菌のアウトブレイク分離株とランダムに選択した肺炎桿菌分離株 2 株の全ゲノムシークエンシングおよび系統発生解析を実施した。

結果
OXA-48-産生肺炎桿菌が、6 病室のうち 4 病室のトイレの水と 2 病室間の排水に検出された。2 か月間毎日、漂白剤による消毒を行った後も、6 病室のうち 2 病室でこの菌株が残存していた。アウトブレイクの全分離株がシークエンス型(ST)15 に属し、同質性を示した(対立遺伝子の差異 15 未満)。これは、排水により菌株が病室間に拡散した可能性があることを示唆するものである。意外なことに、ランダムに選択した分離株 1 株は、アウトブレイク分離株によるクラスターが発生した高齢者病棟に入院中に感染の 1 患者から採取されており、アウトブレイクは予想よりも広範であることが示唆される。トイレの水の消毒に、毎日の漂白剤使用は酢酸よりも優れている傾向がある。だが、トイレの水に存在するカルバペネマーゼ産生肺炎桿菌は、消毒で完全に阻止されなかった。

結論
トイレ排水は、カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌の院内病室間伝播の潜在的な発生源であると考えられる。

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監訳者コメント
ベルギーの病院の熱傷部門での患者および環境から検出された OXA-48 -産生肺炎桿菌を調べた論文である。患者の移動がないにもかかわらず、2 つの部屋のトイレの排水から同質と考えられる菌が検出されていた。これまでにも同様の研究があり、環境消毒の難しさを考えさせられた。

クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)リボタイプ 027 のアウトブレイクの効率的な介入バンドルによる管理の成功

Successful management of a Clostridioides difficile ribotype 027 outbreak with a lean intervention bundle

A.B. Kuenzli*, S. Burri, C. Casanova, R. Sommerstein, N. Buetti, H.M.B. Seth-Smith, T. Bodmer, A. Egli, J. Marschall
*Bern University Hospital, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 240-245

背景
2015 年の点有病率研究では、高病原性のリボタイプの 1 つであるクロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)027 はスイスの医療施設に存在していなかった。我々は 2016 年後半に、同じ病院ネットワークの複数の病院にわたってリボタイプ 027 を有する C. difficile の感染症(CDI)のアウトブレイク 1 件が発生したことを検知した。

方法
リボタイプ 027 に起因する CDI の最初の症例が、アウトブレイク株を同定するための全ゲノムシークエンス法(WGS)を含むアウトブレイク調査のきっかけとなった。

結果
2016 年 12 月から 2017 年 12 月の間にリボタイプ 027 に起因する CDI 患者 28 例が特定され、そのうち 20 例は単一クローンに起因していた。これらの患者の共通点は、同じ病室または同じ病棟での入院、同じ医療従事者のケアを受けたこと、ならびにトイレの共有であった。症例間の可能性のある伝播経路を示唆する疫学的関連性に加えて、WGS により C. difficile 027 の本アウトブレイクのクローン性が裏付けられた。本アウトブレイクは隔離予防策、医療従事者の意識向上、診断アルゴリズムの統一、環境消毒用の殺芽胞剤への切り替えによって食い止められた。注目すべきことに、標準のガウンと手袋の着用も水と石けんによる手洗いも実行されなかった。

結論
C. difficile 027 による本アウトブレイクは、一部の病院でリボタイプのスクリーニングが不十分であったために遅れて認知され、簡便な感染予防策と検査室でのアプローチの適合を伴う迅速な対応によって食い止められた。C. difficile の疫学の理解を深めるために、診断アプローチを標準化し、CDI の届出義務を発表し、蔓延しているリボタイプに関する縦断的データが確立されていない国においてデータ収集をすべきである。

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監訳者コメント
スイスの病院グループで発生した C.difficile アウトブレイク調査の結果、医療従事者は一番の感染伝播の原因であった。対策は、PPE や手洗いの強化ではなく、個室、トイレの個別使用、殺芽胞剤(ペルオキシ硫酸カリウム)を用いた環境清掃であった。

市販のフェイスマスクの適切な代替品はあるか?様々な素材と形状の比較

Is there an adequate alternative to commercially manufactured face masks? A comparison of various materials and forms

G.R. Teesing*, B. van Straten, P. de Man, T. Horeman-Franse
*University Medical Center Rotterdam, the Netherlands

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 246-253

背景
医療用品質のフェイスマスクが世界的に不足している。マスクの着用は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の伝播抑制において重要な役割を果たす可能性がある。

目的
医療用フェイスマスクが不足している間に容易に入手できる素材を用いて簡単に作ることができ、人々が公共の場で着用するための効果的なマスクがあるかどうかを結論づけること。

方法
我々はフェイスマスクを作るために容易に入手できる素材と型の有効性を明らかにした。結果は 2020 年 4 月から 5 月にオランダに入ってきた N95/FFP2/KN95 マスクと比較した。0.3 µm の粒子を 35%以上濾過するかどうか、疎水性かどうか、顔面を密閉するかどうか、呼吸可能かどうか、および洗濯可能かどうかを明らかにするためにマスクを検査した。

結果
25 の(組み合わせの)素材のうち 14 が 0.3 µm の粒子を 35%以上濾過した。疎水性が証明された 4 つの素材はすべて市販のフィルターであった。2 つの型は顔面を密閉した。25 の素材のうち 22 は 0.7 mbar 未満で呼吸可能であった。疎水性の素材で洗濯後に損傷のないままのものはなかった。

結論
市販の ePM 85%フィルターの生地でダックビル型に作ったマスクを人口の 39%が着用すれば、新型コロナウイルスの再生産率を 2.4 から 1 未満に低下させることが可能だろう。このマスクは輸入された N95/FFP2/KN95 マスクの 80%よりも性能が高く、サージカルマスクよりも良くフィットする。家庭用のペーパータオルをフィルターにした 2 層のキルト生地も使用者と環境の保護のために実行可能な選択肢の 1 つである。

