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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

コロナウイルスの影響により一部、監修者のコメントおよびレーティングを未監修のまま掲載しておりますので、ご了承ください。

湾岸協力会議加盟国の病院における抗菌薬適正使用支援プログラムの国際標準に対するマッピング:システマティックレビュー

Mapping hospital antimicrobial stewardship programmes in the Gulf Cooperation Council states against international standards: a systematic review

N. Hashad*, D. Perumal, D. Stewart, A.P. Tonna
*Robert Gordon University, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 404-418

背景
湾岸協力会議加盟国における抗菌薬適正使用支援プログラム(ASP)の実施に関するエビデンスはあるが、国際的な標準や枠組みに対するベンチマーキングおよびマッピングは限られている。

目的
米国疾病対策センター(CDC)の ASP 枠組みに準拠した、中東の湾岸協力会議加盟国の病院での ASP 実施に関するエビデンスを厳密に評価、統合し、重要な促進因子および阻害因子を特定することを目的とした。

方法
プロトコールガイドラインのシステマティックレビューおよびメタアナリシスのための優先的報告項目に基づき、システマティックレビューのプロトコールを作成した。2010 年以降に英語で発表された研究を 5 つの電子データベースで検索した。2 名の評価者が独立して、研究の選択、質評価、データ抽出を行った。CDC の中核要素に位置づけられる ASP 介入を用いてナラティブ統合を実施した。

結果
17 報の研究を特定し、その大半(11 報)はサウジアラビアで実施されたものであった。CDC による ASP 枠組みのマッピングにより、ASP 実施を報告する上での利点と欠点の重要な領域が特定された。研究では、薬学の専門知識・実践面における選択・追跡・抗菌薬使用と耐性・教育の中核要素が報告されることが多かった。指導力や責務の報告については、ほどんど重要視されなかった。実施の重要な促進因子は、医師および組織の支援、情報システム、教育であり、阻害因子は、専任職員、仕事量、資金であった。

結論
湾岸協力会議加盟国の病院における ASP 実施の報告を促す必要がある。ASP 介入の策定、実施、報告における指針として CDC による枠組みを使用すべきである。可能な場合、促進因子の特定および阻害因子の克服のための対策が必要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
隣国同士で、文化や社会的背景の近い国々で ASP の状況を比較検討することで、さらなる改善に繋げることができるかもしれない。

病院環境における多剤耐性グラム陰性菌(MDR-GNB)獲得:基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌(ESBL-E)を対象としたシステマティックレビューおよびメタアナリシス

Acquisition of MDR-GNB in hospital settings: a systematic review and meta-analysis focusing on ESBL-E

J. Vink*, J. Edgeworth, S.L. Bailey
*Kings College London and Guy’s & St Thomas’ NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 419-428

緒言
基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌(ESBL-E)および他の多剤耐性グラム陰性菌(MDR-GNB)は、20 世紀後半に発見されてから世界的に蔓延している。これらの細菌の院内伝播を予防するために、さまざまな感染制御・予防策が実施されているが、その有効性はいまだに議論されている。近年、新たな文献が発表され、今後この問題に取り組む上で有効な対策を策定するために使用できるエビデンスが追加された。

方法
病院環境内での多剤耐性菌の保菌率と、その後のこの病原菌獲得に関して明らかにするためにシステマティックレビューを実施した。欧州と北米における ESBL-E の保菌率および獲得に関して明らかにするためにメタアナリシスを実施した。

結果
28 報の研究が選択基準を満たした。世界的にみて、MDR-GNB のうち保菌の頻度が高かったのは大腸菌(Escherichia coli)であった。ESBL-E の患者間伝播はまれであるが、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の伝播の増加は大腸菌を上回ることが確認された。欧州および北米の医療環境における 8 報の研究のメタアナリシスでは、入院時の ESBL-E の統合保菌率は 7.91%、獲得率は 3.73%であった。

考察
入院時点での低保菌率および患者間伝播の不十分なエビデンスから、現行の欧州のガイドラインに沿ったサーベイランスによるユニバーサルスクリーニングや個室隔離などの感染予防・制御策は、院内での ESBL-E による全体的な負担を低減させるのに実際的または有効な介入となる可能性が低いことが示唆される。それよりむしろ、市中、主に長期ケア施設において、この病原菌や他の MDR-GNB の蔓延の制御のために対策を講じるべきであることを提唱する。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
ESBL の分離頻度は必ずしも真の保菌率をストレートに意味していないかもしれない。
保菌していても微量な場合は培養系で検出されずに、抗菌薬療法等を行った後に菌交代症として増殖し、検出されるようになる可能性もある。

緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびバイオフィルム制御という観点から自動水栓のエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)の代替物質を検討する

Investigating alternative materials to EPDM for automatic taps in the context of Pseudomonas aeruginosa and biofilm control

C.F. Hutchins*, G. Moore, J. Webb, J.T. Walker
*Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 429-435

背景
自動水栓は、水流を制御するためにゴム製(主にエチレンプロピレンジエンモノマー[EPDM])ダイヤフラムを備えた電磁弁を使用している。汚染した電磁弁は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)などの日和見病原菌のリザーバ(医療関連感染症の重要な原因)となりうる。

目的
実験モデルでEPDM および適切な代替ゴム製品への緑膿菌の付着とバイオフィルム形成について検討し、水質衛生への影響を評価すること。

方法
疾病対策センター(CDC)のバイオフィルムリアクターを用いて、EPDM、シリコン、ニトリルゴムのクーポン上のバイオフィルム形成について試験した。EPDM またはニトリルゴム製のダイヤフラムを備えた電磁弁を実験用配水システムに取り付け、緑膿菌を播種した。水サンプルの緑膿菌の濃度を 12 週間観察した。ダイヤフラム(EPDM、シリコン、または銀イオン浸透シリコンゴム)を備えた電磁弁を、緑膿菌定着前に取り付け、制御策としてのフラッシングの影響を調べた。水サンプルの緑膿菌の濃度を培養により評価し、バイオフィルムを培養と顕微鏡により評価した。

結果
細菌の付着は、ニトリルゴム(6.2 × 105 cfu/クーポン)およびシリコンゴム(5.4 × 105 cfu/クーポン)が、EPDM(2.9 × 105 cfu/クーポン)よりも有意に多かった(P < 0.05、17 サンプル)。in vitro で得られた結果は、実験用排水システムのいずれの結果にもつながらず、in situ で 12 週間後、水サンプルの緑膿菌の濃度、バイオフィルムにおける緑膿菌の濃度のいずれにも有意差はなかった。フラッシングを行い、5 分未満の止水後に細菌数のわずかな減少がみられた。

結論
本研究では、EPDM と(現在利用できる)代替ゴム製品との取り換えを支持するエビデンスは得られず、水栓から供給される最初の水道水は、医療環境での使用を避けるべきであることが示された。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
配水系の汚染について、電磁弁に着目して検討した論文である。使用可能な代替え素材で効果的なものはみつからずに、最初に捨て水をするくらいのことしかないという結論である。予防的に配管系高温水を流したり、ダクトを加熱するなどエンジニアリングによる改良を行わないと予防的にはならないだろう。

血液培養迅速診断検査後の薬剤師主導による抗菌薬適正使用支援ガイダンスの臨床的影響★★

Clinical impact of pharmacist-directed antimicrobial stewardship guidance following blood culture rapid diagnostic testing

