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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

コロナウイルスの影響により一部、監修者のコメントおよびレーティングを未監修のまま掲載しておりますので、ご了承ください。

SARS-CoV-2 の潜在的な感染源・伝播様式・制御策の有効性

Potential sources, modes of transmission and effectiveness of prevention measures against SARSCoV-2

G. Kampf*, Y. Brüggemann, H.E.J. Kaba, J. Steinmann, S. Pfaender, S. Scheithauer, E. Steinmann
*University Medicine Greifswald, Germany

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 678-697

現在の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス‐2(SARS-CoV-2)のパンデミック期間に、感染源・伝播リスク・制御策の可能性について新規情報を日々提供する、これまでにない研究が報告されている。本レビューの目的は、SARS-CoV-2 の潜在的な感染源に関する現時点でのエビデンスを、伝播リスクおよび適用される制御策の有効性の評価も含め包括的にまとめることである。症状のある患者に次いで、無症状または発症前の保菌者は、ウイルス伝播の原因として可能性がもっとも高い呼吸器分泌物により感染源となりうる。空気および無生物表面が感染源となることもある。とはいえ、ウイルス RNA が常に検出されるとは限らない。同様に、SARS-CoV-2 RNA は個人防護具(PPE)の表面または内側、血液、尿、眼、消化管、ペットに検出されているにもかかわらず、現時点では、これらの感染源が伝播に及ぼす影響はごくわずかである考えられる。最終的に、医療施設や公共の場での手洗い、手指消毒、フェイスマスク、手袋、表面消毒、または物理的距離などのさまざまな制御策について、期待される予防効果を分析する。

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監訳者コメント
文献をもとに新型コロナウイルス感染症の感染源・伝播様式・制御策の有効性について評価を試みた論文である。情報が肥大化していて、研究デザインがまちまちであり画一的な特徴について論ずることが難しい。適切な概念を構築するには、質の高い論文が必要になる。

医療関連クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症を減少させるための環境清掃バンドルの効果:システマティックレビューおよびメタアナリシス

Effects of environmental cleaning bundles on reducing healthcare-associated Clostridioides difficile infection: a systematic review and meta-analysis

J.P.C. Chau*, X. Liu, S.H.S. Lo, W.T. Chien, X. Wan
The Chinese University of Hong Kong, China

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 734-744

医療施設および長期ケア施設におけるクロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)による環境汚染は、C. difficile 感染症(CDI)の伝播に重要な役割を果たしており、結果として、入院期間延長、死亡リスクの上昇、医療費増加につながる。環境清浄度を改善するために環境清掃バンドルが導入される。本研究の目的は、病院、地域社会、長期ケア施設に適用される環境清掃バンドルが、従来の清掃法と比較して医療関連 CDI の発生率を低下させるか否かを評価することである。関連するデータベース、ウェブサイト、臨床試験登録プラットフォームで検索した。2 名の評価者が独立して、研究のスクリーニングと選択、データ収集、バイアスリスクの評価、エビデンスの質の評価を実施した。Review Manager 5.3 を用いてメタアナリシスを実施した。適格な研究 10 報(ランダム化比較試験[RCT]1 報、非 RCT 9 報)を採用した。環境清掃バンドルが CDI 発生率に及ぼす有意な影響は認められなかった(リスク比[RR]= 0.96、95%信頼区間[CI]0.71 ~ 1.29、研究= 2 報、I2 = 49%、非常に低い質)。しかしながら、環境清掃バンドルの実施後、表面マーカーの除去は有意に改善され(RR = 1.55、95%CI = 1.30 ~ 1.84、研究= 3 報、I2 = 98%、非常に低い質)、C. difficile 培養陽性の CDI 病室の割合は有意に低下した(RR = 0.16、95%CI = 0.08 ~ 0.31、研究= 4 報、I2 = 7%、中等度の質)。したがって、環境清掃バンドルは、病院および長期ケア施設における環境表面の清掃の徹底を改善するのに有用であろう。より強力なエビデンスを得るために、優れた運営による RCT が期待される。

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監訳者コメント
CDI だけでなく、多剤耐性菌対策においても適切な院内環境の清浄度レベルの維持が重要である。環境清掃の作業員の作業内容に不徹底があると、院内伝播のリスクが上昇するため清掃員にはプロフェッショナルとしてのスキルが求められる。

病院感染肺炎および人工呼吸器関連肺炎の治療・管理について検討し評価する医療経済モデルのレビュー

Review of health economic models exploring and evaluating treatment and management of hospital acquired pneumonia and ventilator-associated pneumonia

A.P. Wagner*, V.I. Enne, D.M. Livermore, J.V. Craig, D.A. Turner, INHALE Study Group
*University of East Anglia, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 745-756

背景
病院感染肺炎(HAP)は入院から 48 時間以降に発生する肺炎で、死亡の一因となる院内感染症としてもっとも頻度が高い。人工呼吸器関連肺炎(VAP)は挿管から 48時間から 72 時間以降に発生する。VAP が HAP の一部であるか否かについて見解は異なるが、両方とも同じ病原体が優勢を占めている。VAP を発症していない対照と比較して、VAP 発症患者は死亡率が 2 倍であり、集中治療室への入室期間が有意に長い。ガイドラインでは、微生物培養を抗菌薬治療の指針とすることが推奨されているが、感度が不十分であり、培養のプロセスに 48 時間から 72 時間を要する。これは、初回治療が一般的に広域スペクトル抗菌薬による経験的治療になることを意味している。抗菌薬適正使用支援と患者のアウトカムの両方の改善が迫られている状況を踏まえて、英国国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Care Excellence)および米国感染症学会(Infectious Diseases Society of America)は、原因菌とその抗菌薬耐性を特定するための迅速な分子診断検査法の研究を推奨している。理想的には、これらが培養に取って代わり、より迅速で感度の高い検査法となるであろう。英国では、国立医療研究機構(National Institute for Health Research)により資金援助を受けた INHALE 研究プログラムにより、HAP/VAP の治療への情報提供を目的とした迅速分子診断について研究が進行しており、資源の意義を考慮して、医療経済的な要素を組み入れている。

目的
医療経済的な要素について情報を提供するために、HAP/VAP の費用に関する以前の経済モデルを特定すること。

方法
3 つのデータベースにより特定した経済モデルを含む HAP/VAP の研究に関する文献のレビュー。

結果
20 報の研究を特定した。診断の改善を図るための対策を具体的に評価した研究は 1 報のみで、残りの 19 報はこの重要な側面を評価していなかった。

結論
長期アウトカムおよび治療の複雑さへの意識の高まりにより、HAP/VAP の経済モデルは改善されるであろう。著者の知る限り、HAP/VAP の経済モデルに関して同様の文献レビューは発表されていない。

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監訳者コメント
医療経済的に医療関連感染が発生すると、如何に損失が大きいかについての研究がすすんでいる。具体的に医療関連感染の種別毎にそのリスク評価がなされることで、インセンティブが働き、改善プログラムが組みやすくなるだろう。