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監訳者コメント
コメント無し

製造業者指定の使用期限を過ぎた備蓄品の N95 マスクおよびサージカルマスクの放出:フランスでの経験

Stockpiled N95 respirator/surgical mask release beyond manufacturer-designated shelf-life: a French experience

D. Brun*, C. Curti, T. Mekideche, A. Benech, I. Hounliasso, E. Lamy, C. Castera, P. Rathelot, P. Vanelle
*Service Central de la Qualité et de I’Information Pharmaceutiques (SCQIP), France

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 258-263

背景
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック中の N95 マスクとサージカルマスクの不足を軽減するため、使用期限を過ぎた備蓄品が放出され得る。

目的
診療科への安全な配布のために期限切れのサージカルマスクと N95 マスクのバッチの一元的検査を行い、使用者の時間を節約すること。

方法
保健当局の指示に対する遵守検査を開発し、2020 年 3 月 12 日から 4 月 16 日まで 175 バッチの N95 マスクと 31 バッチのサージカルマスクを対象に実施した。バッチのサンプルに対して 5 つの品質管理試験を実施し、包装の完全性、マスクの外観、ゴムひもの破壊強度とノーズクリップの強度、顔面への密着度を調べた。

結果
FFP2 マスクのバッチの 49%は指示を遵守しており、バッチの 32%は遵守しているもののやや懸念があり、バッチの 19%は遵守していなかった。サージカルマスクではバッチの 58%が遵守しており、バッチの 39%は遵守しているものの懸念があり、バッチの 3%は遵守していなかった。

結論
非遵守の主な部位はゴムひもの破壊強度とノーズクリップであったが、これらの理由だけで、マスクが受け入れ不可になってしまうとは考えられなかった。マスクの外観と顔面への密着度の結果のみが決定的な非遵守の基準であった。

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監訳者コメント
期限切れ(期限は 2001 年から 2018 年)の N95 マスクとサージカルマスクの使用について検討した論文である。古くなった N95 マスクでは鼻の部分のプラスティックがボロボロになっている写真が掲載されており、外観の劣化が起きることがわかった。

抗菌薬耐性腸内細菌目細菌(基質特異性拡張型β - ラクタマーゼ産生腸内細菌目細菌[Extended-spectrum β-lactamase-producing Enterobacterales;ESBLPE]およびカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌[carbapenemase-producing Enterobacterales;CPE])によるトイレの汚染:実験的研究

Bathroom contamination by antibiotic-resistant Enterobacterales (ESBLPE and CPE): an experimental study

T. Sevin*, V. Goldstein, I. Lolom, F. Lenne, Y. Gaudonnet, A.L. Baptiste, G. Bendjelloul, L. Armand-Lefevre, J.C. Lucet
*Bichat-Claude Bernard Teaching Hospital, Assistance Publique-Hôpitaux de Paris, France

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 271-276

背景
基質特異性拡張型β - ラクタマーゼ産生腸内細菌目細菌(Extended-spectrum β-lactamase-producing Enterobacterales;ESBLPE)とカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(carbapenemase-producing Enterobacterales ;CPE)は重篤な感染症の原因となる。それらの尿中での存在は交差伝播の原因となり得る環境汚染を引き起こす可能性がある。

目的
医療現場での一般的な慣行のように、尿をトイレに捨ててシンクですすいだ後の、しぶきと汚染の程度を評価すること。

方法
各試験で手順は同様であり、便座を上げて尿瓶の中身を便器の高さでトイレに捨て、シンクですすいで流した。飛び散る液滴を調査するため、水とフルオレセインを尿瓶内で混ぜた。それぞれの場所で飛び散る液滴の頻度と程度を紫外線(UV)によって評価した。汚染を調査するため、3 つの ESBLPE と 1 つの CPE を生理食塩水で希釈して 106/mL にした。試験前、試験直後、試験の 3 時間後にサンプル採取によって汚染を評価した。スワブを培養し、コロニーの計測と同定を行った。

結果
しぶきのリスクが最も高い場所は便器の外側(N = 36/36)、便座の裏面(N = 34)、ならびにシンクの内側(N = 34)であった。手袋(N = 14)を除いて衣類の汚染は少なかった。汚染の頻度が最も高い場所はシンクの内側(40/48)であり、汚染の程度が最も高いことが確認された(14/48)。

結論
尿瓶の中身をトイレに捨てた後にシンクですすぐことは飛散と汚染の著しいリスクに関連しており、場所によるものの(シンクでのリスクが最も高い)、細菌は 3 時間を超えて生存することはなかった。この慣行には交差伝播のリスクがあり、見直されるべきである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
尿ビンに入った尿を捨てる際の環境の汚染に関する論文である。耐性菌に限らず、便器の外側、便座の裏側、シンクの内側が汚染されていることを考えると、廃棄方法そのものを検討する必要があると思われた。

都市部の大病院における N95 マスクの再使用:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応方法と手順

N95 mask reuse in a major urban hospital: COVID-19 response process and procedure

M.P. Czubryt*, T. Stecy, E. Popke, R. Aitken, K. Jabusch, R. Pound, P. Lawes, B. Ramjiawan, G.N. Pierce
*St Boniface Hospital Albrechtsen Research Centre, Canada

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 277-282

背景
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)のパンデミック中に単回使用の N95 マスクの不足は、医療提供者と医療施設に限られた在庫を持たせるために N95 マスクを再使用するという案を提起させた。

目的
カナダの都市部の大病院 1 施設において毎日着用される N95 マスクの高圧蒸気滅菌を用いた再使用の可能性を評価すること。

方法
N95 マスクの再使用の可能性は、ボランティアスタッフが 2 ~ 8 時間着用後に回収し、高圧蒸気滅菌と PortaCount によるフィットテストを行って評価した。1 日あたり数百の N95 マスクを処理し再使用するためにワークフローを開発した。