A.J. Mahrous*, A.K. Thabit, S. Elarabi, J. Fleisher
*St. Elizabeth’s Medical Center

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 436-446

背景
迅速診断検査は、臨床アウトカムの改善と関連することが示されている。

目的
菌血症患者における標的治療の達成を図るために、迅速診断検査と薬剤師主導の明確な抗菌薬適正使用支援プログラム(ASP)ガイダンスとの併用による臨床アウトカムを評価すること。

方法
今回の準実験的研究において、後向き(介入前)期間と前向き(介入後)期間を比較した。BacT/ALERT システムを用いて同定した血液培養陽性の成人患者を対象とした。VITEK 2 により細菌の同定および感受性試験を行った。介入後の期間に、抗菌薬選択を最適化するために Verigene システムによるASP ガイダンスを作成した。薬剤師は微生物検査室から結果を受け取り、その時点での治療(受けている場合)の適切性を評価し、適宜、推奨される抗菌薬治療を担当医に伝えた。

結果
コホートは、介入前群 164 例、介入後群 148 例であった。介入後の期間を介入前の期間と比較すると、培養同定までの時間の中央値は、それぞれ 22 時間、96 時間(P < 0.0001)、標的抗菌薬までの時間の中央値は 2 時間、22 時間(P < 0.0001)、抗菌薬の de-escalation までの時間の中央値は 12.2 時間、27 時間(P < 0.0001)、escalation までの時間の中央値は 1.3 時間、24 時間(P < 0.003)であった。院内死亡率および 30 日再入院率は、介入後群が有意に低かった(それぞれP < 0.003、P < 0.034)。入院期間は、介入後群が有意に短かった(6.5 日、8 日;P = 0.03)。

結論
菌血症の迅速な同定と同時に行うASP を基にした薬剤師の推奨は、最適な治療までの時間を有意に改善し、死亡や再入院のリスクを減らしたと考えられる。

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監訳者コメント
菌血症の進行は分単位で刻々と悪化する。適正な抗菌薬処方への至適化は、患者の生命予後を改善することになるため重要である。電子カルテの検査情報とモバイル端末を連動させるなどして、早期介入の院内インフラの整備が重要である。

入院患者における汎薬剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)感染症による超過死亡率

Excess mortality due to pandrug-resistant Acinetobacter baumannii infections in hospitalized patients

S. Karakonstantis*, A. Gikas, E. Astrinaki, E.I. Kritsotakis
*University of Crete, Greece

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 447-453

背景
汎薬剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)は、院内感染病原体であるとの報告が世界的に増加傾向にあるが、その臨床的影響を究明することは難しい。

目的
急性期ケア施設における汎薬剤耐性 A. baumannii 感染症に起因する超過死亡率の範囲を評価すること。

方法
ギリシャの 3 次ケア紹介病院における 4 年間の本コホート研究において、汎薬剤耐性 A. baumannii 感染症による院内超過死亡率を推定するために、競合リスク生存解析法を用いて汎薬剤耐性 A. baumannii 感染患者と保菌患者を比較した。

結果
研究コホートは 91 例(年齢中央値 67 歳、男性 77%)であった。大部分の患者で、汎薬剤耐性 A. baumannii が最初に分離されたのは集中治療室(ICU)(51 例、57%)、あるいは ICU 退室後(26 例、29%)であった。院内全死亡率は 68%(95%信頼区間[CI]57.5% ~ 77.5%)であった。汎薬剤耐性 A. baumannii の感染患者(62 例、68%)と保菌患者(29 例、32%)のベースライン特性は同様であったが、保菌患者と比較して、感染患者の 30 日死亡の絶対超過リスクは 34%(95%CI 14% ~ 54%)であった。多変量競合リスク回帰分析では、汎薬剤耐性 A. baumannii 感染症により、30 日院内死亡の 1 日あたりのハザードが有意に上昇し(原因別ハザード比[HR]3.10、95%CI 1.33 ~ 7.21)、同時に 1 日あたりの退院率が低下し(原因別 HR 0.24、95%CI = 0.08 ~ 0.74)、その結果、長期入院につながることが示された。血流感染症に、より多大な影響が認められた。

結論
汎薬剤耐性 A. baumannii 感染症に対する有効な新規抗菌薬は、治療患者の 3 例に 1 例で死亡を阻止し、入院期間を短縮することが期待される。しかしながら、利用可能な治療選択肢はいまだ非常に限られており、汎薬剤耐性 A. baumannii の医療関連感染の伝播予防に重きを置くことが今後も重要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
汎薬剤耐性 A. baumannii 感染症の治療予後は極めて悪い。もともとA. baumanniiの多くはバイオフィルム産生菌であり、抗菌薬浸透性が悪く治療に難渋する。このため、施設内におけるA. baumanniiの蔓延は避ける必要がある。日本では汎薬剤耐性 A. baumannii 感染症患者は欧米諸外国と比較して圧倒的に少ないが、中国や韓国では臨床分離される A. baumannii の 3 割以上がこれに相当する。

ガンマプロテオバクテリアによる院内感染のリザーバとしてシンク排水管を関連付ける研究における因果関係のエビデンスを評価するツールの開発

Development of a tool to assess evidence for causality in studies implicating sink drains as a reservoir for hospital-acquired gammaproteobacterial infection

C. Volling*, S. Thomas, J. Johnstone, H.C. Maltezou, D. Mertz, R. Stuart, A.J. Jamal, C. Kandel, N. Ahangari, B.L. Coleman, A. McGeer
*Mount Sinai Hospital, Canada

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 454-464

背景
数十年にわたる複数の研究で、シンク排水管のガンマプロテオバクテリアと院内感染の関連が示されているが、因果関係のエビデンスは不明である。

目的
ガンマプロテオバクテリアによる院内感染のリザーバとしてシンク排水管を関連付ける調査研究における因果関係のエビデンスの質を評価するツールを開発することを目的とした。

方法
既存の因果評価アプリケーションから本ツールを開発するために、病院疫学専門家を招いて修正デルファイ法を適用した。

結果
4 ラウンドのフィードバックと修正により、「ガンマプロテオバクテリアによる院内感染または保菌のリザーバとしてシンク排水管の因果関係評価のための修正 CADDIS ツール」を開発した。開発中に発表された文献を対象としたツール適用試験において、平均一致率は 46.7% ~ 87.5%で、Gwet’s AC1 統計量(偶然の一致を補正)は 0.13 ~ 1.0(中央値 68.1)であった。不一致の領域は、排水管から患者に至るまでの因果経路に関する経験的認識の欠如および細菌感染を予防する同時介入の影響が不明であることに起因すると考えられた。それ以上の反復でツールが改善される可能性は低いという合意が得られるまで修正を加えた。独立した 2 名の評価者が、進行中のシステマティックレビュー対象の 44 報の論文にツールを適用したところ、一致率は 93% ~ 98%で、Gwet’s AC1 統計量は 0.91 ~ 0.97 であった。

結論
修正版の因果関係ツールは、院内感染のリザーバとしてシンク排水管を関連付ける研究を評価する上で有用であり、今後の研究の実施および報告の方針決定に役立つであろう。

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監訳者コメント
デルファイ法とは、予測技法の一つであり、専門家複数に匿名でアンケート調査を行い、回答を繰り返すことで、専門家の意見を集約する方法である。本論文では、システマティックレビュー対象の論文の評価をこの手法を用いて行っていた。