接触頻度の高い表面の銅による処理は医療関連感染を減少させるか?システマティックレビューおよびメタアナリシス

Does copper treatment of commonly touched surfaces reduce healthcare-acquired infections? A systematic review and meta-analysis

L. Albarqouni*, O. Byambasuren, J. Clark, A.M. Scott, D. Looke, P. Glasziou
*Bond University, Australia

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 765-773

背景
医療関連感染(HAI)は、かなりの罹患および死亡の原因である。銅は実験条件下では強い抗菌特性を示すようである。

目的
医療施設の接触頻度の高い表面における銅による処理が及ぼす効果の可能性を検討すること。

方法
標準的な病室に対して、銅による処理を施した病室の表面(家具またはベッド用のリネン)が HAI に及ぼす効果を比較した対照試験を、本システマティックレビューの対象とした。2 名の評価者が独立して、検索した論文のスクリーニング、データの抽出、採用した研究のバイアスリスクの評価を実施した。主要評価項目は HAI の発生とした。

結果
計 638 のタイトルおよびアブストラクトをスクリーニングし、12,362 例の患者が含まれる 7 報の研究を対象とした。対象としたすべての研究において、7 項目のうち 2項目以上でバイアスリスクが高いと判定された。7 報の研究はすべて、銅による処理が施されたさまざまな表面が HAI に及ぼす影響を報告していた。全体として、今回のレビューでは、銅による処理を施した硬表面および/またはベッド用のリネンや布製品は、HAI を 27%減少させる(リスク比 0.73、95%信頼区間[CI]0.57 ~ 0.94、I2 = 44%、P = 0.01)という、臨床的に重要となる可能性を示すエビデンスの質は低いことが認められた。

結論
HAI の臨床的・経済的な費用を考慮すると、銅による処理がもたらす予防効果の可能性は重要と考えられる。現行のエビデンスは、強い肯定的推奨をするには不十分であるが、銅による処理の影響に関して公的資金による大規模な臨床試験を実施することは、意義があり、急務であると思われる。

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監訳者コメント
銅や銀には微生物に対する効果がみられることは知られているが、特定の金属ですべての医療環境表面を覆うことはできない。また、頻回の接触や微生物負荷に加えタンパク質の付着など複合的な要因があるためその評価は難しい。

過酸化水素含有の含嗽液は殺ウイルス効果を示すか?システマティックレビュー

Do hydrogen peroxide mouthwashes have a virucidal effect? A systematic review

K.L. Ortega*, B.O. Rech, G.L.C. El Haje, C.B. Gallo, M. Pérez-Sayáns, P.H. Braz-Silva
*University of São Paulo, Brazil

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 657-662

背景
唾液中の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV2)の存在によって、医療従事者は、多くの手技で発生するエアロゾルによる汚染の可能性について注意喚起されている。病棟や集中治療室の入院患者において、唾液中の SARS-CoV-2 のウイルス量を口腔手技前に減らすために、1%過酸化水素含有の含嗽液の術前適応が、いくつかの例証によって著しく普及しており、このパンデミック期間の歯科治療プロトコールの作成において複数の歯科医師会に影響を及ぼしている。

目的
本研究の目的は、次の疑問に対する回答を得るためにシステマティックレビューを実施することである。過酸化水素含有の含嗽液(あらゆる濃度で)は殺ウイルス効果を示すか?

方法
Cochrane、LILACS、PubMed、Scopus、Embase のデータベースを、以下のキーワードを用いて検索した。「過酸化水素(hydrogen peroxide)」「含嗽液(mouthwash)」「含嗽液(mouth rinse)」「すすぐ(rinse)」「含嗽液(oral rinse)」「含嗽液(mouth bath)」「含嗽液(mouth wash)」「含嗽液(mouth washes)」。レビュー、エディターへのレター、個人的な見解、論文の章、症例報告、会議抄録、動物による研究、および過酸化水素以外の化合物含有の含嗽液に関する研究は除外した。

結果
初回の検索期間に、5 つの電子データベースで 1,342 報の論文を特定した。重複したいくつかを除外すると、976 報が残った。発行年月日にかかわらず、過酸化水素含有の含嗽液の殺ウイルス効果を評価した研究のみを選択した。

結論
タイトルと抄録を確認した結果、適格基準を満たす論文はなかった。結論として、唾液中の SARS-CoV-2 または他のあらゆるウイルスの量の制御を目的とした過酸化水素含有の含嗽液の適応を支持する科学的エビデンスはない。

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監訳者コメント
最近ポビドンヨードによる咳嗽うがいで一次的なウイルス活性が低減できることを示唆する知見もあるが、具体的にこうした歯科治療直前の予防的口腔内処理がどの程度感染のリスクを低減できるかは検討が必要である。

大学医療センターにおける再発性クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症を有する免疫能正常患者と免疫能低下患者を対象とした停留浣腸による糞便細菌叢移植後の臨床アウトカム

Clinical outcomes after faecal microbiota transplant by retention enema in both immunocompetent and immunocompromised patients with recurrent Clostridioides difficile infections at an academic medical centre

B.D. Navalkele*, J. Polistico, A. Sandhu, R. Awali, A. Krishna, S. Chandramohan, G. Tillotson, T. Chopra
*University of Mississippi Medical Center, USA

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 643-648

背景
医療施設において、再発性クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症(CDI)は、最も頻度が高く、治療が困難な感染症の 1 つである。確実な治療選択肢として糞便細菌叢移植(FMT)が推奨される。

方法
2015 年 1 月から 2019 年 12月に再発性 CDI に対して FMT 治療を受けた患者 50 例の後向きレビューを実施した。主要評価項目は FMT 治療後 12 週間以内の CDI 再発とし、副次的評価項目は、FMT を繰り返し行う必要性、FMT に関連する重篤な有害転帰、全死因死亡率とした。

結果
50 のカルテをレビューし、そのうち、停留浣腸により FMT 治療を受けた 47 例(うち 17 例は免疫能低下患者)を本研究の対象とした。CDI を 3 回以上再発した患者が過半数を占めた(62%)。9 例(19%)が初回 FMT 治療に反応せず、4 週間から 12 週間以内に 5 例が 2 回目の FMT 治療を受けた。初回 FMT 治療後の治癒率は 81%で(47 例中 38 例)、2 回目の FMT 治療後は 91%であった(47 例中 43 例)。90 日後の追跡調査で、重篤な有害事象の発生は 2%、全死因死亡率は 2%であった。

結論
非重症の再発性 CDI と重症の再発性 CDI の治療と予防を図るために実施した停留浣腸による FMT は、ベッドサイドでの簡単な手技であり、本研究により、その安全性と有効性(全治癒率 91%)が確認された。

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監訳者コメント
米国の大学病院における糞便移植の有効性についてレトロスペクティブに調査を行った論文である。ディスカッションでも述べられているが、懸念される副作用として、提供者からの便を介した多剤耐性菌感染のリスクがある。どのようにして回避するかが、課題であろう。