結果
使用済みの N95 マスクは 1 回目の高圧蒸気滅菌後にフィットテストに合格し、86%は再使用と高圧蒸気滅菌の 2 回目のサイクルを通過した。高圧蒸気滅菌前に予熱した別のコホートの使用済みのマスクはフィットテストに合格した。1 日あたり 200 個~ 1,000 個の N95 マスクを再使用するにあたり、N95 マスクの取り扱い中の粒子のエアロゾル化を最小限に抑えるため、明らかに擦り切れている N95 マスクを不合格とするため、またスタッフによる採用を促すため、回収、滅菌および再配布の手順を開発した。N95 マスクの再生利用率は 12 回の回収サイクルで 49%から 80%までの幅があった。

結論
N95 マスクの再使用は大病院や他の医療施設において実行可能である。高圧蒸気滅菌の 10 回のサイクルの後にフィットテストに合格した未使用の N95 マスクの研究とは際立って対照的に、毎日の着用は N95 マスクの密着度を著しく低下させ、再使用を 1 回のサイクルに制限するが、それでもなお N95 マスクの在庫を約 66%まで増加させることを我々は示した。回収を増やして N95 マスクの再生利用を目的とする滅菌方法の受け入れおよび遵守率を高めるため、このような再使用には最前線の医療従事者から病院管理に至るまでの人員のレベルを越えたコミュニケーションを含む、包括的な計画の開発が求められる。

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監訳者コメント
N95 マスクのリユースに関する論文である。日本でも多くの施設で行っていたと思われるが、リユースのサイクルやフィットテストなども含めて研究に仕立て上げる姿勢は見習うべきであろう。

最小発育阻止濃度より低濃度のクロルヘキシジンとムピロシンがメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)臨床株のバイオフィルム形成に及ぼす影響

Effects of subinhibitory concentrations of chlorhexidine and mupirocin on biofilm formation in clinical meticillin-resistant Staphylococcus aureus

K.-H. Park*, M. Jung, D.Y. Kim, Y.-M. Lee, M.S. Lee, B.-H. Ryu, S.I. Hong, K.-W. Hong, I.-G. Bae, O.-H. Cho
*Kyung Hee University Hospital, Republic of Korea

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 295-302

背景
最小発育阻止濃度(MIC)より低濃度の抗菌剤が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のバイオフィルム形成能に及ぼす影響については、さらに研究を行う必要がある。

目的
MIC より低濃度のクロルヘキシジンとムピロシンがメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の臨床分離株のバイオフィルム形成に対して及ぼす影響を検討すること。

方法
MRSA 分離株は 3 次病院 1 施設の血流感染症の患者から採取した。バイオフィルム形成の基礎レベルと MIC より低濃度のクロルヘキシジンとムピロシンによるバイオフィルム誘導を、クリスタルバイオレットで染色したバイオフィルムの質量測定により評価した。

結果
試験した MRSA 分離株 112 株のうち 63株(56.3%)がシークエンス型(ST)5 系統株に、44株(39.3%)が ST72 系統株に属しており、これらは韓国の医療関連および市中関連の優勢なクローンである。ST5 分離株は ST72 分離株と比較して、クロルヘキシジンの MIC が 4 以上(73.0% vs 29.5%)、ムピロシンへの耐性を有する(23.8% vs 0%)、agr の機能機能不全を有する(73.0% vs 9.1%)、qacA/B 遺伝子を有する(58.7% vs 2.3%)という傾向が強かった。ST72 分離株のバイオフィルム形成能の基礎レベルは ST5 分離株と比較してより高いことが多かった(77.3% vs 12.7%)。MIC より低濃度のクロルヘキシジンとムピロシンは、全分離株のそれぞれ 56.3%、53.6%においてバイオフィルム形成を促進した。バイオフィルム誘導は ST72 分離株(クロルヘキシジン 15.9%、ムピロシン 27.3%)よりも ST5 分離株(クロルヘキシジン 85.7%、ムピロシン 69.8%)においてより高頻度に見られた。

結論
MIC より低濃度のクロルヘキシジンとムピロシンは MRSA の臨床分離株の半数においてバイオフィルム形成を促進した。MRSA ST5 株のバイオフィルムはクロルヘキシジンへの曝露後に他の細菌の病原因子と一緒に誘導される可能性があり、それが医療環境においてこのクローンに生存上の利点を与えているかもしれないことが、我々の結果から示唆される。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
マクロライド系抗菌薬などは、低濃度で緑膿菌のバイオフィルム産生を抑制することが知られている。本論文もてっきりそういう話だと思っていたら、どうやら逆にバイオフィルム産生を促進するらしい。これは驚いた。

ブラジル公的統一保健医療制度に対する 3 次教育病院の医療関連感染症の費用:マッチング症例対照研究

Costs of healthcare-associated infections to the Brazilian public Unified Health System in a tertiary-care teaching hospital: a matched case-control study

S.F. Osme*, A.P.S. Almeida, M.F. Lemes, W.O. Barbosa, A. Arantes, C. Mendes-Rodrigues, P.P. Gontijo Filho, R.M. Ribas
*Federal University of Uberlandia, Brazil

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 303-310

背景
ブラジルにおける医療関連感染症(HAI)の経済的負担についてはほとんど知られていない。

目的
ブラジル統一保健医療制度加入を介したブラジル政府からの償還によって入院費を分析すること、ならびに成人集中治療室(ICU)における直接費用を分析すること。

方法
2018 年 1 月にブラジルの 3 次紹介教育病院においてマッチングペア症例対照研究(HAI 患者 83 例および非 HAI 患者 83 例)を実施した。支払者の観点から HAI の費用を算出するため、病院の請求書作成部門から入院ごとの総費用を入手した。直接費用は 2018 年の間の重症患者 949 例に関して年間で算出した。

