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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

コロナウイルスの影響により一部、監修者のコメントおよびレーティングを未監修のまま掲載しておりますので、ご了承ください。

COVID-19 パンデミック時の手袋装着の手指の消毒★★

Disinfection of gloved hands during the COVID-19 pandemic

J.M. Garrido-Molina*, V.V. Márquez-Hernández, A. Alcayde-García, C.A. Ferreras-Morales, A. García-Viola, G. Aguilera-Manrique, L. Gutiérrez-Puertas
*Protección Civil de la Diputación de Almería, Spain

Journal of Hospital Infection (2021) 107, 5-11

背景
パンデミックの状況下、同一患者にさまざまな処置を実施したり、個人防護具を外したりする場合、手袋を消毒することがある。手袋を消毒する場合は、手袋と使用する消毒製品の適合性を確認する必要がある。

目的
さまざまな消毒液に対するニトリル製手袋の耐性を試験すること。

方法
ニトリル・ブタジエンゴム化合物から成る 100%パウダーフリーのニトリル製手袋の耐性を分析するために、さまざまな消毒液に曝露させた。医療分野でもっともよく使用される 7 種類の消毒液を試験用に選択した。各消毒液の効果を、対照群(未処置の手袋)と比較して分析した。引張試験において、各試験材料の厚さをマイクロメーターにより計測した。

結果
漂白溶液では手袋の破断荷重が低下したが、エタノール含有の消毒液ほどではなかった。

結論
アルコール含有の消毒液により、ニトリル製手袋の破断荷重が低下する。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
エタノール含有の消毒液でニトリルゴムの手袋を処理すると、破れやすくなることが明確にわかる論文である。ニトリルゴムの手袋は消毒しながら使用するには向かないことがこの点でもよく分かる。

オープンアクセスによりデータを共有する国内抗菌薬適正使用支援サーベイランスシステムの開発および実施★★

Development and implementation of a national antimicrobial stewardship surveillance system, with open access data sharing

D. Ashiru-Oredope*, E.L. Budd, A. Doble, E. Cramp, A. Hendrick, S. Hopkins
*Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2021) 107, 16-22

背景
Public Health England は、抗菌薬適正使用支援サーベイランスシステムを開発し、NHS 病院トラストにより実施される抗菌薬適正使用支援監査のデータの一元的な収集の実施可能性について調べるために、国内パイロット試験を実施した。システムは簡素化され、国民保健サービス(NHS)による抗菌薬耐性(AMR)CQUIN(Commissioning for Quality and Innovation[質の向上とイノベーションのためのコミッション];財政的なインセンティブの質改善策)の要件に焦点を置いている。

目的
国内パイロット試験による結果と使用者のフィードバック、および AMR CQUIN の一環として抗菌薬適正使用支援サーベイランスシステムの使用による結果を提示すること。

方法
抗菌薬適正使用支援サーベイランスシステムを開発し、国内パイロット試験を実施したところ、33 の NHS トラストにより、システムの利用に関するデータおよびフィードバックが提出された。2016 年から 2017 年の AMR CQUIN の抗菌薬適正使用支援データを収集するために、フィードバックに基づきシステムを改良し、国内に設置した。

結果
パイロット試験に参加したトラストの大部分が、抗菌薬適応の記録に関するデータを収集した(90%)。48 時間から 72 時間以内の再検討の決定について記録したデータを収集したトラストは少なかった(36%)。平均して、患者の 83%で抗菌薬適応が記録され、一方では、患者の 71%で 48 時間から 72 時間以内の再検討に関する正式な記録があった。2016 年から 2017 年の少なくとも第 1 四半期に、AMR CQUIN のデータがトラストの 88%により提出された。処方の約 92%で抗菌薬適応が記録され、処方の 87.5%で 72 時間以内の再検討の根拠が示された。これらの割合は、第 1 四半期から最終四半期の間に、それぞれ 7%ポイント、10%ポイント増加した。