超音波活性化冷水流は外科用ステンレススチールからの蛋白およびプリオン関連アミロイドを効果的に除去する

A cold water, ultrasonically activated stream efficiently removes proteins and prion-associated amyloid from surgical stainless steel

T.J. Secker*, T.G. Leighton, D.G. Offin, P.R. Birkin, R.C. Hervé, C.W. Keevil
*University of Southampton, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 649-656

背景
滅菌サービス部門での手術器具の汚染除去処理では、プリオン蛋白など強固な感染性汚染物質を効果的に除去しようと努力がなされている。近年デザインされた新規システムは、低圧の超音波活性化冷水流を使用しており、硬表面における複数の生物学的汚染物質の効果的な洗浄が既に実証されている。

目的
外科用ステンレススチール表面からプリオン関連アミロイドなど組織蛋白を除去するための超音波活性化水流の有効性を試験すること。

方法
22L、ME7、または 263K プリオン株感染の脳ホモジネートで試験用の表面を汚染させた。汚染させた表面を超音波活性化水流で接触時間 5 秒間および 10 秒間の処理を行った。残存する蛋白性物質およびアミロイドの汚染を高感度顕微鏡解析により定量化し、超音波活性化水流による処理前後のプリオンの溶出残渣を免疫ブロット法を用いて確認した。

結果
外科用ステンレススチール表面からの異なるプリオン株の効果的な除去が観察され、回収された上澄みにおいてプロテアーゼに感受性および耐性を示すプリオン蛋白の濃度の低下が認められた。

結論
本研究により、超音波活性化水流は、現行の汚染除去法を改善する費用対効果の高い解決策となりうること、そして、院内感染の減少につながる可能性があることが確認された。

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監訳者コメント
プリオンの除去に超音波を使うことについては、プリオン病感染予防ガイドライン 2020 年版(プリオン病のサーベイランスと感染予防に関する調査研究班・日本神経学会)に洗浄方法として記載がある。 http://prion.umin.jp/guideline/cjd_2020.pdf
洗浄としての評価は、器具の形状により異なってくると思われる。

医療関連新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症率と転帰:診断遅延の意味とスタッフの病欠との相関

Incidence and outcomes of healthcare-associated COVID-19 infections: significance of delayed diagnosis and correlation with staff absence

K. Khonyongwa*, S.K. Taori, A. Soares, N. Desai, M. Sudhanva, W. Bernal, S. Schelenz, L.A. Curran
*Kings College Hospital NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 663-672

背景
2020 年の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)パンデミック中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院の急増は、脆弱な入院患者における前方感染の原因となった。

目的
本研究は、2020 年の流行時における医療関連 COVID-19(HA-COVID-19)の有病率と臨床転帰を評価するため、ならびに英国・ロンドンの国民保健サービス(NHS)トラストの教育病院 1 施設における発症率および伝播を促進するまたは発症率および伝播と相関する可能性がある因子を検討するため実施した。

方法
電子的な検査室の記録、患者とスタッフの自己報告による疾患記録を 2020 年 3 月 1 日から 4 月 18 日まで検索してデータを得た。HA-COVID-19 は入院 14 日目を超えて発症した COVID-19 として定義した。患者配置を目的とする単回の鼻咽頭スワブの検査性能を測定した。HA-COVID-19 に関して、遅延型の RNA 陽性(48 時間を超える遅延として定義)、スタッフが自己報告した COVID-19 による病欠、病床利用率、および COVID-19 の市中発症率の影響を比較した。他の重要な病院感染細菌感染症の発症率を過去数年と比較した。

結果
58 例(7.1%)の HA-COVID-19 症例が特定された。市中感染入院症例(CA-COVID-19)と比較すると、年齢(P = 0.018)、民族性(P <0.001)および併存疾患の負荷(P <0.001)において有意差が認められたが、30 日死亡率では有意差は認められなかった。鼻咽頭スワブの陰性的中率は 60.3%であった。遅延型の RNA 陽性は高い死亡率(P = 0.034)と関連しており、HA-COVID-19 の発症率は遅延型の RNA 陽性(R = 0.7108)およびスタッフの病欠(R = 0.7815)と正の相関を示した。試験期間の病院感染細菌感染症の発症率は過去 2 年と同程度であった。

結論
COVID-19 患者の早期診断と隔離は伝播の減少に役立つ可能性がある。単回の鼻咽頭スワブは、患者を陽性者および陰性者に分類する際に限られた価値しかもたない。

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監訳者コメント
検査のタイミング、種類の異なる検査との組み合わせについて、多くの論文が検討をしているが、なかなか決めてになる方法が出てこないのが現状と思われる。市中での感染率も影響を与える因子の一つと思われる。

N95 マスクの再利用のための医療施設での重力蒸気による再処理

Gravity steam reprocessing in healthcare facilities for the reuse of N95 respirators

A. Aljabo*, E. Mueller, D. Abdul-Azeez, T. Hoare, A. Jain
*SteriPro Canada, Inc., Canada

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 698-708

背景
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界中の何百万もの人々の健康に大きな影響を及ぼしている。病院施設における N95 マスクを含む個人防護具の不足は最前線の医療従事者のウイルス感染リスクを高めている。

目的
現在のすべての規制基準を満たし既存の利用可能な器具を用いて病院で直接実行できる、再現性があり安全な N95 マスクの再処理法を開発すること。

方法
N95 マスクの再利用のために、121°C、30 分の蒸気処理後に 30 分の加熱乾燥を行う非毒性の重力蒸気による再処理法を開発した。型番 1860、1860s、1870+、9105 の N95 マスクのサンプルは病院から回収(微生物学検査用)または新品を購入し(機能性検査用)、米国疾病対策センターで国立労働安全衛生研究所が規定した標準的手順を用いて、すべての機能性検査(すなわちろ過効率、密着度評価、ストラップの完全性)を実施した。

結果
検査したすべてのモデルは 3 サイクルの重力蒸気による再処理後に最小ろ過効率 95 %を達成した。1870+モデルのN95 マスクは、複数回の再処理手順後も他のすべての重要なマスクの機能特性を維持することに加え、効率的に細菌が不活化されることを根拠として、再処理をするのに最も有望なモデルである。

結論
重力蒸気による方法は、3 サイクル以上の再処理にわたって規制機関が定めた機能的要件に悪影響を及ぼすことなく N95 マスクを効果的に再処理することができる。N95 マスクの再利用を可能にすることは、現在のパンデミックと今後の医療危機の両方に対処するために極めて重要な手段である。

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監訳者コメント
N95 の再利用のための滅菌についての論文である。高圧蒸気滅菌が有用とされている。日本では、厚生労働省が 2020 年4 月 10 日に通知をだしている。そこでは、過酸化水素水プラズマ滅菌器を用いた再利用法、過酸化水素水滅菌器を用いた再利用法、5 枚の N95 マスクによる 5 日間サイクル法が提示されている。
N95 マスクについて(依頼)(厚生労働省 2020 年 4 月 7 日)
https://www.mhlw.go.jp/content/000619969.pdf

ベルギーの教育病院の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を有する医療従事者における臨床的特性と液性免疫応答