乾燥した接種菌付着物が銅製の抗菌性表面の有効性に及ぼす影響

Impact of a dry inoculum deposition on the efficacy of copper-based antimicrobial surfaces

M. McDonald*, R. Wesgate, M. Rubiano, J. Holah, S.P. Denyer, C. Jermann, J-Y. Maillard
*Cardiff University, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 465-472

背景
抗菌性表面の医療環境への導入は、表面上の病原体の存在を著しく減少させることにより医療関連感染症の発生率に対して良い影響を与えると考えられている。

目的
抗菌性表面の殺菌効果の測定を目的とする乾燥した接種細菌を用いた新たな有効性試験に関して報告すること。

方法
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)またはアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)のエアロゾル化した乾燥接種菌を銅合金表面または病院グレードのステンレススチール表面に付着させた。環境的に適切な温度と相対湿度で接種表面の培養を行った後に生存細菌を計数した。エアロゾル化の過程および異なる表面によって細菌に生じた損傷を検討した。

結果
乾燥接種菌試験では、20°C、相対湿度 40%で 24 時間後に試験された銅合金表面上の黄色ブドウ球菌または A. baumannii の< 2-log10 の減少が示された。可能性のある作用機序には膜損傷、DNA 損傷および細胞呼吸の停止が含まれた。エアロゾル化の過程は細菌細胞にある程度の損傷を与えた。この作用を考慮すると、銅表面の抗菌活性は明らかであった。

結論
本試験により表面への接種細菌の現実的な付着が示され、それによって in vitro で乾燥した抗菌性環境表面の有効性を評価する現実的なプロトコールがもたらされた。

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監訳者コメント
銅が抗菌活性を有することは従来より報告があるが、この研究は、その有効性を確認するための検査法を検討したものである。筆者らは、より現実の状況に近い環境としてエアロゾル化した菌を付着する方法で実験を行った。普遍化できるかどうかが今後の課題と思われた。

抗菌薬適正使用支援における看護師への権限委譲:社会生態学的定性分析

Empowerment of nurses in antibiotic stewardship: a social ecological qualitative analysis

L.H. Wong*, M.A. Bin Ibrahim, H. Guo, A.L.H. Kwa, L.H.W. Lum, T.M. Ng, J.S. Chung, J. Somani, D.C.B. Lye, A. Chow
*Tan Tock Seng Hospital, Singapore

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 473-482

背景
不適切な抗菌薬使用および抗菌薬耐性(AMR)は、大いに懸念される世界的な健康問題になりつつある。多くの国で抗菌薬適正使用支援プログラム(ASP)が確立されているにもかかわらず、看護師を関与させ ASP における役割を明確にするための取り組みは限定的である。

目的
抗菌薬適正使用支援における看護師の関与と権限委譲に影響する促進役と障壁を理解するため、探索的定性的研究を実施した。

方法
シンガポールの主要な公立病院 3 施設から有意抽出した看護師を対象に、フォーカスグループ・ディスカッションを実施した。フォーカスグループ・ディスカッションは録音して文字化した。データは応用主題分析を用いて分析し、社会生態学的モデルを用いて解釈した。

結果
個人内のレベルでは、看護師は抗菌薬投与において彼らの役割を遂行することに権限が与えられていると感じていた。看護師は自らを、処方された抗菌薬が確実に適切に投与されるようにする門番役と見なしていた。しかし、看護師は抗菌薬使用と AMR 予防における知識と専門技能が不足していると感じていた。外来患者の安全への懸念と抗菌薬投与の提案が表明されている場合、個人間のレベルでは、この抗菌薬使用における知識と専門技能の不足は、患者と介護者に彼らがどのように認識されているかだけでなく彼らのプライマリケアチームとのやりとりにも影響を及ぼした。組織のレベルでは、看護師は適切な抗菌薬投与を確実にするため、また彼らの診療について医師が質問した場合の安全策として、薬剤投与のガイドラインに頼っていた。地域社会のレベルでは、看護師は一般住民の抗菌薬使用に関する認識と知識は不足していると感じていた。

結論
これらの結果により、看護師の貢献を生かし ASP における彼らの役割を公式に認め拡大する重要な知見がもたらされた。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
日本を含む諸外国で、すでに看護師が ASP に直接関わりその役割を果たしている。経験、教育に加え、制度の整備が重要と思われた。

経直腸的超音波ガイド下前立腺生検のための有効性の高いエルタペネム予防投与:抗菌薬の総使用量と入院患者の病院曝露に対する効果

Highly effective prophylaxis with ertapenem for transrectal ultrasound-guided prostate biopsy: effects on overall antibiotic use and inpatient hospital exposure

M.G. Bloomfield*, A.D. Wilson, R.C. Studd, T.K. Blackmore
*Wellington Regional Hospital, New Zealand

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 483-489

背景
当施設において、経直腸的超音波ガイド下前立腺生検のためのエルタペネム予防投与は有効性が高いことが証明されてきた。その後の研究ではカルバペネム耐性の選択は示されなかったが、抗菌薬管理の懸念は残っていた。

目的
抗菌薬の総消費量と病院環境への曝露に対する本予防投与の効果を評価すること。

方法
2006 年 11 月から 2019 年 7 月に経直腸的超音波ガイド下前立腺生検を受けたすべての男性が含まれた。生検後感染症の発生有無、抗菌薬の使用、および入院期間を明らかにするため、生検から 30 日以内に受診した男性の病院記録を検索した。エルタペネム投与前の期間(期間 1、2006 年から 2012 年)の予防投与は 3 日間の経口シプロフロキサシン投与であり、2009 年に経口アモキシシリン・クラブラン酸を追加した。その後の期間(期間 2、2012 年から 2019 年)ではエルタペネムの単回筋肉内投与を用いた。

結果
期間 1 と期間 2 にそれぞれ 1,663 例、2,357 例の男性が含まれた。年齢中央値は両群ともに 65 歳であった。期間 1 と 期間 2 の間に生検後感染症の発生率は 2.65%から 0.34%に低下し(リスク比 0.13、95%信頼区間[CI]0.06 ~ 0.27)、生検後感染症関連の菌血症は 1.14%から 0.04%に低下し(リスク比 0.04、95%CI 0.01 ~ 0.22)、期間 2 における菌血症は 1 例であった。生検後感染症治療の抗菌薬消費量は、生検 100 件あたりの 1 日規定用量(DDD)で 57.6 DDD から 4.3 DDD に減少し(平均差 -53.3、95%CI -73.1 ~ -33.5)、総消費量(治療と予防投与の合計)は、生検 100 件あたり 580.8 DDD から 104.3 DDD に減少した(平均差 -476.5)。生検 100 件あたりの生検後感染症関連の在院日数は 9.44 日から 0.89 日に減少した(平均差 -8.55、95%CI -12.31 ~ -4.79)。

結論
エルタペネムの予防投与は有効性が高く、抗菌薬の総消費量と入院患者在院日数の著しい減少をもたらした。効果的な予防投与は、抗菌薬適正使用の観点から見て優れている。

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監訳者コメント
コメント無し

アカントアメーバ・カステラーニ(Acanthamoeba castellanii)は多剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対する十分な塩素消毒の妨げになる

Acanthamoeba castellanii interferes with adequate chlorine disinfection of multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa

M.J. Sarink*, J. Pirzadian, W.A. van Cappellen, A.G.M. Tielens, A. Verbon, J.A. Severin, J.J. van Hellemond
*Erasmus MC University Medical Center, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 490-494