結果
HAI 患者の入院あたりの償還費用(2,721 US ドル)は非 HAI 患者(1,553 US ドル)よりも 75%高かった。患者が HAI を有する場合、より長い入院期間(15 日間)に加えて入院あたりの償還費用に追加の増額(996 US ドル)があった。ICU の HAI 患者は、ICU で感染症を発症しなかった患者と比較して 8 倍高い直接費用の総額と関連していた(それぞれ 11,776 US ドル、1,329 US ドル)。ICU における非 HAI 患者の入院の直接費用は償還を 56.5%下回ったのに対し(それぞれ 1,329 US ドル、3,052 US ドル)、HAI 患者では直接費用は償還を 111.5%上回った(それぞれ 11,776 US ドル、5,569 US ドル)。

結論
HAI はより長い入院期間と直接費用の 8 倍の増加に関与する。ブラジルの病院において HAI を予防するプログラムを強化する必要がある。

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監訳者コメント
HAI による入院期間の延長と入院費用の増加を示した論文である。当たり前の結果ではあるが、本研究の手法を参考に、日本でも同様の研究が増えると良いだろう。

バイオクリーン手術室出入時の手術室スタッフの足元における空中浮遊粒子の拡散

Airborne particle dispersion around the feet of surgical staff while walking in and out of a bio-clean operating theatre

S. Sunagawa*, H. Koseki, C. Noguchi, A. Yonekura, U. Matsumura, K. Watanabe, M. Osaki
*Nagasaki University Graduate School of Biomedical Sciences, Japan

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 318-324

背景
空中浮遊粒子による細菌汚染は、手術部位感染症(SSI)の病理発生における最も重要な因子の 1 つである。

目的
本研究は、手術室出入時の手術室スタッフの足元周辺における空中浮遊粒子の生成および挙動を明らかにすることを目的とした。

方法
層流装置を使用しているバイオクリーン手術室において、医師 2 名および看護師 2 名が、個人で、またはグループで出入した。空中浮遊粒子の生成および挙動を、微粒子視覚化システムを用いて撮影し、2.83 m3 あたりの空中浮遊粒子数をレーザー粒子計数器を用いて計数した。各行動を 5 回繰り返し、粒子数を統計学的に評価した。

結果
空中浮遊粒子の生成は、参加者が個人であるかグループであるかにかかわらず、床から、また参加者の靴およびガウンの裾から認められた。グループの出入により多数の空中浮遊粒子が生成され、特に 0.3 ~ 0.5 µm の大きさの粒子では、グループの場合の方が個人の場合よりも、手術台の高さまで達する数が有意に多かった(P < 0.01)。

結論
本研究の結果から、手術室を出入するスタッフの足元周辺における空中浮遊粒子の拡散および分布について、より明確な実態像が得られている。これらの結果は、細菌汚染の発生率ならびに SSI リスクを抑制するためには、手術室スタッフは無菌区域の近傍では、可能な限り、静かに独りで歩くようにすべきであることを示唆している。

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監訳者コメント
SSI の予防においては、手術室に出入りするスタッフの数を最小限にするといったことが以前から推奨されている。レーザー粒子計数機など、近年の新しい技術を用いて、さらに新しい知見が出てきている。やはり手術室では騒がしくしてはいけないようだ。

ロンドンの教育病院に勤める医療従事者における COVID-19 の特性および伝播動態★★

Characteristics and transmission dynamics of COVID-19 in healthcare workers at a London teaching hospital

C. Zheng*, N. Hafezi-Bakhtiari, V. Cooper, H. Davidson, M. Habibi, P. Riley, A. Breathnach
*St George’s University Hospitals NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 325-329

背景
医療従事者関連新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、院内感染の拡大およびスタッフ人数の枯渇をもたらす可能性があるため、世界的な懸念となっている。しかし、医療従事者における COVID-19 の伝播経路およびリスク因子に関する文献は限られている。

目的
医療従事者における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)の特性および伝播動態を、英国ロンドンの大学付属教育病院 1 施設において検討すること。

方法
2020 年 3 月から 4 月に、スタッフの記録とウイルス学的検査結果を組み合わせて、スタッフの疾患状態と COVID-19 発生率を明らかにした。スタッフの専門業務群、業務部門、および民族について比較した。

結果
当院の医療従事者における COVID-19 発生率は、ほぼ市中感染症例数と並行して上昇および低下していた。当院の医療従事者における白人群および非白人群では、感染発生率は同程度であった。検査で確認された COVID-19 の発生率は、臨床スタッフのほうが非臨床スタッフより高かったが、(検査未確定の疑い例も含めた)総疾患率は同程度であった。医師では感染率が最も高かったが、罹病期間は最も短かった。集中治療では救急部よりも感染率は低かったが、救急部では全スタッフに対して個人防護具(PPE)を使用するよう指示したところ、感染率が低下した。

結論
当院のスタッフにおいて、SARS-CoV-2 の持続的伝播は、非臨床区域において厳格な感染制御策が講じられていなくても、市中アウトブレイクを上回る形では発生しなかった。現行の PPE は、適切に使用されれば効果的なようである。著者らの所見は、パンデミック時には臨床スタッフと非臨床スタッフの両者に検査を行うことの重要性を強調している。

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監訳者コメント
COVID-19 の感染伝播を阻止するための最良の方策は PPE の適切な着用と手指衛生であり、本論文はそれを確認した形となっている。COVID-19 の主症状は発熱と咳であるが、咽頭痛、鼻水、味覚嗅覚異常、下痢、などの通常の上気道炎や急性胃腸炎と区別できないこと、さらに発症前から感染性があることから、発症前に COVID-19 以外の疾患で救急受診した場合には、救急スタッフは感染防御が難しくなり、その結果感染しやすくなる。したがって、PPE の十分量の確保と PPE の適切な着脱は必須である。また、COVID-19 の検査が必要時に職員・患者に限らず実施できる検査体制の確保は、早期に無症状者を含め陽性者を同定することができる点で重要である。