Clinical characteristics and humoral immune response in healthcare workers with COVID-19 in a teaching hospital in Belgium

G. Vandercam*, A. Simon, A. Scohy, L. Belkhir, B. Kabamba, H. Rodriguez-Villalobos, J.C. Yombi
*Université Catholique de Louvain (UCLouvain), Belgium

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 713-720

背景
医療従事者は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染するリスクが高く、院内感染の一因となる可能性がある。2020 年 2 月 4 日以来、ベルギーの保健当局は 90,568 例を超える症例を報告し、そのうち 8.3%は医療従事者であった。COVID-19 を有する医療従事者の臨床的特性、感染源および液性免疫応答に関するデータは乏しいままである。

目的
COVID-19 を有する医療従事者において臨床的特性、液性免疫応答、汚染源および転帰を分析すること。

方法
本後向き研究は、ベルギーの教育病院 1 施設において検査で確定した COVID-19 の医療従事者 176 名を対象とした。2020 年 3 月 1 日から 5 月 31 日の間に、COVID-19 が疑われる症状を有するすべての医療従事者に対し、鼻咽頭スワブによる逆転写ポリメラーゼ連鎖反応検査を行った。症状発現後 55 日から 137 日の間に血清検査を行った。

結果
年齢中央値は 40.8 歳であり、75%が女性であった。症状発現から診断の間の遅延期間の中央値は 4.39 日であった。最も頻度の高い症状は咳と頭痛(いずれも 75%)であった。発熱は 68.7%を占めた。最も多い職業は看護師(42%)であった。医療従事者は主に患者との接触(32.9%)で感染し、7.6%は入院を要し 1.7%は集中治療室に収容された。残念ながら医療従事者 1 名(0.5%)が死亡した。総抗体は 126 名中 109 名(86.5%)で陽性であった。

結論
医療従事者における COVID-19 の臨床所見は一般集団と変わらない。しかし、転帰はより良好で、死亡率はベルギーの一般の COVID-19 患者での報告(16%)より低かった。主な感染源は病院環境であった。本研究での抗体陽性率は高かったが、以前の報告よりは低かった。

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監訳者コメント
1. 感染契機は患者との接触が多いこと、2. 一般の予後よりも良いこと(おそらく年齢層が低いことが原因)、3. 抗体陽性率は 86.5%に留まったことなどが参考になる。なお抗体検査はロシュの Elecsys Anti SARS-CoV-2 が使用されている。

SpaCE 診断:熱傷創感染の臨床現場での迅速な検出を目的とする新たなポイント・オブ・ケア・センサーの精度を検討するパイロット研究

The SPaCE diagnostic: a pilot study to test the accuracy of a novel point of care sensor for point of care detection of burn wound infection

A.E. Young*, N.T. Thet, J. Mercer-Chalmers, R.J. Greenwood, K. Coy, S. Booth, A. Sack, A.T.A. Jenkins
*University Hospital Bristol and Weston NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 726-733

背景
熱傷患者における創感染はよく見られるものであり、転帰に影響を及ぼす。臨床現場での迅速な(point of care;PoC)感染診断法で客観性のあるものはない。早期診断は敗血症への進行を防ぐ。診断上の主観性が過剰診断、不要な入院および抗菌薬の使い過ぎを後押ししている。

目的
本パイロット研究は熱傷患者における創感染の新たな PoC 診断の精度を検討することを目的とした。

方法
創感染の早期診断のために PoC 診断を作成し in vitro で検査した。SPaCE 診断の試作品は特許取得済みの脂質小胞懸濁液を使用し、その中へ臨床スワブを置く。本診断は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、Candida 属菌およびエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)に対して毒素放出時に色応答を示す。臨床診断精度のパイロット試験を行った。参照基準は、専門家による臨床委員会がルーチンに入手可能なデータを用いて行った後向きの判定であった。

結果
データは患者 34 例中 33 例より入手できた。そのうち創感染を有していると考えられたのは 52%、有していないと考えられたのは 42%であり、2 例(6%)は不確かであった。診断結果より 24%は感染、42%は非感染、33%は中間的結果となったことが示された。重み付きκ係数を用いて評価した臨床判断と診断結果の一致は 0.591 であり、中等度の一致を示した。中間的結果を除外した場合、確定的結果を伴う 22 セットのデータはκ統計量 が 0.81 に達し、「ほぼ完全な」一致を示した。感度と特異度はそれぞれ57%(8/14)、71%(12/17)であった。

結論
本パイロット研究により、SPaCE 診断は創感染に対する臨床現場での迅速な臨床的意思決定を支援する有益でタイムリーなデータをもたらす可能性があるというエビデンスが示された。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
熱傷患者の創傷部位に黄色ブドウ球菌、緑膿菌、カンジダ属、E. faecalis が存在することをベッドサイドで判定できる機器の有用性に関する論文である。まだそれだけで確実な診断価値が期待できるものではなさそうだが、今後に期待したい。

それはトラップだ!多用途の排水管のバイオフィルムモデルの開発と消毒に対する感受性

It’s a trap! The development of a versatile drain biofilm model and its susceptibility to disinfection

K. Ledwoch*, A. Robertson, J. Lauran, P. Norville, J-Y. Maillard
*Cardiff University, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 757-764

背景
排水管のバイオフィルムにおける病原体は病院感染症の重大なリスクの 1 つとなる。しかし、排水管のバイオフィルムと病原体拡散の抑制における製品の有効性のエビデンスは乏しい。排水管の複合バイオフィルムへの消毒効果に関する堅固で再現可能で簡単な試験法のニーズに対応するため、新たな in vitro のバイオフィルムモデルを開発した。

方法
同一の排水管の複合バイオフィルムを 8 日にわたって同時に構築し、シンクのトラップを模した。それらの組成の再現性は次世代シークエンシングによって確認した。次亜塩素酸ナトリウム 1,000 ppm、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム 1,000 ppm、非イオン性界面活性剤および過酢酸4,000 ppm の有効性を、通常のシンク使用状況をシミュレーションして調査した。排水管の 3 つの別々の部分において、一連の 15 分の処置後の細菌の生存と回復を測定した。

結果
排水管のバイオフィルムは 119 のグラム陽性および陰性細菌の混合種で構成されていた。15 分 3 回の投与後に、次亜塩素酸ナトリウムは排水管の前部においてのみ生存を>4 log10 減少させたのに対し、過酢酸は排水管のすべての区分において生存の>4 log10 の減少を達成し、4 日を超えてバイオフィルムの再増殖を防いだ。非イオン性界面活性剤とジクロロイソシアヌル酸ナトリウムは排水管のいずれの区分においてもバイオフィルムを抑制できなかった。

結論
排水管は医療環境における病原性微生物の供給源の 1 つである。微生物のバイオフィルムは従来の化学的殺菌製品で根絶するのは難しいことで有名である。この再現性のある in vitro の排水管のバイオフィルムモデルの開発により、殺菌製品がバイオフィルムの空間構成および排水管の異なる部分での生存に対して及ぼす効果を理解できた。