結論
抗菌薬適正使用支援サーベイランスシステムにより、英国の NHS トラストからの抗菌薬適正使用支援監査データが一元的に収集できるようになった。Public Health England は、これらのデータを PHE Fingertips ポータル(英国公衆衛生データポータル)によりオンラインで公表する。報告されたデータは、抗菌薬処方の割合の改善とともに 72 時間以内に記録された再検討の根拠を明らかにしている。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
抗菌薬適正使用支援サーベイランスシステムの国レベルでの取り組みは、国際的に同時進行している。我が国においても、AMR リファレンスセンターを中心として様々な取り組みがなされており、耐性菌抑止のためにはフィードバックされたデータをもとにさらなる改善が求められる。

膵臓手術後の手術部位感染症のリスク因子:術後のより適正な抗菌対策が可能である

Risk factors for surgical site infection after pancreatic surgery: a better postoperative antibiotic strategy is possible

M. Petit*, G. Geri, E. Salomon, M. Victor, F. Peschaud, A. VieillardBaron, X. Repessé
*University Hospital Ambroise Paré, France

Journal of Hospital Infection (2021) 107, 28-34

緒言
膵臓手術は主に感染性合併症による高罹病率と関連するので、すべての患者に術後抗菌薬を使用する施設が多い。しかし、抗菌薬レジメンは地域によって異なる。本研究の目的は、このような状況下での術後抗菌薬の臨床適応をより明確にするために、膵臓手術後の手術部位感染症(SSI)の発生と術後抗菌薬処方について報告するとともに、術後 SSI のリスク因子を明らかにすることである。

患者および方法
予定された膵臓の大手術を 2007 年 1 月から 2018 年 11月に受けたすべての患者を、この後向き研究の対象とした。SSI およびルーチンの術後抗菌薬処方に準じて、患者を次の 4 グループに分類した。SSI 発症/術後抗菌薬処方あり、SSI 非発症/術後抗菌薬処方あり、SSI 発症/術後抗菌薬処方なし、SSI 非発症/術後抗菌薬処方なし。さらに、SSI 発症および術後抗菌薬と関連するリスク因子(発熱、術前の胆管内瘻術)を、ロジスティック回帰モデルにより分析した。

結果
患者 149 例(膵頭十二指腸切除術 115 例、膵脾合併切除術 34 例)のデータを分析した。30 例(20.1%)が SSI を発症し、42 例(28.2%)が術後抗菌薬を投与された。ルーチンの術後抗菌薬処方は、SSI 発症群と SSI 非発症群で差が認められなかった(それぞれ、26.7%対 28.6%、P=0.9)。ルーチンの術後抗菌薬を投与されなかった患者 107 例のうち 85 例(79.4%)は、SSI を発症しなかった。院内死亡率に感染患者と非感染患者の間で差はみられなかった(それぞれ、7%対 2%、P=0.13)。術後の発熱に SSI 発症群と SSI 非発症群で差がみられたが(それぞれ、73.3%対 34.2%、P<0.001)、術前の胆管内瘻術については両群で同等であった(それぞれ、37.9%対 26.7%、P=0.3)。

結論
膵臓の大手術後にルーチンの術後抗菌薬を投与されなかったことにより、患者 85 例(56%:原文のまま記載。79.4%の誤記載と思われる)が不要な抗菌薬治療を免れるという結果が得られた。これは、ルーチンの術後抗菌薬処方が過剰である可能性を示唆しているが、抗菌薬適正使用支援を強固にするために、さらなる研究が必要である。発熱は個別処方にとって重要な臨床徴候であると考えられるが、胆管内瘻術はそうではなかった。

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監訳者コメント
コメント無し


使用、再使用、廃棄? COVID-19パンデミック時におけるN95マスクの過酸化水素蒸気による汚染除去後の機能的完全性のばらつきの定量化

Use, re-use or discard? Quantitatively defined variance in the functional integrity of N95 respirators following vaporized hydrogen peroxide decontamination during the COVID-19 pandemic

C. Levine, C. Grady, T. Block, H. Hurley, R. Russo, B. Peixoto, A. Frees, A. Ruiz, D. Alland
*Rutgers New Jersey Medical School, USA