成人がん患者におけるカテーテル関連血流感染症:前向き無作為化対照試験

Catheter-associated bloodstream infections in adults with cancer: a prospective randomized controlled trial

P. Mollee*, S. Okano, E. Abro, D. Looke, G. Kennedy, J. Harper, J. Clouston, R. Van Kuilenburg, A. Geary, W. Joubert, M. Eastgate, M. Jones
*School of Medicine, University of Queensland, Australia

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 335-342

背景
中心静脈アクセスデバイスで多くみられる合併症は、カテーテル関連血流感染症(CABSI)である。著者らは以前に、右側への中心静脈アクセスデバイスの挿入は、CABSI のリスク上昇と関連することを示したことがあり、この所見はこの患者集団において右利きが多かったことに関連し、その結果として腕の動きが大きく、細菌汚染が多くなったという仮説を立てた。

目的
前向き無作為化対照非盲検研究を実施し、中心静脈アクセスデバイスの挿入側が CABSI の発生率に影響を及ぼすかどうかを明らかにすること。

方法
成人がん患者を、中心静脈アクセスデバイスの挿入側について利き手側または非利き手側に無作為に割り付けた。本研究の主要アウトカムは、CABSI 発症までのライン日数とし、2 名の評価者が盲検下で算定した。

結果
全体で、中心静脈アクセスデバイス 640 個を、挿入について利き手側(N = 322)または非利き手側(N = 318)に無作為化し、60%は血液悪性腫瘍、40%は固形癌を有していた。中心静脈アクセスデバイスは、末梢挿入中心カテーテルライン(67%)、トンネル型中心静脈アクセスデバイス(23%)、および非トンネル型中心静脈アクセスデバイス(10%)であった。中心静脈アクセスデバイスの 22%では、合併症として CABSI が発生した。CABSI 発生率は、非利き手群と利き手群において、それぞれ1,000 ライン日あたり 3.49 および 3.66 であった(ハザード比[HR]0.91、95%信頼区間[CI]0.65 ~ 1.28)。多変量解析により、CABSI 発生率は、トンネル型中心静脈アクセスデバイスの使用(HR 2.05、95%CI 1.45 ~ 2.91)のほうが末梢挿入中心静脈カテーテルラインの使用よりも、血液悪性腫瘍を有しているほうが(HR 5.55、2.47 ~ 12.5)消化器以外の固形癌を有しているよりも高かったが、中心静脈アクセスデバイスの挿入側について利き手側のほうが非利き手側より高いわけではなかった(HR 0.97、0.69 ~ 1.36)。

結論
成人がん患者における CABSI には、中心静脈アクセスデバイスの挿入側が利き手側であるか非利き手側であるかによる影響は認められなかった。

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監訳者コメント
CABSI発生のリスク因子として「利き手」の違いによる差を検討した研究であるが、結果として差は認められなかった。担癌患者におけるCABSIの発生率としては、既報では 1,000ライン日あたり2.5前後であり、本報告では3.5前後で高めである。しかしながら、患者対象が血液疾患となると 4.0 ~ 6.0 と高くなり、特に集中的に化学療法を実施する血液疾患患者においては発生率は本論文でも 5.55 と他の血液疾患や癌患者に比較して有意に高くなる。理由は、集中的な化学療法により免疫抑制や好中球減少により易感染性となり、さらにラインへのアクセス回数が増えるために、高率になることが考えられる。しかしながら、アクセス回数が増えても「無菌的操作の遵守」は必須であり、徹底することで発生率をさらに低減させることが期待される。

大学付属精神科病院において感染制御業務が及ぼす影響:18 年間のサーベイランス中に医療関連感染症を有意に低下させた

Impact of an infection control service in a university psychiatric hospital: significantly lowering healthcare-associated infections during 18 years of surveillance

A.C. Büchler*, R. Sommerstein, M. Dangel, S. Tschudin-Sutter, M. Vogel, A.F. Widmer
*University Hospital of Basel, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 343-347

背景
医療関連感染症(HAI)は、病的状態および死亡の発生率上昇につながる。精神科病院における医療関連感染症に関するデータは少なく、長期のサーベイランスにより得られたものはない。

目的
精神科病院における HAI の有病率に対して、感染制御業務が及ぼす影響を 18 年間にわたり評価すること。

方法
1999 年に、スイスのバーゼルにある University Psychiatric Hospital で専門家による感染制御業務が開始され、パート勤務の感染制御看護師 1 名、病院疫学者 1 名、および運営管理者から構成された。多剤耐性病原体の検出率のモニタリングに加えて、米国疾病対策センターにより概要が示された定義を用いて、2001 年から 2018 年にかけて8 回の有病率調査を実施した。主要アウトカムについて、Poisson 回帰モデルを適用して HAI の症例を確認し、リスク患者をモデル補正の基準として標準化した。

結果
全体で、院内感染症の予測有病率は、2001 年の 3.7%(95%信頼区間[CI]2.2 ~ 5.3%)から、感染制御業務導入後の 2018 年には 1.0%(95% CI 0.2 ~ 1.8%)に低下した(年間低下の発生率比0.93、95%CI 0.87 ~ 0.98、P = 0.007)。

結論
感染制御業務の実施は、精神科病院のような、HAI のリスクが低い患者をケアする施設であっても、HAI の長期にわたる有意な低下につながる可能性がある。さらに、エピデミックおよびクラスターが速かに封じ込められた。急性期ケア病院における感染制御業務は、HAI の発生率を低下させるため、また多剤耐性病原体の新興時における新たな課題に対応するため、精神科施設にまで拡大すべきである。