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監訳者コメント
医療機関の多剤耐性菌の温床と考えられている排水管のバイオフィルムモデルとそれを用いた消毒薬の性能評価に関する論文である。使用した消毒薬の中では過酢酸が最も有効であった。

新生児特別治療室におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌の持続性再発性クラスター:マッチングによる症例対照研究

A persistent recurring cluster of meticillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) colonizations in a special care baby unit: a matched case-control study

N.K. Love*, B. Pichon, S. Padfield, G.J. Hughes
*Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 774-781

背景
2016 年 8 月から 2019 年 11 月の間に北イングランドの新生児特別治療室 1 室において、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)を保菌している新生児のクラスター 1 件が報告された。

目的
感染源を特定しさらなる症例を防ぐため、症例対照研究を実施した。

方法
症例は MRSA(spa 型 t316)の保菌者または感染者である入院中の新生児であった。1 症例あたり対照例 2 例をマッチさせた後向き症例対照研究を実施した。曝露は診療記録のレビューにより判定した。条件付きロジスティック回帰を用いて症例を対照例と比較した。環境調査とスタッフのスクリーニングを行った。

結果
3 年間にわたって 31 例の保菌症例が特定され、感染の報告はなかった。31 症例のうち 13 例はシークエンシングを受け 25 一塩基多型のクラスターに含まれており、一貫して長期にわたり共通の感染源に曝露されていた。大部分の MRSA 症例は以前にスクリーニング陰性の判定を受けていた(N = 22[71%])。環境サンプリングとスタッフのスクリーニングを数回実施した。分析的研究では、31 症例を対照例 62 例と比較した。多変量解析において、病棟の 1 カ所と医療従事者 1 名が有意な曝露として特定された。

結論
保菌の散発的な性質によって、MRSA はおそらく保菌している医療従事者によって断続的に導入されており、各々の一時的なクラスター内で乳児間に起こりうる伝播も発生していたという仮説が考えられた。一時的に保菌している医療従事者はアウトブレイク中の MRSA の感染源の 1 つとみなすことが推奨される。本研究は MRSA の持続的なアウトブレイクにおける分析的疫学研究の重要性を浮き彫りにしている。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
NICU の MRSA の持続的伝播の原因は様々なものが報告されている。本研究では医療従事者の保菌が一因と考えられた。MRSA が中長期的に検出されている場合は医療従事者の保菌検査を検討することも一つであろう。

スイスのセンチネルネットワークに所属する診療所における季節性インフルエンザ流行時の感染予防・制御策

Infection prevention and control measures in practices of the Swiss sentinel network during seasonal influenza epidemics

A. Peytremann*, N. Senn, Y. Mueller
*University of Lausanne, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 786-792

背景
毎年、集団におけるかなりの割合がインフルエンザ様疾患でプライマリケア医を受診するという事実にもかかわらず、プライマリケア診療所におけるインフルエンザ伝播に関するデータは限られている。

目的
スイスのセンチネルネットワークに所属する民間診療所におけるインフルエンザに対する感染予防・制御方法の実施状況を記述すること。

方法
本オンライン横断調査では、2018 年から 2019 年のインフルエンザシーズンに、スイスのセンチネルサーベイランスネットワークに所属する民間診療所 166 施設を対象に、感染予防・制御策に関するデータを収集した。質問は、診療所の状況、感染予防・制御に関する推奨内容、医師およびそのスタッフのインフルエンザワクチン接種状態、手指衛生の遵守、およびマスク着用に関するものとした。

結果
回答した診療所 122 施設(回答率 73.5%)において、回答した医師の 90.2%が自身はワクチン接種を受けているとした一方、すべての診療所で従業員のワクチン接種が勧められているにもかかわらず、医師の 46.7%(120 名中 56 名)は、自身のスタッフのワクチン接種率は推定で 60%超であるとした。大半の診療所(N = 68、55.7%)はスタッフに対して、マスク着用について具体的な推奨を行っていなかった。ほとんどの医師は、患者の診察前(N = 91、74.6%)、診察後(N = 110、90.2%)および医学的処置の前(N = 112、91.8%)に、手指の洗浄または消毒を行っていると報告した。しかしこの割合は、診療所への到着時(N = 78、63.9%)および診療所からの退室時(N = 83、68.0%)にはより低かった。

結論
スイスのセンチネルサーベイランスネットワークに所属する医師のほとんどは、自身はワクチン接種を受けていた。しかし、ワクチンが利用できるにもかかわらず、そのスタッフにおけるワクチン接種率は低かった。手指衛生の指標も十分に高くなかった。これらの結果から、外来診療において感染予防・制御策を実施するためのさらなる取り組みが必要であることが示されている。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
新型コロナウイルスが問題になっているが、以前にはインフルエンザが冬の感染症の代表であり、また特に診療所における感染についてはほとんど注目されていなかった。対策は国毎に異なると思われるが、日本でもこういった研究を行っていくべきであろう。

クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症の再発または非再発後における合併症および死亡のリスク:イングランドにおける後向き観察データベース研究★★

Risk of complications and mortality following recurrent and non-recurrent Clostridioides difficile infection: a retrospective observational database study in England

D.A. Enoch*, T. Murray-Thomas, N. Adomakoh, D. Dedman, A. Georgopali, N.A. Francis, A. Karas
*Addenbrooke’s Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 793-803

背景
クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile 、以下CD)感染症(CDI)は、合併症および死亡のリスクを高める。筆者らは、イングランドの初発または再発 CDI 患者の大規模コホートを対象に、これらの転帰の発生頻度を評価した。

目的
18 歳以上の病院関連 CDI および再発 CDI の入院患者を対象に、12 か月以内の合併症および全死因死亡のリスクを比較すること。

方法
2002 年から 2013 年の期間について、プライマリケアおよび死亡のデータとリンク付けされた病院入院データを用いて、病院関連 CDI 患者を特定した。各病院関連 CDI 症例を、年齢群、性別、入院時の暦年、入院方法(救急か非救急)および病院ケアエピソードの件数について、CDI のない入院患者 2 例と頻度でマッチさせた。13 日目から 56 日目に発症した 2回目の CDI エピソードを、再発と定義した。12 か月目の死亡および合併症のリスクについて、Cox 比例ハザードモデルを用いて解析した。

結果
病院関連 CDI 患者 6,862 例および CDI のない患者 13,724 例を組み入れた。年齢中央値は 81.0 歳(四分位範囲[IQR]71.0 ~ 87.0)であった。病院関連 CDI 患者ではCDI のない患者と比べて、入院から 12 か月以内に合併症が多くみられ、死亡(補正ハザード比[aHR]1.77、95%信頼区間[CI]1.67 ~ 1.87)および合併症(aHR 1.66、95%CI 1.46 ~ 1.88)のリスクが有意に高かった。病院関連 CDI 患者のうち、1,140 例(16.6%)が CDI を再発した。再発患者では非再発患者と比べて、初発 CDI から 12 か月以内における死亡(aHR 1.32、95%CI 1.20 ~ 1.45)および合併症(aHR 1.37、95%CI 1.01 ~ 1.84)のリスクも有意に高かった。