Journal of Hospital Infection (2021) 107, 50-56

背景
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、多くの施設において、必要な個人防護具、とくに N95 マスクを補充する能力が限界に至っている。N95 マスクの汚染除去および再使用プログラムは、この問題に対して可能性のある 1 つの解決法を提示しているが、残念なことに、汚染除去がさまざまな N95 モデルの密着性に及ぼす影響に関して、定量的密着性試験によるアプローチを用いた総合評価は不十分である。

目的
病院環境で現在使用されている N95 マスクの過酸化水素蒸気による 8 回までの汚染除去が、密着性に及ぼす影響を評価するとともに、最初の使用者が装着した N95 マスクが、過酸化水素蒸気による汚染除去後に密着性を損なうことなく、次の使用者の顔の形状に適合するかどうかを検討すること。

方法
N95 マスクの過酸化水素蒸気による汚染除去後の機能的完全性(密着性を測定)を定量的に明らかにするために、PortaCount Pro+ Respirator Fit Tester Model 8038 を使用した。

結果
Halyard Fluidshield 46727 N95 マスクでは、過酸化水素蒸気による 8 回の汚染除去を通して、機能的完全性の低下傾向を観察できた。3M 1870 N95 マスクの機能的完全性は、マスク装着後、有意に低下し、過酸化水素蒸気による汚染除去後、2 番目の使用者で密着性を定量的に試験したところ、定性的密着性試験と定量的密着性試験の結果の不一致がさらに明らかになった。このことは、施設で使用される密着性試験の方法に強い影響を与える可能性がある。

結論
データからは、各種モデルの N95 マスクを過酸化水素蒸気により汚染除去した後の機能的完全性のばらつきが示され、N95 マスクの汚染除去および再使用プログラムの限界の可能性が表面化した。

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監訳者コメント
コメント無し

クラスター分析によって集中治療室のカテーテル関連尿路感染症リスクを有する患者を特定できる:SPIN-UTI ネットワークによる知見

Cluster analysis identifies patients at risk of catheter-associated urinary tract infections in intensive care units: findings from the SPIN-UTI Network

M. Barchitta*, A. Maugeri, G. Favara, P.M. Riela, C. La Mastra, M.C. La Rosa, R. Magnano San Lio, G. Gallo, I. Mura, A. Agodi, on behalf of the SPIN-UTI Network
*University of Catania, Italy

Journal of Hospital Infection (2021) 107, 57-63

背景
集中治療室(ICU)でのカテーテル関連尿路感染症(CAUTI)に対する予防戦略は提案されているものの、発生率を抑制するためにはさらなる努力が必要である。

目的
ICU 入室時の患者背景によって患者を分類すること、ならびに CAUTI のリスクが高い患者クラスターを特定すること。

方法
イタリアの ICU における院内感染サーベイランス(Italian Nosocomial Infections Surveillance in Intensive Care Units)プロジェクトの患者 9,656 例を対象に 2 段階クラスター分析を実施した。

結果
3 つの患者クラスターが特定された。入室の種類、患者の由来および抗菌薬投与がクラスタリングモデルに最も大きく影響した。クラスター 1 を構成する患者は市中由来の内科 ICU 入室患者が多かった。クラスター 2 を構成する患者は他の病棟または病院由来である傾向が強く、また ICU 入室前または入室後 48 時間の抗菌薬投与を報告する傾向が強かった。クラスター 3 はクラスター 2 に類似していたが、ICU 入室前または入室後 48 時間の抗菌薬投与を受けた患者の割合は低いという特徴があった。クラスター 1 の患者の尿路カテーテル留置期間(中央値 7 日、四分位範囲[IQR]12 日)とクラスター 2 の患者の尿路カテーテル留置期間(中央値 7 日、IQR 11 日)は、クラスター 3 の患者(中央値 6 日、IQR 8 日、P < 0.001)より長かった。興味深いことに、クラスター 1 の患者の CAUTI の発生率(患者 100 例あたり 3.5例)は他の 2 つのクラスターの患者(両クラスターともに患者 100 例あたり 2.5 例、P = 0.033)と比較してより高かった。