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監訳者コメント
精神科病院では、侵襲的処置やデバイス挿入がないため必然的に HAI の発生が急性期病院よりも少なく、その結果感染性制御への注目度は極めて低く、HAI の発生率さえあまりわかっていない。本論文では精神科単科の病院において、感染制御の専門家をパート業務であっても配置し、HAI 予防への対応を実施することで HAI の発生率を低減させ、さらに HAI 発生への感染制御専門家の有用性はサーベイランスによる定量的評価が重要であることも証明された。

十二指腸内視鏡再処理の不適切性予測のためのポイント・オブ・ケア検査としてのトリプル・アデニル酸ヌクレオチド検査とアデノシン三リン酸検査の性能特性および至適カットオフ値の比較

Performance characteristics and optimal cut-off value of triple adenylate nucleotides test versus adenosine triphosphate test as point-of-care testing for predicting inadequacy of duodenoscope reprocessing

W. Ridtitid*, P. Pakvisal, T. Chatsuwan, S.J. Kerr, P. Piyachaturawat, T. Luangsukrerk, P. Kongkam, R. Rerknimitr
*Chulalongkorn University and King Chulalongkorn Memorial Hospital, Thailand

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 348-356

背景
ヌクレオチドに基づくアデノシン三リン酸検査は、医療業界および食品業界において細菌汚染に対するポイント・オブ・ケア検査(POCT)として用いられてきた。仮説として、3 種類の(トリプル)アデニル酸ヌクレオチドに対する検査はアデノシン三リン酸検査よりも、十二指腸内視鏡の細菌汚染について検出能が高い可能性がある。

目的
十二指腸内視鏡の細菌汚染予測におけるトリプル・アデニル酸ヌクレオチド検査とアデノシン三リン酸検査の性能特性および至適カットオフ値を評価すること。

方法
内視鏡的逆行性胆道膵管造影 100 件から得た十二指腸内視鏡サンプル 400 個を、A 群(トリプル・アデニル酸ヌクレオチド検査)または B 群(アデノシン三リン酸検査)に無作為化した。サンプルは、十二指腸内視鏡に対する洗浄処理の 4 段階においてのエレベーターチャネル(鉗子チャンネル)で採取した。本研究で得られた受診者動作特性(ROC)を用いて、陰性的中率(NPV)が 100%に達するための検査の新たなカットオフ値を確定した。

結果
洗浄処理の 4 段階から得た培養結果を参照基準として用いると、ROC 曲線下面積(AUROC)は A 群(N = 200)および B 群(N = 200)について、それぞれ 0.83 および 0.84 であった。高レベル消毒後の培養結果を参照標準として用いると、AUROC はA 群(N = 50)および B 群(N = 50)について、それぞれ 0.35 および 0.74 であった。著者らは、高レベル消毒後の POCT としてのアデノシン三リン酸について検討し、新たなカットオフ値を 40 RLU と確定した。しかし、このカットオフ値では細菌数が少ない場合に検出できなかった。

結論
トリプル・アデニル酸ヌクレオチド検査とアデノシン三リン酸検査は、十二指腸内視鏡に対する 4 段階の洗浄処理時の細菌汚染検出における予測能が良好であった。アデノシン三リン酸 < 40 RLU は、高レベル消毒後の POCT として有用である。ただし、このカットオフ値の限界は、細菌数が少ない場合に検出できないことである。

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監訳者コメント
十二指腸内視鏡は複雑な構造のために洗浄が困難な部分があり、その結果洗浄消毒が不十分となり、内視鏡を介した耐性菌によるアウトブレイクが多数報告されている。高水準洗浄消毒の効果を評価する方法として、米国 CDC は操作チャンネルとエレベーター部分からの培養を推奨しているが、培養に最低 3日間を要するため、実際的とは言い難い。その代替法として ATP 測定があるが、その有用性については見解が分かれている。一方で洗浄後の連続的 ATP 測定は洗浄効果と用手洗浄要員の技能評価に有効とされている。一般的な環境清掃の評価としての ATP のカットオフ値(200 RLU)は定められているが、内視鏡の用手洗浄後と高水準消毒後の評価にはより低いカットオフ値の設定が必要であり、本論文では40 RLUをカットオフ値に設定している。また、ATP以外のAMPやADPもまとめて測定できる測定系(A3)を同時に導入することでより感度を上げることができ、この論文ではキッコーマン社製の ATP/T3の測定器を使用している。

スペイン、マドリードの病院 1 施設の医療従事者における SARS-CoV-2 感染症★★

SARS-CoV-2 infection among healthcare workers in a hospital in Madrid, Spain

I. Suárez-García*, M.J. Martínez de Aramayona López, A. Sáez Vicente, P. Lobo Abascal
*Hospital Universitario Infanta Sofía, Spain

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 357-363

背景
医療従事者は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)による感染症に特に罹りやすい。

目的
本研究の目的は、2020 年 2 月 24 日から 4 月 30 日にかけて、スペイン、マドリードの病院 1 施設の医療従事者における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の疫学的および臨床的特徴を記述することであった。

方法
本研究は、後向きコホート研究であった。COVID-19 の累積発生率を、すべての医療従事者について、ならびに COVID-19 への推定曝露レベル(高、中、低)により分類した医療従事者について算出した。