結論
病院関連 CDI(非 CDI と比べて)および再発 CDI は、いずれも初発 CDI エピソードから 12 か月以内の合併症または死亡のリスクが有意に高かった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
CD はグラム陽性桿菌で芽胞形成し、CD 毒素産生により、重症の下痢を引き起こす病院感染の代表的菌種であり、罹患後の死亡率も有意に高くなることが報告されている。しかしながらこれらの死亡率の報告は、限られた数の母集団、院内死亡や退院後死亡のどちらかのみ、あるいは専門施設での研究など偏りがあり、イングランド全体での病院関連 CDI による死亡率や合併症に関するデータは限られている。本論文では、死亡率および合併症について再発 CDI と非再発 CDIを分けて、非 CDI 患者と比較検討したものである。合併症は、潰瘍性大腸炎、中毒性結腸、小腸穿孔、中毒性胃腸炎、大腸切除術、腎不全および敗血症である。危険因子としては、他の報告と同様に PPI や抗菌薬の投与歴、過去の入院歴、集中治療歴などであった。これらの結果からは、CDI 患者の予後が非 CDI 患者よりも悪いことから、予防と疾患管理の重要性を再認識する形となった。

ジンバブエの新生児病棟における感染予防・制御に対する阻害因子および促進因子:行動変容介入をデザインするための情報を提供する理論誘導型の定性的研究★★

Barriers and facilitators to infection prevention and control in a neonatal unit in Zimbabwe - a theory-driven qualitative study to inform design of a behaviour change intervention

A. Herbeć*, G. Chimhini, J. Rosenberg-Pacareu, K. Sithole, F. Rickli, S. Chimhuya, S. Manyau, A.S. Walker, N. Klein, F. Lorencatto, F.C. Fitzgerald
*Centre for Behaviour Change, Clinical, Educational and Health Psychology, UCL, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 804-811

背景
医療関連感染は、低所得状況における新生児の病的状態/死亡の原因として増加しつつある。病院スタッフの行動(例、手指衛生)は、医療関連感染の重要な寄与因子である。これらの促進因子を理解することで、感染の予防と制御(IPC)を促進するための介入に関する情報を提供することができる。

目的
ジンバブエのハラレにある新生児病棟における IPC の阻害因子/促進因子を探索すること。

方法
新生児病棟および産科病棟のスタッフメンバー 15 名に面接を行うとともに、エスノグラフィーの手法に基づく観察を行った。面接の指針およびデータの解析は、COM-B モデル(能力・機会・動機づけ‐行動)モデルから得られる情報に基づき、個人、社会文化、および組織の各レベルにおいて IPC の阻害因子/促進因子を探索した。Behaviour-Change Wheelの枠組みを用いて、実行可能な介入を明らかにした。

結果
能力における促進因子としては IPC の意識が、動機付けとしては、IPC が各人の役割として重要であるという信念、ならびに不十分な IPC がもたらす帰結に関する懸念が含まれた。スタッフは、資源の利用可能性により(機会)、IPC が改善するという、楽観的な意見をもっていた。阻害因子には、ガイドラインに関する知識不足、成績に関する公式なフィードバック制度の欠如(能力)、資源の欠如(機会)が含まれ、行き当たりばったりの行動および不十分な習慣形成につながることが多かった。その他の阻害因子には、病棟の階層組織(例、清掃担当者や母親による IPC への関与が少ない)、ならびに他のチームメンバーによる不十分な実践に対するスタッフ観察制度(機会)が含まれた。実行可能な介入には、役割モデル、枠を超えた母親およびスタッフの関与、監査とフィードバック、ならびに柔軟なプロトコール(水・擦式手指消毒薬の利用可能性に対応できる)などが含まれるようであった。

結論
IPC の阻害因子の大半が機会の領域に含まれていた。一方、大半の促進因子は能力および動機づけの領域に含まれていた。理論に基づく研究により、低所得状況における IPC の阻害因子と促進因子に取り組むための介入を系統的に同定・開発するための基礎付けが得られる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
感染予防対策において手指衛生は重要な手技であるが、これを WHO が提唱する 5 つのタイミングで漏れなく実施するためには、個々の職員の行動変容が必要である。COM-B モデルは行動変容を促進するために、能力、機会、動機の 3 つからなるコンポーネントで行動を分析し、阻害因子と促進因子を明らかにすることで積極的な介入を行い、行動変容に繋げようとするものであり、2011 年に出された行動変容のための介入モデルである。このモデルを使って低所得のアフリカ・ジンバブエにおける新生児病棟における感染制御を改善するための課題を調査した研究であるが、教育とフィードバック、意識付け、手指衛生のできる環境の整備などは中・高所得の国でも共通することである。

英国およびアイルランド共和国の成人心臓手術における手術部位感染症に対する予防実践のばらつきに関する全国調査

National survey of variations in practice in the prevention of surgical site infections in adult cardiac surgery, United Kingdom and Republic of Ireland

* National Cardiac Benchmarking Collaborative, Public Health England
*University of Leicester, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 812-819

背景
現時点で、心臓手術の際の手術部位感染症(SSI)の予防についての国内基準ははない。SSI 発生率には、センターによって 1% から 8% のばらつきがある。

目的
本研究の目的は、英国およびアイルランド共和国での SSI 予防のアプローチにおけるばらつきを検討し、その特徴を明らかにすることであった。

方法
心臓手術センターを対象にウェブベースの電子質問票を用いて、施設レベルと診療チームレベルの両方で SSI 予防におけるばらつきを明らかにした。Cardiothoracic Interdisciplinary Research Network、Public Health England および National Cardiac Benchmarking Collaborative と協力して、手術の実施前、実施中、および実施後におけるルーチンの実践を網羅するために調査内容の作成および実施を行った。

結果
質問票を送付したセンター 38 施設中 19 施設がデータを提供し、これには診療チーム 139 チーム の回答が含まれた。回答したセンターのデータに欠落はなかった。その結果から、SSI 予防の 40 以上にわたる側面についてかなりのばらつきがあることが示された。これらには、SSI サーベイランス、外部機関に対する SSI 発生率の報告、SSI リスク予測ツールの利用、ならびに胸骨補助デバイスやゲンタマイシン浸漬スポンジなどの介入法の使用などにおけるばらつきがあった。

結論
英国およびアイルランド共和国の全土にわたる心臓手術センターにおいて測定された SSI 予防のばらつきは、臨床における最良の診療についての不確実さを示しており、また質の改善についての改善の余地、ならびに今後の研究において取り組むべき知識のギャップを明らかにしている。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
心臓外科手術後の SSI 発生により、2 週間の入院期間の延長、再入院率が 6 倍に増え、余分な外来経過観察と再手術を要することとなり、年間 1,500 万ポンドの医療費が余分に必要であることがわかっている。英国およびアイルランドにおける心臓外科手術の SSI 予防方法に関しては国の標準的なガイドラインがなく、施設毎のばらつきを知るための調査が実施された。術前患者の HbA1c の測定および糖尿病患者の周術期の血糖コントロールやインスリン・スライディング・スケールの使用、術前シャワー(前日か当日か)や剃毛のタイミング(前日、当日病棟または手術室か)、術前シャワーにクロルヘキシジングルコン酸塩の使用、周術期の予防投与はフルクロキサシリン、ゲンタマイシン、セフロキシムなどが使用され、投与期間も 12 時間から 48 時間など、SSI 予防対策の実施状況は少しづつ施設毎に異なっていた。今後の国の標準的なガイドライン作成における参考となる。