結論
著者が知る限り、本研究は予防戦略から多くの恩恵を受ける可能性のある CAUTI の高リスク患者を特定するためにクラスター分析を利用した最初の研究である。

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監訳者コメント
コメント無し

「二次的バイオフィルム」は過酢酸による内視鏡の高水準消毒の失敗を引き起こす可能性がある

‘Secondary biofilms’ could cause failure of peracetic acid high-level disinfection of endoscopes

A.B. Akinbobola*, N.J. Amaeze, W.G. Mackay, G. Ramage, C. Williams
*Adekunle Ajasin University, Nigeria

Journal of Hospital Infection (2021) 107, 67-75

緒言
消毒薬に対するバイオフィルムの感受性の低下は、医療器具の再処理の成功に対し課題を突きつけている。本研究では過酢酸(PAA)による事前の消毒後も残存しているバイオマスが、その後の成熟した緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)バイオフィルムの PAA への耐性に対して与える影響を検討した。緑膿菌バイオフィルムの細胞外高分子物質の特定成分の酵素分解が PAA の消毒効果に対して与える影響も評価した。

方法
平板菌数計数法を用いて生存能力を評価することにより、PAA によって死滅したバイオフィルムのバイオマス上に増殖したバイオフィルムの PAA に対する感受性を、24 ウェルプレートのウェルで増殖したバイオフィルムの PAA 感受性と比較した。PAA がバイオフィルムのバイオマスに対して及ぼす効果は、バイオフィルムのバイオマス総量のクリスタルバイオレット法による定量を用いて測定し、PAA がバイオフィルムの細胞外高分子物質の多糖体およびタンパク質成分に対して及ぼす効果は、それぞれフェノール硫酸法またはブラッドフォード法を用いて定量した。残存しているバイオフィルムのバイオマス上に増殖したバイオフィルムにおける生細胞と死細胞の分布を視覚化するため、共焦点顕微鏡を使用した。

結果
事前に消毒されたバイオフィルム由来の残存バイオマスの存在は、その後のバイオフィルムの耐性を著しく高めた。消毒されたバイオマス上に形成され 96 時間経過した「二次的バイオフィルム」は 4,000 ppm の濃度の PAA で生存したが、この濃度は実臨床で高水準消毒に使用される濃度を上回る。

結論
これらの知見は、特定の条件下では残存している細胞外高分子物質の再定着が内視鏡のような医療器具の消毒失敗を引き起こす可能性があることを示唆しており、内視鏡の消毒前の洗浄の重要性を強調している。

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監訳者コメント
バイオフィルムが残存すると、次に形成されるバイオフィルムの消毒薬耐性を高めることが示された。内視鏡のような複雑な形態の器具の洗浄の重要性をあらためて強調する研究である。

血液透析患者におけるβ – ラクタム耐性グラム陰性桿菌の多様なクローンの間欠的保菌の頻度の高さは抗菌薬の過剰使用および異なる感染源を示唆している

High intermittent colonization by diverse clones of β-lactam-resistant Gram-negative bacilli suggests an excessive antibiotic use and different sources of transmission in haemodialysis patients

L. Salazar-Ospina*, J.M. Vanegas, J.N. Jiménez
*Universidad de Antioquia, Colombia

Journal of Hospital Infection (2021) 107, 76-86

背景
β – ラクタム耐性グラム陰性桿菌(GNB)の拡散は世界的に懸念される話題の 1 つである。しかし、血液透析患者におけるこれらの細菌の保菌に関する知見は限られている。