ヴェローナ・インテグロン由来メタロβ–ラクタマーゼ(VIM)陽性緑膿菌は、治療が困難な院内感染症の原因菌であり、Acanthamoeba 属と共に病院の給水ネットワークに定着しうる。VIM 陽性緑膿菌はA. castellanii の細胞内に寄生することで、現在使用されている病院消毒薬による死滅を回避できるかどうかを調べるために、in-vitro 消毒モデルを開発した。A. castellanii の存在により、30 秒または 2 分間の塩素曝露後の VIM 陽性緑膿菌の生存率が有意に増加することが観察された。この望ましくない影響は、70%アルコールまたは 24%酢酸による消毒後には認められなかった。共焦点顕微鏡により A. castellanii の偽性嚢胞内に VIM 陽性緑膿菌の存在が確認された。本研究のデータから、A. castellanii は、塩素処理後の給水システムにおけるVIM 陽性緑膿菌の持続的な定着の一因となることが示された。

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監訳者コメント
コメント無し

カルバペネム耐性腸内細菌目細菌の保菌者における選択的消化管除菌の院内方針の有効性:前向き前後比較研究

Efficacy of a hospital policy of selective digestive decontamination for carbapenem-resistant Enterobacterales carriers: prospective before-after study

H. Bar-Yoseph*, C. Lulu, S. Shklar, A. Korytny, R. Even Dar, H. Daoud, K. Hussein, Y. Bar-Lavie, A. Jabareen, Y. Geffen, M. Paul, on behalf of the SHAPER Investigators
*Rambam Health Care Campus, Israel

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 495-499

カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)の保菌者に実施される選択的消化管除菌(ゲンタマイシン/アミカシンとネオマイシンとの併用)に関する院内方針により、保菌期間が短縮され、CRE の蔓延が阻止されるかどうかを評価するために、単一施設での中断時系列デザインによる準実験研究を実施した。観察期間(12 か月、患者 120 例)と介入期間(12 か月、患者 101 例)との間で、CRE 根絶までの期間に有意差は認められなかった。介入期間における新規の院内 CRE 獲得または菌血症の傾向に変化はみられなかった。このように、CRE 保菌者に対する選択的消化管除菌の実施は、保菌の根絶または CRE 院内伝播の制御のために有効ではなかった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
CRE 保菌者に対する選択的消化管除菌に関する研究である。アミノグリコシド+ネオマイシンの併用では保菌根絶や伝播の制御に有効ではなかったとのことである。研究の結論としては、選択的消化管除菌は最近のガイドライン通り推奨されず、糞便移植など他の方法が試みられるべきだとしている。

基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生腸内細菌目細菌を保菌した集中治療室患者における入室期間の自然除菌

Spontaneous decolonization during hospitalization in intensive care unit patients colonized by extended-spectrum beta-lactamase-producing Enterobacterales

C. Duployez*, F. Wallet, A. Rouzé, S. Nseir, E. Kipnis, A. El Kalioubie, R. Dessein, C. Loïez, R. Le Guern
*University of Lille, France

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 500-503

本研究の目的は、基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生腸内細菌目細菌(ESBL-E)を保菌する集中治療室患者を対象とした週 1 回の ESBL-E 直腸保菌スクリーニングを継続することの付加価値を評価するために、これらの患者における自然除菌率を分析することである。12 年間にわたり患者 20,846 例から週 1 回採取した計 49,468 の直腸スクリーニング検体を含めた。少なくとも 3 回連続で検体が陰性を示し、入院の終わりに除菌と判定されたのは、 ESBL-E 保菌者 4,280 例中 109 例(2.5%)にすぎなかった。全体で、ESBL-E 保菌者として既に特定された患者の 7,957 検体(16.1%)の検査が依頼された。ESBL-E 保菌の陽性所見が得られた後に、不要な週 1 回のスクリーニングを避けることで、看護や検査室での作業の負担を減らせるであろう。

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監訳者コメント
ESBL 産生腸内細菌目細菌の保菌検査を行っている施設はその方法を見直す上で一読すると良いだろう。保菌者に対して毎週スクリーニングするのは無駄が多いようだ。

N95 および SN95 マスクの汚染除去のための消毒薬の有効性と安全性:システマティックレビュー

Efficacy and safety of disinfectants for decontamination of N95 and SN95 filtering facepiece respirators: a systematic review

K. O’Hearn*, S. Gertsman, R. Webster, A. Tsampalieros, R. Ng, J. Gibson, M. Sampson, L. Sikora, J.D. McNally
*Children’s Hospital of Eastern Ontario Research Institute, Canada

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 504-521

背景
医療従事者のためのマスクの汚染除去と再利用は、世界的なパンデミック中のマスクの供給不足に対処するための有望な解決策の 1 つである。

目的
本レビューの目的は、N95 マスクの汚染除去のための化学消毒薬使用の有効性と安全性に関する既存のデータを統合することであった。

方法
Embase、Medline、Global Health、Google Scholar、WHO feed、MedRxiv を用いて N95 マスクの汚染除去のための消毒薬に関するシステマティックレビューを実施した。2 名の評価者が独立して研究の適格性を判定し、事前に設定したデータフィールドを抽出した。N95 マスクの機能、汚染除去、安全性または消毒薬による汚染除去後のマスクの密着性に関して報告した原著論文を対象とした。

結果と結論
過酸化水素(H2O2)蒸気は 1 回のサイクルで通気抵抗または密着性に影響することなくウイルス性病原体の除去に成功し、元々のフィルター透過率 5%未満を維持し、マスクの外観をほとんど変化させない。汚染除去後に残留している過酸化水素のレベルは安全な範囲内であった。H2O2 蒸気による 1 回を超えるサイクルの汚染除去は可能かもしれないが、上限を設定する前に、実臨床において複数回のサイクルがマスクの密着性にどのように影響する可能性があるかについてのさらなる情報が必要である。過酸化水素溶液への浸漬はマスクの機能に悪影響を及ぼすようには思われないが、マスクから感染性病原体を除去する能力やマスクの密着性への影響に関する入手可能なデータはない。次亜塩素酸ナトリウム、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレンオキシドは安全性への懸念またはマスクの機能に対する悪影響により推奨されない。

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監訳者コメント
N95 マスクの消毒において、H2O2 蒸気の有用性を示したシステマティックレビューである。

術後感染症と乳癌再発との関係

The relationship between post-surgery infection and breast cancer recurrence

R.í. O’Connor*, P.A. Kiely, C.P. Dunne
*University of Limerick, Ireland

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 522-535

乳癌は世界的に女性において 2 番目によく見られるがんであり、依然として手術が標準的治療法のままである。手術の悪影響についてはいまだ議論の余地がある。術後期の全身性要因、特に手術部位感染症(SSI)が再発リスクを上昇させる可能性が示唆されてきた。本レビューの目的は、初回の乳癌手術後の SSI が乳癌再発に及ぼす影響に関する現在の公表文献を批判的に評価すること、ならびにこれらが関係している可能性について掘り下げて調査することであった。本システマティックレビューでは、初回の乳癌手術後の SSI の発生率と SSI に関連するリスク因子を明らかにすること、次に SSI 発生後の乳癌再発を調査することという 2 つのアプローチを採用した。SSI に焦点を絞った検索では患者 484,605 例の 99 件の研究が適格であり、再発に焦点を絞った検索では患者 17,569 例の 53 件の研究が適格であった。SSI の発生率の平均は 13.07%であった。638 のグラム陽性分離株と 442 のグラム陰性分離株が同定され、最も高頻度に同定されたのはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(methicillin-susceptible Staphylococcus aureus)と大腸菌(Escherichia coli)であった。再発症例は 2,077 例(11.8%)であり、局所再発は 563 例、遠隔再発は 1,186 例、局所と遠隔の両方で再発した症例は 25 例であった。5 件の研究が SSI と乳癌再発との関連性を検討し、3 件が関連性があると結論づけた。結論として SSI とがんの有害転帰の間には関連性があるが、それらの間の細胞レベルの関係は依然として分かりにくいままである。後向きの研究デザインの交絡因子、手術の種類および SSI の定義が結果を比較・解釈しづらくしている。適切な検出力のある標準化された前向き研究が正当である。