結果
医療従事者1,911 名中 213 名(11.1%)が研究期間中に COVID-19 を発症した。症例数は 3 月 8 日から徐々に増加し、3 月 17 日にピークに達し、その後減少した。医療従事者における症例数は 14 日にピークに達し、これは、入院患者における症例数がピークに達する前であった。職業的曝露レベル別の COVID- 19 症例の割合には有意差はなかった(P = 0.123)。医療従事者の 20%超で COVID-19 が確認されたのは、5 部門および 2 専門領域であった。これら 5 部門中 3 部門および 2 専門領域中 1 専門領域で一時的なクラスターが認められ、大部分の症例は 5 日未満の期間にわたって発生していた。併存症の有病率は低く、患者の 91.5%は軽症または中等症であった。患者 11 例が入院し、1 例が集中治療を必要とした。死亡した患者はいなかった。病気休暇取得の日数中央値は、20(四分位範囲15 ~ 26)日であった。

結論
これらの結果から、一部の症例は医療従事者間伝播によるものであったことが示唆される。併存症の有病率が低く、またほとんどの症例で経過が軽症であったにもかかわらず、COVID-19 は長期の病気休暇取得の原因となった。

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監訳者コメント
スペインのマドリッド市内の 1 病院における COVID-19 の罹患状況の報告である。急激な市中での患者増加は、外来における患者の混雑、不十分なトリアージと待合室の不足、さらに環境汚染と PPE 着用が不十分となり、PPE 不足がさらに拍車をかけ、医療スタッフの感染増加、そして適切に感染対策ができる医療スタッフの枯渇につながり、ひいては医療崩壊への連鎖につながる。3 月頃の医療スタッフの感染率はスペインやイタリアでは20~ 30%と高率である。本病院の復帰基準が「症状軽快後 2 日目、5 日目にPCR 検査を実施し、その後は陰性確認まで実施する」こととなってるが、実際は 5 ~ 7日目でほとんどの職員が陰性となり職場復帰している。PCR 陽性イコール感染性ありではなく、PCR 陽性であっても発症後 7 ~ 10 日程度で感染力はなくなることがわかっており、軽症であれば発症後 10 日程度で復帰できる。

エビデンスに基づいた介入が、尿道カテーテル使用、関連するプロセス指標、ならびに感染性および非感染性のアウトカムに及ぼす影響★★

Impact of an evidence-based intervention on urinary catheter utilization, associated process indicators, and infectious and non-infectious outcomes

A.Schweiger*, S.P. Kuster, J. Maag, S. Züllig, S. Bertschy, E. Bortolin, G. John, H. Sax, A. Limacher, A. Atkinson, D. Schwappach, J. Marschall
*National Centre for Infection Control, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 364-371

背景
尿道カテーテル留置ならびにその感染性合併症および非感染性合併症に関する多施設介入研究は行われていない。

目的
尿道カテーテル留置を減らすこと、ならびにその結果として、カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)および非感染性合併症を減らすこと。

方法
スイスの病院 7 施設において非無作為化多施設介入研究を前後で実施した。介入バンドルの内容は、以下の通りであった:(1)尿道カテーテル留置の適応を示した簡潔なリスト、(2)カテーテル留置継続の必要性についての毎日の評価、および(3)尿道カテーテルの適切な挿入および管理に関する教育。主要アウトカムは、尿道カテーテルの使用とした。副次的アウトカムは、CAUTI、非感染性合併症、およびプロセス指標(適応のあるカテーテルの割合、およびカテーテル評価の回数)とした。

結果
合計で、患者 25,880 例を本研究に組み入れた(ベースライン時[2016 年 8 月から10 月]13,171 例および介入後[2017 年 8 月から10 月]12,709 例)。カテーテル使用は、23.7%から 21.0%に減少し(P = 0.001)、100 患者日あたりカテーテル日数は、17.4 から 13.5に減少した(P = 0.167)。CAUTIは、低レベルで安定しており、100 患者日あたり 0.02(ベースライン)および 0.02(介入後)であった(P = 0.98)。1,000 カテーテル日あたりの感染症件数を調べたところ、発生率は 1.02(ベースライン)および 1.33(介入後)であった(P = 0.60)。非感染性合併症の件数は、有意に減少し、100 人年あたりでは 0.79 から 0.56に(P < 0.001)、および 1,000 カテーテル日あたりでは 39.4 から 35.4件に(P = 0.23)であった。適応のあるカテーテルは 74.5%から 90.0%に増加した(P < 0.001)。再評価の件数は、1,000 カテーテル日あたり 168 から 624 に増加した(P < 0.001)。

結論
エビデンスに基づいた 3 つの指標からなる簡潔なバンドルにより、カテーテル使用と非感染性合併症が減少した一方、適応のある尿道カテーテルの割合および毎日の評価件数は増加した。CAUTI 発生率に変化はなく、あったとしてもごくわずかであった。

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監訳者コメント
尿道カテーテルの利用、感染性および非感染性合併症に着目した多施設介入研究で本文を読むことをおすすめします。

院内 COVID-19:死亡リスクの検討。COPE(COVID in Older People)-Nosocomial Study★★

Nosocomial COVID-19 infection: examining the risk of mortality. The COPE-Nosocomial Study (COVID in Older PEople)

B. Carter*, J.T. Collins, F. Barlow-Pay, F. Rickard, E. Bruce, A. Verduri, T.J. Quinn, E. Mitchell, A. Price, A. Vilches-Moraga, M.J. Stechman, R. Short, A. Einarsson, P. Braude, S. Moug, P.K. Myint, J. Hewitt, L. Pearce, K. McCarthy, on behalf of the COPE Study Collaborators
*King’s College London, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 376-384

背景
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以外の疾患による入院は、大幅に減少した。このことには、一般市民のあいだに病院で COVID-19 感染症を獲得すること、またそのために死亡することに対する不安があるためである可能性があると考えられる。

目的
病院内で COVID-19 を獲得する患者(院内 COVID-19)、および死亡リスクを明らかにして、市中獲得 COVID-19 を有する患者と比較すること。