目的
透析センター 1 施設においてβ – ラクタム耐性 GNB の保菌の動態と関連する因子を分析すること。

方法
縦断研究を実施した。各患者の糞便サンプルを採取し、基質特異性拡張型β - ラクタマーゼ(ESBL)およびカルバペネマーゼ産生グラム陰性桿菌を評価した。保菌のスクリーニングは 3 時点で実施し、非保菌、間欠的保菌または持続的保菌に分類した。分子タイピングには enterobacterial repetitive intergenic consensus(ERIC) -PCR 法、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)法、multi-locus sequence typing(MLST)法が含まれた。臨床情報は診療記録および個人面接から取得した。一般化推定方程式モデルを実施し保菌に関連する因子を決定した。

結果
計 210 例の患者が含まれた。ESBL 産生およびカルバペネム耐性 GNB の保菌はそれぞれ41.2%、11.5%に達した。多くの患者は間欠的保菌者であり、各細菌群の 73.9%、92.95%の頻度であった。最も頻度の高い ESBL は CTX-M-G1 であったのに対し、最もよく見られたカルバペネマーゼは KPC であった。ERIC-PCR 法と PFGE 法によって菌株の遺伝的多様性の高さが明らかになり、MLST 法によると大腸菌(Escherichia coli)クローン ST131 が最も重要であった。フルオロキノロンの使用(オッズ比[OR]3.13、95%信頼区間[CI]1.03 ~ 9.44、P[cap]= 0.043)および慢性閉塞性肺疾患(OR 3.53、95%CI 1.42 ~ 8.74、P = 0.006)が ESBL 産生 GNB の保菌に関連していた。

結論
我々の結果は血液透析患者においてβ – ラクタム耐性 GNB の多様なクローンの間欠的保菌の頻度が高いことを示している。このことにより多様な遺伝的特性と異なる感染源を有する細菌の獲得に有利に働く過剰な抗菌薬による選択圧が示唆される。

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監訳者コメント
透析患者が間欠的にESBL 産生菌やカルバペネマーゼ産生菌を保菌していることを示した研究である。抗菌薬の使用が危険因子として指摘されているが、透析患者に限らずこのようなことは起きていると考えられる。

加熱滅菌は、FFP2 および KN95 マスクの大部分のフィルターの性能を劇的に低下させる

Heat sterilization dramatically reduces filter efficiency of the majority of FFP2 and KN95 respirators

J.M.B.M. van der Vossen*, M. Heerikhuisen, R.A.A.L. Traversari, A.L. van Wuijckhuijse, R.C. Montijn
*Netherlands Organization for Applied Scientific Research, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2021) 107, 87-90

背景
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの初期段階に、個人防護具、とくに呼吸器防護具(マスク)の不足が発生した。使用されたマスクの滅菌により、これらの不足が軽減される可能性がある。本研究では、1 回の滅菌後にマスク試験を実施した。

目的
使用済みマスクに対して蒸気滅菌および再使用が安全に適用できるかどうかを明らかにすること。

方法
キャビネット内のマスク材のサンプルに塩化ナトリウム水溶液(0.02% w/v)を噴霧し、通過させた。直径≧0.3 μm、≧0.5 μm、≧1.0 6μm の粒子について、キャビネットから通過する粒子濃度、およびマスクのフィルター材を経て通過する粒子濃度を直接測定した。

結果
濾過効率 94%の要件を満たしたのは、蒸気滅菌した 10 種類のマスクのうち 3 種類のみであった。

結論
加熱滅菌は、マスクの安全な再使用を目的として一般的に適用できない。

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監訳者コメント
一部の感染対策物品は依然として十分な供給があるとはいえない。本論文はKN95マスクなどを 121°C 15 分でオートクレーブした結果、フィルター性能が低下したことを示した。他にもオートクレーブによるマスク性能低下を示した研究は存在し、注意が必要である。

ゲノム解析によってスウェーデン・ストックホルムにおけるバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)ST80 の別々の伝播クラスターが明らかになった

Genomic analysis revealed distinct transmission clusters of vancomycin-resistant Enterococcus faecium ST80 in Stockholm, Sweden