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監訳者コメント
本論文には非常に長いイントロダクションが付いている。癌手術における術後感染症が、癌の再発につながるという理論的根拠が書かれている。SSI が癌の再発につながるという議論は今回初めて知ったので、大変興味深い内容であったが、それを支持するデータはまだ少ないようである。

マイクロ波および熱による N95 マスクの汚染除去:システマティックレビュー

Microwave- and heat-based decontamination of N95 filtering facepiece respirators: a systematic review

S. Gertsman*, A. Agarwal, K. O’Hearn, R. Webster, A. Tsampalieros, N. Barrowman, M. Sampson, L. Sikora, E. Staykov, R. Ng, J. Gibson, T. Dinh, K. Agyei, G. Chamberlain, J.D. McNally
*CHEO Research Institute, Canada

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 536-553

背景
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のようなパンデミックでは個人防護具の不足がよく起こる。解決策の 1 つはマスクのような用具を再利用のために汚染除去することであろう。

目的
マイクロ波および熱による処理を用いた N95 マスクの汚染除去に関する既存の情報を、マスクの機能(エアロゾル透過率、通気抵抗)、密着性および物理的特性への影響に特に注意を払って収集・統合すること。

方法
Medline、Embase、Global Health および他の情報源より入手可能な文献のシステマティックレビュー(PROSPERO CRD42020177036)を実施した。記録は 2 名の評価者が独立してスクリーニングを行い、マイクロ波または熱による汚染除去が N95 マスクの性能、密着性、物理的特性および/または微生物量の減少に及ぼす影響に関して報告した研究からデータを抽出した。

結果
マイクロ波の乾燥または湿潤照射、熱または高圧蒸気滅菌を用いた 13 件の研究が含まれた。十分な期間(>マイクロ波 30 秒、>乾熱 60 分)適用した場合、全種類の処理が病原体の量を対数減少値で 3 以上減少させ、ほとんどの研究はウイルス性病原体を評価したものであった。
マスクの機能(エアロゾル透過率< 5%、通気抵抗< 25 mmH2O)は高圧蒸気滅菌を除くすべての処理の後も維持された。全種類の処理が 1 つ以上のモデルに目に見える物理的損傷を与えたものの、N95 モデルの大部分で密着性が維持された。

結論
マイクロ波照射および熱は N95 マスクの危機的な不足時の再利用において、安全で効果的なウイルス除去の選択肢である可能性がある。本エビデンスは高圧蒸気滅菌または 90°Cを超える高熱の手法を裏付けるものではない。物理的劣化は特定のモデルのマスクでは問題となる可能性があり、密着性に関するさらなる実臨床でのエビデンスが必要である。

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監訳者コメント
N95 マスクの再利用におけるマイクロ波照射および熱の有効性に関するシステマティックレビューである。しかし当然ながらマスクの劣化の問題が大きいようである。

クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症による医療サービスへの費用負担:スコットランドにおける後向きコホート研究★★

Cost burden of Clostridioides difficile infection to the health service: A retrospective cohort study in Scotland

C. Robertson*, J. Pana, K. Kavanagh, I. Ford, C. McCowan, M. Bennie, C. Marwick, A. Leanord
*University of Strathclyde, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 554-561

背景
クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症(CDI)は、医療需要を高め関連費用を増大させる。

目的
スコットランドの国民保健サービス(NHS)において、市中関連 CDI または病院関連 CDI を有する入院患者の医療負担および経済的負担を評価すること。

方法
後向きコホート研究を実施し、2010 年 8 月から 2013 年 7 月のスコットランドにおける患者レベルの、死亡データとリンク付けされた4 つのデータセットのデータを検討した。検討したデータは、市中における過去の抗菌薬処方、入院、入院期間および死亡などであった。各 CDI 症例は、年齢、性別、病院および入院日に基づいて、病院ごとに対照 3 例とマッチされた。記述的な経済的評価は、異なる病棟ごとの病床日あたりの費用に基づいて行った。

結果
全体で、CDI 症例 3,304 例を本研究に組み入れた。CDI は、入院期間中央値について、それぞれのマッチされた対照者と比較して、市中関連 CDI 入院患者では 7.2 日、病院関連 CDI 入院患者では 12.0日の増加と関連した。30 日死亡率は、市中関連 CDI 入院患者では 6.8%、病院関連 CDI 入院患者では 12.4%であった。全体で、初回 CDI エピソードから 90 日以内の再発は、生存者 2,740 例中 373 例(13.6%)であった。各初回 CDI 症例における費用中央値は、マッチされた対照者と比較して1,713 ポンド増加した。CDI による初回入院後 6 か月以内では、CDI 症例に関連した費用は対照者と比較して 5,126 ポンド高かった。

結論
ルーチンで収集される全国データを用いて、著者らは CDI が医療サービスに大きな負担をもたらしていることを示した。こうした負担には、長期の入院期間および再入院が含まれ、これにより、CDI 患者の管理費用にはマッチされた対照者と比較して増大が認められた。

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監訳者コメント
日本では市中関連 CDI はまだ大きな問題にはなっていないが、北米および EU 地域では市中関連 CDI も重要である。本論文では、入院 2 日以内に採取した便で CDI と診断されたものを「市中関連(病院発症)CDI」とし、入院 3 日目からの採取した便では「病院関連(病院発症)CDI」と定義しているが、これは ECDC (欧州CDC)の定義(退院後 4 週間以内の発症は病院関連としているため、市中関連が多めになる可能性あり)とは異なるため、比較の場合に注意が必要である。いずれにしても CDI は医療コストの増加を導くことに間違いはなく、医療サービスへの大きな負担となる。

病院管理データを用いた受動的モニタリングツールは、医療関連感染症の特異的な早期検出を可能にする

A passive monitoring tool using hospital administrative data enables earlier specific detection of healthcare-acquired infections

J. Rewley*, L. Koehly, C.S. Marcum, F. Reed-Tsochas
*National Institutes of Health, USA

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 562-569

背景
医療関連感染症は医療システムに大きな負担をもたらしている。医療関連感染症を検出するための現在の方法には、高額な費用、長い処理時間、および正確度が不十分なことが組み合わされることによる限界があり、その有効性は限られる。