カナダ、オンタリオ州南部の病院の排水口におけるカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌

Carbapenemase-producing Enterobacterales in hospital drains in Southern Ontario, Canada

A.J. Jamal*, L.F. Mataseje, K.A. Brown, K. Katz, J. Johnstone, M.P. Muller, V.G. Allen, S. Borgia, D.A. Boyd, W. Ciccotelli, K. Delibasic, D.N. Fisman, N. Khan, J.A. Leis, A.X. Li, M. Mehta, W. Ng, R. Pantelidis, A. Paterson, G. Pikula, R. Sawicki, S. Schmidt, R. Souto, L. Tang, C. Thomas, A.J. McGeer, M.R. Mulvey
*University of Toronto, Canada

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 820-827

背景
病院内の排水口はカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)の重要なリザーバの可能性がある。

目的
CPE を保有する患者に曝露された病院内排水口における CPE の検出率、排水口と患者に由来する CPE の関係性、および排水口汚染のリスク因子を明らかにすること。

方法
病院 10 施設で、CPE 保菌/感染を有する患者310例に曝露された病室および共用シャワー室のシンクおよび排水口について、培養を行った。ショートリードおよびロングリード全ゲノムシークエンシングを用いて、入院患者と、対応する排水口の CPE を比較した。排水口汚染のリスク因子を、マルチレベルモデリングにより評価した。

結果
曝露された病室および共有シャワー室の排水口 1,209 個のうち、病院 7 施設(70%)の 53個(4%)から CPE 分離株 62 株が回収された。病室の排水口から得られたCPE 分離株 49 株のうち、4 株(8%)に病室の過去の入院患者との関係が認められた。関係が認められた排水口/病室入院患者の組み合わせには、8 つの一塩基バリアントにより分離されたシトロバクター・フレウンディー(Citrobacter freundii)ST18 分離株、関係がある blaKPC 含有 IncN3 型プラスミド(異なる種)、関係がある blaKPC-3 含有 IncN 型プラスミド(異なる種)、ならびに関係がある blaOXA-48 含有 IncL/M 型プラスミド(異なる種)が含まれた。病院 1 施設では、2 病棟の 8 室の排水口から得られた分離株が、0 ~ 6 つの一塩基バリアントにより分離されたエンテロバクター・ホルメシェイ(Enterobacter hormaechei)であった。シャワー室の排水口では、手指衛生用(オッズ比[OR]3.45、95%信頼区間[CI]1.66 ~ 7.16)または患者用(OR 13.0、95%CI 4.29 ~ 39.1)のシンク排水口と比べて、CPE 汚染の割合が高かった。手指衛生用シンク排水口では、患者用シンク排水口と比べて(OR 3.75、95%CI 1.17 ~ 12.0)、CPE 汚染の割合が高かった。

結論
排水口の汚染はまれであったが、広範に拡散していた。患者曝露と関係のない排水口で CPE が認められたことは、発見されていない保菌患者による汚染、または逆行性(排水口から排水口)の汚染の存在が示唆される。排水口のタイプによって、汚染リスクが異なっていた。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
腸内細菌目細菌のカルバペネマーゼ産生菌を排水口から検出している論文であるが、患者が在室あるいは使用したシャワールームあるいはシンクの排水口から検出されることは予測できる。これらは耐性菌を保有する患者が使用した結果であって、このことがその後のこれらの病院における感染拡大の原因となるかどうかについては不明である。しかしながら、いくつかの報告では排水口の耐性菌により感染拡大が起こり、排水口の処理やドレーンパイプの殺菌消毒により、終息したとの報告もあり、今後のさらなる調査研究が待たれる。

血管および心臓の移植片およびデバイスに関連する全身性および非全身性感染症による入院の転帰における違い:集団ベースの研究

Differences in outcomes for hospitalizations of systemic and non-systemic infections associated with vascular and cardiac grafts and devices: a population-based study

K. Mponponsuo*, D. Chew, S. Lu, R. Somayaji, E. Rennert-May
*University of Calgary, Canada

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 828-834

背景
血管および心臓デバイスの使用が拡大しており、デバイス関連感染症の、顕著ではないが相対的な増加と関連している。

目的
心臓/血管デバイス関連感染症と、全身性感染症を有する患者と有さない患者における転帰との関連を記述すること。

方法
2016 年度 National Inpatient Sample および国際疾病分類第 10 版(ICD-10)のコードを用いて、血管および心臓デバイス関連感染症の入院患者を特定した。直線およびロジスティック回帰モデルを用いて、死亡、入院期間および入院費を転帰評価項目として、全身性感染症を有する患者と有さない患者を比較した。

結果
デバイス関連感染症に関連した入院患者は計 65,110 例で、平均年齢は 61.3 ± 15.9 歳(標準偏差)、28,650例(44%)が全身性感染症を有していた。全身性感染症患者の 91.2%で Elixhauser 併存症スコア 3 以上が認められ、糖尿病、腎疾患および心不全の有病率が高かった。主要転帰評価項目とした死亡は 3,965 例で認められ、全身性感染症を有する患者では有さない患者と比較したオッズ比は 3.97(95%信頼区間[CI]2.92 ~ 3.95)であった。全身性感染症コホートでは、平均入院期間が 3.44 日長く(95%CI 2.92 ~ 3.95)、平均医療費は 11,776 米ドル多かった(95%CI 9,826 ~ 12,727[米ドル])。

結論
心臓および血管デバイスに関連する全身性感染症は、死亡、入院期間および入院費の増加と関連した。これらの救命デバイスの使用が増加しつつあることを考えると、予防戦略を強化し、健康転帰を改善する目的で、感染性合併症、特に全身性感染症のリスクを有する患者を明らかにするために、さらなる研究が必要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
心臓ペースメーカーや植え込み式除細動器、人工弁、血管内ステントや血管グラフトなどのデバイス挿入がこの十数年間で劇的に増加しており、その結果異物挿入による感染症も当然増加することとなる。起炎菌としてはブドウ球菌属による感染症、あるいは全身性感染症において、死亡率が有意に高くなることが判明した。また、糖尿病、慢性腎不全や心不全などの合併症も死亡率増加の因子となることはすでに明らかとなっている。これらのデバイスにより生活の質と予後も改善されたが、デバイス挿入後に発生する感染症、特に全身性の感染症をいかにして予防するかが大きな課題として残されている。