H. Fang*, I. Fröding, M. Ullberg, C.G. Giske
*Karolinska University Hospital, Sweden

Journal of Hospital Infection (2021) 107, 12-15

シークエンス型(ST)80 に属するバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(vancomycin-resistant Enterococcus faecium;VREfm)は、この 3 年間にストックホルムにおける優勢なクローン系列となった。ST80 は 2018 年には VRE 症例の 75%を、2019 年には 46% を占め、vanA 型と vanB 型の両方のアウトブレイクを引き起こした。重複のない ST80-VREfm 分離株(N = 188)について全ゲノムシークエンシングを行った。ゲノム解析によって 3 つの別々の伝播クラスターが明らかになった。我々の研究によって、表現型検査によるバンコマイシン軽度耐性分離株の検出の難しさが、長期間の vanB 型のアウトブレイクの説明要因の 1 つである可能性が示された。本稿ではストックホルムにおける最初の optrA 陽性リネゾリド耐性 VRE 分離株についても報告する。

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監訳者コメント
スウェーデンの首都ストックホルムにおける VRE の地域アウトブレイクについての論文であるが、vanB 型の VRE は VCM の感受性が 4μg/mL から 256μg/mL と広範囲であり、軽度耐性の場合は通常の薬剤感受性検査で見逃す可能性が高く、同一病棟での複数例で腸球菌が分離された場合には vanB 型 VRE の可能性も考えておく必要がある。また、スウェーデンでの第 1 例目となったリネゾリド耐性 vanA 型 VRE は、82 歳の透析患者から分離されており、幸運にも感染拡大は認められなかった。optrA 遺伝子はリネゾリドを含むオキサリジノン系抗菌薬への耐性を示し、近年 EU でのリネゾリド耐性腸球菌の報告が増加しており、日本においてもすでに同様の耐性を獲得した E. faecalis がすでに報告されており警戒が必要である。

長期療養施設において繰り返されるアウトブレイク中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)のクローンの交代★★

Clonal replacement of meticillin-resistant Staphylococcus aureus during repeated outbreaks in a long-term care facility

R. Cohen*, M. Afraimov, T. Finn, F. Babushkin, K. Geller, H. Alexander, S. Paikin
*Sanz Medical Center, Laniado Hospital, Israel

Journal of Hospital Infection (2021) 107, 23-27

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)は長期療養施設(LTCF)の居住者においてよく見られる。大部分が血流感染症(BSI)分離株である 22 株の spa 型の解析によって、2012 年から 2019 年の間に我々の地域の LTCF の 1 病棟で発生した時間的に別々の 5 つのクローンのアウトブレイクが明らかになった。各クローンは他のクローンに置き換わるまで、BSI エピソードを数か月間引き起こした。2019 年のアウトブレイクの調査中に、この病棟の医療従事者において 32%という高い MRSA の保菌率が記録された。MRSA のクローンの交代および伝播における医療従事者の役割を考察する。

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監訳者コメント
長期療養型施設で MRSA 血流感染増加し、血液から分離された MRSA の spa 遺伝子のクローン解析により、クローンが入れ替わっていることが判明した。通常長期療養型施設では入所者は変わることは少なく、クローンの変化は入所者の急性期病院入院や市中クローンの新規入所者または職員の持ち込みによると考えられる。本事例では、新規入所者は MRSA のスクリーニングが実施されており、職員による持ち込みの可能性は否定できない。一時期職員の保菌率が 30%を越えることがあったことは、職員を介した入所者への交差感染が発生し、この感染拡大の一因となった可能性がある。MRSA クローンの分析には POT 法が日本では広く使用され、クローンの変化を確認することができるため、日本においても長期療養型施設での MRSA クローンの経年的な変化があるのかは興味のあるところである。

救急部でのSARS-CoV-2に標的を絞った迅速検査により非感染患者の曝露時間が大きく短縮する★★

Targeted rapid testing for SARS-CoV-2 in the emergency department is associated with large reductions in uninfected patient exposure time

J.S. Hinson*, R.E. Rothman, K. Carroll, H.H. Mostafa, K. Ghobadi, A. Smith, D. Martinez, K. Shaw-Saliba, E. Klein, S. Levin
*Johns Hopkins University School of Medicine, USA