方法
本研究では、患者が、感染症が臨床的に疑われる他の患者と同じ病棟で過ごす時間(「空間共有」と呼ぶ)を、その後の院内関連感染症を予測するためのツールとして用いることが可能かどうかを検討した。接触者追跡と比較して、この方法は手動で収集したデータではなく、受動的に収集された電子データを利用することにより、モニタリングの性能を向上させる。2011 年から 2015 年について、全入院患者の記録 133,304 件を英国の医療システムから抽出した。5 種類の病原体のそれぞれについて、共存時間、検査の感度および特異度、ならびに早期の空間共有がどれだけ真陽性症例として感染症を予測するかに基づいて、受信者動作特性曲線下面積(AUROC)を算出した。

結果
5 種類の病原体について、AUROCは 0.92 ~ 0.99 の範囲であり、陰性対照については 0.52 であった。空間共有の至適カットポイントは、25 ~ 59 時間の範囲であり、最速で平均 1 日早く真陽性症例を検出することにつながったと考えられる

解釈
これらの所見から、空間共有時間は医療関連感染症の検出に有用となる可能性があると考えられ、現在の標準医療よりも早期に検出できる可能性が示されている。この指標を院内でリアルタイムのデータに基づき前向きに用いることで、個々の感染患者をより早期に治療すること、初発感染患者に由来する潜在的な二次感染を予防することが可能となり、その後の感染症は抑制可能できると考えられる。

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監訳者コメント
院内感染による追加費用は英国では 1 例あたり約 40 万円、年間 1,200 億円の医療費増と見積もられている。現状での感染者の特定(接触者調査)は、微生物学的検査での時間的側面、検査の特異性や精度面において十分とは言えない。それを補うために電子データ(電子カルテ等)を利用した「空間共有」(同室・同一病棟)の情報を利用することで、接触状況を早期に察知し、潜伏している二次感染者を発見することが可能となり、感染制御の面と医療コストの両面において有用である可能性がある。今後のさらなる検証が必要である。

人工換気または高流量酸素療法を要する重症肺炎を有する COVID-19 患者の隔離室における環境汚染★★

Environmental contamination in the isolation rooms of COVID-19 patients with severe pneumonia requiring mechanical ventilation or high-flow oxygen therapy

J.Y. Ahn*, S. An, Y. Sohn, Y. Cho, J.H. Hyun, Y.J. Baek, M.H. Kim, S.J. Jeong, J.H. Kim, N.S. Ku, J.-S. Yeom, D.M. Smith, H. Lee, D. Yong, Y.-J. Lee, J.W. Kim, H.R. Kim, J. Hwang, J.Y. Choi
*Yonsei University College of Medicine, Republic of Korea

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 570-576

背景
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)による環境汚染の程度を明らかにすることは、感染予防・制御にとって不可欠である。環境汚染の程度は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、これまで十分に研究されていない。

目的
人工換気または高流量酸素療法を要する重症 COVID-19 患者の隔離室における SARS-CoV-2 による環境汚染について検討すること。

方法
重症肺炎を有する COVID-19 患者 3 例の隔離室において環境スワブサンプルおよび空気サンプルを採取した。患者 1 および患者 2 は閉鎖吸引システムによる人工換気を受けていた一方、患者 3 は高流量酸素療法および非侵襲的人工換気を受けていた。逆転写リアルタイム PCR を用いて SARS-CoV-2 の検出を行い、逆転写リアルタイム PCR で陰性でなかったサンプルについてウイルス培養を行った。

結果
患者 1 および患者 2 の病室で採取されたスワブサンプル 48 個のうち、気管内チューブの外側表面から採取したサンプルのみが逆転写リアルタイム PCR で SARS-CoV-2 陽性であった。しかし、患者 3 の病室では、環境サンプル 28 個(媒介物、固定構造物、および天井の換気装置排気口)のうち 13 個が陽性結果であった。空気サンプルは SARS-CoV-2 陰性であった。生きたウイルスは、患者 1 の気管内チューブ、および患者 3 の病室の 7 カ所で認められた。

結論
SARS-CoV-2 による環境汚染は、ウイルス伝播の経路となっている可能性がある。しかし、患者が閉鎖吸引システムによる人工換気を受けている場合は、環境汚染はわずかである可能性がある。これらの所見は、個人防護具の安全な使用を目的としたガイドラインのためのエビデンスを提供し得る。

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監訳者コメント
患者数がわずか 3 例で、そのうち高流量酸素療法が 1 例であること、さらに「RT-PCR 検査陽性イコール感染性あり」を意味するものではないため、その解釈に注意が必要である。しかしながら、高流酸素投与患者からは複数箇所から同時にウイルス培養も陽性となっており、高流量酸素投与下ではエアロゾル発生による新型コロナウイルスの環境汚染が発生し、医療従事者への感染の可能性を否定することはできない。したがって、N95 マスク着用を含む防護具の適切な使用と環境整備の徹底を再強化する必要である。一方で、床のウイルス検出は直接感染とは関連しないと考えられる。

SARS-CoV-2 代用ウイルスで汚染されたサージカルマスクおよびN95 相当レスピレータの汚染除去をするための殺菌用紫外線、過酸化水素蒸気、および乾式加熱の使用

The use of germicidal ultraviolet light, vaporized hydrogen peroxide and dry heat to decontaminate face masks and filtering respirators contaminated with a SARS-CoV-2 surrogate virus

L.F. Ludwig-Begall*, C. Wielick, L. Dams, H. Nauwynck, P-F. Demeuldre, A. Napp, J. Laperre, E. Haubruge, E. Thiry
*Liège University, Belgium

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 577-584

背景
現在進行中の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)パンデミックを背景として、個人防護具の供給が依然として大きく抑制されている。この問題に取り組むため、サージカルマスクおよび N95 相当レスピレータの再使用が推奨されている。これらのマスクにおいて、再使用前の汚染除去は、再使用するにあたり不可欠である。

目的
著者らは、3 種類の汚染除去法によりブタ呼吸器コロナウイルス(PRCV)で汚染させたサージカルマスクおよび N95 相当レスピレータで得られる効果に関する情報を提供することで、通常単回使用のみのこれら製品に対する感染性コロナウイルスによる汚染除去のための安定したモデルを提示することを目的とした。

方法
サージカルマスクおよび N95 相当レスピレータのサンプル片およびストラップに感染性 PRCV を播種し、3 種類の汚染除去処理、すなわち紫外線照射、過酸化水素蒸気、および乾式加熱による処理を行った。ウイルスの回収をサンプル材料から行い、ウイルス力価をブタ精巣細胞で測定した。

結果
紫外線照射、過酸化水素蒸気、および乾式加熱により、感染性 PRCV にサージカルマスクおよび N95 相当レスピレータのサンプル片で 3 桁を超える減少がみられ、すべての汚染除去検査において検出不能となった。

結論
本稿は、感染性の SARS-CoV-2 代用ウイルスにより汚染されたサージカルマスクおよび N95 相当レスピレータに対して、紫外線照射、過酸化水素蒸気、および乾式加熱を用いた処理により安定した汚染除去効果が得られた初の報告である。これら 3 種類の方法により、感染性コロナウイルスに 3 桁を超える減少がみられることを示すことができ、この結果はサージカルマスクおよび N95 相当レスピレータに関する米国食品医薬品局(FDA)の方針に沿ったものである。本稿は操作の簡易性と、BSL2 実験室で使用できるという利点を示しており、したがって他の種類のサージカルマスクやマスクにも適用が容易である。