隔離されていない COVID-19 患者から医療従事者への感染症伝播

Transmission of infection from non-isolated patients with COVID-19 to healthcare workers

T. Basso*, S.A. Nordbø, E. Sundqvist, T.C. Martinsen, E. Witsø, T.S. Wik
*St. Olavs University Hospital, Norway

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 639-642

十分に保護されていない医療従事者は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者との高リスク接触者と定義されており、ルーチンに隔離される。本研究では、症状のある COVID-19 患者から医療従事者 60 名への感染症伝播(2m 以下の距離で 15 分以上曝露またはエアロゾル発生手技中に曝露)について評価した。106 名以上の新たな高リスク接触者がみられ、その後、検査で SARS-CoV-2 RNA 陽性または抗体産生が確認された医療従事者はいなかった。医療従事者は、基本的な感染予防策の遵守を報告した。これらの結果は、他の報告と一致しており、医療従事者を安心させるとともに、無症状の医療従事者の自宅隔離という現行の方法の根拠について広範な評価を促すものである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
施設内で新型コロナウイルス感染症の集団感染が発生すると、十分な防護策が取られていなかった医療従事者は濃厚接触者となり自宅隔離となるが、一方で濃厚接触者が多数発生すると施設の機能維持が困難になる。無症状の濃厚接触者を一律に自宅隔離することを一考させる報告である。

ソウル都市部の急性期病院において新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の治療を行いながら非COVID-19患者に対して不可欠な診療を提供する

Providing essential clinical care for non-COVID-19 patients in a Seoul metropolitan acute care hospital amidst ongoing treatment of COVID-19 patients

K.D. Lee*, S.B. Lee, J.K. Lim, Y.M. Kang, I.B. Kim, H.J. Moon, W.J. Lee
*Hanyang University College of Medicine, Republic of Korea

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 673-677


我々はパンデミック中に並行追跡医療システム下で 20 週にわたって収集されたデータを比較することにより、感染制御の取組みを評価した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)症例の入院以来、救急部を受診する非 COVID-19患者は 37.6%(P < 0.01)の減少が認められた。しかし、救急処置のため受診する急性心筋梗塞、脳卒中、重度外傷および急性虫垂炎の患者は減少しなかった。急性心筋梗塞の来院から再灌流までの時間(door-to-balloon time、34.3[± 11.3]分 vs 22.7[± 8.3]分)は有意に改善した(P < 0.01)のに対し、脳卒中管理における来院から治療開始までの時間(door-to-needle time、55.7[± 23.9]分vs 54.0[± 18.0]分)は一定のままであった(P = 0.80)。同時に、化学療法、放射線療法および血液透析を要する患者を含む、他の臨床サービスが関わる一刻を争う治療に関して変化はなかった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
COVID-19 の流行で救急を訪れる患者が減少することで皮肉にも急性心筋梗塞の来院から再灌流までの時間が短縮されたことは興味深い。

北イタリアの医療従事者における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症の自然経過

Natural history of SARS-CoV-2 infection in healthcare workers in Northern Italy

M. Bongiovanni*, A.M. Marra, A. De Lauretis, F. Bini, D. Di Carlo, G. Manes, B.D. Bodini, L. Pellegrini, M. Schettino, D. Picascia, A. Bellini
*Ospedale di Circolo di Rho, ASST Rhodense, Italy

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 709-712

現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の隔離に用いられる時間枠は、症状のある全期間に加えて症状回復後 14 日間である。しかし、医療従事者を対象とした明確なデータは報告されていない。COVID-19 を有する医療従事者 142 名の試験対象集団において、ウイルス消失期間の平均値は 31.8 日であった。無症状の試験対象者は症状のある試験対象者よりウイルス消失が迅速であった(22 日 vs 34.2 日、P < 0.0001)。診断時の発熱の存在は、より長いウイルス消失期間と関連していた(相対リスク 11.45、95%信頼区間 8.66 ~ 14.25、P < 0.0001)。これらの結果は COVID-19 のパンデミックの今後の管理のための医療戦略に大きな影響を与える可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
SARS-CoV-2 RNA が陽性であることと感染性があることは必ずしも一致しない。本研究の結果からは PCR 法の陰性化を医療従事者の職場復帰の根拠にするとおよそ 1 か月間は職場復帰ができないことになり、PCR 法の陰性化を隔離解除の根拠にするのは現実的に難しい。

煮沸消毒および蒸気消毒による再使用可能な新生児蘇生器の高水準消毒

High-level disinfection of re-usable neonatal resuscitation equipment through boiling and steaming

J. Gilbertson*, M. Quintanar-Solares, F. Liland, S. Niermeyer
*Norwegian Red Cross, Oslo, Norway

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 721-725

感染症と窒息は、世界的に新生児の 2 大死因となっている。単回使用の蘇生器、または再使用可能な蘇生器の殺菌が利用できない場合、高水準消毒のための効果的で安価な方法が必要とされる。実験室での検証により、再使用可能な新生児蘇生器の高水準消毒を達成する方法として煮沸消毒および密閉蒸気消毒(加圧なし)の有効性を調べた。検証した各製品について抽出・測定した微生物量は、国際的に許容された高水準消毒の基準を満たしていた。煮沸消毒および蒸気消毒は、低所得および中所得国において、再使用可能な新生児蘇生器の再処理のための安価で効果的な方法である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
高所得国では単回製品が主流となっている一方で、COVID-19 の流行で流通が停滞する状況も経験した。安価で効果的な消毒による再使用は低・中所得国だけでなく、今後は高所得国でも検討すべき課題である。

COVID-19 患者のケアにおけるマスク着用下での顎ひげカバー(Singh Thattha 法)

Under-mask beard cover (Singh Thattha technique) for donning respirator masks in COVID-19 patient care

R. Singh*, H.S. Safri, S. Singh, B.S. Ubhi, G. Singh, G.S. Alg, G. Randhawa, S. Gill
*Sikh Doctors & Dentists Association, UK

Journal of Hospital Infection (2020) 106, 782-785

密着性が高い filtering facepiece(FFP3)マスクは、新型コロナウイルス(COVID- 19)流行下でのエアロゾル発生手技の際に呼吸器防護具として必須のものであり、マスクの密着性が完全であるかを評価するためのフィットテストが必要である。顔面のひげは、完全な密着性を達成するための障害になると考えられている。筆者らは、Singh Thattha 法と呼ばれる、マスク下の顎ひげカバーについて、顎ひげが十分ある場合の透過率が定性的フィットテストでは 25/27(92.6%)、定量的フィットテストでは 5/5(100%)であったことを報告する。よりしっかりしたタイプの FFP3 マスクは、より効果が高かった。Singh Thattha 法は、ひげを剃ることができない人にとって、マスクを安全に着用するうえで効果的な解決策となる可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
個人的または宗教的な理由でひげを剃ることができない人で、N95 マスクのフィットテストに合格できない場合は、代替品として電動空気浄化呼吸器(PAPR)などの使用が推奨される。しかし、こうした顎ひげカバーを付けることにより、N95 マスクを着用する選択肢を増やすことができる。

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