Journal of Hospital Infection (2021) 107, 35-39

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断時間を短縮することで、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)への医療関連曝露を減少させ、感染制御の資源を保持し、ケアの能力を高める機会が得られる。後向きコホート解析を実施して、SARS-CoV-2 に標的を絞った迅速分子検査が、これらのアウトカムに及ぼす影響の評価を行った。標準的プラットフォームによる検査と比べて、迅速検査により隔離コホートから診断結果陰性の患者を除外するまでの時間中央値が 65.6%(12.6時間)短縮した。この結果は、COVID-19 に対する治療能力における週当たり病床利用可能時間 3,028 時間の増加、および個人防護具の使用を要する患者接触機会における 7,500 件の減少に換算された。

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監訳者コメント
救急外来を訪れた患者のなかで COVID-19 が疑われた場合には、「判定待ち患者」としてコホート隔離されるため、結果判明までは陰性者も陽性者と同一の待合室で待つこととなり、ウイルス曝露する。曝露時間をできる限り短時間にするために迅速の PCR 機器(Cepheid 社の GeneXpert)を使用することで依頼から報告まで時間の中央値が、通常検査と比較すると 7.8 時間から 1.9 時間にまで短縮可能となり、その結果「判定待ち患者」の曝露時間を中央値で約 19 時間から約 6 時間に短縮することができた。日本においては患者を個別に隔離して診療することが基本となっており、このような状況は少ないと予測される。外来 COVID-19 診断のための迅速 PCR は 1 から 2 時間前後で判定できる機器が日本でも市販されており、同様の「判定待ち患者」の曝露状況は仮にあったとしても改善しているものと推測される。

感染源の特定におけるSARS-CoV-2に対する全ゲノムシークエンシングの臨床的有用性★★

Clinical utility of SARS-CoV-2 whole genome sequencing in deciphering source of infection

T. Takenouchi*, Y.W. Iwasaki, S. Harada, H. Ishizu, Y. Uwamino, S. Uno, A. Osada, K. Abe, N. Hasegawa, M. Murata, T. Takebayashi, K. Fukunaga, H. Saya, Y. Kitagawa, M. Amagai, H. Siomi, K. Kosaki k, Keio Donner Project
*Keio University School of Medicine, Japan

Journal of Hospital Infection (2021) 107, 40-44

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)により引き起こされる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界的な問題である。院内感染制御の観点から、感染源の特定が極めて重要である。著者らは、感染者との明らかな接触歴のない入院患者の感染源の特定における全ゲノムシークエンシング使用の有効性を評価するため、本研究を実施した。3 次病院 1 施設において最近発生した、見たところ異なる2つの COVID-19 クラスターを観察した。ウイルスの全ゲノムシークエンシングにより、ウイルスのハプロタイプから 2 つのクラスターが識別された。しかし、クラスター 1 および2とは臨床的に関係がないと思われる COVID-19 患者 14 例では感染源が不明であった。これらの患者では、院内で感染者との明らかな接触歴はなく(感染源不明)、クラスター 2 の患者と類似したハプロタイプが認められたが、クラスター 2 を特徴付ける変異のうち 2 つを保有しておらず、これらの「感染源不明」の患者 14 例はクラスター 2 に由来しないことが示唆された。ウイルスの全ゲノムシークエンシングは、感染源不明の COVID-19 の散発症例が、実際に施設内のレベルで既存のクラスターの一部ではないことを確認するうえで有用となる可能性がある。

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監訳者コメント
慶應義塾大学病院の報告。市中流行時においては病院内のクラスターが発生すると、病院感染に関連したクラスターか、市中感染による紛れ込みか判断が難しい場合があり、全ゲノムシークエンシングにより経路が推定できる可能性がある。日本からの報告であり、一読を奨める。