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監訳者コメント
本論文では、フェイスマスクと N95 相当レスピレータの紫外線照射、過酸化水素蒸気、および乾式加熱による汚染除去効果について検討され、その有効性が確認されているが、これらの処理後のマスクの防御性能についての評価や何度までこの工程が実施可能なのかについては検討されていない。すでに N95 については再使用方法が厚労省より提示されている(https://www.mhlw.go.jp/content/000621007.pdf)が、サージカルマスクの再使用については現時点では推奨されていない。
訳者注)Filtering Facepiece Respirator とは、米国 N95 または EU 規格 FFP2、FFP3 を指す、ここでは「N95 相当レスピレータ」と訳している。

ヒータークーラーユニットの消毒時における非結核性抗酸菌の根絶失敗:イタリア北西部における微生物学的研究の結果

Failure to eradicate non-tuberculous mycobacteria upon disinfection of heaterecooler units: results of a microbiological investigation in northwestern Italy

S. Ditommaso*, M. Giacomuzzi, G. Memoli, C.M. Zotti
*University of Turin, Italy

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 585-593

背景
心肺バイパス時に用いられるヒータークーラーユニットには、マイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)などの非結核性抗酸菌(NTM)が定着することがある。最近、入院感染患者を対象とした世界規模の研究から、LivaNova が製造したいくつかのStockert 3T ヒータークーラーユニットで M. chimaera が検出された。

目的
Stockert 3T(LivaNova)および Maquet HCU40(Getinge)の両デバイスに対する微生物学的サーベイランス、ならびにこれらのデバイスで推奨されている汚染除去プロトコールの有効性についての評価。

方法
水サンプル計 308 個がヒータークーラーユニット 29 個 で採取され、サンプル 264 個は 3T ヒータークーラーユニットデバイス 17 個から、サンプル 44 個は Maquet HCU40 デバイス 12 個からであった。これらのサンプルについて、22°Cおよび 36°Cの両方における総生菌数、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌群、および NTM について検査を行った。微生物学的サーベイランスは 2017 年 6 月に開始し、2019 年 10 月まで継続した。

結果
ヒータークーラーユニットの水サンプル計 308 個を分析し、うち 65.5%で NTM が回収された。NTM の定着頻度が最も高かったデバイスは Stockert 3T(88.2%)で、陽性サンプルの頻度は 59.5%(264 個中 157 個)であった。Maquet HCU40 デバイスでは、NTM の回収頻度はより低く(33.3%)、陽性サンプルの頻度は 13.6%(44 個中 6 個)であった。消毒手順は、NTM 種を除き、総生菌数の低減において効果的であった。NTM は、消毒前(50.1%)および消毒後(55.7%)の両方のサンプルで検出され、Stockert 3T および Maquet HCU40 の両デバイスにおいて、消毒と NTM の結果との間に有意な関連は認められなかった。

結論
本研究から、製造者の消毒手順は非効果的および/または不十分であることが示唆される。効果的な消毒プロトコールが利用可能になるまでは、NTM による汚染リスクを抑えるための唯一の方法は、ヒータークーラーユニット内の水の質を綿密にモニタリングすること、水を可能な限り清潔に保つこと、そして水を他のバイオハザード物質と同様に扱うことである。

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監訳者コメント
胸部心臓外科手術において使用されるヒータークーラーユニットは、患者体温、心臓保護液、人工心肺の加温と冷却をおこなう装置であり、本来閉鎖回路であることから回路内の水が患者の血液や体内に侵入することはない。しかしながら、これらの回路内の水が非結核性抗酸菌汚染されていることが明らかとなり、その結果、1/100 から 1/1000 の確率で術後の感染症が発生することが報告されている。その原因としてはこれらの循環水のエアロゾル化により、手術野が抗酸菌により汚染され、感染症が発生し、最大 50%の死亡率があるとされている。M.chimaera は環境に広く分布しており、汚染が容易に発生しうる可能性があるため、米国疾病予防管理センター(CDC)と米国食品薬品局(FDA)および欧州疾病予防管理センター(ECDC)はこの装置の保守管理を製造メーカーの指示に従うことを推奨している。

血液悪性腫瘍に対して化学療法を受けている患者の疥癬に対する感受性

Susceptibility of patients receiving chemotherapy for haematological malignancies to scabies

H. Hosoi*, S. Nishikawa, Y. Kida, T. Kishi, S. Murata, M. Iwamoto, Y. Toyoda, Y. Yamada, T. Ikeda, T. Sonoki
*Kainan Municipal Medical Center, Japan

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 594-599

背景
疥癬は感染性の皮膚炎である。疥癬伝播のリスク因子は、依然として明らかでない。疥癬のアウトブレイクが、血液悪性腫瘍に対して化学療法を受けている患者も含め、当院で発生した。

方法
アウトブレイク集団を分析して、血液悪性腫瘍に対して化学療法を受けている接触患者において疥癬の発生率が高いかどうかを明らかにした。

結果
角化型疥癬患者 1 例が初発症例で、医療従事者の接触者 78 例中 18 例および接触患者 135 例中 22 例が通常疥癬と診断された。血液悪性腫瘍を有する接触患者 17 例中 10 例および他の疾患を有する接触患者 118 例中 12 例が、疥癬に感染した。感染発生率は、血液悪性腫瘍を有する患者のほうが有意に高かった(P < 0.001)。血液悪性腫瘍を有する患者は、他の疾患を有する患者と比べて、平均最小好中球数が有意に低かった(1,159/μL 対 3,761/μL、P = 0.0012)。ほとんどの血液悪性腫瘍患者は特別な看護介助を必要とせず、このことから、これらの患者で疥癬の発生率が高かったのは感染した医療従事者との接触によるのではなく、免疫不全によることが示唆された。

結論
本研究から、血液悪性腫瘍に対して化学療法を受けている患者は、他の疾患を有する患者と比べて疥癬に罹りやすく、より厳格な防御策が必要であることが示唆される。

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監訳者コメント
疥癬は、感染した患者の皮膚との直接的または間接的接触により感染するという経路をもつ。感染リスクについては HIV 感染症における CD4 数や長期ステロイド服用はすでに報告されているが、決して十分に検討されてるとは言えない。本論文では血液悪性腫瘍患者におけるホスト側の免疫低下、特に好中球減少とリンパ球減少がリスク因子であることが確認された。これらの血球減少の事象は、今日多くの化学療法患者において日常的に発生しており、今後注意が必要である。さらに早期診断が難しいことも施設内での感染拡大の原因となる。

造影コンピュータ断層撮影検査前の安全な注射手技の不履行に起因する C 型肝炎ウイルス感染のアウトブレイク

Outbreak of hepatitis C virus infections originating from a breach in safe injection practices before contrast-enhanced computed tomography scanning

C. Balmelli*, G. Merlani, G. Martinetti, D. Reinholz, S. Paolucci, F. Baldanti, A. Piralla, F. Del Grande, E. Bernasconi
*Ente Ospedaliero Cantonale, Switzerland


Journal of Hospital Infection (2020) 106, 600-604

造影コンピュータ断層撮影(CT)検査を受けた患者 4 例が、汚染された塩化ナトリウムの複数回投与バイアルから C 型肝炎ウイルスに感染した。本アウトブレイクは安全な注射手技の不履行が原因で発生し、バイアルの汚染を引き起こした可能性が高い。同じバイアルに曝露された患者全員が感染したわけではない。感染の不均等な分布は低い感染用量の確率的影響に起因する可能性がある。このことによって、アウトブレイク調査は院内感染の確認または除外のために最初に特定された感染患者の前後に予定が組まれたすべての患者にまで広げる必要があることが示唆される。