方法
COPE-Nosocomial Study は、観察コホート研究であった。主要アウトカムは、全死因死亡までの期間(補正ハザード[aHR]で推定)、副次的アウトカムは 7 日目の死亡および退院までの期間とした。混合効果多変量 Cox 比例ハザードモデルを用いて、人口統計学的特性および併存症の補正を行った。

結果
本研究には、英国全土の病院 10 施設、およびイタリアの 1 施設から 1,564 例を組み入れ、2020. 年 4 月 28日までに入院した患者のアウトカムデータを収集した。全体で、COVID-19 の 12.5%は院内で獲得されたものであり、COVID-19 患者 425 例(27.2%)が死亡した。生存期間中央値は、院内 COVID-19 患者では14 日であったのに対し、市中獲得 COVID-19 患者では 10 日であった。一次解析では、院内 COVID-19 は死亡率が低いことと関連した(aHR 0.71、95%信頼区間[CI]0.51 ~ 0.98)。副次的アウトカムについては、7 日死亡率には差はなかったが(補正オッズ比 0.79、95%CI 0.47 ~ 1.31)、院内 COVID-19 では回復期における院内滞在期間が長かった(aHR 0.49、95%CI: 0.37 ~ 0.66)。

結論
COVID-19 症例のうち少数が、院内 COVID-19 伝播の結果であった。COVID- 19 は必ずリスクを伴うが、院内 COVID-19 は市中獲得 COVID-19 よりリスクが低かった。ただし、この結果の解釈には注意が必要である。

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監訳者コメント
高齢者における COVID-19 は市中感染よりも院内感染の方が死亡率が高そうに考えられるが、実際は院内感染の方が死亡率が低かったという点で意外な報告。一方で、院内感染の場合は回復期の入院期間が長かったというのは納得がいく。英国の状況が日本でも当てはまるとは限らないが、必要以上に市中感染より院内感染を恐れる必要はなさそうだ。

手術用マーカーペンから細菌が伝播するリスクはあるか?

Is there a risk for bacterial transmission from surgical marker pens?

P. Brinskelle*, E. Koenig, G. Sendlhofer, K.A. Baumhackl, R. Winter, I. Sawetz, L.P. Kamolz, I. Steinmetz, H. Friedl, D.B. Lumenta
*Medical University of Graz, Austria

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 254-257

手術前の皮膚マーキング用のマーカーは複数回使用され、細菌伝播のリスクを有する。細菌汚染は超音波処理と培養によって評価した。多剤耐性を評価するため、通性病原体に抗菌薬感受性試験を実施した。細菌汚染とマーカーの充填状態の統計学的関連性を評価するため、加速寿命モデルを適用した。45 本のマーカーのうち 13 本はコロニー数が 10 cfu/mL 未満であり、32 本は 10 ~ 12,500 cfu/mL であった。3 本のマーカーには黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が定着していた。多剤耐性菌は認められなかった。伝播リスクを減少させるため、マーカーの使い捨てを推奨する。

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監訳者コメント
確かに手術用マーカーから細菌が伝播するリスクはあるが、それが臨床的に重要かどうかは不明である。

心臓手術および整形外科手術前における黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)鼻腔除菌:フランスにおける初の記述的調査

Staphylococcus aureus nasal decolonization before cardiac and orthopaedic surgeries: first descriptive survey in France

C. Ong*, J-C. Lucet, C. Bourigault, G. Birgand, S. Aho, D. Lepelletier
*Nantes University Hospital, France

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 332-334

本研究の目的は、フランスの病院における清潔手術前の鼻腔内スクリーニングおよび除菌の手順について記述することであった。参加者の情報は、2018 年 6 月に French Society for Infection Control の会員から送られた。病院 70 施設が本調査に参加した。これらのうち 40%(N = 28)が施設内で除菌手順を採用していると述べ、うち64%(N = 18)が整形外科、56%(N = 15)が心臓外科であった。すべての病院が鼻腔内除菌にムピロシンを使用しており、身体の除菌にはクロルヘキシジン(N = 16)またはポビドンヨード(N = 10)が用いられていた。本研究は、この分野に情報を提供するためにフランスで実施された初の研究である。スクリーニング/除菌の手順には一致がみられず、その臨床的影響の評価は依然として複雑である。

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監訳者コメント
フランスにおける術前の黄色ブドウ球菌の除菌の状況がわかる調査である。

全ゲノムシークエンシングにより病院内での緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)と腸内細菌目の間での 2 例の blaNDM 伝播イベントの疑いが誤りであることが示された

Whole-genome sequencing disproves two suspected transmission events of blaNDM between Pseudomonas aeruginosa and Enterobacterales in hospitalized patients

K. Kocer*, S. Boutin, K. Probst, K. Heeg, D. Nurjadi
*Heidelberg University Hospital, Germany

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 372-375

グラム陰性細菌によるニューデリー・メタロ-β-ラクタマーゼ(blaNDM)の獲得は、宿主範囲の分布が幅広いため、重大な懸念となっている。本研究では、腸内細菌目と緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)との間における blaNDMin-vivo での遺伝子水平伝播の可能性が認められた 2 例を検討した。いずれも、最初は PCR により可能性が示されたものであった。全ゲノムシークエンシングにより、緑膿菌と腸内細菌目において、異なる 2 つの blaNDM バリアント(NDM-1 および NDM-5)がそれぞれ独立して獲得されたことが示された。このデータは、ショートリード・シークエンシングは、対象とする遺伝子の周囲の遺伝要素の比較により、遺伝子水平伝播の確認または否定のために必要な解決策となること、またそれにより、アウトブレイクの可能性がある場合に適時の対応が可能になることを示している。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
腸内細菌目と緑膿菌との間における blaNDMin-vivo での遺伝子水平伝播が PCR で疑われた 2 例で、全ゲノムシークエンシングで否定されたという報告。従来の PCR と特定の耐性遺伝子の有無だけに依存することには限界がある。

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