エタノールおよびイソプロパノールによる硬性表面におけるヒトコロナウイルスの不活化

Ethanol and isopropanol inactivation of human coronavirus on hard surfaces

C. Meyers*, R. Kass, D. Goldenberg, J. Milici, S. Alam, R. Robison
*Pennsylvania State College of Medicine, USA

Journal of Hospital Infection (2021) 107, 45-49

背景
新型コロナウイルス感染症(COVID- 19)のパンデミックにより、公共の場において表面の消毒を行う頻度が大幅に高まり、その結果、消毒製剤の入手可能性が低下する結果となった。代替法として、純アルコール(エタノールおよびイソプロパノール)または次亜塩素酸ナトリウムの使用が考えられる。

目的
様々な濃度のエタノール、イソプロパノール、および次亜塩素酸ナトリウムについて、短い接触時間を用いて、表面で乾燥させたヒトコロナウイルスに対する有効性を明らかにすること。

方法
高濃度の感染性ヒトコロナウイルスを、磁器製およびセラミック製のタイル上で乾燥させ、次いで様々な濃度のアルコールにより、15 秒、30 秒、および 1 分の接触時間で処理を行った。次亜塩素酸ナトリウムについても 3 種類の濃度で実験を行った。ウイルス力価の減少を、組織培養感染量 50 アッセイを用いて測定した。

結果
濃度 62%から 80%のエタノールおよびイソプロパノールは、タイル表面上で乾燥させた高濃度ヒトコロナウイルスの不活化において、15 秒の接触時間でも極めて効果が高かった。濃度 95%のアルコールはウイルスを脱水させ、感染性ウイルスの生存を可能にした。米国疾病対策センター(CDC)により推奨されている次亜塩素酸ナトリウム溶液(10倍希釈 および 50倍希釈)は、タイル表面上で乾燥させた高濃度ヒトコロナウイルスの不活化において効果的であった一方、100 倍希釈溶液では活性が大幅に低下しただけだった。

結論
複数種類の濃度のエタノール、イソプロパノールおよび次亜塩素酸ナトリウムは、公共の場で一般的にみられる硬性表面上の感染性ヒトコロナウイルスの不活化に効果的であった。多くの場合、感染性ヒトコロナウイルスの残存が検出されることはなかった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
硬性表面のヒトコロナウイルスの不活化がエタノール、イソプロパノール、および次亜塩素酸ナトリウムで可能であったという報告。新知見とはいえないが、改めて確認したい。

院内 COVID-19 は 30 日死亡率を高めるか? COVID-19 患者における転帰不良のリスク因子を明らかにするための多施設共同観察研究

Does nosocomial COVID-19 result in increased 30-day mortality? A multi-centre observational study to identify risk factors for worse outcomes in patients with COVID-19

K.S. Khan*, H. Reed-Embleton, J. Lewis, J. Saldanha, S. Mahmud
*University Hospital Hairmyres, UK

Journal of Hospital Infection (2021) 107, 91-94

本研究の目的は、院内感染新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、市中獲得 COVID-19 よりも転帰が不良であるかどうかを明らかにすることであった。本研究は、2020 年 4 月 9 日時点で、急性期病院 3 施設においてCOVID-19 が確認されたすべての入院患者を対象とした前向きコホート研究であった。患者の追跡調査を 30 日以上実施した。院内感染は、入院後 7 日目におけるスワブ検査陽性と定義した。全体で、患者 173 例が特定され、19 例(11.0%)は院内感染であった。スワブ検査陽性患者 32 例(18.5%)が 30 日以内に死亡(全死因)し、3 群間(すなわち、COVID-19 疑いの入院患者、COVID-19 を発症した患者、および院内感染 COVID-19 の患者)で 30 日全死因死亡率に有意差はなかった:21.1% 対 17.6% 対 21.6%(P = 0.755)。院内感染 COVID-19 には、市中獲得 COVID-19 と比べて、死亡率の上昇は認められなかった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
COVID-19 は市中感染よりも院内感染の方が死亡率が高そうに考えられるが、実際は有意差がなかったというスコットランドからの報告。他にも院内感染 COVID-19 の方が死亡率が低いとの英国からの報告(Journal of Hospital Infection (2020) 106, 376-384)があり参照されたい。

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