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監訳者コメント
血液媒介感染症は複数回投与バイアルの使用が感染リスクとなるが、単回投与の重要性が改めて認識できる報告である。

COVID-19 パンデミック下の救命救急環境における長袖ガウンによる意図しない結果★★

Unintended consequences of long-sleeved gowns in a critical care setting during the COVID-19 pandemic

M. Meda*, V. Gentry, P. Reidy, D. Garner
*Frimley Park Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 605-609

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックのピーク時に、手指衛生監査により人工呼吸器を装着された COVID-19 患者を収容した 12 床の救命救急病棟において手指衛生遵守率が低いことが示された。そこでは、スタッフは個人防護具(PPE)として、Public Health England の推奨に従って長袖ガウンの患者ケア時における使用などを行っていた。無菌部位から腸内グラム陰性菌が分離された患者数の増加に伴って、3 件の中心静脈カテーテル(CVC)関連感染症のクラスターも発生した。患者周囲表面および高頻度接触部位の環境サンプリングから、COVID-19 救命救急病棟では面積の 11.5%が腸内グラム陰性菌により汚染されていたのに対し、COVID-19 一般病棟および非 COVID-19 一般病棟の汚染率はそれぞれ 2.6%および 2.7%であったことが示された。リスク評価を行った後、病院の方針を変更して、長袖ガウンに代えて半袖ガウンを使用することとした。救命救急病棟において、次亜塩素酸塩ベースの消毒薬を用いた清掃の強化と、8 日後に再サンプリングを実施した。再サンプリングの結果、救命救急病棟ではグラム陰性菌は分離されなかった。このようなPPEの変更後、手指衛生遵守率は、ベースラインの基準レベルに回復し、新たな CVC 関連感染症は同定されなかった。スタッフは、半袖ガウンのほうを好むと報告した。現在、パンデミックインフルエンザに対して推奨されている PPE(呼吸器防護具+標準 PPE)以外の使用が、医療従事者においてSARS-CoV-2 に対する防御効果を高めるというエビデンスは存在しない。長袖ガウンは、効果的な手指衛生を実施している医療従事者を防御する。医療従事者が十分に防御されることは不可欠である一方、患者を感染症の危険から防御することも同様に重要である。PPE に関連するリスクを確立して、現行のガイダンスを見直すための情報を得るためには、さらなる研究が必要である。

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監訳者コメント
本報告より長袖ガウンは手袋を外した後の医療従事者が手指衛生をする際の障壁になることがわかる。SARS-CoV-2 への曝露予防には長袖ガウンが一般的に推奨されているが、他の感染症予防の観点も含めて、半袖エプロンの使用も総合的に考える必要がある。是非、本論文を一読されたい。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症:医療環境におけるトレーニングとソーシャル・ディスタンシングの提唱

SARS-CoV-2 infection: advocacy for training and social distancing in healthcare settings

A. Gagneux-Brunon*, C. Pelissier, J. Gagnaire, S. Pillet, B. Pozzetto, E. Botelho-Nevers, P. Berthelot
*University Hospital of Saint-Etienne, France

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 610-612

本論文では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の治療専用病棟で働く医療従事者において観察された新型コロナウイルスへの感染率を、非 COVID-19 病棟で働く医療従事者と比較して報告する。非 COVID-19 病棟で働く医療従事者の感染率は有意に高く(オッズ比 2.3、P = 0.005)、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離確保)の方策とトレーニングを強化する必要性が示された。

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監訳者コメント
COVID-19 病棟で働く医療従事者より非 COVID-19 病棟で働く医療従事者の方が感染率が高いという報告。この研究でも COVID-19 患者のケア自体が医療従事者の SARS-CoV-2 感染の危険因子ではなく、トレーニングとソーシャル・ディスタンシングの強化が重要であることがわかる。

チルドビーム技術に関連する感染管理リスクの可能性:英国の病院での経験

Potential infection control risks associated with chilled beam technology: experience from a UK hospital

T. Inkster*, C. Peters, H. Soulsby
*Queen Elizabeth University Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 613-616

エネルギー効率化技術は今や病院設計における特徴の 1 つであり、その一例として世界中で使用されているアクティブチルドビームがある。そのような技術革新は明白な利点があるが、あらゆる感染管理リスクに関しては情報が不足している。我々は清掃および結露を含む水の侵入エピソードに関する課題に直面した当病院の 1 施設でのチルドビーム技術の経験を示す。新技術と適切なリスク軽減の実施との関連で、感染管理リスク評価の重要性を明らかにする。

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監訳者コメント
チルドビームはファンを持たない空調機器で、少ないエネルギーで空間全体を空調できる。省エネだけでなく、運転音がなく静かであるが、結露と清浄度の維持の問題があり、蓄積されたほこりから結露がしたたる時に大きなリスクをもたらす。チルドビームの管理の重要性が理解できる。

COVID-19によるロックダウン時における医療従事者によるフェイスマスクの着用:フランスのメディアを介して一般市民はどうみたか?

Wearing of face masks by healthcare workers during COVID-19 lockdown: what did the public observe through the French media?

J. Picard*, G. Cornec, R. Baron, P. Saliou
*Brest Teaching Hospital, France

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 617-620

フェイスマスクの着用は、COVID-19 パンデミックの拡大と闘う上で、重要な問題である。フランスの一般住民は、通常は医療従事者で専用に用いられるこの個人防護具を、その正しい使用法を教えられないまま、広く着用し始めた。人々は、メディアで見たことに基づいて行動する。しかし、今回のパンデミック中にメディアで公表された医療従事者のマスク着用について、フランスの主要な情報サイトの一部から収集した写真によると、適切使用基準を満たしていたのは 70.8%のみであったことを、我々は見出した。保健当局は、フェイスマスク着用の適切な使用について、一般住民に広く伝えるべきである。

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監訳者コメント
一般住民が感染予防としてマスクを着用する慣習がないフランスでの報告。一般住民の範となるべき医療従事者で、適切なマスクの着用が約 70%しかなかったそうだが、日本で調べてみるとどうなるだろうか。

院内感染 COVID-19:ロンドン南西部の大規模急性期国民保健サービス(NHS)トラストにおける経験

Nosocomial COVID-19: experience from a large acute NHS Trust in South-West London

J. Taylor*, J. Rangaiah, S. Narasimhan, J. Clark, Z. Alexander, R. Manuel, S. Balasegaram
*Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 621-625

医療環境における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の伝播は、患者と医療従事者にとって重大な影響を及ぼし、局地的アウトブレイクを増幅させる可能性があり、すでに余裕のないリソースに対してさらなる負担をもたらす可能性がある。COVID-19 の診断における見逃しまたは遅れのリスクは、英国における最初の「封じ込めフェーズ」の間に高かったが、それは検査を行う基準が厳格であったためである。無症状/発症前の患者からの伝播に加えて、臨床検査が直面する課題が伴い、そうしたリスクが依然として残っている。筆者らは、ロンドン南西部の大規模急性期国民保健サービス(NHS)トラストにおける COVID-19 の初発症例に関連して発生した可能性のある院内伝播について症例研究を提示し、広がりつつある院内感染による負担について記述する。

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監訳者コメント
COVID-19 の院内感染対策は日本でも課題であり、無症状/発症前の感染者から伝播するCOVID-19 において、検査を行う基準は緩めに考えていたほうがよいと思われる。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.